JPH07277213A - 車両のステアリング装置 - Google Patents

車両のステアリング装置

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JPH07277213A
JPH07277213A JP6961994A JP6961994A JPH07277213A JP H07277213 A JPH07277213 A JP H07277213A JP 6961994 A JP6961994 A JP 6961994A JP 6961994 A JP6961994 A JP 6961994A JP H07277213 A JPH07277213 A JP H07277213A
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JP
Japan
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steering
frequency
rack
coefficient
force
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JP6961994A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Mori
宏 毛利
Fukashi Sugasawa
深 菅沢
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】パワーステアリング装置のトーションバーをス
テアリングシャフト系に介装したステアリング装置にあ
って良好なステアリング応答特性を発揮する。 【構成】ステアリングシャフト2系に設けられたコラム
カップリング5の弾性係数K1 及び減衰係数C1 から算
出される折点周波数(K1 /2πC1 )を、当該コラム
カップリング5の捩じり方向に換算した,ラックハウジ
ング9に設けられたラックインシュレータ10の等価的
な弾性係数K2'及び減衰係数C2'から算出される折点周
波数(K2'/2πC2')より高周波数側に設定すること
で、コラムカップリング5の弾性係数K1 及び減衰係数
1 とトーションバー16の弾性係数K3 とから算出さ
れるパワーステアリング装置の折点周波数(K1 +K3
/2πC1 )をより高周波側に設定し、このパワーステ
アリング装置の共振周波数における一次遅れ成分による
ゲインの減少や位相の遅れ等の影響を小さくする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両のステアリング装置
に関するものであり、特にステアリングコラムシャフト
の回転に伴って弾性変形するコラムカップリングと、こ
のステアリングコラムシャフトの回転運動を直線運動に
変換するためのラックアンドピニオン機構のラックハウ
ジングを弾性支持するラックインシュレータとを備えた
車両のステアリング装置に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】このような車両のステアリング装置とし
ては、例えば本出願人が先に提案した特開昭60−16
1251号公報に記載されるものがある。このうち、前
記コラムカップリングは,ステアリングホイールの操舵
に伴って回転するステアリングコラムシャフトの途中に
介装されており、当該ステアリングコラムシャフトが回
転すると,その捩じり方向に弾性変形しながら、その捩
じり力,所謂操舵トルクに対して減衰力を発揮する。ま
た、前記ラックインシュレータは,前記ステアリングコ
ラムシャフトの回転運動を直線運動に変換するために設
けられたラックアンドピニオン機構のハウジング(以
下,ラックハウジングとも記す)を車体にマウントする
際に,当該車体とラックハウジングとの間に介装された
ものであり、主として当該ラックハウジングが,内装さ
れたラック軸の軸線方向に移動するのを弾性支持すると
共に、その移動力,即ち推力に対して減衰力を発揮す
る。
【0003】前記特開昭60−161251号公報に記
載される車両のステアリング装置では,これらの弾性変
形を許容する部材の弾性変形量又はその弾性変形速度を
拘束する手段又は規制する手段を設け、これらの拘束手
段又は規制手段を車両の走行状態或いは操舵状態等によ
って変更制御することで,操舵伝達系の剛性,所謂ステ
アリング剛性を変更制御し、これにより車両の操縦性や
走行安定性,或いは乗り心地等を向上可能とするもので
ある。つまり、前記弾性変形の拘束又は規制手段が,前
述の減衰力を積極的に発揮する部材或いはアクチュエー
タに相当すると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
ような車両のステアリング装置には、前記コラムカップ
リングやラックインシュレータの弾性係数や減衰係数が
ステアリング特性(自動車工学に言う車両旋回中のステ
アリング特性ではなく、むしろステアリング操作,舵取
り操作に対する車両挙動や転舵の応答性などのように、
所謂車両と運転者との間で構成されるフィードバック制
御系の中で,当該運転者が感じられる操縦感とか操舵感
といった方が理解し易い)に及ぼす影響は考慮されてお
らず、これらの弾性係数や減衰係数を如何様に設定する
かの開示がなされていないために、当該ステアリング装
置のもつ特性を十分に活かしきれず、特に操舵応答性の
向上効果がでないといった可能性がある。
【0005】また、例えば流体式パワーステアリング装
置によって操舵系に操舵補助力(以下,アシスト力とも
記す)を与えるために,その流体の供給方向を切換える
回転式流体制御弁(以下,ロータリバルブとも記す)を
ステアリングコラムシャフトに設けた車両にあっては、
このロータリバルブ内に介装されたトーションバーの弾
性係数も前記操縦感や操舵感といった操舵応答性に関与
しているはずであるが、このトーションバーの弾性をも
考慮して前記コラムカップリングやラックインシュレー
タの弾性係数及び減衰係数を如何様に設定すれば,当該
ステアリング装置の操舵応答性を良好とするのかは,未
だ解決されない問題である。なお、この問題は例えば電
動パワーステアリング装置のように,流体式でないパワ
ーステアリング装置であっても、前記トーションバーを
用いた場合には同様に発生する可能性がある。
【0006】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、特にパワーステアリング装置でアシスト
力を発揮するためにトーションバーを介装したステアリ
ング装置で,コラムカップリング及びラックインシュレ
ータの弾性係数や減衰係数を適切に設定することによ
り、当該ステアリング装置のもつ特性を十分に発揮し
て,特に操縦応答性に関する操縦感や操舵感を向上可能
な車両のステアリング装置を提供することを目的とする
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本件発明者等は前記諸問
題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果,以下の知見を得
て本発明を開発した。即ち、前述のような操縦感とか操
舵感といったものを考えた場合、ゆっくりとした操舵,
即ち運転者によるステアリングホイールの操舵速度が比
較的遅いときには、実際の転舵輪の転舵角がより大きい
或いは速いほうが当該転舵輪のコーナリングフォースの
発生を早めるから,車両の回頭性が向上して所謂きびき
びした車両挙動が望め、従って操縦性が向上する。従っ
て、ステアリングホイールの操舵速度を周波数入力とし
て捉えた場合、より低周波数帯域の操舵入力に対しては
転舵出力の応答性を高く設定して車両挙動を鋭敏にする
ことが望まれる。
【0008】さて、前述のように弾性力を有しながら減
衰力を発揮するコラムカップリング及びラックインシュ
レータを備えたステアリング装置にあっては、当該コラ
ムカップリングもラックインシュレータも夫々に弾性係
数と減衰係数とを併せ持っていると考えられる。一方、
操舵入力に対する転舵出力の伝達関数に着目すると、例
えばゲイン(利得)の増加傾きが一定である場合には,
前述のように低周波数帯域の操舵入力に対してゲインの
