JPH07292459A - 積層体の製造方法 - Google Patents

積層体の製造方法

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JPH07292459A
JPH07292459A JP8307694A JP8307694A JPH07292459A JP H07292459 A JPH07292459 A JP H07292459A JP 8307694 A JP8307694 A JP 8307694A JP 8307694 A JP8307694 A JP 8307694A JP H07292459 A JPH07292459 A JP H07292459A
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JP
Japan
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composite film
gas
film
fluorine
composite
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JP8307694A
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English (en)
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Makoto Kitamura
真 北村
Tomoshige Tsutao
友重 蔦尾
Motokazu Yuasa
基和 湯浅
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Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた撥水性と耐擦傷性を有すると共に、透
明性に優れた積層体の製造方法を提供する。 【構成】 金属酸化物とフッ素系樹脂の複合膜をスパッ
タリング法により基材上に設けた後、少なくとも一方の
対向面に固体誘電体が配設された対向する金属電極間に
該複合膜を配置し、フッ素系ガス0.1〜10体積%と
残部が不活性ガスとからなる混合ガスの大気圧近傍の圧
力下で、少なくとも一方の電極に高電圧を印加し発生し
た混合ガスのグロー放電プラズマを該複合膜に接触させ
て、複合膜表面をフッ素化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、撥水性及び耐擦傷性に
優れると共に、透明性にも優れた積層体の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックやガラス等の基材上に、撥
水性の高い被膜を形成する方法としては、例えば、ポリ
テトラフルオロエチレン樹脂(以下PTFEという)を
はじめとする含フッ素系樹脂をターゲット材として真空
蒸着やスパッタリングを行う方法が開示されている(特
開昭56−98475号公報、特開昭56−98469
号公報)。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレン
樹脂等のフッ素系樹脂は撥水性に優れる反面、耐擦傷性
に問題があるため、耐擦傷性(ハードコート)の被膜と
して使用することは困難であった。
【0003】この問題点を解決するために、フッ素系樹
脂と金属酸化物の複合膜をプラスチック基材上に設ける
方法が開示されている(特開平3−153859号公
報)。この方法は、SiO2 ターゲットをPTFEで部
分的に被覆した複合ターゲットを用い、高周波出力50
Wで10分間、高周波スパッタリングを行うことによ
り、膜厚500ÅのSiO2 −PTFE系の複合膜をプ
ラスチック基材上に形成する方法である。
【0004】しかしながら、上記SiO2 −PTFE系
の複合膜は耐擦傷性が向上する反面、撥水性の低下が著
しく、優れた撥水性と耐擦傷性を同時に付与することは
困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記欠点に
鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた撥水性
と耐擦傷性を有すると共に、透明性に優れた積層体の製
造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の積層体の製造方
法は、金属酸化物とフッ素系樹脂の複合膜をスパッタリ
ング法により基材上に設けた後、少なくとも一方の対向
面に固体誘電体が配設された対向する金属電極間に該複
合膜を配置し、フッ素系ガス0.1〜10体積%と残部
が不活性ガスとからなる混合ガスの大気圧近傍の圧力下
で、少なくとも一方の電極に高電圧を印加し発生した混
合ガスのグロー放電プラズマを該複合膜に接触させて、
複合膜表面をフッ素化する。
【0007】上記金属酸化物としては、例えば、SiO
2 、SiO、Al23 、ZrO2、Y23 、Mg
O、ZnO、SnO2 、In23 、WO3 、Ti
2 、CaO等が挙げられ、これらは単独で使用されて
もよく、2種以上が併用されてもよい。上記金属酸化物
の中で、特にSiO2 、Al23 、ZrO2 がより好
ましい。
【0008】上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリ
テトラフルオロエチレン(以下PTFEという)、テト
ラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合
体(以下FEPという)、ポリクロロトリフルオロエチ
レン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポ
リビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、
テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニル
エーテル共重合体等が挙げられるが、特に、PTFE、
FEPが撥水性が高いので好ましい。
【0009】上記基材としては、特に限定されることな
く、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミック
ス等が挙げられるが、透明性および耐擦傷性に優れるガ
ラスまたはハードコート処理プラスチックが特に好まし
い。また、基材の厚みは、2cm以上になると、プラズ
マが発生しにくくなるので、2cm未満が好ましい。
【0010】上記フッ素系ガスとしては、4フッ化炭素
(CF4 )、4フッ化2炭素(C24 )、6フッ化炭
素(C2 6 )等のフッ化炭素ガス;2フッ化炭素水素
(C 2 4 2 )、3フッ化炭素水素(CHF3)等のフ
ッ化炭化水素ガス;1塩素化3フッ化炭素(CClF3)
等の塩素化フッ化炭素ガス;6フッ化硫黄ガス(S
6 )等が挙げられ、安全かつプラズマ中でHF等の有
害ガスを発生しないCF4、C2 6 が特に好ましい。
また、前記のPTFE、FEP等のフッ素含有樹脂等の
蒸気を使用することも可能である。
【0011】上記不活性ガスとしては、He、Ne、A
r、Xe等の希ガスやN2 ガスの1種または2種以上が
挙げられるが、準安定状態の寿命が長いためフッ素系ガ
スを励起するのに有利なHeが特に好ましい。He以外
の不活性ガスを使用する場合は、2体積%以下のアセト
ンやメタノールの蒸気ガスやメタン、エタン等の炭化水
素ガスを混合する必要がある。
【0012】上記固体誘電体としては、PTFE、FE
P、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックや、
SiO2 、Al23 、チタン酸系の強誘電体等のセラ
ミックスが挙げられる。形状はシート状でもフィルム状
でも構わないが、厚みは、厚すぎると放電しにくくな
り、薄すぎると高電圧印加時に絶縁破壊が起こりアーク
放電が生じてしまうため、1〜5mmの厚みが好まし
い。固体誘電体は少なくとも一方の金属電極の全面に設
置する必要がある。
【0013】上記金属酸化物とフッ素系樹脂の複合膜
を、基材上に設ける方法としては、スパッタリング法が
使用される。上記スパッタリング法による複合膜形成の
方法としては、フッ素系樹脂のターゲットと金属酸化
物のターゲットを各々独立した投入電力で同時にスパッ
タリングを行う多元同時スパッタリング法;金属酸化
物をフッ素系樹脂で部分的に被覆した複合ターゲットを
用いてスパッタリングを行う一元スパッタリング法など
が挙げられるが、一元スパッタリング法では、フッ素系
樹脂のスパッタリングが選択的に起こって複合膜の組成
制御が難しくなるので、多元同時スパッタリング法の方
が好ましい。
【0014】上記複合膜をフッ素化する方法としては、
少なくとも一方の対向面に固体誘電体が配設された対向
する金属電極間に該複合膜を配置し、フッ素系ガス0.
