JPH07327666A - チオールプロテアーゼ阻害物質高生産能を有する微生物、その微生物を利用したその物質の製造法、その物質を用いた食品の製造法、ならびにその物質からなる品質改良剤 - Google Patents

チオールプロテアーゼ阻害物質高生産能を有する微生物、その微生物を利用したその物質の製造法、その物質を用いた食品の製造法、ならびにその物質からなる品質改良剤

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JPH07327666A
JPH07327666A JP6160504A JP16050494A JPH07327666A JP H07327666 A JPH07327666 A JP H07327666A JP 6160504 A JP6160504 A JP 6160504A JP 16050494 A JP16050494 A JP 16050494A JP H07327666 A JPH07327666 A JP H07327666A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 アスペルギルス・オリゼーまたは同・ソーヤ
などのチオールプロテアーゼ阻害物質高生産能を有する
アスペルギルス属に属する微生物。上記微生物を米単独
または米を添加した培地に培養し、該培養物から上記阻
害物質を高濃度に採取する。培養液の水抽出液または培
養液を加熱処理し、次に、非イオン性多孔性吸着樹脂に
接触させて、上記阻害物質を吸着せしめ、次いで該樹脂
に吸着した上記阻害物質を得る工程を何加することがで
きる。上記方法で得られた上記阻害物質をすり身の製造
に当り原料魚肉に添加してすり身または練製品を製造す
る。上記チオールプロテアーゼ阻害物質からなるチオー
ルプロテアーゼが問題となって高品質の製品とならない
食品または水産物の品質改良剤。 【効果】 チオールプロテアーゼ阻害物質を効率よく生
産する微生物、それを用いる前記阻害物質の製造法を提
供できる。得られた上記阻害物質のすり身などへの利用
が可能な上記阻害物質を提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アスペルギルス属に属
するチオールプロテアーゼ阻害物質高生産能を有する微
生物、その微生物を利用してチオールプロテアーゼ阻害
物質を効率良く製造する方法、その物質を用いた食品の
製造法、ならびにその物質からなる食品または水産物の
品質改良剤に関する。
【0002】
【従来の技術】チオールプロテアーゼ阻害物質は水産練
製品工業において有用であり、例えば、従来、食品加工
原料としては全く利用価値のなかった胞子虫寄生魚肉い
わゆるジェリーミートを有する魚肉でも、チオールプロ
テアーゼに由来する肉軟化作用を防止し、胞子虫の寄生
のない通常の魚肉を用いたと同様の生または冷凍魚肉す
り身を製造するのに有用である。そしてまた、チオール
プロテアーゼ阻害物質は一般に医薬品工業においても有
用であり、特にカルシウム依存性中性プロテアーゼ活性
を抑制すると言われており、筋ジストロフィー、あるい
は白内障の治療薬としても期待されている。
【0003】従来、チオールプロテアーゼ阻害物質につ
いては放線菌、麹黴類により生産されることが既に知ら
れており、特に麹黴類としてはアスペルギルス・ヤポニ
カス(特公昭61−42552号公報およびAgri
c.Biol.Chem.,42(3),523〜52
8,1978)についての報告がある。しかしながら、
このアスペルギルス・ヤポニカスはチオールプロテアー
ゼ阻害物質生産能は非常に低く、そのためこれを工業的
に利用するには有利なものとは言えなかった。
【0004】また、食品中のチオールプロテアーゼを阻
害するものとして、これまでは卵白、プラズマ等を使用
しているが、卵白では、過剰量が必要となり卵白の風
味、ゲル物性の劣化が課題となり、プラズマでは、色、
臭いの付加等の問題があることが指摘され、少量添加で
強い阻害活性を示す阻害物質の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アスペルギ
ルス属に属するチオールプロテアーゼ阻害物質高生産能
を有する微生物の提供を目的とする。本発明は、アスペ
ルギルス属に属するチオールプロテアーゼ阻害物質高生
産能を有する微生物を利用してチオールプロテアーゼ阻
害物質を効率良く製造し、また培地中にチオールプロテ
アーゼ阻害物質を著量生産せしめ、さらにまた培地から
チオールプロテアーゼ阻害物質を効率良く分離採取する
方法の提供を目的とする。本発明は、微生物由来のチオ
ールプロテアーゼ阻害物質を用いた食品の製造法の提供
を目的とする。本発明は、微生物由来のチオールプロテ
アーゼ阻害物質からなる食品または水産物の品質改良剤
の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、チオール
プロテアーゼ阻害物質の工業的な製造法を確立するため
広範囲な微生物から該阻害物質高生産能を有する微生物
の検索を行ったところ、従来注目されていなかったアス