増加量を増大することが,前記ゆっくりとした操舵時に
転舵出力の応答性を高くすることであり、これは当該低
周波数帯域の操舵入力に対する転舵出力の位相進み角を
大きくすること,即ちゲインを大きくすることでも達成
される。そこで、コラムカップリング及びラックインシ
ュレータの夫々による,操舵入力に対する転舵出力の伝
達関数に着目すると、夫々の減衰系による位相進み,即
ち微分的な作用によってゲインが増加する操舵入力周波
数帯域の存在することが分かる。ここで、コラムカップ
リング及びラックインシュレータの夫々によるゲインの
増加開始操舵入力周波数を折点周波数と定義すると、夫
々の折点周波数は,夫々の弾性係数及び減衰係数から一
意に設定され、具体的には弾性係数の減衰係数に対する
比(実質的には更にそれを2πで除した形)で表され
る。今、コラムカップリング及びラックインシュレータ
に要求される仕様諸元から両者の夫々による位相進み,
即ち前記ゲインの増加傾きがほぼ一定であるとすると、
前記目的を達成するためには,より折点周波数が低周波
数側に位置する,つまり前記弾性係数の減衰係数に対す
る比が小さい方のゲインの増加量を確保する,或いは積
極的に大きくすることが必須要件となり、具体的には当
該折点周波数の小さい,即ち弾性係数の減衰係数に対す
る比の小さい方の弾性係数を小さくすることで,前記ゲ
インの増加周波数帯域の幅を広くすることができること
を見出した。
【0009】ここで、コラムカップリングが,ステアリ
ングコラムシャフトの回転方向(厳密には捩じり方向)
への力(回転力,偶力)に対して弾性力や減衰力を発揮
するのに対して、ラックインシュレータは,ラックアン
ドピニオン機構のラックハウジングの移動方向,即ちラ
ック軸の移動方向への力(直線推力)に対して弾性力や
減衰力を発揮することに着目すると、これらの各弾性係
数や減衰係数をそのまま用いたのでは,前記運動方程式
から導出される伝達関数と特性方程式から導出される折
点周波数との相関が不明瞭なものになってしまう。勿
論、最終的に設定されるべきは,これら運動方向の異な
る力に対する弾性係数や減衰係数であることは間違いな
いのであるが、伝達関数と折点周波数との相関を明瞭に
するために,考え方としてラックインシュレータの弾性
係数及び減衰係数を,コラムカップリングの捩じり方向
への等価的な弾性係数及び減衰係数に換算し、この等価
的な弾性係数及び減衰係数を用いたゲインの増加周波数
帯域同志を比較して所望するステアリング応答特性を得
ようとするものである。
【0010】さて、このようなステアリング装置に,所
謂パワーステアリング装置を備え、このパワーステアリ
ング装置が,例えばパワーシリンダへの供給流体によっ
てアシスト力を発揮し、この流体の供給を切換えるため
にステアリングコラムシャフトにロータリバルブを設け
たものである場合には、このロータリバルブに内装され
ているトーションバーの弾性力が,当該ステアリング装
置の操縦感や操舵感といった操縦応答特性に影響を及ぼ
すことが考えられる。このトーションバーは、その捩じ
り変位に応じた流体圧や流体流量をパワシリンダに供給
してアシスト力を発揮する,所謂トーションバーの油圧
反力特性を達成するために、本来的にその捩じり剛性を
高くする限度があり、これが当該トーションバーの弾性
係数を大きくする上限となる。そして、前記操舵力伝達
経路において,このトーションバーの出力端までの操舵
入力周波数特性は、これより上流側にあるコラムカップ
リングの弾性係数及び減衰係数並びに当該トーションバ
ーの弾性係数に応じて一意に設定され、このトーション
バーを介した操舵力伝達経路の伝達関数に着目すると、
操舵力(操舵トルク)はこのトーションバーを介装した
ことによって,一次遅れ系で遅れてしまう、即ち,位相
が遅れてゲインが減少する。ここでは、このトーション
バーによるゲインの減少開始操舵入力周波数を,当該ト
ーションバーの折点周波数と定義する。そこで、このト
ーションバーによる操舵トルク伝達の遅れの影響度を極
力小さくするためには、操舵入力の低周波数帯域での定
常ゲインから,前記コラムカップリング及びラックイン
シュレータの各折点周波数帯域で位相が進んだりゲイン
が増加したりする影響を考慮して,前記操舵入力周波数
応答特性で求められるような操舵入力の低周波数側でゲ
インの増加量を大きくするといった意味合いからも,当
該トーションバーの折点周波数帯域でのゲインの減少を
できるだけ高周波数側に設定する必要があり、具体的に
は,コラムカップリング及びラックインシュレータのう
ちの,操舵入力周波数応答特性上,より高周波数側の折
点周波数よりも、更に高周波数側にこのトーションバー
の折点周波数を設定することが望ましいことになる。
【0011】そこで、もしラックインシュレータの折点
周波数よりもトーションバーの折点周波数を高く設定す
ることにすると、当該ラックインシュレータの折点周波
数は,前記コラムカップリングの捩じり方向に置換した
当該ラックインシュレータの等価的な弾性係数及び等価
的な減衰係数のみから一意に設定されるため、両者の折
点周波数条件は全く異なる変数のみで構成されることに
なる。ところが、実質的なトーションバーの弾性係数
は,前述のようにパワーステアリング装置におけるアシ
スト力の油圧反力特性を設定するための重要なファクタ
ーであることから、このような互いに相関のない条件で
のみトーションバーの弾性係数を設定することは,逆に
このアシスト力の油圧反力特性を悪化して操舵感を悪化
させることになりかねない。一方、コラムカップリング
の折点周波数は,当該コラムカップリングの弾性係数及
び減衰係数から一意に設定されるから、前記トーション
バーの折点周波数と比較すると,当該トーションバーの
弾性係数分だけ当該トーションバーの折点周波数の方
が,コラムカップリングの折点周波数より大きい(高
い)ことになる。従って、トーションバーの折点周波数
がより高周波数側に設定されるための十分条件として、
コラムカップリングの折点周波数をラックインシュレー
タの折点周波数よりも高周波数側に設定することが挙げ
られる。
【0012】ところで、前記操舵入力周波数に対する転
舵出力の伝達関数は、当該操舵入力周波数に対してコラ
ムカップリングやラックインシュレータが線形に弾性力
や減衰力を発現することを前提としている。若し、これ
らの周波数特性が非線形であるとすると,即ち何らかの
ヒステリシスを有するものであるとすると、前述した折
点周波数やゲインの増加周波数帯域が変化してしまい,
或いはゲインの増加傾きが変化してしまうから、前記所
望するステアリング応答特性の設定が困難となって実車
へのチューニングは非常に困難なものとなる。従って、
実車レベルでのチューニングを考慮すると、コラムカッ
プリング及びラックインシュレータの操舵入力周波数特
性は線形であることが望ましい。そして、少なくとも現
時点で,このような線形周波数特性を有する弾性・減衰
部材には、所謂剪断変形を伴って弾性力や減衰力を発現
するものが好適である。従って、剪断変形を伴って弾性
力や減衰力を発現するコラムカップリング及び/又はラ
ックインシュレータを用いることで,前記ステアリング
応答特性を設定,チューニングし易くなる。
【0013】而して本発明のうち請求項1に係るステア
リング装置は、ステアリングコラムシャフトの回転に伴
って弾性変形しながら減衰力を有するコラムカップリン
グと、このステアリングコラムシャフトの回転運動を直
線運動に変換するためのラックアンドピニオン機構のラ
ックハウジングを弾性支持しながら減衰力を有するラッ
クインシュレータと、パワーステアリング装置によるア
シスト力を発揮するために,前記ステアリングコラムシ
ャフトの回転に伴って捩じり方向に弾性変形するトーシ
ョンバーとを備えた車両のステアリング装置において、
前記コラムカップリングの弾性係数及び減衰係数から算
出される当該弾性係数の減衰係数に対する比が,ラック
インシュレータの弾性係数及び減衰係数をコラムカップ
リングの捩じり方向に換算した等価的な弾性係数及び減
衰係数から算出される当該等価的な弾性係数の等価的な
減衰係数に対する比より大きくなるように、コラムカッ
プリング及びラックインシュレータの弾性係数,減衰係
数を設定したことを特徴とするものである。
