JPH07277819A - チタン酸アルミニウムクリンカ−及び該クリンカ−を用いた耐火物 - Google Patents

チタン酸アルミニウムクリンカ−及び該クリンカ−を用いた耐火物

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JPH07277819A
JPH07277819A JP6100799A JP10079994A JPH07277819A JP H07277819 A JPH07277819 A JP H07277819A JP 6100799 A JP6100799 A JP 6100799A JP 10079994 A JP10079994 A JP 10079994A JP H07277819 A JPH07277819 A JP H07277819A
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clinker
aluminum titanate
tio
sio
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JP6100799A
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Takashi Yamamura
隆 山村
Ryosuke Nakamura
良介 中村
Satoru Usuda
悟 臼田
Masatsugu Kitamura
匡譜 北村
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Shinagawa Refractories Co Ltd
Original Assignee
Shinagawa Refractories Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 チタン酸アルミニウムクリンカ−及び該クリ
ンカ−を用いた耐火物を提供すること。 【構成】 アルミナ原料、チタニア原料の両原料中に含
まれている成分を利用するものであって、Al2O3成分が8
0〜95%でTiO2、SiO2、Fe2O3成分の合計が4〜20%含む
アルミナ原料と、TiO2成分が70〜95%でAl2O3、SiO2、F
e2O3成分の合計が2.5〜30%含むチタニア原料を含有す
る配合物を焼成して得られるチタン酸アルミニウムクリ
ンカ−及びこのクリンカ−を耐火物原料として使用した
耐火物。 【効果】 高強度付与、加熱安定性付与のための微量添
加成分を含むアルミナ原料及びチタニア原料を使用する
ことで、混合中に各原料の比重差や粒度の違いによる偏
析などを解消し、短時間の混合で均質な配合物が得ら
れ、低膨張性、高機械的強度、加熱安定性を有し、かつ
安価なチタン酸アルミニウムクリンカ−及び耐火物が提
供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チタン酸アルミニウム
クリンカ−及び該クリンカ−を用いた耐火物に関し、特
に熱衝撃の激しい条件下で使用されるセラミックス部品
や耐火物に用いられる低熱膨張性のチタン酸アルミニウ
ムクリンカ−及び該クリンカ−を使用して製造される耐
火物に関する。
【0002】
【従来の技術】チタン酸アルミニウムは、低熱膨張性の
材料としてよく知られている。その低熱膨張性は、チタ
ン酸アルミニウム結晶の結晶軸方向に対する膨張異方性
に依存していることが種々の研究により明らかにされて
いる。
【0003】一方、チタン酸アルミニウムの焼結体は、
チタン酸アルミニウムの微結晶が集合して成るものであ
り、この集合体の中や集合体の間に微亀裂を有してい
る。そして、この微亀裂によって焼結体全体として低膨
張性が得られている。
【0004】しかしながら、この微亀裂の存在のため、
チタン酸アルミニウムの焼結体は、その機械的強度を高
めることが困難であるという問題があった。また、チタ
ン酸アルミニウムの焼結体は、加熱安定性に劣り、850
〜1300℃程度で再加熱されると、Al2O3とTiO2に容易に
分解してしまうという欠点を有している。
【0005】ところで、チタン酸アルミニウム焼結体の
機械的強度や加熱安定性を向上させるためには、(1)チ
タン酸アルミニウムの結晶径を出来るだけ小さくして、
微亀裂を小さくし分散させること、(2)チタン酸アルミ
ニウムの結晶が配向した集合体を形成させないこと、が
必要である。そして、チタン酸アルミニウム焼結体の製
造法において、Al2O3及びTiO2の他に第3成分を添加す
ると、この第3成分の粒子が結晶粒界に分布することに
よりチタン酸アルミニウムの結晶成長を抑制すると共に
緻密化を促進し、更に「結晶粒子が方向を揃えて集合体
を形成すること」を防止し、その結果、焼結体の機械的
強度及び加熱安定性を向上させることが可能である。
【0006】このような働きのある添加剤については、
従来から種々の研究がなされている。例えばAl2O3、TiO
2から成る主たる配合物にSiO2、Fe2O3、MgO、ZrO2等の
微粉末を単独又は組合せて少量添加することにより、機
械的強度の向上、再加熱時の熱分解の抑制を図ることが
可能であることが明らかにされている。
【0007】通常、高純度のAl2O3、TiO2原料に高純度
のSiO2、Fe2O3、MgO、ZrO2等の微粉末を添加して高強度
で加熱安定性に優れたチタン酸アルミニウムセラミック
スが製造されている。例えば米国特許2,776,896明細書
(1952)には、アルミナ源として仮焼アルミナ:44.6%、
チタニア源としてルチル:42.7%を使用し、これに更に
酸化鉄:1.7%、ボ−ルクレ−:11%を混合して高強度
と加熱安定性を有するチタン酸アルミニウム焼結体を得
ることが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記したように従来の