1〜10体積%と残部が不活性ガスとからなる混合ガス
の大気圧近傍の圧力下で、少なくとも一方の電極に高電
圧を印加し発生した混合ガスのグロー放電プラズマを該
複合膜に接触させて、複合膜表面をフッ素化する。
【0015】上記フッ素化する際に用いられる混合ガス
は、フッ素系ガスの濃度が10体積%を超えると、高電
圧を印加してもグロー放電プラズマが発生しないため、
また、フッ素系ガスの濃度が0.1体積%未満になる
と、表面フッ素化による撥水性向上効果が得られないた
め、フッ素系ガスの濃度は0.1〜10体積%に限定さ
れる。フッ素系ガスの濃度としては、フッ素系ガスの消
費量が少なく、表面のフッ素化による撥水性向上効果が
十分得られる0.3〜5体積%が好ましい。
【0016】上記フッ素化する際の混合ガスのガス圧力
は大気圧近傍の圧力にされる。大気圧近傍の圧力とは、
100〜800Torrのことであり、圧力調整が容易
で装置が簡便になる700〜780Torrが特に好ま
しい。
【0017】上記フッ素化する際の混合ガスの流量とし
ては、後述するプラズマ処理装置の処理室のガス圧が大
気圧近傍の圧力になるような流量であれば特に限定され
ない。
【0018】プラズマは、電極に高電圧を印加すること
により発生するが、印加電圧が低すぎるとプラズマ密度
やセルフバイアスが小さくなるため、処理に時間がかか
り非効率的であり、高すぎるとアーク放電に移行する挙
動を示すので印加電圧5〜40kV/cm程度になるよ
う電圧印加するのが好ましい。
【0019】上記複合膜を、少なくとも一方の対向面に
固体誘電体が配設された対向する金属電極間に配置し、
上記印加電圧、ガス圧力及びガス流量条件により発生さ
せた混合ガスのプラズマで数秒間〜数分間処理すること
により、複合膜表面をフッ素化することができる。
【0020】以下、多元同時スパッタリング法により、
基材上に金属酸化物及びフッ素系樹脂の複合膜を積層す
る方法について詳細に説明する。 (1)多元同時スパッタリング法 図1は、多元同時スパッタリング法に用いるスパッタリ
ング装置の一例を示す模式図である。図中1は真空槽を
示し、真空槽1は油回転ポンプとクライオポンプとを組
み合わせた排気装置(図示せず)により、所定の圧力
(具体的には、1×10-5Torr以下)に保たれる。
上記真空槽1内の下部には2個のターゲットA及びBが
設けられており、そのうちの一方が金属酸化物であり、
もう一方がフッ素系樹脂である。
【0021】ターゲットA及びBは、それぞれ別々のマ
ッチングボックス2、高周波電源3に接続されており、
A、Bはそれぞれ異なった高周波電源でスパッリングす
ることができる。また、ターゲットBについては、直流
電源4への切替えが可能であり、直流電源4によるスパ
ッタリングも行うことができる。また、上記スパッタリ
ング装置は、二つのターゲットA及びBへの投入電力を
個別に制御することにより、基材上へ積層する複合膜の
組成を制御することができる。
【0022】上記真空槽1内の上部の、ターゲットA及
びBと対向する位置に、複合膜を設ける基材C(例えば
ガラス板)を取り付けるための基材ホールダー5が配置
されている。この基材ホールダー5はモーター6によっ
て、一定の回転速度で回転可能となされている。また、
基材ホールダー5と、ターゲットA及びBの間にはシャ
ッター7が設けられている。
【0023】実際にスパッタリングを行うには、まず、
ターゲットAにフッ素系樹脂(例えばPTFE)を、タ
ーゲットBに金属酸化物(例えばSiO2 )をそれぞれ
取り付け、さらに基材ホールダー5に基材C(例えばガ
ラス板)を取り付けた後、モーター6によって10〜1
00rpmの回転速度で回転させる。尚、この時点では
シャッター7は閉じたままの状態にしておく。
【0024】次に、排気装置(図示せず)によって、真
空槽1内を1×10-5Torr以下)に排気した後、ガ
ス導入バルブ8を開くことによって、アルゴンガス等の
不活性ガスを真空槽1内に導入する。真空槽1内の圧力
は不活性ガスの導入量をマスフローコントローラー9に
より調節することによって制御し、成膜時の真空槽1内
圧力は1×10-3〜1×10-1Torrの範囲が好まし
い。その理由は、真空槽1内圧力がこの範囲をはずれる
と放電が不安定となるために、連続的な成膜が困難とな
るからである。
【0025】続いて、ターゲットA及びBに、それぞれ
独立した電源により高周波電力(Bに導電材料を用いる
場合は高周波電力及び直流電力)を投入して放電を行わ
せ、ターゲットA及びBへの投入電力を各々所定の電力
値に設定した後、シャッター7を開け、各ターゲット
A、Bをスパッタリングすることにより、基材C上への
成膜を行う。
【0026】成膜開始後、各ターゲットA、Bへの投入
電力をそれぞれ一定に保つことにより、基材C上に金属
酸化物とフッ素系樹脂の割合が膜厚方向に一定した複合
膜が形成される。各ターゲットへの投入電力を制御する
ことにより、フッ素系樹脂と金属酸化物の成膜速度を制
御し、複合膜中のフッ素系樹脂及び金属酸化物の含有量
を制御することができる。従って、各ターゲットA、B
への投入電力については、用途に応じて、撥水性及び耐
擦傷性のいずれを重視するかにより、適宜決定すればよ
い。即ち、撥水性をより重視する場合は、フッ素系樹脂
