JPH0733007Y2 - ギヤトレンのギヤホルダ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、シングルオーバーヘッドカム（SOHC）あるい
はダブルオーバーヘッドカム（DOHC）を備えた頭上カム
軸式内燃機関において、クランクシャフトからバルブ駆
動カムへ動力を伝達するギヤトレンをエンジン本体に取
付けるギヤホルダに関するものである。

従来技術 高回転域において高性能を発揮しうるエンジンとして、
SOHCエンジンやDOHCエンジンが用いられるようになって
きた。このSOHCエンジンやDOHCエンジンではバルブ駆動
カム軸（以下カム軸という）がシリンダヘッドに位置さ
れているため、このカム軸とクランク軸との距離が長
く、カム軸を駆動するための作動手段が必要となり、チ
ェーン，ベルト，あるいはギヤによる駆動方式が採用さ
れているが、特に自動二輪車用エンジンのように高速回
転を必要とするエンジンのバルブタイミングの正確性，
耐久性といった見地からはギア駆動方式が好ましい。

従来のギア駆動方式の一例として第３図および第４図に
示されたようなもの（特開昭63−13960号公報参照）が
ある。

すなわち複数枚のギヤ011,012を一対の板状ギヤホルダ0
13で挟んで構成したギヤトレンユニット010を、シリン
ダヘッドおよびシリンダブロック03の連通空間04内に挿
入し、クランク軸05に設けられたドライブギヤ06が前記
下段ギヤ012に噛合されかつカム軸07に設けられたドリ
ブンギヤ08が前記上段ギヤ011に噛合されるように、前
記ギヤトレーンユニット010の、ギヤホルダ013の上端を
エンジン01本体に取り付けている。

解決しようとする課題 前記ギヤホルダ013には前記ギヤトレンユニット010をエ
ンジン01本体へボルト09にて固定するための前記ギヤホ
ルダ013の取付部片014は、その取付平面がギヤホルダ01
3本体の平板部015に対し直角となるように、プレス加工
にて折曲成形されている。

そのため、曲げ加工限界の最小内半径Ｒは板厚と略同程
度を要し、必然的に取付部片014におけるボルト穴の位
置は、ギヤホルダ013本体から離れてしまって取付用ボ
ルト09間の巾l₂が長くなり、ギヤトレンユニット010を
挿入するシリンダヘッド02およびシリンダブロック03の
連通空間04が広くなり、エンジン01の巾がそれだけ長い
ものとなっていた。

また前記取付部片014の折曲げ部を折曲加工する場合
に、この折曲部において若干元に戻るスプリングバック
が発生するので、該取付部片014を平板部015に対して精
度良く直角に折曲げることが困難であり、ギヤトレンユ
ニット010をエンジン01本体に配設した時に、クランク
軸05およびカム軸07に対して該ギヤトレンユニット010
が直角に指向せず、ギヤトレンユニット010の下段ギヤ0
12とドライブギヤ06,および上段ギヤ011とドリブンギヤ
08との噛合が適正に保持されにくくその補正に多くの工
数を必要としていた。

課題を解決するための手段および作用 本考案はこのような難点を克服したギヤホルダの改良に
係り、シリンダヘッドのカム軸を囲む空間と、クランク
軸を囲む空間とを連通するギャトレン室内にギャトレン
を配設し、前記クランク軸からの動力を、前記ギャトレ
ンを介して前記カム軸に伝達させて吸排気弁を開閉させ
る頭上式カム軸内燃機関において、前記ギャトレンのギ
ャホルダは金属板製であって、該ギャホルダの上端両側
部は該ギャホルダの外側方向に向って延長されるととも
に、前記ギャトレンから離れる方向へ弯曲されて該ギャ
トレンのギャ配列方向と平行な線を中心とした中空円筒
状に形成され、前記ギャトレン室の上方開口に隣接した
内燃機関本体上端面に前記中空円筒状取付部の下端面が
当接され、該円筒状取付部を貫通して前記内燃機関本体
にボルトが螺着されることを特徴とするものである。