【0014】また、本発明のうち請求項2に係る車両の
ステアリング装置は、前記コラムカップリングが、剪断
変形に伴って前記弾性力及び減衰力を発現するものであ
ることを特徴とするものである。また、本発明のうち請
求項3に係る車両のステアリング装置は、前記ラックイ
ンシュレータが、剪断変形に伴って前記弾性力及び減衰
力を発現するものであることを特徴とするものである。
【0015】
【作用】本発明の車両のステアリング装置では、前記コ
ラムカップリングの弾性係数及び減衰係数から算出され
る折点周波数と,ラックインシュレータの弾性係数及び
減衰係数をコラムカップリングの捩じり方向に換算した
等価的な弾性係数及び減衰係数から算出される折点周波
数とに基づいて、コラムカップリングの弾性係数の減衰
係数に対する比が,前記ラックインシュレータの等価的
な弾性係数の等価的な減衰係数に対する比より大きくな
るように、コラムカップリング及びラックインシュレー
タの弾性係数,減衰係数を設定したことにより、コラム
カップリングの弾性係数の減衰係数に対する比から算出
される当該コラムカップリングの折点周波数は,ラック
インシュレータの等価的な弾性係数の等価的な減衰係数
に対する比から算出される当該ラックインシュレータの
折点周波数よりも大きく(高く)なる。一方、パワース
テアリング装置のアシスト力によるトーションバーの折
点周波数は,当該トーションバーの弾性係数及び前記コ
ラムカップリングの弾性係数の和のコラムカップリング
の減衰係数に対する比から算出されるから、このトーシ
ョンバーの折点周波数は,当該トーションバーの弾性係
数が或る正値であるとして,必然的にコラムカップリン
グの折点周波数よりも大きく(高く)なる。従って、操
舵入力の周波数応答特性を考えると,操舵入力周波数が
極めて小さい(低い)ときのステアリング装置の定常ゲ
インに対して、より低周波数側に折点周波数を有するラ
ックインシュレータによって等価的な減衰係数が乗じら
れる操舵角速度や転舵角速度等の一次進み成分の影響が
大きくなって,その伝達関数における位相が大きくなり
(進み)ゲインの増加傾きが大きくなる(広くなる)か
ら、従って前記低周波数帯域の操舵入力に対する転舵出
力の応答性が高くなり、ゆっくりとした操舵入力に対し
ては車両挙動が鋭敏になり、運転者にはきびきびとした
操縦性が感じられると共に、より高周波数側に折点周波
数を有するコラムカップリングよりも更に高周波数側に
折点周波数を有する前記トーションバーの一次遅れ効果
によって操舵入力周波数応答特性の位相が遅れてゲイン
が減少しようとするが、それよりも低い周波数側に折点
周波数を有するコラムカップリングの減衰係数が乗じら
れる一次進み成分の影響に伴う伝達関数の位相の進みや
ゲインの増加傾きによって,当該トーションバーによる
操舵入力周波数応答特性のゲインの減少を抑制又はゲイ
ンを確保することができる。
【0016】そして、本発明のうち請求項2に係る車両
のステアリング装置では、前記コラムカップリングが,
剪断変形を伴って弾性力や減衰力を発現するもの,つま
り線形周波数特性を有するものであるために、前記ステ
アリング応答特性の特性や実車へのチューニングが容易
になり、前記発明を実用化し易くなる。また、本発明の
うち請求項3に係る車両のステアリング装置では、前記
ラックインシュレータが,剪断変形を伴って弾性力や減
衰力を発現するもの,つまり線形周波数特性を有するも
のであるために、前記ステアリング応答特性の特性や実
車へのチューニングが容易になり、前記発明を実用化し
易くなる。
【0017】
【実施例】次に本発明の車両のステアリング装置につい
て図面を引用しながら詳細に説明する。図1〜図3は本
発明の車両のステアリング装置の一実施例を示すもので
ある。なお、この実施例では,所謂パワーステアリング
装置を介装したステアリング装置について説明する。
【0018】図1aにおいて、ステアリングホイール1
にはステアリングコラムシャフト2が嵌合されており、
運転者のステアリングホイール1の回転操舵によって,
このステアリングコラムシャフト2も同等の位相で回転
する。このステアリングコラムシャフト2の回転運動,
即ちステアリングホイール1の回転運動は、上方ジョイ
ント3aを介してインターミディエートシャフト4に伝
達され、更に下方ジョイント3bを介してスタブシャフ
ト6に伝達される。
【0019】このスタブシャフト6は,後述するパワー
ステアリング装置のロータリーバルブ15に内装されて
いるトーションバー16を介してピニオンシャフト14
に連結されており、このピニオンシャフト14にはピニ
オン7が取付けられ、このピニオン7にラック軸8のラ
ック8aが噛合していて、両者で所謂ラックアンドピニ
オン機構をなす。このラックアンドピニオン機構は、既
知のように前記ステアリングホイール1から伝達された
ピニオン6の回転運動を,ラック8aを介してラック軸
8の直線運動(並進運動)に変換するものであり、当該
ラック軸8の直線推力はその軸線方向に一致又はほぼ一
致すると考えてよい。
【0020】このように並進運動に変換されたラック軸
8の直線推力は、内側ジョイント21aを介してサイド
ロッド(タイロッド)11に伝達され、このサイドロッ
ド11に掛かる直線推力が,外側ジョイント21bを介
してナックルアーム12を腕とする偶力に変換され、こ
の偶力によって転舵輪13が転舵する。但し、本実施例
では,前述のようにパワーステアリング装置を備えてい
るため、このラック軸8の直線推力は,後述するパワー
シリンダのアシスト力によって発生すると考えればよ
く、実質的に運転者がステアリングホイール1に与える
操舵力は,後述するコラムカップリング5の弾性力や減
衰力及び前記トーションバー16の弾性力に抗して,ス
テアリングコラムシャフト2系を捩じる力に消費される
と考えればよい。
【0021】前記インターミディエートシャフト4の中
間部には、従来と同様に高ロスファクターゴムのラバー
カップリング等からなるコラムカップリング5が介装さ
れている。このコラムカップリング5は、主として操舵
入力として与えられるステアリングコラムシャフト2の
回転力(実質的にはインターミディエートシャフト4に
伝達された回転力)の,当該インターミディエートシャ
フト4の捩じり方向に作用する捩じり力に対して弾性力
を発揮するものであるが、通常のラバーカップリングと
同様にこのインターミディエートシャフト4の捩じり方
向への捩じり力に対して減衰力も発揮する。更に本発明
では,このコラムカップリング5が捩じり力に対して弾
性力や減衰力を線形に発現するために、当該コラムカッ
プリング5が捩じり力によって剪断変形する部材で構成
しており、具体的には例えば実開昭64−18634号
公報に記載される,所謂チューブインチューブタイプの
コラムカップリングが採用される。前述したようにコラ
ムカップリングによる操舵入力周波数に対する転舵出力
の伝達関数を考慮した場合、当該コラムカップリングに
よるゲイン増加開始操舵入力周波数,つまり折点周波数
やその増加周波数帯域,或いはその増加傾きは、当該コ
ラムカップリングの弾性係数や減衰係数から一意に設定
されるべきであるが、この弾性係数や減衰係数に相当す
る弾性力や減衰力が,操舵入力周波数に対して線形特性
を有さない,つまり何らかのヒステリシスを有するとす
ると、これらの設定されるべき数値も変化してしまって
後述するステアリング応答特性を設定することが困難と
なり、実車へのチューニングは非常に困難になる。その
点、前述のように剪断変形を伴って弾性力や減衰力を発
現するコラムカップリングでは,その出力周波数特性が
線形であって、所望するステアリング応答特性の設定や
実車へのチューニングが容易となる。逆に、例えば特開
平4−157210号公報に記載されるコラムカップリ
ングのように,圧縮変形や引張変形を伴って弾性力や減
衰力を発現するものにあっては、ヒステリシスが大きく
て実車へのチューニングが非常に困難となることが予想
される。なお、このようにコラムカップリングが弾性力
と減衰力とを同時に発揮するものであることから、前記
特開昭60−161251号公報に記載されるように,
弾性力はラバーカップリングに主として専任させ、減衰
力はオリフィスを通過する粘性流体によって主として専
