JPH07274752A - 病害抵抗性イネ科植物およびその作出方法 - Google Patents

病害抵抗性イネ科植物およびその作出方法

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JPH07274752A
JPH07274752A JP6098038A JP9803894A JPH07274752A JP H07274752 A JPH07274752 A JP H07274752A JP 6098038 A JP6098038 A JP 6098038A JP 9803894 A JP9803894 A JP 9803894A JP H07274752 A JPH07274752 A JP H07274752A
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plant
gene
rice
vector
disease
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Yusuke Kimura
雄輔 木村
Hideya Fujimoto
英也 藤本
Masaaki Yoshikawa
正明 吉川
Akira Tanaka
章 田中
Mikihiro Yamamoto
幹博 山本
Isao Shimamoto
功 島本
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Mitsubishi Corp
Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Corp
Mitsubishi Chemical Corp
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】イネ紋枯病、イネ白葉枯病等の病害に対して抵
抗性を示すイネ科植物を作出する。 【構成】 イネ科植物で機能するプロモーター、β−
1,3−エンドグルカナーゼをコードするDNA配列お
よびターミネーターを有するベクターと、イネ科植物由
来のプロトプラストとを液体媒体に懸濁し、該ベクター
を該プロトプラストに導入した後、イネ科植物培養細胞
を含有する培地で培養してコロニーを形成させ、該コロ
ニーから植物体を再生させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、農業生産上重要な各種
病害に対し抵抗性を示すイネ科植物、およびその作出方
法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】各種
病原微生物により引き起こされる農作物の病害は、作物
栽培において減収の主要な要因となっている。そこでこ
のような病害の発生を防除するために、現在、耕種的
な防除、抵抗性品種の育成、薬剤による防除等が行
われている。この中でも抵抗性品種の育成が、コスト
的に、また環境への影響を考慮した場合、農家にとって
最も有利な方法である。
【0003】日本において基幹作物であるイネでは、イ
ネイモチ病、イネ縞葉枯病、イネ紋枯病、イネ白葉枯病
等の病害が古くから大きな被害を与えてきた。そこでこ
れらの病害防除のために多くの抵抗性品種が作出され、
農業生産に貢献してきた。しかし、イネ紋枯病は、その
発生面積はいもち病に次いで大きいにもかかわらず、抵
抗性を示す品種は外国稲をも含めた広範なスクリーニン
グでも見いだされておらず(堀ら,近畿中国農研,
,3−9(1981))、抵抗性品種の育成には成功
していない(大畑,稲の病害,pp565,全農協(東
京)(1989))。
【0004】一方、近年の分子生物学的な手法の発展に
より、植物と病原微生物の相互関係が明らかにされつつ
ある。各種病原微生物の感染に対して、植物は物理的・
生化学的変化を含む様々な防御反応を起こす。例えば生
化学的防御反応の一例として、細菌や糸状菌等の病原微
生物に対して抗菌活性を有するファイトアレキシンの合
成・蓄積が挙げられる。また、PRタンパク質は病原の
感染や細胞壊死に関して特異的に誘導されるタンパク質
群であるが、それらの中には既にクローニングされ詳細
な役割が検討されているものもある(Ward et
al,ThePlant Cell,,1085−1
094(1991);Linthorst,Crit.
Rev.Plant Sci.,10,123−150
(1991))。しかし、分子生物学的手法を応用して
各種病害に対して抵抗性を示すイネはいまだに作出され
ていないのが現状であった。
【0005】ところで、β−1,3−エンドグルカナー
ゼ(以下、「β−1,3−EG」と略記する)は、植物
の防御反応の引き金物質(エリシター)を遊離させ、病
害菌抵抗性を発揮させる植物に内在する酵素である。例
えばダイズ由来のβ−1,3−EGは、ダイズの疫病菌
に対する抵抗性反応の初期段階に関与しており(Yos
hikawa et al,Plant Physio
l.,73,497(1983))、疫病菌の細胞壁か
ら糖鎖を切り出す役割を有している。疫病菌から切り出
された糖鎖はエリシターとしての活性を有しており、宿
主の抵抗性反応を誘導することが知られている。
【0006】また、β−1,3−EG自身はin vitroで
の抗菌活性はない(Mauch et al,Plan
t Physiol.,88,936(1988))も
のの、最近、このβ−1,3−EG遺伝子を導入したタ
バコは赤星病(病原:Phytophtora parasitica var. ni
cotianae)、疫病(病原:Alternaria alternata tobac
co pathotype)に対して抵抗性を示し、抵抗性の誘導さ
れた形質転換タバコでは、植物の抵抗性反応で重要な役
割をしているフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(ph