チタン酸アルミニウムセラミックスは、強度の向上や加
熱安定性を得るため、高純度のAl2O3及びTiO2原料に同
じく高純度のSiO2、Fe2O3、MgO、ZrO2等の微粉末を少量
添加し、混合、粉砕し、所定の形状に成形し、焼成して
製造されている。そして、このようにして得られたセラ
ミックス体そのものを、低膨張性セラミックスとして各
種用途に使用されている。
【0009】しかしながら、従来の上記製造法によれ
ば、Al2O3及びTiO2原料にSiO2、Fe2O3、MgO、ZrO2等を
それぞれ各別に秤量し、添加する工程を必要とするもの
であって、製造時の工程が多く、煩雑であるという欠点
があった。また、各添加剤の秤量時に秤量誤差が生じや
すく、この誤差によって最終品質にバラツキが生じると
いう問題があった。
【0010】更に、従来の製造法では、各原料及び各添
加剤の粒度や比重差によって偏析が発生し、添加成分の
配合物中への分散が十分でなく、このため合成した焼結
体内部の成分分布が不均一となってしまうことがあっ
た。これを解消するため(即ち配合物の混合を均一に行
なうため)、混合時間を長くすることが考えられるが、
これでは焼結体の生産性を著しく低下させることになる
のみならず、長時間の混合により配合物が混合機の壁面
に付着する場合があり、添加成分の配合量にバラツキが
生じたり、分散性が低下したりして均質な焼結体が得ら
れないという問題が生じる。
【0011】その上、従来の製造法によれば、前記した
とおり、高純度の原料及び高純度の添加剤を使用するも
のであり、このように高純度の原料や添加成分を用いて
チタン酸アルミニウムクリンカ−を作製すると、得られ
るクリンカ−のコストは必然的に高価となり、耐火物等
の原料として汎用するには実用的ではないという問題が
あった。
【0012】本発明は、前記欠点、問題点に鑑み成され
たものであって、その目的とするところは、低膨張性で
あって機械的強度が高く、加熱安定性を有し、しかも、
前述のような混合上の問題点を解消し、均質でバラツキ
が少なく、且つ安価なチタン酸アルミニウムクリンカ−
を提供することにあり、また、このクリンカ−を用いて
得られる低膨張性で安定性に優れた安価な耐火物を提供
することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、高強度付与及
び加熱安定性付与のための微量添加成分(第3成分)とし
て、その偏析をなくし、かつその分散性を良好にし、そ
して、バラツキが少なく、均質な焼結体を得ることを意
図して、アルミナ原料及びチタニア原料の各組成中に含
まれる化学成分(不純物成分)を利用することに着目して
なされたものである。即ち、本発明に係るチタン酸アル
ミニウムクリンカ−は、従来法のように高純度のAl
2O3、TiO2の他にSiO2、Fe2O3等の第3成分を別途少量添
加するのではなく、アルミナ原料及びチタニア原料中に
含まれているSiO2、Fe2O3等の成分を利用するものであ
る。
【0014】また、従来、一般にチタン酸アルミニウム
は、高純度原料、高純度の添加成分を用いて所定の形状
に成形し、これを焼成して得られるセラミックス体その
ものを、低膨張性セラミックスとして各種用途に使用さ
れている。これに対して、本発明に係る耐火物では、一
旦まず前記したようにアルミナ原料及びチタニア原料中
に含まれているSiO2、Fe2O3等の成分を利用してチタン
酸アルミニウムクリンカ−を作製し、このクリンカ−を
原料として耐火物、例えば耐火れんが、不定形耐火物等
を製造するものである。
【0015】即ち、本発明に係るチタン酸アルミニウム
クリンカ−は、「Al2O3含有量が80〜95%でTiO2、Si
O2、Fe2O3成分の含有量の合計が4〜20%であるアルミナ
原料と、TiO2含有量が70〜95%でAl2O3、SiO2、Fe2O3
分の含有量の合計が2.5〜30%であるチタニア原料とを
含有する配合物を混合、焼成して得られることを特徴と
するチタン酸アルミニウムクリンカ−。」を要旨とす
る。
【0016】また、本発明に係るチタン酸アルミニウム
クリンカ−は、上記アルミナ原料:20〜55%及びチタニ
ア原料:20〜55%を含有する配合物を混合、焼成して得
られることを特徴とする。更に、本発明に係る耐火物
は、上述したチタン酸アルミニウムクリンカ−を耐火物
原料として使用することを特徴とする。
【0017】
【作用】本発明は、前記したように、アルミナ原料及び
チタニア原料中に含まれている成分(不純物成分)を利用
するものであり、即ち高強度付与及び加熱安定性付与の
ための微量添加成分(第3成分)を含むアルミナ原料及び
チタニア原料を使用するものであり、このように両原料
中に第3成分が含有されているため、従来法の問題点
「混合中の原料の比重差や粒度の違いによる偏析が生じ
たり、混合機の内壁面に配合物が付着し、微量添加成分
(第3成分)量が不均一になる等の問題点」が解消される
作用が生じる。
【0018】しかも、第3成分である添加成分の組成
は、主原料であるアルミナ原料、チタニア原料の組成を
事前に正確に把握しておくことで、バラツキを抑制する
ことが可能である。従って、混合時間を短縮しても、従
来と同等の混合度が得られ、短時間の焼成でも、焼結性
に優れているので、チタン酸アルミニウムクリンカ−の
生産性が格段に向上する作用が生じる。
【0019】以下、本発明を詳細に説明すると、本発明
では、アルミナ原料として、Al2O3含有量が80〜95%(好
ましくは83〜95%)でTiO2、SiO2、Fe2O3成分の含有量の
合計が4〜20%(好ましくは7〜17%)であるものを使用す
ることを特徴とする。
【0020】まず、アルミナ原料中のAl2O3含有量の限
定理由について説明すると、これが80%未満の場合、チ
タン酸アルミニウム合成に必須であるAl2O3量が不足す
ることになる。この不足分を補うためAl2O3含有量が80
