以下、本発明に係る電動自転車の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。
以下、本発明の実施の形態に係る電動自転車を図面に基づき説明する。
図1〜図4などに示すように、本発明の実施の形態に係る電動自転車は、ヘッドパイプ1、フロントフォーク2、メインフレーム3、立パイプ4、ハンガラグ5(図3参照)、チェーンステー6、バックフォーク7などからなるフレーム体10と、フロントフォーク2の下端部に回転自在に組み付けられた前輪11と、ヘッドパイプ1に上方から挿入されてフロントフォーク2と一体的に回転するように組み付けられたハンドルステム12およびハンドル13と、立パイプ4に挿入されたシートポスト8の上端部に取り付けられたサドル9と、人力駆動力としての踏力が加えられるペダル14と、このペダル14がクランク15を介して取り付けられたクランク軸16を回転自在に支持するとともに、補助駆動力を発生する電動モータ17や減速機構18(モータ軸17aおよび減速歯車18a、18b、出力軸18c)、補助駆動力を出力する補助駆動力出力輪体としてのモータスプロケット19、ペダル14からの踏力を検知するトルクセンサ29、制御部30などが設けられたモータ駆動ユニット20と、チェーンステー6の後端に回転自在に取り付けられた後輪21と、立パイプ4と後輪21との間に配置されて、電動モータ17などに給電するバッテリ22と、クランク軸16にクランク一方向クラッチ23および回転軸24を介して連結されて、クランク軸16が止まっていても回転可能に配設された人力駆動力出力輪体としてのフロントスプロケット(クランクスプロケット)25と、後輪21のハブである後部ハブ40に組み付けられた内装変速機50および後部輪体としてのリアスプロケット26と、フロントスプロケット25からの人力駆動力およびモータスプロケット19からの補助駆動力をリアスプロケット26に伝達する無端状駆動力伝達体としての駆動力伝達チェーン27と、後部ハブ40に内装された内装変速機50と、フロントスプロケット25、駆動力伝達チェーン27の上側箇所およびモータ駆動ユニット20を側方から覆うカバー28と、駆動力伝達チェーン27の弛みを吸収するテンショナ装置80などを備えている。
なお、モータ駆動ユニット20は、ペダル14からの踏力を、モータ駆動ユニット20内部に設けられたトルクセンサ29により検出し、この踏力に応じて電動モータ17から発生させた補助駆動力を、モータスプロケット19を介して出力し、これらの人力駆動力と補助駆動力とを合わせて駆動力伝達チェーン27およびリアスプロケット26、内装変速機50などを介して後輪21側に伝達し、これにより登り坂などでも楽に走行可能に構成している。モータ駆動ユニット20には、補助駆動力の発生を含めた各種の制御を行う制御基板や記憶手段などからなる制御部30が内蔵されている。モータ駆動ユニット20は、支持ブラケット20a、20bを介して、フレーム体10におけるハンガラグ5の近傍箇所に固定されており、これにより、モータ駆動ユニット20は、前輪11と後輪21との間の中間位置(いわゆる中央部)に配設されている。なお、31は、駆動力伝達チェーン27がモータスプロケット19に噛み合う巻き角度を増加させるように案内するガイドプーリである。また、この実施の形態では、トルクセンサ29をモータ駆動ユニット20の内部に設けた場合を述べたが、これに限るものではなく、トルクセンサ29などの踏力検知手段はクランク軸16の軸受部近傍箇所な、モータ駆動ユニット20の外部に設けられていても何ら差し支えない。
図5に示すように、ハンドル13の両端部に取り付けられたグリップの下方には、左右のブレーキレバー32A、32Bが回動自在に枢支された状態で取り付けられている。一方(例えば右側)のブレーキレバー32Aには、ブレーキワイヤ33Aを介して、前輪11に対して機械的に制動力を与える前部ブレーキ装置36が物理的に連動するように連結されている。他方(例えば左側)のブレーキレバー32Bには、ブレーキワイヤ33Bを介して、後輪21に対して機械的に制動力を与える後部ブレーキ装置37が物理的に連動するように連結されている。また、ハンドル13の一方(例えば右側)には、内装変速機50の変速段を切り換えるための変速用操作部38が取り付けられており、例えば、変速用操作部38に設けられた操作グリップ38aを回転することにより、変速用ワイヤ39を介して、内装変速機50が物理的に連動するように連結されている。さらに、この電動自転車では、ブレーキ操作時に電動モータ17による回生電力を発生させてバッテリ22を充電する回生動作を実行可能に構成しており、ハンドル13の一部には、補助駆動力の追加動作(いわゆるアシスト動作)や回生動作を電気的にON・OFFするためのスイッチボタン(図示せず)などを複数備えた動作用操作部47が取り付けられている。また、各ブレーキレバー32A、32Bの取付箇所には、各ブレーキレバー32A、32Bの操作状態を検知するブレーキスイッチ34A、34Bが配設され、これらのブレーキスイッチ34A、34Bによりブレーキレバー32A、32Bの操作状態を検知しながら、制御部30により回生充電機能を適切に働かせるように制御されている。
本発明の電動自転車では、ペダル14が踏み込まれず、踏力が殆ど検知されていない状態で走行する際には、後述するように、後輪21が接地面から受ける受動回転駆動力が、内装変速機50およびリアスプロケット26を介して駆動力伝達チェーン27に伝達されるように構成されており、前記受動回転駆動力がモータ駆動ユニット20のモータスプロケット19を介して電動モータ17が回転される。そして、このような状況(受動走行時と称す)下で、ブレーキレバー32(32A、32B)が操作されてこの状態がブレーキスイッチ34A、34Bで検知された際に、回生動作を実行するように制御部30により制御されており、この際には電動モータ17の回転を利用して回生動作が実行されてバッテリ22が充電される。なお、ペダル14が踏み込まれていない状態では、駆動力伝達チェーン27は後輪21の回転に伴って駆動(移動)されるが、フロントスプロケット25とクランク軸16との間にクランク一方向クラッチ23が介装されているので、クランク軸16やクランク15、ペダル14は回転しない。
駆動力伝達チェーン27の弛みを吸収するテンショナ装置80は、図2に示すように、チェーンステー6に枢支軸81を介して揺動自在に枢支され、枢支軸81の枢支部分から略後方に水平に延びるとともに途中部分で斜め下方に延びる形状とされた下支持アーム82と、前記途中部分に設けられた連結軸83を介して略上方に延びる上支持アーム84と、上支持アーム84の上端部に上回転支軸を介して回転自在に取り付けられて、駆動力伝達チェーン27の上側部分に上方から摺接する上側摺接輪体としての上ローラ85と、下支持アーム82の下端部に下回転支軸を介して回転自在に取り付けられて、駆動力伝達チェーン27の下側部分に下方から摺接する下側摺接輪体としての下ローラ86とを備えている。そして、人力駆動力、補助駆動力、受動回転駆動力の何れかの駆動力を駆動力伝達チェーン27で伝達する際に、上ローラ85および下ローラ86の一方のローラが駆動力伝達チェーン27から受ける上下方向に移動する力を用いて、他方のローラを上下方向に連動させることで、駆動力伝達チェーン27の弛みを吸収するように構成している。