enylalanine ammonia-lyase:PAL)の誘導が高まってい
ることが報告されている(Yoshikawa et
al,Naturwissenschaften,
,417−420(1993))。
【0007】しかし、β−1,3−EGが一般的に植物
の防護反応に関わっているか否かは明らかではなく、β
−1,3−EG遺伝子をイネ科植物に導入して病害抵抗
性を付与するという試みも知られていない。
【0008】本発明はかかる観点からなされたものであ
り、病害に対して抵抗性を示すイネ科植物を作出するこ
とを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するために鋭意検討を行い、β−1,3−EGがイ
ネ科植物の抵抗性反応を増強する作用があると考え、β
−1,3−EG遺伝子をイネ科植物に導入することによ
り、病害に対して抵抗性を示すイネ科植物を作出するこ
とに初めて成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち本発明の要旨は、β−1,3−エ
ンドグルカナーゼ遺伝子を導入して形質転換された、病
害抵抗性イネ科植物に存する。さらに本発明は、イネ科
植物で機能するプロモーター、β−1,3−エンドグル
カナーゼをコードするDNA配列およびターミネーター
を有するベクターと、イネ科植物由来のプロトプラスト
とを液体媒体に懸濁し、該ベクターを該プロトプラスト
に導入した後、イネ科植物培養細胞を含有する培地で培
養してコロニーを形成させ、該コロニーから植物体を再
生させることを特徴とする、病害抵抗性イネ科植物の作
出方法を提供する。
【0011】尚、本発明において、β−1,3−EG遺
伝子とは、β−1,3−EGをコードするDNA配列、
あるいはこれにプロモーター及びターミネーター及び/
又はイントロンを含むDNA配列をいう。
【0012】以下、本発明につき詳細に説明する。
【0013】<1>本発明の病害抵抗性イネ科植物及び
その作出方法 本発明の病害抵抗性イネ科植物は、β−1,3−エンド
グルカナーゼ遺伝子を導入して形質転換することにより
得られる。本発明を適用することができる植物はイネ科
植物であり、イネ科に属するものであれば特に制限はさ
れない。具体的には、イネ、ムギ(コムギ、オオムギ、
ライムギ等)、ヒエ、アワ、シバ、トウモロコシ等が挙
げられ、本発明においては特にイネが好ましい。
【0014】一方、本発明において用いられるβ−1,
3−EGをコードするDNA配列としては、例えばダイ
ズ由来のβ−1,3−EGをコードするDNA配列が利
用できる(特開平1−252292号公報、Plant
Physiol.,93,673−682(199
0))。β−1,3−EGをコードするDNA配列は、
大豆等の植物細胞から染色体遺伝子を単離してもよい
が、β−1,3−EGをコードするcDNAのクローニ
ングによっても得られる。以下に、β−1,3−EGを
コードするDNA配列の取得法及びこのDNA配列をイ
ネ科植物に導入して形質転換する方法を説明する。
【0015】(1)β−1,3−EGをコードするDN
A配列の取得 cDNAクローニングは常法により行えばよいが、β−
1,3−EGに対する抗体が得られている場合には、ク
ローニング断片を宿主内で発現させることができるベク
ターを用いると、抗体によるスクリーニングが可能とな
る。また、β−1,3−EGのアミノ酸配列をもとにオ
リゴヌクレオチドプローブを作製し、ハイブリダイゼー
ションによりβ−1,3−EGをコードするDNA配列
を有するクローンを選択することもできる。
【0016】例えば、ダイズ由来のβ−1,3−EGを
コードするDNA配列は、上記文献に記載の方法に従っ
て得ることができる。すなわち、まずダイズ種子(例え
ばHarosoy 63)を発芽させ、4〜5日目の幼植物をエチ
レンで処理して、β−1,3−EGの誘導を行う。その
後子葉よりRNAをフェノール法で抽出し、oligo
−dTセルロース・カラムによりpolyA+ RNA分
画を得る。このpolyA+ RNAを基に、改良Gub
ler−Hoffman法(Gene,25,263
(1983))により二本鎖のcDNAを合成し、得ら
れたcDNAの末端を平滑化した後、EcoRIサイト
をメチル化し、さらに平滑化した末端にEcoRIリン
カーを付けて、ラムダファージベクター、例えばλgt
11のEcoRIサイトに挿入する。λgt11は、β
−ガラクトシダーゼ遺伝子のプロモーターがクローニン
グサイトに隣接しているので、同プロモーターの制御に
よりcDNAを発現させることができる。
【0017】こうして得られる組換えファージDNAの
ファージ粒子へのパッケージングを行った後、ファージ
粒子を大腸菌Y1088株に導入してcDNAライブラ
リーを作製する。ライブラリーから目的のクローン、す
なわちβ−1,3−EGをコードするDNA配列を保持
するクローンを選択するには、クローンが保持するファ
ージDNA中の挿入DNA断片を発現させ、ウサギ等を
用いて作製した抗β−1,3−EG抗体を用いた免疫反
応によりβ−1,3−EGを発現していることを確認す
ればよい。
【0018】こうして選択されたクローンからファージ
DNAを調製し、挿入断片を回収することによって、β
−1,3−EGをコードするDNA配列が得られる。ま
た、β−1,3−EGをコードするDNA配列は、β−
1,3−EG遺伝子の両末端に相補的なDNA配列を有
するオリゴヌクレオチドを合成し、これをプライマーと
したPCRにより、大豆染色体DNAからβ−1,3−
EG遺伝子を増幅することによっても得られる。
【0019】(2)発現ベクターの構築 次に、β−1,3−EG遺伝子をイネ科植物へ導入する
に当たって、β−1,3−EGをコードするDNA配列
と、イネ科植物中で発現するプロモーターと、必要に応
じてターミネーターをベクターに導入して、β−1,3
−EG遺伝子発現ベクターを構築する。このとき、β−
1,3−EGをコードするDNA配列の転写方向の5’
