JPH07313601A - スライディングカテーテル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 カテーテル管に対するスライド管の軸方向移
動の操作性を向上させ、しかもカテーテル管内の密封性
を損なうことがないスライディングカテーテルを提供す
ること。 【構成】 体腔３０内に挿入されるカテーテル管４と、
このカテーテル管４の内部に軸方向移動自在に装着され
るスライド管６と、このスライド管６の先端部に第１開
口端部８ａが接合され、カテーテル管４の先端部に第２
開口端部８ｂが接合される筒状のバルーン膜８と、カテ
ーテル管４の基端部に装着され、スライド管６のカテー
テル管４に対する相対的軸方向移動を案内しつつ、カテ
ーテル管４とスライド管６との間の空間の密封を保持す
るスリーブ１６とを有するスライディングカテーテル。
スリーブ１６の内周面形状が、スライド管６の外周に部
分的にのみ接触する形状であり、たとえば、その内周面
に、凸部２０が複数形成してある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、たとえば血管などの体
腔内に挿入し、きわめて狭い狭窄部、偏心した狭窄部あ
るいは蛇行した狭窄部または体腔内分岐部などでも、低
摩擦力で、しかも体腔内壁を傷つけることなく容易に通
過させることができるスライディングカテーテルに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】血管、消化管、卵管、尿管などの体腔内
の特定部位に、薬液あるいは輸液を供給したり、あるい
は体液の圧力を測定したりする目的で、スライディング
カテーテルが使用されている。スライディングカテーテ
ルは、体腔内に挿入されるカテーテル管と、このカテー
テル管の内部に軸方向移動自在に装着されるスライド管
と、このスライド管の先端部に第１開口端部が接合さ
れ、前記カテーテル管の先端部に第２開口端部が接合さ
れる筒状のバルーン膜とを有する。

【０００３】スライド管とカテーテル管との間の隙間に
圧力流体を封入した状態で、スライド管の基端部を操作
し、スライド管を軸方向に前進させることで、バルーン
膜がカテーテル管の先端部からめくり上げられながら突
出する。このバルーン膜は適度な可撓性を有し、その表
面がめくり上げられながら突出することで、このバルー
ン膜は、きわめて狭い狭窄部、偏心した狭窄部あるいは
蛇行した狭窄部などでも、低摩擦力で狭窄部を傷つける
ことなく容易に通過することができる。

【０００４】バルーン膜が狭窄部を通過した後、さらに
スライド管を前進させれば、スライド管も、狭窄部を通
過することができる。したがって、このスライド管を通
して、薬液あるいは輸液を、狭窄部の背後の特定部位に
導入することができる。また、同様な理由から、その特
定部位の圧力などを検出することもできる。さらに特定
部位から検査用のサンプリングも行うことができる。

【０００５】上述したように、カテーテル管とスライド
管との間には、圧力流体を封入した状態で、スライド管
をカテーテル管に対してスライド移動させる必要がある
ことから、カテーテル管の基端部には、スリーブがスラ
イド管に対して摺動自在に装着される。このスリーブと
しては、スライド管の外周に対して摺接しつつ、カテー
テル管の内部の密封性を保持する機能が要求される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のスラ
イディングカテーテルでは、スリーブとして、単純円筒
形状のものが用いられていたため、スライド管の外周と
の間の摩擦が大きく、カテーテル管に対してスライド管
を軸方向に移動させるために比較的大きな力を必要と
し、操作性の点で難点を有している。

【０００７】また、逆にスライド管の操作性を向上させ
るために、スリーブの内周径を大きくし、スライド管と
の間の摩擦力を低減させることも考えられるが、その場
合には、カテーテル管内の密封性が低下するおそれがあ
ると言う問題を有する。本発明は、このような実状に鑑
みてなされ、カテーテル管に対するスライド体の軸方向
移動の操作性を向上させ、しかもカテーテル管内の密封
性を損なうことがないスライディングカテーテルを提供
することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るスライディングカテーテルは、体腔内
に挿入されるカテーテル管と、このカテーテル管の内部
に軸方向移動自在に装着されるスライド体と、このスラ
イド体の先端部に第１開口端部が接合され、前記カテー
テル管の先端部に第２開口端部が接合される筒状のバル
ーン膜と、前記カテーテル管の基端部に装着され、前記
スライド体の前記カテーテル管に対する相対的軸方向移
動を案内しつつ、前記カテーテル管とスライド体との間
の空間の密封を保持するスリーブとを有し、前記スリー
ブの内周面形状が、前記スライド体の外周に部分的にの
み接触する形状であることを特徴とする。

