JPH07335952A - 積層型圧電アクチュエーター素子およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 電圧を印加する事により伸縮する積層型圧電
アクチュエーター素子において、変位特性を損なう事無
く、高湿度の環境下での素子の絶縁抵抗劣化を少なく
し、信頼性を向上させる。 【構成】 型枠に積層型圧電アクチュエーター素子を固
定し、型枠と素子との間隙に樹脂を流し込み、硬化させ
て形成された、緻密で厚みの均一な外装被膜を有する積
層型圧電アクチュエーター素子。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の技術分野】本発明は、高湿度の環境下における
信頼性の高い積層型圧電アクチュエーター素子に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の積層型圧電アクチュエーター素子
は、外装被膜を形成する際、ディッピング法や粉末塗装
技術が利用されてきた。しかしこれらの方法で形成され
た外装被膜は、厚みのバラツキが大きい（特にエッジ
部分が薄くなる）。樹脂が粗になる部分があり、緻密
な被膜を形成できない。被膜に厚みを持たせることが
できない（５００μｍ程度が限界）。この様な問題点の
ため高湿度の環境下で積層型圧電アクチュエーター素子
を駆動させると素子と樹脂の界面や外装被膜の薄い部分
や樹脂が粗になっている部分から水分が内部に浸入し、
素子の絶縁抵抗が劣化して本来の変位特性が得られなく
なるという欠点を有していた。また、水分が素子内部へ
浸入するのを防ぐ為に金属を用いて、封止する方法もあ
るが金属の管内に積層型圧電アクチュエーター素子を封
入する場合は、素子の変位を妨げないようにベローズ等
の伸縮部を有する精密な構造の金属管を用いる必要があ
るためコスト高となり、封入工程も複雑になるという欠
点を有していた。

【０００３】

【本発明が解決しようとする課題】本発明は、積層型圧
電アクチュエーター素子に緻密で厚みの均一な外装被膜
を形成することにより、高湿度の環境下で素子を駆動さ
せても、変位量が減少することなく、素子の絶縁抵抗劣
化が少ない信頼性の高い素子を効率良く生産し、安価に
提供する事を目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、型枠を使用して緻密で均一な厚みを有する外装被
膜を形成するに成功した。すなわち、樹脂を型枠に注入
する時は予め樹脂を加熱し、粘度を低下させてから使用
する。また、素子を固定した型枠を予め加熱して型枠内
に注入された樹脂が急激に冷えて粘度が上昇するのを防
止する。

【０００５】また、型枠の下部に樹脂注入口を設けさら
に上部の空気の逃げ口を設けることにより、下部に気泡
を持った不良品が減り、歩留りが向上する。

【０００６】図６に明示した如く、型枠内に素子を設定
しやすくするために、位置合わせ用の窪みを設ける。さ
らに型枠の材質を透明（半透明）な物で作成すると、素
子が型枠中央に固定されているか否か目視で確認可能と
なる。

【０００７】図６に明示した如く、型枠内の壁面が交叉
する角部を丸めることにより、外装被膜が欠けることが
無くなる。

【０００８】

【作用】型枠内で樹脂を硬化させて被膜を形成するた
め、従来のディッピング法や粉末塗装のように厚み、樹
脂の密度にバラツキがなく、エッジ部分にもしっかりと
被膜させることが可能である。また、膜厚も型枠の大き
さによって任意の厚みを形成することが可能となる。こ
の様に従来の技術的問題点を解決した本発明によって、
緻密で均一な外装被膜を形成した積層型圧電アクチュエ
ーター素子は高湿度の環境下で駆動させた場合、素子の
絶縁抵抗の劣化が少ないため、信頼性が向上し、積層型
圧電アクチュエーター素子の利用範囲が広がる。また、
金属管封入型の積層型圧電アクチュエーター素子に比
べ、コンパクトで安価な素子を提供することが可能とな
る。

【０００９】この発明の他の目的と特徴および利点は以
下の添付図面に沿った詳細な説明によって明らかになろ
う。

【００１０】

【実施例】ＰＺＴの微粉末にバインダー、溶剤、分散
剤、消泡剤を加え、アトライターで分散した後、真空脱
泡後、ドクターブレード成形により厚さ１００μｍのグ
リーンシートを得た。これにＡｇ／Ｐｄペーストを内部
電極として印刷し、これを１３０枚積層、圧着した。こ
れらの積層体を焼成し、切断後外部電極としてＡｇを焼
き付け、リード線を付け、分極処理をして積層型の積層
型圧電アクチュエーター素子を得た。