側から、プロモーター、β−1,3−EGをコードする
DNA配列、ターミネーターの順となるようにベクター
に導入されるように設計される。
【0020】プロモーターとしては、β−1,3−EG
をコードするDNA配列をイネ科植物体で十分量発現さ
せるために、イネ科植物に特異的なプロモーターを用い
ることが好ましい。このようなプロモーターとして、イ
ネ科植物の細胞内で効率よく発現するものであれば特に
制限されないが、現在、イネでの発現が確認されている
プロモーターとして、カリフラワーモザイクウイルス3
5Sプロモーター(Terada and Shima
moto,Mol.Gen.Genet.,220,3
89−392(1990))、イネWxプロモーター
(Hiranoand Sano,Plant Cel
l Physiol.,32,989−997(199
1))、トウモロコシAdh1プロモーター(Kyoz
uka,Mol.Gen.Genet.,228,40
−48(1991))、イネRbcSプロモーター(K
yozuka et al,Plant Physio
l.,102,991−1000(1993))等が知
られており、本発明に好適に使用することができる。
【0021】ターミネーターは、効率よく遺伝子の転写
を終結させ、またRNAを安定させるために用いられ
る。具体的には、ノパリン合成酵素遺伝子NOSのター
ミネーター(pBI221;Jefferson,EM
BO J.,,3901−3907(1987)ある
いはカリフラワーモザイクウイルス35S(19S)R
NAターミネーター(pGL2;Shimamoto
et al,Nature,338,274−276
(1989))等が挙げられる。
【0022】また、遺伝子の発現効率を上げるため、あ
るいは転写されたmRNAの安定性を上げるために、イ
ネ科植物で機能するイントロンをβ−1,3−EG遺伝
子に導入することも効果的である。イントロンが遺伝子
の発現に及ぼす影響については、例えばトウモロコシ
dh1のイントロン1がトウモロコシで有効(Call
is,Genes&Development,,11
83−1200(1987))であるだけでなく、イネ
でも効果的であること(Kyozuka etal,M
aydica,35,353−357(1990))
や、ヒマのカタラーゼの第1イントロンがイネで有効に
働くこと(Tanaka et al,Nucl.Ac
id Res.,18,6767−6770(199
0))などの報告がある。かかるイントロンは、プロモ
ーターとβ−1,3−EGをコードするDNA配列との
間に導入されることが望ましい。
【0023】本発明に用いられるベクターとしては、p
UC19等のpUC系列(Yanisch−Perro
n et al,Gene,33,103−119(1
985))のプラスミド等が好適に用いられる。
【0024】本発明においては、さらに、発現ベクター
を保持する細胞を有効に選択することができるように、
ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝
子、ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝
子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ
遺伝子、β−グルキュロニダーゼ遺伝子等から選ばれ
る、いわゆる選択マーカー遺伝子を用いることが好まし
い。これらの遺伝子の内では、ハイグロマイシンフォス
フォトランスフェラーゼ遺伝子が好ましい。選択マーカ
ー遺伝子は、β−1,3−EG遺伝子と同一のベクター
中に有するものを使用してもよいし、β−1,3−EG
遺伝子を有するベクターと別に、選択マーカー遺伝子を
有するベクターとを併用してもよい。このような選択マ
ーカー遺伝子を有するベクターとしては、ハイグロマイ
シンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子発現ベクター
(pGL2;Shimamoto et al,Nat
ure,338,274−276(1989)等が知ら
れている。
【0025】(3)β−1,3−EG遺伝子発現ベクタ
ーのイネ科植物細胞への導入 次に、β−1,3−EG遺伝子発現ベクターをイネ科植
物に導入する。これは、通常、β−1,3−EG遺伝子
発現ベクターとイネ科植物由来のプロトプラストとを液
体媒体に懸濁し、例えば、電気パルスを印加する方法
や、ポリエチレングリコールを用いる方法により行われ
る。
【0026】イネ科植物由来のプロトプラストは、次の
様にして調製することができる。例えば、ササニシキ、
キヌヒカリ、日本晴等のイネ栽培種の完熟及び未熟種
子、葉鞘、根の組織に由来するサスペンション細胞ある
いはカルスを、通常使用され得る液体培地で培養した
後、常法に従い、例えばセルラーゼやマセロザイム等の
細胞壁分解酵素を含む酵素液中で、25〜30℃、3〜
16時間程度酵素処理する。酵素処理終了後濾過して未
消化物を除き、濾液に2〜5倍量のKMC液(塩化カリ
ウム0.118M、塩化マグネシウム0.0817M、
塩化カルシウム0.085M、pH6.0)(Harm
s et al,Theor.Appl.Gene
t.,53,57−63(1978))等を加え遠心分
離し、精製されたプロトプラストを得ることができる。
【0027】次に、このようにして得られるイネ栽培種
(ササニシキ、キヌヒカリ、日本晴等)由来のプロトプ
ラスト、例えば、(2〜10)×106個/mLと、β
−1,3−EG遺伝子を有する発現用ベクター、例えば
1〜100μg/mLと、ハイグロマイシンフォスフォ
トランスフェラーゼ遺伝子等の選択マーカー遺伝子発現
用ベクター(pGL2;Shimamoto et a
l,Nature,338,274−276(198
9)、例えば1〜100μg/mLを、30〜200m
M塩化カリウム、0〜50mM塩化マグネシウム、0.