【０００９】前記スリーブの内周面に、周方向に連続す
る凸部を軸方向に所定間隔で形成することで、当該スリ
ーブを、前記スライド体の外周に部分的にのみ接触する
ように構成することが好ましい。凸部の形成個数は、特
に限定されないが、２〜１０個であることが好ましい。
これら凸部の形成高さは、特に限定されないが、０．１
〜０．５mm程度であることが好ましい。

【００１０】また、前記スリーブの内周面を、テーパ形
状にすることで、当該スリーブを、前記スライド体の外
周に部分的にのみ接触するように構成することもでき
る。さらに、前記スリーブの内径が、軸方向に変化する
形状にすることで、当該スリーブを、前記スライド体の
外周に部分的にのみ接触するように構成することもでき
る。

【００１１】前記スリーブの内周面の全部または一部に
は、親水性コーティングが施してあることが好ましい。
前記スリーブが、軸方向に圧縮可能に、前記カテーテル
管の基端位置に装着してあることが好ましい。

【００１２】前記スライド体は、その内部が中空である
スライド管であることが好ましい。

【００１３】

【作用】本発明に係るスライディングカテーテルでは、
スリーブの内周面形状が、前記スライド体の外周に部分
的にのみ接触する形状である。そのため、スライド体の
外周面との摩擦面積が減少し、カテーテル管に対してス
ライド体を軸方向に移動操作する際の操作力を低減する
ことができ、操作性が向上する。

【００１４】また、スリーブの内周面は、その一部がカ
テーテル管の外周に対して良好に圧接するので、カテー
テル管とスライド体との間の空間の密封性は良好に保持
される。本発明に係るスライディングカテーテルの使用
方法としては、特に限定されず、種々の使用方法が考え
られる。

【００１５】たとえば、次に示す使用方法が例示され
る。まず、カテーテル管の先端からスライド管の先端が
引っ込んだ状態で、スライディングカテーテルを、その
先端部から、血管、卵管、消化管、尿管あるいはその他
の体腔内に挿入する。なお、その挿入の前後に、カテー
テル管とスライド体との間の隙間には、圧力流体を封入
しておく。圧力流体としては、たとえば生理食塩水＋造
影剤などの液体が用いられ、その圧力としては、好まし
くは０．５気圧から２気圧である。本発明に係るスライ
ディングカテーテルでは、カテーテル管の基端部には、
スリーブが装着してあるので、カテーテル管内の密封性
は良好である。

【００１６】カテーテル管の先端が、体腔内狭窄部ある
いは体腔内分岐部の手前にきた場合に、スライド体の基
端を操作し、スライド体をカテーテル管内で前進させる
ことで、カテーテル管の先端から、バルーン膜をめくり
上げながら突出する。このバルーン膜は、可撓性を有す
ると共に、めくり上げられながら突出するので、体腔と
の摩擦がほとんどなく、きわめて狭い狭窄部、偏心した
狭窄部あるいは蛇行した狭窄部または体腔内分岐部など
でも、体腔内壁を傷つけることなく容易に通過させるこ
とができる。その際に、本発明に係るスライディングカ
テーテルでは、スリーブとスライド体との間の摩擦力が
低いので、スライド体を前進移動する際の操作性が向上
している。

【００１７】その後、さらにスライド体を前進させれ
ば、バルーン膜の内側を通して、スライド体の先端がカ
テーテル管の先端から突出し、スライド体の先端は、上
記狭窄部あるいは分岐部を容易に通過する。その後、こ
のスライド体を構成するスライド管を通して、薬液や輸
液を送り込めば、体腔内狭窄部または分岐部の背後の特
定部位に良好に、これらを送り込むことができる。ま
た、その特定部位からの体液のサンプリング、体液の圧
力測定などが可能である。

【００１８】また、ＰＴＣＡ（経皮的冠動脈形成術）用
バルーンカテーテルが挿入し難い狭窄部に、まず本発明
のスライディングカテーテルを通すことで、その狭窄部
にガイドワイヤを通し、その後スライディングカテーテ
ルを抜取り、ＰＴＣＡバルーンカテーテルを挿入し、Ｐ
ＴＣＡ治療を行うこともできる。

