JPH07268460A - 表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法 - Google Patents
表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法Info
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- JPH07268460A JPH07268460A JP5787894A JP5787894A JPH07268460A JP H07268460 A JPH07268460 A JP H07268460A JP 5787894 A JP5787894 A JP 5787894A JP 5787894 A JP5787894 A JP 5787894A JP H07268460 A JPH07268460 A JP H07268460A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 薄肉鋳造法で鋳造したCr−Ni系ステンレ
ス鋼薄鋳片から表面品質と加工性に優れた冷延薄板を製
造することを目的とする。 【構成】 Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面が鋳
片と同期して移動する連続鋳造機によって板厚10mm以
下の薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜1000
℃の温度域で巻取り、続いて前記薄帯状鋳片を900〜
1200℃の温度域で圧延率10〜50%の熱間圧延を
行い、以後常法によって焼鈍・冷延して冷延板とする。
ス鋼薄鋳片から表面品質と加工性に優れた冷延薄板を製
造することを目的とする。 【構成】 Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面が鋳
片と同期して移動する連続鋳造機によって板厚10mm以
下の薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜1000
℃の温度域で巻取り、続いて前記薄帯状鋳片を900〜
1200℃の温度域で圧延率10〜50%の熱間圧延を
行い、以後常法によって焼鈍・冷延して冷延板とする。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はCr−Ni系ステンレス
鋼を板厚10mm以下の薄帯状鋳片に鋳造し、該薄帯状鋳
片を冷間圧延し焼鈍して薄板製品とするプロセスにおい
て、表面品質の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板を
製造する方法に関するものである。近年、溶鋼から鋳造
によって直接的に板厚10mm以下の薄帯状鋳片を得る技
術が開発され、実機規模の試験がなされるに至ってい
る。新しいこの技術によれば熱延工程を簡略又は省略す
ることが可能になる。
鋼を板厚10mm以下の薄帯状鋳片に鋳造し、該薄帯状鋳
片を冷間圧延し焼鈍して薄板製品とするプロセスにおい
て、表面品質の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板を
製造する方法に関するものである。近年、溶鋼から鋳造
によって直接的に板厚10mm以下の薄帯状鋳片を得る技
術が開発され、実機規模の試験がなされるに至ってい
る。新しいこの技術によれば熱延工程を簡略又は省略す
ることが可能になる。
【0002】従来は板厚が100mmを超えるスラブを熱
間圧延ミルによって多大なエネルギーを費やして熱延し
ており、熱間圧延工程が簡略あるいは省略されるメリッ
トは製造コストを下げるだけでなく、環境面からも望ま
れるものである。以後、溶鋼から板厚10mm以下の薄帯
を鋳造する工程を含むプロセスを新プロセスと呼び、ス
ラブを熱間圧延して薄帯にする工程を含むプロセスを現
行プロセスと称する。
間圧延ミルによって多大なエネルギーを費やして熱延し
ており、熱間圧延工程が簡略あるいは省略されるメリッ
トは製造コストを下げるだけでなく、環境面からも望ま
れるものである。以後、溶鋼から板厚10mm以下の薄帯
を鋳造する工程を含むプロセスを新プロセスと呼び、ス
ラブを熱間圧延して薄帯にする工程を含むプロセスを現
行プロセスと称する。
【0003】
【従来の技術】従来、18%Cr−8%Ni鋼に代表さ
れるCr−Ni系ステンレス鋼冷延薄板を新プロセスに
よって製造すると、製品の表面に肌荒れ(オレンジピー
ル又はローピングと呼ばれる)が生じて問題になってい
た。
れるCr−Ni系ステンレス鋼冷延薄板を新プロセスに
よって製造すると、製品の表面に肌荒れ(オレンジピー
ル又はローピングと呼ばれる)が生じて問題になってい
た。
【0004】たとえば、日本鉄鋼協会講演論文集「材料
とプロセス」 Vol. 1(1990), p770に記載された論文に
は、新プロセスで製造したSUS304薄板製品の表面
品質が劣化する現象が述べられている。この論文におい
ては、仕上げ冷間圧延前の材料の粗大粒に起因して冷延
板表面にオレンジピール状の肌荒れ(ローピング)を生
じるとされている。その防止のためには、次の2つの措
置によって仕上げ冷間圧延前の材料の結晶粒を微細化す
ることが有効とされている。 1)鋳片に熱間圧延−熱延板焼鈍を施す。たとえば、1
200℃で16%の熱間圧延、1150℃で1分の溶体
化処理を施す。 2)鋳片に中間焼鈍を伴う2回の冷間圧延を施す。たと
えば、室温で10%の圧下率を適用する圧延を行い、中
間焼鈍を行った後、仕上げ圧延を行う。
とプロセス」 Vol. 1(1990), p770に記載された論文に