%未満であるアルミナ原料を多量配合することが考えら
れるが、このように80%未満のアルミナ原料を多量使用
して配合物を作製すると、本発明に係るクリンカ−の製
造に有効な第3成分であるTiO2、SiO2、Fe2O3成分が過
剰になり、また、これら第3成分以外の不純物成分も増
加し、その結果として得られるクリンカ−中の不純物成
分が増加してしまうので好ましくない。一方、アルミナ
原料中のAl2O3含有量が95%を越えると、TiO2、SiO2、F
e2O3成分の含有量が少なくなり、本発明の特徴を発揮す
ることができない。
【0021】次に、アルミナ原料中のTiO2、SiO2、Fe2O
3各成分について順に説明する。アルミナ原料中のTiO2
成分は、該原料中で既に微細なチタン酸アルミニウム結
晶の形で含有されていたり、あるいは他の成分との化合
物を形成していてもよく、また、単独でルチルの結晶と
して含有されていてもよい。いずれにしても、主成分で
あるAl2O3原料中に含有されているTiO2成分を使用する
ため、焼成過程において、比較的短時間で容易にAl2O3
と反応してチタン酸アルミニウムの微結晶が生成し、こ
れが結晶成長の核となり、クリンカ−中の全体にチタン
酸アルミニウム結晶が配向することなく均質に生成す
る。
【0022】アルミナ原料中に含有するTiO2、SiO2、Fe
2O3成分の合計量が4〜20%である中で、TiO2単独の含有
量は1〜10%であることが好ましい。より好ましくは2〜
7%である。アルミナ原料中のTiO2成分が1%未満である
と、焼成工程初期に生成するチタン酸アルミニウムの結
晶が少ないので好ましくない。一方、10%を越えると、
アルミナ原料中におけるチタン酸アルミニウムの結晶核
生成にとどまらず、この結晶の生成量が多くなりすぎて
同時に配合されるチタニア原料とアルミナ原料との反応
性が低下してしまい、クリンカ−の強度低下を招くこと
があるので好ましくない。
【0023】アルミナ原料中のSiO2成分は、チタン酸ア
ルミニウム結晶の粒界にガラス層を形成し、クリンカ−
の強度を向上させる効果がある。アルミナ原料中のSiO2
単独の含有量は0.5〜9%であることが好ましい。0.5%
未満であると、チタン酸アルミニウム結晶の粒界に形成
されるガラス層が不足し、十分な強度向上効果が得られ
ない。一方、9%を越えると、耐火性や耐化学的侵食性
が低下するので好ましくない 。
【0024】アルミナ原料中のFe2O3成分は、チタン酸
アルミニウム結晶におけるAl2O3に置換して固溶体を形
成し、再加熱安定性を向上させる効果がある。アルミナ
原料中に含有されるFe2O3量は、0.5〜5%程度が好まし
い。0.5%未満では、チタン酸アルミニウム結晶中への
固溶量が不足し再加熱時の結晶分解に対する抵抗性、即
ち再加熱時の安定性が低下し、逆に5%を越えると、SiO
2成分の場合と同様、耐火性及び耐化学的侵食性が低下
するので好ましくない。
【0025】本発明において、アルミナ原料中の上記Ti
O2、SiO2、Fe2O3成分の合計量が4〜20%(好ましくは7〜
17%)であるアルミナ原料を使用することを特徴とす
る。この合計量が4%未満であると、高強度及び加熱安
定性を付与するための重要な成分であるTiO2、SiO2、Fe
2O3を含有していることによる微量添加成分(第3成分)
の分散性効果が少なく、所望する高強度及び加熱安定性
向上効果が得られ難いので好ましくない。逆に20%を越
えると、Al2O3含有量が必然的に80%未満となるので好
ましくない。
【0026】本発明に用いられるアルミナ原料として
は、天然原料であるボ−キサイト、ばん土頁岩又はこれ
らを焼成したものや電気溶融したものが好ましく使用で
き、この内でも特にばん土頁岩焼成物は価格も安価であ
り好ましい。なお、アルミナ原料中のAl2O3含有量及びT
iO2、SiO2、Fe2O3成分の合計量が本発明の範囲にある限
りいずれも使用することができるが、アルミナ原料中に
含まれる他の不純物としてのMgOは、不純物というより
もチタン酸アルミニウムを安定化するのに有効であるの
で、好ましいものである。
【0027】次に、本発明に用いられるチタニア原料に
ついて説明すると、本発明では、TiO2含有量が70〜95%
(好ましくは75〜95%)でAl2O3、SiO2、Fe2O3成分の含有
量の合計が2.5〜30%(好ましくは4〜25%)であるチタニ
ア原料を使用することを特徴とする。
【0028】まず、チタニア原料中のTiO2含有量の限定
理由について説明すると、これが70%未満の場合、チタ
ン酸アルミニウム合成に必須であるTiO2量が不足するこ
とになる。この不足分を補うためTiO2含有量が70%未満
であるチタニア原料を多量配合することが考えられる
が、このように70%未満のチタニア原料を多量使用して
配合物を作製すると、本発明に係るクリンカ−の製造に
有効な第3成分であるAl2O3、SiO2、Fe2O3成分が過剰に
なり、また、これら第3成分以外の不純物成分も増加
し、その結果として得られるクリンカ−中の不純物成分
が増加することになり、耐化学的侵食性の面で好ましく
ない。一方、チタニア原料中のTiO2含有量が95%を越え
ると、Al2O3、SiO2、Fe2O3成分の含有量が少なくなり、
本発明の特徴を発揮することができない。
【0029】次に、チタニア原料中のAl2O3、SiO2、Fe2
O3各成分について順に説明する。チタニア原料中のAl2O
3成分は、通常、該原料中で他の成分との化合物を形成
していることが多いが、単独でコランダムの結晶として
含有されているものもあり、いずれも本発明のチタニア
原料として使用することができる。
【0030】チタニア原料中のAl2O3成分は、主成分で
あるTiO2中に含有されているため、焼成過程において比
較的短時間で容易にTiO2と反応することができる。ま