つまり、ペダル14を踏み込みながら人力駆動力および補助駆動力の力により走行している場合(自力走行時と称す)には、フロントスプロケット25が右回り(なお、以下の説明における回転方向は、図1や図2に示す状態、すなわち電動自転車の右側側面を、前方が右側となるように見た場合を基準として表す)に回転されるため、これに伴って駆動力伝達チェーン27も右回りに移動し、駆動力伝達チェーン27の上側部分が前方に引っ張られてできるだけ直線状になろうとする。これにより、テンショナ装置80において、動力伝達チェーン27により上ローラ85が引き上げられる方向に力が作用し、これに伴って、上支持アーム84、連結軸83、下支持アーム82を介して、下ローラ86も引き上げられる方向に力が作用し、この結果、下ローラ86に摺接している駆動力伝達チェーン27の下側部分が持ち上げられて弛むことが抑えられ、駆動力伝達チェーン27は全体として良好に張られた状態に維持される。
一方、ペダル14が踏み込まれていない状態で、電動自転車が走行している場合(惰性走行時やブレーキ操作時などの受動走行時)は、後輪21が接地面から受ける受動回転駆動力が、後述するように、内装変速機50を介して、リアスプロケット26に後輪21の回転方向と同方向に伝達され、さらに駆動力伝達チェーン27に伝達されるように構成されている。したがって、この際に、駆動力伝達チェーン27は、リアスプロケット26から受動回転駆動力を受けながら右回りに移動し、駆動力伝達チェーン27の下側部分が後方に引っ張られてできるだけ直線状になろうとする。これにより、テンショナ装置80において、駆動力伝達チェーン27により下ローラ86が引き下げられる方向に力が作用し、これに伴って、下支持アーム82、連結軸83、上支持アーム84を介して、上ローラ85も引き下げられる方向に力が作用し、この結果、上ローラ85に摺接している駆動力伝達チェーン27の上側部分が引き下げられて弛むことが抑えられ、駆動力伝達チェーン27は良好に張られた状態に維持される。
ところで、従来の内装変速機では、ペダル14が踏み込まれず、後輪21が接地面から受動回転駆動力を受けていた際には、この受動回転駆動力が内装変速機を介する際にリアスプロケット26側に伝達されない構造とされており、これにより、特許文献2に示すように、別途にチェーンを設けるなどして、上記した短所や不具合などを生じていた。
これに対して、本発明の内装変速機50では、ペダル14が踏み込まれず、後輪21が接地面から受動回転駆動力を受けていた際(受動走行時)でも、この受動回転駆動力が、後述する逆回転締結クラッチ62を有する内装変速機50を介してリアスプロケット26に伝達される構造(第1〜第4の実施の形態)であり、この点が本発明の内装変速機50の大きな特徴である。
図6(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る電動自転車の後部ハブ40および内装変速機50の縦断面図(後部ハブ40を前後に2分割して後部ハブの前側部分を後方から前方に向かって見た図)であり、図6(b)は、この箇所を右側から見た(透視した)簡略的な側面図である。なお、後部ハブ40および内装変速機50の各部品の配置に関する説明においては、図6(a)における左右方向を表す。
図6(a)および(b)において、41は、左右のチェーンステー6の後端部に跨って水平姿勢に固定されたハブ軸、42は、第1、第2の軸受43、44などを介してハブ軸41に対して回転自在に配設され、左側部分が細径、右側部分が太径に形成されたハブ胴体、45、46は、ハブ胴体42の外周部から外側に延ばされ、後輪21のスポークの中心側端部が取り付けられるスポーク用鍔である。これらのハブ軸41、ハブ胴体42、軸受43、44、スポーク用鍔45、46により後部ハブ40の骨格部分が構成され、後部ハブ40のハブ胴体42内にその中央部および左側部分が内装された状態で内装変速機50が後部ハブ40に組み付けられている。
図6(a)、(b)に示すように、内装変速機50は、ハブ軸41に第2、第3の軸受44、47を介して、ハブ胴体42の太径部右端縁とハブ軸41とに対してそれぞれ回転自在に取り付けられ、その細径部分にリアスプロケット26が一体的に回転する状態で固定された第1遊星キャリア51と、ハブ胴体42の細径部内にキャリア一方向クラッチ52を介して回転可能に配設された第2遊星キャリア53と、第1遊星キャリア51と第2遊星キャリア53とに跨って周方向に対して所定角度間隔(本実施の形態では120度間隔)で3箇所に配設されたキャリア連結部54と、このキャリア連結部54を中心としてそれぞれ回転自在に支持され、大歯数の大遊星歯車部55aおよび小歯数の小遊星歯車部55bとが一体に形成されている3つの遊星歯車55と、ハブ胴体42の太径部内側に固定され(あるいは、周方向に対して位置規制された状態でスプライン結合などにより取り付けられ)、遊星歯車55の大遊星歯車部55aに外側から噛み合う歯面がその内周に形成された外輪歯車56と、第1一方向クラッチ57を介してハブ軸41に外嵌され、遊星歯車55の大遊星歯車部55aに内側から噛み合う歯面がその外周に形成された第1太陽歯車58と、第1太陽歯車58と並んで、第2一方向クラッチ59を介してハブ軸41に外嵌された状態で配置され、遊星歯車55の小遊星歯車部55bに内側から噛み合う歯面がその外周に形成された第2太陽歯車60と、ハブ軸41に沿って、軸方向または周方向に移動可能に配設され、図5に示す変速用操作部38に連結された変速用ワイヤ39に連結されて移動されることで、第1一方向クラッチ57と第2一方向クラッチ59とを、それぞれ接続状態または分離状態に切り換える(ハブ軸41に対して固定された状態と回転自在な状態とに切り換えられる)クラッチ調整具61とを備えている。そして、さらに、ハブ軸41と第2太陽歯車60との間に介装され、ハブ軸41に対して第2太陽歯車60が左回りに回転することを阻止する機能を付与可能な逆回転締結クラッチ62と、電動自転車を後退させる際に、逆回転締結クラッチ62の機能を解除する逆回転締結クラッチ解除機構67とが内装変速機50に取り付けられている。なお、この第1の実施の形態を含む第1〜第4の実施の形態では、第1遊星キャリア51は、リアスプロケット26を取り付けられた後部輪体取付体(スプロケット取付体)としての機能と、キャリア連結部54を支持する遊星キャリアとしての機能とを兼ねている。
ここで、ハブ胴体42と第2遊星キャリア53との間に介装されたキャリア一方向クラッチ52は、第2遊星キャリア53の外周に取り付けられ、相対的に、第2遊星キャリア53がハブ胴体42に対して右回りとなる際に、キャリア一方向クラッチ52がハブ胴体42に係合して回転力が伝達される一方、第2遊星キャリア53がハブ胴体42に対して左回りとなる際に、回転力が伝達されずに空回りする。したがって、第2遊星キャリア53の右回りの回転数(キャリア一方向クラッチ52による連結部での回転速度)が、ハブ胴体42の右回りの回転数よりも大きい場合と、ハブ胴体42の左回りの回転数が、第2遊星キャリア53の左回りの回転数よりも大きい場合とには、それぞれ回転力が伝達される。一方、第2遊星キャリア53の右回りの回転速度よりもハブ胴体42の右回りの回転速度が大きい場合には、回転力が伝達されない。
