JPH07322648A - 静電アクチュエータ - Google Patents

静電アクチュエータ

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Publication number
JPH07322648A
JPH07322648A JP13096194A JP13096194A JPH07322648A JP H07322648 A JPH07322648 A JP H07322648A JP 13096194 A JP13096194 A JP 13096194A JP 13096194 A JP13096194 A JP 13096194A JP H07322648 A JPH07322648 A JP H07322648A
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JP
Japan
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stator
linear electrodes
electrode
mover
wire
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Pending
Application number
JP13096194A
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English (en)
Inventor
Susumu Yashiro
進 屋代
Toshiro Higuchi
俊郎 樋口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Publication date
Application filed by Sekisui Chemical Co Ltd filed Critical Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 固定子・移動子の接触表面を摩耗しにくい凹
凸面として、摩擦や粘着抵抗を軽減し、もって、低電圧
で大きな力密度を安定的持続的に発生させる。 【構成】 固定子3Aには、3相に接続される複数の線
状電極2a,2b,2c,…が所定の電極ピッチで相順
に繰り返し配列されている。固定子3Aの表面には表面
抵抗率の高い絶縁フィルムからなる移動子4が載置され
ている。固定子3Aは、導電性線材2'a,2'b,2'
c,…と、絶縁性線材5,5,…とが互いに縦糸・横糸
となって織り込まれてなる電極織物と、この電極織物の
両面に被覆された絶縁フィルム32a,32bとからな
っていて、上記電極織物の移動子4と相対向する側の面
に被覆された絶縁フィルムの表面には、上記電極織物に
おける織目の凹凸形状又は"縦糸・横糸"の起伏が転写さ
れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、静電力を利用して電
気から力を取り出す静電アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】静電アクチュエータは、電磁力の代わり
に、静電力、すなわち、3相の帯状の電極を所定の間隔
で多数並べた固定子と、この固定子の表面に接するよう
に配置された移動子との間で働く電荷と電荷の間の吸引
・反発力を利用して駆動力を発生する装置であるので、
構造が単純なため、小型化・軽量化が容易である。加え
て、電極ピッチを微細にして小型化すればするほど、原
理的に、大きな力及び力密度を抽出し得るという特性を
有することから、近年、OA機器、ロボット、搬送機
械、光学機器、玩具等の小型駆動源として、高い関心を
集めている。
【0003】ところで、静電アクチュエータでは、電圧
切換操作を繰り返す毎に、移動子が電極1ピッチずつ連
続移動する。そして、電圧切換操作の直後には、静電気
の反発作用が生じ、移動子が瞬間的に浮上して摩擦を防
止するので、大出力が抽出されるのである。しかしなが
ら、固定子の移動子と接触する側の表面及び移動子の固
定子と接触する側の表面(以下、簡単に、移動子・固定
子の接触側表面ともいう)が平滑面である場合には、固
定子と移動子との間に大きな負圧が働いて、空気が充分
に進入せず(すなわち、移動子が充分に浮上せず)、こ
の結果、両者間に大きな摩擦力が働き、移動子が円滑に
移動しないという問題が起こる。加えて、移動子・固定
子の接触側表面には、常温、常湿状態でも少なくともn
mオーダの厚さで水分が吸着されており、この吸着水
が、表面張力の働きで、固定子と移動子とを粘着させる
粘着剤の役目をするので、移動子が、ますます、移動し
にくい状態となっている。このような摩擦力や粘着力に
打ち勝つ程の駆動力を得るには、固定子の電極に高い駆
動電圧を印加することが必要となるが、高い駆動電圧
は、しばしば電極間に絶縁破壊を生じさせ、装置の耐久
性を阻害する要因であるので、妥当ではない。
【0004】この問題を解消する手段として、例えば、
特開平5−22959号公報等に記載されているよう
に、移動子・固定子の接触側表面のうち、少なくとも一
方側を粗面化するか、または、当該接触側表面に潤滑材
層を設けることが提案されている。同公報等には、粗面
を得るには、平滑面に無機粒子等を付着させるか、サン
ドブラストで平滑面を荒らせば良いことが開示されてい
る。また、好適な潤滑材層として、テフロンやシリコン
オイル等が例示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、静電ア
クチュエータでは、上記したように、電圧切換操作の直