は、新プロセスで製造したSUS304薄板製品の表面
品質が劣化する現象が述べられている。この論文におい
ては、仕上げ冷間圧延前の材料の粗大粒に起因して冷延
板表面にオレンジピール状の肌荒れ(ローピング)を生
じるとされている。その防止のためには、次の2つの措
置によって仕上げ冷間圧延前の材料の結晶粒を微細化す
ることが有効とされている。 1)鋳片に熱間圧延−熱延板焼鈍を施す。たとえば、1
200℃で16%の熱間圧延、1150℃で1分の溶体
化処理を施す。 2)鋳片に中間焼鈍を伴う2回の冷間圧延を施す。たと
えば、室温で10%の圧下率を適用する圧延を行い、中
間焼鈍を行った後、仕上げ圧延を行う。
【0005】又、「材料とプロセス」 Vol. 4(1991), p
996 に掲載された論文には、高圧下率の調質圧延を施す
ことで冷延板の表面肌荒れ(ローピング)が改善される
が、材質特に伸びが低下するため、γ相不安定成分系即
ち高Md30になるように成分を調整する必要があると
述べられている。たとえば、Md30を30℃とし圧下
率1%の調質圧延を施すことによってローピング、加工
性(伸び)を現行プロセス材並みにすることができると
述べられている。
996 に掲載された論文には、高圧下率の調質圧延を施す
ことで冷延板の表面肌荒れ(ローピング)が改善される
が、材質特に伸びが低下するため、γ相不安定成分系即
ち高Md30になるように成分を調整する必要があると
述べられている。たとえば、Md30を30℃とし圧下
率1%の調質圧延を施すことによってローピング、加工
性(伸び)を現行プロセス材並みにすることができると
述べられている。
【0006】さらに、「材料とプロセス」 Vol. 4(199
1), p997 に記載された論文には鋳片のδフェライト量
を増加させ、γ相不安定とするような成分設計によって
冷延板の表面肌荒れ(ローピング)が改善すると述べら
れている。
1), p997 に記載された論文には鋳片のδフェライト量
を増加させ、γ相不安定とするような成分設計によって
冷延板の表面肌荒れ(ローピング)が改善すると述べら
れている。
【0007】又、特開昭63−421号公報には板厚1
0mm以下の薄鋳片を800℃以上で50%以下の熱間圧
延を行い、650℃以下で巻取ることで異方性が小さく
(イヤリングが小さく)耐食性が優れた薄板が製造でき
ると述べられている。しかしこの技術は熱間圧延による
異方性低下の防止について検討したものであり、そのた
めに50%以下の熱延率としており、形状を整えるため
に熱間圧延を行っている。従って、この技術で製造した
薄板にはローピングが発生するものと考えられる。
0mm以下の薄鋳片を800℃以上で50%以下の熱間圧
延を行い、650℃以下で巻取ることで異方性が小さく
(イヤリングが小さく)耐食性が優れた薄板が製造でき
ると述べられている。しかしこの技術は熱間圧延による
異方性低下の防止について検討したものであり、そのた
めに50%以下の熱延率としており、形状を整えるため
に熱間圧延を行っている。従って、この技術で製造した
薄板にはローピングが発生するものと考えられる。
【0008】又、特開平2−133528号公報では9
00℃以上の温度域で圧下率60%以下の熱間圧延を行
うことで鋳片の組織が再結晶し、ローピングが改善され
ると述べられている。この技術では、熱延後の焼鈍の有
無に関わらず、ローピングが改善されると述べられてお
り、又熱延後の鋳片の温度履歴としては900〜550
℃の温度域を50℃/s以上の冷速で冷却することしか述
べられていない。
00℃以上の温度域で圧下率60%以下の熱間圧延を行
うことで鋳片の組織が再結晶し、ローピングが改善され
ると述べられている。この技術では、熱延後の焼鈍の有
無に関わらず、ローピングが改善されると述べられてお
り、又熱延後の鋳片の温度履歴としては900〜550
℃の温度域を50℃/s以上の冷速で冷却することしか述
べられていない。
【0009】本発明者らは、特開平2−133528号
公報の技術を用いて、Cr−Ni系ステンレス鋼薄板の
製造を試験的に行ったが、表面品質を優れたものにする
ことはできなかった、従って、900℃以上の温度域で
60%以下の圧下という熱間圧延条件だけでは、完全な
再結晶組織が得られないことが判った。
公報の技術を用いて、Cr−Ni系ステンレス鋼薄板の
製造を試験的に行ったが、表面品質を優れたものにする
ことはできなかった、従って、900℃以上の温度域で
60%以下の圧下という熱間圧延条件だけでは、完全な
再結晶組織が得られないことが判った。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】新プロセスによって良
好な表面品質及び材質を有するCr−Ni系ステンレス
鋼薄板を製造するために、前記の公知手段を適用する
と、生産性、製品の品質安定性の面において種々の問題
が生じる。たとえば、 鋳造直後の鋳片を熱延し、熱延仕上げ温度以降を空冷
以上の冷却速度で冷却すると熱延以降の工程で析出物が
微細析出し、該析出物が熱延板焼鈍時の再結晶を抑制し
て再結晶に長時間を要するほか、冷延焼鈍時の粒成長を
抑制して製品の組織が細粒組織となって伸びが低下す
る。 鋳片に、中間焼鈍を伴う2回の冷間圧延を施す方法で
は、鋳片に微細析出したMnSによって中間焼鈍時の再
結晶が遅延し、再結晶に長時間焼鈍を要するほか、冷間
圧延−焼鈍の手間が2倍になる問題が生じる。 調質圧延率を高くすると材質(伸び)が低下する。 成分規制を行うと製造可能鋼種が限定される。 等の問題が生じてくる。
好な表面品質及び材質を有するCr−Ni系ステンレス
鋼薄板を製造するために、前記の公知手段を適用する
と、生産性、製品の品質安定性の面において種々の問題
