JPH07294485A - 分析装置における液体バイアル操作装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】簡単な構成で、トレイ動作を制限せずに液体バ
イアルの操作を可能とする液体バイアル操作装置。 【構成】本発明は、複数のバイアルを取り扱うためのト
レイと、トレイの近傍に配置された、バイアルを持ち上
げる手段とを含む。トレイはバイアルを保持するための
複数の溝部を有する。溝部は開口しており、持ち上げ手
段の可動フィンガが垂直方向に移動することを可能に
し、よって、バイアルを上方向にトレイから持ち上げ
る。さらに、バイアルが持ち上げられているとき、トレ
イは回転自由であり、他のバイアルを他の持ち上げ手段
まで運び、このバイアルを持ち上げることもできる。本
発明では、機械的に簡単な構成で、試料液体と電解質を
それぞれ含有される複数のバイアルを取り扱うキャビラ
リ電気泳動に特に適用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、分析装置、特に、キャ
ピラリ電気泳動をおこなうための装置において液体バイ
アル(vials)の操作をおこなうための装置に関するもの
である。

【０００２】

【従来技術とその問題点】キャピラリ電気泳動は、分析
化学において利用される一つの分離法であり、この方法
は分離されるべき試料物質の電気泳動移動度の差異を利
用するものである。例えば、キャピラリ電気泳動は、タ
ンパク質やペプチドなどの異なる生物学的分子を分離す
るために用いられる。分離は、両端部に開口を有するキ
ャピラリの中で行われ、このキャピラリに電界が印加さ
れることにより、管中で異なる試料物質の電気泳動によ
る分離が生じる。電界は、それぞれキャピラリの端部に
配置され。、高電圧電源と接続する電極手段によって与
えられる。キャピラリは電気伝導性の電解質が充填され
ており、キャピラリ内で電界が確立される。キャピラリ
の両端部はそれぞれ電解質を保持したバイアル中に浸さ
れている。

【０００３】新規の試料物質が後続の分離のためにキャ
ピラリに注入されるとき、電解質を含有するバイアルは
キャピラリの一方の端部から取り外され、試料を含有す
るバイアルがこの位置に配置される。よって、キャピラ
リの端部が試料液体中に浸漬される。その後、バイアル
が配置されているキャピラリの一方の端部に大気圧以上
の圧力を印加するか、キャピラリの他方の端部に真空を
印加する等の適切な方法により、試料をキャピラリへ注
入する。試料物質がキャピラリに注入されると、試料バ
イアル(sample vial)は取り外され、電解質バイアル(el
ectrolyte vial)が再びこの位置に設置される。そし
て、高電圧が印加され、試料物質の電気泳動が起こる。
キャピラリの試料注入の端部と反対側の端部には、分離
された試料物質を適切な検出法、例えば、光吸収または
蛍光技術で検出するための検出器が設置される。

【０００４】数回の電気泳動分離がおこなわれた後、キ
ャピラリ中に流れる電流によって電気化学プロセスで生
成される生成物の堆積を防止するために、電解質バイア
ルから電解質を取出す(draw off)必要がある。電解質が
取出されるか、電気泳動系中に存在しない場合には、電
解質を詰め替えなければならない。

【０００５】前述より、キャピラリ電気泳動を実施する
ためには、液体が関与する複数の取り扱い、例えば、キ
ャピラリの２つの端部を電解質中に浸漬させたり、キャ
ピラリの一方の端部まで試料液体を運んだり、電解質の
詰め替え等の操作を行わなければならない。これらの液
体は典型的にはバイアル中に貯蔵されているので、バイ
アルおよび／または分離キャピラリの複数回の移動を行
わなければならない。化学分析を自動的におこなうこと
のできる電気泳動装置を提供するため、バイアルおよび
／またはキャピラリの前述の機械的な移動をおこなう液
体バイアルの操作をおこなうため(handling)の装置が必
要である。

【０００６】従来では、キャピラリ電気泳動における液
体バイアルの操作をおこなうための幾つかの異なる概念
が知られている。第一のアプローチでは、変更すること
ができない固定された電解質貯蔵器がキャピラリの出口
端部に設けられる。キャピラリの入口端部は、試料バイ
アルおよび電解質バイアルに対応する機構によって移動
される。このアプローチは幾つかの欠点を有する。キャ
ピラリの端部は分離工程中には同じ水準には保たれない
ので、キャピラリの端部間には流体力学的圧力差が発生
し、これにより分離効率は低下する。さらに、電気泳動
分離の前処理(preparation)および実施のための液体
は、キャピラリの入口端部でしか変えることができな
い。これは、装置の多目的性（多用性）(versatility)
が制約される。もう一つの欠点は、分離された試料フラ
クションはキャピラリの出口端部でしか収集することが
できないことである。