ペルギルス・オリゼーおよび同・ソーヤが意外にも極め
て高いチオールプロテアーゼ阻害物質生産能を有するこ
と、また上記培養に際し米単独または米を添加した培地
で上記微生物を培養するとチオールプロテアーゼ阻害物
質の生産量を著しく増加することができること、また培
養物の水抽出液または培養濾液を非イオン性多孔性吸着
樹脂に接触させることにより、チオールプロテアーゼ阻
害物質を容易に分離採取できること、そしてまた胞子虫
が寄生してジェリーミート化する魚肉でも、この阻害物
質を少量添加することにより、胞子虫の生産するチオー
ルプロテアーゼを阻害し、良好なすり身および水産練製
品などが得られることを見出し、これらの知見に基づい
て本発明を完成した
【0007】本発明は、チオールプロテアーゼ阻害物質
高生産能を有するアスペルギルス属に属する微生物であ
り、上記アスペルギルス属に属する微生物はアスペルギ
ルス・オリゼーまたはアスペルギルス・ソーヤである。
【0008】上記「チオールプロテアーゼ阻害物質」
は、プロテアーゼを活性残基,反応様式による分類でセ
リンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、酸性プロテ
アーゼ、金属プロテアーゼの4群に分けた場合のチオー
ルプロテアーゼを阻害するものを意味する。
【0009】上記「チオールプロテアーゼ阻害物質生産
能」は、例えば、下記A.の培養条件にて得られる培養
上澄を、下記B.のチオールプロテアーゼ阻害率の測定
法にて測定したときのチオールプロテアーゼ阻害率によ
って表すことができる。
【0010】A.培養条件 (a)液体栄養培地の組成 米粉 0.75キログラム(5重量%) 水 15リットル pH 6.0 (b)培養 30リットル容ジャーファーメンターに、上記液体栄養
培地15リットル(消泡剤として醤油油15ミリリット
ル添加)を入れ、120℃、20分間加熱殺菌し冷却し
た後、上記微生物を接種し、30℃で4日間、撹拌しつ
つ培養(撹拌数300rpm、通気量15リットル/
分)し、液体培養物を得る。 (c)培養上澄の採取 上記液体培養物を75℃で20分間加熱処理し、遠心分
離(5.000g,15分)して培養上澄を得る。
【0011】B.チオールプロテアーゼ阻害率の測定法 (a)パパイン(チオールプロテアーゼ)溶液の調製 使用するパパイン溶液は、パパインを0.1Mリン酸緩
衝液(pH7.0)に溶解し、下記阻害活性測定法にお
ける(Es−Eb)の値が、1cmセルを用い、吸光度
0.6となるように調製する。 (b)測定法 上記培養上澄を2μl、パパイン溶液0.2ml、20
mMシステイン−10mM EDTAの混合溶液0.1
mlおよび水0.7mlとを混合して37℃10分間予
温した後、2%アゾカゼインの0.1Mリン酸緩衝液
(pH7.0)溶液1mlを加え、37℃15分間反応
させ、しかる後0.4Mのトリクロル酢酸溶液2mlを
加えて反応を停止する。室温30分放置後に濾紙濾過を
行い、濾液の410mμにおける吸光度Isを測定す
る。対照としてパパイン溶液の代わりに、0.1Mリン
酸緩衝液(pH7.0)0.2mlを用い同様の処理を
行って、吸光度Ibを測定する。一方培養上澄の代わり
に水2μlを用い同様に処理してEs、Ebを測定す
る。そしてチオールプロテアーゼ阻害率は、次式により
求める。
【0012】したがって、上記チオールプロテアーゼ阻
害率に基づくと、上記「チオールプロテアーゼ阻害物質
高生産能を有するアスペルギルス属に属する微生物」と
は、「アスペルギルス・ヤポニカスのチオールプロテア
ーゼ阻害率よりも十分に高い値を示すアスペルギルス属
に属する微生物」を意味する。具体的には、例えば、後
段の実施例1の表1のチオールプロテアーゼ阻害率の欄
に示したように、アスペルギルス・ヤポニカスの「チオ
ールプロテアーゼ阻害率20%」よりも十分に高い値の
30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは7
0%以上のチオールプロテアーゼ阻害率を示すアスペル
ギルス属に属する微生物を意味する。
【0013】または、上記「チオールプロテアーゼ阻害
物質生産能」とは、例えば、ジェリー強度の高いカマボ
コゲルを与える効果によって表現することができる。上
記ジェリー強度は、例えば後段の実施例5の方法により
測定することができる。したがって、上記ジェリー強度
の高いカマボコゲルを与える性質に基づくと、「チオー
ルプロテアーゼ阻害物質高生産能を有するアスペルギル
ス属に属する微生物」とは、「アスペルギルス・ヤポニ
カスよりも十分に高いジェリー強度のカマボコゲルを与
える微生物」を意味する。具体的には、例えば後段の実
施例1の表1のジェリー強度試験(g.cm)の欄に示
したように、アスペルギルス・ヤポニカスを添加した時
のジェリー強度が220g.cmの時にジェリー強度が
300g.cm以上、好ましくは400g.cm以上の
ジェリー強度となるカマボコゲルを与えるアスペルギル
ス属に属する微生物を意味する。
【0014】そして本発明は、アスペルギルス属に属す