が生じる。たとえば、 鋳造直後の鋳片を熱延し、熱延仕上げ温度以降を空冷
以上の冷却速度で冷却すると熱延以降の工程で析出物が
微細析出し、該析出物が熱延板焼鈍時の再結晶を抑制し
て再結晶に長時間を要するほか、冷延焼鈍時の粒成長を
抑制して製品の組織が細粒組織となって伸びが低下す
る。 鋳片に、中間焼鈍を伴う2回の冷間圧延を施す方法で
は、鋳片に微細析出したMnSによって中間焼鈍時の再
結晶が遅延し、再結晶に長時間焼鈍を要するほか、冷間
圧延−焼鈍の手間が2倍になる問題が生じる。 調質圧延率を高くすると材質(伸び)が低下する。 成分規制を行うと製造可能鋼種が限定される。 等の問題が生じてくる。
【0011】本発明は、新プロセスによってCr−Ni
系ステンレス鋼薄板を製造するときの問題である表面品
質問題及び材質問題を、現行プロセスに比べて生産性を
低下させずに解決することを目的としてなされたもので
ある。
系ステンレス鋼薄板を製造するときの問題である表面品
質問題及び材質問題を、現行プロセスに比べて生産性を
低下させずに解決することを目的としてなされたもので
ある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成
するために次のように構成する。 (1)Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面が鋳片と
同期して移動する連続鋳造機によって板厚10mm以下の
薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜1200℃の
温度域で中間巻取りをし、該中間巻取りの状態で薄帯状
鋳片を1分以上保持し、次いで前記薄帯状鋳片を巻戻し
て圧延機に挿入し、該圧延機にて900〜1200℃の
温度域で圧下率10〜50%で熱間圧延をし、帯状に巻
取り、続いて熱延板焼鈍し、デスケーリングし、冷延
し、さらに焼鈍酸洗又は光輝焼鈍することを特徴とす
る。 (2)Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面が鋳片と
同期して移動する連続鋳造機によって板厚10mm以下の
薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜1200℃の
温度域で中間巻取りをし、該中間巻取りの状態で薄帯状
鋳片を1分以上保持し、次いで前記薄帯状鋳片を巻戻し
て圧延機に挿入し、該圧延機にて900〜1200℃の
温度域で圧下率10〜50%で熱間圧延をし、次いで8
00℃以上の温度を保持しつつ熱処理ゾーンに挿入して
1000〜1200℃の温度域で5秒以上保持する熱処
理を行った後、900〜600℃の温度域を20℃/s以
上の冷却速度で冷却し、600℃以下の温度で巻取り、
デスケーリングし、冷延し、さらに焼鈍酸洗又は光輝焼
鈍することを特徴とする。
するために次のように構成する。 (1)Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面が鋳片と
同期して移動する連続鋳造機によって板厚10mm以下の
薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜1200℃の
温度域で中間巻取りをし、該中間巻取りの状態で薄帯状
鋳片を1分以上保持し、次いで前記薄帯状鋳片を巻戻し
て圧延機に挿入し、該圧延機にて900〜1200℃の
温度域で圧下率10〜50%で熱間圧延をし、帯状に巻
取り、続いて熱延板焼鈍し、デスケーリングし、冷延
し、さらに焼鈍酸洗又は光輝焼鈍することを特徴とす
る。 (2)Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面が鋳片と
同期して移動する連続鋳造機によって板厚10mm以下の
薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜1200℃の
温度域で中間巻取りをし、該中間巻取りの状態で薄帯状
鋳片を1分以上保持し、次いで前記薄帯状鋳片を巻戻し
て圧延機に挿入し、該圧延機にて900〜1200℃の
温度域で圧下率10〜50%で熱間圧延をし、次いで8
00℃以上の温度を保持しつつ熱処理ゾーンに挿入して
1000〜1200℃の温度域で5秒以上保持する熱処
理を行った後、900〜600℃の温度域を20℃/s以
上の冷却速度で冷却し、600℃以下の温度で巻取り、
デスケーリングし、冷延し、さらに焼鈍酸洗又は光輝焼
鈍することを特徴とする。
【0013】
【作用】薄板状鋳片の結晶粒を微細化させるためには鋳
造機に直結した熱間圧延機によって熱間圧延を行うこと
が最も効率的である。しかし、前記公知文献のように鋳
造直後に熱間圧延を行い、熱延仕上げ温度から600℃
までを空冷以上の冷却速度で冷却すると熱延によって導
入された格子欠陥を核として析出物(主にMnS)が微
細に析出し、該析出物が熱延板焼鈍時の再結晶を抑制す
るほか、冷延焼鈍時の粒成長を抑制して、製品の組織が
細粒組織となって製品の伸びが低下するという問題が生
じる。
造機に直結した熱間圧延機によって熱間圧延を行うこと
が最も効率的である。しかし、前記公知文献のように鋳
造直後に熱間圧延を行い、熱延仕上げ温度から600℃
までを空冷以上の冷却速度で冷却すると熱延によって導
入された格子欠陥を核として析出物(主にMnS)が微
細に析出し、該析出物が熱延板焼鈍時の再結晶を抑制す
るほか、冷延焼鈍時の粒成長を抑制して、製品の組織が
細粒組織となって製品の伸びが低下するという問題が生
じる。
【0014】本発明者らは、熱延前に析出物を成長させ
る熱処理を行うことで、析出物の成長した熱延板を得、