任的に発揮されるようにしても差し支えない。また、こ
のコラムカップリング5は、タイヤを介して転舵輪13
に伝達される路面入力が、前記操舵力伝達経路を逆上っ
てステアリングコラムシャフト2(最終的にはステアリ
ングホイール1)に伝達される際にも、この路面入力の
インターミディエートシャフト4の捩じる方向への捩じ
り力に対して弾性力及び減衰力を発揮するが、ここでは
単に操舵力の伝達方向への弾性力及び減衰力についての
み説明を行う。
【0022】また、前記ラック軸8のラック8a(ピニ
オン7を含む)はラックハウジング9に内装されてお
り、このラックハウジング9が,ラックインシュレータ
10を介して車体側部材20に連結されている。このラ
ックインシュレータ10は,従来と同様に高ロスファク
ターゴムのラバーインシュレータ等からなり、前記ラッ
クハウジング9が,前記ラック軸8の移動方向,即ち当
該ラック軸8の軸線方向に移動しようとする直線推力に
対して主として弾性力を発揮するものであるが、通常の
ラバーインシュレータと同様にこのラックハウジング9
のラック軸線方向への移動推力に対して減衰力も発揮す
る。更に本発明では,このラックインシュレータ10が
前記直線推力に対して弾性力や減衰力を線形に発現する
ために、当該ラックインシュレータ10が直線推力によ
って剪断変形する部材で構成している。ここでも、前述
したようにラックインシュレータによる操舵入力周波数
に対する転舵出力の伝達関数を考慮した場合、当該ラッ
クインシュレータによるゲイン増加開始操舵入力周波
数,つまり折点周波数やその増加周波数帯域,或いはそ
の増加傾きは、当該ラックインシュレータの弾性係数や
減衰係数から一意に設定されるべきであるが、この弾性
係数や減衰係数に相当する弾性力や減衰力が,操舵入力
周波数に対して線形特性を有さない,つまり何らかのヒ
ステリシスを有するとすると、これらの設定されるべき
数値も変化してしまって後述するステアリング応答特性
を設定することが困難となり、実車へのチューニングは
非常に困難になる。その点、前述のように剪断変形を伴
って弾性力や減衰力を発現するラックインシュレータで
は,その出力周波数特性が線形であって、所望するステ
アリング応答特性の設定や実車へのチューニングが容易
となる。逆に、圧縮変形や引張変形を伴って弾性力や減
衰力を発現するラックインシュレータにあっては、ヒス
テリシスが大きくて実車へのチューニングが非常に困難
となることが予想される。なお、このラックインシュレ
ータは前述のようにラックハウジングの直線推力に対し
て弾性力と減衰力とを同時に発揮するものであることか
ら、前記特開昭60−161251号公報に記載される
ように,オリフィスを通過する粘性流体及び当該粘性流
体の圧力制御弁等を用いて構成しても差し支えない。ま
た、このラックインシュレータ10は、車体から前記ラ
ックハウジング9に伝達される振動入力が、前記操舵力
伝達経路を逆上ってステアリングコラムシャフト2(最
終的にはステアリングホイール1)に伝達される際に
も、この車体振動入力のラック軸線方向への直線推力に
対して弾性力及び減衰力を発揮するが、ここでは単に操
舵力の伝達方向への弾性力及び減衰力についてのみ説明
を行う。
【0023】また、本実施例では前述のようにステアリ
ングコラムシャフト2系にロータリーバルブ15を介装
して,流体式パワーステアリング装置を構築している。
即ち、既存のロータリーバルブと同様に、ロータリーバ
ルブ15に内装されているトーションバー16は,その
操舵入力側端であるスタブシャフト6に回転力が発生す
ると,捩じり変位を伴いながら当該回転力を出力側端で
ある前記ピニオンシャフト14に伝達する。つまり、こ
のトーションバー16の入力側端と出力側端との間に,
前記操舵トルクに相当する回転力に応じた位相差が発生
することになる。このようにトーションバー16に捩じ
り変位が発生すると、その外周に配設されているロータ
16aが当該トーションバー16の捩じり変位に応じて
回転する。このロータ16aには油路が形成されてお
り、前記トーションバー16の捩じり変位に伴ってロー
タ16aが回転すると、前記油路が,ロータリーバルブ
15のポンプポートPから供給される流体(この場合は
流体圧)を何れか一方の出力ポートC1 又はC2 に出力
し,且つ何れか他方の出力ポートC2 又はC1 からの戻
り圧をリターンポートRに戻す油路となる。
【0024】そして、前記ロータリーバルブ15の何れ
かの出力ポートC1 又はC2 からの出力流体圧は、パワ
ーシリンダ17の何れかの入力ポートP1 又はP2 に供
給される。このパワーシリンダ17は,前記ラック軸8
に連結されたピストン17aを内装しており、従って、
前記何れかの入力ポートP1 又はP2 に流体圧が供給さ
れると、その入力ポートP1 又はP2 に連通されている
油室の内圧が増加してピストン17aを他方の入力ポー
トP2 又はP1 に連通されている油室側に移動しようと
し、この移動力が,前記ラック軸8に作用して操舵の補
助力,即ちアシスト力になる。ここで、移動されるピス
トン17aによって容積が小さくなる油室内の流体圧
は、当該油室に連通されている他方の入力ポートP2
はP1 からロータリーバルブ15の他方の出力ポートC
2 又はC1 を介して前記リターンポートRを通って,図
示されないリザーバタンク等に還元される。
【0025】この図1aのステアリング装置を模式化し
たのが図1bである。この図1bでは、前記ステアリン
グコラムシャフト2から伝達されるインターミディエー
トシャフト4の捩じり方向への捩じり力に対して,コラ
ムカップリング5が発揮する弾性力及び減衰力に係る弾
性係数K1 及び減衰係数C1 を、前記捩じり方向に合わ
せて図のように表記した。
【0026】また、前記トーションバー16の捩じり方
向への捩じり変形を許容する弾性係数K3 を,前記スタ
ブシャフト6及びピニオンシャフト14間で発生する捩
じり方向に合わせて図のように表記した。また、前記ラ
ックハウジング9のラック軸線方向への直線推力に対し
て,前記ラックインシュレータ10が発揮する弾性力及
び減衰力に係る弾性係数K2 及び減衰係数C2 を、前記
ラック軸線方向への直線推力に合わせて図のように表記
した。
【0027】また、前記ロータリーバルブ15を介して
パワーシリンダ17のピストン17aに作用するアシス
ト力をfで表し、このアシスト力fは前記ラック軸8に
軸線方向への推力として作用するように表記した。な
お、ステアリングホイール1からピニオン7に回転力を
伝達するステアリングコラムシャフト2,上方ジョイン
ト3a,インターミディエートシャフト4,下方ジョイ
ント3b,スタブシャフト6,ピニオンシャフト14ま
では機械的に一連の剛体(制御応答からは直達系)であ
るとして取扱う。また、ラック軸8,内側ジョイント2
1a,サイドロッド11,外側ジョイント21bまで
も,機械的に一連の剛体(制御応答からは直達系)であ
るとして,ラック軸8を代表的に取扱う。また、ナック
ルアーム12から転舵輪13までも機械的に一連の剛体
であるとして取扱う。
【0028】ここで、図1b中の各記号について説明す
る。図中、前述のようにK1 はコラムカップリング5の
弾性係数,C1 はコラムカップリングの減衰係数であ
り、K 2 はラックインシュレータ10の弾性係数,C2
はラックインシュレータの減衰係数である。また、前述
のようにK3 はトーションバー16の弾性係数である。
また、rはピニオン7の有効(ピッチ円)半径で,操舵
入力である操舵トルクをTとし、この操舵トルクTによ
るステアリングホイール1からステアリングコラムシャ
フト2系の操舵角θに対してトーションバー16の入力
側端,即ち上部の回転角をθ1 とし、トーションバー1
6の出力側端,即ち下部,つまりピニオン7の回転角を
θ2 とする(前述のようにトーションバー16の入出力
側端には位相差が発生するため)。これに対して、前記
ラックアンドピニオン機構のギヤ比をNとし、前記ピニ
オン7の回転角θ2 を伴うパワーステアリング装置のパ
ワーシリンダ17によるラック軸8の軸線方向直線推力
(アシスト力)をfとする。このラック軸8の軸線方向
アシスト力fによって,ナックルアーム12及び転舵輪
13は,キングピン(仮想的なキングピンを含む)K.
