JP2018123392A - 防錆性に優れたディスクロータ - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳鉄材料自身に防錆性を付与することで持続性のある防錆性を確保しながら、防錆性が付与されても、硬度や摩擦特性等のブレーキ部品性能の低下を抑制できるディスクロータを提供すること。
【解決手段】ディスクロータ10は、有底筒状をなすハット部11と、ハット部11の開口側外周部に設けられた環状の摺動板部12とを有し、ハット部11の取付板部13に回転軸Sが取り付けられる。ハット部11及び摺動板部12は、質量比で、C:2.0〜3.0%、Si:4.5〜5.5%、Mn:2.0%以下、P:0.25%以下、S:0.15%以下、Ni:13〜36%、Cr:2.0〜4.0%、B:0.25〜0.35を含有し、オーステナイトを基地組織とする片状黒鉛鋳鉄材料によって形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、防錆性に優れたディスクロータに関する。
車両に設けられる制動装置として、ディスクブレーキが知られている。ディスクブレーキは、ディスクロータと、ディスクパッドとを有している。ディスクブレーキは、車両のドライブシャフト(車軸)の端部に取り付けられ、車輪とともに回転するように構成されている。車両制動時には、このディスクロータの摺動板部がディスクパッドによって挟まれる。それにより、両者の間に生じる摩擦によって車輪の回転が制動されるようになっている。
ディスクロータは、制動装置の構造上、車両外に露出しており、風雨にさらされて錆が発生しやすい環境に置かれる。ディスクロータの特に摺動板部に錆が発生すると、所々不均一に発生した錆がディスクロータの厚みの不均一さをもたらし、ブレーキパッドによる制動時の異常振動の原因となる。また、錆が発生した様子が外観の見栄えも悪化させるため、意匠性の点でも高い防錆性が求められている。
ところが、これまでのディスクロータは、フェライトやパーライトを基地組織とするねずみ鋳鉄によって形成されていた。片状黒鉛を含有するねずみ鋳鉄は、黒鉛と鉄基地との間で発生する電位差により腐食が生じやすい。そこで、従来、摺動板部の表面(摺動面)に皮膜を形成するという表面処理を施し、それによって防錆性を得る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2012−189121号公報
しかしながら、車両制動時において、摺動板部はブレーキパッドに挟まれるため、摺動板部の摺動面はブレーキパッドによって摺動する。車両制動は繰り返し行われるため、ブレーキパッドとの摺動に伴って摺動面の皮膜が除去されてしまい、防錆性を長期に持続させることができないという問題がある。
そこで、本発明は、鋳鉄材料自身に防錆性を付与することで持続性のある防錆性を確保しながら、防錆性が付与されても、硬度や摩擦特性等のブレーキ部品性能の低下を抑制できるディスクロータを提供することを主たる目的とする。
上記課題を解決すべく、第1の発明では、有底筒状をなすハット部と、前記ハット部の開口側外周部に設けられた環状の摺動板部とを有し、前記ハット部の底板部分に回転軸が取り付けられるディスクロータにおいて、前記ハット部及び前記摺動板部のうち少なくとも前記摺動板部は、質量比で、C:2.0〜3.0%、Si:4.5〜5.5%、Mn:2.0%以下、P:0.25%以下、S:0.15%以下、Ni:13〜36%、Cr:2.0〜4.0%、B:0.25〜0.35、Cu:0.5%以下、V:0.7%以下、Ti:0.7%以下を含有し、オーステナイトを基地組織とする片状黒鉛鋳鉄によって形成されたことを特徴とする。
第2の発明では、第1の発明において、前記片状黒鉛鋳鉄は、V又はTiのうち少なくともいずれかを含有する場合に、Cuを併せて含有することを特徴とする。
第1の発明によれば、Niを含有する片状黒鉛鋳鉄(ねずみ鋳鉄)によって少なくとも摺動板部が形成されるため、鋳鉄自身に防錆性が付与される。そのため、皮膜形成によって防錆性を付与していた従来技術と異なり、持続性のある防錆性が確保されたディスクロータを得ることができる。また、Crの含有によってオーステナイト組織が安定化することに加え、CrやBの炭化物、中でもBの炭化物が生成されることによりディスクロータとして必要とされる硬度が確保される。しかも、A型主体の黒鉛形状が維持される範囲でCrやBを含有するため、A型主体の黒鉛形状によって良好な摩擦特性等が得られる。そのため、防錆性が付与されても、硬度や摩擦特性等のブレーキ部品として求められる性能が低下することを抑制できるディスクロータが得られる。