該熱延板を以後常法の熱延板焼鈍によって完全な再結晶
組織が得られ、さらに以後常法の冷延・焼鈍によって冷
延板とすることによって冷延板焼鈍時における粒成長が
促進し、良好な表面品質と加工性を有する薄板製品を製
造することを可能とした。
る熱処理を行うことで、析出物の成長した熱延板を得、
該熱延板を以後常法の熱延板焼鈍によって完全な再結晶
組織が得られ、さらに以後常法の冷延・焼鈍によって冷
延板とすることによって冷延板焼鈍時における粒成長が
促進し、良好な表面品質と加工性を有する薄板製品を製
造することを可能とした。
【0015】新プロセスでは現行プロセスで行っていた
熱延前のスラブ加熱工程が完全に省略されている。さら
に、板厚が薄いため凝固後空冷以上の冷却速度で600
℃以下まで冷却した場合、空冷の冷却速度もスラブに比
べると著しく速い。そのため現行の連続鋳造スラブでは
析出・成長していたMnS,Cu2 S等の析出物が薄帯
状鋳片では微細析出する。微細析出した析出物は薄帯状
鋳片に熱延−焼鈍を施す際に再結晶を抑制するほか、冷
延板焼鈍時の再結晶粒の成長を抑制する等冷延焼鈍板の
品質を制御する上で有害な析出物である。
熱延前のスラブ加熱工程が完全に省略されている。さら
に、板厚が薄いため凝固後空冷以上の冷却速度で600
℃以下まで冷却した場合、空冷の冷却速度もスラブに比
べると著しく速い。そのため現行の連続鋳造スラブでは
析出・成長していたMnS,Cu2 S等の析出物が薄帯
状鋳片では微細析出する。微細析出した析出物は薄帯状
鋳片に熱延−焼鈍を施す際に再結晶を抑制するほか、冷
延板焼鈍時の再結晶粒の成長を抑制する等冷延焼鈍板の
品質を制御する上で有害な析出物である。
【0016】従って、析出物を十分に析出、成長させる
熱処理が必要である。本発明者らは、鋳造直後の薄帯状
鋳片を高温で中間巻取りすることで析出物を成長させて
無害化できることを見いだした。鋳造後に高温で中間巻
取りした鋳片を高温のまま巻戻して熱間圧延し、以後常
法の冷延焼鈍により冷延板を製造することによって表面
品質と加工性に優れたCr−Ni系ステンレス鋼板を製
造する技術を開発した。さらに、熱延直後に熱処理を行
うことによって現行プロセスで行われている熱延板の焼
鈍より短時間で、再結晶が完了し、微細組織が得られる
ことを明らかにした。
熱処理が必要である。本発明者らは、鋳造直後の薄帯状
鋳片を高温で中間巻取りすることで析出物を成長させて
無害化できることを見いだした。鋳造後に高温で中間巻
取りした鋳片を高温のまま巻戻して熱間圧延し、以後常
法の冷延焼鈍により冷延板を製造することによって表面
品質と加工性に優れたCr−Ni系ステンレス鋼板を製
造する技術を開発した。さらに、熱延直後に熱処理を行
うことによって現行プロセスで行われている熱延板の焼
鈍より短時間で、再結晶が完了し、微細組織が得られる
ことを明らかにした。
【0017】請求項1の方法では、薄帯状鋳片に鋳造−
熱延後、900〜600℃の温度域を冷却する過程や熱
延板を焼鈍するために昇温する過程で、僅かではあるが
炭化物や燐化物が析出し、熱延板焼鈍時にこれらの析出
物が固溶するまでの時間だけ再結晶が遅延する。従っ
て、熱延直後に板温を800℃以下に下げずに熱延板焼
鈍を行うことで現行法より短時間で、微細な再結晶組織
が得られる。再結晶完了後は、炭化物の析出を抑制する
ために600℃まで20℃/s以上の冷却速度で急冷して
600℃以下で巻取り、以後常法の冷延・焼鈍によって
表面品質と加工性に優れた薄板を製造することができ
る。
熱延後、900〜600℃の温度域を冷却する過程や熱
延板を焼鈍するために昇温する過程で、僅かではあるが
炭化物や燐化物が析出し、熱延板焼鈍時にこれらの析出
物が固溶するまでの時間だけ再結晶が遅延する。従っ
て、熱延直後に板温を800℃以下に下げずに熱延板焼
鈍を行うことで現行法より短時間で、微細な再結晶組織
が得られる。再結晶完了後は、炭化物の析出を抑制する
ために600℃まで20℃/s以上の冷却速度で急冷して
600℃以下で巻取り、以後常法の冷延・焼鈍によって
表面品質と加工性に優れた薄板を製造することができ
る。
【0018】次に、本発明の構成要件の限定理由を説明
する。鋼種としては、18%Cr−8%Ni鋼に代表さ
れるCr−Ni系ステンレス鋼を対象とした。一般的な
炭素鋼は凝固後2回の相変態が起こるために、Cr−N
i系ステンレス鋼に比べると組織の粗大化に伴う肌荒れ
(ローピング)問題が起こり難いからである。
する。鋼種としては、18%Cr−8%Ni鋼に代表さ
れるCr−Ni系ステンレス鋼を対象とした。一般的な
炭素鋼は凝固後2回の相変態が起こるために、Cr−N
i系ステンレス鋼に比べると組織の粗大化に伴う肌荒れ
(ローピング)問題が起こり難いからである。
【0019】一方、鋳片の厚さが10mmを超えると、凝
固時の結晶粒が粗大になり、熱延再結晶によって結晶粒
を微細化するためには、高圧下率が必要になる。そのた
めには、熱延機を複数配置するか、単独の巨大な熱延機
とすることが必要になり、経済的な効果がなくなる。従
って、鋳片板厚は10mm以下とした。
固時の結晶粒が粗大になり、熱延再結晶によって結晶粒
を微細化するためには、高圧下率が必要になる。そのた
めには、熱延機を複数配置するか、単独の巨大な熱延機
とすることが必要になり、経済的な効果がなくなる。従
って、鋳片板厚は10mm以下とした。
【0020】鋳造後の中間巻取り温度は次の実験によっ
て求めた。即ち、実験室においてSUS304鋼を板厚
3mmの薄鋳片に鋳造し、500〜1250℃まで巻取り
温度を変えて中間巻取りした後、巻戻して1100℃で
20%の熱間圧延を行い、500℃で巻取った後、熱延
板焼鈍を行い、以後常法の冷延・焼鈍によって板厚0.
