JPH073310U - リフト付きスラッシュ靴 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】スキン本体１の下面に靴底２が一体となって成
形されているスラッシュ靴において、靴底２のヒール部
３の底面４のうち踵寄りの部位５に被嵌着孔８が形成さ
れ、そして、踵寄りの部位５において、片面に嵌着ピン
９を備えたリフト９が被嵌着孔８に、ヒール部底面４の
うち爪先寄りの部位６と面一となるように嵌着されてい
る。 【効果】改良された耐摩耗性および防滑性を有するのは
勿論のこと、履用の間にリフト７の浮き上がりや脱落が
起きて歩行に不具合を生じることが無く、しかも、リフ
ト７の加工費が低減されかつ加工性が向上する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、スラッシュ成形法に従い、スキン本体の下面に靴底が一体となって 成形されているスラッシュ靴に関し、特に、靴底のヒール部にリフトが嵌着され ているリフト付きスラッシュ靴に関する。

【０００２】

【従来の技術】

スラッシュ成形法は、例えば塩化ビニル主体のペースト状靴材料をスラッシュ モールド（靴金型）内に注入し、型面全体に行き渡らせ、次いで加熱によりゲル 化せしめることにより、モールドの型面に従う形態の靴を成形する方法であり、 長靴や半長靴などの製造によく利用されている。この成形法によると、履物の本 体表面に天然皮革様のシボ、シワを付することができるので、その方法は特に高 級ブーツの生産に適したものである。 しかし、上記の成形法により作られるブーツ等のスラッシュ靴は、靴底がスキ ン本体と同じ靴材料で一体に成形されるため、靴底の特にヒール部が使用のうち に摩耗し易く、耐久性に劣るという欠点があり、従来、所謂使い捨て商品の性質 を有するものとなっていた。また、従来のスラッシュ靴は、靴底が塩化ビニル樹 脂より成るため、濡れた面などで滑り易く、防滑性に劣ることも問題となってい た。

【０００３】 そこで、本出願人は、スラッシュ靴の靴底の耐摩耗性および防滑性を改良する べく、実開平 3-82004号公報等に示されるように、靴底のヒール部底面に断面凹 状の被嵌着部を形成し、そこに、凸状嵌着部（例えば金属製）が一面に形成され たリフト（例えばウレタン樹脂製）を嵌着する技術を提案している。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、上記公報に開示したような従来のスラッシュ靴は、リフトを靴 底のヒール部の底面全体に取り付けた構造であったため、即ちヒール部の爪先側 においてリフトの側面が露出している構造となっていたため、人が本靴を履用し て歩行する際、ヒール部が路面上の突出物に当ってリフトが浮き上がり、リフト と靴底との間に隙間が生じる場合があり、さらに、その隙間に砂利等が入り込ん で歩行上の障害となる場合もあり、また、リフト自体が脱落する虞れもあるとい う欠点を有していた。 その上、リフトは嵌着部の取付け等、加工に手間がかかり、かつ加工費が高い ものであるため、上記に述べた従来のスラッシュ靴は、生産性および製作費の面 で改善が必要とされていた。 また、スラッシュ靴の靴底のうち、履用によって最も摩耗し易い部分は、ヒー ル部底面であってしかもその踵寄りの部位であるという事実が経験的に見出され ている。

【０００５】 本考案は、かかる事情を考慮し、従来の欠点を解消するべくなされたもので、 その目的とするところは、勿論改良された耐摩耗性、防滑性を有し、その上、履 用の間にリフトが浮き上がって歩行に不具合を生じることやリフトが脱落するこ とがなく、しかも生産性の向上および製造費の低減に寄与するところのリフト付 きスラッシュ靴を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

本考案によるリフト付きスラッシュ靴は、スキン本体の下面に靴底が一体とな って成形されているスラッシュ靴において、該靴底のヒール部底面のうち踵寄り の部位に被嵌着孔が形成され、そして、該踵寄りの部位において、片面に嵌着ピ ンを備えたリフトが前記被嵌着孔に、前記ヒール部底面のうち爪先寄りの部位と 面一となるように嵌着されていることを特徴とするものである。

