JPH07311935A - 磁気記録媒体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 非磁性支持体上に、少なくとも磁性層及びカ
ーボン保護膜を形成し、前記カーボン保護膜上に、さら
にアシル基，パーフルオロポリエーテルアシル基及びア
ルコキシ基を有するチタン化合物を保持させることで磁
気記録媒体を構成する。 【効果】 この構成の磁気記録媒体は、各種使用条件
下、特に０℃以下の低温条件下において長時間にわたり
潤滑効果が持続され、使用環境を問わず常に優れた走行
性，耐摩耗性，耐久性を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、磁気テープ，磁気ディ
スク等の磁気記録媒体に関するものであり、特に走行
性，耐摩耗性，耐久性の改善に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、強磁性金属材料を蒸着等の手法
により非磁性支持体上に被着し、これを磁性層としたい
わゆる金属薄膜型の磁気記録媒体や、非常に微細な磁性
粒子と樹脂結合剤とを含む磁性塗料を非磁性支持体上に
塗布し、これを磁性層としたいわゆる塗布型の磁気記録
媒体では、磁性層表面の平滑性が極めて良好であるた
め、磁気ヘッドやガイドローラー等の摺動部材に対する
実質的な接触面積が大きく、従って摩擦係数が大きくな
り凝着現象（いわゆる貼り付き）が起き易く走行性や耐
久性に欠ける等問題点が多い。

【０００３】そこで、これら問題点を改善するために各
種の潤滑剤を使用することが検討されており、高級脂肪
酸やそのエステル等、さらにはパーフルオロポリエーテ
ル誘導体を上記磁気記録媒体の磁性層に内添したり、あ
るいはトップコートすることにより摩擦係数を抑えよう
とする試みがされている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、磁気記録媒
体に使用される潤滑剤には、その性質上非常に厳しい特
性が要求される。すなわち、（１）寒冷地での使用に際
して所定の潤滑効果が確保されるように低温特性に優れ
ること、（２）磁気ヘッドとのスペーシングが問題とな
るので極めて薄く塗布できることと、その場合にも十分
な潤滑特性が発揮されること、（３）長時間、あるいは
長期間の使用に耐え、潤滑効果が持続すること、等が要
求される。

【０００５】ところが、従来より使用されている高級脂
肪酸やそのエステル、パーフルオロポリエーテル誘導体
等は、特に低温条件下（０℃以下）に置かれると、潤滑
効果が損なわれ、磁気記録媒体の低温下における走行
性，耐摩耗性，耐久性等の実用特性を十分に改善するこ
とができない。

【０００６】そこで、本発明は、このような従来の実情
に鑑みて提案されたものであり、各種使用条件下、特に
０℃以下の低温条件下で長時間にわたり潤滑効果が持続
される潤滑剤層を実現し、使用条件を問わず、常に、良
好な走行性，耐摩耗性，耐久性が得られる磁気記録媒体
を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、磁性層上に
カーボン保護膜を形成し、その上にアシル基，パーフル
オロポリエーテルアシル基及びアルコキシ基を有するチ
タン化合物，すなわち親水基部位と疎水基部位の両方を
併せ持つチタン化合物を潤滑剤として塗布することによ
って、低温条件下においても十分な潤滑効果が得られる
ようになることを見い出すに至った。

【０００８】すなわち、本発明の磁気記録媒体は、非磁
性支持体上に、少なくとも磁性層及びカーボン保護膜を
有してなる磁気記録媒体であって、前記カーボン保護膜
上に、化９で表されるアシル基，パーフルオロポリエー
テルアシル基及びアルコキシ基を有するチタン化合物が
保持されていることを特徴とするものである。

【０００９】

【化９】

【００１０】本発明は、磁気記録媒体の走行性，耐摩耗
性，耐久性を確保するために、磁性層上にカーボン保護
膜を形成するようにし、このカーボン保護膜表面に上記
化９で表されるアシル基，パーフルオロポリエーテルア
シル基及びアルコキシ基を有するチタン化合物よりなる
潤滑剤層を形成する。

【００１１】カーボン保護膜表面に上記チタン化合物よ
りなる潤滑剤層を形成すると、カーボン保護膜表面の−
ＯＨあるいは−ＣＯＯＨと、潤滑剤層を構成するチタン
化合物のアルコキシ基が常温で反応し、強固な共有結合
が形成される。このようにしてカーボン保護膜表面に共
有結合を介して保持された潤滑剤層は、耐久性が高く、
テープ走行に際する摩擦等によって脱離し難い。それに
加えて、この潤滑剤層は、アシル基，パーフルオロポリ
エーテルアシル基を有していることから、常温環境下で
は勿論のこと、高温多湿環境下，さらに耐久性を確保
し、低摩擦化を図る上で極めて厳しいとされている，低
温環境下においても優れた潤滑作用が維持される。