【０００７】液体バイアルを取扱うための第２の既知の
溶液では、キャピラリの出口端部に電解質貯蔵器が設け
られ、キャピラリの入口端部には試料バイアルと電解質
バイアルを保持する円形のマガジン(circular magazin
e)が配置される。キャピラリの端部が対応する液体中に
浸漬されるように試料バイアルと電解質バイアルを持ち
上げるための持ち上げ機構(lifting mechanism)が設け
られている。この装置の欠点は、電気泳動のための前処
理および電気泳動をおこなうための液体がキャピラリの
入口端部においてしか変えられることができない前述の
従来の装置におけると同様である。その上、分離された
試料フラクションはキャピラリの出口端部において収集
することができない。

【０００８】従来の他の一つのバイアル取扱い装置にお
いては、キャピラリの両方の端部が固定される。キャピ
ラリの両端部付近には、試料バイアルおよび電解質バイ
アルを保持する各円形のマガジンが備えられている。こ
れら二つのマガジンは互いに独立に操作される。試料バ
イアルと電解質バイアルはキャピラリの端部が対応する
液体に浸されるように引上げられる。このような液体取
扱い装置は例えばヨーロッパ特許A 0 339 779に開示さ
れる。この既知の装置は共通の軸の回りに回転可能な二
つの同軸コンベヤーを有している。これらのコンベヤー
はキャピラリ電気泳動のためのキャピラリを有するカー
トリッジの下側のレジストリ(registry)に運び込むこと
ができる隔壁で封止されたバイアルを有する。各バイア
ルがそれぞれバイアルホルダ内に保持されるバイアル
は、一方のコンベヤーの上に配置された一方のバイアル
が垂れ下がっている対応する(depending)一方の端部の
下側まで運ばれ、他方のコンベアー上に配置された他方
のバイアルは垂れ下がっている対応する(depend)キャピ
ラリの他方の端部の下側まで運ばれる。キャピラリの端
部に対するバイアルのレジストリがおこなわれると、皮
下注入器(hypodermics)がバイアルの封止隔壁を貫通す
るまで、バイアルは、バイアルホルダのピストン駆動運
動によりコンベヤーに対して上方向に移動する。注入器
が貫通した後、ピストン駆動運動はバイアルの内部の内
容物へアクセスするために注入器をキャピラリまたは電
極へ通し続ける。

【０００９】既知の装置はバイアルに対してそれぞれ駆
動モータと引上げ機構を有する二つのマガジンを必要と
するので、機械的に非常に複雑であるという欠点を有す
る。さらに、キャピラリのある端部に対してバイアルに
は固定される相応関係が成立している、すなわちキャピ
ラリの入口端部に配置することのできるバイアルはキャ
ピラリの出口端部には配置することができず、その逆の
ことも同様である。

【００１０】

【発明の目的】したがって、本発明の第１の目的は、上
述の問題点を解消し、従来の装置よりも簡単な構成であ
る分析装置、特に、キャピラリ電気泳動装置における液
体バイアルの操作をおこなうための装置を提供すること
である。本発明の第２の目的は、従来の装置よりも多用
性で、上述の既知の装置が有する制約を有しない分析装
置における液体バイアルの操作をおこなうための装置を
提供することである。

【００１１】

【発明の概要】本発明により上述の目的を解決する装置
を提供するものであり、本発明の装置はバイアル、例え
ば試料液体または電解質液を保持するバイアルを受容す
る一つの移動可能なトレイを備え、このトレイはそれぞ
れバイアルを保持するための複数のバイアルホルダを有
するものである。この装置はさらにそのバイアルホルダ
からバイアルを持ち上げるためにトレイの近傍に配置さ
れた少なくとも一つの持ち上げ手段と、持ち上げ手段の
近傍に、バイアルを選択的に配置させるなどのためにト
レイを移動させる駆動手段とを有する。

【００１２】本発明では、分析装置の操作時において用
いられるバイアルが一つの移動可能なトレイ中に配列さ
れており、これらバイアルをトレイから持ち上げられ、
例えば、電気泳動キャピラリ等の分析装置の所望の位置
に動かすことができる。これは、トレイからバイアルが
持ち上げられたとき、トレイが移動できるように持ち上
げ手段によっておこなわれる。トレイからバイアルを持
ち上げた後もトレイは移動可能なので異なるバイアルに
関する他のいくつかの操作を平行におこなうことができ
る。トレイの近傍に幾つかの持ち上げ手段が設けられた
場合、バイアル中の液体の操作をおこなうために第１の
バイアルを第一の持ち上げ手段によって持ち上げ、そし
て、トレイを移動させ、第２のバイアルを第２の持ち上
げ手段によって持ち上げること等が可能となる。したが
って、幾つかのバイアル中の液体の操作を平行におこな
うことができる。