本考案は前記したように構成されているので、ギャトレ
ン装着用のボルトを挿通するための円筒状取付部をギャ
トレンホルダの巾方向中央部に接近して設けることがで
きて、ギャホルダの前後厚と略同程度の寸法にギャトレ
ン室の巾を狭くすることができる。

また本考案では、前記ギャホルダの両側部に形成された
中空円筒状取付部の下端面を正確に形成加工すれば、ギ
ャトレンのギャをクランク軸およびカム軸とそれぞれ一
体のギャに適正に噛合させることができる。

さらに本考案においては、ギャトレン装着用ボルト取付
部を、ギャトレンのギャ配列方向と平行な線を中心とし
て円筒状に形成したため、クランク軸およびカム軸とそ
れぞれ一体のギャに噛合うギャトレンのギャの反力を前
記円筒状取付部で確固と安定して負担することができ
る。

実施例 以下第１図ないし第２図に図示された本考案の一実施例
について説明する。

自動二輪車（図示されず）に搭載された４サイクルガソ
リンエンジン１は左右にシリンダ６が２列並んだ前後Ｖ
型４気筒エンジンであり、シリンダブロック２とクラン
クケース３とで車幅方向に指向したクランク軸９が回転
自在に枢支され、シリンダ６に摺動自在に嵌装されたピ
ストン７はコネクティングロッド８を介して、クランク
軸９に連結されており、混合気の爆発により上下に往復
されるピストン７でもってクランク軸９は回転駆動され
るようになっている。

さらにシリンダヘッド４の上方に位置してクランク軸９
に平行に吸気バルブおよび排気バルブを開閉させるため
のカム軸10が配設され、カムホルダ11により回転自在に
枢支されている。

またギヤトレンユニット20は、上段ギヤ21,下段ギヤ22
およびギヤホルダ25により構成されている。該ギヤホル
ダ25は左右対称の２枚の土甕状支持プレート26と該支持
プレート26間にギヤの厚みに相当する間隙を形成させる
セパレータ31とよりなり、支持プレート26の上方両側部
27は巾方向に延長され、シリンダ長手方向に平行な軸を
中心軸とした中空円筒状に弯曲されて取付部28が形成さ
れており、さらに該支持プレート26上方および下方の巾
方向中央部にそれぞれ孔29,30が設けられている。

さらにまた、上段ギヤ21および下段ギヤ22は噛合されて
一対の前記ギヤホルダ25により挾持され、上段ギヤ21は
ギヤホルダ25の孔29に、下段ギヤ22はギヤホルダ25の孔
30にそれぞれ軸23,24を介して回転自在に枢支されて、
ギヤトレンユニット20として一体に組立てられている。

前記シリンダブロック２およびシリンダヘッド４のシリ
ンダ６に挟まれた中央部に、上下方向に指向してクラン
クケース３と連通するようにギヤトレン室16を形成し、
このギヤトレン室16にギヤトレンユニット20を挿入し、
さらにギヤトレンユニット20の下段ギヤ22を前記コネク
ティングロッド８と一体のドライブギヤ12に噛合させる
とともに、上段ギヤ21を前記カム軸10に設けられたドリ
ブンギヤ13にそれぞれ噛合させた状態にて、ギヤホルダ
25の取付部28にボルト15を嵌通させ、前記シリンダヘッ
ドおよびシリンダブロック２のボルト孔14に該ボルト15
を螺合させることにより、該ギヤトレンユニット20をエ
ンジン本体に一体に取付けることができる。

第１図ないし第２図に図示の実施例は前記したように構
成されているので、クランク軸９が回転するとカムホル
ダ12を介して下段ギヤ22が回転駆動され、さらに下段ギ
ヤ22から上段ギヤ21へ動力が伝達されてドリブンギヤ13
を介してカム軸10が回転駆動されて、吸排気バルブが適
切なタイミングで開閉される。