ターゲットへの投入電力を金属酸化物ターゲットより高
めればよい。
【0027】上記複合膜の膜厚は、100Å以上であれ
ば十分な撥水性を発揮し、耐擦傷性については基材がガ
ラス等の比較的硬い材料の場合は、100Å以上あれば
十分な性能を発揮する。しかし、基材がプラスチックな
どの比較的硬度の低い材料の場合は、耐擦傷性は基材の
影響を受け易く、その影響を受けないためには膜厚10
00Å以上の複合膜を設けるか、基材上に1〜3μmの
ハードコート層を設けた後、膜厚100Å以上の複合膜
を設けるのが好ましい。
【0028】次に、複合ターゲットを用いる一元スパッ
タリング法により、基材上に金属酸化物及びフッ素系樹
脂の複合膜を形成する方法について詳細に説明する。 (2)一元スパッタリング法 図2は、上記複合膜を形成する方法で使用される一元ス
パッタリング装置の一例を示す模式図である。図2中、
10は真空槽を示し、該真空槽10はロータリーポンプ
と油拡散ポンプ(いずれも図示しない)とを組み合わせ
た排気装置により適宜真空(1×10-5Torr以下)
に排気し、排気後はガス導入バルブ15の開閉操作によ
って、スパッターガスであるアルゴンガスなどの不活性
ガスを導入する。
【0029】上記真空槽10の上部には、基材Cを吊り
下げ状態に支持する基材ホルダー13が設置されてい
る。また、真空槽10の下部の、前記基材ホルダー13
と対向する位置に、マッチングボックス11を介して高
周波電源12に接続された複合ターゲット20が配置さ
れている。複合ターゲット20としては、その表面にフ
ッ素系樹脂と金属酸化物の両成分が含まれていればよ
く、例えば、金属酸化物がフッ素系樹脂により部分的に
被覆されたターゲットが使用される。
【0030】図3は上記複合ターゲット20の側面図を
示し、図4は複合ターゲット20の平面図を示す。この
複合ターゲット20は、金属酸化物(例えば、Si
2 )の円板20aの上に、フッ素系樹脂(例えば、P
TFE)の扇状片20bを放射状に設けたものであり、
扇状片20bの面積を変えることにより、被覆率を調節
することができる。
【0031】なお、上記複合ターゲット20と、前記基
材ホルダー13との間には、シャッター14が設けられ
ている。
【0032】実際にスパッタリングを行うには、まず、
前記真空槽10内を1×10-5Torr以下に排気した
後、真空槽10内へスパッターガスとしてアルゴンガス
などの不活性ガスを導入しながら、前記複合ターゲット
20に高周波電圧を印加し放電を行わせると、複合ター
ゲット20表面から飛び出した原子及び分子は、対向す
る前記基材ホルダー13側の基材Cに付着し、その表面
に金属酸化物とフッ素系樹脂の複合された薄膜が形成さ
れる。
【0033】成膜時のガス圧は、1×10-3〜1×10
-1Torrの範囲が好ましい。ガス圧がこの範囲を超え
ると、放電が不安定になって連続的な成膜が困難となる
からである。
【0034】上記複合膜中のフッ素系樹脂と金属酸化物
の含有量は、複合ターゲット20の金属酸化物を被覆す
るフッ素系樹脂の被覆率によって変化するので、被覆率
については、用途に応じて撥水性と耐擦傷性のいずれを
より重視するかによって適宜決定される。即ち、撥水性
を重視する場合は、フッ素系樹脂の被覆率を高めればよ
い。
【0035】上記複合膜の膜厚は、100Å以上あれば
十分な撥水性を示し、耐擦傷性については基材がガラス
等の比較的硬い材料の場合は、100Å以上あれば十分
な性能を発揮する。しかし、基材がプラスチックなどの
比較的硬度の低い材料の場合は、耐擦傷性は基材の影響
を受け易く、その影響を受けないためには膜厚1000
Å以上の複合膜を設けるか、基材上に1〜3μmのハー
ドコート層を設けた後、膜厚100Å以上の複合膜を設
けるのが好ましい。
【0036】次に、上記で得られた複合膜をフッ素化す
る方法について説明する。図5は、上記で得られた複合
膜をフッ素化するのに用いられる大気圧プラズマ処理装
置の一例を示す模式図である。本装置は、電源30、処
理容器31、対向する金属電極33,34の間のプラズ
マ処理部32から構成されている。電源30は10〜3
0kHzの周波数が印加可能とされている。プラズマ
は、電極に高電圧を印加することにより発生するが、印
加電圧は、前述のように5〜40kV/cm程度になる
よう電圧印加するのが好ましい。
【0037】処理容器31は、油回転真空ポンプからな
る排気装置(図示せず)によって排気可能とされてい
る。処理容器31は、パイレックスガラス製であるが、
電極との絶縁がとれていれば金属製でも構わない。グロ
ー放電プラズマによるプラズマ処理部32は平行平板型
の対向する金属電極33,34の間の空間である。電極
配置構造としては、平行平板型以外にも、同軸円筒型、
円筒対向平板型、球対向平板型、双曲面対平板型でも複
数の細線からなる場合でも構わない。
【0038】対向する金属電極33,34は少なくとも
一方の対向面に固体誘電体35が配設されている。図5
においては、下方の金属電極34上に固体誘電体35が
配設されている。固体誘電体35は、前述のように、金
属電極34の全面を覆うように配設されている。固体誘
電体35の材質は、フッ素系ガスのプラズマとの反応性
を考慮して選択されるのが好ましい。また、複合膜を形
成する基材に金属等の導電性の基材を用いる場合には、
