JPH07266565A - インクジェット記録ヘッド、その製造方法およびインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録ヘッド、その製造方法およびインクジェット記録装置

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JPH07266565A
JPH07266565A JP6066594A JP6066594A JPH07266565A JP H07266565 A JPH07266565 A JP H07266565A JP 6066594 A JP6066594 A JP 6066594A JP 6066594 A JP6066594 A JP 6066594A JP H07266565 A JPH07266565 A JP H07266565A
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俊雄 樫野
Haruhiko Terai
晴彦 寺井
Seiichiro Karita
誠一郎 刈田
Shuji Koyama
修司 小山
Koichi Komata
好一 小俣
Hiroshi Koizumi
寛 小泉
Takeshi Origasa
剛 折笠
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顕 後藤
Kimiyuki Hayashizaki
公之 林崎
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正樹 稲葉
Noriyuki Ono
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    • B41J2202/01Embodiments of or processes related to ink-jet heads
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 多数(例えば200個以上)のインク吐出口
が設けられ、かつインク流路配列方向およびインク吐出
方向の加工精度が高められた天板部材(溝付天板)を有
するインクジェット記録ヘッドを提供する。 【構成】 溝付天板におけるオリフィスプレート403
の表面を第1のカッタ1で加工し、ヒータボードとの突
き当て面およびインク流路溝形成面を第2のカッタ2で
加工する。これらの切削加工が同時に行なわれるように
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、吐出口から記録液体を
吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッドおよび
その製造方法と、このインクジェット記録ヘッドを使用
したインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方法は、微細な吐出
口から記録媒体に対して液滴(インク)を吐出させるこ
とによって記録を行なう方法であり、ノンインパクト型
の記録方法なので騒音のおそれがなく、普通紙を利用で
き、高速、高精細記録が可能であって、さらに複数色の
インクを使用することによってカラー記録が可能になる
などの長所を有している。インクジェット記録方法によ
る記録装置(インクジェット記録装置)では、一般に、
インクが吐出される吐出口とインクに吐出エネルギを与
えるための吐出エネルギ発生素子とを一体化させたイン
クジェット記録ヘッド(IJC)が使用される。図13
は、従来のインクジェット記録ヘッドの要部の構成を示
す分解斜視図である。
【0003】ヒータボード910は、シリコン基板と、
シリコン基板上に列状に配された電気熱変換体(吐出ヒ
ータ)と、これに電力を供給するアルミなどの電気配線
とが、成膜技術により形成されたものである。ヒータボ
ード910に対する配線基板820が設けられており、
配線基板920には、ヒータボード910の配線に対応
する配線(例えばワイヤボンディングにより接続)と、
この配線の一端部に位置し本体装置(不図示)からの電
気信号を受けるパット921と、配線の他端部に位置し
ヒータボードとの電気的接続部位となる信号・電力供給
パッド922とが設けられている。
【0004】インクタンクから供給されるインクを受け
て後述の共通液室へ導入するインク受け口942と、各
インク流路に対応した吐出口を複数有するオリフィスプ
レート940とを射出成形等で一体成形することにより
溝付天板945が構成されている。この溝付天板945
には、複数のインク流路をそれぞれ区分するための隔壁
や、各インク流路へインクを与えるためにインクを収納
するための共通液室なども設けられている。溝付天板9
45では、インク流路は溝として形成されている。これ
らの一体成形の材料としては、例えばポリサルフォンな
どが挙げられる。
【0005】配線基板920の裏面側には、配線基板9
20を平面で支持する支持体930が配置されている。
支持体930は、例えば金属製であって、インクジェッ
トユニットの底板となるものである。
【0006】これらヒータボード910、支持体930
および溝付天板945は、押えバネ950に押圧力によ
って相互に固定されている。押えバネ950は、U字型
形状によって押圧力を発生し、その押圧力によってイン
ク流路である溝の配列方向を均一に押圧する。すなわち
押えバネ950は、その脚部951が支持体930の穴
931を通って支持体930の裏面側に係合すること
で、ヒータボード910および溝付天板945を挟みこ
んだ状態で両者を係合させることにより、押えバネ95
0とその前だれ部952の集中付勢力によってヒータボ
ード910と溝付天板945とを圧着固定する。なお、
支持体930に対する配線基板920の取付は、接着剤
932等による貼着によって行なわれる。
【0007】このようにして溝付天板945とヒータボ
ード910を接合することにより、溝付天板945の溝
とヒータボード910とによってインク流路が最終的に
完成する。ヒータボード910の端部は、オリフィスプ
レート940の裏面側の表面に垂直に突き当たってお
り、これによって、溝付天板945とヒータボード91
0との間には隙間が生じないようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たようなインクジェット記録ヘッドでは、吐出口の数を
多数(例えば200個以上)設けて大型のものとした場
合に、溝付天板を樹脂の成形加工で製造すると、成形時
の収縮の影響を受けて反りが発生するという問題があ
る。反りの中で部品の組付け方向(図示上下方向)への
反りは、天板のヒータボードへの押圧部材である押えバ
ネによって押圧することにより、機能上影響のないレベ
ルまで抑制することができる。しかし、インク吐出方向
やインク流路配列方向への反りは、押圧する部材がない
ので成形時の反りがそのまま残存することとなり、吐出
不良やインクの漏れなどの原因となる。例えば、オリフ
ィスプレートの正面側(吐出口側)表面の凹凸は、吐出
不良の原因となる。オリフィスプレートの裏面(ヒータ
ボードに対する突き当て面)やインク流路溝形成面の凹
凸は、溝付天板とヒータボードとの間に隙間を形成する