【００１２】したがって、このようなチタン化合物より
なる潤滑剤層を有する磁気記録媒体は、使用条件を問わ
ず、常に良好な走行性，耐摩耗性，耐久性が発揮され
る。潤滑剤となるチタン化合物において、アシル基とし
ては例えば化１０で表される構造のものが導入される。

【００１３】

【化１０】

【００１４】ここで、炭素数ａは、５〜２３であること
が望ましい。炭素数ａが４以下であると、アシル鎖長が
短か過ぎ、フロン以外の汎用溶媒，例えばトルエン，ヘ
キサン等への溶解が難しくなる。また、炭素数が２４以
上であると、潤滑剤の融点が上昇してしまい、低温環境
下における摩擦が上昇してしまう。なお、炭素数ａは、
より好ましくは１０〜２３であり、この範囲のときに特
にアシル基を導入する効果が大きくなる。

【００１５】また、パーフルオロポリエーテルアシル基
は、特に高温高湿環境下における潤滑効果の改善を目的
として導入されるものであり、化１１，化１２，化１３
のいずれかで表される構造のものが適している。

【００１６】

【化１１】

【００１７】

【化１２】

【００１８】

【化１３】

【００１９】これらパーフルオロポリエーテルアシル基
の分子量は、特に制約されるものではないが、実用的に
は６００〜５０００程度のものが好ましく、１０００〜
４０００のものがより好ましい。

【００２０】パーフルオロポリエーテルアシル基の分子
量が大きくなり過ぎると、末端のアルコキシ基の影響が
薄れ、カーボン保護膜への吸着性が小さくなってしま
う。また、フロン以外の汎用溶媒，例えばトルエン，ヘ
キサン等に溶解し難くなる。逆にパーフルオロポリエー
テルアシル基の分子量が小さ過ぎると、パーフルオロポ
リエーテルアシル基による潤滑効果が失われる。

【００２１】さらに、アルコキシ基としては、目的とす
る吸着効果を十分に得るためには、化１４，化１５，化
１６のいずれかで表されるものが適当である。

【００２２】

【化１４】

【００２３】

【化１５】

【００２４】

【化１６】

【００２５】以上のように本発明では、アシル基，パー
フルオロポリエーテルアシル基及びアルコキシ基を有す
るチタン化合物よりなる潤滑剤層を磁気記録媒体に設け
る。ここで、このような潤滑剤層が設けられる磁気記録
媒体は、例えば強磁性金属材料を蒸着等の手法により非
磁性支持体上に被着し、これを磁性層としたいわゆる金
属薄膜型の磁気記録媒体である。磁性層，非磁性支持体
としては、通常この種の磁気記録媒体において用いられ
ているものがいずれも使用可能である。

【００２６】非磁性支持体の素材としては、ポリエチレ
ンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン，
ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリ
アセテート，セルロースダイアセテート，セルロースブ
チレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル，ポリ
塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート，
ポリイミド，ポリアミドイミド等のプラスチックの他、
アルミニウム合金，チタン合金等の軽金属、アルミナガ
ラス等のセラミック等が挙げられる。非磁性支持体にＡ
ｌ合金板やガラス板等の剛性を有する基板を使用した場
合には、基板表面にアルマイト処理等の酸化被膜やＮｉ
−Ｐ被膜等を形成してその表面を硬くするようにしても
よい。

【００２７】また、これら非磁性支持体上には磁性層を
形成する側の面に下地層を形成し、磁性層との密着性を
改善するようにしても良い。

【００２８】一方、磁性層を構成する金属磁性材料とし
ては、Ｆｅ，Ｃｏ，Ｎｉ等の金属やＣｏ−Ｎｉ系合金、
Ｃｏ−Ｐｔ系合金、Ｃｏ−Ｐｔ−Ｎｉ系合金、Ｆｅ−Ｃ
ｏ系合金、Ｆｅ−Ｎｉ系合金、Ｆｅ−Ｃｏ−Ｎｉ系合
金、Ｆｅ−Ｎｉ−Ｂ系合金、Ｆｅ−Ｃｏ−Ｂ系合金、Ｆ
ｅ−Ｃｏ−Ｎｉ−Ｂ系合金等からなる面内磁化記録金属
磁性膜やＣｏ−Ｃｒ系合金薄膜等の垂直磁化記録金属磁
性膜が例示される。