【００１３】これと対照的に、前述の従来のバイアル操
作装置は、バイアルがトレイから持ち上げられると、ト
レイがふさがれるのでこのような平行操作を実施するこ
とができない。本発明の装置は単一のトレイを有するこ
とから、従来の装置よりも機械的に複雑でなく、特に、
トレイを移動させるための駆動手段は一つしか必要とし
ない。さらに、一つのトレイしか使用しないので装置の
多用性が向上する。各バイアルはトレイの任意の場所に
配置されるが、幾つかのトレイ（マガジン）を有する従
来の装置においては、異なるトレイ中のバイアルが分析
装置における異なる位置へ運ばれなければならないの
で、ユーザはどのバイアルをどのトレイに置くかを前も
って決定しなければならない。

【００１４】本発明の好適な一実施例においては、バイ
アル操作装置はキャピラリ電気泳動を行うための装置内
で用いられる。本実施例によれば、トレイの近傍に少な
くとも二つの持ち上げ手段が配置されており、各トレイ
はキャピラリの各端部にに設けられている。キャピラリ
の端部は垂直下降方向に垂れ下がっており、バイアルが
電解質液または試料液中に浸漬されるまでキャピラリに
向かって持ち上げられる。本発明の利点として、キャピ
ラリの端部までバイアルをそれぞれ持ち上げた後、液体
の操作を行うことができる他の持ち上げ手段の第３のバ
イアルを配置するためにトレイの位置を変えることがで
きる。この第３の持ち上げ手段は電解液などの液体を吸
い出すか充填するための手段を有する。例えば、電気泳
動分離が起こっている間、電解液を詰め替えることがで
きる。さらに、本発明は分離カラムが洗浄される間に電
解質の充填をすることができる。

【００１５】本発明の一実施例における持ち上げ手段は
所望の距離で上下に移動させることができるので、バイ
アル中に保持される液体の相対的な液体水準を調節する
ことが可能である。これは、キャピラリの端部における
バイアル間の静水圧差がキャピラリ内で液体の移動をも
たらすことによって、キャピラリ電気泳動において特に
重要である。本発明に係る持ち上げ手段は、電気泳動の
間、液体水準が等しくなるように調節することができ
る。また、水準の差は静水圧差による試料注入を効果的
に行うために２つのバイアル間で調節することができ
る。

【００１６】電気泳動装置に用いられる本発明の他の付
加的な利点は、詰め替えシステムを高電圧電極から離し
て配置することができる。したがって、詰め替えシステ
ムを高電圧火花から保護するためのさらに他の防護的手
段を必要としない。

【００１７】電気泳動装置に用いられる本発明のさらに
他の一つの利点は、キャピラリの出口端部へアクセスす
ることが可能なので、試料フラクションがキャピラリの
出口端部で収集することができる。本発明に係る装置
は、例えば、試料間処理を行うためにさらに他の持ち上
げ手段を追加することによって容易に拡張することがで
きる。このような持ち上げ手段は、試料液体を加熱また
は混合するための手段を有する。

【００１８】本発明の一実施例においては、持ち上げ手
段は、バイアルの下側に設けられ、トレイからバイアル
を上方向に移動させることができるフィンガ形状の持ち
上げ部材から構成される。トレイは、バイアルを受け取
るための複数の穴(bores)を有する。これらの穴は、バ
イアルを持ち上げるためにフィンガ部分が下からこの穴
を通って移動することができるようにトレイの外側に向
かって開口している。このようにして、トレイを妨害し
ないでバイアルをトレイから持ち上げるための機械的に
簡単な構成の解決策を得ることができる。本発明の一実
施例では、トレイは円形で、持ち上げフィンガ部材がそ
の中を通って移動できるように、外側半径方向の開口が
設けられる。

【００１９】キャピラリ電気泳動装置に用いられる本発
明の一実施例においては、各持ち上げ手段は、隔壁で封
止されたバイアルがトレイから持ち上げらえれう時、孔
を開ける穴あけニードル(punching needle)を有するヘ
ッド部分を有する。穴あけニードルは中空で、分離キャ
ピラリの一方の端部はその中を通って貫通する。バイア
ルが持ち上げ部材によってヘッド部分に対向するように
移動されると、穴あけニードルは隔壁に孔を貫通させ、
へッド部分に保持されたバイアルを有するヘッド部分
は、さらに、分離キャピラリの一方の端部がヘッド部分
の孔によって受けとめられるまで上方に移動される。そ
の後、この孔によって導かれ、穴あけニードルの内部に
よってバイアルの中へ導かれる。穴あけニードルを使用
することによって、キャピラリは隔壁に孔を開ける必要
がないという利点を有する。キャピラリは壊れ易い繊細
な部材なので、従来では、特別にあらかじめ孔を開けら
れた隔壁を使用することが多かった。これと対照的に、
本発明の実施例では、このような特別の隔壁を必要とし
ない。電気泳動分離のための高電圧を印加する電極もこ
のような中空の穴あけニードルによってバイアルに導入
されることが好ましい。この場合、電極はキャピラリを
囲む導電性材料よりなる管である。電極管の外径は、そ
れが穴あけニードルの中を通過できる寸法である。