アーク放電防止のために、必ず両電極33,34の両方
に固体誘電体35を配設する必要がある。
【0039】図5においては、上方の金属電極33は、
ガスを均一に供給し均一な処理面を得るために多孔性の
電極とされている。しかし、処理容器31中でガスを攪
拌する方法やガスを高速にブローする等の方法で、プラ
ズマ処理部32中にガスを均一に供給可能ならば、無孔
の電極を用いても構わない。
【0040】対向する金属電極33、34間の距離は、
ガス流量や印加電圧の大きさ、また、処理する基材の厚
みによって適宜決定されるが、長すぎると対向する金属
電極間のガスの均一性が損なわれ、また未使用のガスが
多くなるため0.1〜2cmが好ましい。
【0041】複合膜が形成された基材Dは、電極に配設
された固体誘電体上または両電極の間の空間に取り付け
られる。図5においては、下方の金属電極34上に配設
された固体誘電体35の上に基材Dが取り付けられてい
る。
【0042】フッ素系ガスおよび不活性ガスは、それぞ
れマスフローコントローラー(図示せず)で流量制御さ
れプラズマ処理部32に導入される。フッ素系ガスは、
ガス導入管37を通り多孔性の金属電極33から供給さ
れ、不活性ガスはガス導入管36から供給される。ガス
導入管36の処理容器31内の先端部は、図5に示した
ように、多数の穴の開いたリング状とし、その穴からガ
スが処理容器31内に供給される方が、不活性ガスとフ
ッ素系ガスが均一に混合され易いので好ましい。また、
フッ素系ガスと不活性ガスは混合して多孔性の金属電極
33またはガス導入管36から導入しても構わないが、
均一にフッ素化するには、フッ素系ガスのみをガス導入
管37を通し多孔性の金属電極33から導入するのが好
ましい。なお、未使用のガスはガス出口38から排出さ
れる。
【0043】また、フッ素化処理時間は前述のように、
数秒〜数分で行われるが、通常、5秒程度でフッ素化さ
れておりさらに時間を延ばしても撥水性の顕著な向上は
確認されず、短時間の処理で十分である。
【0044】本装置によって実際にフッ素化するには、
上記のように、複合膜が形成された基材Dを処理容器3
1内に配置した後、処理容器31内を1Torr程度ま
で排気し、次いで、フッ素系ガスをマスフローコントロ
ーラーで流量を調節しながら、ガス導入管37を通し多
孔性の金属電極33からプラズマ処理部32へ導入し、
同時に不活性ガスをマスフローコントローラーで流量を
調節しながら、ガス導入管36からプラズマ処理部32
へ導入して、処理容器31内のガスがフッ素系ガス0.
1〜10体積%と残部が不活性ガスとの混合ガスとなる
ようにし、かつ混合ガスのガス圧が大気圧近傍となるよ
うに調節する。次いで、処理容器31内のガス圧が安定
した時点で、金属電極33に高電圧を印加し発生した混
合ガスのグロー放電プラズマを複合膜が形成された基材
Dに数秒間〜数分間接触させることにより、複合膜が形
成された基材D上の複合膜をフッ素化し、撥水性と耐擦
傷性に優れた積層体を得る。
【0045】また、フッ素化に際して、複合膜が形成さ
れた基材Dを加熱しておいてもよい。基材Dの加熱は、
例えば、処理容器31内の側壁に設けられた発熱体39
からの輻射加熱により行うことができる。
【0046】以下に、本発明2について説明する。本発
明2の積層体の製造方法は、金属酸化物とフッ素系樹脂
の複合膜をスパッタリング法により基材上に設けた後、
少なくとも一方の対向面に固体誘電体が配設された対向
する金属電極間に該複合膜を配置し、該複合膜を50〜
400℃に加熱しながら、フッ素系ガス0.1〜10体
積%と残部が不活性ガスとからなる混合ガスの大気圧近
傍の圧力下で、少なくとも一方の電極に高電圧を印加し
発生した混合ガスのグロー放電プラズマを該複合膜に接
触させて、複合膜表面をフッ素化する。
【0047】上記金属酸化物は、フッ化物の沸点又は昇
華温度が50℃以上である金属の金属酸化物であり、こ
のような金属酸化物としては、例えば、ZrO2 、Al
2 3 、MgO、TiO2 、Y23 、CaO、Ni
O、ZnO、Ga23 、GeO2 、CdO、In2
3 、SnO2 、BaO、HfO2 、PbO、Bi23
等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種
以上が併用されてもよい。これらの中で、特にZr
2 、Al2 3 、MgOが好ましい。
【0048】また、Si、W及びMoのフッ化物の沸点
又は昇華温度は50℃未満であり、これらの金属の金属
酸化物は使用できない。
【0049】上記フッ素系樹脂としては、本発明で用い
られるものと同一のフッ素系樹脂が好適に使用される。
【0050】上記フッ素系ガスとしては、本発明で用い
られるものと同一のフッ素系ガスが好適に使用される。
【0051】上記不活性ガスとしては、本発明で用いら
れるものと同一の不活性ガスが好適に使用される。
【0052】上記基材としては、本発明で用いられるも
のと同一の基材が好適に使用される。
【0053】上記基材には、本発明で使用されるものと
同様な多元同時スパッタリング法又は複合ターゲットを
用いる一元スパッタリング法により、金属酸化物とフッ
素系樹脂の複合膜が形成される。
【0054】本発明2の製造方法における、複合膜の表
