JPH07317796A - 等速自在継手用のブーツ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 一層安価でかつ簡易迅速に等速自在継手へ組
付可能ならしめる。 【構成】 等速自在継手Ｊの外輪Ｈの外周面に、断面形
状が凹溝形状の掛止部４を形成し、掛止部４に嵌合可能
な凸形状の被掛止部５をブーツ１１の大径部６の内周面
６ａに形成する。大径部６に外輪Ｈの開口端面３に対面
する段部６ｂを形成し、段部６ｂから筒状の鋼板７を一
体的に構成する。鋼板７に、大径部６の段部６ｂに沿う
ように折曲部７ａを形成し、外輪Ｈの開口端面３と当接
する部分を除いて、全体をブーツ１１内に埋込む。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、各種産業機械等に用い
られる等速自在継手を被覆するブーツに係り、従前より
も一層安価で簡易な組付等を期待すべく開発された等速
自在継手用のブーツに関する。

【０００２】

【従来の技術】等速自在継手は自動車あるいは自動二輪
車等において動力を伝達するために用いられ、駆動軸と
従動軸とを連結し両者が所定角度をなしている場合でも
回転動力を等速度で伝達できるように構成されている。
また、この等速自在継手の内部に砂塵等が侵入するのを
防止するため、駆動軸と等速自在継手との間をゴム材料
又は樹脂材料で一体成形されたブーツで被覆するのが一
般的である。図４は、クロスグルーブジョイントに適用
される従来例を示す。このブーツ２１は、筒状のブーツ
アダプタ２２に固定される大径部２３と駆動軸（例えば
シャフト）Ｓに固定される小径部２４との間に屈曲部２
５が形成されている。このブーツ２１の小径部２４がバ
ンド１２によってシャフトＳの溝部Ｓａに締着され、ブ
ーツアダプタ２２の鍔部２２ａがゴムパッキン２６を介
して外輪Ｈへボルト止めされる。

【０００３】また、図５は、ダブルオフセットジョイン
トに適用される従来例を示す。このブーツ３１自体は前
述したクロスグルーブジョイント用のものと同構成であ
る。ただし本例の場合、ブーツアダプタ３２を取付ける
外輪Ｈの外周面に環状溝３３ａ，３３ｂを形成し、環状
溝３３ａにＯリング３４を嵌合した後、ブーツアダプタ
３２の大径部３３を環状溝３３ｂにかしめ加工してい
る。

【０００４】なお、図４及び図５中、符号Ｂは等速自在
継手内のボール、符号Ｃはケージ及び符号Ｒは内輪を示
す。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前記従来例によれば、
ブーツアダプタ２２，３２と等速自在継手Ｊの外輪Ｈと
の間からグリース等が漏洩するのを防止するため、ゴム
パッキン２６あるいはＯリング３４を両者の間に介在さ
せなければならない。また、ブーツアダプタ２２を外輪
Ｈにボルト止めしたり、環状溝３３ｂにかしめる作業に
は、専用の設備及び工具が必要な上に、相応数の作業者
が必要であった。さらに、ブーツ２１，３１等を自動的
に等速自在継手Ｊに組付ける装置の開発は、設備が大掛
かりなものとなるため費用面から妥当ではない。

【０００６】加えて、ブーツ２１，３１を確実にシャフ
トＳに固定するためには、バンド１２を使用しなければ
ならず、ブーツアダプタを使用しない場合は、外輪Ｈ側
に固定する大径用のものと、シャフト側に固定する小径
用のものの２種類が必要である。

【０００７】本発明の等速自在継手用のブーツは、かか
る課題を解決すべく提案されたもので、部品点数の省略
化並びに組付構造及び組付工程数の簡略化を図ることに
より一層の低価格化を達成することを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の等速自在継手用
のブーツは、前記課題の解決と目的達成のため、等速自
在継手の外輪に固定される大径部とシャフトに固定され
る小径部との間に屈曲部を設けた可撓性あるブーツであ
って、少なくとも前記大径部をこのブーツの形成材料よ
り剛性の高い材料からなる補強板と一体的に構成したこ
とを特徴としている。

【０００９】また、本発明の等速自在継手用のブーツ
は、前記外輪の外周面に形成された掛止部に嵌合可能な
被掛止部を大径部の内周面に構成したことを特徴として
いる。さらに、本発明の等速自在継手用のブーツは、金
属製の補強板を内部に埋込んで一体的に成形してもよ
く、より具体的には前記補強板を屈曲部近傍まで延在さ
せて構成してもよい。

【００１０】

【作用】本発明の等速自在継手用のブーツは、補強板と
一体的に構成されたブーツの大径部を等速自在継手の外
輪の外周面に嵌合すると、補強板の嵌合力によって、ブ
ーツが外輪に確実に固定される。