【００１９】さらに、スライド体の前進移動を途中で止
め、その後スライド体を後退移動させることで、いった
ん突出させたバルーン膜をカテーテル管の先端内に後退
移動させることで、バルーン膜により、体腔内異物（た
とえば結石）を取り込むこともできる。さらには、本発
明に係るスライディングカテーテルは、内視鏡と組み合
わせて用いることもできる。

【００２０】

【実施例】以下、本発明に係るスライディングカテーテ
ルを、図面に示す実施態様に基づき、詳細に説明する。
図１は本発明の一実施態様に係るスライディングカテー
テルの概略断面図、図２は図１に示すスライディングカ
テーテルに用いるスリーブの要部断面図、図３，４は図
１，２に示すスライディングカテーテルの使用例を示す
要部断面図、図５（Ａ）〜（Ｄ）は本発明の実施例およ
び比較例で用いるスリーブの断面図である。

【００２１】図１，２に示すように、本実施態様に係る
スライディングカテーテル２は、血管などの体腔内に挿
入されるカテーテル管４を有する。このカテーテル管４
は中空管で構成され、その内部には、そこにスライド体
としてのスライド管６が、軸方向移動自在に装着してあ
る。

【００２２】このスライド管６の先端部には、バルーン
膜８の第１開口端８ａが接着または熱融着してある。ま
た、カテーテル管４の先端部には、バルーン膜８の第２
開口端８ｂが接着または熱融着してある。カテーテル管
４は、ある程度の可撓性を有する材質で構成されること
が好ましく、たとえばポリエチレン、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共
重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニ
ル（ＰＶＣ）、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、
ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、
ポリイミド、ポリイミドエラストマー、シリコーンゴ
ム、フッ素樹脂、天然ゴムなどが使用でき、好ましく
は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩
化ビニル、シリコーンゴムで構成される。このカテーテ
ル管４の内表面には、ハイドローマー被覆層などの摩擦
低減層が被覆してあることが好ましい。カテーテル管４
の内部で、低摩擦力でスライド管６が軸方向にスライド
移動できるようにするためである。このような観点から
は、スライド管６の外表面にも、低摩擦層を形成するこ
とが好ましい。

【００２３】スライド管６は、カテーテル管４と同様
に、ある程度の可撓性を有する材質で構成されることが
好ましく、たとえばポリエチレン、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重
合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル
（ＰＶＣ）、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポ
リウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポ
リイミド、ポリイミドエラストマー、シリコーンゴム、
フッ素樹脂、天然ゴムなどが使用でき、好ましくは、ポ
リウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミドで
構成される。ただし、このスライド管６は、カテーテル
管４と異なり、肉厚の薄い細径の金属チューブ、たとえ
ばステンレス、Ｎｉ−Ｔｉ合金で構成することもでき
る。細径の金属チューブであれば、ある程度の可撓性を
有し、しかも、スライド管６をスライド移動させるため
の操作力が伝達され易いことから好ましい。

【００２４】バルーン膜８は、カテーテル管４およびス
ライド管６よりもさらに柔軟性を有する材質で構成され
ることが好ましく、たとえばポリエチレン、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン−プロピ
レン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩
化ビニル（ＰＶＣ）、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重
合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラスト
マー、ポリイミド、ポリイミドエラストマー、シリコー
ンゴム、天然ゴムなど、好ましくは、ポリエチレン、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタン
などで構成される。

【００２５】カテーテル管４およびスライド管の外径、
肉厚、軸方向長さなどの寸法は、このスライディングカ
テーテルの使用目的に応じて種々に改変されるが、一般
に、次の寸法であることが好ましい。カテーテル管４の
外径は、好ましくは０．３〜１５mm、さらに好ましくは
１〜５mmであり、その肉厚は、好ましくは５０〜１００
０μｍ、さらに好ましくは１００〜５００μｍ、その軸
方向長さは、好ましくは１０〜３０００mm、さらに好ま
しくは５０〜１０００mmである。スライド管６の外径
は、好ましくは０．１〜１０mm、さらに好ましくは０．
５〜４mmであり、その肉厚は、好ましくは５０〜１００
０μｍ、さらに好ましくは１００〜５００μｍ、その軸
方向長さは、カテーテル管４よりも長く、好ましくは２
０〜６０００mm、さらに好ましくは１００〜２０００mm
である。

