JPH0819463B2 - ステンレス厚鋼板の製造方法 - Google Patents

ステンレス厚鋼板の製造方法

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JPH0819463B2
JPH0819463B2 JP10332493A JP10332493A JPH0819463B2 JP H0819463 B2 JPH0819463 B2 JP H0819463B2 JP 10332493 A JP10332493 A JP 10332493A JP 10332493 A JP10332493 A JP 10332493A JP H0819463 B2 JPH0819463 B2 JP H0819463B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はオーステナイト系ステン
レス鋼および2相系ステンレス鋼の厚鋼板の製造方法に
関し、特に製造工程を簡略化しうるステンレス厚鋼板の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、18Cr −8Ni ステンレス鋼に
代表されるCr −Ni 系、及びCr −Ni −Mo 系を主
とするオーステナイトステンレス鋼や2相系ステンレス
鋼は熱間圧延後、常温から1000℃以上の温度に再加
熱して保定をする固溶化処理を行なって、熱間加工組織
を再結晶させ、粒度調整を行なうと共に、炭化物を再固
溶させて粒界腐食抵抗を回復する方法で製造されて来
た。この方法による固溶化熱処理の目的は、再結晶・
粒度調整、炭化物の再固溶、更に凝固偏析の残存部
の拡散・消滅をはかり、板の全長、全幅、板厚全体の材
質や耐食性の均一化をねらいとするものである。ところ
がこのような目的を達成するためには1000℃以上に再加
熱し板全体を均一に加熱した後、さらに保定時間を長く
とる必要があり、現状で在炉時間としては合計で20分
から30分以上も取ることになり、エネルギーの点でも
又生産性の点からも大きな問題となっている。このため
この工程の簡省略化が強く望まれて来た。
【0003】すでに特公昭57−38654号公報にお
いて、前記と同様な目的のホットコイル製造法としてホ
ットストリップ圧延において熱間圧延後、3〜10秒間
空冷されたあと急冷し、400〜600℃で巻取る方法
が開示され、又特公昭59−46287号公報におい
て、850〜1150℃で累計圧下率が50%以上でか
つ仕上温度を850℃以上1150℃以下で熱間圧延を行な
った後、引続いて850℃〜550℃の温度域をV=C
2 ×1000(ただしV:平均冷却速度(℃/秒)、
C:対象鋼の炭素含有量(%))で示す平均冷却速度以
上で急冷する方法で固溶化処理を省略する方法が開示さ
れている。
【0004】更に特開昭52−131959号公報にお
いて、ホットストリップの圧延方法として仕上圧延を出
た後1000〜1150℃に再加熱後500℃まで冷却
し、巻取る方法も開示されている。しかし以上の方法は
いずれもホットコイルを対象としているため仕上圧延は
一方向圧延でかつきわめて高速でパス間時間も短かい圧
延であり、また圧延後は巻取りを前提としたものであ
る。こうしてリバース圧延で種々のサイズを圧延する厚
板圧延に関する固溶化処理の簡省略化においては従来十
分な検討がなされていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は特にステ
ンレス厚鋼板において、これらの従来方法を検討した結
果、厚鋼板の特徴から、板厚、板幅、板長さが多種類で
あり、これらのサイズによって熱間圧延の方法が一方向
圧延、クロス圧延等々と異なり、またパス回数や圧下率
も様々である点でホットストリップの圧延とは異なって
いる。したがって板毎の温度や圧延時間も様様であり、
板の部位によっても温度は様々である。このような厚板
の固溶化熱処理を簡省略化して厚板の全長、全幅および
板厚全面において均一な材質を得るためには、従来技術
に加うるに、更に成分や熱間圧延法および固溶化処理法
の簡略化についての改善が必要となることが判明した。
すなわちス、テンレス厚鋼板の最終熱処理である固溶化
熱処理を簡略するには特に板厚全体にわたって、再結晶
や粒度調整を均一化して混粒発生を防止し、炭化物の再
固溶化を均一化すると共に凝固偏析に起因するδフェラ
イトの消滅やNi のミクロ偏析を均一化する必要がある