ことになり、インクの漏れなどの原因となる。したがっ
て、インク吐出方向やインク流路配列方向への反りは、
許容することができない。
【0009】このような反りを抑制するために金型の形
状を調整することも考えられるが、その場合には、多数
の補正データを加え、試鋳を行ないながら金型を製作す
ることとなるので、金型製造のための期間とコストがか
さみ、製品コストが下がらないという問題点を生じる。
【0010】本発明の目的は、多数(例えば200個以
上)のインク吐出口が設けられ、かつインク流路配列方
向およびインク吐出方向の加工精度が高められた天板部
材(溝付天板)を有するインクジェット記録ヘッドと、
その製造方法と、このインクジェット記録ヘッドを使用
したインクジェット記録装置とを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明のインクジェット
記録ヘッドは、インクに吐出エネルギを与える吐出エネ
ルギ発生素子がインク流路に対応して設けられた基板
と、前記インク流路に対応する溝と前記溝の一端に連通
してインクが吐出される吐出口が設けられるオリフィス
プレートとを一体のものとして形成した天板部材とを有
し、前記基板と前記天板部材とを接合させることによっ
て前記インク流路が形成され、前記接合時において前記
基板の端部が突き当たりかつ前記接合の方向とは異なる
方向を向いた突き当て面が前記天板部材に形成されてい
るインクジェット記録ヘッドにおいて、前記突き当て面
と前記溝が形成されるインク流路溝形成面と前記オリフ
ィスプレートの表面とが、同時切削加工によって形成さ
れている。
【0012】本発明のインクジェット記録ヘッドの製造
方法は、インクに吐出エネルギを与える吐出エネルギ発
生素子がインク流路に対応して設けられた基板と、前記
インク流路に対応する溝と前記溝の一端に連通してイン
クが吐出される吐出口が設けられるオリフィスプレート
とを一体のものとして形成した天板部材とを有し、前記
基板と前記天板部材とを接合させることによって前記イ
ンク流路が形成され、前記接合時において前記基板の端
部が突き当たりかつ前記接合の方向とは異なる方向を向
いた突き当て面が前記天板部材に形成されているインク
ジェット記録ヘッドの製造方法において、前記天板部材
の概形に対応する成形体を形成する第1の工程と、前記
成形体に対して同時切削加工を行なって、前記突き当て
面と前記溝が形成されるインク流路溝形成面と前記オリ
フィスプレートの表面とを形成する第2の工程とを有す
る。
【0013】本発明のインクジェット記録装置は、本発
明のインクジェット記録ヘッドと、吐出エネルギ発生素
子を駆動するための信号を前記インクジェット記録ヘッ
ドに供給する信号供給手段を具備する。
【0014】
【作用】本発明のインクジェット記録ヘッドでは、天板
部材に成形によって生じた反りを成形後の2次加工であ
る切削加工で除去し、かつオリフィスプレート表面(吐
出口面)と、その裏面側のインク流路溝形成面を同時切
削加工することによって均等な厚さのオリフィスプレー
トが形成できるため、吐出特性を損ねることなく、イン
ク吐出口が多数(例えば200個以上)あるようなイン
クジェット記録ヘッドを簡単かつ低コストで製造するこ
とが可能となる。
【0015】本発明のインクジェット記録ヘッドにおい
て、天板部材は、成形の容易さなどの点から樹脂で構成
されることが望ましい。また、複数の吐出口が設けられ
る場合には、天板部材と他の部材との熱膨張差による影
響を軽減するため、天板部材の熱膨張係数を制御するた
めの支持部材を、吐出口の配設方向に沿って、天板部材
内に設けるようにすることが望ましい。この支持部材
は、典型的には棒状あるいは管状の部材であり、表面に
はローレット加工などが施されて天板部材との密着性を
向上させてある。素材としては、所望の熱膨張係数を有
する金属などの剛性を有する材料が使用される。
【0016】本発明のインクジェット記録ヘッドにおい
て、吐出口を多数設ける場合には、複数の基板を使用し
てこの基板を支持体上に配置し、一方、天板部材はこれ
ら基板に共通のものとして、さらに、天板部材中の支持
部材によって天板部材の熱膨張係数が支持体の熱膨張係
数と実質的に等しくなるようにすることができる。微小
な間隙をあけて複数の基板を配設することにより、天板
部材あるいは支持体と基板との熱膨張差によるずれは基
板間の間隙によって吸収されるので、基板に対する熱膨
張差によるずれを無視することが可能になる。
【0017】本発明において、吐出エネルギ発生素子と
しては、各種のものを使用できるが、インク吐出用の熱
エネルギを発生する電気熱変換体を使用することが好ま
しい。電気熱変換体を使用する場合には、この電気熱変
換体によって印加される熱エネルギによりインクに生じ
る膜沸騰を利用して吐出口からインクを吐出させるよう
にすることが好ましい。
【0018】本発明のインクジェット記録ヘッドの製造
方法では、同時切削加工によって、突き当て面とオリフ
ィスプレートの表面とインク流路溝形成面とを形成する
ので、反りの影響を容易に除去できるとともに、高精度
でオリフィスプレートを形成できる。なお、上述の各面
を個別に切削した場合には、ワークの位置決めなどが複
雑な作業となり、作業性が低下するともに精度の維持に
も困難を伴う。
【0019】同時切削加工の方法としては、具体的に
は、同一のスピンドル軸に取り付けられた第1および第
2の回転切削工具を使用する方法がある。この方法で
は、第1の回転切削工具による正面フライス削りによっ
てオリフィスプレートの表面が形成され、第2の回転切
削工具の正面フライス削りによって突き当て面が形成さ
れ、第2の回転切削工具の平フライス削りによってイン
ク流路溝形成面が形成される。また、第1のスピンドル
軸に取り付けられた第1の回転切削工具と、第1のスピ
ンドル軸に対して直交する第2のスピンドル軸に取り付
けられた第2の回転切削工具を使用しても同時切削加工
を行なうことができる。この場合には、第1の回転切削
工具による平フライス削りによってオリフィスプレート
の表面が形成され、第2の回転切削工具の正面フライス
削りによって突き当て面が形成され、第2の回転切削工
具の平フライス削りによってインク流路溝形成面が形成
されることになる。
【0020】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細
に説明する。
【0021】《第1の実施例》図1および図2は、本発
明の第1の実施例における溝付天板(天板部材)の加工
方法を説明する図である。図1はオリフィスプレートと
インク流路溝形成面とを同時に加工する状態を示す斜視
図、図2はオリフィスプレートとインク流路溝形成面と
を同時に加工しているところを示す模式断面図である。
【0022】ここでは、図13に示す従来のインクジェ
ット記録ヘッドにおける溝付天板945と同様の溝付天
板を製造する場合を説明する。予め樹脂射出成形によ
り、共通液室やインク供給口などの溝付天板としての機
能を付加してある成形体460を形成する。この成形体
460は、製造されるべき溝付天板と同様の形状である
が、オリフィスプレートとなるべき位置が、成形時の反
り量を加味して肉盛りされている。さらに、この成形体
460には、吐出口やインク流路溝は形成されていな