また、Cuを含有させることにより、黒鉛組織を良好にしつつA型主体の黒鉛形状がより得られやすくなる。さらに、VやTiを含有させることにより、これらVやTiを、所望する硬度を得るための調整材料とすることができる。
第2の発明によれば、VやTiを含有させた場合に、必要以上の偏析が生じない範囲のCuを併せて含有することにより、CuによってVやTiによる黒鉛化阻害の作用が弱められ、A型主体の黒鉛形状が得られやすくなる。
ディスクロータを示す径方向の断面図。 ディスクロータの製造方法を示すフローチャート。 本鋳造材料の組織を示すSEM写真。
以下に、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、1ピース構造のディスクロータを一例として説明する。ディスクロータは、ブレーキパッドとともに、四輪車や二輪車等の各種車両の制動装置を構成する。
[ディスクロータの全体構成]
図1に示すように、ディスクロータ10は、ハット部11と摺動板部12とを有している。ハット部11及び摺動板部12はねずみ鋳鉄により形成され、両者は鋳造により一体的に設けられている。
ハット部11は、車軸Sの端部に設けられたハブHに取り付けられる部分であり、有底筒状(本実施形態では有底円筒状)をなしている。ハット部11の底板部分は取付板部13となっており、取付板部13の中心部には取付孔14が設けられている。ディスクロータ10は、取付板部13及び取付孔14を用いて、車軸Sの端部に設けられたハブHに取り付けられる。車軸Sは回転軸に相当する。
一方、摺動板部12は、車両制動時にブレーキパッドによって挟み込まれる部分である。摺動板部12は板状かつ環状をなすように形成され、ハット部11の開口側外周部に設けられている。摺動板部12は、ハット部11の取付板部13と平行をなす表裏両面を有し、その表裏両面は、ディスクパッドが圧接される一対の摺動面15,16となっている。一対の摺動面15,16のうち、ハット部11が突出する側は、車外側となる外側摺動面15であり、その反対側は内側摺動面16である。
[ディスクロータを形成する鋳鉄材料の性質]
本実施形態のディスクロータ10において、ハット部11及び摺動板部12を形成するねずみ鋳鉄は、質量比で、C(炭素):2.0〜3.0%、Si(ケイ素):4.5〜5.5%、Mn(マンガン):2.0%以下、P(リン):0.25%以下、S(硫黄):0.15%以下、Ni(ニッケル):13〜36%、Cr(クロム):2.0〜4.0%、B(ホウ素):0.25〜0.35、Cu(銅):0.5%以下、V(バナジウム):0.7%以下、Ti(チタン):0.7%以下を含有し、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物よりなり、オーステナイトを基地組織とする片状黒鉛鋳鉄となっている。以下では、このねずみ鋳鉄を「本鋳鉄材料」という。
本鋳鉄材料が有する黒鉛形状はA型主体で構成されている。A型主体の黒鉛形状は、良好な摩擦特性及び減衰特性を有するため、ディスクロータ10の材料として最適な形状である。また、本鋳鉄材料のHV硬度(ビッカース硬さ)は、ディスクロータ10としての適正な硬さとされる150HV〜210HVの範囲となるように設定されている。
ここで、本鋳鉄材料に含まれる成分とその含有量について説明する。Cは、片状黒鉛組織を得るために必要な成分である。また、Cを含有させることにより、溶湯が凝固する際に黒鉛が晶出することによって体積を膨張させたり、溶湯の凝固温度を低下させて流動性を高めたりする。このため、引け巣の発生を抑制することができる。Cは、溶湯処理において添加される。Cの含有量が2.0質量%未満であると、A型主体の黒鉛形状を得にくくなる。その一方で、Cの含有量が3.0質量%を超えると、黒鉛の晶出量が過多となってしまい、A型主体の黒鉛形状を得にくくなる。したがって、Cの含有量は、2.0〜3.0質量%の範囲であることが好ましい。
Siは、黒鉛化を促進してA型主体の黒鉛形状を得たり、Cとともに溶湯の流動性を高めて引け巣の発生を抑制したりするうえで有効な成分である。Siは、溶湯処理において添加される。Siの含有量が4.5質量%未満では黒鉛化促進効果が薄れ、A型主体の黒鉛形状を得にくくなる。一方で、Siの含有量が5.5質量%を超えると、黒鉛の晶出量が過多となってしまい、A型主体の黒鉛形状を得にくくなる。したがって、Siの含有量は4.5〜5.5質量%の範囲であることが好ましい。
