JPH0727189A - 遊星歯車式変速機における自動切換装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、主として自転車に装着されて使用
される遊星歯車式変速機を、手動にての変速動作に代わ
ってタイヤの回転抵抗を検知する事によって、自動的に
適正な変速を行う装置を提供しようとするものである。 【構成】 変速機の入力端に、一対の互いに相補的な形
状を有しかつ対接面が若干の傾斜を有する第１及び第２
の段車を設け、入力側の第１の段車に第２の段車をバネ
で圧接せしめ、第２の段車の反対端部に遊星歯車変速装
置の入力すべき素子を選択結合するための係脱接続子を
装着し、遊星歯車側に受接子を付設する事によって、タ
イヤの回転抵抗とバネによる第１と第２の段車の圧接力
の大小のバランスの変化によって係脱接続子を変位して
遊星歯車の入出力の組合せを替え、自動的に変速を行
う。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、自転車の変速機、特
にはタイヤにかかる回転抵抗の変化を感知して、自動的
にその変速比が切り替わる変速機に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来自転車に使用している変速機は、ハ
ブ内装式、外装式を問わずいずれも変速を手動によって
行う方式であったが、本出願人は、自動的に変速を行う
変速機を特願昭６３−３１９５７１号として提案してい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本出願人による前記提
案は、変速を手動によらず自動的に行うようにした点で
画期的なものではあるが、この自動変速装置は構造が複
雑な上、変速動作の信頼性の点で問題があった。本発明
は自動的に変速を行う変速機において、構造が簡単で軽
量かつ低容積であり、又動作において信頼性の高い変速
機を提供することを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】遊星歯車式変速機の中心
軸を中心として回転する入力回転子に円筒形状で入力側
と反対の円筒端に入力回転子の回転方向に円周を等分し
順次深い凹部を配設した複数の段差を持つ第１の段車を
装着し、この第１の段車の複数の段差と相補的な形状を
有する段差を持つ第２の段車を、第１の段車に対してバ
ネによって圧接させると共に遊星歯車の入力するメンバ
ーを選択脱着し得る係脱装置に装着し、第１の段車及び
第２の段車の対接面は、軸心に平行な面、垂直な面共に
若干の傾斜を付与する。

【０００５】

【実 施 例】この発明の実施例を図面を参照して詳述
する。図１に示すように、ペダルから後車輪ハブに伝達
されるべき回転駆動力を受ける受動回転子（変速機の入
力回転子）に、円周回転方向に順次深くなる段を等角度
間隔に設けた円筒状段車Ａを装着する一方、この段車Ａ
の段と相補的な形状の段を有する段車Ｂを対接し、この
段車Ｂを、遊星歯車セットの変速比を切り替えるための
係脱接続子１５に装着し、この段車Ｂ圧縮バネ１６で第
１の段車Ａに通常時は圧接するようにする。

【０００６】２個の段車Ａ，Ｂの対設面は図２に示すよ
うに、軸心に平行な面、垂直の面共に若干の傾斜、好ま
しくは２乃至５度の傾斜、が付与され、二つの面の間の
角度θは９０度以上、好ましくは９４乃至１００度、と
される。この傾斜の存在によって走行中に段車Ｂに伝わ
る回転抵抗力が増大した時、圧縮バネ１６の押圧に逆ら
って、段車Ｂは段車Ａから離れる方向の分力が発生する
結果、自動的に変速が行われることになる。この傾斜が
小さい場合には、圧縮バネはわずかの押圧力で段車Ａ及
びＢを常時は結合するものの、逆に、わずかの回転抵抗
力の分力の変化によって段車Ａと段車Ｂ間の相互位置が
変化するため、増大で段車Ｂを段車Ａから離す過敏な変
速となり易く、又反対に、この傾斜が大きい場合には圧
縮バネの押圧力を強大にする必要があることから、製造
コストが増したり、重量が増大する等好ましくない結果
となる。従ってこの傾斜については、これらの中間の角
度、好ましくは発明者の実験によれば、上記のように２
乃至５度の傾斜が望ましいことが確認されている。

【０００７】係脱接続子１５によって変速比が切り替え
られる遊星歯車セット自体は公知のもので良く、１例と
して図３に示すような歯車組合せを持ち、その動作条件
としては表１に示すように６種類の組合せが考えられ
る。その方式は回転方向が適合し且つ適当な変速比が得
られるならばいずれでも良いが、固定素子は太陽歯車９
で入力素子が遊星歯車１１あるいは内歯車１２である第
２と第４の組合せ方式が最も軽量且つ低容積が得られる
ので望ましい。上記受動回転子・一対の段車・遊星歯車
装置との係脱接続子・遊星歯車セットをハブ内部に装着
する。