い。図示斜線部401,402は、切削加工によって切
削される部分であり、斜線部401,402を切削除去
することにより、吐出口やインク流路溝が形成されてい
ない状態のものが得られる。さらにこの状態のものに加
工を施して吐出口やインク流路溝を形成することによ
り、最終的な溝付天板が得られることになる。オリフィ
スプレートは形成されているが吐出口やインク流路溝が
形成されていない状態のものを、最終的な溝付天板に対
応させて、天板と呼ぶことにする。
【0023】この切削加工には、同一のスピンドル軸4
(図2)に取り付けられた円板状の2枚のカッタ1,2
が使用される。これらカッタ1,2の間隙は、成形体4
60のうちオリフィスプレート403として残す部分の
厚みに相当する間隔となっている。この隙間の間隔は、
カッタのシャンク部の厚さの調整、あるいはこれら2枚
のカッタ1,2の間にあってスピンドル軸4に取り付け
られるスペーサ3(図2)の厚さを変えることにより、
適宜に設定できる。
【0024】これら2枚のカッタ1,2および隙間用の
スペーサ3は、フランジ(不図示)を介して切削加工機
(スライサ)のスピンドル軸4に締結固定される。ここ
で、スピンドル軸4の根元側に配置されるカッタ1は、
溝付天板のオリフィスプレート403の表面形成用であ
り、成形体460の肉盛部401を切り落とすととも
に、オリフィスプレート403の表面に吐出機能を損な
うようなキズやカッタマークを与えないような刃先形状
を有していることが必要である。一方、スピンドル軸4
の先端側にあるカッタ2は、溝付天板のインク流路溝形
成面とヒータボード接合面(突き当て面)を同時に形成
するためのものであり、仕上げ面の表面の面粗さがサブ
ミクロン単位であって、ヒータボードのエッジのつき当
て部の角404が全幅にわたって鋭利に形成されC面や
R面が無く、100mm当り5μm以下の真直度が確保
されるという条件を満たせるものである必要がある。カ
ッタ1がオリフィスプレート403の正面の全面の形成
に使用されるのに対し、カッタ2はオリフィスプレート
の上半分側の背面の形成に使用されるものであることか
ら、カッタ2の外径はカッタ1に比べ小さい必要があ
り、また、刃先面での高精度の加工が行なえるようなも
のである必要がある。図3において矢印は、上述したよ
うな切削加工時における、ワークである成形体460の
移動方向を示している。
【0025】本発明者らは、これらの点に鑑み、スピン
ドル軸4の根元側のカッタ1については、切削抵抗が少
なく加工面の仕上り状態の良好なカッタとして、刃厚
0.2〜0.3mm、外径φ54〜φ60mm、刃数48
〜52枚、刃先バックテーパ1°〜3°のハイス鋼のス
リワリフライスカッタ(例えば日立ツール製)を選定し
た。この他、カッタの長寿命化を狙い、タングステンカ
ーバイトの超硬カッタや、上述したスリワリフライスカ
ッタにチタンカーバイトの表面処理を施したものも使用
することができる。また、スピンドル軸4の先端側のカ
ッタ2としては、刃先材質に単結晶ダイヤを埋設・研磨
したダイヤモンドサーキュラソー(例えば大阪ダイヤモ
ンド工業製)を選定した。刃先幅は、インク流路形成領
域以上の幅があれば良い。外径は、カッタ1に比べて小
さいφ52〜φ54mmとし、カッタ1と組み合わせる
ことで、カッタ2では切り落とすことなく刃先面で加工
することが可能となるようにした。この他、カッタ2の
刃先材質としては、焼結人造ダイヤや超硬合金などが使
用可能である。
【0026】スペーサ3は、例えばステンレスの薄板に
エッチング処理を施すことによって形成される。スペー
サ3の厚みすなわちオリフィスプレートの厚さ403
は、オリフィスプレート403の板状部材としての強度
と、次工程でエキシマレーザを用いてオリフィスプレー
ト403に穿孔加工を行ない吐出口を形成する際の樹脂
内でのレーザビーム強度の減衰を加味し、20μm〜5
0μmの範囲で決定することが好ましい。
【0027】このようにカッタ1,2を選択しスペーサ
3を形成したら、続いて、フランジ(不図示)を介して
スライサのスピンドル軸4に、これらカッタ1,2およ
びスペーサ3を締結・固定する。ここで、初期のカッタ
の精度を充分発揮できる装置(スライサ)として、スピ
ンドルに静圧空気軸受を取り入れることによって振動が
極めて少なく、かつ高速回転ができるものであることが
重要である。本発明者らは、半導体装置用のシリコンウ
ェハやセラミックスの加工に使用されるダイシングマシ
ン(東京精密製)を用いることによって、2つのカッタ
1,2を取付けた後のラジアル・スラストの振動を回転
数10000rpmで1μm以下に抑えることができ
た。
【0028】上述したような加工系や工具により、溝付
天板のオリフィスプレート形成面と、インク流路溝形成
面とヒータボード接合面との加工を同時に行なうことが
可能となった。この加工の結果、1個の天板内における
オリフィスプレート403の厚みのバラツキが±0.5
μm/100mm以下であり、ヒータボード突き当て面
の角部404にはC面及びR面が形成されず、インク吐
出方向(Y方向)の真直度が5μm以下/100mmで
ある溝付天板を形成することが可能となった。また、こ
の天板において、各面の加工面粗さはRmax0.2μm以
下であり、吐出機能上、何ら影響を与えない良好な面を
確保することが可能となった。さらに、加工速度が30
〜180mm/minの範囲内にあれば、カッタマーク
が特に目立つことなく、厚さ20μmのオリフィスプレ
ートを形成することが可能である。
【0029】溝付天板形成用の成形体460には、成形
時に樹脂の収縮等で反りが生じるが、成形体460をス
ライサのワークステージに固定する際に、インク吐出方
向(Y方向)を位置出しのための突き当てのみとし、図
示上下方向(Z方向)で成形体460を固定して切削加
工を行なうことによって、インク吐出方向の反りは切削
加工後相殺され、インクジェット記録ヘッドの機能上影
響のない5μm/100mmの真直度(反り)に抑えら
れる。
【0030】一方、Z方向は、加工された天板の固定を
解除すると元の反りにもどるが、前述したように実際の
インクジェット記録ヘッドでは、Z方向に押圧力を発揮
する押圧部材(押えバネ)によって溝付天板はヒータボ
ードと密着されるため、ヒータボードと接合される面の
面粗さが要求精度を確保していれば、Z方向のある程度
の反りは何ら問題はないものである。しかしながら、イ
ンクジェット記録ヘッドとしては、押圧部材が簡素であ
ればヘッド全体としても必要最小限の大きさ、剛性にす
ることが可能であるため、Z方向の反りをヘッド全体の
構成から規制する必要があり、Z方向の反りの許容限度
としては50μm/100mm以下とすることが望まし
い。
【0031】図3は、上述のような切削加工を行ないさ
らに吐出口やインク流路溝を設ける加工を行なって得た
溝付天板を用いたインクジェット記録ヘッドの構成を示
す模式的斜視図、図4はこのインクジェット記録ヘッド
の主要な部品の構成を説明する図である。ここでは、イ
ンク吐出口の密度が360dpi(25.4mm当たり
360個すなわち間隔が70.5μm)、インク吐出口
の数が3008個(印字幅212mm)であるインクジ
ェット記録ヘッドについて説明する。
【0032】インク吐出口が3008個であるから、少