P回りに回転されることになり、ここでナックルアーム
12の着力点PからキングピンK.Pまでの腕(モーメ
ントアーム)の長さをLとし、このキングピンK.P回
りのナックルアーム12及び転舵輪13(タイヤやホイ
ールを含む)の慣性モーメントをIとする。更に、前記
ナックルアーム12及び転舵輪13に係る偶力(回転
力,モーメント)による転舵輪13の実転舵角をδと
し、転舵輪13のタイヤの捩じり弾性係数をK4 とす
る。また、前記ラックハウジング9のラック軸方向への
直線推力による前記ラックインシュレータ10の撓み量
(変位)をyとする。一方、前記パワーステアリング装
置のパワーシリンダ17によるアシスト力fが,トーシ
ョンバー16の入力側端に作用する力に変換される際の
変換係数を,パワーステアリングアシスト係数としてK
で表す。
【0029】次に、本発明の基本原理を説明するため
に,このステアリング装置回りの運動方程式を以下のよ
うに構築する。まず、キングピンK.P回りの偶力の運
動方程式は下記1式で表される。 Iδ”+K4 δ=L(T/r+f) ……… (1) また、ラックインシュレータ10に作用する推力の運動
方程式は下記2式で表される。
【0030】 K2 y+C2 y’=(T/r+f) ……… (2) また、コラムカップリング5に作用する偶力の運動方程
式は下記3式で表される。 K1 (θ−θ1 )+C1 (θ’−θ1 ’)=T ……… (3) また、パワーシリンダ17によるアシスト力fを差し引
いた操舵トルクTの運動方程式は下記4式で表される。
【0031】 K3 (θ1 −θ2 )=T ……… (4) 但し、転舵輪13の実転舵角δ及びラックアンドピニオ
ン機構のギヤ比N及びパワーシリンダ17のアシスト力
fは、夫々下記5式及び6式及び7式で与えられる。 δ=(rθ−y)/L ……… (5) N=L/r ……… (6) f=K(θ1 −θ2 ) ……… (7) そして、ここでは前記キングピンK.P回りの慣性モー
メントIは微小であるとして,I≒0として扱う。
【0032】ここで、前記各条件を用いて変位y,ピニ
オン半径rを消去するようにこれら1式〜5式を整理す
ると、下記8式〜10式を得る。
【0033】
【数1】
【0034】ここで、前述のようにラックインシュレー
タ10の弾性係数K2 及び減衰係数C2 またタイヤの捩
じり弾性係数K4 を,コラムカップリング5の捩じり方
向への等価的な弾性係数K2 ’及び減衰係数C2 ’また
弾性係数K4 ’に換算する。即ち、前記8式及び9式に
おいて,これらの各係数K2 ,C2 ,K4 が乗じられる
位相及び角速度の成分は,何れも当該コラムカップリン
グの捩じり方向(つまり回転方向)に一致されていると
考えられるから、各係数K2 ,C2 ,K4 に乗じられる
定数項をこの係数にまとめることで,前記等価的な弾性
係数K2 ’及び減衰係数C2 ’また弾性係数K4 ’への
換算が可能となる。
【0035】従って、前記コラムカップリング5の捩じ
り方向へのラックインシュレータ10の等価的な弾性係
数K2 ’及び減衰係数C2 ’,またコラムカップリング
5の捩じり方向へのタイヤの等価的な弾性係数K4
は、夫々下記11式〜13式で与えられる。 K2 ’=(L2 /N2 )K2 ………(11) C2 ’=(L2 /N2 )C2 ………(12) K4 ’=(1/N2 )K4 ………(13) 従って、この11式〜13式を前記8式〜10式に代入
すれば、当該8式〜10式は微分演算子Sを用いて下記
14式〜16式に表される。
【0036】 K4 ’Nδ=T+Lf/N ………(14) (C2 ’S+K2 ’)(θ1 −Nδ)=T+Lf/N ………(15) T=(C1 S+K1 )(θ−θ1 )=K3 (θ1 −θ2 ) ………(16) この14式〜16式で与えられる運動方程式は,図2に
示すタイヤの一端が路面に固定されているモデルと等価
であることが分かる。ここで、前記作用する力の方向を
統一するように変換して得られた等価的なタイヤと,同
じく等価的なラックインシュレータとの間に仮想質点m
(=0)が存在すると想定し、この仮想質点mにラック
インシュレータ側から力F2 とタイヤ側から力F3 とが
作用している状態を想定する。そして、前記パワーステ
アリング装置のない状態,即ちパワーシリンダによるア
シスト力が,トーションバーと前記等価的なラックイン
シュレータとの間の仮想質点(=0)に作用せず、ま
た、トーションバーが存在しない(=トーションバーの
弾性係数K3 =∞である)状態で,このステアリング装
置に対して操舵入力である操舵角θと転舵出力であるギ
ヤ比・実転舵角Nδとの周波数応答特性を考える。な
お、前記トーションバーと前記等価的なラックインシュ
レータとの間の仮想質点に作用するパワーシリンダのア
シスト力(Lf/N)は,前記14式から容易に得られ
よう。また、ここではトーションバーの弾性係数K3
無限大である,即ちトーションバーが剛体であると想定
したから、前記トーションバーの上部での回転角θ1
トーションバーの下部,即ちピニオンの回転角θ2 とは
同等になる。
【0037】ここで、前記等価的なタイヤと,同じく等
価的なラックインシュレータとの間に仮想質点m(=
0)に作用する各力F2 ,F3 は夫々下記17式〜19
式で表される。 F2 =(C2 ’S+K2 ’)(θ1 −Nδ)=(C1 S+K1 )(θ−θ1 ) ………(17) F3 =K4 ’Nδ ………(18) F2 −F3 =mS2 Nδ ………(19) ここで、前記13式からピニオンの回転角θ2 に等価な
トーションバーの上部の回転角θ1 を消去すると,下記
20式を得る。
【0038】
【数2】
【0039】次に、前記19式に前記18式及び20式
を代入して整理すると,下記21式を伝達関数として得
る。
【0040】
【数3】
【0041】ここで、前記21式において,分母を微分
演算子Sの一次式の積の形で近似し、また仮想質点m=
0を代入すると,当該21式の分母は下記22式で与え
られる。
【0042】
【数4】
【0043】但し、 A=K1 2'+K2'K4'+K4'K1 ………(23) であり、また前記22式で表される21式の分母の第2
項,つまり微分演算子の二乗S2 の項は微小値であると
してネグレクトする。ここで、
【0044】
【数5】
【0045】とおくと、前記21式の伝達関数は下記2
6式で表される。
【0046】
【数6】
【0047】この26式で与えられる操舵角θに対する
ギヤ比・実転舵角Nδの伝達関数Nδ/θをボード線図
化すると図3に示すような周波数応答特性を得ることが
できる。同図において,図3aはゲイン|Nδ/θ|,
図3bは位相∠(Nδ/θ)を示す。そして、この伝達
関数によれば図3aに示すように操舵周波数入力に対し
てゲイン|Nδ/θ|が増加する,或いは位相∠(Nδ
/θ)が進む周波数帯域A,Bが存在する。
【0048】ここで、例えば前記コラムカップリングの
弾性係数と減衰係数との比(K1 /C1 )が,前記等価
的なラックインシュレータの弾性係数と減衰係数との比
(K 2'/C2')より小さいと想定すると、より低周波数
帯域に折点周波数を有するコラムカップリングの低周波
数寄り折点周波数fL ,つまりより低周波数寄りでゲイ
ン|Nδ/θ|が増加し始める周波数は下記27式で与
えられる。
【0049】 fL =K1 /2πC1 ………(27) また、このコラムカップリングで,前記操舵力伝達経路
のゲイン|Nδ/θ|が増加する,即ち位相∠(Nδ/
θ)が進んでいる領域の低周波数寄りゲイン増加周波数