るチオールプロテアーゼ阻害物質高生産能を有する微生
物を栄養培地に培養し、該培養物からチオールプロテア
ーゼ阻害物質を高濃度に採取することを特徴とするチオ
ールプロテアーゼ阻害物質の製造法である。上記アスペ
ルギルス属に属する微生物はアスペルギルス・オリゼー
またはアスペルギルス・ソーヤである。
【0015】また、本発明は上記チオールプロテアーゼ
阻害物質の製造方法において、培地として米単独または
米を添加した培地を用いることを特徴とするチオールプ
ロテアーゼ阻害物質の製造法である。また、本発明は上
記チオールプロテアーゼ阻害物質の製造方法において、
該培養物の水抽出液または培養濾液を非イオン性多孔性
吸着樹脂に接触させて、該液中の阻害物質を吸着せし
め、次いで該吸着樹脂からチオールプロテアーゼ阻害物
質を得る工程を付加したことを特徴とするチオールプロ
テアーゼ阻害物質の製造法である。
【0016】また本発明は、すり身または水産練製品の
製造に当り原料魚肉に、上記チオールプロテアーゼ阻害
物質の製造方法で得られたチオールプロテアーゼ阻害物
質を添加することを特徴とするすり身または水産練製品
の製造法である。
【0017】また本発明は、上記チオールプロテアーゼ
阻害物質の製造方法で得られたチオールプロテアーゼ阻
害物質からなることを特徴とするチオールプロテアーゼ
が問題となって高品質の製品とならない食品または水産
物の品質改良剤である。
【0018】以下本発明を詳細に説明する。先ず、本発
明に用いられる微生物としては、アスペルギルス属に属
するチオールプロテアーゼ阻害物質高生産能を有する任
意の微生物が挙げられるが、特にアスペルギルス・オリ
ゼー、アスペルギルス・ソーヤに属するチオールプロテ
アーゼ阻害物質の高生産能を有する微生物は好ましい。
これらの微生物は日本の伝統的な醸造食品(即ち醤油、
味噌、清酒)の製造に利用される代表的な微生物であ
り、食品衛生上安全性が高い。その微生物の好適な具体
例としては、アスペルギルス・オリゼーATCC203
86、同ATCC22788、同IAM2720、アス
ペルギルス・ソーヤATCC42249、同ATCC1
1906が挙げられる。
【0019】次に、これらの微生物を用いてチオールプ
ロテアーゼ阻害物質を製造するには、先ず、チオールプ
ロテアーゼ阻害物質生産菌を栄養培地に接種培養し、該
培地中にチオールプロテアーゼ阻害物質を生産蓄積せし
める。
【0020】栄養培地としては、該微生物の生育好適な
培地が用いられ、液体培地、固体培地、合成培地、半合
成培地等、任意の培地が用いられる。
【0021】培地の炭素源としては、資化可能な炭素化
合物またはその含有物であればよく、例えば米、ふす
ま、小麦、グルコース、シュークロース、スターチ、マ
ルトース、デキストリン、グリセリンなどが用いられ、
窒素源としては、利用可能な窒素化合物またはこれを含
有する物であれば良く、例えば大豆粉、脱脂大豆粉、グ
ルテン、ペプトン、肉エキス、カゼイン、大豆ミール、
コーンステープリカー、硫安などが使用される。また、
リン酸、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の適当
な無機塩類を適宜使用することができ、さらに必要に応
じて菌の生育に必要な各種の有機物、無機物などを培地
に添加使用することができる。これらの原料は、必要に
より二種以上を併用しても良い。
【0022】この培地として、特に米単独または米を添
加した培地を用い、チオールプロテアーゼ阻害物質生産
菌を培養すると、該阻害物質の生成蓄積量を著しく増大
することができるので好ましい。即ち(1)通常の米麹
の製造法に従って、米を洗米、浸漬、水切りし、適当な
吸水を行った後、蒸煮等の加熱変性を行い、放冷した蒸
米を固体培地として使用する、(2)あるいは水に対し
米を2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%添加し
加熱変性を行い得られた液体培地を使用するときは、い
ずれにおいても培養物中にチオールプロテアーゼ阻害物
質の生成蓄積量が、米以外の原料を使用した場合に比べ
て、数倍と著しく多くなり、また培養物の色沢が淡色に
なり、最終製品の色沢も非常に淡色になるので好まし
い。
【0023】ここに用いられる米としては、玄米、精白
米、破砕米、米糠(吟醸粉を含む)、米粉、脱脂糠ある
いはそれらの変性処理物の一種あるいは二種以上が挙げ
られる。
【0024】固体培養の温度、時間、通気等の条件とし
ては、適当な固体培地原料に適量撒水し、オートクレー
ブ等により加熱殺菌、例えば120℃で30分間処理し
た後、本発明のチオールプロテアーゼ阻害物質生産菌を
接種培養し、25〜35℃で該阻害物質の生成蓄積量が
最大となるのに充分な期間例えば3〜5日間培養を行
い、チオールプロテアーゼ阻害物質の著量生成蓄積され
た培養物を得る。
【0025】次に、液体培養の場合には、適当な液体培
地原料を水に添加溶解し、オートクレーブ等により加熱
殺菌した後、本発明のチオールプロテアーゼ阻害物質生
産菌を接種培養し、25〜35℃で該阻害物質の生成蓄
積量が最大となるのに充分な時間例えば3〜5日間振盪