面をフッ素化する方法は、フッ素化に際して複合膜を5
0〜400℃に加熱しながら行うことの他は、本発明の
方法と同様である。上記複合膜の加熱温度は、低くなる
と、複合膜の安定化が不十分となるため撥水性が発現せ
ず、大気中に放置すると容易に白濁して透明性が失われ
たり、水との接触によって複合膜にクラックが発生し、
高くなると、フッ素系樹脂の溶融分解温度に近づくた
め、複合膜中のフッ素系樹脂成分に熱分解が生じ撥水性
が低下するので、50℃〜400℃に限定され、好まし
くは100℃〜200℃である。
【0055】特に、基材がプラスチックス等の低融点材
料の場合は、その材料の耐熱温度に応じて、50℃〜4
00℃の範囲で温度を設定すればよい。
【0056】上記複合膜の加熱は、大気中または真空中
のいずれで行ってもよく、加熱方法としては、例えば発
熱体からの輻射加熱、伝導加熱、対流加熱等が挙げら
れ、実際には、フッ素化処理を行う処理容器内に設けら
れた発熱体からの輻射加熱によって加熱する方法;複合
膜を取り付けた電極を加熱する伝導加熱によって加熱す
る方法等が採用される。
【0057】本発明2の製造方法においては、上記温度
に加熱された状態の複合膜に、本発明と同様にして、グ
ロー放電プラズマを接触させることにより、フッ素化処
理を行う。
【0058】上記プラズマ処理装置としては、基材Dを
加熱するための装置が必ず設けられている他は、本発明
で用いられるものと同様な処理装置が好適に使用され
る。具体的なプラズマ処理装置の例としては、例えば、
図5に示したように、処理容器31内の側壁に発熱体3
9が設けられているプラズマ処理装置が挙げられる。
【0059】なお、上記複合膜はプラズマ処理中のみな
らず、プラズマ処理に先だって予備加熱されてもよく、
更にプラズマ処理後も引き続いて加熱されてもよい。加
熱処理の時間は、プラズマ処理前の予備加熱からプラズ
マ処理後の加熱を含めて、全体として60分以上である
ことが好ましい。しかし、加熱時間をあまり長くして
も、撥水性と耐擦傷性が飽和状態となってそれ以上の性
能向上が得られないので、24時間以下が好ましい。
【0060】上記加熱処理の加熱方法としては、発熱体
からの輻射加熱、伝導加熱、対流加熱等で所定の温度、
時間の加熱できるものであれば特に限定されない。加熱
処理装置としては、実験等に用いられる一般的な恒温
器、乾燥機が使用可能である。
【0061】
【作用】従来のスパッタリング法では、フッ素系樹脂の
スパッタ粒子と金属酸化物のスパッタ粒子との間の反応
によって、得られる複合膜は大量のフッ素原子が脱離し
たものとなり、フッ素系樹脂成分の含有量が少ないの
で、十分な撥水性が得られないものと考えられる。
【0062】これに対して、本発明の製造方法では、ス
パッタリング法により得られた金属酸化物とフッ素系樹
脂の複合膜を、大気圧近傍の圧力下で発生する混合ガス
のグロー放電プラズマと接触させることにより、複合膜
表面のフッ素系樹脂成分中のフッ素原子密度の低いカー
ボンをフッ素化してC−F結合を形成させ、フッ素含有
量を増加させるので、上記フッ素系樹脂と金属酸化物の
スパッタ粒子同士の反応により脱離したフッ素成分を補
うことができ、優れた耐擦傷性を維持した状態で、撥水
性を向上させることができるものと考えられる。
【0063】本発明2の製造方法は、金属酸化物とし
て、その金属のフッ化物の沸点または昇華温度が50℃
以上である金属酸化物を用いて、スパッタリング法によ
りフッ素系樹脂と金属酸化物の複合膜を形成することに
より、フッ素系樹脂と金属酸化物のスパッタ粒子同士の
反応によるフッ素原子と金属原子の欠損を防止可能であ
るが、フッ素原子については若干の欠損が生じるものと
考えられる。
【0064】上記の複合膜を、大気圧近傍の圧力下で発
生する混合ガスのグロー放電プラズマと接触させること
により、フッ素原子の欠損をなくし、撥水性を向上させ
ることができる。また、上記複合膜の加熱処理により、
水分に対する安定性の向上がはかられ、更に混合ガスの
大気圧近傍の圧力下で発生するグロー放電プラズマで処
理することによって、複合膜の安定化とフッ素原子と結
合が切れた炭素原子のフッ素化を同時に進行させること
ができ、優れた耐擦傷性を維持した状態で、撥水性を向
上させることができるものと考えられる。
【0065】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。 (実施例1〜7)図1に示した多元同時スパッタリング
装置(芝浦製作所製「CFS-8EP-55」)を使用して、基材
ホールダー5に、基材Cとしてスライドガラス(マツナ
ミ社製「S1111」、サイズ80mm×30mm×1
mm)を取り付けた。一方、ターゲットAにはPTFE
(淀川化成社製)、ターゲットBにはSiO2 をそれぞ
れ使用した。この後、真空槽1内を1×10-5Torr
以下に真空排気した後、ガス導入バルブ8を開きスパッ
ターガスとしてArガスをマスフローコントローラー9
を用いて真空槽1内に45SCCM導入し、真空槽1内
圧力を5×10-3Torrとした。
【0066】次いで、基材ホールダー5をモーター6に
よって回転速度20rpmで回転させながら、ターゲッ
トA及びBに高周波電力を投入しシャッター7を開ける
ことにより成膜を開始した。成膜時の各ターゲットに投
