JPH0729633B2 - 自動二輪車のエンジン懸架装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はクランクケースが上ケースと下ケースからなる
自動二輪車のエンジンの懸架装置に関する。

（従来技術） クランクケースが上ケースと下ケースとからなる自動二
輪車エンジンのフレームへの懸架構成としては、通常、
ダブルクレードル型やセミダブルクレードル型などのフ
レームにより形成された枠組空間内にエンジンが搭載さ
れ、上ケースおよび下ケースの後部が主フレームの後部
あるいは該後部に固定されたブラケットに懸架されると
ともに、下ケースの前部が主フレームの下方に配設され
たダウンチューブに懸架されたものが多い。また、シリ
ンダヘッドが上端面に固定されたシリンダブロックの下
端面は上ケースに固定されている。

ところで、クランクケース内のトランスミッションなど
の部品の修理、交換、点検あるいはギヤ比（レシオ）変
更などの必要が生じた時に、クランクケースの上下ケー
スを分解しなければならないが、上記のごとき従来のエ
ンジン懸架構成では、下ケースだけを取外せるようにな
っておらず、クランクケースを含めたエンジン全体をフ
レームから降ろさなければならない。

さらには、特にフレーム枠組への搭載構成上、シリンダ
ヘッドおよびボディが前傾状態で上ケースに固定された
ものでは、エンジンの爆発荷重や慣性力により上ケース
と下ケースをずらそうとする大きな分力が作用する。こ
れに対応して上ケースと下ケースの合い面を強固に固定
する必要があり、そこで、クランクシャフトに近接して
両者をリークボルトにより締着しているが、従来では、
このリーマボルトはシリンダボディが固定されると、該
ボディに覆われるシリンダ内部から締着されたものがあ
る。そのため、このリーマボルトはシリンダボディを取
外さなければ外すことができず、したがって、上記のご
とき構成ではエンジンをフレームから降ろし、かつ、シ
リンダボディを上ケースから分解しないことには、下ケ
ースを取外すことができないようになっている。

また、カムチェーンの揺動を抑えるためのダンパーチェ
ーン（テンショナー）の回動支持部が一般に下ケースに
設けられていることからも、シリンダヘッドおよボディ
回りの分解をすることなく、下ケースのみの分解は困難
であった。

以上のように従来の懸架構成では、トランスミッション
の部品の交換などを行なうための作業が煩雑となり、し
かも、長時間を要するといった問題点を有していた。

（発明の目的） 本発明は、上記従来の問題点を解消するもので、クラン
クケースの上ケースをフレームから取外すことなく、す
なわち、車載のまま下ケースを分解することができる構
成として、トランスミッションの部品の交換、点検など
の作業を容易かつ、短時間で行なえるようにした自動二
輪車のエンジン懸架装置を提供することを目的とする。

（発明の構成） 本発明は、シリンダヘッドおよびブロックが固定された
上ケースと、この上ケースの下側に固定された下ケース
とから構成されたクランクケースを備えてなる自動二輪
車のエンジン懸架装置であって、上ケース側（上ケース
およびそれに取付けられたシリンダボディおよびシリン
ダヘッド）を主フレームに懸架し、上ケースに下ケース
を固定するためのボルトのうち、少なくともシリンダブ
ロックが固定される部分に対応する部分に取付けられる
全てのボルトを下ケースの下方から締着し、かつ、動弁
系駆動用チェーンのダンパーチェーンの回動支持部を合
わせ面に対して上ケース側に設けたものである。

この構成により、上下ケース締め付けているボルトを外
せば上ケースが車載状態のまま、下ケースを分解するこ
とができる。

（実施例） 第１図〜第３図により本発明の一実施例について説明す
ると、ヘッドパイプ１から斜め下後方に延びる主フレー
ム２の前部と後端部の各下方にそれそれれ前フレーム
３、ブラケット４が固定されている。シリンダヘッド
５、シリンダブロック６および、このシリンダブロック
６の下端が固定された上ケース７と下ケース８とからな
るクランクケース９などからエンジン10が構成され、こ
のエンジン10は上記主フレーム２と前フレーム３、ブラ
ケット４により画成された空間に搭載され、エンジン10
自体が主フレーム２の下方におけるフレーム構造体をな
すように構成されている。すなわち、フレームとして
は、前フレーム３のブラケット４の各下端部間には下フ
レームを備えていない、いわゆるダイヤモンドフレーム
を構成している。そして、上ケース７の前部が前フレー
ム３の下端部にボルト11などにより懸架され、上ケース
７および下ケース８の各後部がブラケット４にブラケッ
ト、ボルト12,13などにより懸架され、上ケース７と下
ケース８とは、合い面14にて突き合わされ、ボルト締着
されることにより固定されている。