後には移動子の固定子からの反発浮上が生じる一方、電
圧切換操作の直前には反対に移動子と固定子との強い吸
引接触が生じている。このことは、移動子と固定子との
間で静電吸引による接触(擦り合い)と静電反発による
浮上とを繰り返しながら移動子が移動することを意味
し、したがって、上記公報記載の静電アクチュエータが
そうであるように、移動子・固定子の接触側表面が無機
粒子の付着による粗面では、無機粒子が剥離してしま
い、また、サンドブラストによる機械的切削による粗面
では、凸部は摩耗し、結局、いずれの場合も、摩擦係数
の増大に直結する移動子・固定子の接触側表面の平滑化
を早期に招いてしまうという欠点がある。一方、移動子
・固定子の接触側表面に潤滑材層を設けることは、摩擦
の軽減に役立つので好ましいが、テフロンコーティング
では、高温で焼付する必要があり、固定子材料、移動子
材料が高温焼付に耐えられないという難点がある。ま
た、シリコンオイル等の液体潤滑材等は、一般に燃え易
く、固定子の電極間で絶縁破壊等が生じた場合、引火の
危険があるために不適当である。
【0006】この発明は、上述の事情に鑑みてなされた
もので、固定子の移動子と接触する表面及び/又は移動
子の固定子と接触する表面に摩耗しにくい凹凸、あるい
は摩耗しても早期には摩擦の増加を招かない凹凸を多数
有する静電アクチュエータを提供することを目的として
いる。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1記載の発明は、複数相に接続される複数の
線状電極が一方向又は互いに直交する二方向に所定の電
極ピッチで相順に繰り返し配列されてなる固定子と、該
固定子の表面に配置され、上記複数の線状電極に相毎に
印加する電圧を変化させることで静電駆動力を付与され
る移動子とを備えてなる静電アクチュエータであって、
上記固定子は、上記一方向に配列された複数の線状電極
となる裸の又は絶縁被覆付きの導電性線材と、絶縁性線
材又は上記一方向に直交する方向に配列された複数の線
状電極ともなる絶縁被覆付きの導電性線材とが互いに縦
糸・横糸となって織り込まれてなると共に、5μm角〜
3.0mm角の織目の孔を有することを特徴としてい
る。
【0008】また、請求項2記載の発明は、複数相に接
続される複数の線状電極が一方向又は互いに直交する二
方向に所定の電極ピッチで相順に繰り返し配列されてそ
れぞれなる固定子と移動子とを有し、これら固定子と移
動子との複数の線状電極に相毎に印加する電圧を変化さ
せることで上記移動子に静電駆動力を付与する静電アク
チュエータであって、少なくとも上記移動子は、上記一
方向に配列された複数の線状電極となる裸の又は絶縁被
覆付きの導電性線材と、絶縁性線材又は上記一方向に直
交する方向に配列された複数の線状電極ともなる絶縁被
覆付きの導電性線材とが互いに縦糸・横糸となって織り
込まれてなると共に、5μm角〜3.0mm角の織目の
孔を有することを特徴としている。
【0009】また、請求項3記載の発明は、複数相に接
続される複数の線状電極が一方向又は互いに直交する二
方向に所定の電極ピッチで相順に繰り返し配列されてな
る固定子と、該固定子の表面に配置され、上記複数の線
状電極に相毎に印加する電圧を変化させることで静電駆
動力を付与される移動子とを備えてなる静電アクチュエ
ータであって、固定子は、上記一方向に配列された複数
の線状電極となる裸の又は絶縁被覆付きの導電性線材
と、絶縁性線材又は上記一方向に直交する方向に配列さ
れた複数の線状電極ともなる絶縁被覆付きの導電性線材
とが互いに縦糸・横糸となって織り込まれてなる電極織
物と、該電極織物の少なくとも移動子と相対向する側の
面に被覆された絶縁層とからなると共に、電極織物の移
動子と相対向する側の面に被覆された上記絶縁層の表面
には、電極織物における織目の凹凸形状又は上記"縦糸
・横糸"の起伏が転写されていることを特徴としてい
る。
【0010】また、請求項4記載の発明は、複数相に接
続される複数の線状電極が一方向又は互いに直交する二
方向に所定の電極ピッチで相順に繰り返し配列されてそ
れぞれなる固定子と移動子とを有し、これら固定子と移
動子との複数の線状電極に相毎に印加する電圧を変化さ
せることで上記移動子に静電駆動力を付与する静電アク
チュエータであって、少なくとも上記移動子は、上記一
方向に配列された複数の線状電極となる裸の又は絶縁被
覆付きの導電性線材と、絶縁性線材又は上記一方向に直
交する方向に配列された複数の線状電極ともなる絶縁被
覆付きの導電性線材とが互いに縦糸・横糸となって織り
込まれてなる電極織物と、該電極織物の少なくとも移動
子と相対向する側の面に被覆された絶縁層とからなると
共に、上記電極織物の固定子と相対向する側の面に被覆
された上記絶縁層の表面には、電極織物における織目の
凹凸形状又は上記"縦糸・横糸"の起伏が転写されている
ことを特徴としている。
【0011】また、請求項5記載の発明は、上記絶縁層
の表面に転写された織目の凹部の形状が、10μm角〜
3.0mm角の大きさであることを特徴としている。さ
らにまた、請求項6記載の発明は、請求項1,2,3又
は4記載の静電アクチュエータであって、上記線状電極
の線径Dと、上記電極ピッチPとの比D/Pが、0.0
1〜0.95の範囲であることを特徴としている。
【0012】
【作用】請求項1記載及び2の構成において、固定子又
は移動子は、線状電極間に5μm角〜3.0mm角の織
目の孔を有している。織目の孔が、5μm角以下である
と空気が充分に進入しないため摩擦を軽減できず、一
方、3.0mm角以上であると電極間が離れすぎて、大
きな力密度を得ることが困難になるが、5μm角〜3.