なくとも吐出エネルギ発生素子は3008個必要である
が、ここでは、吐出エネルギ発生素子101をそれぞれ
128個ずつ有するヒータボード(基板)100を複数
枚用意して一直線上に配列することにより、所定の数の
吐出エネルギ発生素子が確保されるようにした。各ヒー
タボード100は、それぞれ、吐出エネルギ発生素子1
01が所定の位置に360dpiの密度にて128個設
けられ、さらに、外部からの電気信号により任意のタイ
ミングで吐出エネルギ発生素子101を駆動させるため
の信号や駆動のための電力などを供給するパッド102
を有している。各ヒータボード100は、ステンレス鋼
で作られた支持体(ベースプレート)300の表面上に
配置され、接着剤にて接着固定されている。
【0033】図5は、ヒータボード100を並べた状態
の詳細図である。各ヒータボード100は、支持体30
0の所定の場所に、所定の厚さで塗布された接着剤30
1によって接着固定されている。この際、隣接する2つ
のヒータボード100間において、一方のヒータボード
上にあって他方のヒータボードに最も近い吐出エネルギ
発生素子と、他方のヒータボード上にあって一方のヒー
タボードに最も近い吐出エネルギ発生素子と間のピッチ
は、各ヒータボード100上での吐出エネルギ発生素子
101のピッチP(=70.5μm)と同一である。し
たがって、ヒータボード100が20数個設けられてい
たとしても、これらヒータボード100全体を通して、
吐出エネルギ発生素子101は同一のピッチPで配設さ
れていることになる。この際、隣接するヒータボード1
00間に隙間が生じるが、この隙間は封止剤302にて
封止される。
【0034】吐出エネルギ発生素子101としては、具
体的には、記録信号に応じて通電することにより発熱す
る電気熱変換体が使用される。吐出エネルギ発生素子1
01は、シリコン基板であるヒータボード100に対
し、半導体装置製造技術を用いて形成される。そして、
通電によって吐出エネルギ発生素子101が発熱した場
合、この吐出エネルギ発生素子に対応するインク流路内
のインクが加熱されて発泡し、その発泡のエネルギによ
ってインク流路内のインクが吐出口からインク液滴とし
て吐出されることになる。この発泡は、好ましくは膜沸
騰によるものである。吐出エネルギ発生素子101とし
ては、圧電素子からなるものなども使用することができ
る。
【0035】図4に戻って、支持体300には、配線基
板200も接着貼付されている。配線基板200は、各
ヒータボード100に対して信号や電力を供給するため
のものであり、ヒータボード100上のパッド102と
配線基板200上に設けられた信号・電力供給パッド2
02とが所定の位置関係となるように、配線基板200
は配置されている。配線基板200のヒータボード10
0側でない端部には、外部から印字信号や駆動電力が供
給されるコネクタ201が設けられている。
【0036】次に溝付天板400について説明する。ま
ず上述した方法によって、樹脂による成形後にオリフィ
スプレート表面(吐出口面)とインク流路溝形成面とヒ
ータボード接合面(突き当て面)とを同時に切削加工す
ることによって、天板を形成する。そして、オリフィス
プレート表面に、オリフィス周縁部がインクによって濡
れることにより吐出性能が低下することを防ぐために、
撥インク性の被膜を形成する。その後、エキシマレーザ
によってインク流路溝形成面を掘り込むことによって、
ヒータボード100の各吐出エネルギ発生素子101に
対応したインク流路溝を形成する。このレーザビームに
よる加工は、マスクを使用し、ヒータボードの単位と同
様に128流路単位で加工をくり返すことによって行な
われる。インク流路溝加工後、各インク流路溝の一端の
オリフィスプレート裏面側より、インク流路溝と同様に
128単位で、マスクを用いてレーザビームにより吐出
口(オリフィス)を穿孔加工する。このようにして溝付
天板400が最終的に完成する。
【0037】図6に示されるように溝付天板400は、
ヒータボード100に設けられた吐出エネルギ発生素子
101に対応して設けられたインク流路412、各イン
ク流路412に対応しインクを記録媒体に向けて吐出さ
せるための当該インク流路412に連通したオリフィス
(吐出口)413、各インク流路412に対してインク
を供給するために各インク流路に連通した液室411、
液室411に対してインクタンク(図示せず)から供給
されたインクを流入させるためのインク供給口414と
いった構成要素が一体的に設けられた構成となってい
る。溝付天板400は、当然のことながら、ヒータボー
ド100を複数並べて設けられた吐出エネルギ発生素子
列をほぼ覆い被さるような長さを有している。そして、
図4に示されるように、溝付天板400は、その流路4
12と支持体300上に並べられたヒータボード100
上の吐出エネルギ発生素子との位置関係が所定の位置関
係になるように、支持体300側に結合させる。この結
合の方法としては、バネ500とバネ500を保持する
バネホルダー510とによって機械的に押え込む方法
や、接着剤によって固定する方法や、これらの方法を併
用する方法など、各種の方法がある。図7は、支持体3
00、ヒータボード100および溝付天板400の位置
関係を示す模式図である。
【0038】溝付天板400を構成する材料としては、
インク流路溝や吐出口を設けるため、正確に溝を形成で
きる樹脂が好ましく、さらに機械的強度、寸法安定性、
耐インク性に優れたものであることが望ましい。このよ
うな材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹
脂、ジグリコールジアルキルカーボネート樹脂、不飽和
ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹
脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等が望ま
しく、特にポリサルフォンやポリエーテルサルフォン等
の樹脂がその成型性、耐液性等の観点から望ましい。
【0039】溝付天板400を樹脂で構成した場合、そ
の線熱膨張係数は1×10-5/℃から1×10-4/℃程
度である。ここではポリサルフォン(線熱膨張係数56
×10-6/℃)を用いるものとして説明する。一方、基
板であるヒータボード100はシリコン基板で構成され
ており、その線熱膨張係数は2.4×10-6/℃であ
る。また、ヒータボード100を配列する支持体300
はステンレス鋼製であり、その線熱膨張係数は17.3
×10-6/℃である。ここで、記録ヘッドの組み立てが
25℃近傍の温度で行なわれたものとする。組み立てた
記録ヘッドがその動作時において温度が上昇して60℃
程度になることは、十分にあり得る。そのため、上述し
たままの構成では、ここで25℃で精度良く組み立てら
れたものとして、膨張係数の差による60℃でのずれを
計算すると、
【0040】
【数1】 となる。すなわち、0.287mmのずれが生じ、これ
は、吐出口4個分の大きさであって、このようなずれが
生じるのでは、インクジェット記録ヘッドとしてとても
実用になり得るものでない。そこで溝付天板400に
は、図6(d)に示されるように、溝付天板400の熱膨
張率を規制するための支持部材415が、溝付天板40