内装変速機50は1速(低速)、2速(中速)、3速(高速)の3段切り換え(変速段)とされている。そして、変速用操作部38が1速に位置する際には、第1一方向クラッチ57および第2一方向クラッチ59が、これらに設けられている起立、傾倒自在の爪が傾倒姿勢となることなどにより解放状態とされて、第1太陽歯車58および第2太陽歯車60の何れもハブ軸41に対して拘束されず自由に回転できる状態である。変速用操作部38が2速の位置に切り換えられた場合には、変速用ワイヤ39を介して、クラッチ調整具61がハブ軸41回りに所定角度だけ回転される(またはハブ軸方向に移動される)ことにより、第1一方向クラッチ57の爪が起立するなどして、ハブ軸41に対して第1太陽歯車58が相対的に右回りに回転されようとした際には、この回転が阻止されて、第1太陽歯車58がハブ軸41に締結された状態となる。一方、第2一方向クラッチ59は解放状態のままであり、第2太陽歯車60はハブ軸41に対して拘束されず自由に回転できる状態である。変速用操作部38が、3速に切り換えられた場合には、変速用ワイヤ39を介してクラッチ調整具61がハブ軸方向にさらに移動または所定角度だけさらに回転されることにより、第1一方向クラッチ57が解放状態に切り換えられて、第1太陽歯車58はハブ軸41に対して拘束されず自由に回転できる状態である。一方、第2一方向クラッチ59の爪が起立するなどして、ハブ軸41に対して第2太陽歯車60が相対的に右回りに回転されようとした際には、この回転が阻止されて、第2太陽歯車60がハブ軸41に締結された状態となる。なお、第1一方向クラッチ57および第2一方向クラッチ59は、起立、傾倒自在の爪の傾倒姿勢にかかわらず、ハブ軸41に対して第1太陽歯車58や第2太陽歯車60が相対的に左回りに回転されようとした際には、この回転を拘束しない構造とされ、したがって、何れの変速段においても、ハブ軸41に対する第1太陽歯車58や第2太陽歯車60の相対的な左回りに回転は許容される。
上記構成において、運転者がペダル14を踏み込みながら走行する自力走行時で、変速段が1速である場合には、第1太陽歯車58および第2太陽歯車60の何れもハブ軸41に対して自由に回転できる状態である。自力走行時に、ペダル14からの踏力によりフロントスプロケット25が右回りに回転され、これに伴って、駆動力伝達チェーン27も右回りに回転され、補助駆動力が加えられる際には、モータスプロケット19からも駆動力伝達チェーン27に補助駆動力が伝達される。
これに伴って、リアスプロケット26が右回りに回転されるとともに、第1遊星キャリア51およびキャリア連結部54も一体的に回転し、キャリア連結部54に連結された第2遊星キャリア53が右回りに回転することで、第2遊星キャリア53の外周に取り付けられたキャリア一方向クラッチ52がハブ胴体42に係合して回転される。この結果、内装変速機50およびハブ胴体42を介して、後輪21を、リアスプロケット26と同じ回転数の状態(低速状態)で回転させながら走行できる(図7(a)、(b)参照)。なお、ハブ胴体42の回転に伴ってこの内周側に取り付けられた外輪歯車56も一体的に回転され、これに伴って、外輪歯車56の内周に噛み合う遊星歯車55が回転するとともに、第1太陽歯車58や第2太陽歯車60も回転するが、これらの第1太陽歯車58や第2太陽歯車60はハブ軸41に対して拘束されていないので、それぞれ自由に回転している空まわり状態であり、他の部品の動き等に影響を与えることはない。
自力走行時において変速段が2速に切り換えられた場合には、第1一方向クラッチ57の爪が起立するなどして、ハブ軸41に対して第1太陽歯車58が相対的に右回りに回転することが阻止された状態となる。この状態で、ペダル14からの踏力によりフロントスプロケット25、駆動力伝達チェーン27を介して、リアスプロケット26が右回りに回転されると、これに伴って、第1遊星キャリア51およびキャリア連結部54も一体的に回転する。キャリア連結部54の回転に伴い、遊星歯車55も回転するが、この際に、第1太陽歯車58がハブ軸41に対して相対的に右回りに回転することが阻止されて固定されるので、遊星歯車55は、キャリア連結部54を中心として、第1太陽歯車58から反力を与えられた状態で自転しながら、公転する。これにより、外輪歯車56は、第1太陽歯車58の歯数がA、外輪歯車56の歯数がLとした場合に、増速比1+(A/L)で増速された状態(中速状態)で回転する。この結果、内装変速機50およびハブ胴体42を介して、後輪21を、リアスプロケット26よりも若干大きな回転数の状態(中速状態)で回転させながら走行できる(図7(c)、(d)参照)。
なお、この際に、第1遊星キャリア51およびキャリア連結部54とともに第2遊星キャリア53も一体的に回転するが、ハブ胴体42が第2遊星キャリア53よりも大きな回転数で回転し、キャリア一方向クラッチ52は解放された(いわゆるクラッチが切られた)状態となっている。また、遊星歯車55の回転に伴い、第2太陽歯車60も回転するが、この第2太陽歯車60はハブ軸41に対して拘束されておらず、自由に回転している状態であり、他の部品の動き等に影響を与えることはない。
自力走行時において変速段が3速に切り換えられた場合には、第2一方向クラッチ59の爪が起立状態となるなどして、ハブ軸41に対して第2太陽歯車60が相対的に右回りに回転することが阻止された状態となる。この状態で、ペダル14からの踏力によりフロントスプロケット25、駆動力伝達チェーン27を介して、リアスプロケット26が右回りに回転されると、これに伴って、第1遊星キャリア51およびキャリア連結部54も一体的に回転する。キャリア連結部54の回転に伴い、遊星歯車55も回転するが、この際に、第2太陽歯車60がハブ軸41に対して相対的に右回りに回転することが阻止されて固定されるので、遊星歯車55は、キャリア連結部54を中心として、第2太陽歯車60から反力を与えられた状態で自転しながら、公転する。これにより、外輪歯車56は、第2太陽歯車60の歯数がB、外輪歯車56の歯数がL、遊星歯車55の大遊星歯車部55aの歯数がC、遊星歯車55の小遊星歯車部55bの歯数がDとした場合に、増速比1+(((B/D)×C)/L)で増速された状態(高速状態)で回転する。この結果、内装変速機50およびハブ胴体42を介して、後輪21を、リアスプロケット26よりも大きな回転数の状態(高速状態)で回転させながら走行できる(図7(c)、(d)参照)。
なお、この際も、ハブ胴体42が第2遊星キャリア53よりも大きな回転数で回転するので、キャリア一方向クラッチ52は解放された(いわゆる切られた)状態となっている。また、遊星歯車55の回転に伴い、第1太陽歯車58も回転するが、ハブ軸41に対して拘束されていないので、自由に回転するだけである。
上記構成において、運転者がペダル14を踏み込んで漕ぐことを止めた状態で走行する走行状態(惰性走行時やブレーキ操作時などのクランク15を回転させていない状態:受動走行時)では、後輪21が接地面からの力(受動回転駆動力と称す)を受けて、後輪21およびハブ胴体42が右回りに回転する。ここで、クランク15が回転されていないため、駆動力伝達チェーン27はフロントスプロケット25からの力を受けず、駆動力伝達チェーン27とともにリアスプロケット26や第1遊星キャリア51、キャリア連結部54、第2遊星キャリア53はその位置に止まろうとする。したがって、キャリア連結部54で支持された遊星歯車55を介して、第1太陽歯車58や第2太陽歯車60は左回りに回転しようとする。
しかしながら、本発明においては、ハブ軸41と第2太陽歯車60との間に逆回転締結クラッチ62が介装されており、この逆回転締結クラッチ62は、ハブ軸41に対して第2太陽歯車60が左回りに回転することを阻止する機能を付与できるように構成されている。そして、受動走行時には、この逆回転締結クラッチ62により第2太陽歯車60がハブ軸41に対して左回りに回転することを阻止する機能が働くよう構成されている(詳しくは後述する)。この結果、受動走行時では、後輪21およびハブ胴体42が右回りに回転された際に、第2太陽歯車60が左回りに回転することが阻止されてハブ軸41に固定されたような状態となり、遊星歯車55が、キャリア連結部54を中心として、第2太陽歯車60から反力を与えられた状態で右回りに自転しながら、右回りに公転する。これにより、第1遊星キャリア51、キャリア連結部54および第2遊星キャリア53が、減速比1+(((B/D)×C)/L)で減速された状態で右回りに回転する。この結果、内装変速機50や第1遊星キャリア51を介して、リアスプロケット26が右回りに回転し(図7(e)、(f)参照)、これにより、駆動力伝達チェーン27が右回りに回転し、これに伴い、モータスプロケット19を介して、電動モータ17が回転される。したがって、ブレーキ動作時などに、回生制御することで、回生充電を実行できる。