た、Al2O3が他の成分、例えばSiO2との化合物を形成し
ている場合には、同時に配合されるアルミナ原料との反
応焼結性を促進する効果がある。
【0031】チタニア原料中に含有するAl2O3、SiO2、F
e2O3成分の合計量が2.5〜30%である中で、Al2O3単独の
含有量は0.6〜8%であることが好ましい。チタニア原料
中のAl2O3成分が0.6%未満であると、主成分であるTiO2
との反応が少なすぎ、また、アルミナ原料との反応性向
上の効果も不十分であり、一方、8%を越えるとチタニ
ア原料中におけるチタン酸アルミニウムの結晶の生成量
が多すぎ、配合物全体の焼結性が低下することにつなが
るので、好ましくない。
【0032】チタニア原料中のSiO2成分は、アルミナ原
料中に含有されるSiO2成分と同様、チタン酸アルミニウ
ム結晶の粒界にガラス層を形成し、クリンカ−の強度を
向上させる効果がある。さらに、このSiO2成分は、チタ
ニア原料中のAl2O3成分が化合物の状態で安定して存在
するためにも有用な成分である。チタニア原料中のSiO2
単独の含有量は0.5〜9%であることが好ましい。0.5%
未満であると、チタン酸アルミニウム結晶の粒界に形成
されるガラス層が不足し、十分な強度向上効果が得られ
ず、また、Al2O3化合物形成の面でも不十分である。一
方、9%を越えると、最終的なクリンカ−の耐火性や耐
化学的侵食性が低下するので好ましくない。
【0033】チタニア原料中のFe2O3成分は、アルミナ
原料中に含まれるFe2O3成分と同様、チタン酸アルミニ
ウム結晶におけるAl2O3に置換して固溶体を形成し、再
加熱安定性を向上させる効果がある。また、このFe2O3
成分は、アルミナ原料及びチタニア原料の双方に存在す
ることにより、クリンカ−全体にわたってチタン酸アル
ミニウム結晶の安定化が良好となる効果が生じる。
【0034】チタニア原料中のFe2O3単独の含有量は0.8
〜14%程度が好ましい。0.8%未満では、チタン酸アル
ミニウム結晶中への固溶量が不足し再加熱時の結晶分解
に対する抵抗性、即ち再加熱時の安定性が低下し、逆に
14%を越えると、SiO2成分の場合と同様、耐火性及び耐
化学的侵食性が低下するので好ましくない。
【0035】本発明では、チタニア原料中の上記Al
2O3、SiO2、Fe2O3各成分の合計量が2.5〜30%(好ましく
は4〜25%)であるチタニア原料を使用することを特徴と
する。この合計量が2.5%未満であると、焼成時間短縮
の効果が少なく、また、高い強度と加熱安定性を与える
ための重要な成分であるAl2O3、SiO2、Fe2O3を含有して
いることによる微量添加成分(第3成分)の分散性の効果
が少なく、所望する高強度及び加熱安定性向上効果が得
られ難いので好ましくない。逆に、30%を越えると、Ti
O2含有量が必然的に70%未満となるので好ましくない。
【0036】本発明に用いられるチタニア原料として
は、金属チタン製造用、高純度酸化チタン製造用の原料
であるチタン鉱滓や、塗料をはじめ、インク、プラスチ
ック、ゴム等に用いられるチタン白(顔料)の中で、前記
したような化学組成を満足するものを使用することがで
きる。特に価格の面でチタン鉱滓の使用が好ましい。な
お、チタニア原料のTiO2含有量及びAl2O3、SiO2、Fe2O3
成分の合計量が本発明の範囲にある限りいずれも使用す
ることができるが、チタニア原料中に含まれる他の不純
物であるMgOは、不純物というよりもチタン酸アルミニ
ウムを安定化するのに有効であるので、好ましいもので
ある。
【0037】本発明に係るチタン酸アルミニウムクリン
カ−は、前記したアルミナ原料及びチタニア原料を含有
する配合物を混合、焼成して得られる。アルミナ原料と
チタニア原料の配合量としては、アルミナ原料が20〜55
%、チタニア原料が20〜55%であることが好ましい。ア
ルミナ原料及びチタニア原料がそれぞれ20%未満である
と、本発明の特徴である高強度付与及び加熱安定性付与
のための微量成分の偏析をなくし、分散性が良好で、バ
ラツキが少なく、均質な焼結体を得る目的が達成されな
い。
【0038】一方、アルミナ原料が55%を越えると、配
合物中のAl2O3、TiO2以外の成分量が増加し過ぎるの
で、本来のチタン酸アルミニウムの低膨張性が損なわれ
ることがあるので好ましくない。また、チタニア原料が
55%を越えると、配合物中のTiO2、Al2O3以外の成分量
が増加し、あるいはTiO2の量が過剰となるため、前記と
同様本来のチタン酸アルミニウムの低膨張性が得られ難
いので好ましくない。
【0039】本発明に係るチタン酸アルミニウムクリン
カ−を製造するための配合物を調製するに当っては、本
発明で使用するTiO2、SiO2、Fe2O3成分を含有するアル
ミナ原料及びAl2O3、SiO2、Fe2O3成分を含有するチタニ
ア原料の各々の化学組成を予め厳密に分析し、そして、
この分析結果に基づいて、本発明で規定する前記した各
成分の所定量を考慮して配合割合を決定することが必要
である。
【0040】このとき、本発明で使用しようとするアル
ミナ原料、チタニア原料中のAl2O3、TiO2以外の第3成
分の含有量によっては、例えば特定の第3成分がアルミ
ナ原料及びチタニア原料の双方に比較的多く含有されて
いる場合には、このアルミナ原料及びチタニア原料だけ
で本発明で規定する前記した第3成分を含む配合物を調
製することが困難な場合がある。本発明では、このよう
な原料も使用することができるが、その際には上記特定
の第3成分の含有量が少ない別のアルミナ源又はチタニ
ア源を使用することが必要となる。この場合において
も、本発明のアルミナ原料及びチタニア原料の各使用量
は、それぞれ20%以上でなければならない。
【0041】本発明で使用するTiO2、SiO2、Fe2O3成分
を含有するアルミナ原料及びAl2O3、SiO2、Fe2O3成分を