【００２０】本発明はキャピラリ電気泳動装置に関連し
て利用できるだけでなく、液体クロマトグラフの注入ニ
ードルへ試料バイアルを持ち上げるために、液体クロマ
トグラフにも適用できる。電気泳動装置の場合のよう
に、幾つかの試料前処理ステップを試料注入と平行に実
施できるように、試料バイアルがトレイから取り出され
るとき、試料トレイがふさがらないという利点を得るこ
とができる。このシステムは所望の試料前処理ステップ
を実施することができるように新たな持ち上げ手段を付
加することによって容易に拡張することができる。

【００２１】

【発明の実施例】図１はキャピラリ電気泳動装置の概略
図である。分離キャピラリ１は、電解質を含有する第１
のバイアル２の入口端部と、電解質を含有する第２のバ
イアル３の出口端部に浸されている。キャピラリ１の入
口端部側の電極５を介して、高電圧電源４によってキャ
ピラリ１に沿って電界が印加される。キャピラリ１の出
口端部側の電極６は、接地電位と接続する。試料バイア
ル７は、電気泳動によって分離される試料物質を含有し
ている。試料物質をキャピラリ１に導入するために、バ
イアル２は試料バイアル７と置き換えられ、試料液体の
プラグ(a plug of sample liquid)は適切な注入手段
（図示せず）によってキャピラリ１に注入される。例え
ば、試料液体は試料バイアル７中の液体に加圧すること
によって導入することができる。キャピラリ１中で分離
した試料物質は、キャピラリ１の出力端部に設置された
検出器８によって検出される。検出器８は、例えば、紫
外線吸収検出器とすることができる。検出器８は検出器
を通過する物質を表わす信号を発生する処理回路（図示
せず）と接続する。キャピラリ１は典型的にはフューズ
ドシリカから形成される。

【００２２】図２には、本発明の一実施例である液体操
作装置を示す。分離キャピラリは参照番号１で示されて
いる。キャピラリ１は長い一本の管状のキャピラリ、例
えば、長さ１ｍのものがスペースを節約して配置できる
ようにコイル状に巻かれれている。電極５はキャピラリ
１の入口端部に配置され、電極６はキャピラリ１の出口
端部に配置されている。電極５および電極６は、適切な
電気接続によって（図示せず）それぞれ高電圧電源およ
び接地電位と接続する。第１のバイアル２は第１の持ち
上げ手段20によって保持され、第２のバイアル３は第２
の持ち上げ手段21によって保持されている。バイアル２
および３は、どちらも電解質を含有してもよく、あるい
は、バイアルの一方が電解質を含有し、他方のバイアル
が試料液体を含有してもよい。同じ構造を有する２つの
持ち上げ手段20および21は、取付けプレート26に取付け
られている。持ち上げ手段20は、取付けプレート26の下
方に配置さたモータ27と接続しており、モータ27によっ
てバイアル２は垂直方向に移動することができる。持ち
上げ手段21もモータ（図示せず）と接続しており、モー
タによってバイアル３は垂直方向に変位することができ
る。持ち上げ手段20の詳細は、図４に関連して以下に説
明する。

【００２３】電極５および電極６は下方端部に導電性の
チューブから構成される。これらの導電性チューブは、
キャピラリ１の端部を包囲している。各電極の導電性チ
ューブは、導電性チューブ内に導かれるキャピラリ１の
端部とともに、持ち上げ手段21、22のヘッド部材24、25
の孔22、23から突出しており、バイアル２、３中の液体
に浸っている。したがって、電界をキャピラリ１に沿っ
て印加することができる。

【００２４】バイアルを受けるリング状のトレイ28が、
取付けプレート26上に取り付けられる。トレイ28は、バ
イアル保持リング31が取付けられている支持リング32を
有する。バイアル保持リング31は、バイアル、例えば、
電解質バイアルと試料バイアルを受けるための溝部など
の複数の溝部を有する。トレイ部分（tray segment、バ
イアル保持リング）31は、その溝部とともに一片の、例
えば、フライス盤のアルミニウム(aluminum machined b
y milling)のブロックあるいは鋳造金属(castmetal)か
ら形成されている。この一片の部分31をオペレータが溝
部に挿入されたすべてのバイアルとともに支持リング32
から取り出すことができ、所望の試料バイアルと電解質
バイアルが配置される他のトレイ部と置き換えることが
できる。これは、試料バイアルと電解質バイアルの操作
が容易で便利になる。