培養または通気攪拌培養を行い、チオールプロテアーゼ
阻害物質の著量生成蓄積された培養物を得る。
【0026】次に、培養物よりチオールプロテアーゼ阻
害物質を分離採取するには、該培養物の水抽出液または
培養濾液を非イオン性多孔性吸着樹脂に接触させて、チ
オールプロテアーゼ阻害物質を吸着せしめ、次いで該吸
着樹脂からチオールプロテアーゼ阻害物質を得る。
【0027】上記水抽出液は、培養物に水を3〜8容量
倍添加して攪拌し、固液分離して水抽出液を得る。液体
培養物の場合は、そのまま、または必要により水を添加
し固液分離して培養濾液または水抽出液を得る。
【0028】上記培養物には、プロテアーゼ、アミラー
ゼ、リパーゼ等が、夾雑酵素として含有されるので、こ
れらの酵素を失活するためチオールプロテアーゼ阻害物
質の分離採取(精製手段)の途中において加熱処理工程
を加える。この時期として特に水抽出液(固体培養物の
場合)、または培養濾液(液体培養物の場合)の時が好
ましい。この加熱処理は、夾雑酵素の失活と共に、水抽
出液または培養濾液中に溶解している熱変性物質を凝集
析出させ、固液分離の際に容易に取り除けるようになる
ので好ましい。
【0029】上記加熱処理の条件は60℃以上、且つ1
5分以上を採用することが必要で、とくに70〜100
℃で、20〜40分加熱することが好ましい。この加熱
処理によって、チオールプロテアーゼ阻害物質は耐熱性
が高いのでほとんど失活することはない。
【0030】次に、本発明において用いられる非イオン
性多孔性吸着樹脂としては、多孔性で広い吸着表面積を
有し、かつ非イオン性のスチレン−ジビニルベンゼン集
合体、フェノールーホルマリン樹脂等の合成樹脂あるい
は活性炭等が挙げられる。具体的には、三菱化成工業株
式会社製の商品名ダイヤイオンHP10、同HP20、
同HP21、同HP30、同HP40、同HP50、同
社製の商品名セパビーズSP800、同SP825、同
SP850、同SP875、同SP205、同SP20
6および同SP207等、Rohm&Haas社製の商
品名アンバーライトXAD−1、同XAD−2、同XA
D−4、ダイヤモンドシャムロック社製の商品名デュオ
ライトS樹脂、IMACTI社製の商品名イマクティS
yn−42、同44、同46並びに和光純薬社製の商品
名、精製白サギ活性炭が挙げられる。
【0031】培養物の水抽出液または培養濾液と非イオ
ン性多孔性吸着樹脂の接触処理は、回分式および連続式
のいずれを用いてもよい。回分式の場合は、処理液に対
し非イオン性多孔片吸着樹脂を数%〜数十容量%、好ま
しくは15〜25容量%、そのまま、好ましくは時々攪
拌しつつ、1〜数時間、好ましくは2〜3時間接触させ
る。また連続式の場合は、非イオン性多孔性吸着樹脂を
カラムに充填し、SV1〜10、好ましくは2〜5の流
速で通流接触させる。このように、処理液を先ず非イオ
ン性多孔性吸着樹脂と接触させ、単離すべきチオールプ
ロテアーゼ阻害物質を該非イオン性多孔性吸着樹脂に吸
着させる。
【0032】次に、必要により水または低濃度の親水性
有機溶媒水溶液で洗滌した後、該非イオン性多孔性吸着
樹脂に、溶離力の強い親水性有機溶媒、例えばエタノー
ル、メタノール、アセトンまたは該親水性有機溶媒と水
との混合溶液を用いて溶離させる。あるいは、酸または
アルカリ水溶液を用いて溶離させてもよい。この酸溶液
としては、塩酸、硫酸、酢酸等の酸溶液が挙げられ、ま
たアルカリ溶液としては水酸化ナトリウム、アンモニア
等の水溶液が挙げられる。
【0033】溶離の方法としては、回分式の場合は非イ
オン性多孔性吸着樹脂に、上記親水性有機溶媒、該有機
溶媒と水との混合溶液、または酸、アルカリの水溶液
を、少なくとも2容量倍以上、好ましくは3〜5容量倍
を混和し、そのまま、好ましくは時々攪拌しつつ、1〜
数時間、好ましくは2〜3時間接触させ、単離すべきチ
オールプロテアーゼ阻害物質を溶離させる。一方、連続
式の場合には、チオールプロテアーゼ阻害物質を吸着し
た非イオン性多孔性吸着樹脂が充填されたカラムに、上
記と同じ溶媒をSV1〜10、好ましくは2〜5の流速
で通流接触させ、単離すべきチオールプロテアーゼ阻害
物質を溶離させる。
【0034】こうして得られた溶離液は、次いで常法に
より減圧下に保持し該溶媒を完全に除去し、粉末状の残
留物をチオールプロテアーゼ阻害物質として得る。必要
により、この物質を再度水に溶解した後、上述の操作を
繰り返してもよい。このようにして本発明のチオールプ
ロテアーゼ阻害物質を調製することができる。
【0035】次に、チオールプロテアーゼ阻害物質を用
いた食品の製造の1つとしてチオールプロテアーゼの問
題のあるすり身製造に関する検討を行った。すり身を調
製するには、該阻害物質をすり身あるいは水産練製品の
製造に当り浸漬処理または添加混練処理等の接触処理
し、以下通常のすり身あるいは水産練製品の製造法に従
い製造すればよい。
【0036】即ち、胞子虫が寄生したジェリーミート化
する魚を原料として、頭および内蔵を除去し、これを洗
滌、水きり後、ローラー式採肉機等を用いて魚肉部分を
採肉する。次いで水晒しを少なくとも1回以上行い、回