6mmの薄板製品とし、伸びを調べた。その結果を図1に
示す。巻取り温度が900℃より低いと中間巻取り中に
析出物が析出せずに、熱延後の冷却過程や熱延板焼鈍過
程で微細析出して冷延焼鈍板の再結晶粒の成長を抑制
し、製品が細粒組織となり、伸びが低くなった。又、中
間巻取り温度が1200℃より高くなると、析出物の固
溶温度となり、巻取り時に析出物が析出せず熱延以降の
工程で微細析出して冷延板焼鈍時の再結晶粒の成長を抑
制し、製品が細粒組織となって伸びが低くなる。従っ
て、鋳造直後に1200〜900℃の温度域で中間巻取
りすることが必要である。望ましい中間巻取り温度は9
30〜1100℃である。
て求めた。即ち、実験室においてSUS304鋼を板厚
3mmの薄鋳片に鋳造し、500〜1250℃まで巻取り
温度を変えて中間巻取りした後、巻戻して1100℃で
20%の熱間圧延を行い、500℃で巻取った後、熱延
板焼鈍を行い、以後常法の冷延・焼鈍によって板厚0.
6mmの薄板製品とし、伸びを調べた。その結果を図1に
示す。巻取り温度が900℃より低いと中間巻取り中に
析出物が析出せずに、熱延後の冷却過程や熱延板焼鈍過
程で微細析出して冷延焼鈍板の再結晶粒の成長を抑制
し、製品が細粒組織となり、伸びが低くなった。又、中
間巻取り温度が1200℃より高くなると、析出物の固
溶温度となり、巻取り時に析出物が析出せず熱延以降の
工程で微細析出して冷延板焼鈍時の再結晶粒の成長を抑
制し、製品が細粒組織となって伸びが低くなる。従っ
て、鋳造直後に1200〜900℃の温度域で中間巻取
りすることが必要である。望ましい中間巻取り温度は9
30〜1100℃である。
【0021】中間巻取り温度(900〜1200℃)で
の保持時間は析出物(MnS)を十分析出・成長させる
ために1分以上とした。1分以下ではMnSの固溶・析
出が平衡状態に達していないため、固溶MnSが熱延以
降の工程で微細析出して熱延板の再結晶を抑制し、さら
に冷延焼鈍時の粒成長を抑制し、冷延焼鈍板の表面品質
(肌荒れ)や材質(伸び)を劣化させることになる。中
間巻取り温度での望ましい保持時間は5分以上である。
の保持時間は析出物(MnS)を十分析出・成長させる
ために1分以上とした。1分以下ではMnSの固溶・析
出が平衡状態に達していないため、固溶MnSが熱延以
降の工程で微細析出して熱延板の再結晶を抑制し、さら
に冷延焼鈍時の粒成長を抑制し、冷延焼鈍板の表面品質
(肌荒れ)や材質(伸び)を劣化させることになる。中
間巻取り温度での望ましい保持時間は5分以上である。
【0022】熱間圧延温度と圧延率については次の実験
によって求めた。即ち、実験室においてSUS304鋼
を板厚4mmの薄鋳片に鋳造し、1000℃で中間巻取り
した後、巻戻して1250〜900℃の温度域で5〜5
0%の熱間圧延を行って熱延鋼帯とした。該熱延板に1
100℃で20秒の熱延板焼鈍を施し、以後常法の冷延
・焼鈍によって板厚0.6mmの薄板製品とし、表面の肌
荒れ(ローピング)を評価した。その結果を図2に示
す。熱延温度が1200℃より高いと再結晶粒が粗大に
なるため、肌荒れ(ローピング)が改善されない。又、
900℃未満では材料の変形抵抗が大きくなり、熱延機
の設備費が高くなるため、900℃以上とした。熱延に
際して鋳片温度が900℃より降下している場合は、必
要に応じて加熱を行い、900℃以上に昇温させて熱延
を行う。
によって求めた。即ち、実験室においてSUS304鋼
を板厚4mmの薄鋳片に鋳造し、1000℃で中間巻取り
した後、巻戻して1250〜900℃の温度域で5〜5
0%の熱間圧延を行って熱延鋼帯とした。該熱延板に1
100℃で20秒の熱延板焼鈍を施し、以後常法の冷延
・焼鈍によって板厚0.6mmの薄板製品とし、表面の肌
荒れ(ローピング)を評価した。その結果を図2に示
す。熱延温度が1200℃より高いと再結晶粒が粗大に
なるため、肌荒れ(ローピング)が改善されない。又、
900℃未満では材料の変形抵抗が大きくなり、熱延機
の設備費が高くなるため、900℃以上とした。熱延に
際して鋳片温度が900℃より降下している場合は、必
要に応じて加熱を行い、900℃以上に昇温させて熱延
を行う。
【0023】又圧下率が10%未満では熱延板焼鈍後も
再結晶せず、製品に肌荒れ(ローピング)が発生した。
又、薄帯状鋳片に50%超の熱間圧延を行うためには熱
延機の設備費の問題があり、新プロセスの特徴が生かせ
なくなるため、圧下率は50%以下とした。以上の結果
から熱延は900〜1200℃の温度域で10〜50%
の圧下率で行う。望ましい熱延温度は950〜1150
℃、圧下率は10〜35%である。熱延後の焼鈍は熱延
組織を再結晶組織にするためのものであり、焼鈍条件は
通常の焼鈍条件で良く、たとえば1050〜1150℃
が好ましい。
再結晶せず、製品に肌荒れ(ローピング)が発生した。
又、薄帯状鋳片に50%超の熱間圧延を行うためには熱
延機の設備費の問題があり、新プロセスの特徴が生かせ
なくなるため、圧下率は50%以下とした。以上の結果
から熱延は900〜1200℃の温度域で10〜50%
の圧下率で行う。望ましい熱延温度は950〜1150
℃、圧下率は10〜35%である。熱延後の焼鈍は熱延
組織を再結晶組織にするためのものであり、焼鈍条件は
通常の焼鈍条件で良く、たとえば1050〜1150℃
が好ましい。
【0024】請求項2で規定した熱延後の鋳片の温度履
歴としては次の実験により求めた。即ち、SUS304
鋼を板厚4mmに鋳造し、1000℃で中間巻取りした
後、熱間で巻戻して1100℃で20%の熱間圧延を行
った後、種々の温度まで一旦冷却し、再加熱して110
0℃で2〜60秒の熱処理を行い、熱延焼鈍板とした。
光学顕微鏡によって熱延焼鈍板の再結晶率を調査した。