【００２５】図示の実施例においては、バイアル保持リ
ング31は円の四分の一に相当するただ一部分である。し
かしながら、バイアルホルダを支持リング32の全円周に
沿って配置できることは明らかである。例えば、支持リ
ング32の上に部分31と同じ形状を有する付加トレイ部分
を設けるか、あるいは、四分の一円部分の代わりに異な
る円形部分または完全な円形部を用いることができる。
図3aには円の全周の回りにバイアルホルダを備えた実施
例が示されている。この実施例におけるトレイは一片の
材料から製造してもよいし、図２に示すように部分31と
同様のタイプの４つの部分から形成してもよい。

【００２６】再び図２を参照すると、リング32は軸受3
3、34および35によって支持されており、これらの軸受
は、リングの中心を通る軸の回りにリングが回転するこ
とができるようにリング内に配列されている。リング32
を回転させるためにモータ36と支持リング32の外側表面
の回りで動く、歯付きベルト(toothed belt)37およびモ
ータ36の駆動軸が備えられている。したがって、トイ28
は所望のバイアルを持ち上げ手段20、21の位置に配置さ
せることができるように回転する。持ち上げ手段はトレ
イ28から持ち上げ手段のヘッド部材24、25へバイアルを
持ち上げる持ち上げ機構を有する。この持ち上げ機構は
図４を参照して以下にさらに詳しく説明する。持ち上げ
手段20または21中に配置されてきたバイアル、例えばバ
イアル２または３は、溝部29または溝部30などのトレイ
28の自由溝部内へ再び下降させることができる。バイア
ルがトレイ中に配置されると、トレイは異なるバイアル
をトレイから取り出すことができるように新しい位置に
まわる。図２に示されるように、キャピラリ１の端部と
その側に設けられた電極がそれぞれバイアル２および３
中の液体中に浸るように、バイアル２、３は第１の持ち
上げ手段20により、第２の持ち上げ手段21をヘッド部分
24、25へ向かって持ち上げられる。

【００２７】持ち上げ手段20、21と同等の構造を有する
第３の持ち上げ手段40がトレイ28に設けられる。この第
３の持ち上げ手段の役割は、バイアル41などの電解質バ
イアル中の電解質を詰め替えることである。この目的の
ために、持ち上げ手段40のヘッド部分43から突出してい
る詰め替えニードル42が取付けられている。詰め替えニ
ードル42はポンプ（図示せず）にその一方の端部によっ
て接続しており、ニードルがバイアル41に浸されるとき
にこのポンプによってバイアル41から液体を吸出すこと
ができる。バイアル中の使用ずみの電解質を詰め替える
ときには、トレイは対応するバイアルが持ち上げ手段40
の位置に来るまでモータ36によって回転され、そして、
詰め替えニードル42が電解質中に浸漬されるように、持
ち上げ機構はバイアルを持ち上げ手段40のヘッド部分に
向かって持ち上げる。これは、図２に示された状況に対
応する。そして、詰め替えニードル42に接続されたポン
プは電解質がバイアル41から吸い出す(sucked out)よう
に駆動される。使用ずみの電解質は次にポンプによって
廃液容器（図示せず）に入れられる。

【００２８】その後、新鮮な電解質を電解質供給容器
（図示せず）からバイアル41中に導入され、バイアルは
再びトレイ28の溝部内へ下降される。詰め替えられた電
解質を有するバイアを、トレイ28の、持ち上げ手段20ま
たは21の一つに対応する回転によって移動させ、ここ
で、バイアルは電気泳動分離を実施するための分離キャ
ピラリ１の端部と再び接触させることができる。

【００２９】試料バイアルを冷却あるいは加熱すること
が必要な場合、冷却あるいは加熱装置は支持リング32の
内側縁部に設置することができる。例えば、冷却コイル
はリング32の円形内側縁部に固定することができる。リ
ングは典型的には金属より形成されているので、良好な
熱伝導性が保証される。

【００３０】図3aは本発明の一実姉例を示す。装置は、
試料バイアルと電解質バイアルを受けるための溝部がト
レイ28の全円周に沿って取付けられている以外、図２に
示された装置と実質的に相当する。図２の装置は、四分
の一の円に沿ってのみ溝部が設けられているが、円全体
になるように部分31等の４つの部分を取付けることによ
って図３に示される装置に変換することも可能である。
第１の持ち上げ手段20と第２の持ち上げ手段21はトレイ
28の近傍に配置され、電気泳動分離を実施するためにキ
ャピラリ１の端部と接触させるため、バイアルをトレイ
28から上側方向に持ち上げる手段を有する。他の２つの
持ち上げ手段と同じ設計を有する第３の持ち上げ手段40
は、図２に関連して前に説明された電解質を詰め替える
のに役立つ。