【００２６】バルーン膜８の両端開口部８ａ，８ｂは、
それぞれスライド管６の先端部とカテーテル管４の先端
部とに接続される。したがって、バルーン膜８の外径
は、必ずしも軸方向に一定である必要はなく、その第１
開口端８ａがスライド管６の先端部に接続され、その第
２開口端８ｂがカテーテル管４の先端部（外周または内
周）に接続されるように都合の良い外径を有する。バル
ーン膜８の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは１
０〜１０００μｍ、さらに好ましくは５０〜５００μｍ
である。また、バルーン膜８の軸方向長さは、スライデ
ィングカテーテルの使用目的に応じて種々に変えること
ができるが、一般には、好ましくは５０〜１０００mm、
さらに好ましくは１００〜５００mmである。

【００２７】図１に示すように、カテーテル管４の基端
部には、分岐部１０が設けられ、カテーテル管４内空間
と連通する分岐管１２が装着してある。図１に示す実施
態様では、分岐管１２が直接カテーテル管４の基端側外
周に装着してあるが、カテーテル管４の基端に分岐用ハ
ブを接続し、この分岐用ハブに対して分岐管１２を接続
することもできる。その場合には、分岐ハブは、患者の
体外側に位置するので、カテーテル管４に比較して剛性
の高い材質で構成することができる。

【００２８】分岐管１２からは、バルーン膜８の内部
と、カテーテル管４とスライド管との間の空間とに封入
される液体が導入される。封入される液体としては、特
に限定されないが、たとえば放射線不透過性媒体と生理
食塩水との５０／５０混合水溶液などが用いられる。放
射線不透過性媒体を含ませるのは、スライディングカテ
ーテル２の使用時に、放射線を用いてバルーン膜８およ
びカテーテル管４の位置を造影するためである。封入時
の圧力としては、特に限定されないが、ゲージ圧で好ま
しくは０．５〜２気圧程度である。

【００２９】カテーテル管４の最基端部には、カテーテ
ル用ハブ１４が装着してある。このカテーテル用ハブ１
４は、カテーテル管４の最基端側外周に、接着ないし融
着してあり、カテーテル管４よりも剛性の高い材質で構
成することができる。このハブ１４は、具体的には、ポ
リ塩化ビニル、ポリカーボネート、スチレン−ブタジエ
ン共重合体、シリコーン樹脂、ＡＢＳ樹脂、好ましくは
ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ＡＢＳ樹脂で構成
される。

【００３０】なお、このハブ１４は、前記分岐ハブと一
体に形成することもできる。また、このハブ１４は、カ
テーテル管４と一体に形成することもできる。カテーテ
ル用ハブ１４の内側には、雌ネジ部が形成してあり、こ
こにコネクタ１３の雄ネジ部が螺合可能になっている。
ハブ１４の内周側には、密封用スリーブ１６が装着して
あり、コネクタ１３がハブ１４に対して螺合すること
で、スリーブ１６が軸方向に圧縮され、スライド管６の
外周に圧接するようになっている。スリーブ１６の軸方
向圧縮量は、ハブ１４に対するコネクタ１３の螺合度合
に基づいて変化する。

【００３１】密封用スリーブ１６は、バルーン膜８の内
部、カテーテル管４とスライド管との間の空間を密封す
る。しかも、スライド管６を、カテーテル管４の内部で
軸方向にスライド移動自在とするために、密封用スリー
ブ１６は、スライド管６の外周との摺動性に優れている
ことが好ましい。

【００３２】本実施態様では、このような観点から、図
２に詳示するように、スリーブ１６の内周面に、周方向
に連続する凸部２０を軸方向に所定間隔で形成してあ
る。凸部２０の形成個数は、特に限定されないが、複数
個であることが好ましく、さらに好ましくは２〜１０個
である（図示する例では４個）。凸部２０は、軸方向に
等間隔ピッチで形成することが好ましいが、これに限定
されず、異間隔ピッチで形成することもできる。各凸部
２０の断面形状は、図示する例では、半円形状である
が、これに限らず、楕円、三角、多角形状など種々の断
面形状を採用することができる。