2〜0.6Mマニトールを含む緩衝液等の液体媒体中に
懸濁し、これに電気パルスを印加する方法やポリエチレ
ングリコールを用いる方法により、各々の発現用ベクタ
ーをプロトプラスト中に導入する。
【0028】または、β−1,3−EG遺伝子とハイグ
ロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子等の選
択マーカー遺伝子を両方発現するように構築されたベク
ター1種類のみ、例えば1〜100μg/mLと、イネ
栽培種(ササニシキ、キヌヒカリ、日本晴等)由来のプ
ロトプラスト、例えば(2〜10)×106個/mL
を、30〜200mM塩化カリウム、0〜50mM塩化
マグネシウム、0.2〜0.6Mマニトールを含む緩衝
液等の液体媒体中に懸濁し、これに電気パルスを印加す
る方法やポリエチレングリコールを用いる方法により、
前記ベクターをプロトプラスト中に導入してもよい。
【0029】電気パルスの印加は、100〜1000μ
Fのコンデンサーを用いて得られる200〜1000V
/cmの初期電圧の直流パルスで、パルス幅1〜30m
sec程度の条件で行うのが好適である(特開平1−1
81791号公報参照)。
【0030】ポリエチレングリコールを用いる方法は、
例えば、Mol. Gen. Genet., 204, 204-207 (1986)に記
載の方法により行うことができる。
【0031】(4)プロトプラストの再生 上記のようにして、β−1,3−EG遺伝子発現ベクタ
ー、あるいはβ−1,3−EG遺伝子発現ベクターと選
択マーカー発現ベクターとを、イネ科植物由来のプロト
プラストに導入した後、イネ科植物培養細胞(ナース細
胞)を含有する培地で培養してコロニーを形成させ、該
コロニーから植物体を再生させる。
【0032】例えば、R2培地(Ohira et a
l.,Plant Cell Physiol.,
,1113(1973))の無機成分とB5培地(G
amborg et al.,Exp.Cell Re
s.,50,151−15(1968))のビタミン混
合液を含む液体培地(R2/B5)、またはR2培地の
無機成分とMS培地(Murashige and S
koog,Physiol.Plant,15,473
−497(1962))のビタミン混合液を含む液体培
地(R2/MS)あるいはMS培地等に、いずれも好ま
しくは窒素源として硝酸カリウムを0.2〜0.5%を
配合し、これに電気パルス処理により遺伝子発現用ベク
ターを導入したプロトプラストを懸濁し、このプロトプ
ラスト懸濁液に1.0〜3.0%程度のアガロースを含
むR2/B5培地またはR2/MSあるいはMS培地等
と等量ずつ混ぜ、速やかにシャーレ中に広げてうすく固
める。この時のプロトプラストの密度は約(5〜50)
×105個/mLとなるようにし、またアガロースの厚
さは平均0.7mm程度となるようにするのがよい。
【0033】固化したアガロースゲルを5〜20mm程
度の大きさに切り、上記液体培地中で培養する。その
際、イネのプロトプラストを使用した場合には、好まし
くは培地中にナース細胞としてイネ培養細胞を100〜
300mgFW(Fresh Weight)/シャーレ程度共存さ
せ、回転数20〜50r.p.m.でゆっくり振とうし
ながら、暗条件下27〜33℃で培養する。
【0034】プロトプラストをイネ科植物培養細胞と共
存させる方法は、上記の方法のほかに、底にメンブレン
フィルターを設けた容器内にプロトプラストを含む液体
培地を入れ、その容器をイネ科植物培養細胞と共に液体
培地を入れたシャーレに浸して共存させる方法がある。
ここに示すイネ科植物培養細胞は、旺盛に分裂している
細かい細胞塊から成るものが好ましい。このような培養
細胞を得るには、たとえばイネ科植物の種子、茎、根あ
るいは葯より得られたカルスを液体培地中に継代して分
裂速度の早い細胞を繰り返して選抜する等の公知の方法
に準じて容易に得られる。
【0035】尚、プロトプラストと共存させるイネ科植
物の培養細胞は、プロトプラストと同一のイネ科植物に
由来する培養細胞を用いるのが好ましい。例えば、ベク
ターの導入にイネのプロトプラストを用いた場合には、
これをイネ培養細胞を含有する培地で培養してコロニー
を形成させる。
【0036】培養後3〜4週間で、0.5〜1mmφ程
度のコロニーが形成される。その際、例えば選択マーカ
ー遺伝子としてハイグロマイシンホスホトランスフェラ
ーゼ遺伝子を導入しておいた場合には、培養開始後7〜
20日にハイグロマイシンを10〜50μg/mL程度
培養液中に添加し、更に培養を続けることで形質転換細
胞の一次選択を効率よく行うことができる。その他のマ
ーカー遺伝子を使用した場合には、マーカーに応じた薬
剤等を培地に適宜添加する。
【0037】次いでこのコロニーを増殖培地、例えばN
6基本培地(Chu et al,Sci.Sin.,
16,659−688(1975))またはR2培地に
植物ホルモン、例えば2,4−ジクロロフェノキシ酢酸
(2,4−D)を2mg/L程度、アガロースを0.1
〜1.0%加えた寒天培地上で2〜4週間、照明下(1
000〜4000lux)、27〜33℃で培養し、3
〜6mmφのカルスを得る。
【0038】得られたカルスから、目的遺伝子(β−