上限値fL ' は、下記28式で与えられる。 fL ' =fL /(1−K123 /K1 ) ………(28) 同様に、より高周波数帯域に折点周波数を有する等価的
なラックインシュレータの高周波数寄り折点周波数
H ,つまりより高周波数寄りでゲイン|Nδ/θ|が
増加し始める周波数は下記29式で与えられる。
【0050】 fH =K2'/2πC2' ………(29) また、この等価的なラックインシュレータで,前記操舵
力伝達経路のゲイン|Nδ/θ|が増加する,即ち位相
∠(Nδ/θ)が進んでいる領域の高周波数寄りゲイン
増加周波数上限値fH ' は、下記30式で与えられる。 fH ' =fH /(1−K123 /K2') ………(30) また、前記操舵入力に対する操舵力伝達経路の定常ゲイ
ン(1−k)は下記31式で与えられる。
【0051】 1−k=1−K123 /K12 ………(31) ここで、図3a,bの各横軸は対数表示されているた
め、前記ゲイン|Nδ/θ|の増大する周波数帯域A,
Bの幅は、下記32式及び33式で得られる。
【0052】
【数7】
【0053】然るに、図3において,増大するゲイン|
Nδ/θ|の傾きは20dB/dec.程度で一定であると
すると、操舵入力の高周波数側でゲイン|Nδ/θ|が
必ず“1”に飽和することから、前記ゲイン|Nδ/θ
|の増大する周波数帯域A,Bの幅の和は,前記定常ゲ
イン(1−k)で決定されてしまうことになる。つま
り、このゲイン|Nδ/θ|が増加する周波数帯域A,
Bの幅を適切に設定することで、操舵力伝達系の周波数
応答特性を良好にすることができる。
【0054】ここで、例えば自動車技術会論文集1970.
No.1,P89 〜P94 の「人動車の進路変更特性」(平尾
収,安部 正人)によれば、操舵入力が低周波数側であ
る場合,即ちゆっくりとした操舵時に、転舵応答性向
上,つまり前記ゲイン|Nδ/θ|が増大することは運
転者(人間)にとって望ましいことが述べられている。
経験的には、ゆっくりとした操舵,即ち運転者によるス
テアリングホイールの操舵速度が比較的遅いときには、
実際の転舵輪の転舵角がより大きい或いは速いほうが当
該転舵輪のコーナリングフォースの発生を早めるから,
車両の回頭性が向上して所謂きびきびした車両挙動が望
め、従って操縦性が向上することなどで言い表されよ
う。
【0055】従って、今、仮に前記ゲイン|Nδ/θ|
が増加する低周波数帯域Aの幅よりも,同じくゲイン|
Nδ/θ|が増加する高周波数帯域Bの幅を大きく(広
く)設定してしまったとすると、前記操舵入力の低周波
数側での位相進みやゲイン増大といった微分的な,つま
り一次進み成分による効果が小さくなり、本来的にこの
ステアリング装置が有する機能を十分に活かしていると
は言い難い。ここでは、前述のような操舵応答性の向上
が望まれる周波数帯域は,一般に0〜5Hz程度の低周
波数帯域であることから、ゲイン|Nδ/θ|が増加す
る低周波数帯域Aの幅を,同じくゲイン|Nδ/θ|が
増加する高周波数帯域Bの幅以上に設定することにす
る。この条件式は、前記32式及び33式を用いて,下
記34式で与えられることになる。
【0056】
【数8】
【0057】この34式より、前述のようにコラムカッ
プリングの折点周波数が,等価的なラックインシュレー
タの折点周波数よりも小さい(低い)とき、即ちコラム
カップリングの弾性係数の減衰係数に対する比が,ラッ
クインシュレータの等価的な弾性係数の等価的な減衰係
数に対する比以下であるときには、当該等価的なラック
インシュレータの弾性係数K2'が,コラムカップリング
の弾性係数K1 以上になればよいことになる。
【0058】逆に、等価的なラックインシュレータの折
点周波数が,コラムカップリングの折点周波数よりも小
さい(低い)ときには、より低周波数帯域に折点周波数
を有する等価的なラックインシュレータの低周波数寄り
折点周波数fL ,つまりより低周波数寄りでゲイン|N
δ/θ|が増加し始める周波数は下記35式で与えられ
る。
【0059】 fL =K2'/2πC2' ………(35) また、この等価的なラックインシュレータで,前記操舵
力伝達経路のゲイン|Nδ/θ|が増加する,即ち位相
∠(Nδ/θ)が進んでいる領域の低周波数寄りゲイン
増加周波数上限値fL ' は、下記36式で与えられる。 fL ' =fL /(1−K123 /K2') ………(36) 同様に、より高周波数帯域に折点周波数を有するコラム
カップリングの高周波数寄り折点周波数fH ,つまりよ
り高周波数寄りでゲイン|Nδ/θ|が増加し始める周
波数は下記37式で与えられる。
【0060】 fH =K1 /2πC1 ………(37) また、このコラムカップリングで,前記操舵力伝達経路
のゲイン|Nδ/θ|が増加する,即ち位相∠(Nδ/
θ)が進んでいる領域の高周波数寄り折点ゲイン増加周
波数上限値fH ' は、下記38式で与えられる。 fH ' =fH /(1−K123 /K1 ) ………(38) ここで、前記ゲイン|Nδ/θ|の増大する周波数帯域
A,Bの幅は、下記39式及び40式で得られる。
【0061】
【数9】
【0062】ここで、前述と同様にゲイン|Nδ/θ|
が増加する低周波数帯域Aの幅を,同じくゲイン|Nδ
/θ|が増加する高周波数帯域Bの幅以上に設定するこ
とにすれば、その条件式は、前記39式及び40式を用
いて,下記41式で与えられることになる。
【0063】
【数10】
【0064】この41式より、前述のように等価的なラ
ックインシュレータの折点周波数が,コラムカップリン
グの折点周波数よりも小さい(低い)とき、即ちラック
インシュレータの等価的な弾性係数の等価的な減衰係数
に対する比が,コラムカップリングの弾性係数の減衰係
数に対する比以下であるときには、当該コラムカップリ
ングの弾性係数K1 が,等価的なラックインシュレータ
の弾性係数K2'以上になればよいことになる。
【0065】以上が前記パワーステアリング装置のロー
タリーバルブ及びトーションバーのない場合のコラムカ
ップリングやラックインシュレータの弾性係数及び減衰
係数の設定手法である。しかしながら、本実施例はステ
アリングコラムシャフト2系にトーションバー16を介
装していることを前提としている。従って、このトーシ
ョンバー16が与える操舵入力周波数応答特性に応じ
て,前記コラムカップリングやラックインシュレータの
弾性係数や減衰係数を設定する必要があろう。そこで、
前述した4式より下記42式を得る。
【0066】 θ1 =θ2 +f/K ………(42) また、前記16式から下記43式を得る。 θ1 =θ2 +T/K3 ………(43) 従って、前記42式及び43式から下記44式を得る。 f=KT/K3 ………(44) これら42式〜44式を前記16式に代入すると操舵ト
ルクの伝達関数として下記45式を得る。
【0067】
【数11】
【0068】これに対して、パワーステアリング装置の
ない場合の操舵トルクの伝達関数は、前記トーションバ
ーの弾性係数K3 が無限大であるとみなしてよいから,
下記46式で与えられる。 T=(C1 S+K1 )(θ−θ2 ) ………(46) 前記45式と46式とで表されるパワーステアリング装
置を付加した(トーションバーの弾性係数K3 を付加し
た)場合及びパワーステアリング装置を付加しない(ト
ーションバーの弾性係数K3 が無限大である)場合の操
舵トルクとピニオンの回転角との伝達関数をボード線図
化したのが図4である。同図の図4aはこの伝達関数の
ゲイン|T/θ−θ2 |を,図4bは位相∠(T/θ−
θ2 )を示す。両者の伝達関数やボード線図を比較すれ