入される高周波電力及び成膜時間は、表1に示した条件
で行い、スライドガラス上にSiO2 とPTFEの複合
膜を形成した。尚、高周波電源の発振周波数は13.5
6MHzである。
【0067】次に、上記方法でスライドガラス上にSi
2 とPTFEの複合膜が形成された基材Dを、図5に
示した大気圧プラズマ表面処理装置により表面フッ素化
を行った。用いる大気圧プラズマ表面処理装置は直径8
0mmの金属電極33、34が対向しており、上部の金
属電極33と下部の金属電極34の間隔(金属電極間距
離)が10mmとなるように配置されている。また、下
部の金属電極34上には、直径120mm×厚み2mm
のチタン酸バリウム(比誘電率、約15000)よりな
る固体誘電体35が下部の金属電極34の全面を被覆す
るように配設されている。上記の複合膜が形成された基
材Dを、この固体誘電体35上に、複合膜表面が上部の
金属電極23を向くように取り付けた。
【0068】この後、処理容器31内を1Torrまで
油回転真空ポンプにより排気した。ついで、4フッ化炭
素(CF4 )ガスをガス導入管37を通して多孔電極構
造を持つ上部の金属電極33から、Heガスをガス導入
管36からそれぞれ表1に示したガス流量でマスフロー
コントローラーにより調節しながら、処理容器31内に
導入し、760Torrの大気圧とした。その後、電源
30から周波数15kHzの高周波を、表1に示した電
力(印加電圧、印加電流)で、上部の金属電極33に印
加し、処理容器31内に導入されたフッ素系ガスと不活
性ガスとの混合ガスの大気圧グロー放電を形成し、発生
したプラズマを複合膜の表面に接触させてその表面を処
理した。上記放電形成後、20秒間複合膜Dの表面を処
理した後、高周波の印加を中止し、撥水性と耐擦傷性の
優れた被膜が積層された積層体を得た。
【0069】(実施例8)図2に示した一元スパッタリ
ング装置(日本真空技術社製「SH-100」) の基材ホルダ
ー13に、実施例1で使用したものと同様な基材Cを取
り付けた。一方、ターゲットには、図3及び図4に示し
たように、SiO2 ターゲット20aをPTFEシート
20b(淀川化成社製、厚さ2mm)で部分的に被覆し
た複合ターゲット20を用いた。尚、複合ターゲット2
0の被覆率は70%とした。
【0070】この後、真空槽10内を1×10-5Tor
r以下に真空排気した後、ガス導入バルブ15を開きス
パッターガスとしてArガスをマスフローコントローラ
ー16を用いて真空槽10内に10SCCM導入し、真
空槽10内の圧力を6×10 -3Torrとした。次い
で、複合ターゲット20に表1に示した条件で高周波電
力を投入することにより、SiO2 とPTFEの複合膜
を基材C上に形成した。尚、高周波電源の発振周波数は
13.56MHzである。
【0071】次に、上記方法でスライドガラス上にSi
2 とPTFEの複合膜が形成された基材Dを、実施例
1と同様の大気圧プラズマ表面処理装置により、CF4
ガスとHeガスの流量を表1に示したように変えたこと
の他は、実施例1と同様にして表面フッ素化を行ない、
撥水性と耐擦傷性の優れた被膜が積層された積層体を得
た。
【0072】
【表1】
【0073】(比較例1〜3)成膜条件(ターゲット、
高周波電力、成膜時間)を表2に示したように変えたこ
と以外は、実施例1と同様にして、基材C上にSiO2
とPTFEの複合膜を形成した後、この複合膜のプラズ
マ処理を全く行わなかった。
【0074】(比較例4)成膜時間を表2に示したよう
に変えたこと以外は、実施例8と同様にして、基材C上
にSiO2 とPTFEの複合膜を形成した後、この複合
膜のプラズマ処理を全く行わなかった。
【0075】(比較例5)実施例1と同様にして、基材
C上にSiO2 とPTFEの複合膜を形成した後、表2
に示したガス流量でプラズマ処理を行ったこと以外は、
実施例1と同様にして、基材C上に撥水性と耐擦傷性の
被膜が積層された積層体を得た。
【0076】
【表2】
【0077】〔複合膜の性能評価〕上記実施例1〜8及
び比較例1〜5で得られた撥水性と耐擦傷性を有する被
膜及び複合膜につき、下記の性能評価を行いその結果を
表3に示した。 (a)膜厚測定 基材の一部をマスキングして複合膜を形成し、マスキン
グ部と複合膜形成部の段差を表面形状測定器(スローン
社製「Dektak3030」)により測定して、被膜
及び複合膜(以下両者を含めて「膜」という)の厚さを
求めた。
【0078】(b)撥水性試験 蒸留水に対する膜の接触角を、接触角計(協和界面科学
社製「CA−A型」)により液滴法で測定した。
【0079】(c)耐擦傷性試験 #0000のスチールウールを膜表面にある圧力で押し
当てた状態で、膜を20往復させた後、膜の表面状態を
目視観察し、膜表面に傷が付かない時の最大圧力をもっ
て耐擦傷(ハードコート)性の指標とした。
【0080】(d)膜質評価 ESCAによる膜の組成分析により、次式から(F/
C)の比率を求めて膜質の指標とした。(F/C)=
〔フッ素元素の含有量(原子%)/炭素元素の含有量
(原子%)〕
【0081】
【表3】
【0082】(実施例9〜15)ターゲットBとしてZ
rO2 を使用し、表4に示した成膜条件により成膜した
こと以外は、実施例1と同様にして、基材C上にZrO