Mnは、鉄スクラップ(鉄屑)等の鋳鉄原料に由来する成分である。Mnは、Feに固溶してオーステナイト組織を安定化させる。また、MnはSと化合することで、製品の被削性を向上させる。もっとも、Mnの含有量が2.0質量%を超えると、A型主体の黒鉛形状を得にくくなる。したがって、Mnの含有量は2.0質量%以下であることが好ましい。
Pは、鉄スクラップ等の鋳鉄原料に由来する成分である。Pは、Cと同様、溶湯の凝固温度を低下させて流動性を高めることが可能であるが、その効果はCと比較して低く、Pを含有することによって得られる効果は小さい。また、PはFeと化合し、ステダイト(FeP)を生成する。ステダイトは硬度が高く、その存在によって製品の被削性を悪化させる。そのため、Pの含有量はできるだけ少ない方が好ましく、含有量の上限は0.25質量%であることが好ましい。
Sは、鉄スクラップ等の鋳鉄原料に由来する成分である。Sは鋳造性を悪化させるため、Sの含有量は少ないほど好ましく、含有量の上限は0.15質量%であることが好ましい。
Niは、Feに固溶してオーステナイト組織を安定化させるとともに、黒鉛と鉄基地との間で発生する電位差を原因とする腐食を抑制し、防錆性を高めるうえで有効な成分である。Niは、溶湯処理において添加される。Niの含有量が13質量%未満では、安定したオーステナイト組織を得ることができない。また、マルテンサイト組織が生成し始める。マルテンサイト組織の生成は、黒鉛化を阻害してA型主体の黒鉛形状を得にくくするとともに、硬度が必要以上に高まって被削性を悪化させる原因となる。一方、Niの含有量を高めることで、Ni含有による効果はより一層高まるが、製造コストを増加させる要因となる。したがって、Niの含有量は13〜36質量%であることが好ましく、そのうち15〜35質量%であることがより好ましく、19〜21質量%であることが更に好ましい。
Crは、Feに固溶してオーステナイト組織を安定化させるとともに、Cとの化合によりクロム炭化物(炭化クロム)を生成してねずみ鋳鉄の硬度を高めるのに有効な成分である。Crは、溶湯処理において添加される。Crの含有量が2.0質量%未満であると、オーステナイト組織の安定化と十分な硬度を確保することができない。その一方で、Crの含有量が4.0質量%を超えると、Crと化合するCが増加する。そのため、クロム炭化物が増加して必要以上に硬度が高まり、黒鉛化も阻害されてA型主体の黒鉛形状を得にくくなる。したがって、Crの含有量は2.0〜4.0質量%であることが好ましい。
Bは、Cとの化合によりボロン炭化物(炭化ホウ素)を生成してねずみ鋳鉄の高度を高めるのに有効な成分である。Bは、溶湯処理において添加される。Bは、Cr等の他成分よりも硬度を高める効果が大きい。Bの含有量が0.25質量%未満であると、十分な硬度を確保することができない。その一方で、Bの含有量が0.35質量%を超えると、Bと化合するCが増加する。そのため、ボロン炭化物が増加して硬度が高まり過ぎ、黒鉛化も阻害されてA型主体の黒鉛形状を得にくくなる。したがって、Bの含有量は0.25〜0.35質量%であることが好ましい。
Cuは、黒鉛組織を良好にするのに有効な成分である。Siとともに存在することによって、A型主体の黒鉛形状が得られやすくなる。また、VやTiを含有させた場合に、そのVやTiによる黒鉛化阻害の作用を弱めることができる。Cuは、溶湯処理において添加される。その一方で、Cuの含有量が0.5質量%を超えると、過剰に偏析してしまい、その偏析が摩擦特性を悪化させる原因となる。したがって、Cuの含有量は0.5質量%以下であることが好ましい。
V又はTiは、それぞれがCと化合してバナジウム炭化物(炭化バナジウム)又はチタン炭化物(炭化チタン)を生成する。V又はTiは、溶湯処理において添加される。バナジウム炭化物やチタン炭化物の存在により、ねずみ鋳鉄の硬度が高められる。前述したように、Bは硬度を高める効果が大きく、含有量を少量増加させただけで硬度が大幅に増加し、所望する硬度を得るための調整が行いにくい。そこで、VやTiの少なくともいずれか一方を含有させることで、所望する硬度を得るための調整材料として利用される。ただ、VやTiが存在すると、そのVやTiと化合するCが増加して黒鉛化を阻害する。そのため、VやTiのそれぞれの含有量が0.7質量%を超えると、A型主体の黒鉛形状を得にくくなる。したがって、V又はTiの含有量は0.7質量%以下であることが好ましい。また、V又はTiの含有量は0.4質量%以下であることがより好ましい。