ば明らかなように,パワーステアリング装置を付加する
(トーションバーの弾性係数K3 を付加する)ことによ
って、前記ピニオンに伝達されるトルクが遅れてしま
う。即ち、このパワーステアリング装置の折点周波数
(この場合は,トーションバーまでの操舵入力伝達経路
の折点周波数と等価である)fPSで位相が遅れ,またゲ
インが増加しなくなるといったように、前記コラムカッ
プリングの減衰による微分的な効果,つまりコラムカッ
プリングの減衰係数C1 に係る一次進み成分の効果が小
さくなってしまうことになる。
【0069】これを前記図3に示すパワーステアリング
装置を付加しない(トーションバーの弾性係数K3 が無
限大である)場合の通常ステアリング装置の操舵入力周
波数応答特性に合わせてみる。ここで、トーションバー
によるパワーステアリング装置の折点周波数fPSは下記
47式で与えられる。 fPS=(K1 +K3 )/2πC1 ………(47) 図5a,bは、このトーションバーによるパワーステア
リング装置の折点周波数fPSが,コラムカップリング又
はラックインシュレータのうち,より高周波側の折点周
波数fH よりも更に高周波側にある場合の操舵入力周波
数応答特性を示すものであり、同図aはゲイン|Nδ/
θ|を,同図bは位相∠(Nδ/θ)を示す。これらの
図では、前記トーションバーによるパワーステアリング
装置の折点周波数fPS以上での当該パワーステアリング
装置の位相の遅れやゲインの減少の影響が小さく、同時
に前記文献に要求されるステアリング応答特性をも満足
させることが可能であることも分かる。つまり、操舵入
力のより低周波数側で位相の進みやゲインの増加傾きに
よるゲインの増加量を確保してステアリング応答特性を
高め、逆に操舵入力のより高周波数側では位相の遅れや
ゲインの増加傾き減少を抑制することも可能となる。
【0070】一方、図5c,dは、トーションバーによ
るパワーステアリング装置の折点周波数fPSが,コラム
カップリング又はラックインシュレータのうち,より低
周波側の折点周波数fL よりも高周波側にある場合の操
舵入力周波数応答特性を示すものであり、同図cはゲイ
ン|Nδ/θ|を,同図dは位相∠(Nδ/θ)を示
す。これらの図では、前記トーションバーによるパワー
ステアリング装置の折点周波数fPS以上での当該パワー
ステアリング装置の位相の遅れやゲインの減少の影響が
大きく、同時に前記文献に要求されるステアリング応答
特性をも満足させることが困難であることも分かる。つ
まり、操舵入力のより低周波数側で位相の進みやゲイン
の増加傾きによるゲインの増加量が,前記パワーステア
リング装置のトーションバーによって抑制されてステア
リング応答特性が低くなり、その結果,コラムカップリ
ング又はラックインシュレータのより高周波数側の折点
周波数fH での位相の進みやゲインの増加傾きによって
も,全体的な位相の遅れやゲインの低下を抑制ことがで
きないために、好ましいステアリング応答特性を得るこ
とが困難になっている。
【0071】このようにトーションバーによる位相の遅
れやゲインの減少をできるだけ操舵入力の高周波数側に
設定することで,ステアリング応答特性の劣化を抑制防
止することができ、同時に前記文献に要求されるステア
リング特性の実現をも可能とすることができよう。従っ
て、前記コラムカップリング又はラックインシュレータ
のうち,何れかより低周波数側の折点周波数fL と、何
れかより高周波数側の折点周波数fH と、トーションバ
ーによるパワーステアリング装置の折点周波数fPSとの
相関は、下記48式で表される条件を満足すればよいこ
とになる。
【0072】 fL <fH <fPS ………(48) それでは次に、ラックインシュレータの折点周波数が,
コラムカップリングの折点周波数よりも高い場合、即
ち,より低周波数側の折点周波数fL 及びより高周波側
の折点周波数fH が前記27式及び29式で表される場
合,つまりコラムカップリングの弾性係数K1 の減衰係
数C1 に対する比(K1 /C1 )が,ラックインシュレ
ータの等価的な弾性係数K2'の等価的な減衰係数C2'に
対する比(K2'/C2')よりも小さい((K1 /C1 )<
(K2'/C2'))場合に、前記48式で表される条件式を
満足する諸条件について考察する。
【0073】今、操舵入力周波数の代表値としてこの操
舵入力周波数が1Hzであるとして,コラムカップリン
グ及びラックインシュレータの各ロスファクターを tan
δ1, tanδ2 とすると、これら各ロスファクター tan
δ1 , tanδ2 は,夫々下記49式及び50式で表され
る。 tanδ1 =2πC1 /K1 ………(49) tanδ2 =2πC2'/K2' ………(50) この49式及び50式を,前記27式,29式,47式
に代入して下記51式〜53式を得る。
【0074】 fL =1/ tanδ1 ………(51) fH =1/ tanδ2 ………(52) fPS=(1+K1 /K3 )/ tanδ1 ………(53) これらを前記条件式である48式に代入すると、夫々,
下記54式及び55式を具体的な条件式として得る。
【0075】
【数12】
【0076】このうち,54式が,より低周波数側の折
点周波数fL とより高周波側の折点周波数fH との相関
条件を示すものであり、55式が,より高周波側の折点
周波数fH とパワーステアリング装置の折点周波数fPS
との相関条件を示すものである。しかしながら、前記コ
ラムカップリング及びラックインシュレータの各ロスフ
ァクター tanδ1 , tanδ2 は、現実問題として大きく
設定することができず、実質的に両者の比( tanδ1
tanδ2 )は“2”と同等かやや小さい程度である。従
って、前記55式は下記56式に置換される。
【0077】 K3 >K1 ………(56) 一方、このトーションバーの弾性係数K3 は,前述のよ
うにパワーステアリング装置の油圧反力特性を決定する
重要なファクターであり、この値を前記56式にのみ見
合うように設定すると,前記操縦感とか操舵感といった
ステアリング操作感を悪化させてしまう可能性がある。
事実、前述のようにトーションバーの捩じり変位に応じ
たパワーステアリング装置の流体供給特性,即ち油圧反
力特性を付与するものであるために応力的にも余り硬い
ものにすることができず、トーションバーの弾性係数K
3 は,0.2kgm/deg.であり、一方のコラムカップリ
ングの弾性係数K1 は,0.4kgm/deg.であることか
ら、このようにコラムカップリングの弾性係数K1 の減
衰係数C1 に対する比(K1 /C1 )が,ラックインシ
ュレータの等価的な弾性係数K2'の等価的な減衰係数C
2'に対する比(K2'/C2')よりも小さい((K1
1 )<(K2'/C2'))場合には、前記56式の条件式
は満足されにくいことが分かる。
【0078】従って、これらを前記ステアリング装置に
求められる操舵入力周波数応答特性に従って統括すれ
ば、十分条件として,本発明のように、前記コラムカッ
プリング5の弾性係数K1 及び減衰係数C1 から算出さ
れる折点周波数(K1 /2πC 1 )と,ラックインシュ
レータ10の弾性係数K2 及び減衰係数C2 をコラムカ
ップリング5の捩じり方向に換算した等価的な弾性係数
2'及び減衰係数C2'から算出される折点周波数(K2'
/2πC2')とに基づいて、コラムカップリング5の弾
性係数K1 の減衰係数C1 に対する比(K1 /C1
が,前記ラックインシュレータ10の等価的な弾性係数
2'の等価的な減衰係数C2'に対する比(K 2'/C2')
より大きくなるように、コラムカップリング5及びラッ