【００３１】支持リング32は軸受33、34、35に支持され
ている。したがって、支持リングはリング32の中心を通
って紙面に対して垂直に伸びる軸の回りに回転すること
ができる。支持リングは図２に示される歯付きベルト37
を介して駆動される。

【００３２】溝部29、30などの溝部は実質的に円筒状で
あるので、円筒状バイアルがそれぞれ適合する。溝部の
形状をさらに詳細に説明するために、トレイ28の周囲の
幾つかの同等の溝部の部分拡大図である図3bを参照され
たい。図3aと同様に図3bは平面図である。バイアルを配
置することのできる円筒状の溝部の底部は、スロット44
を有し、このスロットから持ち上げ手段のフィンガ48を
下方向に導入することができる。スロットの左右には支
持面45、46が設けられており、溝部中のバイアルの底部
を支持する。スロット44は上方向に伸長し、円筒状の溝
部の長手方向の軸と平行となるように伸長している（紙
面に対して垂直に）。この側面のスロットは参照番号47
が付けられており、図２においてよりよく見ることがで
きる。スロット47に伸びるスロット44を備えることによ
って、ひとつの持ち上げ手段によりトレイからバイアル
を取り出すことが可能になる。この目的のため、各持ち
上げ手段は、面45および46によって支持されているバイ
アルの下方向に配置することができ、スロット44および
47から上方向に移動させるフィンガ48などのフィンガ部
材を有する。フィンガ48が上方向に移動すると、バイア
ルを上方向に押し上げる。この持ち上げ機構については
図４に関連して以下に説明する。

【００３３】図４は図２に示された持ち上げ手段20の断
面図である。他の持ち上げ手段21、40は同じ設計である
ので個別に説明しない。持ち上げ手段20は、取付け板26
に固定された円筒状のハウジング56を備えている。ハウ
ジング56の内部には、ヘッド部分24を固定するガイドス
リーブ49が配置されている。ガイドスリーブ49はハウジ
ング56内で円筒の軸に沿って移動することができる。ガ
イドスリーブ49の下部は金属リング57から構成される。
スプリング53は金属リング57上に作用して、ガイドスリ
ーブ49を止め具52に押し付ける。止め具52はスピンドル
・ドライブ50のための軸受としても働く。

【００３４】持ち上げフィンガ48がバイアル２をトレイ
28から持ち上げるために設けられている。持ち上げフィ
ンガ48は、モータ27によってスピンドル・ドライブ50を
介して移動する。モータ27とスピンドル・ドライブ50は
カップリング51を介して連結する。スピンドル・ドライ
ブ50の回転によってフィンガ48は上方向に移動し、バイ
アル２を運搬する。バイアル２と接触しているフィンガ
48の端部はバイアルが変位しないように図２に示される
ようなステップ(step)を備えていてもよい。バイアル２
とともにフィンガが上方向に移動すると、バイアル２は
最終的に持ち上げ手段のヘッド部分に押し付けられるの
で、穴あけニードル58はバイアル２の隔壁59に孔を形成
する。穴あけニードル58は中空のニードルである。穴あ
けニードル58の内径はキャピラリ１とキャピラリ１を取
囲む電極チューブがそれを通過できるような大きさに選
択される。以下にこの構成についてさらに説明する。

【００３５】スピンドル・ドライブ50はさらに回転する
と、持ち上げ手段のヘッド部分24にバイアル２を押しつ
ける力がスプリング53のプレストレス力より大きくな
り、持ち上げフィンガ48は、適切な手段（図示せず）に
よって所定の位置に保持されているキャピラリの端部に
向かってヘッド部分24とともにバイアル２を上方向に動
かす。上方向移動はキャピラリ１の一方の端部が開口22
から突出し、穴あけニードル58がバイアル２に挿入する
まで続けられる。穴あけニードルの頂部はロート(funne
l)であり、ヘッド部分が上方向に移動するときにキャピ
ラリ１を捕え、キャピラリとそれを取囲む電極チューブ
と結合する対応の逆円錐(counter-cone)に封止させる機
能を有する。キャピラリ１の両側のバイアルが位置づけ
されると、試料がキャピラリに注入されて電気泳動分離
がおこなわれる。