【００２９】これら金属磁性材料は、メッキ，スパッタ
リング，真空蒸着等のＰＶＤ手法を用いることにより金
属磁性薄膜として成膜される。

【００３０】なお、特に、面内磁化記録金属磁性薄膜の
場合、予め非磁性支持体上にＢｉ，Ｓｂ，Ｐｂ，Ｓｎ，
Ｇａ，Ｉｎ，Ｇｅ，Ｓｉ，Ｔｌ等の低融点非磁性材料の
下地層を形成しておき、金属磁性材料を垂直方向から蒸
着あるいはスパッタし、金属磁性薄膜中にこれら低融点
非磁性材料を拡散せしめ、配向性を解消して面内等方性
を確保するとともに、抗磁力を向上するようにしても良
い。

【００３１】本発明では、この磁性層上にカーボン保護
膜が形成される。カーボン保護膜は、真空薄膜形成技術
によって成膜され、スパッタリングで成膜するのが一般
的であるが特に限定されるものではなく、いずれの成膜
方法を使用しても良い。この場合、カーボン保護膜の膜
厚は２〜１００ｎｍであることが望ましく、更に望まし
くは５〜３０ｎｍである。

【００３２】チタン化合物よりなる潤滑剤層は、このよ
うなカーボン保護膜上に保持されるが、潤滑剤層を保持
せしめる方法としては、前記カーボン保護膜表面に潤滑
剤層をトップコートする方法が挙げられる。この場合、
前記潤滑剤の塗布量としては、０．５〜１００ｍｇ／ｍ
² であることが望ましく、１〜２０ｍｇ／ｍ² であるこ
とがより好ましい。

【００３３】以上が本発明の磁気記録媒体の基本的な構
成であるが、本発明の磁気記録媒体はこれに限らず、さ
らに他の構成を付加して特性の改善を図るようにしても
良い。

【００３４】例えば、磁性層の耐蝕性改善を目的とし
て、防錆剤が保有されていてもよい。防錆剤としては、
通常、この種の磁気記録媒体において使用されるものが
いずれも使用可能であり、例えばフェノール類，ナフト
ール類，キノン類，窒素原子を含む複素環化合物，酸素
原子を含む複素環化合物，硫黄原子を含む複素環化合物
等である。

【００３５】これら防錆剤の保有方法としては、上記チ
タン化合物と複合して潤滑剤層に内添する，保護層と潤
滑剤層の間に防錆剤層を形成する等の方法が挙げられる
が、後者の潤滑剤層とは別に保護層と潤滑剤層の間に防
錆剤層を形成する方法が効果が高い。

【００３６】

【作用】本発明では、磁気記録媒体において、磁性層上
にカーボン保護膜を形成し、さらにこのカーボン保護膜
上にアシル基，パーフルオロポリエーテルアシル基及び
アルコキシ基を有するチタン化合物よりなる潤滑剤層を
形成する。

【００３７】このようなチタン化合物よりなる潤滑剤層
は、アルコキシ基の作用によってカーボン保護膜に強固
に吸着し、走行に際する摩擦等によって脱離し難い。ま
た、アシル基，パーフルオロポリエーテルアシル基を有
することで、常温環境下で良好な潤滑作用を示すことは
勿論のこと、高温多湿環境下，さらに潤滑効果を発揮す
る上で極めて厳しいとされている低温環境下においても
優れた潤滑作用が維持される。

【００３８】したがって、このようなチタン化合物より
なる潤滑剤層が形成された上記磁気記録媒体では、使用
環境が０℃以下の低温環境であろうと、温度４０℃，湿
度８０％の高温多湿環境であろうと、常に良好な走行
性，耐摩耗性，耐久性を発揮する。

【００３９】

【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について説明
するが、本発明はこの実施例に限定されるものでないこ
とはいうまでもない。

【００４０】実施例１ まず、厚さ１０μｍのポリエチレンテレフタレートフィ
ルムに斜方蒸着法によりＣｏ−Ｎｉ合金を被着させ、膜
厚１００ｎｍの強磁性金属薄膜を形成した。次に、この
金属磁性薄膜表面にスパッタリングにより膜厚１５ｎｍ
のカーボン膜を成膜し、８ｍｍ幅に裁断した。

【００４１】そして、化１７で表される一般式において
ｌ＝１０，ｍ＝１０であり、ＲｆがＦ（ＣＦ₂ ＣＦ₂ Ｃ
Ｆ₂ Ｏ）_n ＣＦ₂ ＣＦ₂ ＣＯＯであるチタン化合物をカ
ーボン保護膜上に塗布することでサンプルテープを作成
した。