その結果を図3に示す。熱延後、板温を800℃以下に
下げた場合、完全に再結晶させるためには20秒以上の
時間を要するが、熱延後、板温を800℃以上に保った
場合は、約5秒で再結晶が完了した。従って、熱延後は
800℃以上に板温を保って、引き続き熱処理を行うこ
ととした。熱延後、熱処理炉挿入までの最低温度の望ま
しい条件は850℃以上である。
歴としては次の実験により求めた。即ち、SUS304
鋼を板厚4mmに鋳造し、1000℃で中間巻取りした
後、熱間で巻戻して1100℃で20%の熱間圧延を行
った後、種々の温度まで一旦冷却し、再加熱して110
0℃で2〜60秒の熱処理を行い、熱延焼鈍板とした。
光学顕微鏡によって熱延焼鈍板の再結晶率を調査した。
その結果を図3に示す。熱延後、板温を800℃以下に
下げた場合、完全に再結晶させるためには20秒以上の
時間を要するが、熱延後、板温を800℃以上に保った
場合は、約5秒で再結晶が完了した。従って、熱延後は
800℃以上に板温を保って、引き続き熱処理を行うこ
ととした。熱延後、熱処理炉挿入までの最低温度の望ま
しい条件は850℃以上である。
【0025】熱延に引き続いて行う熱処理条件について
は次の実験により求めた。即ち、SUS304鋼を板厚
4mmに鋳造し、1000℃で中間巻取りした後、巻戻し
て1100℃で20%の熱間圧延を行った後、800℃
以下に板温を下げずに引き続いて1250〜900℃ま
での温度域において2〜50秒保持する熱処理を行っ
た。該鋳片をデスケーリング後50%の圧下率で冷間圧
延を行い、冷延板表面の肌荒れ(ローピング)を評価し
た。その結果を図4に示す。熱延後の熱処理温度が12
00℃を超えると再結晶粒が粗大化し、900℃未満で
は再結晶が進行しないため製品に肌荒れ(ローピング)
が発生した。又熱処理時間が5秒より短いと完全な再結
晶組織が得られないため製品に肌荒れ(ローピング)が
発生した。
は次の実験により求めた。即ち、SUS304鋼を板厚
4mmに鋳造し、1000℃で中間巻取りした後、巻戻し
て1100℃で20%の熱間圧延を行った後、800℃
以下に板温を下げずに引き続いて1250〜900℃ま
での温度域において2〜50秒保持する熱処理を行っ
た。該鋳片をデスケーリング後50%の圧下率で冷間圧
延を行い、冷延板表面の肌荒れ(ローピング)を評価し
た。その結果を図4に示す。熱延後の熱処理温度が12
00℃を超えると再結晶粒が粗大化し、900℃未満で
は再結晶が進行しないため製品に肌荒れ(ローピング)
が発生した。又熱処理時間が5秒より短いと完全な再結
晶組織が得られないため製品に肌荒れ(ローピング)が
発生した。
【0026】以上の結果から熱延後の熱処理は900〜
1200℃の温度域で5秒以上保持することとした。望
ましくは1000〜1150℃で10秒以上の保持が良
い。又、熱延後に熱延ラインに直結した熱処理炉で熱処
理するプロセスでは、現行プロセスで行っているような
熱延板焼鈍工程を省略するため、熱延・熱処理板におい
てクロム炭化物を溶体化しておく必要がある。そこで、
クロム炭化物が析出する温度域即ち900〜600℃の
温度域20℃/s以上の冷却速度で急冷し、600℃以下
で巻取ることが必要である。操業上のばらつきを考慮す
ると、冷却速度は100℃/s以上、巻取り温度は550
℃以下にすることが望ましい。
1200℃の温度域で5秒以上保持することとした。望
ましくは1000〜1150℃で10秒以上の保持が良
い。又、熱延後に熱延ラインに直結した熱処理炉で熱処
理するプロセスでは、現行プロセスで行っているような
熱延板焼鈍工程を省略するため、熱延・熱処理板におい
てクロム炭化物を溶体化しておく必要がある。そこで、
クロム炭化物が析出する温度域即ち900〜600℃の
温度域20℃/s以上の冷却速度で急冷し、600℃以下
で巻取ることが必要である。操業上のばらつきを考慮す
ると、冷却速度は100℃/s以上、巻取り温度は550
℃以下にすることが望ましい。
【0027】この条件を満たすと、粒界に炭化物が析出
しないので、熱延板を酸洗したときに粒界腐食が生じ
ず、製品の表面光沢を損なうことがない。尚熱延に際
し、鋳片温度が低下している場合は、必要に応じて90
0℃以上に加熱し、熱延を行う。
しないので、熱延板を酸洗したときに粒界腐食が生じ
ず、製品の表面光沢を損なうことがない。尚熱延に際
し、鋳片温度が低下している場合は、必要に応じて90
0℃以上に加熱し、熱延を行う。
【0028】又、請求項1における熱延後の熱延板焼鈍
は現行プロセスで行っている熱延板焼鈍条件でも良い
が、請求項2にあるように、熱延後に板温度を制御して
直ちに熱処理を行う方が再結晶に要する時間が短くな
り、効率的である。
は現行プロセスで行っている熱延板焼鈍条件でも良い
が、請求項2にあるように、熱延後に板温度を制御して
直ちに熱処理を行う方が再結晶に要する時間が短くな
り、効率的である。
【0029】
〔実施例1〕表1に示す、18%Cr−8%Ni鋼を基
本とする成分のCr−Ni系ステンレス鋼を溶製し、内
部水冷方式の垂直型双ロール連続鋳造機によって板厚2
〜10mmの間の種々の厚さの鋳片を鋳造した。900〜
1200℃の温度域で中間巻取りし、中間巻取りの状態
で1〜30分保持した。引き続き巻戻して900〜12
00℃の温度域で熱間圧延を行った。熱延圧下率は10
〜50%とした。熱延板を再加熱して1100℃で20
秒の熱延板焼鈍を行い、熱延焼鈍板とした。然る後、材
料を酸洗、デスケーリングして冷間圧延した後、通常の
焼鈍又は光輝焼鈍を施した。比較材は巻取り条件、熱延
条件が本特許の範囲外のものである。
本とする成分のCr−Ni系ステンレス鋼を溶製し、内
部水冷方式の垂直型双ロール連続鋳造機によって板厚2
〜10mmの間の種々の厚さの鋳片を鋳造した。900〜