2 とPTFEの複合膜を形成した。次いで、複合膜を有
する基材Dを乾燥機(東洋製作所製「定温乾燥機FS−
33」)により150℃、90分間予備加熱処理した。
【0083】次に、上記方法でスライドガラス上にZr
2 とPTFEの複合膜が形成された基材Dを、図5に
示した大気圧プラズマ表面処理装置により表面フッ素化
を行った。用いる大気圧プラズマ表面処理装置は実施例
1で使用したものと同様である。上記の複合膜が形成さ
れた基材Dを、固体誘電体35上に、複合膜表面が上部
の金属電極23を向くように取り付けた。
【0084】この後、処理容器31内を1Torrまで
油回転真空ポンプにより排気し、次に処理容器31内の
側壁に設けられた基材加熱用の発熱体39に電力を供給
し、発熱体39からの輻射加熱によって複合膜Dを表4
に示した温度まで加熱した。
【0085】複合膜の温度が安定した時点で、4フッ化
炭素(CF4 )ガスをガス導入管37を通して多孔電極
構造を持つ上部の金属電極33から、Heガスをガス導
入管36からそれぞれ表4に示したガス流量でマスフロ
ーコントローラーにより調節しながら、処理容器31内
に導入し、760Torrの大気圧とした。その後、電
源30から周波数15kHzの高周波を、印加電圧5.
5kV/cm、印加電流31mAで、上部の金属電極3
3に印加し、処理容器31内に導入されたフッ素系ガス
と不活性ガスとの混合ガスの大気圧グロー放電を形成
し、発生したプラズマを複合膜の表面に接触させてその
表面を処理した。上記放電形成後、20秒間複合膜Dの
表面を処理した後、高周波の印加を中止した。
【0086】尚、プラズマ処理後も継続して複合膜が形
成された基材Dの加熱を行い、複合膜の温度が一定した
時点から60分間で加熱を中止し、基材C上に撥水性と
耐擦傷性を有する被膜が積層された積層体を得た。
【0087】(実施例16)乾燥機(東洋製作所製「定
温乾燥機FS−33」)による基材Dの熱処理を全く行
わずに、プラズマ処理を行ったこと以外は、実施例15
と同様にして、基材C上に撥水性と耐擦傷性を有する被
膜が積層された積層体を得た。
【0088】(実施例17〜19)ターゲットBとして
Al2 3 を使用し、表4に示した成膜条件により成膜
したこと以外は、実施例9と同様にして、基材C上にA
2 3 とPTFEの複合膜を形成した。上記の複合膜
が形成された基材Dを、プラズマ処理前に予備加熱をし
なかったこと及びガス流量を表4に示したように変えた
ことの他は、実施例9と同様にプラズマ処理して、基材
C上に撥水性と耐擦傷性を有する被膜が積層された積層
体を得た。
【0089】(実施例20)図2に示した一元スパッタ
リング装置の基材ホルダー13に実施例1と同様の基材
Cを取り付けた後、真空槽10内を1×10-5Torr
以下に真空排気し、次いで、ガス導入バルブ15を開き
スパッタガスとしてArガスをマスフローコントローラ
ー16で調節して10SCCM導入し、槽内圧力を6×
10-3Torrとした。さらに、ZrO2 ターゲットを
PTFEシートで部分的に被覆した複合ターゲットを使
用し、表4に示した成膜条件で基材C上にZrO2 とP
TFEの複合膜を設けた。
【0090】上記複合膜が形成された基材Dを、乾燥機
(東洋製作所製「定温乾燥機FS−33」)により、1
50℃、90分間の予備加熱処理を行った後、実施例1
1と同様にして大気圧プラズマ処理を行い、基材C上に
撥水性と耐擦傷性を有する被膜が積層された積層体を得
た。
【0091】
【表4】
【0092】(比較例6〜8)基材C上にZrO2 とP
TFEの複合膜を表5に示した成膜条件で、実施例9と
同様にして形成した後、この複合膜の予備加熱処理及び
プラズマ処理を全く行わなかった。
【0093】(比較例9)基材C上にAl2 3 とPT
FEの複合膜を表5に示した成膜条件で、実施例17と
同様にして形成した後、この複合膜の予備加熱処理及び
プラズマ処理を全く行わなかった。
【0094】(比較例10)基材C上にZrO2 とPT
FEの複合膜を実施例20と同様にして形成した後、こ
の複合膜の予備加熱処理及びプラズマ処理を全く行わな
かった。
【0095】(比較例11〜13)基材C上にZrO2
とPTFEの複合膜を表5に示した成膜条件で、実施例
9と同様にして形成した後、この複合膜に対して乾燥機
(東洋製作所製「定温乾燥機FS−33」)により、1
50℃、90分間の予備加熱処理のみを行い、プラズマ
処理を全く行わなかった。
【0096】(比較例14)基材C上にAl2 3 とP
TFEの複合膜を実施例17と同様にして形成した後、
この複合膜に対して乾燥機(東洋製作所製「定温乾燥機
FS−33」)により、150℃、90分間の予備加熱
処理のみを行い、プラズマ処理を全く行わなかった。
【0097】(比較例15)基材C上にZrO2 とPT
FEの複合膜を実施例20と同様にして形成した後、こ
の複合膜に対して乾燥機(東洋製作所製「定温乾燥機F
S−33」)により、150℃、90分間の予備加熱処
理のみを行い、プラズマ処理を全く行わなかった。
【0098】(比較例16〜18)基材C上にZrO2
とPTFEの複合膜を表5に示した成膜条件で、実施例
9と同様にして形成した後、150℃、90分間の予備
加熱処理を全く行わずに、表5に示したプラズマ処理条