【０００８】★

【表１】

【０００９】

【作 用】上記のように構成された装置の作用を説明
する。ペタルより伝達された駆動力は受動回転子を回転
せしむる。受動回転子の回転力はそれに固定装着された
第１の段車Ａを同時に回転させる。第１の段車Ａの回転
力は圧縮バネ１６に付勢せられて第１の段車Ａに圧接す
る第２の段車Ｂに伝達される。タイヤの回転抵抗が低い
状態では、第２の段車Ｂを付勢する圧縮バネ１６は、第
２の段車Ｂを第１の段車Ａに強く圧接して双方が最も深
く噛み合って第１の段車Ａの段１は第２の段車Ｂの段５
に第１の段車の段２は第２の段車Ｂの段６に第１の段車
Ａの段３は第２Ｂの段車の段７に接するように働き、図
４に示すように増速状態の遊星歯車の入出力の組合せ条
件即ち表１の第４の条件になるように変速装置の遊星歯
車支持装置に第２の段車Ｂに装着された係脱接続子が連
結され、矢印Ｘの経路で駆動力はハブ１３に伝達され
る。

【００１０】路面状態の悪化、傾斜等の影響でタイヤの
回転抵抗が増すと、この回転抵抗はハブ１３、内歯車１
２、遊星歯車１１、係脱接続子１４を経由して第１の段
車Ａに作用することとなる。この際第１の段車Ａは第２
の段車と対接面が若干の角度を持って対接しているか
ら、第１の段車Ａに働く回転抵抗力は第１の段車Ａを第
２の段車Ｂから離れる方向、即ち、圧縮バネ１０に逆う
方向の力を発生させる。そこで、第１の段車Ａに働く回
転抵抗力がある限度を越えると第２の段車Ｂと第１の段
車Ａとの噛み合いが１段浅くなり第１の段車Ａの段１は
第２の段車Ｂの段６に第１の段車Ａの段２は第２の段車
Ｂの段７に第１の段車Ａの段３は第２の段車Ｂの段８に
接するように働き、図５に示すように係脱接続子１５は
矢印Ｗの方向に変位して１段増速比の低い状態の遊星歯
車の入出力の組合せを選択し、この場合は遊星歯車、内
歯車ともに自由回転となって係脱接続子１５は直接ハブ
１３を駆動するような結合状態となり、矢印Ｙの経路で
駆動力はハブ１３に伝達され、変速状態となる。

【００１１】傾斜が強くなる等で更に路面抵抗が増し第
１と第２の段車の圧接力が第２の段車Ｂの回転抵抗に負
けると、更に第１と第２の段車の噛み合いが１段浅くな
り第１の段車Ａの段１は第２の段車Ｂの段７に第１の段
車Ａの段２は第２の段車Ｂの段８に第１の段車Ａの段３
は第２の段車Ｂと噛み合わないように働き、図６に示す
ように係脱接続子１５は減速状態の遊星歯車の入出力の
組合せ即ち表１の第２の条件状態になるような結合状態
となり、矢印Ｚの経路で駆動力はハブ１３に伝達され
る。

【００１２】タイヤの回転抵抗が低下すると、第２の段
車Ｂを付勢する圧縮バネ１６は係脱接続子１５の回転抵
抗に打ち勝って第２の段車Ｂを第１の段車Ａに押しつ
け、第１の段車Ａと第２の段車Ｂの噛み合いを一段深く
する。それによって係脱接続子１５は移動してそれに対
応する矢印Ｙの伝達経路となる結合状態となる。更に係
脱接続子の回転抵抗が低下すると、第２の段車Ｂは更に
第１の段車Ａに押しつけられ第１の段車Ａと段２の段車
Ｂの噛み合いは更に一段深くなる。それに伴って係脱接
続子１５も移動してそれに対応する矢印Ｘの伝達経路と
なる結合状態となる。

【００１３】このようにタイヤの回転抵抗に応じて第１
の段車Ａと第２の段車Ｂの噛み合い状態が変化し、それ
に伴って係脱接続子１５が移動して、結合状態が選択さ
れ、適正な変速状態が選ばれる。