【００１１】また、上記外輪に掛止部を設け、上記大径
部に被掛止部を設けて嵌合させることにより、前記嵌合
作用と相俟って外輪から大径部が外れるのを確実に防止
する。

【００１２】さらに、補強板を可撓性材料内に埋込むこ
とにより、補強板が被覆されて持久性が高められ、等速
自在継手を密閉する作用も向上される。

【００１３】加えて、補強板を屈曲部近傍まで延在させ
た場合は、屈曲部近傍の剛性を高める作用を奏し、回転
時に発生する遠心力によって屈曲部が異常変形するのを
抑制する作用も奏する。

【００１４】

【実施例】次に本発明の第１実施例を図１及び図２を参
照しながら説明する。図１は、本実施例を等速自在継手
に組付ける前の状態を示す断面側面図である。この等速
自在継手Ｊ用のブーツ１は、概略すると、ゴム材料又は
樹脂材料等の可撓性材料によって、等速自在継手Ｊの外
輪Ｈに固定される大径部６とシャフトＳに固定される小
径部９との間に屈曲部１０を設けて構成される。

【００１５】より詳細には、等速自在継手Ｊの外輪Ｈの
外周面に、断面凹溝形状の掛止部４を形成し、この掛止
部４に嵌合可能な断面凸形状の被掛止部５をブーツ１の
大径部６の内周面６ａに形成する。ブーツ１の大径部６
は、他の部分よりも厚みをもって形成され、その内径を
外輪Ｈの外径よりもやや小さく構成する。この大径部６
に、外輪Ｈの開口端面３に対面する段部６ｂを形成し、
この段部６ｂから前記被掛止部５を囲む筒状の補強板７
を一体的に構成する。この補強板７は、ブーツ１の形成
材料よりも剛性の高い材料で形成するが、好ましくは鋼
板を使用し、図２に示すように、大径部６の段部６ｂに
沿うように折曲部７ａを形成する。鋼板７は、外輪Ｈの
開口端面３と当接する部分を除き、ブーツ１を可撓性材
料により一体成形する際にブーツ１内部に埋込む。

【００１６】小径部９は、シャフトＳの溝部Ｓａに嵌合
される厚みを以て構成され、密閉性及び嵌着性を担保す
るため、小径部９の内径をシャフトＳの溝部Ｓａの外径
よりもやや小さく構成する。

【００１７】また、屈曲部１０は、回転時に前記小径部
９をシャフトＳに追従させるやすくするため、やや肉薄
に形成し弾性をもたせる。等速自在継手Ｊの構成等は従
来例と同様であるので、図４あるいは図５に附した符号
と同一符号を図２に附して説明を省略する。

【００１８】図２は、本実施例を等速自在継手Ｊに組付
けた状態を示す断面側面図である。このブーツ１は、次
のようにして等速自在継手Ｊに組付けられる。

【００１９】ブーツ１の大径部６の段部６ｂを、図１中
矢印方向から外輪Ｈの開口端面３に向けて圧入装置（図
示せず）により押圧し、鋼板７を外輪Ｈの開口端面３と
当接させて装着する。

【００２０】このとき、ブーツ１内の鋼板７は、大径部
６の外側方向に拡径されながら、大径部６の被掛止部５
が外輪Ｈの外周面に沿って外輪Ｈの掛止部４まで案内さ
れ嵌合される。

【００２１】被掛止部５が掛止部４に嵌合した後は、鋼
板７の嵌合力にブーツ１が外輪Ｈから外れるのを防止す
る作用を奏する。

【００２２】また、鋼板７をブーツ１内に埋込むことに
より、ブーツ１の剛性が高められると共に鋼板７も被覆
されて錆の発生を防止でき、等速自在継手Ｊ内部を確実
に外部から密閉する作用を奏する。

【００２３】このように、本実施例によれば、シール部
材であるパッキンあるいはＯリング等を省略できるた
め、きわめて安価にブーツ１を提供できる効果を有す
る。

【００２４】また、鋼板７を可撓性材料で被覆すること
で、防錆加工が不要となり安価でありながら耐久性が一
層向上する効果も得られる。

【００２５】さらに、ブーツアダプタを使用することな
くブーツ１の大径部６を外輪Ｈに嵌合するだけでよいた
め、従来必要であったボルト止め工程やブーツアダプタ
端部のかしめ工程等が一切不要となり、迅速かつ簡便な
取付が可能となる。そのため、完成品である等速自在継
手Ｊを一層低価格に資することができる。

【００２６】特に、シャフトＳと外輪Ｈとの角度が小さ
く、シャフトＳの回転数も低い場合に上記効果が大であ
り、シャフトＳと外輪Ｈとの角度が１０度以下でシャフ
トＳの回転数７５０ｒｐｍ以下の使用において、バンド
を全く使用しなくても上記シール性等の機能を支障なく
奏することが確認されている。

