JP3658153B2 - 液体噴射記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク等の記録液を吐出口から飛翔液滴として吐出させ記録媒体に付着させることによって記録を行なう液体噴射記録ヘッド製造方に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の液体噴射記録ヘッドにおいては、複数の吐出エネルギー発生素子が形成された基板と、吐出エネルギー発生素子による熱作用部を有する液流路とこの液流路に連通する吐出口と液流路に記録液を供給するための共通液室を有する天板とを接合することによって組み立てられ、吐出エネルギー発生素子に記録情報に対応した駆動信号を印加し、吐出エネルギー発生素子が設けられた液流路内の記録液に吐出エネルギーを付与することによって、記録液を微細な吐出口から飛翔液滴として吐出させて記録を行なうように構成されている。
【0003】
ところで、液体噴射記録ヘッドにおいて、2000以上のノズルのように多数の吐出口を備えた長尺のものとする場合に、液体噴射記録ヘッドを構成する樹脂製の天板部材は、共通液室と記録液を共通液室へ導入する記録液受け口および吐出口を形成する吐出口プレートを一体的に備え、射出成形等により成形加工されている。しかし、樹脂製の天板部材は、その成形加工の際に、成形時の収縮の影響を受け、反りが発生する。特に、記録液吐出方向や液流路配列方向の反りは、天板部材と基板とを組み合わせ接合する際に、押圧する部材がないために、成形時の反りがそのまま残存することとなり、記録液の吐出不良や記録液の漏れなどの原因となる。
【0004】
そこで、多数の吐出口を備えた長尺の天板部材の射出成形時に生じる記録液吐出方向や液流路配列方向の反りを樹脂成形後の2次加工である切削加工により除去するようにした技術が、本出願人による特開平7−266565号公報等に提案されている。すなわち、図10の(a)および(b)に図示するように、予め樹脂射出成形によって、共通液室51および記録液受け口58と吐出口プレート52に対応する部分を持ち、液流路溝および吐出口が形成されていない成形体50aを作製する。そして、図10において成形体50aの斜線で示す部分61および62を切削加工によって切削する。この斜線部分61および62の切削加工には、スペーサ73を介在させた2枚の円板状カッター71および72が用いられ、カッター71は吐出口プレート52の表面を加工し、カッター72は液流路に対応して吐出エネルギー発生素子が設けられた基板に突き当てるための突き当て面63と液流路溝が形成される液流路溝形成面53を加工するようにそれぞれ配設されており、吐出口プレート52の表面および突き当て面63と液流路溝形成面53は、2枚のカッター71、72による同時切削加工によって形成される。そして、液流路溝形成面53の吐出方向に対する長さは、カッター72の先端形状によって決められている。
【0005】
ところで、液流路溝形成面53に加工形成される液流路溝は、記録液の吐出特性に大きな影響を与える部分であり、記録ヘッド内における液流路溝の長さ(以下、流路長という。)は一定にすることが望ましい。しかし、上述のカッターによる同時切削加工においては、液流路溝形成面用のカッターの先端形状をフラットなものとすると、溝加工面における吐出口側の突き当て面は直線状に加工されるのに対し、溝後端部は樹脂成形による反りが残存するために、同一ヘッド内での流路長が一定しない。そのため、カッターの先端形状を変更することによって、図11に図示するように、液流路溝形成面53とその後端部の大陸だな56を同時に加工形成するようにして、流路長を一定にしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の技術は、1記録ヘッド1色の構成では非常に有効な手段であるけれども、図12に図示するように、1記録ヘッド2色以上の構成、すなわち、液流路溝55の後端部に連通する共通液室51が液流路の配列方向(X軸方向)に垂直な方向(Y軸方向)に延びる液室分離壁57によって少なくとも2以上に分離されて、2色以上の記録液を収容するように構成される記録ヘッドにおいては、液流路の配列方向(X軸方向)に沿って移動する液流路溝形成面用のカッターによって、液室分離壁57にも大陸だな56を加工してしまい、2つ以上に分離された液室が大陸だな状の段差部(以下、「大陸だな」という。)