1,3−EG遺伝子)が取り込まれた形質転換カルスを
二次選択することが好ましい。この二次選択は、カルス
の一部からゲノムDNAを、例えばWalbot an
d Warren,Mol.Gen.Genet.,
11,27−34(1988)に準じて単離し、このゲ
ノムDNA約100ngを以下に述べるPCR法に供
し、β−1,3−EG遺伝子の存在を確認する方法が挙
げられる。また、β−1,3−EG遺伝子の存在は、サ
ザン法(J.Mol.Biol.,98,505(19
80))によっても確認することができる。
【0039】PCR法(Saiki,Science,
239,487−491(1988))は、鋳型DNA
の熱変性、鋳型DNAの標的領域の末端配列に相補的な
配列を有するプライマーと鋳型DNAとのアニーリング
及び耐熱性ポリメラーゼによる伸長方法からなる工程を
繰り返すことにより、鋳型DNAの標的領域を増幅する
方法である。本発明においては、形質転換カルスから得
られたゲノムDNAを94℃、1分程度で熱変性して+
鎖と−鎖の1本鎖に解離し、これを、導入されたβ−
1,3−EG遺伝子の一部に相補的なプライマー、例え
ばプロモーター領域とβ−1,3−EGコーディング領
域に相補的なプライマーとアニーリングした後、耐熱性
ポリメラーゼにより相補鎖DNAを合成(72℃、3分
程度)するという工程を20〜30回繰り返して該相補
鎖DNAを増幅する。適当な大きさの増幅産物が得られ
れば、β−1,3−EG遺伝子が細胞内に取り込まれて
いることが確認できる。
【0040】さらに、個々のカルスを単独に分離し、例
えば選択マーカー遺伝子としてハイグロマイシンフォス
フォトランスフェラーゼ遺伝子を導入した場合には、ハ
イグロマイシン20〜50μg/mLを含む前記増殖培
地に置床して培養し、ハイグロマイシン耐性を確認す
る。このカルスを、例えば0.5〜1.5%アガロース
を含むR2/MS培地(但しホルモンフリーあるいはサ
イトカイニンを1〜10mg/L添加)で27〜33
℃、2000−4000luxの条件下で培養すれば、
2〜10週間で不定胚または不定芽の形成が認められ
る。
【0041】この不定胚または不定芽を、2〜3週間ホ
ルモンを含まないR2/MS培地等で培養することによ
り、移植可能な幼植物体が得られる。こうして得られた
幼植物体は、バーミュキュライト等に移植して成長させ
ると、目的とする遺伝子発現ベクターで形質転換された
イネの植物体を得ることができる。 (5)病害抵抗性イネ科植物の選択及び病害抵抗性の試
験 形質転換植物にβ−1,3−EG遺伝子が組み込まれて
いることは、植物体からDNAを、例えばWalbot
らの方法(Walbot and Warren,Mo
l.Gen.Genet.,211,27−34,(1
988))に準じた方法で単離し、PCR法(Am.
J.Hum.Genet.,37,172(198
5))もしくはサザン法(J.Mol.Biol.,
,505(1980))により確認できる。
【0042】また、形質転換植物がゲノムに組み込まれ
たβ−1,3−EG遺伝子を発現している事は、例え
ば、β−1,3−EG遺伝子あるいはその一部をプロー
ブとして用いるノザン法(Thomas,Proc.N
atl.Acad.Sci.USA,77,5201−
5205(1980))によりβ−1,3−EG遺伝子
転写産物を確認する方法、あるいはβ−1,3−EGに
対する抗血清を用いたウエスタン法(Towbin e
t al.,Proc.Natl.Acad.Sci.
USA,76,4350−4354(1979))によ
りβ−1,3−EG遺伝子産物を確認する方法等により
明らかにできる。
【0043】得られた形質転換体は、各種病原に対する
抵抗性試験に供試される。病原としては対象とする植物
に応じて異なることもあるが、例えばイネの場合、イネ
イモチ病、イネ縞葉枯病、イネ紋枯病、イネ白葉枯病等
が代表的な病害として挙げられ、特にイネ紋枯病および
イネ白葉枯病に対する効果が顕著である。かかる抵抗性
検定試験には再生当代の個体(R0 世代)を用いてもよ
いし、自殖次世代の個体群(R1 世代)を用いてもよ
い。
【0044】接種用のイネ紋枯病菌の菌糸懸濁液は、常
法によりイネ紋枯病菌を3〜5日間YG液体培地(水1
Lに対しグルコース20g、酵母エキス3g)で振盪培
養し得られる。紋枯病に対する抵抗性は、かかる紋枯病
菌菌糸懸濁液を植物体に接種することにより容易に判定
できる。例えば、常法により栽培したイネの3〜5葉期
苗に、例えばTween20等の展着剤を0.1〜1.
0%加えたイネ紋枯病菌の菌糸懸濁液を噴霧接種する。
または、常法により栽培したイネ、好ましくは移植後約
4週間以降の茎数が3本以上のイネに、紋枯病菌菌糸懸
濁液を充分しみこませたウレタンディスク(径30mm
×厚さ15mm)を、イネの茎をはさむように固定させ
接種する。接種後2〜5日間程度湿室(湿度ほぼ100
%)中におき、以降温室にて栽培する。抵抗性は各個体
の菌糸の伸長程度または接種後の病斑の伸長程度により
検定できる。
【0045】白葉枯病に対する抵抗性の検定は、常法の
針接種または剪葉接種により行われる。2日間ポテトシ
ュークロース寒天培地(PSA培地:ジャガイモ200
g、ショ糖20g、寒天15g、蒸留水1リットル)で