転篩などで脱水する。リファイナー、裏漉機などにか
け、さらに小骨や鱗等を除去する。その後スクリュープ
レスで脱水して得られた脱水肉にチオールプロテアーゼ
阻害物質と要すればさらに糖類縮合リン酸塩類等を加
え、サイレントカッター等で均一に混和、混練する。混
練肉はすり身充填機等を用いて成形包装し、生すり身,
あるいはさらに急速凍結して冷凍すり身を得る。
【0037】なお、水晒し工程の際に、水晒し液にチオ
ールプロテアーゼ阻害物質を含ませて魚肉にチオールプ
ロテアーゼ阻害物質を接触処理しても良く、その場合は
後の混練り時に該阻害物質を加えても、加えなくともよ
い。阻害物質の添加は、粉、液状でも良く、必要添加料
は存在するプロテアーゼ活性に依存するが、0.01〜
3%が良く、好ましくは、0.03〜1%である。もち
ろん、他のプロテアーゼ阻害物質を含む卵白、プラズ
マ、乳成分、植物抽出物等とも混合して使用しても良
い。
【0038】次に、水産練製品を調製するには、上記で
得られる生または冷凍すり身を原料とし、生すり身の場
合はそのままで、そして冷凍すり身の場合は解凍した後
に、それぞれ食塩と調味料、要すれば澱粉、油脂、色
素、植物蛋白、ゼラチン、結着剤、香辛料等を加えて、
らい潰機またはサイレントカッターを用いてらい潰、混
練し、成形し、包装し、または包装せずに加熱すること
により、魚肉練製品を得る。あるいは魚肉すり身製造に
当り、チオールプロテアーゼ阻害物質を混和することな
く魚肉すり身を製造し、この該阻害物質不含の魚肉すり
身を原料とし、水産練製品のらい潰工程時に初めてチオ
ールプロテアーゼ阻害物質を添加してもよい。
【0039】ジェリーミートの原因となる胞子虫とは、
原生動物(Protozoa)の胞子虫亜門(Spor
ozoa)、極曩胞子虫亜網(Cnidosporid
ae)に属する粘液胞子虫目(Myxosporid
a)のユニカプスラ(Unicapsla)属、クロロ
ミクサム(Chloromyxum)属、クドア(Ku
doa)属等に属するもので、胞子虫の中でも本来魚類
を主とする冷血脊椎動物に特有の寄生虫であり人間に寄
生することはない。従ってジェリーミートを食しても人
体には無害であり、魚を生食する習慣がある我が国では
無意識のうちにジェリーミートの初期のものを食してい
るはずであるが、これに原因する健康障害は発生してお
らず、まして加熱工程のある練製品では食品衛生的に全
く心配のないものである。
【0040】本発明においてジェリーミートを有する魚
類としては、前記した胞子虫の寄生によりジェリーミー
トの発生したいずれの魚類も用いられ、これらの魚類は
その寄生の程度に差はあるが種々の魚種、または全世界
の水域にわたって分布しており、たとえば北太平洋産、
南太平洋(チリー、ペルー沖など)産および南大西洋
(アフリカ、南米)産メルルーサ類、豪州海域のバラク
ータ類、北太平洋の黄金カレイ、オヒョウ、アブラガレ
イ等のカレイ類、太平洋、大西洋、インド洋および日本
近海のマグロ、カジキ類などがあげられる。
【0041】このようにして、本発明によればアスペル
ギルス・オリゼーまたは同・ソーヤを培養することによ
ってチオールプロテアーゼ阻害物質を効率良く製造し、
また培地中にチオールプロテアーゼ阻害物質を著量生産
せしめ、さらにまた、培地からチオールプロテアーゼ阻
害物質を効率良く分離採取することができる。
【0042】また、本発明によれば、従来すり身または
水産練製品の原料としては、全く利用価値のなかった胞
子虫寄生魚肉、いわゆるジェリーミートを有する魚肉で
もチオールプロテアーゼ阻害物質を、該すり身あるいは
水産練製品の任意の製造工程、例えば水晒し工程または
混練り工程あるいはまたこの両工程において添加するこ
とにより、胞子虫の寄生のない通常の魚肉を用いたと同
様の生または冷凍魚肉すり身を製造することができる。
【0043】またさらに、ジェリーミートを有する魚肉
に該阻害物質を添加せずに製造した生または冷凍すり
身、または混練時に該阻害物質を添加して製造した生ま
たは冷凍すり身を原料とし、水産練製品のらい潰工程時
に食塩と共に該阻害物質を添加、らい潰することによ
り、市販の魚肉練製品と同等の足を有し、かつ何ら味
臭、色等に悪影響を与えることがない魚肉練製品を得る
ことができる。
【0044】また本発明を利用することによって通常の
魚肉から得られた魚肉すり身にジェリーミートを有する
魚肉を混和し、これに該阻害物質を添加混練りすること
により品質の安定した魚肉練製品を得ることができる。
この結果、水産資源の有効利用がはかれるという水産食
品業界において画期的な効果を奏する。
【0045】
【実施例】以下、実施例を示して本発明をより具体的に
説明する。
【0046】実施例1 (チオールプロテアーゼ阻害物質生産菌を液体培養して
チオールプロテアーゼ阻害物質を連続式精製手段により
得る例) (1)チオールプロテアーゼ阻害物質生産菌 アスペルギルス・オリゼーATCC20386 アスペルギルス・オリゼーATCC22788 アスペルギルス・オリゼーIAM2720 アスペルギルス・ソーヤATCC42249 アスペルギルス・ソーヤATCC20245 アスペルギルス・ソーヤATCC11906 アスペルギルス・ヤポニカスIFO4060(特公昭6