なお、この構成においては、自力走行状態で、逆回転締結クラッチ62により太陽歯車が左回りに回る必要がある場合には、自力走行において、ロック状態となってしまい支障をきたすため、逆回転締結クラッチ62は、自力走行において左回りすることの無い、最も高い段数の太陽歯車、この実施の形態においては、第2太陽歯車60に設けなければならない。
ところで、電動自転車を含めた自転車においては、駐輪場などにおいて、電動自転車から降りた状態で後退させることがあるが、この後退時には、後輪21が左回りに回転するため、ハブ胴体42や外輪歯車56も左回りに回転する。そして、この時、キャリア一方向クラッチ52がハブ胴体42に係合した状態となるため、第1遊星キャリア51、キャリア連結部54、第2遊星キャリア53も左回りに回転しようとし、すなわち、第1太陽歯車58および第2太陽歯車60も含めてこれらの部品が、左回りに回転することで、後退することが可能となる。しかしながら、逆回転締結クラッチ62の締結機能が作動すると、これらの部品の左回りへの回転ができない、いわゆるロック状態(ハブ胴体42が内装変速機50を介してハブ軸41に固定された状態)となるため、電動自転車を後退させることができなくなる。
このような不具合を防止すべく、本発明のこの実施の形態では、電動自転車を支障なく後退させることができるように、後退時においては、逆回転締結クラッチ62の機能が作動しないようにする逆回転締結クラッチ解除機構67が設けられている(図6、図8参照)。この実施の形態においては、逆回転締結クラッチ解除機構67は、ハブ胴体42における第1の軸受43の近傍位置に固定されたバック用爪部材63と、ハブ軸41に沿って軸方向に移動自在で、かつ回転自在に配設され、バック用爪部材63に当接して、バック用爪部材63の回転方向により軸方向に密接する位置と離間する位置とに移動可能なバック用爪係合部材64と、ハブ軸41に沿って軸方向に移動自在に配置され、バック用爪係合部材64により押圧されて、逆回転締結クラッチ62を接続状態または分離状態に切り換える逆回転クラッチ塞ぎロッド65と、前記バック用爪係合部材64をハブ軸方向に対してバック用爪部材63に密着させるとともに、前記逆回転クラッチ塞ぎロッド65を逆回転締結クラッチ62内から退避させる方向に付勢するロッド押圧ばね66とを有している。
そして、バック用爪部材63とバック用爪係合部材64とは、バック用爪部材63に対してバック用爪係合部材64が所定回転方向(この実施の形態では右回り)に回転されている状態で係合した場合には、図6(a)に簡略的に示すように、ハブ軸方向に対して密着して噛み合い、反対方向(この実施の形態では左回り)に回転されている状態で係合した場合には、図8に簡略的に示すように、ハブ軸方向に対してある程度離間した状態で噛み合う構造となっている。ここで、このような動作をするバック用爪部材63やバック用爪係合部材64の一つの具体例としては、図9(a)に示すように、ハブ胴体42に固定されているバック用爪部材63として、ハブ胴体42に固定されている円筒形状の基部63aから突出する爪63bが周方向に対して所定角度毎(図7においては90度毎)に一体形成されているものを用いるとよい。また、バック用爪係合部材64としては、図9(b)に示すように、円筒形状の基部64aから傾斜面64bおよび凹部64cを有する係合突部64dが周方向に対して所定角度毎(図7においては90度毎)に一体形成されているものを用いるとよい。なお、64fは、バック用爪係合部材64における係合突部64dが形成されておらず、大きく窪んでいる谷部である。
したがって、自力走行時や受動走行時など、電動自転車の前進に伴う後輪21の右回りの回転に伴って、ハブ胴体42とともにバック用爪部材63が右回りに回転した場合には、バック用爪部材63の爪部63aがバック用爪係合部材64の谷部64fに係合して、バック用爪部材63とバック用爪係合部材64とがハブ軸方向に対してある程度密着した状態(詳しくは、バック用爪部材63の基部63aとバック用爪係合部材64の基部64aとの離間距離が小さい状態)で噛み合う。これにより、逆回転クラッチ塞ぎロッド65が逆回転締結クラッチ62内から退避された状態に維持されて、逆回転締結クラッチ62が作動可能な状態で保持される。
一方、後退時には、電動自転車の後退に伴う後輪21の左回りの回転に伴って、ハブ胴体42とともにバック用爪部材63が左回りに回転した場合には、バック用爪部材63の爪部63aがバック用爪係合部材64の凹部64cに係合して、バック用爪係合部材64における凹部64c以外の箇所では、バック用爪部材63とバック用爪係合部材64とがハブ軸方向に対してある程度離間した状態(詳しくは、バック用爪部材63の基部63aとバック用爪係合部材64の基部64aとの離間距離が大きい状態)で噛み合う。これにより、逆回転クラッチ塞ぎロッド65が、ロッド押圧ばね66の付勢力に抗して、逆回転締結クラッチ62の内側に突入し、逆回転締結クラッチ62の機能が解除された状態で保持される。
したがって、電動自転車の後退時には、逆回転締結クラッチ62が作動せず、これにより、電動自転車は支障なく後退できる。なお、後輪21の回転に伴って逆回転締結クラッチ62の動作・解除を切り換えることができればよく、上記逆回転締結クラッチ解除機構67の構成に限るものではない。
上記構成により、特許文献2に開示されているような受動回転駆動力を伝達するための専用の受動回転駆動力伝達チェーンなどを設けることなく、人力駆動力や補助駆動力を伝達するための駆動力伝達チェーン27を介して、補助駆動力出力輪体としてのモータスプロケット19および電動モータ17に受動回転駆動力を伝達する手段としても用いることができる。したがって、受動回転駆動力伝達チェーンを必要とした場合のように、2つの駆動力伝達チェーンが干渉しないように配設するための配置設計が難しかったり、両方のチェーンの張り具合を調整する際に多くの時間や手間をかけたりしなければならなかったり、チェーンステーなどに一方の駆動力伝達チェーンが接触してしまったりする等の問題を発生することがない。
また、チェーンとして、従来から用いられている駆動力伝達チェーン27を用いるだけで済むので、内装変速機50として逆回転締結クラッチ62や逆回転締結クラッチ解除機構67を有するものを用いる以外は、一般的に用いられているハブ構造の自転車部品との互換性を保つことができ、内装変速機50以外の部品の共通化や製造工程の共通化を図ることができて、製造コストの増加を最小限に抑えることができる。また、内装変速機50を用いているため、外装変速機を用いた場合と比較して、トラブルの発生が少なくて、メンテナンスが殆ど必要ない利点を維持することができる。
また、上記のように、後退時において逆回転締結クラッチ62が締結されることを阻止して、後退動作を可能とする逆回転締結クラッチ解除機構67を設けたので、増速型の内装変速機50を用いた場合でも、電動自転車を支障なく後退させることができる。また、上記構成によれば、逆回転締結クラッチ解除機構67は、後退時においてハブ胴体42の回転動作に連動して駆動されて逆回転締結クラッチ62を解除する構成であるので、電動自転車の後退時において自動的に逆回転締結クラッチ62が解除されることになり、後退時に逆回転締結クラッチ解除機構を手動で操作するなどの手間を省くことができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態では、図10に示すように、逆回転締結クラッチ91が、第2太陽歯車60とハブ軸41との間ではなくて、第2太陽歯車60の左側外周面に臨んだ状態で配設されている。すなわち、図10、図11に示すように、第2太陽歯車60の外周面における、歯面が形成されていない箇所を外周側から囲むように有底円筒形状のクラッチ保持具92が配設され、さらにこのクラッチ保持具92の円筒部分と第2太陽歯車60の外周面との間に、ハブ軸41に対して第2太陽歯車60が左回りに回転することを阻止する機能を付与可能な逆回転締結クラッチ91が設けられている。