またギヤホルダ25の取付部28はシリンダ長手方向と平行
な軸を中心として中空円筒状に彎曲形成されているの
で、ボルト15の締付位置をギヤホルダ25に隣接させるこ
とができ、その結果、取付用ボルト15の間隔l₁を短縮し
て、ギャトレン室16の巾を狭くでき、４サイクルガソリ
ンエンジン１のクランク軸方向の寸法を短くして、４サ
イクルガソリンエンジン１の小型化を図ることができ
る。

さらに、中空円筒状取付部28の彎曲加工精度が左程良く
なくとも、該取付部28のシリンダヘッド当接面が支持プ
レート26に対して直角となるように該当接面を切削加工
等により加工することにより、ギヤトレンユニット20を
クランク軸９およびカム軸10に対して容易に直角に指向
させることができる。

考案の効果 このように本考案においては、ギャトレン装着用のボル
トを挿通するための円筒状取付部をギャトレンホルダの
巾方向中央部に接近して設けることができて、ギャホル
ダの前後厚と略同程度の寸法にギャトレン室の巾を狭く
することができるので、内燃機関のクランク軸方向の寸
法を短縮して、内燃機関の小型化を図ることができる。

また本考案では、前記ギャホルダの両側部に形成された
中空円筒状取付部の下端面を正確に形成加工すれば、ギ
ャトレンのギャをクランク軸およびカム軸とそれぞれ一
体のギャに適正に噛合させることができるので、クラン
ク軸の動力をカム軸に円滑かつ確実に伝達させることが
できる。

さらに本考案においては、ギャトレン装着用ボルト取付
部を、ギャトレンのギャ配列方向と平行な線を中心とし
て円筒状に形成したため、クランク軸およびカム軸とそ
れぞれ一体のギャに噛合うギャトレンのギャの反力を前
記円筒状取付部で確固と安定して負担することができる
ので、前記ギャホルダの厚さを薄くして軽量化を推進す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るギヤホルダが配設された内燃機関
の要部縦断側面図、第２図はそのギヤトレンユニットを
図示した斜視図、第３図は従来のギヤホルダが配設され
た内燃機関の要部縦断側面図、第４図は従来のギヤトレ
ンを図示した斜視図である。 １……４サイクルガソリンエンジン、２……シリンダブ
ロック、３……クランクケース、４……シリンダヘッ
ド、５……ヘッドカバー、６……シリンダ、７……ピス
トン、８……コネクティングロッド、９……クランク
軸、10……カム軸、11……カムホルダ、12……ドライブ
ギヤ、13……ドリブンギヤ、14……ボルト孔、15……ボ
ルト、16……ギヤトレン室、20……ギヤトレンユニッ
ト、21……上段ギヤ、22……下段ギヤ、23,24……軸、2
5……ギヤホルダ、26……支持プレート、27……両側
部、28……取付部、29,30……孔、31……セパレータ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドのカム軸を囲む空間と、ク
   ランク軸を囲む空間とを連通するギャトレン室内にギャ
   トレンを配設し、前記クランク軸からの動力を、前記ギ
   ャトレンを介して前記カム軸に伝達させて吸排気弁を開
   閉させる頭上式カム軸内燃機関において、前記ギャトレ
   ンのギャホルダは金属板製であって、該ギャホルダの上
   端両側部は該ギャホルダの外側方向に向って延長される
   とともに、前記ギャトレンから離れる方向へ弯曲されて
   該ギャトレンのギャ配列方向と平行な線を中心とした中
   空円筒状に形成され、前記ギャトレン室の上方開口に隣
   接した内燃機関本体上端面に前記中空円筒状取付部の下
   端面が当接され、該円筒状取付部を貫通して前記内燃機
   関本体にボルトが螺着されることを特徴とするギャトレ
   ン。