【００３３】このような凸部２０が形成されたスリーブ
１６の具体的寸法に関しては、図１，２に示すスライド
管６の外径などに応じて決定されるが、以下に示す寸法
を有することが好ましい。すなわち、図５（Ａ）に示す
ように、スリーブ１６の軸方向長さＬは、好ましくは５
〜１５mm、さらに好ましくは１０mm近傍である。また、
スリーブ１６の外径ｄ₁ は、好ましくは２〜２０mm、さ
らに好ましくは５〜１５mmである。図５（Ａ）に示すよ
うに、スリーブ１６の基準内面２２の内径ｄ₂は、図
１，２に示すスライド管６の外径よりも大きいことが必
要であり、好ましくは０．５〜１５mm、さらに好ましく
は１．０〜１０mmである。図５（Ａ）に示すように、ス
リーブ１６の内周面に形成された凸部２０の頂点の内径
ｄ₃ は、図１，２に示すスライド管６の外径よりも僅か
に大きいことが好ましく、具体的には、好ましくは０．
２〜１０mm、さらに好ましくは０．５〜５mmである。ま
た、凸部２０の高さｔは、好ましくは０．１〜１．０m
m、さらに好ましくは０．２〜０．５mmである。

【００３４】密封用スリーブ１６を構成する材質は、シ
リコーンゴム、イソプレンゴムなどの弾性変形可能な材
質であれば何でも良いが、生体に対して不活性で、物性
変化の少ない材質であるシリコーンゴムが好ましい。ス
リーブ１６は、それが柔らかいと、スライド管６との隙
間に良好に圧接し、カテーテル管４内の密封性を迅速に
得ることができる。ところが、その場合には、ハブ１４
に対してコネクタ１３を過度に締め付け過ぎ易く、スラ
イド管６を潰し、カテーテル管４内の密封性を損なうお
それがある。また逆に、スリーブ１６が硬すぎると、所
定の密封性を得るために、ハブ１４に対してコネクタ１
３を高トルクでねじ込まなければならず、操作性に難点
を有する。このような観点から、スリーブ１６の硬さ
は、ＪＩＳ硬度（Ａ硬度）で４０〜６０程度が好まし
い。

【００３５】スリーブ１６とスライド管６との摺動性を
向上させて操作性を向上させる観点からは、スリーブ１
６の内周面に形成してある凸部２０の表面には、親水性
物質がコーティングしてあることが好ましい。親水性物
質としては、シリコーン系オイル、親水性ポリマーなど
を例示することができる。親水性ポリマーとしては、ポ
リビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどを例示
することができる。これら親水性物質は、凸部２０の表
面のみでなく、スリーブ１６の内面全体に塗布ないしコ
ーティングしても良い。

【００３６】図１に示すように、スライド管６の最基端
には、操作用のフランジ状のスライド用ハブ１８が装着
してある。スライド用ハブ１８は、スライド管６の最基
端外周に、接着または融着してある。スライド用ハブ１
８は、カテーテル用ハブと同様な材質で構成される。ス
ライド管６は、その先端部に装着されたバルーン膜８に
よっても先端開口部が閉塞されず、その基端部に装着さ
れたハブ１８によっても基端開口部が閉塞されず、その
内部には、中空のルーメン１５が形成される。

【００３７】本実施態様に係るスライディングカテーテ
ル２では、ハブ１４に対するコネクタ１３のねじ込み量
に応じて、スリーブ１６の軸方向圧縮量が変化する。そ
れに伴い、スリーブ１６とハブ１４との密着性、および
スリーブ１６とスライド管６との密着性および接触面積
が変化し、カテーテル管４内の密封性が変化する。スリ
ーブ１６の内周面とスライド管６の外周面との接触面積
が大きいと、カテーテル管４内の密封性が向上するが、
スライド管６の軸方向移動の操作に大きな力を必要とす
る。逆に、スリーブ１６の内周面とスライド管６の外周
面との接触面積が小さいと、カテーテル管４内の密封性
が低下するが、スライド管６の軸方向移動の操作に大き
な力を必要とせず、操作性が向上する。

【００３８】本実施態様では、図２に示すように、ハブ
１４に対してコネクタ１３をねじ込んで行くと、最初に
スリーブ１６の内周面に形成した凸部２０がスライド管
６の外周に圧着する。さらにコネクタ１３をねじ込んで
行くと、スリーブ１６の基準内面２２がスライド管６の
外周に圧着する。