上記上ケース７と下ケース８の締着構成については、第
２図に示すように、合い面14をはさんで上方からボルト
15などが締着され、下方からボルト16〜19などが締着さ
れている。そして、少なくとも、クランクシャト用孔20
に近接しシリンダブロック６が固定される部分に対応す
るリーマボルトは下方から締着されており、従来ではシ
リンダブロック６がボルト21により上ケース７に固定さ
れることにより、シリンダ22内に臨む内壁面からリーマ
ボルトを締着していたのに対し、本発明ではこのような
リーマボルトを設けることなく、リーマボルト18に示さ
れるように、下ケース８の下方から締着している。すな
わち、上ケース７に下ケース８を固定するボルトのう
ち、少なくともシリンダブロック６が固定される部分に
対応する部分に取付けられるボルト（この実施例ではボ
ルト17,18,19）は上ケース７の上面に露出しないように
下ケース８の下方から締着している。このような締着構
成とすることにより、シリンダブロック６を取外さなく
とも、下ケース８を脱着することが可能となる。また、
このようにリーマボルトを追加的に設けることにより、
シリンダが前傾構成をとったことで合い面15をずらそう
とする分力が働いても、それを打消し補強効果が得られ
る。

また、第３図に示すようにクランクシャフト20aとカム
シャト用スプロケット23との間に張架されたカムチェー
ン24の揺動を抑えるためのダンパーチェーン（テンショ
ナー）25の下端の回動支持部25aは、上ケース７側に設
けられている。すなわち、上記回動支持部25は上ケース
７の内壁にブラケット26を介してボルト27により取付け
られているこのようにダンパーチェーン25を上ケース７
側に取付けることにより、ダンパーチェーン25が下ケー
ス８の脱着に何ら支障なくなる。なお、第３図におい
て、28は下ケース８の下部に固定されたオイルパン、29
は下ケース８の前面に固定されたオイルのフィルターで
ある。

上記実施例のようなエンジン懸架構成とすることによ
り、クランクケース９の下ケース８のブラケット４への
懸架部分を外し、ケース7,8を締付けている各ボルト15,
16,17,18,19などを外せば、ケース７を車載状態のまま
容易に下ケース８を脱着、分解することができ、その作
業時間は、従来のようにフレームからエンジン全体を降
ろして、さらにシリンダヘッド回りを分解する場合に比
し、大巾に短縮することができる。また、エンジン10全
体をフレームから降ろした場合でもシリンダヘッド回り
を分解することなく、下ケース８を脱着、分解すること
ができる。したがって、トランスミッションのギヤなど
の部品の交換、修理などを極めて作業性よく行なうこと
が可能となる。

第４図は本発明の他の実施例による構成を示し、この実
施例では上記実施例の前フレーム３に代えて、ブラケッ
ト３′を用い、このブラケット３′によりシリンダヘッ
ド５を主フレーム２に懸架しており、その他の構成では
上記実施例と同様である。このような懸架構成であって
も、上記と同様の効果が得られる。

（発明の効果） 以上のように本発明によれば、クランクケースが上ケー
スと下ケースとから構成され、上ケース側を主フレーム
に懸架し、これにより、エンジン自体が主フレーム下方
におけるフレーム構造体をなすようにし、しかも上ケー
スに下ケースを固定するためのボルトのうち、少なくと
も、シリンダブロックで隠れる部分における上方からの
ボルトを無くし、これに対応する部分においては下方か
ら締着する構成とし、かつダンパーチェーンを上ケース
側に設けたことにより、下ケースの懸架部分を外し、さ
らに上下ケースを締付けているボルトを外せば、上ケー
スを車載状態のまま、下ケースを脱着、分解することが
でき、また、エンジンをフレームから降ろした場合に
も、シリンダ回りを分解することなく、下ケースだけを
脱着、分解することができる。

したがって、トランスミッション回りの部品の交換、修
理などを行なうためにクランクケースの上下ケースを分
解するに際し、従来のようにエンジンをフレームから降
ろし、かつシリンダ回りを分解しなければならない構成
に比し、上下ケースの分解作業は極めて容易、かつ、簡
単となり、これらの作業を短時間にて行なうことができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例による自動二輪車のエンジン
懸架装置の側面図、第２図は同装置におけるクランクケ
ースの上下ケースの締着部を断面して示した側面図、第
３図は同エンジンのダンパーチェーン部分を断面して示
した側面図、第４図は本発明の他の実施例による側面図
である。 ２…主フレーム、３…前フレーム、３′…ブラケット、
４…ブラケット、５…シリンダヘッド、６…シリンダボ
ディ、７…上ケース、８…下ケース、９…クランクケー
ス、10…エンジン、15〜19…ボルト、25…ダンパーチェ
ーン、26…回動支持部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドおよびブロックが固定され
   た上ケースと、この上ケースの下側に固定された下ケー
   スとから構成されたクランクケースを備えてなる自動二
   輪車のエンジン懸架装置であって、上ケース側を主フレ
   ームに懸架し、上ケースに下ケースを固定するためのボ
   ルトのうち、少なくともシリンダブロックが固定される
   部分に対応する部分に取付けられる全てのボルトを下ケ
   ースの下方から締着し、かつ、動弁系駆動用チェーンの
   ダンパーチェーンの回動支持部を合わせ面に対して上ケ
   ース側に設けたことを特徴とする自動二輪車のエンジン
   懸架装置。