0の長手方向すなわちインク流路配置方向に沿って、溝
付天板400の樹脂の中に設けられている。ここで支持
部材415は、支持体300と同じステンレス鋼製のパ
イプであり、その両端が溝付天板400の本体部分から
突出してインクの供給口となっている。またこの支持部
材415には、液室411と連通する穴414が予め加
工されており、これによって、支持部材415すなわち
パイプ内部と液室とが連通している。なお、支持部材4
15の表面には、ブラスト加工やローレット加工といっ
た表面加工が施されており、これによって支持部材41
5と溝付天板400の樹脂との密着度が向上するように
なっている。支持部材415と溝付天板400を構成す
る樹脂との機械的強度(弾性係数など)の関係から、溝
付天板400全体としての線熱膨張係数は、ステンレス
鋼の線熱膨張係数と一致する。こうすることにより、溝
付天板400と支持体300は同一の熱膨張係数を持つ
ことになって、温度上昇に伴うずれが全く生じなくな
る。
【0041】シリコン基板からなるヒータボード100
と、これら支持体300や溝付天板400との間には熱
膨張差が生じる。しかし、ヒータボードが128ドット
単位に分割されていることから、この熱膨張差は無視し
得るものである。すなわち、上述と同様に25℃と60
℃との間での熱膨張差を計算すると、
【0042】
【数2】 となる。これはヒータボード100の両端の吐出エネル
ギ発生素子と、溝付天板400側の吐出口やインク流路
とのずれが、0.005/2=0.0025mm、すなわ
ち2.5μmとなることを示している。この2.5μmと
いう値は、ピッチP=70.5μmと比較するとわずか
であり、インクジェット記録ヘッドの吐出性能になんら
の影響も与えないものである。
【0043】次に、インクジェット記録ヘッドについ
て、図8および図9を用いてさらに詳しく説明する。今
まで説明してきたように、吐出エネルギ発生素子が作り
込まれたヒータボードをガラス、シリコン、セラミック
ス、金属等からなる支持体の上に複数個精度よく配置接
着したものに対し、オリフィスおよび液流路が作り込ま
れた溝付天板を接合することによって、インク流路が形
成され、インクジェット記録ヘッドが製造される。図8
は、このようなインクジェット記録ヘッドを適用したイ
ンクジェットカートリッジを模式的に示している。この
インクジェットカートリッジは、インクジェット記録装
置本体に対して着脱可能に取り付けられるものであっ
て、上述したものと同様のインクジェット記録ヘッド8
50と、そのインクジェット記録ヘッドに供給するため
のインクを貯蔵することが可能なインクタンク851と
が一体的に形成されている。
【0044】図9は、記録媒体の記録幅に対応した幅を
有するいわゆるフルラインタイプのインクジェット記録
ヘッドおよびそのインクジェット記録ヘッドを使用した
インクジェット記録装置の模式的概略説明図を示してい
る。フルラインタイプのインクジェット記録ヘッドは、
その性質上、吐出口の数が多数であって、本発明の効果
が最も顕著に現れるものである。
【0045】この記録装置では、フルラインインクジェ
ット記録ヘッド600は、記録媒体搬送ローラ700に
よって搬送される紙や布等の記録媒体800に対向して
配置されている。そして、記録媒体800を搬送しなが
ら、フルラインタイプインクジェット記録ヘッド600
から記録信号に応じてインクを記録媒体800に向けて
インクを吐出することにより、長尺の記録媒体800に
記録がなされる。本発明の場合、吐出エネルギ発生素子
を設けたヒータボードを複数個並べることでインクジェ
ット記録ヘッドを製造するので、フルライン記録ヘッド
のような長いインクジェット記録ヘッドでも容易に製造
することができる。
【0046】図10は、カートリッジタイプの小型のイ
ンクジェット記録ヘッドを搭載したインクジェット記録
装置を示している。この記録装置では、インクタンク部
1001とインクジェット記録ヘッド部1002とが一
体化され、記録装置本体に対して着脱可能なインクジェ
ット記録ヘッドカートリッジ1000が使用されてい
る。インクジェット記録ヘッドカートリッジ1000
は、図示矢印方向に往復移動可能なキャリッジ1010
上に搭載されている。また、記録媒体800を搬送する
ための搬送ローラやこのキャリッジ1010を駆動する
駆動源としてのモータ1003、駆動源からの動力をキ
ャリッジ1010に伝えるためのキャリッジ軸1004
等が設けられている。さらに、インクジェット記録ヘッ
ド部1002に対してインクを吐出するための信号を供
給する信号供給手段(不図示)が設けられている。
【0047】以上、本発明によるインクジェット記録ヘ
ッドが使用されるインクジェット記録装置について、単
色のインクを吐出するインクジェット記録ヘッドを1個
のみ搭載する場合について説明したが、本発明はこれに
限られるものではない。すなわち、複数色のインクのそ
れぞれに対応した複数個のインクジェット記録ヘッドを
搭載するカラー記録装置に対して本発明のインクジェッ
ト記録ヘッドを使用することは、当然である。さらに加
えて、以上説明した実施例においては、インクを液体と
して説明しているが、室温やそれ以下で固化するインク
であって、室温で軟化もしくは液化するものを用いても
よく、あるいはインクジェット方式ではインク自体を3
0℃以上70℃以下の範囲で温度調整を行ってインクの
粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一
般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状を
なすものを用いてもよい。加えて、放置状態で固化し、
加熱によって液化するインクを用いてもよい。
【0048】《第2の実施例》次に本発明の第2の実施
例について説明する。図11および図12は、本発明の
第1の実施例における溝付天板の加工方法を説明する図
である。図11はオリフィスプレートとインク液流溝形
成面とを同時に加工する状態を示す斜視図、図12はオ
リフィスプレートとインク液流溝形成面とを同時に加工
しているところを示す断面模式図である。
【0049】オリフィスプレートでは、インク吐出方向
の反りの影響が顕著に現れるのは吐出口近傍である。し
たがって、吐出口周辺のみをくぼませて正確な形状に加
工し、その他の部分はオリフィスプレート全体としての
強度を確保するために切削しないでおくことが可能であ
る。本実施例は、このような場合にすなわちプレート全
体の強度が必要で、オリフィス周辺のみをくぼませたい
場合に、有効な手段である。
【0050】カッタ11,12は、各々直角に配置され
た2本のスピンドル軸にフランジ(不図示)を介して締
結・固定されている。カッタ12は、上述の第1の実施
例のカッタ2と同様の切削方向のものであって、インク
流路溝形成面とヒータボード接合面(突き当て面)との
加工に使用される。一方、カッタ11は、上述の第1の
実施例のカッタ11の回転軸とは直角の回転軸(図示上
下方向)を有し、刃先面での切削により、吐出口の形成
部をインク流路配設方向に平行な直線状にくぼませるこ
とができるようになっている。カッタ11,12として
は、いずれも刃先での加工面の仕上り精度が要求される
ため、第1の実施例のカッタ2と同様に、単結晶ダイヤ