【００３９】このように本実施態様では、コネクタ１３
のねじ込み度合により、スリーブ１６が段階的に変化す
るので、スリーブ１６の内周面とスライド管６の外周面
との接触面積を段階的に変化させることができる。した
がって、本実施態様では、カテーテル管４の内部の密封
性を保持した状態で、カテーテル管４に対するスライド
管６の軸方向移動時の操作性が向上するように、スリー
ブ１６の変形を微調節することができる。

【００４０】次に本実施態様に係るスライディングカテ
ーテル２の使用例について説明する。まず、図３に示す
ように、カテーテル管４の先端からスライド管６の先端
が引っ込んだ状態で、スライディングカテーテル２を、
その先端部から、血管、卵管、消化管、尿管あるいはそ
の他の体腔３０（図３，４参照）内に挿入する。スライ
ディングカテーテル２を、たとえば動脈血管などの体腔
内に挿入するには、セルジンガー法などを採用すれば良
い。

【００４１】なお、その挿入の前後に、カテーテル管４
とスライド管６との間の隙間空間には、図１に示す分岐
管１２から流体を封入しておく。封入流体としては、た
とえば生理食塩水＋造影剤などの液体が用いられ、その
圧力としては、好ましくは０．５気圧から２気圧であ
る。本実施態様に係るスライディングカテーテル２で
は、カテーテル管４の基端部には、スリーブ１６が装着
してあるので、カテーテル管４内の密封性は良好であ
る。

【００４２】図３に示すように、カテーテル管４の先端
が、体腔内狭窄部３２あるいは体腔内分岐部の手前にき
た場合に、図１に示すスライド管６の基端部に装着され
たハブ１８を操作し、スライド管６をカテーテル管４内
で前進させる。その結果、図４に示すように、カテーテ
ル管４の先端から、バルーン膜８が、その表裏面がめく
り上げられるように突出する。このようにバルーン膜８
が突出するのは、バルーン膜８の内部に流体が封入して
あると共に、スライド管６が前進移動するからである。
封入流体の圧力は、スライド管６の前進移動に応じて上
昇し、その圧力により、バルーン膜８が、カテーテル管
４の先端部から突出する。バルーン膜８の突出量は、ス
ライド管６の前進移動量の約１／２である。

【００４３】このバルーン膜は、可撓性を有すると共
に、その表裏面がめくり上げられながら突出するので、
体腔との摩擦がほとんどなく、きわめて狭い狭窄部３
２、偏心した狭窄部あるいは蛇行した狭窄部または体腔
内分岐部などでも、体腔３０の内壁を傷つけることなく
容易に通過させることができる。その際に、本実施態様
に係るスライディングカテーテル２では、スリーブ１６
とスライド管６との間の摩擦力が低いので、スライド管
６を前進移動する際の操作性が向上している。

【００４４】その後、さらにスライド管６を前進させれ
ば、バルーン膜８は、その表裏面が完全に逆転し、その
内側を通して、スライド管６の先端がカテーテル管４の
先端から突出し、スライド管６の先端は、狭窄部３２あ
るいは分岐部を容易に通過する。その後、このスライド
管６のルーメン１５を通して、薬液や輸液を送り込め
ば、体腔内狭窄部３２または分岐部の背後の特定部位に
対して良好に、これらを送り込むことができる。また、
その特定部位からの体液のサンプリング、体液の圧力測
定などが可能である。

【００４５】また、ＰＴＣＡ（経皮的冠動脈形成術）用
バルーンカテーテルが挿入し難い狭窄部に、まず本実施
態様のスライディングカテーテル２を通すことで、その
狭窄部にガイドワイヤを通し、その後スライディングカ
テーテル２を抜取り、ＰＴＣＡバルーンカテーテルを挿
入し、ＰＴＣＡ治療を行うこともできる。

【００４６】さらに、スライド管６の前進移動を途中で
止め、その後スライド管６を後退移動させることで、い
ったん突出させたバルーン膜８をカテーテル管４の先端
内に後退移動させることで、バルーン膜８により、体腔
内異物（たとえば結石）を取り込むこともできる。

【００４７】さらには、本実施態様に係るスライディン
グカテーテル２は、内視鏡と組み合わせて用いることも
できる。内視鏡は、スライディングカテーテル２のスラ
イド管６に形成されたルーメンを通して送り込むことが
できる。なお、本発明は、上述した実施態様に限定され
るものではなく、本発明の範囲内で種々に改変すること
ができる。