含有するチタニア原料の他に、アルミナ源として焼結ア
ルミナ、仮焼アルミナ、電融アルミナあるいは水酸化ア
ルミナ等のAl2O3含有量が95%を越える高アルミナ原料
を使用するのが好ましく、一方、チタニア源として、Ti
O2成分含有量が95%を越え顔料等に使用されるルチルフ
ラファ−やアナタ−ゼの粉末等の高チタニア原料が好ま
しく使用される。但し、高アルミナ原料及び高チタニア
原料の合計量は50%以下の範囲にあるべきである。50%
を越えると、本発明で用いる微量成分(第3成分)を含有
したアルミナ原料及びチタニア原料の使用量が少なくな
り、本発明で特徴とする混合性、微量成分の均一分散
性、短時間焼結性等の所望効果が得られ難くなるので好
ましくない。
【0042】さらに、本発明で使用するアルミナ原料及
びチタニア原料に含まれる第3成分であるSiO2、Fe2O3
成分を補強するため、最少量(例えば2%以下の範囲)で
シリカ源、酸化鉄源を添加することも可能であり、これ
も本発明に包含される。シリカ源としては、シリカフラ
ワ−や粘土がクリンカ−形状に成形する点でも好適であ
る。また、酸化鉄源としては、ベンガラ等が使用でき
る。
【0043】また、本発明において、チタン酸アルミニ
ウムクリンカ−の性能を改善する目的で、その他の成分
を添加することができ、これも本発明に包含される。例
えば、耐火物原料として使用される天然マグネサイトよ
りなるマグネシアクリンカ−、海水マグネシアクリンカ
−、水酸化マグネシウム、スピネル等のマグネシア源又
はジルコン、ジルコニア等のジルコニア源を少量(例え
ば5%以下の範囲内)で添加することもできる。
【0044】次に、本発明に係るチタン酸アルミニウム
クリンカ−の製造法について説明すると、本発明で規定
するアルミナ原料及びチタニア原料を含む配合物を調製
し、これを通常の方法で粉砕、混合し、適当な形状に成
形する。成形手段としては、押し出し成形やブリケッタ
−による成形が能率がよいので好ましい。得られた成形
物を乾燥し、続いて焼成してクリンカ−を製造する。焼
成温度としては、成形物の形状やサイズにもよるが、通
常1300〜1700℃(好ましくは1350〜1600℃)が適当であ
る。
【0045】ここで、本発明に係るチタン酸アルミニウ
ムクリンカ−の化学組成について説明すると、「所定量
のTiO2、SiO2、Fe2O3成分を含有したアルミナ原料」及
び「所定量のAl2O3、SiO2、Fe2O3成分を含有したチタニ
ア原料」とを用いて得られる本発明のチタン酸アルミニ
ウムクリンカ−の化学組成は、Al2O3:40〜54%、Ti
O2:36〜50%、SiO2:1〜8%、Fe2O3:1〜8%であるこ
とが好ましい。Al2O3含有量が40〜54%の範囲外では、
本来のチタン酸アルミニウムの低膨張性が損なわれる。
同様にTiO2含有量が36〜50%の範囲外でもやはり本来の
チタン酸アルミニウムの低膨張性が損なわれることにな
る。
【0046】また、SiO2含有量が1%未満の場合、チタ
ン酸アルミニウム結晶の粒界に形成されるガラス層が不
足し、十分なクリンカ−強度向上効果が得られず、逆に
8%を越えると、耐火性及び耐化学的侵食性が低下する
ので好ましくない。Fe2O3含有量については、これが1%
未満であると、チタン酸アルミニウム結晶中への固溶量
が不足し再加熱時の結晶分解に対する抵抗性、即ち再加
熱時の安定性が低下し、逆に8%を越えると、SiO2成分
の場合と同様、耐火性及び耐化学的侵食性が低下するの
で好ましくない。
【0047】本発明に係るチタン酸アルミニウムクリン
カ−には、α−Al2O3結晶が残留していないことが好ま
しい。本発明では、もともとクリンカ−の原料として、
TiO2成分を含有しているアルミナ原料を用いるので、容
易に反応が進行することとなり、そのためα−Al2O3
晶が残留することが殆どないが、例えば特別に低温焼成
で、しかも短時間焼成の場合にはα−Al2O3結晶が残留
することもあるので、注意を要する。
【0048】本発明に係るチタン酸アルミニウムクリン
カ−は、結晶サイズが10μm程度と小さく安定した低膨
張性を示し、また、SiO2成分が含有しているのでクリン
カ−強度が高く、しかも、Fe2O3成分の含有効果並びに
α−Al2O3結晶が残留していないことによる「再加熱時
の安定性」に優れている特徴を有している。
【0049】以上詳記したように、本発明によれば、ア
ルミナ原料及びチタニア原料中の成分及び各成分の含有
量を特定することにより、チタン酸アルミニウムクリン
カ−を合成する際の一工程である配合物の混合時間が短
縮できる効果が生じる。即ち、本発明では、チタン酸ア
ルミニウムセラミックスの最大の欠点である「機械的強
度の低いこと」及び「加熱による分解」という問題を解
決するために必要なSiO2成分、Fe2O3成分が原料中に含
有されているので、混合中原料の比重差や粒度の違いに
より偏析を起こしたり、混合機内の壁面に配合物が付着
し均一に分散され難いということがなく、短時間の混合
で均質な配合物が得られる。
【0050】また、本発明では、使用するアルミナ原料
中にTiO2成分が含有されており、一方、チタニア原料中
にAl2O3成分が含まれているので、焼成時に生成するチ
タン酸アルミニウムの結晶化が均一に、しかも短時間に
生成し、その結果、クリンカ−の均質化と焼成時間の短
縮が可能である。このように、本発明によれば、クリン
カ−の生産性が格段に容易となり、且つ均質なクリンカ
−を得ることができる。
【0051】更に、本発明によれば、クリンカ−自体の
コストの低減も可能となる。即ち、高純度の原料を使用
してクリンカ−を製造する従来法の場合、このような高
純度アルミナ、高純度チタニアは高価であり、当然チタ
ン酸アルミニウムクリンカ−の価格も高価となり、耐火
物用原料としては実用的ではない。これに対して、本発
明によれば、ばん土頁岩、ボ−キサイト、チタン鉱滓等