【０００７】 本考案のスラッシュ靴は、例えば塩化ビニル主体のペースト状靴材料より、ス ラッシュ成形法に従いスキン本体およびその下側の靴底を一体成形し、そして、 耐摩耗性に優れるリフトを該靴底のヒール部底面のうち踵寄りの部位に嵌着して なる。なお、ヒール部底面のうち爪先寄りの部位は、その他の靴底およびスキン 本体と同じ材料により一体に成形される。 従って、本考案におけるリフトは、ヒール部底面のうちの踵寄りの部位に対応 した形状に、例えば該底面のうちの踵寄りの半分と同じ形状に形成される。リフ トの厚みは普通５ mm 程度であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、 目的および用途に応じて適宜選択されるものである。また、リフトの素材として は、種々のウレタン樹脂がよく利用されるが、必ずしもこれに限定されるもので はなく、例えばナイロン樹脂、各種ゴムなど、目的に応じて多様な材料を適用す ることができる。さらに、リフトの接地面には、防滑性の向上のために、スパイ クや溝等を設けるのがより好ましい。

【０００８】 また、ヒール部底面のうち踵寄りの部位には、通常１、２個の被嵌着孔が形成 され、一方、リフトの片面には、対応する数の嵌着ピンが対応する位置に形成さ れる。嵌着ピンの素材としては、通常、アルミニウム、鉄等、リフト材料とは異 なる材料が使用されるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、嵌着ピンを ナイロン樹脂等により構成し、リフトと一体に成形した樹脂成形品を使用するこ とも可能である。 リフトの嵌着は、嵌着ピンを各々対応する被嵌着孔に差し込むことにより行な うが、本考案では、リフトがヒール部底面のうち爪先寄りの部位と面一となるよ うに取り付けられる。これにより、ヒール部の爪先側から踵側を見て、リフトの 側面が全く露出しない形態となっている。従って、ヒール部底面のうちの踵寄り の部位には、リフト取付のためのスペースが予め形成されている。

【０００９】

【作用】

本考案では、靴底のヒール部底面のうち踵寄りの部位のみに、リフトが該ヒー ル部底面のうち爪先寄りの部位と面一となるように嵌着されている構造としたの で、ヒール部の爪先側においてリフトの側面が全く露出せず、かつ爪先側から踵 側を見てリフトが突出しておらず、このため、人が当該スラッシュ靴を履用して 歩行する際、ヒール部が路面上の突出物に当っても、リフトが浮き上がることが ない。従って、リフトと靴底の隙間への砂利等の侵入による歩行上の障害や、リ フト自体の脱落などが起きる虞れも無い。

【００１０】 また、本考案では、リフトが、靴底ヒール部の底面全体ではなく、そのうちの 踵寄りの部位に対応した大きさのもので足りる。従って、リフト材料の減少が図 られ、リフトの加工費が低減される。また、小型化により、リフト自体の加工も 容易となる。

【００１１】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に従って説明する。 本実施例は、比較的丈の短い婦人用ブーツを例にとるが、本考案はこれに限定 されるものでないことは言うまでもない。本考案は、例えば丈の長い紳士用ブー ツ、婦人用ブーツおよび短靴など、スラッシュ成形法により生産されるすべての スラッシュ靴に適用することができる。

【００１２】 実施例のリフト付きスラッシュ靴は、例えば塩化ビニルペーストのプラスチゾ ル等の靴材料により、図１に示すように、スキン本体１の下面に靴底２が一体と なって成形されたスラッシュ靴であって、靴底２のヒール部３の底面４のうち踵 寄りの部位５には、リフト７がヒール部底面４のうち爪先寄りの部位６と面一と なるように嵌着されている。