【００１４】勿論太陽歯車固定の組合せに限定されるも
のではなく、本発明の自動切換装置はその他の組合せ、
例えば表１の第１と第５の組合せ等いずれの組合せにも
使用可能であり、又、係脱接続子の係脱順序を変更する
ことにより、減速型変速機或いは入出力の回転方向の異
なる応用にも勿論適用可能であって、遊星歯車式変速装
置の条件に限定されるものではない。

【００１５】（実施例１）太陽歯車の歯数１２枚、内歯
車の歯数３６枚の遊星歯車式変速装置（遊星歯車の歯数
は変速率に無関係）にバネ常数１．２７ｋｇｆ／ｍｍの
圧縮バネを装着した本発明の自動化装置を装着した自動
変速ハブを２４インチの実用型自転車に装着して成人男
子が試乗して舗装した平坦路、舗装した急な登り坂道、
砂利敷きの平坦路をそれぞれ試験走行した結果、それぞ
れの状況に応じた変速が行われ良好な結果を得た。

【００１６】（実施例２）実施例１の自動変速ハブの圧
縮バネをバネ常数１．０９ｋｇｆ／ｍｍのバネに交換し
て、中年女子が試乗して、上り坂の信号停止後の発進、
平坦な舗装路、非舗装の登り坂をそれぞれ試験走行した
結果、良好な変速が得られた。

【００１７】（実施例３）太陽歯車の歯数２０枚、内歯
車の歯数４０枚の遊星歯車式変速装置（遊星歯車の歯数
は変速率に無関係）にバネ常数１．４６ｋｇｆ／ｍｍの
圧縮バネを装着した本発明の自動化装置を装着した自動
変速ハブを２６インチの軽量ツーリング車に装着して成
人男子が試乗して舗装した平坦路、登り坂道、下り坂道
のあるサイクリングロードを試験走行した結果、それぞ
れの状況に応じた変速が行われ良好な結果を得た。

【００１８】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
相補的な対接形状を有する一対の段車を利用することに
よって、負荷側の回転抵抗が増す時に簡単な構造で自動
変速がなされると共に、この変速は確実になされる点で
信頼性が高い。

【図面の簡単な説明】

【図１】入力回転子に装着固定される段車と、受動回転
子に装着され、入力回転子と噛み合う段車の模式図であ
る。

【図２】段車の噛み合い部分の詳細を示す模式図であ
る。

【図３】遊星歯車装置の歯車噛み合い状態を示す説明図
である。

【図４】路面抵抗が小さい場合の変速状態を示す駆動力
伝達経路図であり、下方の段車Ａ，Ｂについては、左右
の部分は、一方は手前側、他方は奥側の部分を示してい
る。

【図５】路面抵抗が中程度の場合の変速状態を示す駆動
力伝達経路図である。

【図６】路面抵抗の大きい場合の変速状態を示す駆動力
伝達経路図である。

【符号の説明】

Ａ…第１の段車、Ｂ…第２の段車、１，２，３，４，…
第１の段車の段、５，６，７，８…第２の段車の段、９
…太陽歯車、１０…遊星歯車支持アーム、１１…遊星歯
車、１２…内歯車、１３…ハブ、１４…係脱接続子、１
５…係脱接続子の接続端子、１６…圧縮バネ、１７…段
車の車軸に平行な圧接面、１８…段車の車軸に垂直な圧
接面、Ｗ…回転抵抗の増加に伴う第２の段車の摺動方
向、Ｘ…回転抵抗の低い状態での駆動動力の伝達経路、
Ｙ…回転抵抗の中位の状態での駆動動力の伝達経路、Ｚ
…回転抵抗の高い状態での駆動力の伝達経路。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 遊星歯車式変速機の中心軸を中心として
   回転する入力回転子に、円筒形状で入力側と反対の円筒
   端に入力回転子の回転方向に円周を等分し順次深い凹部
   を配設した複数の段差を持つ第１の段車を装着し、この
   第１の段車の複数の段差と相補的な形状を有する段差を
   持つ第２の段車を、第１の段車に対してバネによって圧
   接させると共に遊星歯車の入力するメンバーを選択脱着
   し得る係脱装置に装着し、第１の段車及び第２の段車の
   対接面は、軸心に並行な面、垂直な面共に若干の傾斜を
   付与したことを特徴とする遊星歯車式変速機における自
   動切換装置。
2. 【請求項２】 第１の段車及び第２の段車の対接面の若
   干の傾斜の付与は２乃至５度であることを特徴とする請
   求項１記載の遊星歯車式変速機における自動切換装置。