を原料として使用するものであり、この種原料において
通常不純物と言われる成分を積極的に利用するものであ
るから、チタン酸アルミニウムクリンカ−の価格を大幅
に低下することが可能となる。
【0052】次に、本発明に係る耐火物について説明す
ると、本発明に係る耐火物は、前記した本発明のチタン
酸アルミニウムクリンカ−を粉砕し、粒度調整した後、
これを耐火物原料として使用することを特徴とする。本
発明のチタン酸アルミニウムクリンカ−を使用すること
で、低膨張性を有し、しかも高温下で温度変動があって
も亀裂、割れが生じにくく、且つ機械的強度が低下する
ことがない安定な耐火物が得られる。
【0053】本発明に係る耐火物において、チタン酸ア
ルミニウムクリンカ−の耐火物中の使用量は、その耐火
物の種類や使用目的によって異なる。例えば耐スラグ侵
食性が最も重要視され、多少の耐熱スポ−リング性を改
善したいような場合には、チタン酸アルミニウムクリン
カ−の使用量は、ある程度の範囲内、例えば1〜20%程
度に抑えるべきである。この目的においては少量の使用
で十分な効果が発揮されるからである。
【0054】一方、本発明のチタン酸アルミニウムクリ
ンカ−は、単に低膨張性であるだけでなく、機械的強度
に優れ、加熱安定性に優れるので、このクリンカ−を使
用する本発明に係る耐火物として、耐熱スポ−リング性
が非常に重要視される用途に使用する場合には、例えば
70%以上と多量に使用することもでき、100%使用した
チタン酸アルミニウムクリンカ−単味からなる耐火物と
することもできる。勿論、耐スラグ侵食性、耐熱スポ−
リング性の両者をほどほどに必要とする耐火物であると
きは、前記使用量1〜20%と70〜100%の間で調整して使
用することができる。
【0055】従って、本発明に係る耐火物に使用される
本発明のチタン酸アルミニウムクリンカ−量は、1〜100
%の範囲で使用することができる。好ましくは2%以上
の本発明のチタン酸アルミニウムクリンカ−を使用する
ことで、さらに低膨張性、高温安定性の効果が明確にな
る耐火物を提供することができる。
【0056】本発明に係る耐火物において、その原料と
して、本発明のチタン酸アルミニウムクリンカ−以外に
種々の耐火原料を使用することができる。即ち、所望す
る耐火物に応じ任意の耐火原料を使用することができ、
本発明において特に限定するものではない。
【0057】この種耐火原料を例示すれば、電融アルミ
ナ、焼結アルミナ等のアルミナ質原料、シャモット等の
アルミナ−シリカ質原料、電融スピネル、焼結スピネル
クリンカ−等のスピネル質原料、天然及び海水マグネシ
アクリンカ−等のマグネシア質原料、ジルコン質及びジ
ルコニア質原料、炭化珪素等の炭化質原料、窒化珪素等
の窒化質原料等を挙げることができ、これらの1種又は
2種以上を組合わせて使用することができる。なかで
も、スピネル質原料又は炭化質原料を含む耐火原料と本
発明のチタン酸アルミニウムクリンカ−とを併用する
と、優れた耐熱スポ−リング性の耐火物が得られる。
【0058】但し、カ−ボン質原料を20%を越えて含有
するカ−ボンボンド耐火物に本発明のチタン酸アルミニ
ウムクリンカ−を使用することは好ましくない。チタン
酸アルミニウムは、還元性の強い雰囲気内では分解反応
が生じやすいため、本来の低膨張性を持続することがで
きないからである。なお、カ−ボン含有量が20%以下で
あれば、実用上分解も徐々に生じるので、短期間に使用
が終了する用途では問題なく使用できる。
【0059】本発明のチタン酸アルミニウムクリンカ−
を使用してなる本発明に係る耐火物の形態は、焼成れん
が、不焼成れんが、不定形耐火物のいずれでもよい。い
ずれの場合にも少量の適当なバインダ−が添加される。
不定形耐火物では、その施工方法により流し込み、吹付
け、スタンプ、圧入等に分類されるが、通常実施されて
いるように、それぞれに適した粒度構成とし、そして、
自明の結合剤や添加剤を用いることができる。
【0060】この種結合剤としては、高アルミナセメン
ト、珪酸ソ−ダガラス、塩化マグネシウム溶液、リグニ
ンスルホン酸ソ−ダ、ポリアクリル酸エステルなどの自
明の結合剤を挙げることができる。また、添加剤として
は、ポリアクリル酸ソ−ダやポリリン酸ソ−ダなどの周
知の分散剤、炭酸ソ−ダ、クエン酸ソ−ダ、酒石酸など
の周知の硬化調整剤、その他自明の添加剤であるシリカ
超微粉や粘土などを挙げることができる。
【0061】
【実施例】次に、本発明のチタン酸アルミニウムクリン
カ−及び耐火物に係る実施例を比較例と共に挙げ、本発
明をより詳細に説明する。ここで、以下の実施例及び比
較例で用いるアルミナ原料、チタニア原料を表1、表2
に示す。
【0062】
【表1】
【0063】上記表1中のボ−キサイト、ばん土頁岩A
及びばん土頁岩Bは、いずれも本発明で規定する「Al2O
3:80〜95%でTiO2、SiO2、Fe2O3成分の合計量が4〜20
%」の範囲内にあるアルミナ原料である。また、仮焼ア
ルミナは、Al2O3:99.51%の高純度アルミナであり、ア
ルミナ原料Aは、Al2O3値が76.62%と低い原料である。
アルミナ原料Bは、アルミナ値が88.43%で本発明で規
定する「Al2O3:80〜95%」の範囲内にあるが、TiO2、S
iO2、Fe2O3成分の合計量が4%未満の原料である。
【0064】
【表2】
【0065】上記表2中のチタン鉱滓A、チタン鉱滓B
及び合成ルチルは、いずれも本発明で規定する「TiO2
70〜95%でAl2O3、SiO2、Fe2O3成分の合計量が2.5〜30
%」の範囲内にあるチタニア原料である。また、チタン
鉱滓Cは、TiO2成分の含有量が少なく、Al2O3、SiO2、F
e2O3成分の合計量が30%を越える原料であり、合成アナ
タ−ゼは、TiO2純度:98.1%の高純度品である。
【0066】(実施例1〜9:チタン酸アルミニウムク
リンカ−に係る実施例)前記表1及び表2に示すアルミ