この実施の形態においても、上記逆回転締結クラッチ解除機構67と類似する逆回転締結クラッチ解除機構67’が設けられている。この逆回転締結クラッチ解除機構67’は、図12に示すように、前記逆回転締結クラッチ解除機構67のバック用爪部材63と同形状のバック用爪部材63と、前記逆回転締結クラッチ解除機構67のバック用爪係合部材64とは爪の形状が逆向きのバック用爪係合部材64’と、クラッチ保持具92のハブ軸41側に延びる円板状部分とハブ軸41との間においてスプライン結合などによりハブ軸41に沿って移動自在に配設されたロックピン93と、ロックピン93がクラッチ保持具92内から離脱する方向に付勢する保持具押圧ばね66とを備えている。ロックピン93には、ロックピン93から径方向に突出する突起部93aが形成され、このロックピン93の突起部93aは、クラッチ保持具92の円板状部分に形成された孔部92aから径方向に広がる凹部92bに係合可能に構成されている。
そして、バック用爪係合部材64’の片面が、ロックピン93に当接されており、バック用爪部材63とバック用爪係合部材64’とは、バック用爪部材63に対してバック用爪係合部材64’が所定回転方向(この実施の形態では右回り)に回転されている状態で係合した場合には、図10(a)に簡略的に示すように、ハブ軸方向に対してある程度互いに離間した状態(詳しくは、バック用爪部材63の基部63aとバック用爪係合部材64’の基部64aとの離間距離が大きい状態)で噛み合い、反対方向(この実施の形態では左回り)に回転されている状態で係合した場合には、ハブ軸方向に対して密着して噛み合う状態(詳しくは、バック用爪部材63の基部63aとバック用爪係合部材64’の基部64aとの離間距離が小さい状態)となる構造となっている。
この構成において、自力走行時や受動走行時など、電動自転車の前進に伴って後輪21が右回りに回転している際には、図10(a)に示すように、ハブ胴体42とともにバック用爪部材63が右周りに回転し、これにより、バック用爪係合部材64’がバック用爪部材63から離間した状態で噛み合う。これにより、ロックピン93の突起部93aがクラッチ保持具92の凹部92bに嵌まり込んで係合した状態となり、クラッチ保持具92はロックピン93を介してハブ軸41に固定された状態となる。
しかしながら、自力走行状態では、第2太陽歯車60は左回りに回転することが無いので、第2太陽歯車60が逆回転締結クラッチ91によりハブ軸41に固定されることはない。したがって、自力走行状態では、上記第1の実施の形態と同様に、リアスプロケット26からの人力駆動力や補助駆動力が内装変速機50を介してハブ胴体42に伝達されて、良好に走行できる。
また、後輪21が受動回転駆動力を受けて走行する受動走行時では、上記第1の実施の形態と同様に、後輪21およびハブ胴体42が受動回転駆動力を受けて右回りに回転された際に、逆回転締結クラッチ91が作動して、第2太陽歯車60が左回りに回転することが阻止されてハブ軸41に固定されたような状態となる。そして、遊星歯車55が、キャリア連結部54を中心として、第2太陽歯車60から反力を与えられた状態で右回りに自転しながら、右回りに公転し、第1遊星キャリア51、キャリア連結部54および第2遊星キャリア53が、1+(((B/D)×C)/L)の減速比で減速された状態で右回りに回転する。この結果、内装変速機50を介して、リアスプロケット26が右回りに回転し、これにより、駆動力伝達チェーン27が右回りに回転し、これに伴い、モータスプロケット19を介して、電動モータ17が回転される。したがって、ブレーキ動作時などに、回生制御することで、回生充電を実行できる。
また、図10(b)に示すように、後退時には、ハブ胴体42とともにバック用爪部材63が左回りに回転して、バック用爪係合部材64’がバック用爪部材63に密着した状態で噛み合うことで、ロックピン93の突起部93aがクラッチ保持具92の凹部92bから外れた状態となる。すなわち、逆回転締結クラッチ解除機構67’が作動して、逆回転締結クラッチ62が作動しない。したがって、後退時には、後輪21が左回りに回転するため、ハブ胴体42や外輪歯車56も左回りに回転するが、第2太陽歯車60の左回りの回転が規制されないため、第1遊星キャリア51、キャリア連結部54、第2遊星キャリア53も支障なく左回りに回転できて、電動自転車は支障なく後退できる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。この実施の形態では、図13に示すように、第2太陽歯車60’の側面に、側方に突出する係合突起60bが周方向適当角度(この実施の形態では90度毎に)ごとに複数(この実施の形態では4箇所)形成されているとともに、この第2太陽歯車60’の係合突起60bに対応して係合離脱可能な複数の係合凹部95aが形成された太陽歯車連結具95(図14(a)、(b)参照)が、逆回転締結クラッチ91の内周側に配設されている。そして、逆回転締結クラッチ91を介して太陽歯車連結具95を囲むように、クラッチ保持具92が配設され、このクラッチ保持具92が、前記第2の形態における逆回転締結クラッチ解除機構67’と同様な構造の、バック用爪係合部材64’によりハブ軸41に沿って押圧されるよう構成されている。
すなわち、前記第1、第2の実施の形態における第2太陽歯車60が、その幅方向に対して第2太陽歯車60’と太陽歯車連結具95とに2分割され、ハブ軸方向に対して、太陽歯車連結具95が第2太陽歯車60’に接近離間するように移動されて、太陽歯車連結具95の係合凹部95aに第2太陽歯車60’の係合突起60bが挿入離脱されることで、逆回転締結クラッチ91の機能を付与あるいは解除するよう構成されている。なお、図13における66は、太陽歯車連結具95を第2太陽歯車60’から離脱する方向へ付勢する付勢ばね、図14(a)、(b)における96は、太陽歯車連結具95が、クラッチ保持具92から外れないよう防止するための外れ止めリングである。
この第3の実施の形態において、自力走行時や受動走行時など、電動自転車の前進に伴って後輪21が右回りに回転している際には、図13(a)に示すように、ハブ胴体42とともにバック用爪部材63が右周りに回転し、バック用爪係合部材64’がバック用爪部材63から離間した状態で噛み合う。これにより、クラッチ保持具92および太陽歯車連結具95が、第2太陽歯車60’側に移動して、太陽歯車連結具95と第2太陽歯車60’とが係合した状態となり、クラッチ保持具92はロックピン93を介してハブ軸41に固定された状態となり、逆回転締結クラッチ91が作動可能な状態となる。
しかしながら、自力走行状態では、第2太陽歯車60は左回りに回転することが無いので、第2太陽歯車60が逆回転締結クラッチ91によりハブ軸41に固定されることはない。したがって、自力走行状態では、上記第1の実施の形態と同様に、リアスプロケット26からの人力駆動力や補助駆動力は、内装変速機50を介してハブ胴体42に伝達されて、良好に走行できる。