0mm角の範囲なら、空気は裏面からでも進入でき、移
動子を充分に浮上させるので、摩擦が緩和される。加え
て、固定子又は移動子が織物構造で、移動子と固定子と
の接触の態様が、点接触となるので、表面張力に起因す
る吸着水の粘着力は著しく弱められる。それ故、請求項
1及び2記載の構成によれば、摩擦と粘着抵抗が一段と
緩和され、移動子の移動が円滑に行われるので、低電圧
で大出力を抽出できる。また、織物構造の本質から内奥
部まで凸凹であり、少々削り取られても接触側表面が平
滑化することはないので、耐久性が格段に向上する。ま
た、導電性線材及び絶縁性線材を断面円形のものを用い
れば、滑りが良くなるので、摩耗が一段と緩和される。
なお、請求項2記載の構成においては、移動子のみに限
らず、固定子にも、5μm角〜3.0mm角の織目の隙
間を有する織物組織を用いても良い。
【0013】また、請求項3及び4記載の構成におい
て、固定子又は移動子は、線状電極が導電性線材からな
り、導電性線材は、固定子・移動子の接触側表面を凹凸
面にすると共に、線状電極が規則的に並ぶ電極配列体を
得るために、電極織物として織り込まれている。該電極
織物には、電極ピッチを不動状態に固定するために絶縁
層が設けられている。該絶縁層の表面には、少なくとも
織目の凹凸形状又は"縦糸・横糸"の起伏が転写されてい
る。それ故、請求項3又は4記載の構成によれば、空気
は充分に進入でき、移動子を適度に浮上させることがで
きる。なお、織目の転写形状である凹部の大きさは、1
0μm角〜3.0mm角の範囲が好適である。
【0014】さらにまた、請求項1,2,3又は4記載
の構成において、線状電極の線径Dと、電極ピッチPと
の比D/Pが、0.01〜0.95の範囲にあるとき
が、それぞれの目的に応じた大出力を抽出し得る。D/
Pが0.01以下だと、電極間が離れすぎて、微弱な静
電力しか発生せず、D/Pが0.95以上であると、絶
縁破壊の頻度が高まり、線状電極が破損し易くなる。
【0015】
【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例につ
いて説明する。 ◇第1実施例 図1は、この発明の第1実施例である織物組織を利用し
た誘導電荷形の静電アクチュエータの構成を示す斜視図
であり、同図に示すように、この例の静電アクチュエー
タ1は、3相の線状電極2a,2b,2c,…が互いに
平行にかつ相順に繰り返し並べられた固定子3と、該固
定子3の表面(接触側表面)に配置され、線状電極2
a,2b,2c,…に直交する方向に駆動力を取り出す
移動子4とからなっている。
【0016】上記固定子3は、図2に示すように、線径
80μmの裸の導電性線材2'a,2'b,2'c,…
と、同じく線径80μmの絶縁性繊維5,5,…とを、
互いに縦糸・横糸として、図示せぬ織機を用いて、所定
のピッチで1本ずつ互い違いに織り込んでストライプ状
の電極織物として構成され、織り込まれた導電性線材
2'a,2'b,2'c,…が線状電極2a,2b,2
c,…を構成する。ここで、好適な導電性線材2'a,
2'b,2'c,…(線状電極2a,2b,2c,…)と
しては、銅線、アルミ線、ステンレス線、ニクロム線、
金線、銀線、あるいはチタン線等を挙げることができ、
また、好適な絶縁性繊維5,5,…としては、ポリエス
テル繊維、軟質ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊
維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド
繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリルニトリル繊維、
ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、
あるいはポリフッ化エチレン繊維を挙げることができ
る。
【0017】また、電極ピッチ(導電性線材間距離)P
及び絶縁ピッチ(絶縁性繊維間距離)が、いずれも、4
00μmに設定されていて、この結果、織目の隙間が3
20μm角、線状電極2a,2b,2c,…の線径D
(=80μm)と電極ピッチP(=400μm)の比D
/Pが、0.2となっている。なお、電極ピッチ等
は、"縦糸"を織機にかけ、"縦糸"を通す糸孔のピッチを
変えることで調節され、また、"横糸"については、巻取
り速度を速めれば速めるほど、ピッチは狭くなり、逆
に、巻取り速度を遅くすれば、ピッチは広くなる。これ
らの線状電極2a,2b,2c,…は、図1及び図4に
示すように、2つおきに直列又は並列に結線されて3相
の固定子電極群を構成する。図では、A相の固定子電極
群に属する線状電極には2aの符号が、B相の固定子電
極群に属する線状電極には2bの符号が、また、C相の
固定子電極群に属する線状電極には2cの符号が付され
ている。また、上記移動子4は、表面抵抗率が1014Ω
/□に調整され、厚さ10μm〜50μm、面積100
cm2の方形のPVC(ポリ塩化ビニル)フィルム、P
ET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリプ
ロピレンフィルム、あるいはポリイミドフィルム等の表
面抵抗率の高い絶縁フィルムからなっている。
【0018】次に、図4を参照して、上記構成の静電ア
クチュエータ1の動作について説明する。まず、同図
(a)に示すように、駆動回路6(図1)を作動させ
て、A相の固定子電極群(線状電極2a,2a,…)に
正電圧+Vを、B相の固定子電極群(線状電極2b,2
b,…)に負電圧−Vを、C相の固定子電極群(線状電
極2c,2c,…)にゼロ電圧0Vをそれぞれ印加す
る。すると、同図(b)に示すように、始めは電荷の存
在していなかった移動子4内に微弱な電流が流れ、線状
電極2a,2b,2c,…と相対向する移動子4の部位
に、線状電極2a,2b,2c,…の電荷と逆符号の電
荷が誘導(充電)されて平衡状態になる。この電荷は、
説明の都合上、同図(b)に示す鏡像電荷で置き換える
ことができる。それ故、移動子4には、図中垂直下向き
の吸引力が働くので、移動子4は、摩擦により固定子3
上に保持される(吸引フェイズ)。