1200℃の温度域で中間巻取りし、中間巻取りの状態
で1〜30分保持した。引き続き巻戻して900〜12
00℃の温度域で熱間圧延を行った。熱延圧下率は10
〜50%とした。熱延板を再加熱して1100℃で20
秒の熱延板焼鈍を行い、熱延焼鈍板とした。然る後、材
料を酸洗、デスケーリングして冷間圧延した後、通常の
焼鈍又は光輝焼鈍を施した。比較材は巻取り条件、熱延
条件が本特許の範囲外のものである。
【0030】こうして得られた製品の表面性状、材質を
調査した。表1に示すように、本発明例に示したものは
鋳片の高温巻取りによってMnSが無害化されており、
さらに熱延条件と熱延後の熱処理条件を最適化している
ため粒径が40μm以下の100%再結晶組織が得られ
ており、何れも良好な表面品質、材質を示した。一方、
比較法では、鋳造直後の巻取り条件、熱延条件が不適切
であり表面品質又は材質が本発明の実施例より劣るもの
であった。
調査した。表1に示すように、本発明例に示したものは
鋳片の高温巻取りによってMnSが無害化されており、
さらに熱延条件と熱延後の熱処理条件を最適化している
ため粒径が40μm以下の100%再結晶組織が得られ
ており、何れも良好な表面品質、材質を示した。一方、
比較法では、鋳造直後の巻取り条件、熱延条件が不適切
であり表面品質又は材質が本発明の実施例より劣るもの
であった。
【0031】
【表1】
【0032】〔実施例2〕表2に示す、18%Cr−8
%Ni鋼を基本とする成分のCr−Ni系ステンレス鋼
を溶製し、内部水冷方式の垂直型双ロールを連続鋳造機
によって板厚2〜10mmの間の種々の厚さの鋳片を鋳造
した。900〜1200℃の温度域で中間巻取りし、中
間巻取りの状態で1〜30分保持した。引き続き巻戻し
て900〜1200℃の温度域で熱間圧延を行った。熱
延圧下率は10〜50%とした。引き続き板温を800
℃未満に下げずに熱延機に直結した熱処理炉で1200
〜900℃の温度域で5秒以上の熱処理を行い、20℃
/s以上の冷却速度で900〜600℃の温度域を冷却し
て600℃以下で巻取った。然る後、材料を酸洗、デス
ケーリングして冷間圧延した後、通常の焼鈍又は光輝焼
鈍を施した。比較材は鋳造後の巻取り条件、熱延条件、
熱延と熱延板焼鈍の間の熱延鋼板の最低温度、引き続き
行う熱処理条件が本特許の範囲外のものである。
%Ni鋼を基本とする成分のCr−Ni系ステンレス鋼
を溶製し、内部水冷方式の垂直型双ロールを連続鋳造機
によって板厚2〜10mmの間の種々の厚さの鋳片を鋳造
した。900〜1200℃の温度域で中間巻取りし、中
間巻取りの状態で1〜30分保持した。引き続き巻戻し
て900〜1200℃の温度域で熱間圧延を行った。熱
延圧下率は10〜50%とした。引き続き板温を800
℃未満に下げずに熱延機に直結した熱処理炉で1200
〜900℃の温度域で5秒以上の熱処理を行い、20℃
/s以上の冷却速度で900〜600℃の温度域を冷却し
て600℃以下で巻取った。然る後、材料を酸洗、デス
ケーリングして冷間圧延した後、通常の焼鈍又は光輝焼
鈍を施した。比較材は鋳造後の巻取り条件、熱延条件、
熱延と熱延板焼鈍の間の熱延鋼板の最低温度、引き続き
行う熱処理条件が本特許の範囲外のものである。
【0033】こうして得られた製品の表面性状、材質を
調査した。表2に示すように、本実施例に示したものは
再結晶の進行が速く短時間の熱処理で粒径が40μm以
下の100%再結晶組織となっており、さらに熱延−熱
処理後の冷却速度制御と巻取り温度制御によってクロム
炭化物も溶体化されており何れも良好な表面品質、材質
を示した。一方、比較法では、鋳造直後の巻取り条件、
熱延条件、熱延温度、熱延後熱処理炉挿入までの間にお
ける最低板温度、熱延後の熱処理条件、冷却条件、巻取
り条件が不適切であり、ローピングが大きく、光沢が悪
く、伸びも低かった。
調査した。表2に示すように、本実施例に示したものは
再結晶の進行が速く短時間の熱処理で粒径が40μm以
下の100%再結晶組織となっており、さらに熱延−熱
処理後の冷却速度制御と巻取り温度制御によってクロム
炭化物も溶体化されており何れも良好な表面品質、材質
を示した。一方、比較法では、鋳造直後の巻取り条件、
熱延条件、熱延温度、熱延後熱処理炉挿入までの間にお
ける最低板温度、熱延後の熱処理条件、冷却条件、巻取
り条件が不適切であり、ローピングが大きく、光沢が悪
く、伸びも低かった。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【発明の効果】本発明は、Cr−Ni系ステンレス鋼の
新プロセスにおいて、鋳造後の巻取り条件、熱延条件と
引き続き行う熱処理条件を制御することによって、良好
な表面品質と材質を有する冷延鋼板の製造を可能にする
ものである。従って、その工業的効果は大である。
新プロセスにおいて、鋳造後の巻取り条件、熱延条件と
引き続き行う熱処理条件を制御することによって、良好
な表面品質と材質を有する冷延鋼板の製造を可能にする
ものである。従って、その工業的効果は大である。
【図1】薄帯状鋳片に行う中間巻取りの温度と製品の伸
びの関係を示す図である。
びの関係を示す図である。
【図2】薄帯状鋳片に行う熱間圧延の温度及び圧下率と
冷延焼鈍板の肌荒れ(ローピング)高さの関係を示す図
である。
冷延焼鈍板の肌荒れ(ローピング)高さの関係を示す図
である。
【図3】薄帯状鋳片に行う熱延と熱延後の熱処理の間に
おける熱延鋼板の最低温度が熱処理において完全な再結
晶組織を得るために要する時間に及ぼす影響を示す図で
ある。
おける熱延鋼板の最低温度が熱処理において完全な再結
晶組織を得るために要する時間に及ぼす影響を示す図で
ある。
【図4】薄帯状鋳片に熱延後行う熱処理の温度及び時間