[ディスクロータの製造方法]
次に、本実施形態のディスクロータ10を製造する製造方法を説明する。図2に示すように、ディスクロータ10は、溶解工程K1と、鋳造工程K2と、型ばらし工程K3と、仕上げ工程K4とを経て製造される。これら各工程K1〜K4は、一般的に知られている製造工程である。
溶解工程K1では、鉄スクラップ(鉄屑)や銑鉄等の主原料と、C、Si、Ni、Cr、B等の成分の元となる接種剤等の溶解材料とを溶解炉に投入し、誘導加熱等の加熱手段によって加熱する。それにより、溶解材料は溶解されて溶湯となる。ここでは、ディスクロータ10を本鋳鉄材料によって形成すべく、本鋳鉄材料が得られるように接種剤の種類や配合割合等が設定され、その設定にしたがって溶湯を調製する。鋳造工程K2では、所定の注湯温度に設定された前記溶湯を鋳型に注湯する。その後、型ばらし工程K3では、注湯後に冷却された状態の鋳型を壊して、仕上げ前の鋳造品を取り出す。仕上げ工程K4では、この鋳造品に対して切削加工等の各種加工が施され、それにより製品としてのディスクロータ10が得られる。
[他の実施形態]
なお、上記実施形態のディスクロータ10は1ピース構造であるが、2ピース構造を有するディスクロータとしてもよい。2ピース構造のディスクロータでは、図1に示すハット部11と摺動板部12とが別部材として構成され、その両者が適宜の方法で接合されている。この場合、ハット部11と摺動板部12とのうち少なくとも摺動板部12が上記鋳鉄材料によって形成されていれば足りる。ハット部11が上記鋳鉄材料とは異なる材料によって形成される場合、その材料としては、例えばアルミニウムが用いられる。
次に、本発明の実施例について、比較例とともに説明する。なお、表1における数値は成分含有量を「%」で示している。この「%」は質量基準である。
[実施例1〜10]
実施例1〜10として、上記表1に示す成分組成及び含有量を有する本鋳鉄材料によって形成されたディスクロータ10を用意した。その製造方法は、前述したように、溶解工程K1と、鋳造工程K2と、型ばらし工程K3と、仕上げ工程K4とを経て製造する一般的な方法を採用した。
表1に示すように、実施例1〜10は、いずれもC、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、B、Cu、V及びTiの各成分を上記実施形態で示した含有量の範囲内で含有する。実施例1は、Fe及び不可避的不純物以外の成分として、C、Si、Mn、P、S、Ni、Cr及びBの基本成分からなり、Cu、V及びTiを含有しない。実施例2及び実施例3は、実施例1と比較して、Niの含有量をそれぞれ上限又は下限近くとしたものである。実施例4は、実施例1の基本成分に加え、Cuを含有する。実施例5〜7は、実施例1の基本成分に加え、V又はTiのうち少なくともいずれか一方を含有する。実施例8〜10は、実施例1の基本成分に加え、Cuと、V又はTiのうち少なくともいずれか一方とを含有する。
全成分を含有する実施例10のディスクロータ10について、そのディスクロータ10を形成する本鋳造材料を、電子顕微鏡(SEM)により観察した。図3の写真に示すように、オーステナイトの基地組織21に、A型形状を主体とする黒鉛22が生成していることも確認された。また、Cr、B、V及びTiの各炭化物23が生成していることも確認された。
[比較例1〜7]
比較例1〜7として、上記表1に示す成分組成及び含有量を有する鋳鉄材料によって形成されたディスクロータ10を用意した。その製造方法は、前述したように、溶解工程K1と、鋳造工程K2と、型ばらし工程K3と、仕上げ工程K4とを経て製造する一般的な方法を採用した。
比較例1は、一般的に使用されているねずみ鋳鉄(FC150材)により形成されたものである。比較例1では、実施例1〜10と比較して、Ni、Cr、B、Cu、V及びTiの各成分を含有していない。比較例2は、実施例1と比較して、Niの含有量を10質量%に低下させ、Bを含有していない。比較例3は、実施例1と比較して、Bを含有しない。比較例4は、実施例1と比較して、Bを過剰に含有する。比較例5〜7は、Cu、V又はTiをそれぞれ過剰に含有させている。
[評価手段]
錆面積率、黒鉛形状及び硬さの3点で評価を行った。錆面積率は、実施例1〜10及び比較例1〜7について塩水噴霧試験(JIS Z2371)を180時間行い、ディスクロータ10の全体面積に対して錆が発生した箇所の面積の割合を求めた。塩水噴霧試験は、試験機として「SUGA CASSER−11L−ISO」を用い、塩化カルシウム5%水溶液で実施した。黒鉛形状は、実施例1〜10及び比較例1〜7について、それぞれの摺動面15,16を電子顕微鏡(SEM)にて観察した。硬さは、ビッカース硬さ(JIS Z2244)を示している。実施例1〜10及び比較例1〜7における錆面積率、黒鉛形状及び硬さは、次の表2に示すとおりである。