ナ原料及びチタニア原料を使用し、表3に示す配合割合
の配合物を調製し、これを粉砕、混合、成形し、1500℃
で3時間焼成してチタン酸アルミニウムクリンカ−を作
製した。なお、本実施例7〜9では、表3に示すよう
に、その他の添加原料として耐火粘土(SiO2:54%、Al2
O3:28%)、酸化鉄粉(Fe2O3:99%のベンガラ)、焼結マ
グネシア(MgO:98%の海水マグネシアクリンカ−)を使
用した。
【0067】本実施例1〜9における「混合度」並びに
得られた各チタン酸アルミニウムクリンカ−に対する
「焼成後の未反応原料“Al2O3、TiO2”」「焼結体強
度」「再加熱安定性」「急熱急冷安定性」「コスト指
数」について評価した。その結果を表3に示す。「混合
度」は、各原料を2時間混合した後の配合物から10点を
サンプリングし、このサンプリングした各配合物中のSi
O2成分含有量の標準偏差(バラツキ)を求めた。この標準
偏差が小さいほど、混合が進んでいることを表してい
る。表3では、この標準偏差について、実施例1を基
準:10とし、その指数で示した。
【0068】「焼結体強度」は、表3に示す各配合物を
6時間混合した後、25×25×120mmに成形し、1500℃
で3時間焼成を行い、チタン酸アルミニウムの焼結体
(クリンカ−)を作製し、この焼結体の3点曲げ強度を測
定した。「焼成後の未反応原料“Al2O3、TiO2”」につ
いては、前記曲げ強度測定後の焼結体試料の一部を粉砕
し、X線回折法で、Al2O3としてα−Al2O3結晶、TiO2
してルチル又はアナタ−ゼ結晶の各存在の有無を判定し
た。
【0069】「再加熱安定性」については、前記曲げ強
度測定後の焼結体試料を1150℃で5時間再加熱し、冷却
後、粉末X線法によりAl2O3、TiO2の生成量を比較し評
価した。この評価として、 “O印”→Al2O3、TiO2の再晶出が全く認められなかっ
たもの、 “△印”→極わずかにAl2O3、TiO2結晶が同定されたも
の、 “×印”→Al2O3、TiO2の再晶出が膨張特性に問題とな
る程度に多いもの、 の3ランクに分類し、表3に示した。
【0070】「急熱急冷安定性」については、1300℃に
加熱した電気炉内に焼結体試料を挿入して急加熱し、電
気炉内で30分保持し、続いて電気炉から取り出して水中
に投入して急冷却を行い、この急熱・急冷後における各
試料の亀裂等の状態を観察することにより評価した。こ
の評価として、 “O印”→殆ど変化が認められなかったもの、 “△印”→微亀裂等の小さな欠陥が認められたもの、 “×印”→大きな亀裂又は剥離の傾向のあるもの、 の3ランクに分類し、表3に示した。
【0071】「コスト指数」は、原料価格から算出し、
実施例1を基準:10とし、その指数で表3に示した。
【0072】
【表3】
【0073】(比較例1〜5)比較のため、前記表1及
び表2に示すアルミナ原料及びチタニア原料を使用し、
表4に示す配合割合の配合物を調製し、前記実施例と同
一条件でチタン酸アルミニウムクリンカ−を作製した。
なお、比較例2、3では、表4に示すように、その他の
添加原料として、前記実施例7〜9と同様、酸化鉄粉(F
e2O3:99%のベンガラ)、焼結マグネシア(MgO:98%の
海水マグネシアクリンカ−)を使用し、さらにシリカフ
ラワ−(SiO2含有量:98%)を用いた。
【0074】比較例1〜5における「混合度」並びに得
られた各チタン酸アルミニウムクリンカ−に対する「焼
成後の未反応原料“Al2O3、TiO2”」「焼結体強度」
「再加熱安定性」「急熱急冷安定性」「コスト指数」に
ついて、前記実施例と同様の評価を行った。その結果を
表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】前記表3から明らかなように、本発明の実
施例1〜9では、短時間内での混合度合いの進行が速
く、焼成後の未反応原料の残留についても問題がなく、
クリンカ−強度(焼結体強度)も高いことが理解できる。
また、再加熱安定性に優れており、いずれも良好な急熱
急冷安定性を示し、しかもクリンカ−コストが低いこと
が認められる。
【0077】これに対して、前記表4からみて、比較例
1(高純度原料を用い、ほぼ理論組成のチタン酸アルミ
ニウムとした例。なお、SiO2含有量は極微量であるの
で、混合度の評価は省略した。)では、焼成時の反応の
進行が遅いため焼成後の残留原料がかなり多く、その結
果強度が低いものであった。また、適量のSiO2、Fe2O3
成分を含まないので、再加熱安定性に劣るものであっ
た。
【0078】比較例2(実施例1とほぼ同じ化学組成の
チタン酸アルミニウムクリンカ−となるように微量成分
を添加混合した例)では、「混合度指数」が52.3であ
り、これは、混合度が悪く長時間混合が必要であること
を示す。また、焼成後の未反応原料の残留が認められ、
この事実から焼成に長時間を要することがわかる。そし
て、3時間の焼成では、微量成分の効果が十分発揮でき
る状態に至っておらず、そのため再加熱安定性に劣るも
のであった。
【0079】比較例3(実施例6とほぼ同じ化学組成の
チタン酸アルミニウムであるが、本発明に必須の微量成
分を含有する原料の使用量が少ないので、添加原料を加
えた例)では、比較例2と同様、混合度が悪く、焼成後
未反応原料の残留が認められ、再加熱安定性にも劣るも
のであった。
【0080】比較例4(本発明で規定する範囲外のアル
ミナ原料A及びBと同じく本発明で規定する範囲外のチ
タン鉱滓Cを使用した例)では、結果的に不純物成分の
増加を招き、焼結体の強度は優れているが、最も重要な
急熱急冷に対する安定性が不良であった。
【0081】比較例5(本発明で規定する範囲外のアル
ミナ原料と同じく本発明で規定する範囲外のチタニア原
料とを組み合わせ、実施例8と類似のAl2O3、TiO2比と
なるように調製した例)では、高純度原料の配合量が多