と冷延焼鈍板の肌荒れ(ローピング)高さの関係を示す
図である。
と冷延焼鈍板の肌荒れ(ローピング)高さの関係を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C21D 9/46 Q
Claims (2)
- 【請求項1】 Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面
が鋳片と同期して移動する連続鋳造機によって板厚10
mm以下の薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜12
00℃の温度域で中間巻取りをし、該中間巻取りの状態
で薄帯状鋳片を1分以上保持し、次いで前記薄帯状鋳片
を巻戻して圧延機に挿入し、該圧延機にて900〜12
00℃の温度域で圧下率10〜50%で熱間圧延をし、
帯状に巻取り、続いて熱延板焼鈍し、デスケーリング
し、冷延し、さらに焼鈍酸洗又は光輝焼鈍することを特
徴とする表面品質と加工性に優れたCr−Ni系ステン
レス鋼薄板の製造方法。 - 【請求項2】 Cr−Ni系ステンレス溶鋼を鋳型壁面
が鋳片と同期して移動する連続鋳造機によって板厚10
mm以下の薄帯状鋳片に連続鋳造し、続いて900〜12
00℃の温度域で中間巻取りをし、該中間巻取りの状態
で薄帯状鋳片を1分以上保持し、次いで前記薄帯状鋳片
を巻戻して圧延機に挿入し、該圧延機にて900〜12
00℃の温度域で圧下率10〜50%で熱間圧延をし、
次いで800℃以上の温度を保持しつつ熱処理ゾーンに
挿入して1000〜1200℃の温度域で5秒以上保持
する熱処理を行った後、900〜600℃の温度域を2
0℃/s以上の冷却速度で冷却し、600℃以下の温度で
巻取り、デスケーリングし、冷延し、さらに焼鈍酸洗又
は光輝焼鈍することを特徴とする表面品質と加工性に優
れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5787894A JPH07268460A (ja) | 1994-03-28 | 1994-03-28 | 表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5787894A JPH07268460A (ja) | 1994-03-28 | 1994-03-28 | 表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07268460A true JPH07268460A (ja) | 1995-10-17 |
Family
ID=13068249
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5787894A Withdrawn JPH07268460A (ja) | 1994-03-28 | 1994-03-28 | 表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07268460A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1997026378A1 (fr) * | 1996-01-17 | 1997-07-24 | Nippon Steel Corporation | TOLE D'ACIER INOXYDABLE Cr-Ni LAMINEE A CHAUD DE FAIBLE ANISOTROPIE ET SON PROCEDE DE PRODUCTION |
CN100462194C (zh) * | 2005-07-20 | 2009-02-18 | 林榆滨 | 一种镍带制造方法 |
CN102581002A (zh) * | 2012-02-23 | 2012-07-18 | 西部钛业有限责任公司 | 一种纯镍薄板的制备方法 |
-
1994
- 1994-03-28 JP JP5787894A patent/JPH07268460A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1997026378A1 (fr) * | 1996-01-17 | 1997-07-24 | Nippon Steel Corporation | TOLE D'ACIER INOXYDABLE Cr-Ni LAMINEE A CHAUD DE FAIBLE ANISOTROPIE ET SON PROCEDE DE PRODUCTION |
US5853501A (en) * | 1996-01-17 | 1998-12-29 | Nippon Steel Corporation | Hot rolled Cr-Ni stainless steel plate of low anisotropy and process for producing the same |
US6090229A (en) * | 1996-01-17 | 2000-07-18 | Nippon Steel Corporation | Low anisotropic Cr-Ni-based hot rolled stainless steel sheet and process for its production |
CN100462194C (zh) * | 2005-07-20 | 2009-02-18 | 林榆滨 | 一种镍带制造方法 |
CN102581002A (zh) * | 2012-02-23 | 2012-07-18 | 西部钛业有限责任公司 | 一种纯镍薄板的制备方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20010605 |