【0019】次に、同図(c)に示すように、正電圧、
負電圧、ゼロ電圧を印加する線状電極2a,2b,2
c,…を例えば図中右にずらす。すなわち、電圧を切り
替えて、A相の固定子電極群(線状電極2a,2a,
…)にゼロ電圧0Vを、B相の固定子電極群(線状電極
2b,2b,…)に正電圧+Vを、C相の固定子電極群
(線状電極2c,2c,…)に負電圧−Vをそれぞれ印
加すると、線状電極2a,2b,2c,…の電荷は瞬時
に入れ替わるが、移動子4の電荷は、抵抗率が高いため
変化に時間を要し、電圧を切り替えた直後は、元の電荷
の状態を保持する。それ故、固定子3・移動子4の電荷
間の静電力により、移動子4に対し右向きの駆動力が発
生する。このとき、垂直吸引力は減少ないし反発力とな
る(反発フェイズ)。ここで、固定子3の織目は通気状
態となっているので、移動子4の反発浮上を妨げること
となる負圧は発生しない。また、移動子4は固定子3の
多数の点(織物組織の凸部)に接触しているため、吸着
水の表面張力に起因する粘着抵抗はほとんど軽微であ
る。それ故、移動子4は充分に浮上でき、摩擦が減少す
るので、同図(d)に示すように、移動子4は迅速に電
極1ピッチ分右に動く。
【0020】移動子4は、電極1ピッチ分右に動くと、
消えかけた電荷(同図(c))が、再び充電されて平衡
状態になるので、図中垂直下向きの吸引力が働き、固定
子3に接触する(吸引フェイズ)。次に、同図(e)に
示すように、正電圧、負電圧、ゼロ電圧を印加する線状
電極2a,2b,2c,…をさらに右にずらす操作を行
う。すなわち、電圧を切り替えて、A相の固定子電極群
(線状電極2a,2a,…)に負電圧−Vを、B相の固
定子電極群(線状電極2b,2b,…)に0Vを、C相
の固定子電極群(線状電極2c,2c,…)に正電圧+
Vをそれぞれ印加すると、線状電極2a,2b,2c,
…の電荷は再び瞬時に入れ替わるが、移動子4の電荷
は、このときも、抵抗率が高いため変化に時間を要し、
電圧を切り替えた直後は、元の電荷の状態を保持する。
それ故、このときも、固定子3・移動子4の電荷間の静
電力により、移動子4に対し右向きの駆動力が発生す
る。同時に、垂直吸引力は減少ないし反発力となるが
(反発フェイズ)、上記したように、固定子3の織目は
通気状態となっており、また、移動子4と固定子3とは
点接触しているので、移動子4の反発浮上を妨げる負圧
も粘着抵抗も働かない。したがって、移動子4は充分に
浮上でき、摩擦が減少するので、同図(f)に示すよう
に、移動子4はさらに電極1ピッチ分右に動く。移動子
4は、さらに電極1ピッチ分右に動くと、消えかけた電
荷(同図(e))が、再び充電されて平衡状態になるの
で、図中垂直下向きの吸引力が働き、固定子3に接触す
る(吸引フェイズ)。
【0021】以下、駆動回路6が、正電圧、負電圧、ゼ
ロ電圧を印加する線状電極2a,2b,2c,…を右に
ずらす態様の電圧切換操作を繰り返す度に、移動子4は
順次電極1ピッチずつ右に移動し、電圧の切換操作を停
止すると、垂直下向きの吸引力が働いて、移動子4は、
摩擦により保持されるので、正確に位置決めされて停止
する。一方、正電圧、負電圧、ゼロ電圧を印加する線状
電極2a,2b,2c,…を左にずらす電圧切換操作を
繰り返すと、移動子4は順次電極1ピッチずつ左に移動
する。移動子4は、軽量な上、単位質量当たりの誘導荷
電量が多いので、加速され易く、したがって、電圧切替
操作の繰り返しを早めることにより、高速移動を達成で
きる。
【0022】上記構成によれば、低い駆動電圧で、大き
な力密度(g/cm2)を得ることができる。具体的に
は、駆動電圧500Vで、単位面積あたり0.1gを牽
引できた。また、織物構造の本質から固定子の内奥部ま
で凸凹であり、少々削り取られても移動子と接触する側
の表面が平滑化することはないので、耐久性が格段に向
上する。また、使用する導電性線材及び絶縁性線材は、
一般に断面が円形であるので、滑りが良く、それ故、固
定子のみならず、移動子の摩耗も進まない。
【0023】また、上述の実施例では、織目の隙間が3
20μmである場合について述べたが、織目の隙間を様
々に変えて実験を行った結果、織目の隙間が5μm角〜
3.0mm角の範囲でなら、それぞれの目的に応じて、
円滑な駆動が可能であるとの結論が得られた。しかしな
がら、織目の隙間が5μm角以下の場合には空気の進入
が鈍り、充分な浮上力が生じないために、一方、3.0
mm角以上の場合には、電極間が離れすぎ、大きな静電
力が働かないために、いずれも、大きな力密度を得るこ
とができなかった。
【0024】また、上述の実施例では、線状電極2a,
2b,2c,…の線径Dと電極ピッチPの比D/Pが、
0.2である場合について述べたが、これについても、
様々のD/Pについて実験を行った結果、D/Pが0.
01〜0.95の範囲なら、それぞれの目的に応じた出
力を抽出し得るとの結論が得られた。D/Pが0.01
以下だと、電極間が離れすぎて、微弱な静電力しか発生
せず、D/Pが0.95以上であると、絶縁破壊の頻度
が高まり、線状電極が破損し易くなる。
【0025】さらにまた、上述の実施例では、織目(隙
間)の縦横比が1対1の場合であるが、これについて
も、電極ピッチと絶縁ピッチとを変えることにより、織
目(隙間)の縦横比を様々に変えて実験を行った。この
結果、織目(隙間)の縦横比としては、0.1〜10の
範囲が好適であることが確認された。この範囲を越える
と、織物としての組織を維持できず、電極ピッチが不定
形の状態になった。
【0026】◇第2実施例 図5は、この発明の第2実施例である織物組織を利用し
た誘導電荷形の静電アクチュエータの構成を示す斜視
図、また、図6は同静電アクチュエータに用いられる固
定子の構成を示す一部拡大平面図である。この例の静電
アクチュエータ1Aでは、固定子7は、多数の線状横電
極9a,9b,9c,…と多数の線状縦電極9x,9
y,9z,…とが横方向と縦方向とにそれぞれ相順に繰
り返し配列されて全体として格子状に構成され、線状横
電極9a,9b,9c,…と線状縦電極9x,9y,9
z,…との双方に3相の駆動電圧を印加することによ
り、移動子4を2次元移動できるようにしている。な
お、この例(図5)において、第1実施例(図1)と同