く、且つアルミナ原料中のTiO2含有量が少ない等のた
め、焼成後未反応原料の残留が認められ、再加熱安定性
にも劣るものであった。また、比較例1、2、3、5で
は、その「コスト指数」がいずれも実施例1〜9のそれ
に比べて高い値を示すところから、コストが高く不経済
であるということができる。
【0082】(実施例10〜14:本発明の耐火物に係る実
施例)前記実施例1、6、9で作製したチタン酸アルミ
ニウムクリンカ−を使用し、表5に示す割合の配合物を
調製し、この配合物からなる耐火物を製造した。なお、
表5中の「添加剤(*1)」及び「結合剤(*2)」の詳細
を表6に示す。
【0083】得られた各耐火物の「耐スポ−リング性」
について試験した。その結果を表5に示す。なお、耐ス
ポ−リング性は、ASTMに規定されているパネルスポ−リ
ングテスト法に準じて実施した。条件は「1500℃加熱:
15分、水霧冷却:10分」を1サイクルとして「10サイク
ルの繰り返し」とした。
【0084】(比較例6〜9)比較のため、表5に示す
耐火物を製造し、同じく「耐スポ−リング性」について
試験した。その結果を表5に併記した。なお、表5中の
「添加剤(*1)」及び「結合剤(*2)」の詳細を表6に
示す。
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】表5から、本発明のチタン酸アルミニウム
クリンカ−を使用した実施例10〜14の耐火物は、いずれ
も亀裂は微小であり、良好であった。特にチタン酸アル
ミニウムクリンカ−を100%使用した実施例14の耐火物
では、全く亀裂が見られず、良好であった。これに対し
て、比較例6〜9(実施例10〜14と同材質の耐火物であ
るが、チタン酸アルミニウムを含まない耐火物の例)で
は、いずれにも大きな亀裂が観察され、特に比較例6と
8の耐火物では、さらに剥落が観察された。
【0088】
【発明の効果】本発明は、以上詳記したとおり、アルミ
ナ原料及びチタニア原料中に含まれている成分(不純物
成分)を利用するものであり、即ち高強度付与及び加熱
安定性付与のための微量添加成分(第3成分)を含むアル
ミナ原料及びチタニア原料を使用するものである。詳細
には、本発明に係るチタン酸アルミニウムクリンカ−
は、所定量のAl2O3及びTiO2、SiO2、Fe2O3成分を含むア
ルミナ原料と、所定量のTiO2及びAl2O3、SiO2、Fe2O3
分を含むチタニア原料とを使用することを特徴とする。
【0089】本発明に係るチタン酸アルミニウムクリン
カ−は、上記したようにアルミナ原料、チタニア原料双
方に微量添加成分(第3成分)を含有する原料を用いるも
のであるから、原料混合中に各原料の比重差や粒度の違
いにより偏析を起こしたり、微量添加成分(第3成分)が
混合機内の壁面に付着し、均一に分散され難いというこ
とがなく、短時間の混合で均質な配合物が得られ、低膨
張性であって機械的強度が高く、しかも加熱安定性を有
し、かつ安価なチタン酸アルミニウムクリンカ−を提供
することができる効果が生じる。
【0090】また、本発明に係るチタン酸アルミニウム
クリンカ−では、使用するアルミナ原料中にTiO2成分が
含有されており、一方、チタニア原料中にAl2O3成分が
含まれているので、焼成時に生成するチタン酸アルミニ
ウムの結晶化が均一に、しかも短時間に生成し、その結
果、クリンカ−の均質化と焼成時間の短縮が可能とな
り、このように本発明によれば、クリンカ−の生産性が
格段に容易となり、且つ均質なクリンカ−を得ることが
できる効果が生じる。
【0091】本発明に係る耐火物は、上述したチタン酸
アルミニウムクリンカ−を耐火物原料として使用するこ
とを特徴とし、これにより低膨張性であって機械的強度
が高く、しかも加熱安定性を有し、かつ安価な耐火物を
提供できる効果が生じる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al2O3含有量が80〜95%でTiO2、SiO2、F
    e2O3成分の含有量の合計が4〜20%であるアルミナ原料
    と、TiO2含有量が70〜95%でAl2O3、SiO2、Fe2O3成分の
    含有量の合計が2.5〜30%であるチタニア原料とを含有
    する配合物を混合、焼成して得られることを特徴とする
    チタン酸アルミニウムクリンカ−。
  2. 【請求項2】 Al2O3含有量が80〜95%でTiO2、SiO2、F
    e2O3成分の含有量の合計が4〜20%であるアルミナ原料2
    0〜55%と、TiO2含有量が70〜95%でAl2O3、SiO2、Fe2O
    3成分の含有量の合計が2.5〜30%であるチタニア原料20
    〜55%とを含有する配合物を混合、焼成して得られるこ
    とを特徴とするチタン酸アルミニウムクリンカ−。
  3. 【請求項3】 前記アルミナ原料組成がAl2O3、TiO2、S
    iO2、Fe2O3に換算してAl2O3:80〜95%、TiO2:1〜10
    %、SiO2:0.5〜9%、Fe2O3:0.5〜5%であって、この
    うちTiO2、SiO2、Fe2O3の合計が4〜20%であり、前記チ
    タニア原料組成がTiO2、Al2O3、SiO2、Fe2O3に換算して
    TiO2:70〜95%、Al2O3:0.6〜8%、SiO2:0.5〜9%、F
    e2O3:0.8〜14%であって、このうちAl2O3、SiO2、Fe2O
    3の合計が2.5〜30%であることを特徴とする請求項1又
    は2記載のチタン酸アルミニウムクリンカ−。
  4. 【請求項4】 請求項1、2又は3に記載のチタン酸ア
    ルミニウムクリンカ−を耐火物原料として使用すること
    を特徴とする耐火物。
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