また、後輪21が受動回転駆動力を受けて走行する受動走行時では、上記第1の実施の形態と同様に、後輪21およびハブ胴体42が受動回転駆動力を受けて右回りに回転された際に、逆回転締結クラッチ91が作動して、第2太陽歯車60が左回りに回転することが阻止されてハブ軸41に固定されたような状態となる。そして、遊星歯車55が、キャリア連結部54を中心として、第2太陽歯車60から反力を与えられた状態で右回りに自転しながら、右回りに公転し、第1遊星キャリア51、キャリア連結部54および第2遊星キャリア53が、1+(((B/D)×C)/L)の減速比で右回りに回転する。この結果、内装変速機50を介して、リアスプロケット26が右回りに回転し、これにより、駆動力伝達チェーン27が右回りに回転し、これに伴い、モータスプロケット19を介して、電動モータ17が回転される。したがって、ブレーキ動作時などに、回生制御することで、回生充電を実行できる。
また、図13(b)に示すように、後退時には、ハブ胴体42とともにバック用爪部材63が左回りに回転して、バック用爪係合部材64’がバック用爪部材63に密着した状態で噛み合うことで、第2太陽歯車60’の係合突起60bが太陽歯車連結具95の係合凹部95aから外れた状態となる。すなわち、後退時には、逆回転締結クラッチ解除機構67’が作動して、第2太陽歯車60’の左回りの回転が規制されない(逆回転締結クラッチ62が作動しない)ため、後輪21が左回りに回転して、ハブ胴体42や外輪歯車56も左回りに回転しようとした際に、第1遊星キャリア51、キャリア連結部54、第2遊星キャリア53も支障なく左回りに回転できて、電動自転車は支障なく後退できる。
次に、上記第1〜第3の実施の形態では、後退時に逆回転締結クラッチ62を自動的に解除する、バック用爪部材63やバック用爪係合部材64、64’を有する逆回転締結クラッチ解除機構67、67’を設けた場合を述べたが、これに限るものではなく、逆回転締結クラッチ62の機能を外部から解除できるような逆回転締結クラッチ解除機構を設けてもよい。すなわち、図15(a)、(b)に示す本発明の第4の実施の形態に係る電動自転車においては、バック用爪部材63やバック用爪係合部材64、64’を設ける代わりに、クラッチ保持具92を直接移動させる移動ロッド98を設けている。そして、電動自転車を後退させる際に、この移動ロッド98を移動させるワイヤなどを介して接続された操作レバー(図示せず)などを運転者が操作することで、後退時に、逆回転締結クラッチ62の機能を解除するよう構成すればよい。なお、図15(a)、(b)における99は、太陽歯車連結具95を第2太陽歯車60’から離脱する方向へ付勢する付勢ばねである。この構成によっても、電動自転車を支障なく後退させることができる。
さらに、図16は本発明の第5の実施の形態に係る電動自転車の後部ハブ40および内装変速機110の縦断面図である。
この実施の形態に係る内装変速機110では、2組の遊星歯車機構(第1の遊星歯車機構120と第2の遊星歯車機構150)が用いられている。そして、自力走行時には、これらの遊星歯車機構120、150を介することで、リアスプロケット26の回転よりもハブ胴体42および後輪21の回転が同等以下となる、いわゆる減速型のものが用いられている。すなわち、上記第1〜第4の実施の形態においては、リアスプロケット26の回転よりもハブ胴体42および後輪21の回転が同等以上である、いわゆる増速型の内装変速機50が用いられていたが、本実施の形態では、減速型の内装変速機110が用いられている点が上記第1〜第4の実施の形態とは異なっている。
また、上記第1〜第4の実施の形態とは異なり、逆回転締結クラッチ62が、リアスプロケット26が取り付けられているスプロケット保持部材151とハブ胴体42との間に配設されており、受動走行時など、電動自転車の前進に伴って後輪21が右回りに回転している際には、後輪21からの受動回転駆動力を受けて、ハブ胴体42の右回りの回転数が、スプロケット保持部材151の回転数よりも大きくなった(早くなった)場合に、逆回転締結クラッチ62が締結状態となって、ハブ胴体42の右回りの回転がスプロケット保持部材151に伝達されるよう構成されている。
この実施の形態に係る内装変速機110では、自力走行時において、第1の遊星歯車機構120が、リアスプロケット26の回転を減速して第2の遊星歯車機構150に伝達し、第2の遊星歯車機構150において、リアスプロケット26の回転以下の範囲内で増速して変速段を切り換えるよう構成されている。なお、第2の遊星歯車機構150は、上記第1〜第4の実施の形態の遊星歯車と類似したものが用いられており、第2の遊星歯車機構150を含めて同様な機能を有する構成部品には同符号を付す。
具体的には、この内装変速機110は、図16に示すように、ハブ軸41に第2、第3の軸受44、47を介して、ハブ胴体42の右端縁とハブ軸41とに対してそれぞれ回転自在に取り付けられ、その細径部分にリアスプロケット26が一体的に回転する状態で固定されたスプロケット保持部材151と、ハブ胴体42の左端寄り箇所内にキャリア一方向クラッチ52を介して回転可能に配設された遊星キャリア53’と、スプロケット保持部材151と遊星キャリア53’とに跨って周方向に対して所定角度間隔(本実施の形態では120度間隔)で3箇所に配設されたキャリア連結部54と、キャリア連結部54の右側寄り部分を中心としてそれぞれ回転自在に支持され、大歯数の大遊星歯車部121aおよび小歯数の小遊星歯車部121bとが一体に形成されている3つの第1遊星歯車121と、ハブ胴体42の右寄り部分の内側領域において、リアスプロケット26の外側から第1遊星歯車121の大遊星歯車部121aの外側にかけて配設され、スプロケット伝達クラッチ122を介して、リアスプロケット26の左側部分の外周に回転自在に支持されているとともに、第1遊星歯車121の大遊星歯車部121aに外側から噛み合う歯面がその内周に形成された第1外輪歯車123と、ハブ軸41に固定された状態で外嵌され、第1遊星歯車121の小遊星歯車部121bに内側から噛み合う歯面がその外周に形成された固定太陽歯車126と、キャリア連結部54の左側寄り部分を中心としてそれぞれ回転自在に支持され、大歯数の大遊星歯車部55aおよび小歯数の小遊星歯車部55bとが一体に形成されている3つの第2遊星歯車55’と、外輪伝達クラッチ124を介してハブ胴体42の内側に回転自在に支持されているとともに、第2遊星歯車55’の小遊星歯車部55bに外側から噛み合う歯面がその内周に形成された第2外輪歯車125と、第1一方向クラッチ57を介してハブ軸41に外嵌され、第2遊星歯車55’の小遊星歯車部55bに内側から噛み合う歯面がその外周に形成された第1太陽歯車58と、第1太陽歯車58と並んで、第2一方向クラッチ59を介してハブ軸41に外嵌された状態で配置され、第2遊星歯車55’の大遊星歯車部55aに内側から噛み合う歯面がその外周に形成された第2太陽歯車60と、ハブ軸41に沿って、軸方向または周方向に移動可能に配設され、変速用操作部38に連結された変速用ワイヤ39に連結されて移動されることで、第1一方向クラッチ57と第2一方向クラッチ59とを、それぞれ接続状態または分離状態に切り換える(ハブ軸41に対して固定された状態と回転自在な状態とに切り換えられる)クラッチ調整具61とを備えている。そしてさらに、スプロケット保持部材151とハブ胴体42との間に逆回転締結クラッチ62が配設されている。なお、第1外輪歯車123、第1遊星歯車121、キャリア連結部54、固定太陽歯車126により、第1の遊星歯車機構120が構成され、第2外輪歯車125、第2遊星歯車55’、キャリア連結部54、第1太陽歯車58、第2太陽歯車60、遊星キャリア53’により、第2の遊星歯車機構150が構成され、キャリア連結部54は、第1の遊星歯車機構120と第2の遊星歯車機構150との共通部品とされている。