モンドを刃先に埋設・研磨したダイヤモンドサーキュラ
ソーを用いることが望ましい。図11において、矢印
は、上述したような切削加工時における、ワークである
成形体の移動方向を示している。
【0051】本実施例では、カッタ11での掘り込み深
さを深くすることで、オリフィスプレートの吐出口加工
部を極めて薄くすることが可能であり、この部分の厚さ
が10〜20μmであるオリフィスプレートを得ること
ができる。また、カッタ11の刃先にR曲面やC面取を
加えることにより、掘り込み部の形状をそれに見合うも
のとすることができる。すなわち、インクジェット記録
ヘッドの吐出口面に付着した汚れをプリンタのゴムブレ
ード等でワイピングしたときに、拭き残りが生じ難くな
るようなオリフィスプレート形状とすることが可能にな
る。
【0052】本実施例は、第1の実施例と異なりカッタ
11,12を取り付けるスピンドル軸が2軸であってし
かも直角に配置されている構成であるので、市販の汎用
機を使用することはできないが、一般的なスライサやダ
イシングマシンにスピンドル軸を1軸追加するだけで、
システムとして比較的簡便なものとして完成させること
ができる。以上のようにして切削加工した天板は、第1
の実施例と同様の製造プロセスを経て、インクジェット
記録ヘッドとして完成される。
【0053】本発明に係るインクジェット方式の記録ヘ
ッド、記録装置の代表的な構成や原理については、例え
ば米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細
書に開示されている基本的な原理を用いて行うのが好ま
しい。この方式はいわゆるオンディマンド型、コンティ
ニアス型のいずれにも適用可能であるが、特にオンディ
マンド型の場合には、液体(インク)が保持されている
シートや液路に対応して配置された電気熱変換体に、記
録情報に対応して核沸騰を越える急速な温度上昇を与え
る少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、
電気熱変換体に熱エネルギを発生させて、結果的にこの
駆動信号に一体一対応して液体(インク)内の気泡を形
成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により
吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少な
くとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状
とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、
特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、
より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米
国特許第4,463,359号明細書、同第4,345,262号明細書に
記載されているようなものが適している。なお、上記熱
作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4,313,12
4号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに
優れた記録を行うことができる。
【0054】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体
の組み合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他
に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示
する米国特許第4,558,333号明細書、米国特許第4,459,6
00号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものであ
る。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するス
リットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特
開昭59-123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する
開口を吐出部に対応する構成を開示する特開昭59-13846
1号公報に基づいた構成としても本発明は有効である。
【0055】さらに、記録装置が記録できる最大記録媒
体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録
ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているよう
な複数記録ヘッドの組み合せによって、その長さを満た
す構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての
構成のいずれでもよいが、本発明は、上述した効果を一
層有効に発揮することができる。加えて、装置本体に装
着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体
からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイ
プの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体にインクタン
クが一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッ
ドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0056】また、本発明の記録装置の構成として設け
られる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助
手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できる
ので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、
記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリーニン
グ手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいは
これらとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合せによ
る予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モー
ドを行うことも安定した記録を行うために有効である。
【0057】さらに、記録装置の記録モードとしては黒
色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッ
ドを一体的に構成するか複数個の組み合せによってでも
よいが、異なる色の復色カラーまたは、混色によるフル
カラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極め