【００２７】次に本発明の第２実施例を図３を参照しな
がら説明する。図３は、本実施例を等速自在継手に組付
けた状態を示す断面側面図である。

【００２８】このブーツ１１は、上記第１実施例の補強
板（鋼板）を屈曲部１０近傍まで延在して構成する。例
えば、鋼板１７を折曲部１７ａの端部からブーツ１１の
形状に沿って小径部９側に延在させ、屈曲部１０の端部
１０ａ内でブーツ１１の中心方向に第２の折曲部１７ｂ
をさらに形成している。また、本実施例では、ブーツ１
１の小径部９の外周面にバンド１２の取付部９ａを形成
する。本実施例のその他の構成は、第１実施例と略同様
であるので、図２に附した符号と同一符号を図３に附し
て説明を省略する。

【００２９】本実施例によっても、第１実施例と略同様
の作用及び効果が得られるが、鋼板１７を小径部９側に
さらに延在したため、高速回転時におけるブーツ１１の
膨張を抑制でき、鋼板１７の第２の折曲部１７ｂでブー
ツ１１の屈曲部１０の異常変形を防止する作用を奏す
る。

【００３０】そのため、本実施例によれば、等速自在継
手Ｊの外輪Ｈにブーツ１１の大径部６側を確実に固定で
きる一方、バンド１２を併用することにより小径部９側
もシャフトＳに確実に固定できる。その結果、シャフト
Ｓの回転数が高速である場合や外輪Ｈとのなす角度が高
角度の時及びシャフトＳが長スライドする時等において
特に好適であり、ブーツ１１がシャフトＳの溝から脱落
するのを未然に防止できる。

【００３１】なお、上述したブーツ１の小径部９にバン
ド１２の取付部９ａを形成して、バンド１２を併用して
もよく、ブーツ１あるいはブーツ１１内の屈曲部１０を
蛇腹形状に構成してもよい。また、補強板として各実施
例とも鋼板７，１７を使用したが、これに限定されず、
ブーツ１の形成材料よりも高い剛性を有する他の素材を
使用できる。

【００３２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の等速自在
継手用のブーツによれば、その大径部が補強板と一体化
されているため、補強板の嵌合力を利用して簡易かつ迅
速に等速自在継手の外輪に取付けることができる。その
結果、ブーツバンド等の部品を省略することができ、組
付作業も簡便となりコストを安価にできるという効果を
有する。

【００３３】また、外輪と大径部にそれぞれ掛止部と被
掛止部を形成した場合は、両者が嵌合しあうことにより
外輪から大径部が外れるのを未然に防止でき、等速自在
継手の内部を外部から確実に遮断できるという効果を有
する。

【００３４】また、鋼板製の補強板を可撓性材料の内部
に埋込むことにより、防錆性を高めブーツの持久性も向
上できるという効果を有する。

【００３５】さらに、補強板を屈曲部近傍まで延在させ
た場合は、大径部の剛性が一層高まり、高速回転時にお
いてブーツが異常変形するのを抑制できる等の効果を有
する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例を等速自在継手に組付ける
前の状態を示す断面側面図。

【図２】本発明の第１実施例を等速自在継手に組付けた
状態を示す断面側面図。

【図３】本発明の第２実施例を等速自在継手に組付けた
状態を示す断面側面図。

【図４】従来のブーツ及びブーツアダプタ等の一例を示
す断面側面図。

【図５】従来のブーツ及びブーツアダプタ等の一例を示
す断面側面図。

【符号の説明】

１，１１ 等速自在継手用のブーツ ４ 掛止部 ５ 被掛止部 ６ 大径部 ７ 補強板 ９ 小径部 １０ 屈曲部 Ｈ 外輪 Ｒ 内輪 Ｓ シャフト

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】等速自在継手の外輪に固定される大径部と
   シャフトに固定される小径部との間に屈曲部を設けた可
   撓性あるブーツであって、少なくとも前記大径部をこの
   ブーツの形成材料より剛性の高い材料からなる補強板と
   一体的に構成したことを特徴とする等速自在継手用のブ
   ーツ。
2. 【請求項２】外輪の外周面に形成された掛止部に嵌合可
   能な被掛止部を大径部の内周面に構成したことを特徴と
   する請求項１記載の等速自在継手用のブーツ。
3. 【請求項３】金属製の補強板を内部に埋込んで一体的に
   成形した請求項１及び２記載の等速自在継手用のブー
   ツ。
4. 【請求項４】補強板を屈曲部近傍まで延在させた請求項
   １、２及び３記載の等速自在継手用のブーツ。