一の構成各部については同一の符号を付してその説明を
省略する。
【0027】上記固定子7は、線径150μmの絶縁被
覆付き導電性線材9'a,9'b,9'cと、同じく線径
150μmの絶縁被覆付き導電性線材9'x,9'y,
9'z,…とを互いに縦糸・横糸として、1本ずつ互い違
いに平織して格子状の電極織物として構成され、一方の
方向(横方向)に織り込まれた導電性線材9'a,9'
b,9'c,…が線状横電極9a,9b,9c,…を、
他方の方向(縦方向)に織り込まれた導電性線材9'
x,9'y,9'z,…が線状縦電極9x,9y,9z,
…をそれぞれ構成する。ここで、好適な絶縁被覆付き導
電性線材9'a,9'x,…として、テフロン被覆電線
(例えば、80μmの電線の周囲を膜厚35μmのテフ
ロンで被覆したもの)、ポリエステル被覆電線、ポリ塩
化ビニル被覆電線、ポリエチレン被覆電線、ポリプロピ
レン被覆電線、ポリイミド被覆電線、ポリアミド被覆電
線、ポリウレタン被覆電線、ポリフッ化エチレン被覆電
線、あるいは絶縁ワニス被覆電線等を挙げることができ
る。
【0028】ここで、縦横の電極ピッチPは、いずれ
も、300μmに設定されていて、この結果、織目の隙
間が150μm角に、線状横(縦)電極9a,9b,9
c(9x,9y,9z)の線径D(=150μm)と電
極ピッチP(=300μm)の比D/Pが、0.5とな
っている。これらの線状横電極9a,9b,9c,…及
び線状縦電極9x,9y,9z,…は、図5に示すよう
に、2つおきに直列又は並列に結線されて、それぞれ3
相の固定子横(縦)電極群を構成する。図では、A相の
固定子横(縦)電極群に属する線状横(縦)電極には9
a(9x)の符号が、B相の固定子横(縦)電極群に属
する線状横(縦)電極には9b(9y)の符号が、ま
た、C相の固定子横(縦)電極群に属する線状横(縦)
電極には9c(9z)の符号が付されている。
【0029】次に、第2実施例の動作について説明す
る。上記構成において、固定子7上の移動子4を縦方向
(線状横電極9a,9b,9c,…に直交する方向)に
所定の距離移動させたい場合には、横電極駆動回路6A
を作動させて、3相の駆動電圧を線状横電極9a,9
b,9c,…に印加する。この後、電圧切換操作に応じ
て移動子4は縦方向に連続移動する。例えば、電圧切換
操作を10回行えば、移動子4は10電極ピッチ分だけ
縦方向に移動する(第1実施例の動作説明参照)。移動
子4の移動フェイズにおいて、固定子7の織目は通気状
態となっているので、反発フェイズ(第1実施例の動作
説明参照)における移動子4の反発浮上を妨げる負圧は
発生しない。また、移動子4は固定子7の多数の点(織
物組織の凸部)で支えられているため、吸着水の表面張
力に起因する粘着抵抗はほとんど軽微である。それ故、
移動子4は充分に浮上でき、摩擦が減少するので、移動
子4は迅速に電極10ピッチ分連続移動する。
【0030】次に、移動子4を横方向(線状縦電極9
x,9y,9z,…に直交する方向)に所定の距離移動
させたい場合には、縦電極駆動回路6Bを作動させて、
3相の駆動電圧を線状縦電極9x,9y,9z,…に印
加する。この後、電圧切換操作に応じて移動子4は横方
向に連続移動する。例えば、電圧切換操作を20回行え
ば、移動子4は20電極ピッチ分だけ横方向に移動す
る。
【0031】今度は、移動子4を斜め方向に所定の距離
移動させたい場合には、横電極駆動回路6A及び縦電極
駆動回路6Bを同時に作動させて、3相の駆動電圧を線
状横電極9a,9b,9c,…及び線状縦電極9x,9
y,9z,…に印加する。この後、それぞれの電圧切換
操作に応じて移動子4は斜めに連続移動する。例えば、
線状横電極9a,9b,9c,…に対する電圧切換操作
を10回、線状縦電極9x,9y,9z,…に対する電
圧切換操作を20回行えば、移動子4は10電極ピッチ
分だけ縦方向に進むと同時に、20電極ピッチ分だけ横
方向に進む。
【0032】このように、この第2実施例の構成によれ
ば、簡易な織物技術の転用のみで、容易に2次元電極を
作成でき、移動子の2次元移動が可能となる。しかも、
低い駆動電圧で、大きな力密度(g/cm2)を得るこ
とができる。具体的には、駆動電圧500Vで、単位面
積あたり0.12gを牽引できた。また、上述の実施例
では、織目の隙間が150μmである場合について述べ
たが、織目の隙間を様々に変えて実験を行った結果、第
1実施例の場合と同様に、織目の隙間が5μm角〜3.
0mm角の範囲でなら、それぞれの目的に応じて、円滑
な駆動が可能であるとの結論が得られた。しかしなが
ら、織目の隙間が、5μm角以下の場合には空気の進入
が鈍り、摩擦が軽減しないために一方、3.0mm角以
上の場合には、電極間が離れすぎ、大きな静電力が働か
ないために、いずれも、大きな力密度を得ることができ
なかった。
【0033】さらに、上述の実施例では、線状横(縦)
電極9a,9b,9c(9x,9y,9z)の線径Dと
電極ピッチPの比D/Pが、0.5である場合について
述べたが、これについても、様々のD/Pについて実験
を行った結果、第1実施例における実験結果と同様、D
/Pが0.01〜0.95の範囲なら、所望の出力を抽
出し得るとの結論が得られた。
【0034】◇第3実施例 図7は、この発明の第3実施例である誘導電荷形の静電
アクチュエータの構成を示す斜視図であり、この例の静
電アクチュエータ1Bが、第1実施例の静電アクチュエ
ータ1(図1)と大きく異なるところは、第1実施例の
固定子3を両側から一対の絶縁フィルムで挟持してこの
例の固定子3Aとした点である。すなわち、図8及び図
9に示すように、この例の固定子3Aは、第1実施例の
固定子3と略同一構成の電極織物31と、この電極織物
31をその両面から挟持する一対の絶縁フィルム32
a,32bと、これらの絶縁フィルム32a,32bを
接着して電極ピッチを不動状態にするための接着剤33
とから構成されている。上記電極織物31は、導電性線
材2'a,2'b,2'c,…の材質・線径、絶縁性繊維
5,5,…の材質・線径、電極ピッチ(導電性線材間距
離)P、絶縁ピッチ(絶縁性繊維間距離)、織目の隙間
等も第1実施例の固定子3と略同一に設定されている。
【0035】上記絶縁フィルム32a,32bには、表