【００４８】たとえば、本発明に係るスライディングカ
テーテルに用いるスリーブの内周面形状は、図２，５
（Ａ）に示す例に限定されず、種々に改変することがで
きる。たとえば図５（Ｂ）に示すように、スリーブ１６
ａの内周面を、テーパ形状にしても良い。スリーブ１６
ａの外径ｄ₁ および長さＬは、図５（Ａ）に示す例と同
様である。スリーブ１６ａのテーパ形状の内周面の最小
内径ｄ₄ は、図５（Ａ）に示す例の内径ｄ₃ にほぼ等し
く、最大内径ｄ₅ は、最小内径ｄ₄ ＋０．１０〜１．０
mmが好ましい。このスリーブ１６ａは、スリーブ１６ａ
の最小内径ｄ₄ 側がコネクタ１３側に位置するように、
図１に示すハブ１４の内周に装着するが、その逆に、最
大内径ｄ₅ 側がコネクタ１３側に位置するように装着す
ることもできる。本実施態様のスリーブ１６ａでも、前
記実施態様のスリーブ１６とほぼ同様な作用を有する。

【００４９】また、図５（Ｃ）に示すように、スリーブ
１６ｂ内周面を、ベンチェリ管形状にしても良い。スリ
ーブ１６ｂの外径ｄ₁ および長さＬは、図５（Ａ）に示
す例と同様である。スリーブ１６ｂのベンチェリ管形状
の内周面の最小内径ｄ₆ は、図５（Ａ）に示す例の内径
ｄ₃ にほぼ等しく、最大内径ｄ₇ は、最小内径ｄ₆ ＋
０．１０〜１．０mmが好ましい。本実施態様のスリーブ
１６ｂでも、前記実施態様のスリーブ１６とほぼ同様な
作用を有する。

【００５０】また、図５（Ｃ）に示すスリーブ１６ｂの
変形例として、最小内径ｄ₆ の形成位置を、スリーブの
中央部ではなく、いずれか一方の端部側にずらすことも
できる。さらに、最小内径ｄ₆ が形成される凸部の断面
形状を、曲面形状にすることもできる。

【００５１】次に、本発明をさらに具体的な実施例を比
較例との関係において説明するが、本発明は、これら実
施例に限定されない。実施例１ 図１，２に示す構造のスライディングカテーテル２を準
備した。ただし、この実施例では、スライド管６とし
て、外径２．７mmのポリウレタン製チューブを用いた。
バルーン膜８はポリウレタンで形成され、その長さは３
００mm、外径は３．０mm、肉厚は１００μm であった。
カテーテル管４としては、外径が４．０mm、肉厚２５０
μm 、長さ３００mmのポリウレタン製チューブ（全長に
わたりＪＩＳ硬度７５（Ｄ硬度を言う。）を用いた。

【００５２】図１に示すハブ１４の内周には、図５
（Ａ）に示すような内周面に四つの凸部２０を有するス
リーブ１６を装着した。スリーブ１６の材質は、シリコ
ーンゴムであった。このスリーブ１６のＪＩＳ硬度（Ａ
硬度）は、５０であった。スリーブ１６の長さＬは、
９．５mmであり、外径ｄ₁ は、６．５５mmであり、凸部
２０の頂部の内径ｄ₃ は２．８５mm、基準内面２２の内
径ｄ₂ は３．２５mmであった。凸部２０の高さは０．２
mmであった。

【００５３】このスリーブ１６は、図１，２に示すハブ
１４の内側に装着され、コネクタ１３がハブ１４に対し
て螺合することで、軸方向に圧縮され、ハブ１４の内周
およびスライド管６の外周に密着し、カテーテル管４内
を密封した。ハブ１４に対するコネクタ１３のねじ込み
は、スリーブ１６により、カテーテル管４の内部の密封
性が、１Ｋｇ／ｃｍ² 以上になるように行った。

【００５４】このスライディングカテーテル２を、図６
に示すように、スライド管６が下にくるように、スタン
ド４０のクランプ４２で固定した。スライド管６の基端
部をチャック４４で把持し、引張試験用測定台４６の昇
降軸４８により、スライド管６を引っ張りおよび押し込
み、その際の抵抗状態を、デジタルフォースゲージ５０
により測定し、操作性について評価した。

【００５５】結果を表１に示す。

【００５６】

【表１】

【００５７】表１中、二重丸は、スライド管の押し込み
時も引っ張り時もスムーズに行えたことを示す。一重丸
は、少し抵抗があったが、スライド管の押し込み時も引
っ張り時もスムーズに行えたことを示す。×は、スライ
ド管の押し込みも引っ張りも困難であったことを示す。