ことが判明した。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような本発明の課題
を解決するためには、出発鋼成分および加熱から熱間圧
延にわたる各製造工程を規制することが必要である。出
発鋼成分としては、凝固初期にδフェライト相を経由し
て、ミクロ偏析の軽減、特にNiの均一化を進めるため
にδcal(%)=3(Cr+Mo+1.5Si)−
2.8(Ni+0.5Mn+0.5Cu)−84(C+
N)−19.8を−3%以上とすることが望ましい。図
1は18Cr −8Ni 系の製品厚板のNi ミクロ偏析に
対するδcal(%)の影響を示したもので、δcal
(%)が−3%以上で偏析が軽減されている。
【0007】すなわち、固溶化熱処理の省略の目的でS
US304で大幅に成分を変更した供試材を1250℃
に20分加熱後、50mm→8mmまで熱間圧延し、圧
延終了温度を950℃としてすぐ水冷して、再結晶を十
分させた材料について、鋼板におけるNiのミクロ偏析
をEPMAにて調査した結果である。Niのミクロ偏析
が大きいと、腐食パターンが発生しやすく又電解研磨後
の表面を著しく害する。こうしてミクロ偏析に対しては
成分の影響が大きく、δcal(%)で決まり、δca
l(%)が−3%未満で凝固初期にオーステナイトが安
定であるとミクロ偏析が不良であり、δcal(%)が
−3%以上では凝固初期にδフェライトを経由して均一
化され固溶化処理省略後もミクロ偏析は少なくなってい
る。こうして凝固の初期にδフェライト相を経由するこ
とがミクロ偏析の軽減に大きな効果のあることが判明し
た。
【0008】加熱炉においてはこれらのδフェライトを
消滅させることが必要で1100〜1300℃に10分
以上加熱する。1100℃未満ではδの消滅が長時間か
けても進まず1250℃で最も早く進行し10分の加熱
で消滅が進行し1300℃を超えると再びδフェライト
が増加する。なお、本発明におけるオーステナイトステ
ンレス鋼の主要成分は通常、Cr:18.0〜22.0
%、Ni:6.0〜15.0%、Mo:0〜4.0%、
Si:1.0%以下、Cu:0〜2.0%、C:0.0
8%以下、N:0.4%以下であり、また2相ステンレ
ス鋼の主要成分は、Cr:19〜27%、Ni:4〜7
%、Mo:1.0〜3.5%、Cu:0〜2%、Si:
1.0%以下、C:0.08%以下、N:0.4%以下
である。
【0009】熱間圧延はホットストリップのようにタン
デム圧延される場合とは異なり、厚板圧延のようなリバ
ース圧延においてはパス毎の圧下率や、パス間の時間を
適当に制御することが可能である。再結晶化のためには
なるべく高温で大圧下圧延が有効であるが、板厚全面に
わたって再結晶させ、混粒の発生を防止し、粒度調整を
はかりつつ、かつ凝個偏析の残部であるδフェライトや
Ni偏析を均一化するには、熱間圧延の温度、圧下率と
パス間時間を制御し、鋼板表面の復熱をはかりつつ圧延
を進めることが必要である。これらの詳細な検討結果を
次に述べる。
【0010】図2はSUS304(Cr:18.2%、
Ni:8.6%、C:0.04%、N:0.04%)C
C鋳片(厚み130mm)を1250℃に20分加熱
し、50mm厚まで熱間圧延し、一旦室温まで冷却し、
再度1200℃に加熱した後冷却して、1050℃、1
000℃、950℃より1パスで50%の圧下を与えた
後、ある時間空冷時間を取った後に水冷を開始した場合
の再結晶組織を示している。すでに特公昭57−386
54号公報にも述べられているように、再結晶化は空冷
時間を長く取ることによって進行し、1050℃では
3.2秒で、1000℃では18秒でほぼ均一化するこ
とがわかる。こうして空冷時間の取り方が均一再結晶化
に重要であることが判明した。図3はSUS304CC
鋳片(厚み130mm)を1250℃に30分間加熱
し、22mmまでリバース圧延し、30秒空冷し、均一
に再結晶化させた後、1050℃より5パスのタンデム
圧延でパス間時間をほとんど取らずに累積86%の圧下
を加えて988℃で仕上圧延をしすぐ急冷した結果で、
板厚表面部と板厚中心部の再結晶組織を示している。こ
のようにパス間時間を取らないホットコイル圧延におい
ては表面部と板厚中心部での再結晶やδフェライトの挙
動に差を生じ不均一になっている。
【0011】これに対して図4はSUS304CC鋳片
を1250℃に30分間加熱した後、リバースの圧延を