【００４２】

【化１７】

【００４３】実施例２〜実施例１２ 化１７で表される一般式においてｌ，ｍが表１に示す値
であり、Ｒｆが表１に示す構造のパーフルオロポリエー
テルアシル基であるチタン化合物をカーボン保護膜上に
塗布すること以外は実施例１と同様にしてサンプルテー
プを作成した。

【００４４】

【表１】

【００４５】実施例１３〜実施例４２ 化１７で表される一般式においてｌ，ｍが表２に示す値
であり、Ｒｆが表２に示す構造のパーフルオロポリエー
テルアシル基であるチタン化合物をカーボン保護膜上に
塗布すること以外は実施例１と同様にしてサンプルテー
プを作成した。

【００４６】

【表２】

【００４７】但し、表１，表２中、Ｒｆの欄のＡ，Ｂ，
Ｃはそれぞれ化１８，化１９，化２０で表される構造の
パーフルオロポリーテルアシル基を表す。

【００４８】

【化１８】

【００４９】

【化１９】

【００５０】

【化２０】

【００５１】比較例１ 化２１で表される化合物をカーボン保護膜上に塗布する
こと以外は実施例１と同様にしてサンプルテープを作成
した。

【００５２】

【化２１】

【００５３】このようにして実施例１〜実施例４２及び
比較例１において作成されたサンプルテープについて、
温度２５℃，湿度６０％の常温常湿環境下、温度−５℃
の低温環境下及び温度４０℃，湿度８０％の高温多湿環
境下で摩擦係数，スチル耐久性及びシャトル耐久性を測
定した。

【００５４】なお、スチル耐久性は、ポーズ状態での再
生出力が初期値より−３ｄＢ減衰するまでの時間を測定
することで評価した。また、シャトル耐久性は、２分間
のシャトル走行を１サイクルとして複数回シャトル走行
を行い、再生出力が初期値より−３ｄＢ低下するまでの
シャトル回数を測定することで評価した。

【００５５】摩擦係数，スチル耐久性及びシャトル耐久
性の測定結果を表３〜表５に示す。

【００５６】

【表３】

【００５７】

【表４】

【００５８】

【表５】

【００５９】表３〜表５からわかるように、アシル基，
パーフルオロポリエーテルアシル基及びアルキコシ基を
有するチタン化合物をカーボン保護膜に塗布した実施例
１〜実施例４２のサンプルテープは、常温常湿環境下，
高温多湿環境下，低温環境下のいずれにおいても０．２
〜０．２１程度の低い摩擦係数を示し、良好なスチル耐
久性，シャトル耐久性を発揮する。この点において、ア
ミノ基を有するパーフルオロポリエーテルをカーボン保
護膜上に塗布した比較例１のサンプルテープを遙に凌い
でいる。

【００６０】このことから、アシル基，パーフルオロポ
リエーテルアシル基及びアルキコシ基を有するチタン化
合物を潤滑剤としてカーボン保護膜上に塗布すること
で、使用環境を問わず常に良好な走行性，耐摩耗性，耐
久性を示す磁気記録媒体が実現できることがわかった。

【００６１】

【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、少なくとも磁
性層及びカーボン保護膜を有してなり、前記カーボン保
護膜上に、アシル基，パーフルオロポリエーテルアシル
基及びアルコキシ基を有するチタン化合物が保持されて
いるので、各種使用条件下、特に０℃以下の低温条件下
において長時間にわたり潤滑効果が持続され、使用環境
を問わず常に優れた走行性，耐摩耗性，耐久性を得るこ
とができる。

フロントページの続き (72)発明者 川角 浩一 東京都品川区北品川６丁目７番35号 ソニ ー株式会社内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非磁性支持体上に、少なくとも磁性層及
   びカーボン保護膜を有してなる磁気記録媒体であって、 前記カーボン保護膜上に、化１で表されるアシル基，パ
   ーフルオロポリエーテルアシル基及びアルコキシ基を有
   するチタン化合物が保持されていることを特徴とする磁
   気記録媒体。 【化１】
2. 【請求項２】 チタン化合物のアシル基は、化２で表さ
   れることを特徴とする請求項１記載の磁気記録媒体。 【化２】
3. 【請求項３】 チタン化合物のパーフロオロポリエーテ
   ルアシル基は、化３，化４，化５のいずれかで表される
   ことを特徴とする請求項１記載の磁気記録媒体。 【化３】 【化４】 【化５】
4. 【請求項４】 チタン化合物のアルコキシ基は、化６，
   化７，化８のいずれかで表されることを特徴とする請求
   項１記載の磁気記録媒体。 【化６】 【化７】 【化８】