【００５８】実施例２ スリーブとして、図５（Ｂ）に示す内周面形状のスリー
ブ１６ａを用いた以外は、実施例１と同様にしてスライ
ディングカテーテルを作製し、図６に示す装置を用いて
実施例１と同様な試験を行った。スリーブ１６ａにおけ
る外径ｄ₁ および長さＬは、実施例１の外径および長さ
と同じであった。スリーブの最小内径ｄ ₄ は２．８５mm
であり、最大内径ｄ₅ は３．０５mmであった。

【００５９】試験の結果を上記表１に示す。実施例３ スリーブとして、図５（Ｃ）に示す内周面形状のスリー
ブ１６ｂを用いた以外は、実施例１と同様にしてスライ
ディングカテーテルを作製し、図６に示す装置を用いて
実施例１と同様な試験を行った。スリーブ１６ｂにおけ
る外径ｄ₁ および長さＬは、実施例１の外径および長さ
と同じであった。スリーブの最小内径ｄ ₆ は２．８５mm
であり、最大内径ｄ₇ は３．０５mmであった。

【００６０】試験の結果を上記表１に示す。比較例１ スリーブとして、図５（Ｄ）に示すように内周面の内径
が軸方向に均一であるスリーブ１６ｃを用いた以外は、
実施例１と同様にしてスライディングカテーテルを作製
し、図６に示す装置を用いて実施例１と同様な試験を行
った。スリーブ１６ｃにおける外径ｄ₁ および長さＬ
は、実施例１の外径および長さと同じであった。スリー
ブの内径ｄ₈ は２．８５mmであった。

【００６１】試験の結果を上記表１に示す。評価 表１にも示すように、比較例１のスライディングカテー
テルでは、特にスライド管の押し込み時に、かなりの抵
抗力が掛かり、その抵抗の測定が困難であった。すなわ
ち、スライド管がスムーズにまっすぐカテーテル管内に
挿入できず、スライド管が撓んでしまった。

【００６２】実施例１のスライディングカテーテルで
は、スライド管の押し込み時および引き戻し時に要する
力がほとんど同じであり、しかも他のスライディングカ
テーテルに比較しても抵抗値が低かった。

【００６３】

【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、スライド体の外周面との摩擦面積が減少し、カテー
テル管に対してスライド体を軸方向に移動操作する際の
操作力を低減することができ、操作性が向上する。

【００６４】また、スリーブの内周面は、その一部がカ
テーテル管の外周に対して良好に圧接するので、カテー
テル管とスライド体との間の空間の密封性は良好に保持
される。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の一実施態様に係るスライディン
グカテーテルの概略断面図である。

【図２】図２は図１に示すスライディングカテーテルに
用いるスリーブの要部断面図である。

【図３】図３は図１，２に示すスライディングカテーテ
ルの使用例を示す要部断面図である。

【図４】図４は図１，２に示すスライディングカテーテ
ルの使用例を示す要部断面図である。

【図５】図５（Ａ）〜（Ｄ）は本発明の実施例および比
較例で用いるスリーブの断面図である。

【図６】図６は本発明の実施例の試験に用いる測定装置
の概略図である。

【符号の説明】

２… スライディングカテーテル ４… カテーテル管 ６… スライド管 ８… バルーン膜 ８ａ… 第１開口端 ８ｂ… 第２開口端 １０… 分岐部 １２… 分岐管 １３… コネクタ １４… カテーテル用ハブ １５… ルーメン １６，１６ａ，１６ｂ，１６ｃ… スリーブ ２０… 凸部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 体腔内に挿入されるカテーテル管と、 このカテーテル管の内部に軸方向移動自在に装着される
   スライド体と、 このスライド体の先端部に第１開口端部が接合され、前
   記カテーテル管の先端部に第２開口端部が接合される筒
   状のバルーン膜と、 前記カテーテル管の基端部に装着され、前記スライド体
   の前記カテーテル管に対する相対的軸方向移動を案内し
   つつ、前記カテーテル管とスライド体との間の空間の密
   封を保持するスリーブとを有し、 前記スリーブの内周面形状が、前記スライド体の外周に
   部分的にのみ接触する形状であるスライディングカテー
   テル。