て有効である。
【0058】本発明に係る合金材料を用いれば、キャビ
テーションの衝撃に対する耐性、キャビテーションによ
るエロージョンに対する耐性、電気化学的安定性、化学
的安定性、耐酸化性、耐溶解性、耐熱性、耐熱衝撃性、
機械的耐久性等において優れた発熱抵抗体を有する電気
熱変換体を具備するインクジェットヘッドおよびインク
ジェットヘッド装置を得ることができる。特に、発熱抵
抗体の熱発生部がインク路中のインクと直に接する構成
のインクジェットヘッドおよびインクジェット装置を得
ることもできる。この構成のインクジェットヘッドおよ
びインクジェット装置では発熱抵抗体の熱発生部から発
生した熱エネルギをインクに直接作用させることができ
るのでインクへの熱伝導効率が良い。故に、発熱抵抗体
による消費電力を低く押えることができ、インクジェッ
トヘッドの昇温(インクジェットヘッドの温度変化)を
格段に小さくすることができるので、インクジェットヘ
ッドの温度変化による画像濃度変化の発生を避けること
ができる。また、発熱抵抗体に印加される吐出信号に対
して一層良好な応答性を得ることができる。
【0059】さらに、本発明に係る発熱抵抗体では、所
望の比抵抗を制御性よく、一つのインクジェットヘッド
の中での抵抗値のばらつきが極めて少ないように得るこ
とができる。
【0060】したがって、本発明によれば、従来に比し
て格段に安定したインク吐出を行うことができ、また耐
久性にも優れたインクジェットヘッドおよびインクジェ
ット装置を得ることができる。
【0061】以上のような良好な緒特性を有するインク
ジェットヘッドおよびインクジェット装置は、吐出口の
マルチ化に伴う記録の高速化や高画質化に非常に適した
ものとなる。
【0062】以上説明した本発明実施例においては、イ
ンクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固
化するインクであって、室温で軟化もしくは液体或い
は、上述のインクジェットではインク自体を30℃以上
70℃以下の範囲内で温度調整を行なってインクの粘性
を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的
であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなす
ものであれば良い。加えて、積極的に熱エネルギによる
昇温をインクの固形状態から液体状態への態変化のエネ
ルギとして使用せしめることで防止するか又は、インク
の蒸発防止を目的として放置状態で固化するインクを用
いるかして、いずれにしても熱エネルギの記録信号に応
じた付与によってインクが液化してインク液状として吐
出するものや記録媒体に到達する時点ではすでに固化し
始めるもの等のような、熱エネルギによって初めて液化
する性質のインク使用も本発明には適用可能である。こ
のような場合インクは、特開昭54-56847号公報あるいは
特開昭60-71260号公報に記載されるような、多孔質シー
ト凹部又は貫通孔に液状又は固形物として保持された状
態で、電気熱変換体に対して対向するような形態として
も良い。本発明においては、上述した各インクに対して
最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するもの
である。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、天板部材
のオリフィスプレート表面とインク流路溝形成面とヒー
タボード接合面(突き当て面)とを同時切削加工によっ
て形成することにより、以下の効果が得られる。成形
に生じるインク吐出方向の反りを切削で除去することに
よって、真直度の高い(5μm以下/100mm)の長
尺の天板部材が得られる。インク流路溝形成面の面粗
さ、うねりを切削で除去し、均一な面粗さ(0.2μm
以下)の面が得られる。ヒータボード突き当て面の角
部のエッジが鋭利に仕上がる。同時加工であるので、
個別加工で生じる合わせ誤差がなくなり、吐出性能の高
い安定した長尺用インクジェット記録ヘッド用天板部材
が得られる。
【0064】また、複数の吐出口が設けられる場合に
は、天板部材の熱膨張係数を制御するための支持部材
を、吐出口の配設方向に沿って、天板部材内に設けるこ
とにより、天板部材と他の部材との熱膨張差による影響
を軽減することができる。さらに、吐出口を多数設ける
場合には、複数の基板を使用してこの基板を支持体上に
配置し、一方、天板部材はこれら基板に共通のものとし
て、さらに、天板部材中の支持部材によって天板部材の
熱膨張係数が支持体の熱膨張係数と実質的に等しくなる
ようにすることにより、基板に対する熱膨張差によるず
れを無視することが可能となり、より高品質の長尺イン
クジェット記録ヘッドを得ることができる。
【0065】本発明によれば、多数の例えば200個以
上、典型的には数千個にも及ぶ吐出口を有するインクジ
ェット記録ヘッドが容易に構成できる。したがって、本
発明は、記録媒体の記録幅に対応する長さを有するフル
ラインタイプのインクジェット記録ヘッドに適用するこ
とにより、特に顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例においてオリフィスプレートとイ
ンク流路溝形成面とを同時に加工する状態を示す斜視図
である。
【図2】第1の実施例においてオリフィスプレートとイ
ンク流路溝形成面とを同時に加工しているところを示す
模式断面図である。
【図3】第1の実施例におけるインクジェット記録ヘッ
ドの構成を示す模式的斜視図である。
【図4】第1の実施例のインクジェット記録ヘッドの主
要な部品の構成を説明する図である。
【図5】ヒータボードを配置した状態を示す詳細図であ
る。
【図6】(a)は溝付天板の上面図、(b)は溝付天板の正面
図、(c)は溝付天板の下面図、(d)は図6(b)のX-X線断
面図である。
【図7】支持体、ヒータボードおよび溝付天板の位置関
係を示す模式図である。
【図8】本発明のインクジェット記録ヘッドを適用した
インクジェットカートリッジの構成を示す斜視図であ
る。
【図9】フルラインタイプのインクジェット記録ヘッド
とこのインクジェット記録ヘッドを使用したインクジェ
ット記録装置の概念的構成を示す図である。
【図10】本発明のインクジェット記録ヘッドを適用し
たインクジェットカートリッジを搭載するインクジェッ
ト記録装置の構成を示す斜視図である。
【図11】第2の実施例においてオリフィスプレートと
インク流路溝形成面とを同時に加工する状態を示す斜視
図である。
【図12】第2の実施例においてオリフィスプレートと
インク流路溝形成面とを同時に加工しているところを示
す模式断面図である。
【図13】従来のインクジェット記録ヘッドの要部の構