面抵抗率が1015Ω/□以上の高分子フィルム(例えば
12μm厚)、好適にはPETフィルム、ポリプロピレ
ンフィルム、ポリイミドフィルム、軟質ポリ塩化ビニル
フィルム、ポリエチレンフィルム等が用いられる。ま
た、接着剤33としては、エポキシ系接着剤、アクリル
系接着剤、ブチルゴム、ブタジエン−スチレンゴム等の
合成ゴム、あるいは天然ゴム等が好適である。
【0036】固定子3Aを作製するには、まず、図示せ
ぬ織機を用いて、電極織物31を織りあげ、織りあげた
電極織物31を所望の寸法に裁断した後、絶縁フィルム
32bの上面に重ねて置く。次に、この状態を維持した
まま、電極織物31の上から接着剤33を微量塗布す
る。塗布された接着剤33は、電極織物31の織目から
下方の絶縁フィルム32bの図中上面にまで浸透する。
この後、別の絶縁フィルム32aを電極織物31の上に
重ねて置く。最後に、圧着機を用いて、絶縁フィルム3
2a/電極織物31/絶縁フィルム32bを加圧接着し
て、固定子3Aを完成させる。このとき電極織物31の
織目や起伏等の凹凸が図中上方の絶縁フィルム32aに
転写されるようにする。
【0037】上記構成によれば、第1実施例で示したと
略同様の効果を得ることができる。また、織物構造の本
質から充分凹凸があり、少々削り取られても移動子と接
触する側の表面が平滑化することはないので、耐久性が
格段に向上する。また、使用する導電性線材及び絶縁性
線材は、一般に断面が円形であるので、絶縁フィルム上
に転写された凹凸形状も丸みを帯びており、それ故、摩
耗が一段と緩和される。
【0038】この第3実施例においても、織目の隙間を
様々に変えて実験を行った結果、絶縁フィルムの表面に
転写された織目凹部の大きさが10μm角〜3.0mm
角の範囲でなら、それぞれの目的に応じて、円滑な駆動
が可能であるとの結論が得られた。ここで、第1実施例
においては、織目の隙間が5μm〜3.0mmの範囲が
円滑駆動範囲との結果が得られたが、この例では、織目
の通孔が閉塞されている分、空気の進入が不充分となる
効果が現れ、円滑駆動範囲が第1実施例の場合よりも幾
分狭められている。しかしながら、外力を受けても電極
ピッチが狂うことがない点で、第1実施例のそれよりも
優れている。
【0039】さらにまた、上述の実施例では、織目(隙
間)の縦横比が1対1の場合であるが、これについて
も、電極ピッチと絶縁ピッチとを変えることにより、織
目(隙間)の縦横比を様々に変えて実験を行った。この
結果、織目(隙間)の縦横比としては、0.1〜20の
範囲が好適であることが確認された。第1実施例のそれ
よりも、幾分、好適な範囲が広くなっているのは、絶縁
フィルムや接着剤で、電極ピッチを固定できるからであ
る。なお、第3実施例の変形例として、第2実施例の固
定子と同一構成の格子状の電極織物の両面を上述の一対
の絶縁フィルムで挟持したものを固定子として用いても
良い。
【0040】◇第4実施例 図10は、この発明の第4実施例である織物組織を利用
した交流駆動形の静電アクチュエータの構成を示す斜視
図である。この例の静電アクチュエータ1Cには、図1
0に示すように、移動子4Aにも線状電極を設けた点、
これに伴い、3相交流駆動方式を採用した点で、上述の
第1乃至第3実施例の静電アクチュエータと大きく異な
っている。
【0041】この例の固定子3Bは、第1実施例の固定
子3と略同一構成同一寸法同一形状の電極織物と、この
電極織物を挟持する一対の絶縁フィルム34a,34b
と、これらの絶縁フィルム34a,34bを接着する接
着剤とから構成されている点で、上述の第3実施例の固
定子3Aと同一構成であるが、図中上方の絶縁フィルム
34aが平滑面となっている点で第3実施例の固定子3
Aと相違する(すなわち、絶縁フィルム34aには、織
目や起伏の形状が転写されていない)。
【0042】移動子4Aは、図10に示すように、導電
性線材51'a,51'b,51'c,…を横糸(又は縦
糸)とし、絶縁性繊維8,8,…を縦糸(又は横糸)と
して、図示せぬ織機を用いて、所定のピッチで1本ずつ
互い違いに織りあげて行くことにより所望の広さに形成
され、このとき、織り込まれた導電性線材51'a,5
1'b,51'c,…が線状電極51a,51b,51
c,…とされる。この例においては、導電性線材51'
a,51'b,51'c,…として、固定子3B(3,3
A)のそれと同一のもの、すなわち、線径80μmの裸
の銅線、アルミ線、ステンレス線、ニクロム線、金線、
銀線、あるいはチタン線が、絶縁性繊維8,8,…とし
て、同じく線径80μmのポリエステル繊維、軟質ポリ
塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊
維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊
維、ポリアクリルニトリル繊維、ポリビニルアルコール
繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、あるいはポリフッ化エ
チレン繊維がそれぞれ用いられる。
【0043】また、電極ピッチP及び絶縁ピッチは、い
ずれも、固定子3Bと同一の400μmに設定されてい
て、この結果、織目の隙間が320μm角、線状電極5
1a,51b,51c,…の線径D(=80μm)と電
極ピッチP(=400μm)の比D/Pが、0.2とな
っている。これらの線状電極51a,51b,51c,
…は、2つおきに直列又は並列に結線されて3相の移動
子電極群を構成する。図10では、A相の移動子電極群
に属する線状電極には51aの符号が、B相の移動子電
極群に属する線状電極には51bの符号が、また、C相
の移動子電極群に属する線状電極には51cの符号が付
されている。
【0044】次に、図11及び図12を参照して、この
例の動作について説明する。固定子駆動回路6Cを作動
させて、図11に示すように、固定子3Bの線状電極2
a,2b,2c,…を周波数ω1/2π(角速度ω1)の
3相交流電圧で励起させると共に、移動子駆動回路6D
を作動させて、移動子4Aの線状電極51a,51b,
51c,…を周波数ω2/2π(角速度ω2)の3相交流
電圧で励起させる。この励起により、固定子3Bと移動