【００１３】 スキン本体１および靴底２（爪先寄りの部位６を含む。）は、スラッシュ成形 法に従い、予め電鋳法により製作した中空の靴金型（図示せず。）の中に、上記 の靴材料のゾルを注入し、型面全体に行き渡らせた後、オーブン中での加熱によ り該ゾルをゲル化せしめて所定厚のスキン本体等を形成し、そして場合により、 ヒール部３についてはスキン本体等とは別の靴材料を追加することにより、一体 に成形されている。 こうして成形された靴底２は、ヒール部３の底面４のうち、踵寄りの部位５が 欠けてリフト７取付けのためのスペースが設けられ、さらにその踵寄りの部位５ には、２個の被嵌着孔８、８が形成されている（図３）。従って、本スラッシュ 靴の成形には、中空の靴金型の表面に、各々、被嵌着孔８に対応する２個の軸状 突起（図示せず。）が形成されたものが一般に使用される。しかしながら、成形 後、機械加工により被嵌着孔８を形成する手法を採用することも可能である。

【００１４】 リフト７は、図２に示すように、約５ mm の厚みを有するウレタン樹脂板であ って、ヒール部底面４のうちの踵寄りの部位５に対応した形状に、即ち底面４の うちの踵寄りの半分とほぼ同じ形状に形成されている。なお、同図中、二点鎖線 は、リフトがヒール部３の底面４全体と同じ形状、大きさを有する場合を示すも のである。 また、リフト７の片面には、アルミニウム製の２個の嵌着ピン９、９が各々被 嵌着孔８、８に対応する位置に垂直に固定されている。なお、リフト７の接地面 には、防滑性の向上のために、溝等が設けられている。

【００１５】 そして、本実施例では、嵌着ピン９、９を各々対応する被嵌着孔８、８に差し 込むことにより、リフト７がヒール部底面４のうち爪先寄りの部位６と面一とな るように嵌着されている。これにより、ヒール部３の爪先側においてリフト７が 露出しないだけで無く、爪先側から踵側を見て、リフト７が接地面１０より突出 しない形態となっている。

【００１６】 したがって、人が当該スラッシュ靴を履用して歩行する際、ヒール部３が路面 上の突出物に当っても、リフト７が接地面１０より浮き上がったりあるいはリフ ト７自体が脱落することがなく、リフト７と靴底２の隙間への砂利等の侵入によ り歩行上障害となることもなかった。 また、リフト７は、従来のリフトのおよそ半分の大きさのものとなり、材料の 減少等により加工費がより安価となり、その上、リフトの製作もより容易なもの となった。

【００１７】

【考案の効果】

以上の説明よりわかるように、本考案によれば、改良された耐摩耗性および防 滑性を有するのは勿論のこと、履用の間にリフトの浮き上がりや脱落が起きて歩 行に不具合を生じることが無く、しかも、リフトの加工費が低減されかつ加工性 が向上し、ひいてはスラッシュ靴の生産性の向上にも寄与するところのリフト付 きスラッシュ靴が提供される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例のリフト付きスラッシュ靴の正
面図である。

【図２】実施例のスラッシュ靴に使用されるリフトの斜
視図である。

【図３】図１の III−III 線における断面図である。

【符号の説明】

１・・・ スキン本体 ２・・・ 靴底 ３・・・ ヒール部 ４・・・ 底面 ５・・・ 踵寄りの部位 ６・・・ 爪先寄りの部位 ７・・・ リフト ８・・・ 被嵌着孔 ９・・・ 嵌着ピン １０・・・ 接地面

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 スキン本体の下面に靴底が一体となって
   成形されているスラッシュ靴において、該靴底のヒール
   部底面のうち踵寄りの部位に被嵌着孔が形成され、そし
   て、該踵寄りの部位において、片面に嵌着ピンを備えた
   リフトが前記被嵌着孔に、前記ヒール部底面のうち爪先
   寄りの部位と面一となるように嵌着されていることを特
   徴とするリフト付きスラッシュ靴。