成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1,2,11,12 カッタ 3 スペーサ 4 スピンドル軸 100 ヒータボード 101 吐出エネルギ発生素子 102 パッド 200 配線基板 201 コネクタ 202 信号・電力供給パッド 300 支持体 301 接着剤 302 封止剤 403 オリフィスプレート 411 液室 412 インク流路 413 吐出口 414 インク供給口 415 支持部材 460 成形体 500 バネ 501 バネホルダ 600 フルラインインクジェット記録ヘッド 700 記録媒体搬送ローラ 800 記録媒体 850 インクジェット記録ヘッド 851 インクタンク 1000 インクジェット記録ヘッドカートリッジ 1010 キャリッジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小山 修司 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 小俣 好一 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 小泉 寛 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 折笠 剛 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 後藤 顕 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 林崎 公之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 稲葉 正樹 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 小野 敬之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクに吐出エネルギを与える吐出エネ
    ルギ発生素子がインク流路に対応して設けられた基板
    と、前記インク流路に対応する溝と前記溝の一端に連通
    してインクが吐出される吐出口が設けられるオリフィス
    プレートとを一体のものとして形成した天板部材とを有
    し、前記基板と前記天板部材とを接合させることによっ
    て前記インク流路が形成され、前記接合時において前記
    基板の端部が突き当たりかつ前記接合の方向とは異なる
    方向を向いた突き当て面が前記天板部材に形成されてい
    るインクジェット記録ヘッドにおいて、 前記突き当て面と前記溝が形成されるインク流路溝形成
    面と前記オリフィスプレートの表面とが同時切削加工に
    よって形成されていることを特徴とするインクジェット
    記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記天板部材が樹脂から構成される請求
    項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 複数の吐出口が配設され、前記吐出口の
    配設方向に沿って、前記天板部材の熱膨張係数を制御す
    るための支持部材が前記天板部材内に設けられている請
    求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 複数の前記基板を有し、前記各基板が支
    持体上に配置され、前記天板部材が前記各基板に共通に
    設けられるとともに、前記支持部材の熱膨張係数が前記
    支持体の熱膨張係数と実質的に同等である請求項3に記
    載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記吐出エネルギ発生素子がインク吐出
    用の熱エネルギを発生する電気熱変換体である請求項1
    ないし4いずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッ
    ド。
  6. 【請求項6】 前記電気熱変換体によって印加される熱
    エネルギによりインクに生じる膜沸騰を利用して前記吐
    出口からインクを吐出させる請求項5に記載のインクジ
    ェット記録ヘッド。
  7. 【請求項7】 記録媒体の記録幅に対応する長さを有す
    るフルラインタイプの記録ヘッドである請求項1ないし
    6いずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 インクに吐出エネルギを与える吐出エネ
    ルギ発生素子がインク流路に対応して設けられた基板
    と、前記インク流路に対応する溝と前記溝の一端に連通
    してインクが吐出される吐出口が設けられるオリフィス
    プレートとを一体のものとして形成した天板部材とを有
    し、前記基板と前記天板部材とを接合させることによっ
    て前記インク流路が形成され、前記接合時において前記
    基板の端部が突き当たりかつ前記接合の方向とは異なる
    方向を向いた突き当て面が前記天板部材に形成されてい
    るインクジェット記録ヘッドの製造方法において、 前記天板部材の概形に対応する成形体を形成する第1の
    工程と、 前記成形体に対して同時切削加工を行なって、前記突き
    当て面と前記溝が形成されるインク流路溝形成面と前記
    オリフィスプレートの表面とを形成する第2の工程とを
    有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製
    造方法。
  9. 【請求項9】 前記第2の工程が同一のスピンドル軸に
    取り付けられた第1および第2の回転切削工具を使用し
    て行なわれ、前記第1の回転切削工具による正面フライ
    ス削りによって前記オリフィスプレートの表面が形成さ
    れ、前記第2の回転切削工具の正面フライス削りによっ
    て前記突き当て面が形成され、前記第2の回転切削工具
    の平フライス削りによって前記インク流路溝形成面が形
    成される請求項8に記載のインクジェット記録ヘッドの
    製造方法。
  10. 【請求項10】 前記第2の工程が第1のスピンドル軸
    に取り付けられた第1の回転切削工具と前記第1のスピ
    ンドル軸に対して直交する第2のスピンドル軸に取り付
    けられた第2の回転切削工具を使用して行なわれ、前記
    第1の回転切削工具による平フライス削りによって前記
    オリフィスプレートの表面が形成され、前記第2の回転
    切削工具の正面フライス削りによって前記突き当て面が
    形成され、前記第2の回転切削工具の平フライス削りに
    よって前記インク流路溝形成面が形成される請求項8に
    記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし7いずれか1項に記載
    のインクジェット記録ヘッドと、前記吐出エネルギ発生
    素子を駆動するための信号を前記インクジェット記録ヘ
    ッドに供給する信号供給手段を具備するインクジェット
    記録装置。
  12. 【請求項12】 前記インクジェット記録ヘッドを載置
    する載置手段をさらに備える請求項11に記載のインク
    ジェット記録装置。
  13. 【請求項13】 記録媒体と前記載置手段とを相対的に
    移動させる移動手段をさらに備える請求項12に記載の
    インクジェット記録装置。
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