子4Aとのそれぞれの対向面上には、進行する電位の波
が発生する。すなわち、図12に示すように、固定子3
B上には、固定子座標系からみた進行速度u1が、 u1=(ω1/2π)λ である電位の波が発生し、一方、移動子4A上には、移
動子座標系からみた進行速度u2が、 u2=(ω2/2π)λ である電位の波が発生する。
【0045】このとき、固定子3Bの線状電極2a,2
b,2c,…と移動子4Aの線状電極51a,51b,
51c,…との間には絶対座標から見た2進行波の間の
位相差δによって決定される水平方向の駆動力が発生す
る。また、固定子3Bと移動子4Aとの間で相対向する
線状電極間に同極性の電圧が印加されているような位置
関係に移動子4A及び固定子3Bがあるときには、垂直
方向の浮上力が発生する。ここで、移動子4Aの織目は
通気状態となっているので、移動子4Aの反発浮上を妨
げることとなる負圧は発生しない。また、移動子4A
は、多数の点(織物組織の凸部)で固定子3Bに接触す
るため、吸着水の表面張力に起因する粘着抵抗はほとん
ど軽微である。それ故、移動子4Aは充分に浮上でき、
摩擦が減少するので、円滑に駆動される。また、移動子
4Aの負荷が一定であれば、位相差δは一定に保たれる
ので、移動子4Aは、2進行波の移動速度の差に等しい
移動速度uaで移動する。 ua=u1−u2=(ω1−ω2/2π)λ
【0046】この第4実施例の構成によれば、低い駆動
電圧で、大きな力密度(g/cm2)を得ることができ
る。具体的には、駆動電圧500Vで、単位面積あたり
0.1gを牽引できた。また、織物構造の本質から移動
子の内奥部まで凸凹であり、少々削り取られても移動子
の表面が平滑化することはないので、移動子の耐久性が
格段に向上する。また、使用する導電性線材及び絶縁性
線材は、一般に断面が円形であるので、滑りが良く、そ
れ故、移動子及び固定子の摩耗も一段と緩和される。ま
た、移動子の織目の隙間を様々に変えて実験を行った結
果、第1実施例の場合と同様に、円滑駆動範囲は、織目
の隙間が5μm角〜3.0mm角の範囲でることが判っ
た。さらに、上述の実施例では、移動子における線状電
極51a,51b,51c,…の線径Dと電極ピッチP
の比D/Pについても、様々のD/Pについて実験を行
った結果、D/Pが0.01〜0.95の範囲なら、所
望の出力を抽出し得るとの結論が得られた。さらにま
た、上述の実施例では、織目(隙間)の縦横比が1対1
の場合であるが、これについても、電極ピッチと絶縁ピ
ッチとを変えることにより、織目(隙間)の縦横比を様
々に変えて実験を行った。この結果、第1実施例におけ
る場合と同様に、織目(隙間)の縦横比としては、0.
1〜10の範囲が好適であることが確認された。この範
囲を越えると、織物としての組織を維持できず、電極ピ
ッチが不定形の状態になった。
【0047】なお、第4実施例の変形例として、(移動
子4Aに相当する)電極織物を一対の絶縁フィルムで挟
持し、固定子と相対向する側の絶縁フィルム表面に織目
や起伏を転写させたものを移動子としても良く、このよ
うな構成の移動子を用いれば、上述した第3実施例と略
同様の効果を得ることができる。また、別の変形例とし
て、固定子の移動子に相対向する側の面にも、織目や起
伏の凹凸又はこれらの転写形状があっても良い。
【0048】以上、この発明の実施例を図面により詳述
してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるもの
ではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変
更等があってもこの発明に含まれる。例えば、線材は、
単線に限らず、撚り線でも良い。固定子又は移動子の織
り方は、平織に限定されない。導電性線材の線径は、8
0μm、150μmのものに、限定されない。必要な位
置決め精度、電極ピッチ、織目の孔等を総合的に勘案し
て、例えば、5μm、10μm、20μm、40μm、
60μm、100μm、200μm、あるいは、これら
以外の線径を選択できる。同様に、絶縁性線材も80μ
mのものに限定されない。また、導電性線材は、金属線
に限らず、導電性高分子材料又は導電性ガラス繊維でも
良い。導電性線材を被覆する絶縁被覆材の厚さは、上述
の第2実施例では、線径の1/2であるが、これに限ら
ず、線径の1/10〜1/5もあれば、充分である。ま
た、上述の実施例では、電極織物の両面に絶縁フィルム
を設けて固定子(第3実施例)又は移動子(第4実施例
の変形例)とする場合について述べたが、いずれか、一
方は、省略できる。また、誘導電荷形の移動子は、絶縁
フィルムのみからなる場合に限らず、高抵抗体層と絶縁
体層との積層体からなるものでも良い。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の静電ア
クチュエータは、固定子の移動子と接触する表面及び/
又は移動子の固定子と接触する表面に摩耗しにくい凹
凸、あるいは摩耗しても早期には摩擦の増加を招かない
凹凸を多数有するものなので、長期にわたって、固定子
と移動子との間の摩擦や粘着抵抗を低減でき、低電圧で
も大きな力密度を安定的持続的に得ることができる。そ
れ故、この発明の静電アクチュエータを搭載する装置の
耐久性を一段と向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の第1実施例である誘導電荷
形の静電アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図2】同静電アクチュエータに用いられる固定子の構
成を部分的に拡大して示す概略斜視図である。
【図3】同固定子の構成を寸法を付して示す平面図であ
る。
【図4】同静電アクチュエータの動作原理を説明するた
めの説明図である。
【図5】この発明の第2実施例である織物組織を利用し
た誘導電荷形の静電アクチュエータの構成を示す斜視図
である。
【図6】同静電アクチュエータに用いられる固定子の構
成を一部拡大して示す一部拡大平面図である。
【図7】この発明の第3実施例である誘導電荷形の静電
アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図8】同静電アクチュエータに用いられる固定子の構
成を分解して示す分解斜視図である。
【図9】同静電アクチュエータの構成を概略示す断面図
である。
【図10】この発明の第4実施例である織物組織を利用
した交流駆動形の静電アクチュエータの構成を示す斜視
図である。
【図11】同静電アクチュエータの動作原理を説明する
ための説明図である。
【図12】同静電アクチュエータの動作原理を説明する
ための説明図である。
【符号の説明】
1,1A,1B,1C 静電アクチュエータ 2a,2b,2c 固定子の線状電極 2'a,2'b,2'c 導電性線材 3,7,3A,3B 固定子 4,4A 移動子 5,8 絶縁性線材 6 駆動回路 6A 横電極駆動回路 6B 縦電極駆動回路 6C 固定子駆動回路 6D 移動子駆動回路 9a,9b,9c 線状横電極(線状電極) 9x,9y,9z 線状縦電極(線状電極) 9'a,9'b,9'c 絶縁被覆付き導電性線材 9'x,9'y,9'z 絶縁被覆付き導電性線材 31 電極織物 32a,32b,34a,34b 絶縁フィルム
(絶縁層) 51a,51b,51c 移動子の線状電極 51'a,51'b,51'c 導電性線材

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数相に接続される複数の線状電極が一
    方向又は互いに直交する二方向に所定の電極ピッチで相
    順に繰り返し配列されてなる固定子と、該固定子の表面
    に配置され、前記複数の線状電極に相毎に印加する電圧
    を変化させることで静電駆動力を付与される移動子とを
    備えてなる静電アクチュエータであって、 前記固定子は、前記一方向に配列された複数の線状電極
    となる裸の又は絶縁被覆付きの導電性線材と、絶縁性線
    材又は前記一方向に直交する方向に配列された複数の線
    状電極ともなる絶縁被覆付きの導電性線材とが互いに縦
    糸・横糸となって織り込まれてなると共に、5μm角〜
    3.0mm角の織目の孔を有することを特徴とする静電
    アクチュエータ。
  2. 【請求項2】 複数相に接続される複数の線状電極が一
    方向又は互いに直交する二方向に所定の電極ピッチで相
    順に繰り返し配列されてそれぞれなる固定子と移動子と
    を有し、これら固定子と移動子との複数の線状電極に相
    毎に印加する電圧を変化させることで前記移動子に静電
    駆動力を付与する静電アクチュエータであって、 少なくとも前記移動子は、前記一方向に配列された複数
    の線状電極となる裸の又は絶縁被覆付きの導電性線材
    と、絶縁性線材又は前記一方向に直交する方向に配列さ
    れた複数の線状電極ともなる絶縁被覆付きの導電性線材
    とが互いに縦糸・横糸となって織り込まれてなると共
    に、5μm角〜3.0mm角の織目の孔を有することを
    特徴とする静電アクチュエータ。
  3. 【請求項3】 複数相に接続される複数の線状電極が一
    方向又は互いに直交する二方向に所定の電極ピッチで相
    順に繰り返し配列されてなる固定子と、該固定子の表面
    に配置され、前記複数の線状電極に相毎に印加する電圧
    を変化させることで静電駆動力を付与される移動子とを
    備えてなる静電アクチュエータであって、 前記固定子は、前記一方向に配列された複数の線状電極
    となる裸の又は絶縁被覆付きの導電性線材と、絶縁性線
    材又は前記一方向に直交する方向に配列された複数の線
    状電極ともなる絶縁被覆付きの導電性線材とが互いに縦
    糸・横糸となって織り込まれてなる電極織物と、該電極
    織物の少なくとも前記移動子と相対向する側の面に被覆
    された絶縁層とからなると共に、 前記電極織物の移動子と相対向する側の面に被覆された
    前記絶縁層の表面には、前記電極織物における織目の凹
    凸形状又は前記"縦糸・横糸"の起伏が転写されているこ
    とを特徴とする静電アクチュエータ。
  4. 【請求項4】 複数相に接続される複数の線状電極が一
    方向又は互いに直交する二方向に所定の電極ピッチで相
    順に繰り返し配列されてそれぞれなる固定子と移動子と
    を有し、これら固定子と移動子との複数の線状電極に相
    毎に印加する電圧を変化させることで前記移動子に静電
    駆動力を付与する静電アクチュエータであって、 少なくとも前記移動子は、前記一方向に配列された複数
    の線状電極となる裸の又は絶縁被覆付きの導電性線材
    と、絶縁性線材又は前記一方向に直交する方向に配列さ
    れた複数の線状電極ともなる絶縁被覆付きの導電性線材
    とが互いに縦糸・横糸となって織り込まれてなる電極織
    物と、該電極織物の少なくとも固定子と相対向する側の
    面に被覆された絶縁層とからなると共に、 前記電極織物の前記固定子と相対向する側の面に被覆さ
    れた前記絶縁層の表面には、前記電極織物における織目
    の凹凸形状又は前記"縦糸・横糸"の起伏が転写されてい
    ることを特徴とする静電アクチュエータ。
  5. 【請求項5】 前記絶縁層の表面に転写された前記織目
    の凹部の形状が、10μm角〜3.0mm角の大きさで
    あることを特徴とする請求項3又は4記載の静電アクチ
    ュエータ。
  6. 【請求項6】 前記線状電極の線径Dと、前記電極ピッ
    チPとの比D/Pが、0.01〜0.95の範囲である
    ことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の静電ア
    クチュエータ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6191518B1 (en) 1997-05-12 2001-02-20 Nec Corporation Microactuator and method of manufacturing the same

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