し、1050℃から各パスにパス間時間を7〜15秒取
りながら7パスで累積86%の圧延をおこない、922
℃で仕上げ後すぐ水冷した組織で、板厚の表面部、1/4
厚部、中心部で均一再結晶粒が得られた。このようにし
て板厚断面の均一再結晶化には温度・圧下率・パス間時
間の組合せが重要であることが判明した。すなわち、C
C鋳片の熱間圧延と再結晶においては圧延の初期から大
圧下あるいは累積で大圧下し、パス間の時間あるいは累
積のパス間時間を取って圧延を進めることが必要であ
る。パス間時間が不足すると、初期に再結晶が不均一化
し、混粒の原因になる。又パス間時間を取ることで、鋼
板表面が復熱して、鋼板断面の均一再結晶組織を得るこ
とが出来、更にδフェライトの消滅と偏析の拡散消滅が
進行する。
【0012】リバース圧延である厚板圧延では、各パス
の圧下率とパス間時間を選ぶことが出来る点が有利で均
一再結晶組織と偏析の少ない圧延組織を得るためには、
熱間圧延において、全圧下パス数の少なくとも半数以上
の圧下のパス間時間を各々3秒〜40秒取るようにして
熱間圧延することが上記の目的達成に必要な要件である
ことが判明した。
【0013】また鋼板表面復熱のためにもパス間時間が
必要である。3秒未満では効果が小さく、長時間程望ま
しいが、温度降下の逆作用が生じるので上限は40秒ま
でとした。圧下率については望ましくは全圧下パス数の
少なくとも半数以上を圧下率15%以上で圧延すること
が有効である。
【0014】以上の通りの熱間圧延を行なった場合の最
終の熱間圧延は再結晶や粒度調整のためには900℃以
上が望ましいが、厚板圧延において板厚の薄いものでは
熱間圧延が800℃程度になる場合も多い。しかしこれ
らの温度低下はステンレス鋼厚板のごく表面層のみで板
厚の中央部では温度が高いことが判明した。したがって
圧延途中やあるいは圧延終了後にライン上に設置した表
面復熱を主目的とした加熱装置により必要な温度に表面
を復熱させることができる。特開昭52−131959
号公報のホットコイルの例では1000〜1150℃に
再加熱することが必要とされているが、本発明者らの研
究によると圧延終了後に900℃以上が確保されれば十
分であり、800℃以上でも後述する軽熱処理化に有効
である。
【0015】熱間圧延後は、なるべく早く冷却して70
0〜800℃にある炭化物の析出域を急冷して、炭化物
の析出、成長を防ぐことが必要である。熱間圧延の終了
が800℃以上となって熱間圧延後800℃以下で水冷
を開始した場合、水冷開始温度が低温度(例えば700
℃)になると炭化物の析出がみられるが500℃までを
急冷しておけば成長を抑制することができる。こうして
通常の厚板製造法のように、熱間圧延後室温まで空冷し
た場合には空冷中に炭化物が析出しかつ成長して粒界に
連続して密に析出するのに対比すると、本発明法のよう
に、圧延後出来るだけ高温から水冷することで、成長を
抑制することができる。こうして成長を抑制された炭化
物は次工程の固溶化熱処理において容易に溶体化でき、
熱処理を簡略化し得る。
【0016】図6に示す通り、少なくとも鋼板表面温度
が650℃以上で、水冷をした場合には、炭化物の成長
が抑制されているので、固溶化熱処理は鋼板を950℃
以上に昇温することで達成される。従って、保定時間は
組織の均一化に必要な時間であればよく、高々5分以下
で十分である。熱間圧延後の急冷は500℃以下までで
よく、かつ冷却速度は800℃〜300℃間の平均冷却
速度で3℃/sec 以上で十分である。
【0017】もちろんこれらは前述した通り鋼板の偏析
対策である成分コントロールや熱間圧延法を採用したも
のについて成立し、この場合でも熱間圧延・水冷後に、
簡易熱処理を付加することは更にこれらのミクロ偏析軽
減に有効である。この際付加すべき熱処理時間は短時間
でよく、高々5分で十分である。5分以上は効果が飽和
する。
【0018】以上述べた簡易固溶化処理法によって製造
されたステンレス厚鋼板には次のような付加的な利点が
認められる。すなわち従来のような1100℃以上で2
0分以上在炉させる方法に比較して、本発明に従って固
溶化熱処理を5分以下の短時間とすることで、この間の
スケール成長が抑制される。このため鋼板表面の脱Cr
層が薄くなり、製品の耐食性に有利に作用する。又スケ
ール厚さが薄くなり、したがってデスケール時間が短縮
されるという利点がある。