[評価結果]
上記表2に示すように、Niを含有していない比較例1に比べ、Niを15質量%含有させることで錆面積率は33%となり、35質量%を含有させることで錆面積率は17%となり、大幅に低下している。特に、Niの含有量を20質量%とすることで、錆面積率は20〜21%となり、経済性を確保しつつ良好な錆面積率が確認できた。しかも、実施例1〜10では、いずれもCrを2.0〜4.0質量%及びBを0.25〜0.35質量%の範囲で含有しているため、A型主体での黒鉛形状を維持しながら、ディスクロータ10の適正な硬さとされる150HV〜210HVの硬さを確保できることが確認できた。
実施例5〜10では、硬度を微調整するための材料としてVやTiを含有させている。そのうち、実施例5〜7では、VやTiを含有させただけであるため、黒鉛の主形状はA型であっても、所々にC型の黒鉛形状が散見されるようになる。そのため、実施例8〜10のようにCuを併せて含有させることにより、VやTiを含有する場合でも、ほとんど他の黒鉛形状が見られないA型主体の黒鉛形状が得られる。
Niの含有量が10質量%となっている比較例2では、Niの含有によって錆面積の減少がみられるものの大幅な改善が見られない。また、Niの含有量が少ないため、マルテンサイト組織の生成によって黒鉛化が阻害され、D型主体の黒鉛形状が生成されるとともに、Bを含有しなくても硬度が必要以上に高まってしまった。そこで、比較例3のようにNiの含有量を20質量%にすると、錆面積率の大幅な低下やA型主体の黒鉛形状を確認できる。ただ、それだけでは硬度の低下がみられる。そのため、実施例1〜10のようにBを含有させることで、硬度を高めてディスクロータ10として必要な硬度が得られることが確認できる。
Bを含有させる場合でも、比較例4のように過剰に含有させると、黒鉛形状はD型が主体となり、A型主体の黒鉛形状が得られず、ディスクロータ10の硬度も過剰に高められてしまう。そのため、実施例1のように、A型主体の黒鉛形状が維持される範囲でBを含有させることで、A型主体の黒鉛形状が得られることがわかり、所望とする硬度が得られることもわかる。
Cuを含有させる場合には、比較例5のように過剰に含有させると、過剰にCuが偏析してしまい、Bを含有していても硬度が低下していることがわかる。この偏析は、摩擦特性を悪化させる原因にもなる。そのため、Cuを含有させる場合は、実施例4のように、0.7質量%以下とすることで、硬度の低下を抑制できることが確認できた。この場合、摩擦特性の悪化も抑制できる。
VやTiを含有させる場合には、比較例6及び比較例7のようにそれらを過剰に含有させると、A型主体の黒鉛形状が得られなくなることがわかる。そのため、VやTiを含有させる場合は、実施例5〜7のように、0.7質量%以下とすることで、A型の黒鉛形状の生成がVやTiによって阻害されることが抑制される。なお、比較例6又は比較例7において、錆面積率及びHV硬度は満足しているものの、黒鉛形状がC型又はD型主体となっているため、ディスクロータ10の制動特性(摩擦特性)を満足することができない。
10…ディスクロータ、11…ハット部、13…取付板部(底板部分)、12…摺動板部。

Claims (2)

  1. 有底筒状をなすハット部と、前記ハット部の開口側外周部に設けられた環状の摺動板部とを有し、前記ハット部の底板部分に回転軸が取り付けられるディスクロータにおいて、
    前記ハット部及び前記摺動板部のうち少なくとも前記摺動板部は、質量比で、C:2.0〜3.0%、Si:4.5〜5.5%、Mn:2.0%以下、P:0.25%以下、S:0.15%以下、Ni:13〜36%、Cr:2.0〜4.0%、B:0.25〜0.35、Cu:0.5%以下、V:0.7%以下、Ti:0.7%以下を含有し、オーステナイトを基地組織とする片状黒鉛鋳鉄によって形成されたことを特徴とする防錆性に優れたディスクロータ。
  2. 前記片状黒鉛鋳鉄は、V又はTiのうち少なくともいずれかを含有する場合に、Cuを併せて含有することを特徴とする請求項1に記載の防錆性に優れたディスクロータ。
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