【００３６】注入は、キャピラリ１の入口端部における
バイアルと出口端部におけるバイアルとの間に圧力差を
与えることによって行われることが好ましい。この目的
のため、穴あけニードル58の内腔と連通するチューブか
らバイアル２中の液体に過圧を与える。加圧するための
チューブは図４の紙面に対して垂直に配置されている。
印加圧の消失を、第一にロート22に導入されるキャピラ
リとそれを取囲むチューブ状の電極に接続した封止手段
(sealed arrangement)によって防ぎ、第２に環状の切取
りエッジ60によって防ぐことができる。切取りエッジ60
はバイアルがヘッド部分24に強く押し付けられるとき、
隔壁59を割込み、封止を得ることができる。キャピラリ
の封止と電極手段のさらに詳細については、本願出願人
が同日に出願した欧州特許出願番号92113244.5の主題と
して述べられている。

【００３７】バイアル２が再びトレイ28に位置にくる
と、モータ27が逆方向にスピンドル・ドライブ50を回転
させ、フィンガ48は下方向に移動する。フィンガ48は側
面スロット47およびスロット44を通って移動する。ヘッ
ド部分24はバイアル２とともにガイドスリーブ49が止め
具52に突当たるまでこの下方向移動に従う。それよりも
っと下方向に進むためには、スプリング53を圧縮しなけ
ればならない。下方向移動のあいだ、バイアル２は穴あ
けニードル58と固着する。バイアル２が穴あけニードル
58から再び移動してトレイ28の対応する溝部に配置され
ることを保証するためには揺動レバー54とこのレバーを
フィンガ48に接続させる駆動ベルト55が取付けられてい
る。フィンガ48がスロット47、44を通って十分遠くに下
方向へ移動すると、駆動ベルト55が引っ張られて、揺動
レバー54が傾くことによってバイアル２は穴あけニード
ル58から引抜かれる。

【００３８】バイアル２が再びトレイ28に置かれた後、
異なるバイアル、例えば、前述のものとは異なる試料を
含有するバイアルをキャピラリ１の一方の端部に接触さ
せることができる。このため、所望の試料バイアルが持
ち上げ手段20の位置に来るまでトレイ28を回転させ、そ
してバイアルが配置される溝部の底部のスロットと壁の
側面スロットをバイアルが通るようにフィンガ48が持ち
上げられる。トレイ28の位置からバイアルが持ち上げら
れると、バイアルは持ち上げ手段のヘッド部分によって
捕らえられるまで円筒状の孔の中に導かれる。このよう
にして、バイアルをその最終の位置まで安全に持ち上げ
ることを確実におこなう。

【００３９】同様にして、バイアル３は異なるバイアル
と置き換えることができる。例えば、バイアル３が電解
質バイアルで、電解質が電気泳動分離後に詰め替えられ
る場合には、バイアルは持ち上げ手段21によってトレイ
28まで下降し、トレイは新しい電解質を有するバイアル
が持ち上げ手段21の位置に来るまで回転し、キャピラリ
１の第２の端部が電解質に浸るまで持ち上げ手段21によ
ってバイアルが持ち上げられる。

【００４０】使用ずみの電解質を有するバイアル３は第
３の持ち上げ手段40の位置までトレイの適切な回転によ
って移動させることができ、詰め替えニードル42がバイ
アル３中の液体に浸るまで持ち上げられる。そして、液
体はバイアルから吸い出すことができ、新しい電解質を
バイアルに充填することができる。使用ずみの電解質の
詰め替えはキャピラリ１中で電気泳動分離が起っている
間に行われる。

【００４１】バイアルが持ち上げ手段20、21、40のうち
の一つによってトレイ28から取出された後、トレイ28は
自由に移動することができることは本発明の一つの重要
な利点である。これは、各持ち上げ手段のフィンガ、例
えば、フィンガ48はバイアルがその最終の位置まで持ち
上げられるとトレイ28の上方向に配列されているためで
ある。バイアルが持ち上げられた後、トレイを回転させ
ることができるので、幾つかの仕事を平行に行うことが
可能である。例えば、バイアル２、３がキャピラリ１の
両端部に配置され、電気泳動分離が行われる場合、同時
に前の電気泳動分離で使用されたバイアル中の液体を詰
め替えることもできる。さらに、本発明によれば、電解
質の詰め替えと分離キャピラリの洗浄を平行しておこな
うことができる。

【００４２】これと対照的に、従来の装置では、トレイ
はバイアルが持ち上げられている時はふさがれている。
例えば、このような従来の装置ではバイアルをキャピラ
リの端部まで持ち上げて電気泳動分離をおこなうと、ト
レイはもはや動かない。したがって、バイアルの操作処
理はそれ以上はできない。

【００４３】図２に示される装置の他の実施例では、ト
レイ28の近傍に持ち上げ手段20に類する他の持ち上げ手
段が付加される。これらの持ち上げ手段は、例えば、加
熱あるいは混合によって試料の前処理をおこなうために
トレイからバイアルを移動させるために用いる。さら
に、バーコードラベルを取付けたバイアルを識別するた
めにこれらの付加的な持ち上げ位置の一つにバーコード
リーダを取付けることもできる。また、このような付加
的持ち上げ手段を利用するときには本発明の利点はバイ
アルが持ち上げられたときにトレイが自由に移動できる
ことである。このようにして、試料の前処理、詰め替
え、バーコードリーダによるバイアルの同定を平行にお
こなうことができる。