1−42552)
【0047】 (2)液体栄養培地の組成 米粉 0.75キログラム(5重量%) 水 15リットル pH 6.0 (3)培養 30リットル容ジャーファーメンターに、上記液体栄養
培地15リットル(消泡剤として醤油油15ミリリット
ル添加)を入れ、120℃、20分間加熱殺菌し冷却し
た後、上記微生物を接種し、30℃で4日間、攪拌しつ
つ培養(攪拌数300rpm、通気量15リットル/
分)し、液体培養物を得た。
【0048】(4)チオールプロテアーゼ阻害物質の分
離採取 この培養により、目的物であるチオールプロテアーゼ阻
害物質は、液体部分に蓄積され、また該阻害物質は耐熱
性を有しているため、先ず液体培養物を75℃で20分
間加熱処理して、菌体、プロテアーゼなどの夾雑物を熱
失活させて取除き、ついで珪藻土濾過して、目的とする
チオールプロテアーゼ阻害物質の含有する培養濾液を得
る。 (5)非イオン性多孔性吸着樹脂処理工程 多孔性で広い吸着表面積を有し、かつ非イオン性のスチ
レン−ジビニルベンゼン重合体、「セパビーズSP82
5(三菱化成社製)」3リットルをカラムに充填し、こ
のカラムの上部より、上記培養濾液約15リッペルをS
V3の流速で通流接触させて、単離すべきチオールプロ
テアーゼ阻害物質を該非イオン性多孔性吸着樹脂に吸着
させる。 (6)チオールプロテアーゼ阻害物質の溶離工程 チオールプロテアーゼ阻害物質を吸着した非イオン性多
孔性吸着樹脂に、水を通流し十分洗滌した後、30%エ
タノール水溶液約10リットルを上記カラムの上部か
ら、SV2の流速で通流接触させ、該有機溶媒中に該阻
害物質を溶離させる。
【0049】(7)最終製品の回収 こうして得られた溶離液は、50℃の湯せん上で加温し
つつ、ロータリーエバポレーターにより減圧下に保持し
溶媒を完全に除去し、淡褐色の粉末状のチオールプロテ
アーゼ阻害物質約15グラムを得た。
【0050】(8)組成の異なる培地を用いたチオール
プロテアーゼ阻害物質の製造例 本実施例のチオールプロテアーゼ阻害物質の調製例にお
いて、チオールプロテアーゼ阻害物質生産菌として、ア
スペルギルス・オリゼーATCC20386を用い、ま
た培地として「米粉5重量%、pH6.0」を用いる代
わりに、「小麦ふすま5重量%、pH6.0」を用いる
以外は全く同様にして、黒褐色の粉末状のチオールプロ
テアーゼ阻害物質約15グラムを得た。上記で得られた
チオールプロテアーゼ阻害物質の活性を測定するため
に、後述の実施例5に記載された方法によりすり身を製
造し、また実施例6に記載された方法により蒲鉾を製造
し、製品蒲鉾のジェリー強度、折り曲げ、歯切れ試験を
行い、本発明のチオールプロテアーゼ阻害物質の作用効
果を確認する試験を行った。
【0051】チオールプロテアーゼ阻害物質の産生能
は、以下の様にして比較できる。実施例5の方法によ
り、パシフィックホワイティングより調整したすり身中
には、カマボコ製造時の加熱工程でタンパク質が豆腐状
になる程強力なチオールプロテアーゼが含まれている。
チオールプロテアーゼ阻害物質を添加すると、阻害物質
の効果(作用)に対応して、カマボコゲルのジェリー強
度が増大する。従って、この場合のカマボコゲルのジェ
リー強度は、チオールプロテアーゼ阻害物質の活性(阻
害活性×量)を示すものとみなすことができる。この時
のチオールプロテアーゼ阻害物質を、各アスペルギルス
のチオールプロテアーゼ阻害物質の産生能とした。表1
の結果で、ジェリー強度の高いものは、チオールプロテ
アーゼ阻害物質の産性能が高いと言える。その結果をま
とめて表1に示す。
【0052】なお表1におけるチオールプロテアーゼ阻
害物質の活性は、上記で得られた蒲鉾について、ジェリ
ー強度を求めその値として表示した。ジェリー強度は、
フードチェッカー(サン科学製)、5ミリメートル径の
球状プランジャーを用いて測定し値を求めた。折り曲げ
試験は直径(3cm)の円筒形蒲鉾を厚さ3mmに輪切
りし、得られた円形蒲鉾について折り曲げ試験を行い、
その結果AA:中心線に添って先ず半分に折曲げ、これ
をさらに等分に折曲げても亀裂を生じないもの、A:半
分に折り曲げて、該折り曲げ線に亀裂を生じないもの、
B:半分に折り曲げて、該折り曲げ線の一部にわずかに
亀裂を生ずるもの、C:半分に折り曲げて該折り曲げ線
の半分位亀裂を生ずるもの、D:半分に折り曲げて該折
り曲げ線のほとんど全部に添って亀裂を生ずるものを、
それぞれ示す。歯切れ試験は、下記の基準で判定した。
即ち、5:極めて良好、4:良好、3:普通、2:やや
不良、1:不良をそれぞれ示す。
【0053】
【表1】
【0054】上記表1の結果から、麹徽類としては種々
のアスペルギルス属微生物が挙げられるが、このような
中でも特に、アスペルギルス・オリゼーおよびアスペル
ギルス・ソーヤは、いずれの区分もジェリー強度が非常
に高い値を示し、折り曲げ試験、歯切れ試験の結果か
ら、弾力性が強く、歯切れが良好で、好適な蒲鉾が得ら
れることから、極めて活性の高いチオールプロテアーゼ