培養した白葉枯病菌の懸濁液を、針につけ葉面を刺すこ
とにより(針接種)、またはハサミにつけ葉先を切るこ
とで(剪葉接種)、白葉枯病菌の接種が可能である。接
種後3〜4週間で白葉枯病に特異的な病斑が形成される
ので、その病斑長を比較することにより抵抗性の強弱を
判定できる
【0046】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り本例
に制約されるものではない。
【0047】
【実施例1】 β−1,3−EG遺伝子発現用ベクター
の構築 β−1,3−EG遺伝子発現用ベクターの構築を、図1
に基づいて説明する。プロモーター、イントロン及びタ
ーミネーターを有するベクターとして、カリフラワーモ
ザイクウイルスの35Sプロモーターと、ヒマのカタラ
ーゼ第1イントロン、アグロバクテリウムのノパリンシ
ンターゼ遺伝子由来のターミネーターを有するプラスミ
ドpIZIを用いた。pIZIは、カリフラワーモザイ
クウイルス35Sプロモーターとヒマのカタラーゼ第1
イントロンを含む高発現ベクターpIG221(Tan
aka et al,Nucleic Acids R
esearch,18,6767−6770(199
0))のβ−グルキュロニダーゼのコーディング領域を
ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼのコー
ディング領域と交換し、イントロン上流のATGを欠失
させたイネ高発現用ハイグロマイシン耐性ベクターであ
る。
【0048】このpIZIをBamHIで切断し、酵素T
4 DNA Polymeraseを利用したDNA
Blanting Kit(宝酒造製)を用いて末端を
平滑化した後、SacIで消化して得られた大断片と、
これとは別にpEG488(β−1,3−EGをコード
するDNAをpBluescript KS(Stra
tagene社)上に含むプラスミド(特開平1−25
2292号公報:Plant Physiol.,
,673−682(1990)))をHinCII及
SacIで切断して得られたβ−1,3−EGをコー
ドするDNAを含む断片とを、DNAライゲーションキ
ット(宝酒造製)を用いて連結し、環状化させることに
より、β−1,3−EG遺伝子発現用プラスミドpGl
uを構築した。
【0049】得られた組換えプラスミドで大腸菌DH5
αを形質転換し、アンピシリン耐性を指標として形質転
換株を選抜し、その細胞からpGluを回収した。こう
して得られるpGluは、カリフラワーモザイクウイル
ス35Sプロモーターとヒマのカタラーゼ第1イントロ
ンの下流にβ−1,3−EG及びアグロバクテリウムの
ノパリンシンターゼ遺伝子由来のターミネーターを有す
るものである。
【0050】
【実施例2】 病害抵抗性イネ科植物の作出 実施例1で得られたβ−1,3−EG遺伝子発現用ベク
ターを用いてイネの形質転換を行い、病害抵抗性イネ科
植物を作出した。
【0051】(1)イネプロトプラストの単離 本発明に使用したイネ植物由来のプロトプラストは、栽
培イネ(品種:ササニシキ)の完熟種子に由来するもの
で、以下のようにして得た。完熟種子のサスペンション
細胞をR2培地で培養した後、4%セルラーゼRS、1
%マセロザイムR10、0.4Mマニトールを含む酵素
液(pH5.6)で3〜4時間30℃で処理した。酵素
処理液を濾過した後、濾液に4倍量のKMC液(塩化カ
リウム0.118M、塩化マグネシウム0.0817
M、塩化カルシウム0.085M、pH6.0)を加
え、遠心分離して沈降したプロトプラストを集め、さら
にKMC液で2回洗浄した。
【0052】(2) 電気パルスによるβ−1,3−E
G遺伝子発現用ベクターのプロトプラストへの導入 (1)で調製したプロトプラストを、EP3緩衝液(7
0mM KCl、5mM MgCl2、0.4Mマニト
ール、0.1%MESを含む緩衝液(pH5.8))に
4×106/mLとなるように懸濁した。この懸濁液
に、上記実施例1で得たプラスミドpGlu(60μg
/mL)並びに選択マーカーとしてハイグロマイシンフ
ォスフォトランスフェラーゼ遺伝子を有するプラスミド
pGL2(Nature,338,274−276(1
989))(60μg/mL)を添加し、4℃で5分間
冷却した後、滅菌したプラスチックセルに移し、並行電
極を用い、直流の電気パルスを印加した。その際、80
μFのコンデンサーを用いて300V/cmの初期電圧
をかけ、パルス幅は10msecとした。パルス印加後
4℃で10分間冷却した後、等量のR2/MSプロトプ
ラストアガロース培地(Kyozuka et al,
Mol.Gen.Genet.,206,408−41
3(1987))と混合し、プレートに広げて0.7m
mの厚さとなるように固化させた。この時の細胞密度は
約3×106個/mLであった。
【0053】(3) プロトプラストの培養 電気パルスにより遺伝子発現用ベクターを導入したプロ
トプラストを含むアガロースを10mm×10mm大の
大きさに切断し、R2液体プロトプラスト培地5mLを
入れた6cmφのプレートに入れ、更に約100mg
(FW)のイネ培養細胞をナース細胞として入れた。プ
ロトプラストの培養は約25℃で約10日間、50r.