【００４４】本発明の他の実際的な例によれば、トレイ
28は24cmの直径を有し、50個のバイアルを収容できる。
バイアルのための溝部は直径1.2cmで、深さ1.8cmを有す
る。このような溝部に挿入される代表的なバイアルは、
直径が1.15cmで高さが3.3cmである。各持ち上げ手段の
ヘッド部分とガイドスリーブは、耐高電圧性のプラスチ
ックで形成されている。代替の材料として、セラミック
でもよい。

【００４６】本発明の前述の実施例は種々のバイアルを
収容する円形のトレイを有し、この円形トレイはバイア
ルを所望の持ち上げ手段へ運搬するために回転する。し
かしながら、トレイの上記以外の実施例も可能である。
例えば、トレイは図２に示される実施例と同様な円形の
変わりに、直線に沿ってバイアルが配列されるように直
線形のものであってもよい。このような他の実施例で
は、トレイはバイアルを収容するための複数の溝部と持
ち上げ手段にフィンガがバイアルをトレイの外に持ち上
げる底部および側部のスロットを有する棒の形状を有す
るものとなる。持ち上げ手段は直線に沿って配置され、
トレイはこの線に沿ってあるいは平行に直線的に移動す
る。

【００４７】本発明は電気泳動システムだけでなく、液
体クロマトグラフなどの他の分析装置に対して用いるこ
ともできる。液体クロマトグラフでは、本発明の装置は
クロマトグラフシステムへの試料の注入を含めて種々の
試料バイアルを収容および処理するために用いることが
できる。本発明の装置の持ち上げ手段は、試料バイアル
を（図２に示される詰め替えニードルと同様の）静止し
た注入ニードルの所まで持ち上げて、ポンプの作用下
で、このニードルによって試料を吸い込み、クロマトグ
ラフへ導入するために用いられる。電気泳動システムと
同様に、試料の前処理を可能にする別の持ち上げ手段を
トレイの近傍に備えることができる。このような試料の
前処理の一例として、加熱、混合および拡散がある。拡
散の場合には、供給容器からの液体をニードルに接続さ
れた切替えバルブ手段によってバイアル中でかくはん
し、混合させる。従来の液体クロマトグラフ注入システ
ムに関する利点は、電気泳動システムの場合と同様で、
バイアルが取り出されたとき、トレイがふさがることが
なく、よって、注入と試料前処理ステップを平行におこ
なうことができる。さらに他の利点は新たな持ち上げ手
段を付加するだけでシステムを容易に拡張することがで
きることである。電気泳動装置と同様に、トレイの様々
の実施例、例えば円形（環状）のトレイあるいは直線状
の（細長い）トレイが可能である。

【００４８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明では、簡単
な構成でトレイ動作を制限せずに液体バイアルの操作を
可能とする。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用されるキャピラリ電気泳動装置の
概略図。

【図２】本発明の一実姉例である液体バイアル操作装置
の斜視図。

【図３ａ】本発明の他の実姉例である液体バイアル操作
装置の部分平面図。

【図３ｂ】図3aの部分拡大図。

【図４】図２に示された持ち上げ機構の部分詳細図。

【符号の説明】

１：キャピラリ ２、３、７：バイアル ４：高圧電源 ５、６：電極 ８：検出器 ２０、２３、４０：持ち上げ手段 ２６：取り付けプレート ２８：トレイ ３７：ベルト ２７、３６：モータ ３２：支持リング ４８：フィンガ ５８：穴あけニードル ５６：ハウジング

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数個の複数子のバイアルを受けるための
   単一の可動トレイと、前記トレイには夫々前記バイアル
   を保持するための複数のバイアルホルダを備えており、
   前記バイアルが前記バイアルホルダから離れるように持
   ち上げられたとき、前記トレイが可動状態となるよう
   に、前記トレイの近くに設けられた、前記バイアルを持
   ち上げるための少なくとも一つの持ち上げ手段と、選択
   可能なバイアルを持ち上げ手段の近くに配置させるよう
   に前記トレイを移動させる駆動手段とを含むことを特徴
   とする分析装置における液体バイアル操作装置。
2. 【請求項２】請求項第１項記載の分析装置における液体
   バイアル操作装置において、前記持ち上げ手段は前記バ
   イアルの底部表面の下側に配置され、前記バイアルを前
   記バイアルホルダから持ち上げるために動く可動持ち上
   げ素子から成ることを特徴とする分析装置における液体
   バイアル操作装置。