阻害物質を生産することが判る。また上記微生物を、米
を使用した培地で培養すると、それ以外の原料例えばふ
すまを使用した場合に比べて、チオールプロテアーゼ阻
害物質の生産量を著しく増加できることが判る。また培
養濾液を非イオン性多孔性吸着樹脂に接触させることに
より、チオールプロテアーゼ阻害物質を容易に分離採取
することができる。また本発明で得られるチオールプロ
テアーゼ阻害物質は、胞子虫が寄生し、ジェリーミート
を有する魚肉に対し、極めて小量添加するだけで練製品
原料として使用できる冷凍すり身を得ることができるこ
とが判る。
【0055】なお、従来チオールプロテアーゼ阻害物質
の生産能が知られているアスペルギルス・ヤポニカスの
微生物、例えばIFO 4060は、チオールプロテア
ーゼ阻害物質生産能が非常に低く、従って、これを用い
て練製品を製造すると、弾力性が低く、折り曲げると容
易に破断し、また歯切れが悪く、食感が不足した練製品
となり、工業的に利用するには十分でないことが判る。
【0056】実施例2 (固体培養によりチオールプロテアーゼ阻害物質の製造
例) (1)チオールプロテアーゼ阻害物質生産微生物 アスペルギルス・オリゼーATCC20386 (2)固体栄養培地の組成 精白粳米 1キログラム pH 無調整 (3)培養 精白梗米1キログラムを、常法により洗米、浸漬、水切
りした後、蒸煮して蒸米とし、これに上記チオールプロ
テアーゼ阻害物質生産菌を接種し、28〜38℃で3日
間培養し、米麹を得た。 (4)水抽出液の調製 上記米麹に5容量倍の水道水を加え、攪拌しつつ室温で
5時間チオールプロテアーゼ阻害物質を抽出処理した。
【0057】本発明の目的物であるチオールプロテアー
ゼ阻害物質は、抽出液中に含有され、また該阻害物質は
耐熱性を有しているため、先ず該抽出液を85℃で15
分間加熱処理して、菌体、プロテアーゼなどの夾雑物を
熱失活させて取除き、次いで遠心分離(3,000g
で、15分)しチオールプロテアーゼ阻害物質を含有す
る上清(水抽出液)を採取した。次いで、上記実施例1
と全く同様に、(5)非イオン性多孔性吸着樹脂処理工
程、(6)チオールプロテアーゼ阻害物質の溶離工程、
(7)最終製品の回収工程をこの順序で行い淡褐色の粉
末状のチオールプロテアーゼ阻害物質約20グラムを得
た。この結果から、固体培養においても液体培養の場合
と同様にチオールプロテアーゼ阻害物質を得ることがで
きることが判る。
【0058】実施例3 (非イオン性多孔性吸着樹脂として活性炭を使用したチ
オールプロテアーゼ阻害物質の製造例)上記実施例1の
チオールプロテアーゼ阻害物質の製造例において、チオ
ールプロテアーゼ阻害物質生産菌として、アスペルギル
ス・オリゼーATCC20386を用い、また非イオン
性多孔性吸着樹脂、「セパビーズSP825(三菱化成
社製)」を用いる代わりに、活性炭「精製白サギ活性炭
(和光純薬社製)」を用いる以外は、全く同様にして、
淡褐色の粉末状のチオールプロテアーゼ阻害物質約15
グラムを得た。この結果から、非イオン性多孔性吸着樹
脂として活性炭を使用しても同様にチオールプロテアー
ゼ阻害物質を効率良く得ることができることが判る。
【0059】実施例4 (回分式精製手段によるチオールプロテアーゼ阻害物質
の製造例)上記実施例1のチオールプロテアーゼ阻害物
質の製造例において、チオールプロテアーゼ阻害物質生
産菌として、アスペルギルス・オリゼーATCC203
86を用い、得られたチオールプロテアーゼ阻害物質の
含有する液体培養濾液100容量部に、非イオン性多孔
性吸着樹脂「セパビーズSP825(三菱化成社製)」
を20容量部混和し、攪拌しつつ室温で5時間接触処理
し、目的とするチオールプロテアーゼ阻害物質を、該吸
着樹脂に吸着させ、ついで濾紙濾過して、吸着樹脂を分
離回収し、この樹脂20容量部に対し、30%エタノー
ル水溶液を60容量部混和し、攪拌しつつ5時間抽出し
濾紙濾過して、チオールプロテアーゼ阻害物質を含有す
るエタノール水溶液を溶離した。
【0060】次いで、このエタノール水溶液を50℃の
湯せん上で加温しつつ、ロータリーエバポレーターによ
り減圧下に保持し溶媒を完全に除去し、淡褐色の粉末状
のチオールプロテアーゼ阻害物質約15グラムを得た。
この結果から、精製手段として回分式手段を用いてもチ
オールプロテアーゼ阻害物質を得ることができることが
判る。
【0061】実施例5 (すり身の製造例)胞子虫が寄生している北東太平洋産
メルルーサ(Pacific whiting,Mer
luccius productus)のフイレー20
0kgから採肉した。次にこの魚肉について2倍量の冷
水で水晒しし脱水し更にもう一度水晒しし、脱水を繰り
返しリファイナー処理後、スクリュープレスにて脱水
し、脱水肉105kgを得た。この脱水肉10kgづつ
9区分に分け、そしてその第1区分(対照区)には水4
gを、そして第2〜9区分(本発明区)にはそれぞれ実
施例1に記載された微生物起源のチオールプロテアーゼ
阻害物質4gと、ソルビトール0.8kgと、縮合リン
酸塩0.03kgとを添加し、均一に混練りし、対照お