クインシュレータ10の弾性係数K1 ,K2 ,減衰係数
1 ,C2 を設定することが要件となる。
【0079】次に、本実施例のステアリング装置で,実
際に設定されたコラムカップリングの弾性係数及び減衰
係数,ラックインシュレータの弾性係数及び減衰係数,
トーションバーの弾性係数の一例について、前記発明原
理を検証してみる。ここでは、これらの各係数は以下の
ように設定された。 コラムカップリングの弾性係数K1 : 337Nm/rad. コラムカップリングの減衰係数C1 : 16.1Nm/rad./sec. ラックインシュレータの弾性係数K2 : 2940000N/m ラックインシュレータの減衰係数C2 : 280730N/m/sec. トーションバーの弾性係数K3 : 112Nm/rad. また、ナックルアームの腕の長さL:0.13m,ラッ
クアンドピニオン機構のギヤ比N:18である。
【0080】ここで、前記8式及び9式で算出されるラ
ックインシュレータの等価的な弾性係数K2'及び減衰係
数C2'は以下のようになる。 ラックインシュレータの等価的な弾性係数K2': 153Nm/rad. ラックインシュレータの等価的な減衰係数C2': 14.6Nm/rad./sec. 従って、コラムカップリングの弾性係数の減衰係数に対
する比は20.93となり、等価的なラックインシュレ
ータの弾性係数の減衰係数に対する比は10.48とな
り、前述した条件を満足している。
【0081】また、ラックインシュレータの折点周波数
は,前記31式に従って1.7Hz程度となり、コラム
カップリングの折点周波数は,前記33式に従って3.
3Hz程度となり、トーションバーによるパワーステア
リング装置の折点周波数は,前記47式に従って4.4
4Hz程度となり、前記48式に示すように所望するス
テアリング特性の周波数応答特性条件を満足している。
【0082】なお、この数値は,前記実施例における一
例に過ぎず、本来的には車両特性に応じて設定されるべ
きものであり、本発明では前記の設定条件が満足されれ
ば,前述した所望するステアリング装置の周波数応答特
性を得ることができる。また、前記実施例では,流体式
パワーステアリング装置に,トーションバーを内装する
ロータリーバルブを設けた場合についてのみ詳述した
が、本発明は前記ステアリングコラムシャフト系にトー
ションバーを介装したものであれば、例えば電動パワー
ステアリング装置を介装したステアリング装置にも同様
に適用可能である。
【0083】
【発明の効果】以上説明したように本発明のステアリン
グ装置によれば、パワーステアリング装置のトーション
バーを操舵力伝達経路に介装し、この操舵力伝達経路に
存在するコラムカップリング及びラックインシュレータ
の弾性係数及び減衰係数を,トーションバーによるパワ
ーステアリング装置のゲインの減少や位相の遅れの影響
が小さくなるように適切に設定することができるため、
ステアリング応答特性を良好に発揮することができる。
また、これにより低周波数帯域の操舵入力に対する転舵
出力のゲインの増加量が大きくなって応答性が高くな
り、ゆっくりとした操舵入力に対しては車両挙動が鋭敏
になって運転者にはきびきびとした操縦性が感じられる
ことを可能とする。また、コラムカップリングやラック
インシュレータが剪断変形に伴って弾性力や減衰力を発
現するものであれば、その周波数特性が線形となって,
前記ステアリング応答特性を設定し易くなり、同時に実
車へのチューニングも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のステアリング装置の一実施例を示すも
のであり、(a)は概略構成図,(b)は同図aの模式
図である。
【図2】図1のステアリング装置のモデル図である。
【図3】図1のステアリング装置において,パワーステ
アリング装置もそのためのトーションバーも存在しない
場合の操舵入力に対する転舵出力の伝達関数のボード線
図である。
【図4】図1のステアリング装置において,トーション
バーによるパワーステアリング装置の操舵トルク伝達関
数のボード線図である。
【図5】図1のステアリング装置において,パワーステ
アリング装置の折点周波数を変化させた場合の操舵入力
に対する転舵出力の伝達関数のボード線図である。
【符号の説明】
1はステアリングホイール 2はスアテアリングコラムシャフト 3a,3bはジョイント 4はインターミディエートシャフト 5はコラムカップリング 6はスタブシャフト 7はピニオン 8はラック軸 9はラックハウジング 10はラックインシュレータ 11はタイロッド 12はナックルアーム 13は転舵輪 14はピニオンシャフト 15はロータリーバルブ 16はトーションバー 17はパワーシリンダ 20は車体側部材 K1 はコラムカップリングの弾性係数 C1 はコラムカップリングの減衰係数 K2 はラックインシュレータの弾性係数 C2 はラックインシュレータの減衰係数 K2'はラックインシュレータの等価的な弾性係数 C2'はラックインシュレータの等価的な減衰係数 K3 はトーションバーの弾性係数 K4 はタイヤの弾性係数 K4'はタイヤの等価的な弾性係数

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステアリングコラムシャフトの回転に伴
    って弾性変形しながら減衰力を有するコラムカップリン
    グと、このステアリングコラムシャフトの回転運動を直
    線運動に変換するためのラックアンドピニオン機構のラ
    ックハウジングを弾性支持しながら減衰力を有するラッ
    クインシュレータと、パワーステアリング装置によるア
    シスト力を発揮するために,前記ステアリングコラムシ
    ャフトの回転に伴って捩じり方向に弾性変形するトーシ
    ョンバーとを備えた車両のステアリング装置において、
    前記コラムカップリングの弾性係数及び減衰係数から算
    出される当該弾性係数の減衰係数に対する比が,ラック
    インシュレータの弾性係数及び減衰係数をコラムカップ
    リングの捩じり方向に換算した等価的な弾性係数及び減
    衰係数から算出される当該等価的な弾性係数の等価的な
    減衰係数に対する比より大きくなるように、コラムカッ
    プリング及びラックインシュレータの弾性係数,減衰係
    数を設定したことを特徴とする車両のステアリング装
    置。
  2. 【請求項2】 前記コラムカップリングは、剪断変形に
    伴って前記弾性力及び減衰力を発現するものであること
    を特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装
    置。
  3. 【請求項3】 前記ラックインシュレータは、剪断変形
    に伴って前記弾性力及び減衰力を発現するものであるこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のステアリ
    ング装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005059774A (ja) * 2003-08-18 2005-03-10 Honda Motor Co Ltd 電動パワーステアリング装置
JP2008168798A (ja) * 2007-01-12 2008-07-24 Honda Motor Co Ltd 電動パワーステアリング装置

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