【0019】本発明は、18Cr−8Niを代表例とす
るオーステナイト系ステンレス鋼は勿論、20〜25C
r −4〜7Ni−1.0〜4Mo 系を主成分とする2相
ステンレス鋼についても適用されうるものである。以
下、本発明を実施例にもとづいて説明する。
【0020】
【実施例】実施例δcal(%)を5.8%とした表1
に示すSUS304のCC鋳片(140t)を1200
℃に20分以上加熱し、抽出後、1070℃からリバー
ス圧延を開始し、10パスで40mm厚板、16パスで
10mm厚板を製造した。この間それぞれ7パス及び8
パスを短かいもので8秒、長いもので32秒のパス間時
間を取って圧延を完了した。40mm厚板では最終パス
後、また10mm厚板では14パス、16パス(最終パ
ス)後にライン上の加熱装置で復熱させて、それぞれ9
70℃と870℃で圧延を終了した。水冷開始は40m
m厚板で890℃、10mm厚板は730℃であった。
【0021】その後鋼板を500℃/min の昇温スピー
ドで熱処理炉で昇温し、40mm厚板は1040℃到達
後、1分後に水冷した。また10mm厚板は1100℃
到達後、1分後に水冷した。これら厚板の試験結果は板
厚断面で再結晶粒度も均一であり炭化物も認められず機
械的性質も表2に示す如く良好で固溶化熱処理の保定時
間を短縮化することができた。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明はステンレス厚鋼板の製造法に関
するもので、特に熱間圧延法との関連で、固溶化処理の
簡略化をねらいにしたものである。本発明により従来1
100℃以上に20分以上加熱する方式が5分以下に短
縮されることから、エネルギーコストはもちろん、生産
性の点でも大きな利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明製品のNiミクロ偏析に対するδcal
(%)の影響を示す図である。
【図2】SUS304(Cr:18.2%、Ni:8.
6%、C:0.04%、N:0.04%)CC鋳片(厚
み130mm)を1250℃に20分加熱し、50mm
厚まで熱間圧延し、一旦室温まで冷却し、再度1200
℃に加熱した後冷却して、1050℃、1000℃、9
50℃より1パスで50%圧下を与えた後、ある時間空
冷時間を取った後に水冷を開始した場合の再結晶組織を
示す金属顕微鏡組織写真図である。
【図3】従来法によるタンデム圧延材の表面と中心部の
金属組織を示す顕微鏡組織写真図である。
【図4】本発明法によるリバース圧延材の表面と中心部
の金属組織を示す顕微鏡組織写真図である。
【図5】SUS304鋼の熱間圧延後の水冷開始温度の
例を示す図である。
【図6】図5の各水冷開始温度に対応する昇温時の炭化
物の析出、成長、溶解挙動例を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 廣紀 福岡県北九州市八幡東区枝光1−1−1 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (72)発明者 藤田 芳昭 福岡県北九州市八幡東区枝光1−1−1 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オーステナイト系および2相系ステンレ
    ス鋼において、δcal(%)=3(Cr+Mo+1.
    5Si)−2.8(Ni+0.5Mn+0.5Cu)−
    84(C+N)−19.8で決まるδcal(%)を−
    3%以上となるような成分系とした連鋳鋳片(以下CC
    鋳片という)または分塊圧延を経た鋼片を、加熱温度1
    100〜1300℃に10分以上加熱し、熱間圧延にお
    いて全圧下パス数の少なくとも半数以上に3〜40秒の
    パス間時間を取って圧延し、圧延終了温度が800℃以
    上となるように圧延途中ないしは圧延終了後に、圧延ラ
    イン上で加熱昇温し、熱間圧延終了後鋼板温度が650
    ℃以上から水冷を開始し、800℃〜300℃間の平均
    冷却速度を3℃/sec 以上で500℃以下の温度まで急
    冷し、引続き950℃以上に加熱して保定時間を5分以
    下の短時間の固溶化熱処理をすることを特徴とするステ
    ンレス厚鋼板の製造方法。
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