件としたことの他は、実施例9と同様にして、基材C上
に撥水性と耐擦傷性を有する被膜が積層された積層体を
得た。
【0099】(比較例19)基材C上にZrO2 とPT
FEの複合膜を実施例15と同様にして形成した後、1
50℃、90分間の予備加熱処理を行い、表5に示した
プラズマ処理条件としたことの他は、実施例9と同様に
して、基材C上に撥水性と耐擦傷性を有する被膜が積層
された積層体を得た。
【0100】
【表5】
【0101】上記実施例9〜20及び比較例6〜19で
得られた膜につき、実施例1と同様な性能評価ならびに
下記の膜の安定性試験を追加して行い、その結果を表6
及び表7に示した。 (e)膜の安定性試験 膜を水中浸漬(室温の蒸留水に10分間)した後、目視
観察により、膜の安定性を下記の評価基準で評価した。 <評価基準> ○:水中浸漬により外観変化が生じなかった。 ×:水中浸漬により膜面にクラックが生じた。
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
【発明の効果】本発明の積層体の製造方法は、上述の通
りであり、基材上にスパッタリング法により形成された
金属酸化物とフッ素系樹脂の複合膜表面を、大気圧近傍
の圧力下でフッ素系ガスと不活性ガスとの混合ガスの放
電によるプラズマで処理することにより、撥水性と耐擦
傷性を兼ね備えた被膜の形成が可能であり、目的に応じ
て、複合膜中の金属酸化物とフッ素系樹脂の比率を変え
ることにより撥水性と耐擦傷性を制御することができ
る。また、得られた複合膜は透明性に優れているので、
基材の透明性を維持した積層体を得ることができる。
【0105】従って、本発明の製造方法で得られた撥水
性ハードコート被膜は、レンズ、ミラー、自動車、建築
用窓ガラスやその他の透明基材の保護膜として利用で
き、さらにフッ素系樹脂を含有することにより可撓性を
有するので、農業用フィルムなどの防汚フィルムとして
使用可能である。また、本発明の積層体の製造方法は、
フッ素化のプロセスを大気圧下で行うことが可能である
ため、真空系を必要としない。このため、低圧下で行う
プラズマ処理に比較し設備費用が安くなるとともに、真
空排気時間が不要となり処理時間が大幅に短縮できる。
【0106】本発明2の積層体の製造方法は、上述の通
りであり、基材上にスパッタリング法により形成された
金属酸化物とフッ素系樹脂の複合膜表面を50〜400
℃に加熱した状態で、大気圧近傍の圧力下でフッ素系ガ
スと不活性ガスの混合ガスの放電によるプラズマで処理
することにより、撥水性、耐擦傷性及び耐水性を兼ね備
えた被膜の形成が可能である。
【0107】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される多元同時スパッタリング装
置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に使用される一元スパッタリング装置の
一例を示す模式図である。
【図3】本発明に使用される複合ターゲットを示す側面
図である。
【図4】本発明に使用される複合ターゲットを示す平面
図である。
【図5】本発明に使用されるプラズマ処理装置の一例を
示す模式図である。
【符号の説明】
A,B ターゲット C 基材 D 複合膜が形成された基材 1,10 真空槽 2,11 マッチングボックス 3,12 高周波電源 4 直流電源 5,13 基材ホールダー 6 モーター 7,14 シャッター 8,15 ガス導入バルブ 9,16 マスフローコントローラー 20 複合ターゲット 30 電源 31 処理容器 32 プラズマ処理部 33,34 金属電極 35 固体誘電体 36,37 ガス導入管 38 ガス出口 39 発熱体

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属酸化物とフッ素系樹脂の複合膜をス
    パッタリング法により基材上に設けた後、少なくとも一
    方の対向面に固体誘電体が配設された対向する金属電極
    間に該複合膜を配置し、フッ素系ガス0.1〜10体積
    %と残部が不活性ガスとからなる混合ガスの大気圧近傍
    の圧力下で、少なくとも一方の電極に高電圧を印加し発
    生した混合ガスのグロー放電プラズマを該複合膜に接触
    させて、複合膜表面をフッ素化することを特徴とする積
    層体の製造方法。
  2. 【請求項2】 金属酸化物とフッ素系樹脂の複合膜をス
    パッタリング法により基材上に設けた後、少なくとも一
    方の対向面に固体誘電体が配設された対向する金属電極
    間に該複合膜を配置し、該複合膜を50〜400℃に加
    熱しながら、フッ素系ガス0.1〜10体積%と残部が
    不活性ガスとからなる混合ガスの大気圧近傍の圧力下
    で、少なくとも一方の電極に高電圧を印加し発生した混
    合ガスのグロー放電プラズマを該複合膜に接触させて、
    複合膜表面をフッ素化する積層体の製造方法であって、
    上記金属酸化物の金属のフッ化物の沸点又は昇華温度が
    50℃以上であることを特徴とする積層体の製造方法。
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