p.mの回転数でゆっくり振とうしながら、暗条件下で
培養した。
【0054】このナ−ス細胞として用いたイネ培養細胞
は次のようにして調製した。実生のイネ(Oc lin
e)の根に由来するカルスを液体培地中で週1回植継
ぎ、作製した懸濁培養細胞中に存在する分裂旺盛な細か
い細胞(1mmφ)を用いた。
【0055】10日間培養後、ナース細胞をKMC液を
用いて取り除いた。さらに培養2〜4日後に20μg/
mLとなるようにハイグロマイシンBを培地に加え、2
〜3週間培養した。
【0056】次いでこのアガロース片をR2ソフトアガ
ー培地(2.4−ジクロロフェノキシ酢酸(2.4−
D)2mg/L、6%ショ糖、0.25%アガロース)
に置いて培養し、2〜4週間後さらに大きくなったコロ
ニーを個々に分けて、R2ソフトアガー培地に移した。
【0057】このカルスをR2再生培地(3%ソルビト
ール、2%ショ糖、1%アガロース(pH5.8))に
移し、25℃,2000−4000luxの条件下で3
〜10週間培養すると、芽及び根が現れた。芽が2cm
程度に成長したところで、R2再生培地を入れたプラス
チックボックスに移し、幼植物へと成長させた。さらに
バーミュキュライトポットに移植して成育させたとこ
ろ、成熟した完全な形質転換イネ植物体が得られた。
【0058】(4) 形質転換イネ植物体のβ−1,3
−EG発現の確認 再生した形質転換イネ植物体の葉からSDS可溶性タン
パク質を抽出し、ウエスタン法(Towbin et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,7,4350(1979))によりβ−1,3−
EGタンパク質の検出を試みた。
【0059】イネの葉を約2×0.5cmの大きさに切
り、乳鉢中で2×Sample buf.(25mM
Tris−HCl(pH6.8)、4% SDS、8m
MDTT、20% グリセロール、0.004% BP
B、200μM ロイペプチン)100μLで抽出後、
遠心(15000rpm、4℃、20分間)し、上清を
サンプルとして、常法によりSDS−PAGE(ポリア
クリルアミドゲル電気泳動)にかけた。泳動後のゲルを
Immobilonメンプラン(MILLIPORE
社)に密着させ、Blotting buf.(25m
M Tris、192mM Glycine、20%
MeOH)に入れ、200mA、35V、1時間の条件
で通電することによりゲルからメンブランにタンパク質
を転写した。
【0060】メンブラン上のβ−1,3−EGタンパク
質の検出は、1次抗体としてウサギをβ−1,3−EG
で免疫して得られたβ−1,3−EGタンパク質に対す
る抗血清から精製されたイムノグロブリンG(IgG)
を、2次抗体としてウサギIgGに対するアルカリフォ
スファターゼを結合したヤギIgG(JACKSON
社)を用い、これらを含む溶液及びアルカリフォスファ
ターゼの基質であるニトロブルーテトラゾリウム(NT
T)及びブロモクロロインドールフォスフェート(BC
IP)を含む溶液にメンブランを順次浸漬し、基質を発
色させることによって行った。
【0061】その結果、β−1,3−EGタンパク質に
対する抗血清から精製されたイムノグロブリンG(Ig
G)に反応する約33.5KDのタンパク質が検出され
た(図2)。
【0062】
【実施例3】 自殖次世代へのβ−1,3−EG遺伝子
の伝達 実施例2で得られた再生植物体を温室にて常法により育
成することにより、約4ヶ月後には自殖種子を得た。
【0063】それら自殖種子を常法により播種育苗し、
苗の若い葉よりDNAを抽出した(Mol.Gen.G
enet.,211,27(1988))。約2〜3m
m長φの葉片を1.5mLマイクロ遠心チューブ内で、
Resuspensionbuf.(20mM Tri
s−HCl、10mM EDTA)250μLと共にホ
モジナイズし、20% SDSを20μL加えて、68
℃で15分間加温した。ここに、7.5M Ammon
ium Acetate 150μLを加えて氷上で3
0分間置き、15000rpm、4℃、15分間遠心
後、上清にEtOH(エタノール)1mLを加えて再度
同様の条件で遠心してDNAを沈澱させた。得られたD
NAを70%EtOHで洗い、乾燥させた後、TE b
uf.(10mM Tris−HCl(pH8.0)、
1mM EDTA)30μLに溶かした。
【0064】このDNAを用いて、PCR法によるβ−
1,3−EG遺伝子の検出を行った。使用したプライマ
ーは、配列表の配列番号1および2に示すもので、遺伝
子発現ベクター上における部位を図3に示した(矢
印)。尚、図3のかっこ内の数字は、開始コドンを1と
したときのβ−1,3−EG遺伝子配列中の位置(Plan
tPhysiol. 93, 673-682 (1990)参照)を示す。
【0065】PCRは、プライマー濃度各1μM、10
mM Tris−HCl(pH8.3)、1.5mM
MgCl2、50mM KCl、0.005% Twe
en20、0.005% NP−40、0.001%
Gelatin、dA,dG,dC,dTTP各200
μM、耐熱性DNAポリメラーゼ(REPLITHER
M Thermostable DNA Polyme
rase;EPISENTRE社)5unit、先の方
法で調製したDNA5μLを合わせて、全50μLの反
応液をDNAサーマルサイクラーPJ1000(PER
KIN−ELMER CETUS社)を用いて、94℃
1分、50℃2分、72℃3分からなる反応を1サイク
ルとし、これを30〜35回繰り返し反応させて行っ
た。
【0066】PCR反応産物を常法のアガロース電気泳
動で分析したところ、図4に見られるようにプラスミド
pGluが導入された形質転換植物は0.5Kbの位置
に増幅されたDNAが見られ、自殖次世代への遺伝子の
伝達が確認された。
【0067】かかる自殖次世代(R1 世代)の1系統
(GR1 9)での分離比は、PCR+個体とPCR−個
体の比率で19:7であった。
【0068】
【実施例4】 形質転換植物の病害抵抗性 (1) イネ紋枯病に対する抵抗性 実施例3で得られた形質転換イネの紋枯病に対する抵抗
性を検定した。検定には、組換えイネのうち、実施例3
で述べたPCR法により遺伝子が検出された個体(PC
R+)、遺伝子が検出されなかった個体(PCR−)、
及び非組換えイネ(栽培品種:ササニシキ)を供試し
た。これらの植物体は、常法により栽培し、移植後4週
間の茎数が3本の植物を育成した。4日間YG液体培地
(水1Lに対しグルコース20g、酵母エキス3g)で
振盪培養した紋枯病菌(Rhizoctonia so
lani Kuehn)懸濁液を、切れ込みを入れたウ
レタンディスク(径30mm×厚さ15mm)に充分し
みこませ、かかるウレタンディスクを、イネの茎をはさ