【００１１】図１に示すように、積層型圧電アクチュエ
ーター素子の変位面（上下面）をマスキングテープで覆
った後、図２に示す様に素子を型枠にセットし、型枠を
７５℃に保たれた恒温槽に入れ、加熱する。この時温度
が低すぎると樹脂の流れが悪くなり、逆に高すぎるとハ
ンドリングが悪くなる。次に型枠内に外装用の樹脂を流
し込み、（今回は被膜樹脂の厚みが０．８ｍｍになるよ
うな型枠を使用した。）再び恒温槽に入れ、硬化させ
る。外装樹脂が硬化した後、素子を型枠から取り出し、
マスキングテープを剥がし、緻密な外装被膜を有する積
層型圧電アクチュエーター素子を得た。（図３）比較の
ために従来方法のディッピング法で被膜した素子も作成
した。（図４）

【００１２】積層型圧電アクチュエーター素子は、１５
０Ｖを印加したときの変位量、及び４０℃、９０％ＲＨ
の環境下でＤＣ１５０Ｖを印加し続けた場合に、素子の
絶縁抵抗が１０ＭΩ以下になるまでの時間（耐久時間）
で評価した。本発明のキャスティング法によって外装被
膜された素子、従来のディッピング法によって外装被膜
された素子、それぞれ１０個ずつ作製し、上記の条件で
変位量、耐久時間を測定した。その結果、変位量は従来
品と同等の値を示し、高湿度環境下での耐久性は図５に
示すように１０倍以上も改善された。

【００１３】

【発明の効果】上述した様に、この発明の積層型圧電ア
クチュエーター素子の製造方法によれば、緻密で厚みが
均一で、かつ気泡の混入が無い外装被膜の形成が可能と
なり、高湿度環境下での耐久性に優れた素子を効率良く
生産することが可能となった。

【図面の簡単な説明】

【図１】変位面にマスキングテープを貼った積層型圧電
アクチュエーター素子の概要斜視図

【図２】型枠に固定された積層型圧電アクチュエーター
素子の断面概要図

【図３】外装被膜された積層型圧電アクチュエーター素
子の概要斜視図

【図４】ディッピング法で外装被膜を形成した積層型圧
電アクチュエーター素子の概要斜視図

【図５】高湿度環境下における絶縁抵抗の経時変化を表
すグラフ

【図６】型枠の概要図

【図７】型枠の概要図

【図８】型枠の概要図

【図９】型枠の概要図

【図１０】気泡混入、エッジ部分が欠けた積層型圧電ア
クチュエーター素子の概要斜視図。

【図１１】位置合わせ不良の積層型圧電アクチュエータ
ー素子断面概要図。

【符号の説明】

１．積層型圧電アクチュエーター素子 ２．変位面 ３．保護層 ４．マスキングテープ ５．外部電極 ６．リード線 ７．型枠 ８．外装被膜 ９．位置合わせ用窪み １０．樹脂注入口 １１．空気逃げ口 １２．外装被膜に残留した気泡 １３．外装被膜のエッジ部分の欠け １４．曲面加工された角部

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電圧を印加することにより伸縮する積層
   型圧電アクチュエーター素子において、その外装被膜が
   緻密で厚さが均一であることを特徴とする積層型圧電ア
   クチュエーター素子。
2. 【請求項２】 電圧を印加することにより伸縮する積層
   型圧電アクチュエーター素子に外装被膜を形成する際、
   外装被膜の厚さを加味した大きさの型枠に当該素子を固
   定し、型枠と素子との間に形成される間隙に樹脂を注入
   し、硬化させて緻密で厚さの均一な外装被膜を形成する
   ことを特徴とする積層型圧電アクチュエーター素子の製
   造方法。
3. 【請求項３】 型枠の間隙に樹脂を注入するに先立ち、
   型枠を予め所定の温度に昇温保持することを特徴とする
   請求項２記載の積層型圧電アクチュエーター素子の製造
   方法。
4. 【請求項４】 型枠の下部に樹脂注入口を設け、上部に
   は空気逃げ口を設けたことを特徴とする請求項２または
   ３記載の積層型圧電アクチュエーター素子の製造方法。
5. 【請求項５】 型枠内の壁面が交叉する角部を曲面とす
   ることを特徴とする請求項２，３または４記載の積層型
   圧電アクチュエーター素子の製造方法。
6. 【請求項６】 型枠を透明性でかつ伸縮性を有する材質
   にて形成することを特徴とする請求項２，３，４または
   ５記載の積層型圧電アクチュエーター素子の製造方法。