よび本発明のすり身を得た。
【0062】実施例6 (蒲鉾の製造例)実施例5で得られた、対照区および本
発明区のすり身をそれぞれ10kgづつポリプロピレン
製の袋に入れて密封包装した後、−30℃で急速凍結
し、−25℃で6カ月間冷凍保存した。このようにして
得られた冷凍すり身を解凍処理し、それぞれについて練
製品の製造を行った。即ち、冷凍すり身1.0kgに対
し、食塩30g、バレイショデンプン30gを添加し、
混練後、直径3.0cmの円筒形ポリ塩化ビニリデンチ
ューブに詰め、その両端を結紮し、湯で90℃40分加
熱した後、冷却し蒲鉾を得た。
【0063】実施例7 (練製品の製造例)実施例5で得られた本発明のすり身
を用い蒸しかまぼこを製造した。すなわち実施例5の第
2区分すり身48.5部(部とは重量部を意味する)に
グルテン4.4部、バレイショデンプン11.0部、塩
1.5部、調味料8.3部、水26.3部を加え、らい
かい機で混合後カマボコ状に製型し、85℃の蒸気中で
30分間蒸した。この蒸しカマボコは、歯切れが良く、
良好な食感を有していた。また、実施例5の第1区分す
り身(対照)を用い上記方法にて蒸しカマボコを試作し
たが、歯ごたえが悪く、練製品としては不適な食感であ
った。
【0064】
【発明の効果】アスペルギルス属に属するチオールプロ
テアーゼ阻害物質高生産能を有する微生物を提供するこ
とができる。チオールプロテアーゼ阻害物質を効率良く
製造することができる。微生物由来のチオールプロテア
ーゼ阻害物質を用いた食品の製造法を提供することがで
きる。従来すり身または水産練製品の原料としては、全
く利用価値のなかった胞子虫寄生魚肉、いわゆるジェリ
ーミートを有する魚肉にチオールプロテアーゼ阻害物質
を、胞子虫の寄生のない通常の魚肉を用いたと同様の生
または冷凍魚肉すり身を製造することができる。微生物
由来のチオールプロテアーゼ阻害物質からなる食品また
は水産物の品質改良剤を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // A61K 35/74 G 7431−4C (C12N 1/14 C12R 1:69) (C12N 1/14 C12R 1:66) (72)発明者 木村 郁夫 東京都八王子市北野町559−6 日本水産 株式会社中央研究所内 (72)発明者 佐藤 昇良 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内 (72)発明者 北尾 悟 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内 (72)発明者 堀内 達雄 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チオールプロテアーゼ阻害物質高生産能
    を有するアスペルギルス属に属する微生物。
  2. 【請求項2】 アスペルギルス属に属する微生物がアス
    ペルギルス・オリゼーまたはアスペルギルス・ソーヤで
    ある請求項1記載の微生物。
  3. 【請求項3】 アスペルギルス属に属するチオールプロ
    テアーゼ阻害物質高生産能を有する微生物を栄養培地に
    培養し、該培養物からチオールプロテアーゼ阻害物質を
    高濃度に採取することを特徴とするチオールプロテアー
    ゼ阻害物質の製造法。
  4. 【請求項4】 アスペルギルス属に属する微生物がアス
    ペルギルス・オリゼーまたはアスペルギルス・ソーヤで
    ある請求項3記載のチオールプロテアーゼ阻害物質の製
    造法。
  5. 【請求項5】 栄養培地として米単独または米を添加し
    た培地を用いる請求項3または請求項4記載のチオール
    プロテアーゼ阻害物質の製造法。
  6. 【請求項6】 さらに培養物の水抽出液または培養濾液
    を加熱処理し、次に、非イオン性多孔性吸着樹脂に接触
    させて、チオールプロテアーゼ阻害物質を吸着せしめ、
    次いで該樹脂に吸着したチオールプロテアーゼ阻害物質
    を得る工程を付加した請求項3、請求項4または請求項
    5記載のチオールプロテアーゼ阻害物質の製造法。
  7. 【請求項7】 すり身の製造に当り、請求項3、請求項
    4、請求項5または請求項6記載の製造法で得られたチ
    オールプロテアーゼ阻害物質を原料魚肉に添加すること
    を特徴とするすり身の製造法。
  8. 【請求項8】 水産練製品の製造において、請求項3、
    請求項4、請求項5または請求項6記載の製造法で得ら
    れたチオールプロテアーゼ阻害物質を原料魚肉に添加す
    ることを特徴とする水産練製品の製造法。
  9. 【請求項9】 請求項3、請求項4、請求項5または請
    求項6記載の製造法で得られたチオールプロテアーゼ阻
    害物質からなることを特徴とするチオールプロテアーゼ
    が問題となって高品質の製品とならない食品または水産
    物の品質改良剤。
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