ここで、図17(a)に簡略的に示すように、スプロケット保持部材151とハブ胴体42との間に介装された逆回転締結クラッチ62は、相対的に、スプロケット保持部材151がハブ胴体42に対して右回りとなる際には、回転力が伝達されずに空回りする一方、ハブ胴体42がスプロケット保持部材151に対して右回りとなる際に、ハブ胴体42からスプロケット保持部材151への回転力(受動回転駆動力)を伝達する。図17(b)に簡略的に示すように、スプロケット保持部材151と第1外輪歯車123との間に介装されたスプロケット伝達クラッチ122は、相対的に、スプロケット保持部材151が第1外輪歯車123に対して右回りとなる際には、スプロケット保持部材151から第1外輪歯車123への回転力を伝達する一方、第1外輪歯車123がスプロケット保持部材151に対して右回りとなる際には、回転力が伝達されずに空回りする。
図17(c)に簡略的に示すように、第2外輪歯車125とハブ胴体42との間に介装された外輪伝達クラッチ124は、第2外輪歯車125がハブ胴体42に対して右回りとなる際には、第2外輪歯車125からハブ胴体42へ回転力を伝達する一方、ハブ胴体42が第2外輪歯車125に対して右回りとなる際には、回転力が伝達されずに空回りする。図17(d)に簡略的に示すように、遊星キャリア53’とハブ胴体42との間に介装されたキャリア一方向クラッチ52は、遊星キャリア53’がハブ胴体42に対して右回りとなる際には、遊星キャリア53’からハブ胴体42へ回転力を伝達する一方、ハブ胴体42が遊星キャリア53’に対して右回りとなる際には、回転力が伝達されずに空回りする。
上記構成において、運転者がペダル14を漕ぎながら走行する走行状態(自力走行状態と称す)では、ペダル14からの踏力によりフロントスプロケット25が右回りに回転され、これに伴って、駆動力伝達チェーン27およびモータスプロケット19、リアスプロケット26が右回りに回転される。したがって、リアスプロケット26の回転力(人力駆動力や補助駆動力)がスプロケット保持部材151に伝達され、スプロケット伝達クラッチ122を介して第1外輪歯車123が一体的に右回りに回転される。なお、この際、逆回転締結クラッチ62は空回り状態になる。第1外輪歯車123が右回りに回転されると、この第1外輪歯車123に噛み合っている第1遊星歯車121の大遊星歯車部121aは、キャリア連結部54を中心に右回りに回転しようとする。この場合に、第1遊星歯車121は、その小遊星歯車部121bが、ハブ軸41に固定されている固定太陽歯車126に噛み合っているので、固定太陽歯車126のまわりを、小遊星歯車部121bが右回りに自転及び公転し、これによりキャリア連結部54が大きく減速された状態で(この際に、固定太陽歯車126の歯数がE、第1外輪歯車123の歯数がF、小遊星歯車部121bの歯数がG、大遊星歯車部121aの歯数がHとした場合に、減速比1/(1+(((E/G)×H)/F))で右回りに回転する。
自力走行状態で、変速段が1速である場合には、第1太陽歯車58および第2太陽歯車60の何れもハブ軸41に対して自由に回転できる状態である。したがって、キャリア連結部54が右回りに回転すると、第2遊星歯車55’および第1太陽歯車58、第2太陽歯車60が空回りしている状態で、キャリア連結部54に連結された遊星キャリア53’が右回りに回転することで、遊星キャリア53’の外周に取り付けられたキャリア一方向クラッチ52がハブ胴体42に係合して回転される。この結果、内装変速機110およびハブ胴体42を介して、後輪21を、キャリア連結部54と同じ回転数の状態(低速状態)で回転させながら走行できる(図18(a)参照)。
自力走行状態で、変速段が2速に切り換えられた場合には、第1一方向クラッチ57の爪が起立するなどして、ハブ軸41に対して第1太陽歯車58が相対的に右回りに回転することが阻止された状態となる。この状態で、ペダル14からの踏力によりフロントスプロケット25、駆動力伝達チェーン27を介して、リアスプロケット26が右回りに回転されると、これに伴って、キャリア連結部54が減速された状態で右回りに回転する。キャリア連結部54の回転に伴い、第2遊星歯車55’も回転するが、この際に、第1太陽歯車58がハブ軸41に対して相対的に右回りに回転することが阻止されて固定されるので、第2遊星歯車55’は、キャリア連結部54を中心として、第1太陽歯車58から反力を与えられた状態で自転しながら、公転する。これにより、第2外輪歯車125は、第1太陽歯車58の歯数がA、第2外輪歯車125の歯数がLとした場合に、キャリア連結部54に対して増速比1+(A/L)で増速された状態(中速状態:但し、リアスプロケット26やスプロケット保持部材151よりは遅い状態)で回転する。この結果、内装変速機110およびハブ胴体42を介して、後輪21を、キャリア連結部54よりも若干大きな回転数の状態(中速状態)で回転させながら走行できる(図18(b)参照)。
なお、この際に、キャリア連結部54とともに遊星キャリア53’も一体的に回転するが、ハブ胴体42が遊星キャリア53’よりも大きな回転数で回転するため、キャリア一方向クラッチ52は解放された(いわゆる切られた)状態となる。また、第2遊星歯車55’の回転に伴い、第2太陽歯車60も回転するが、この第2太陽歯車60はハブ軸41に対して拘束されていないので、自由に回転している状態であり、他の部品の動き等に影響を与えることはない。
自力走行状態で、変速段が3速に切り換えられた場合には、第2一方向クラッチ59の爪が起立状態となるなどして、ハブ軸41に対して第2太陽歯車60が相対的に右回りに回転することが阻止された状態となる。この状態で、ペダル14からの踏力によりフロントスプロケット25、駆動力伝達チェーン27を介して、リアスプロケット26が右回りに回転されると、これに伴って、キャリア連結部54が減速された状態で右回りに回転する。キャリア連結部54の回転に伴い、第2遊星歯車55’も回転するが、この際に、第2太陽歯車60がハブ軸41に対して相対的に右回りに回転することが阻止されて固定されるので、第2遊星歯車55’は、キャリア連結部54を中心として、第2太陽歯車60から反力を与えられた状態で自転しながら、公転する。これにより、第2外輪歯車125は、第2太陽歯車60の歯数がB、第2遊星歯車55’の大遊星歯車部55aの歯数がC、第2遊星歯車55’の小遊星歯車部55bの歯数がD、第2外輪歯車125の歯数がLとした場合に、キャリア連結部54に対して増速比1+(((B/C)×D)/L)で増速された状態(高速状態:但し、リアスプロケット26やスプロケット保持部材151よりは遅い状態)で回転する。この結果、内装変速機110およびハブ胴体42を介して、後輪21を、キャリア連結部54よりも大きな回転数の状態(高速状態)で回転させながら走行できる(図18(b)参照)。
なお、この際も、ハブ胴体42が遊星キャリア53’よりも大きな回転数で回転するので、キャリア一方向クラッチ52は解放された(いわゆる切られた)状態となる。また、第2遊星歯車55’の回転に伴い、第1太陽歯車58も回転するが、ハブ軸41に対して拘束されていないので、自由に回転するだけである。