むように固定させ、接種を行った。接種後2日間湿室
(湿度ほぼ100%)中におき、菌糸の伸長程度を比較
した。結果を表1に示す。伸長程度は、ウレタンディス
クから1cm以上厚く伸長してるものを3、1cm以上
薄く伸長しているものを2、ほとんど伸長していない
(0.5cm以下)のものを1、1と2の中間に位置す
るものを1.5とした。PCR+個体であるGR1 9−
6、GR1 9−7は、PCR−個体であるGR19−9
と比較して、菌糸の伸長が著しく抑えられていた。ま
た、他の5個体は遺伝子の有無を検定していないが、栽
培品種のササニシキに比べて菌糸の伸長が阻害されてい
た。
【0069】
【表1】
【0070】同様にして接種した植物体を、接種後5日
間湿室中においた後、温室で栽培し75日後の病斑の伸
長程度を比較した。結果を表2に示す。発病程度は止葉
まで発病しているものを3、稈長の1/2以上の発病を
2、それ以下を1とした。PCR+個体はPCR−個体
及びササニシキよりも発病程度が低く、β−1,3−E
G遺伝子を導入することにより紋枯病抵抗性イネが作出
されることが判明した。
【0071】
【表2】 紋枯病発病程度 ─────────────────────────── R1個体番号 PCR 発病程度 (平均値) ─────────────────────────── GR1 9−11 + 2 GR1 9−12 + 1 GR1 9−14 + 1 GR1 9−16 + 3 GR1 9−17 + 1 1.6 ─────────────────────────── GR1 9−18 − 3 GR1 9−23 − 3 GR1 9−24 − 2 2.7 ─────────────────────────── ササニシキ1 3 ササニシキ2 3 ササニシキ3 3 ササニシキ4 3 ササニシキ5 2 2.8 ───────────────────────────
【0072】(2) イネ白葉枯病に対する抵抗性 実施例3で得られた形質転換イネの自殖次世代を用い
て、白葉枯病に対する抵抗性を検定した。常法により栽
培した形質転換イネ(GR1 9)及び栽培イネ(品種:
ササニシキ)の止葉に白葉枯病菌(Xanthomon
as campestris pv. oryzae
第III群菌、T7133)を剪葉接種法により感染さ
せた。すなわち、白葉枯病菌をポテトシュークロース寒
天培地(PSA培地:ジャガイモ200g、ショ糖20
g、寒天15g、蒸留水1L)で、9cmφのシャーレ
を用いて2日間28℃で培養し、それを5mLの滅菌水
に懸濁させ、懸濁液に浸したハサミを用いて止葉の葉先
を切った。接種30日後に病斑長を測定した。
【0073】各個体の最長稈の病斑長を表3に示す。供
試した形質転換イネの遺伝子の有無は検定していないも
のの、形質転換イネの集団は、ササニシキに比べ病斑の
伸長が抑えられ、白葉枯病に対する抵抗性が増加してい
た。
【0074】
【表3】 白葉枯病病斑長 ────────────────────────────────── 系統名 最長稈の病斑長(mm) (平均値) ────────────────────────────────── GR1 9 14 15 16 17 21 25 25 47 49 25.4 ササニシキ 34 46 77 125 140 180 180 273 300 130.6 ──────────────────────────────────
【0075】
【発明の効果】本発明の病害抵抗性イネ科植物は、β−
1,3−EG遺伝子を導入して形質転換されたことによ
り、イネ紋枯病、イネ白葉枯病等の病害に対して抵抗性
を示し、農業生産上重要なイネ科植物を提供することが
できる。
【0076】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GGCTAAGTAT CATTCAAG 18
【0077】配列番号:2 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列 CCAGTATCAA TGGCAGT 17
【0078】
【図面の簡単な説明】
【図1】形質転換用プラスミドpGluの構築手順を示
す図面である。
【図2】形質転換植物当代の葉部のタンパク質を電気泳
動し、β−1,3−EGの存在をウエスタン法で確認し
た結果を示す写真である。
【図3】PCR法によるβ−1,3−EG遺伝子の検出
に用いたプライマーのβ−1,3−EG遺伝子上におけ
る部位を示した図である。
【図4】形質転換植物の次世代への遺伝子の伝達を、P
CR法にて確認した結果を表す電気泳動写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 9/24 (72)発明者 吉川 正明 北海道札幌市北区北24条西12丁目1−7ラ ポールえるむの杜 A−901 (72)発明者 田中 章 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地株式 会社植物工学研究所内 (72)発明者 山本 幹博 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地株式 会社植物工学研究所内 (72)発明者 島本 功 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地株式 会社植物工学研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 β−1,3−エンドグルカナーゼ遺伝子
    を導入して形質転換された、病害抵抗性イネ科植物。
  2. 【請求項2】 β−1,3−エンドグルカナーゼ遺伝子
    がダイズ由来のものであることを特徴とする請求項1記
    載の植物。
  3. 【請求項3】 イネ科植物がイネであることを特徴とす
    る請求項1または2に記載の植物。
  4. 【請求項4】 病害が紋枯病または白葉枯病であること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の植
    物。
  5. 【請求項5】 イネ科植物で機能するプロモーター、β
    −1,3−エンドグルカナーゼをコードするDNA配列
    およびターミネーターを有するベクターと、イネ科植物
    由来のプロトプラストとを液体媒体に懸濁し、該ベクタ
    ーを該プロトプラストに導入した後、イネ科植物培養細
    胞を含有する培地で培養してコロニーを形成させ、該コ
    ロニーから植物体を再生させることを特徴とする、病害
    抵抗性イネ科植物の作出方法。
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