上記構成において、走行しているにも係わらず、ペダル14が踏み込まれずに、人力駆動力や補助駆動力が与えられていない受動走行時では、後輪21が接地面からの力(受動回転駆動力と称す)を受けて、後輪21およびハブ胴体42が右回りに回転する。ここで、クランク15が回転されていないため、駆動力伝達チェーン27はフロントスプロケット25からの力を受けず、駆動力伝達チェーン27とともにリアスプロケット26やスプロケット保持部材151、キャリア連結部54、遊星キャリア53’、さらに、キャリア連結部54により支持されている第2遊星歯車55’や、これに噛み合う第2外輪歯車125はその位置に止まろうとする。したがって、右回りに回転されるハブ胴体42に対して、遊星キャリア53’との間に介装されているキャリア一方向クラッチ52や、第2外輪歯車125との間に介装されている外輪伝達クラッチ124は、解放された(いわゆる切られた)状態となる。一方、ハブ胴体42とスプロケット保持部材151との間に介装された逆回転締結クラッチ62は、ハブ胴体42がスプロケット保持部材151に対して右回りとなるため、ハブ胴体42からスプロケット保持部材151への回転力(受動回転駆動力)を伝達する(図19(a)参照)。この結果、内装変速機110を介して、リアスプロケット26が右回りに回転し、これにより、駆動力伝達チェーン27が右回りに回転し、これに伴い、モータスプロケット19を介して、電動モータ17が回転される。したがって、ブレーキ動作時などに、回生制御することで、回生充電を実行できる。なお、逆回転締結クラッチ62を介してスプロケット保持部材151が右回りに回転すると、これに伴い、第1、第2の遊星歯車機構120、150を介して第2外輪歯車125や遊星キャリア53’も右回りに回転することになるが、これらの第2外輪歯車125や遊星キャリア53’は、何れの変速段にある場合でもハブ胴体42よりも遅い回転速度で右回りに回転するため、キャリア一方向クラッチ52や外輪伝達クラッチ124は、解放された(いわゆる切られた)状態が維持される。
一方、後退時には、電動自転車の後退に伴う後輪21の左回りの回転に伴って、ハブ胴体42が左回りに回転する。この際に、リアスプロケット26やスプロケット保持部材151は、駆動力伝達チェーン27側からの人力駆動力や補助駆動力を受けずに、その位置に止まろうとする。したがって、ハブ胴体42とスプロケット保持部材151との間に介装された逆回転締結クラッチ62は、ハブ胴体42がスプロケット保持部材151に対して左回りとなるため、解放された(いわゆる切られた)状態となる。一方、ハブ胴体42と遊星キャリア53’との間に介装されたキャリア一方向クラッチ52や、ハブ胴体42と第2外輪歯車125との間に介装されている外輪伝達クラッチ124は、ハブ胴体42が遊星キャリア53’や第2外輪歯車125よりも左回りに回転する(すなわち、相対的には、遊星キャリア53’や第2外輪歯車125がハブ胴体42に対して右回りに回転する)ことになるので、接続された状態となり、遊星キャリア53’、キャリア連結部54、第2外輪歯車125、第2の遊星歯車機構150がハブ胴体42とともに一体的に左回りに回転する。なお、この際、第1太陽歯車58、第2太陽歯車60は、第1一方向クラッチ57、第2一方向クラッチ59の状態に関係なく、左回りに空回りしている。ハブ胴体42とともに一体的にキャリア連結部54が左回りに回転することにより、第1遊星歯車121を介して第1外輪歯車123に増速して回転が伝達されようとし、さらには、スプロケット伝達クラッチ122を介してスプロケット保持部材151が増速して回転が伝達されようとするが、スプロケット保持部材151とハブ胴体42との間に介装されている逆回転締結クラッチ62によって、この回転が阻止される。この結果、第1太陽歯車58、第2太陽歯車60が空回りした状態で、ハブ胴体42と第1の遊星歯車機構120、第2の遊星歯車機構150、スプロケット保持部材151がロック状態となり、ハブ胴体42に伴ってスプロケット保持部材151が左回りに伴回りする。これにより、支障なく後退することができる。
上記構成によっても、特許文献2に開示されているような受動回転駆動力を伝達するための専用の受動回転駆動力伝達チェーンなどを設けることなく、人力駆動力や補助駆動力を伝達するための駆動力伝達チェーン27を介して、補助駆動力出力輪体としてのモータスプロケット19および電動モータ17に受動回転駆動力を伝達する手段としても用いることができる。したがって、受動回転駆動力伝達チェーンを必要とした場合のように、2つの駆動力伝達チェーンが干渉しないように配設するための配置設計が難しかったり、両方のチェーンの張り具合を調整する際に多くの時間や手間をかけたりしなければならなかったり、チェーンステーなどに一方の駆動力伝達チェーンが接触してしまったりする等の問題を発生することがない。
また、チェーンとして、従来から用いられている駆動力伝達チェーン27を用いるだけで済むので、減速型の内装変速機110と、逆回転締結クラッチ91を有するものを用いる以外は、一般的に用いられているハブ構造の自転車部品との互換性を保つことができ、内装変速機50以外の部品の共通化や製造工程の共通化を図ることができて、製造コストの増加を最小限に抑えることができる。また、内装変速機110を用いているため、外装変速機を用いた場合と比較して、トラブルの発生が少なくて、メンテナンスが殆ど必要ない利点を維持することができる。
さらに、上記構成によれば、第1〜第4の実施の形態のような逆回転締結クラッチ解除機構67を設けなくても、電動自転車を支障なく後退させることができる利点がある。すなわち、本実施の形態では、逆回転締結クラッチ91が、スプロケット保持部材151とハブ胴体42との間に配設されている構成であるので、後退させる際でも、ハブ軸41に内装変速機110が固定されることが無く、逆回転締結クラッチ解除機構67を設けなくても済む。
つまり、一般に、内装変速機においては、変速段に応じて係合用の爪などが突出するなどして切り換える一方向クラッチ57、59が、ハブ軸41に対して締結、解放される構造であり、これによって力の入出力経路を切り換えられる。そして、後退する際には、一方向クラッチ57、59は、前記係合用の爪の起立、傾倒状態(一方向クラッチ57、59の締結、解放状態)にかかわらず、空回りする向きに配置されているので、後退させる際にも、一方向クラッチ57、59が設けられた第1、第2の太陽歯車58、60がハブ軸41に係合することは無い。しかしながら、上記第1〜第4の実施の形態のように、逆回転締結クラッチ56を第2の太陽歯車60とハブ軸41との間に設けた場合には、後退する際に、逆回転締結クラッチ56により、第2の太陽歯車60とハブ軸41とが締結されてしまい、ロック状態となって後退できなくなるので、この様な不具合の発生を防止するために、逆回転締結クラッチ解除機構67、67’が必要となっていた。これに対して、本実施の形態では、逆回転締結クラッチ91が、太陽歯車とハブ軸41との間ではなくて、スプロケット保持部材151とハブ胴体42との間に配設されている構成であるので、後退させる際でも、ハブ軸41に内装変速機110が固定されることが無く、逆回転締結クラッチ解除機構67を設けなくても済み、通常の内装変速機110に対して追加するものとして、逆回転締結クラッチ91だけで済み、製造コストの増加を最小限に抑えることができる。
なお、上記の実施の形態では、何れも内装変速機50、110として3段変速の場合を述べたが、2段や、4段以上のものにも適用可能である。すなわち、増速型の内装変速機50の場合には最も高速の太陽歯車とハブ軸との間に逆回転締結クラッチ62を配設すればよく、また、減速型の内装変速機110の場合には、上記と同様に、逆回転締結クラッチ91を、スプロケット保持部材151とハブ胴体42との間に配設すればよい。
また、上記の実施の形態では、ペダル14からの踏力を後輪に伝達する無端状駆動力伝達体として、チェーン(駆動力伝達チェーン27)が用いられた場合を述べたが、これに限るものではなく、チェーンに代えて歯付きベルトを用いてもよい。また、同様に、歯付きベルト(駆動力伝達歯付きベルト)を用いる場合には、補助駆動力を出力する補助駆動力出力輪体として、モータスプロケットに代えてモータ出力歯車を用い、後部輪体としてリアスプロケット26に代えてリア歯車、後部輪体取付体としてスプロケット取付体151に代えて歯車取付体を用いるとよい。