56の部分で連通することとなり、混色してしまうという問題点が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記の従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、液流路溝形成面が形成された天板に対して、液流路溝およびその後端部に液流路溝配列方向に沿った大陸だなをレーザ加工により同時に加工することによって、液流路溝形成面の後端部に反りが生じていても流路長を一定とする液流路溝を形成することができ、さらに液室分離壁を備えた1ヘッド2色以上の構成でも互いの色が混色することがない液体噴射記録ヘッド製造方法提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、記録液に吐出エネルギーを付与する複数の吐出エネルギー発生素子が液流路に対応して設けられた基板と、前記複数の液流路に対応する溝と該溝の一端に連通して記録液を吐出する吐出口が設けられる吐出口プレートとを一体的に形成した天板部材とを有し、前記基板と前記天板部材とを接合させることによって前記液流路が形成され、前記接合時に前記基板が突き当たる突き当て面が前記天板部材に形成されている液体噴射記録ヘッドの製造方法において、成型により前記溝を形成するための液流路溝形成面を有する前記天板部材を用意する工程と、前記液流路溝形成面の前記複数の液流路に対応する前記溝と、前記複数の液流路の配列方向に沿った前記溝の後端に対応する部分と、をレーザによ同時加工によって掘り込む工程とを有することを特徴とする。
【0009】
そして、本発明の液体噴射記録ヘッドにおいては、天板部材が樹脂で構成されていることが好ましく、また、溝後端で溝に連通する共通液室を、前記溝の配列方向に垂直な方向の液室分離壁により少なくとも2以上に分離されて構成されている天板部材とすることもできる。
【0010】
【作用】
板部材の液流路溝形成面の液流路に対応する溝と、該液流路の配列方向に沿った溝の後端に対応する部分と、をレーザの照射によって同時に加工することにより、配列方向のそりが生じていても、流路長が一定の液流路用の溝を加工することができ、記録液の吐出特性を良好なものとすることができ、さらに、液室分離壁を備えた1ヘッド2色以上の構成でも、互いの色が混色しない液体噴射記録ヘッドを得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1および図2は、本発明の液体噴射記録ヘッドを構成する溝付天板の加工方法を説明するための図面であり、図1の(a)および(b)は、液流路溝を加工する前の液流路溝形成面を備えた天板の断面図およびその一部分の拡大断面図であり、図2の(a)は液流路溝形成面と加工する液流路溝および大陸だな状の段差部(以下、「大陸だな」という。)の位置関係を示す一部の拡大斜視図であり、図2の(b)は液流路溝および大陸だなを加工形成した状態を示す拡大断面図である。
【0013】
先ず、液体噴射記録ヘッドを構成する溝付天板の製造について説明する。予め樹脂射出成形により、液室枠14に包囲された共通液室11や記録液受け口18などの溝付天板(10)としての機能を付加してある成形体を形成する。この場合、前述した特開平7−266565号公報に開示されているように、肉盛りされている成形体にカッターを入れて、吐出口プレート12の表面と液流路溝形成面13を同時に切削加工して形成してもよいし、あるいは樹脂成形時にそのまま使用しうるように吐出口プレート12の表面と液流路溝形成面13をある精度をもって形成してもよい。いずれにしても、図1に図示するように、吐出口および液流路用の溝である液流路溝が形成されていない状態のものが得られる。なお、図1の(a)において、19は樹脂製天板10の長手方向すなわち液流路配列方向に沿って埋め込まれたステンレス鋼製の支持部材であり、その詳細は後述する。
【0014】
成形体における液流路溝形成面13に形成される液流路溝15の長さ(すなわち、流路長)は記録液の吐出特性に大きな影響を与えるので、一定にすることが重要であり、本発明においては、図2に図示するように、液流路溝形成面13に、複数の液流路溝15と液流路溝15の後端部でその配列方向に沿って設けられる溝の後端に対応する部分である大陸だな16を、レーザマスクを用いたレーザ加工によって、同時に加工することを特徴とするものである。このように液流路溝と大陸だなに対応するレーザ透過部分を形成したレーザマスクを用いることにより、流路長をレーザマスクの液流路溝に対応するレーザ透過部分の形状によって決定することができ、たとえ成形体の液流路溝形成面の後端部に液流路溝配列方向の反りが生じていても、その反りを加味したレーザマスクを使用して、大陸だな16を介在させることにより、流路長を一定とする液流路溝を容易に加工することができる。また、図12に図示するように、液室分離壁を備えた1ヘッド2色以上の構成の記録ヘッドにおいても、大陸だなを加工する形状のカッターを用いなくても大陸だなを加工することができ、共通液室を分離する液室分離壁に大陸だなを加工するようなことはなく、分離された共通液室を連通させることがないので互いの色が混色することはない。
【0015】
図3は、上述のように、切削加工あるいは成形加工を行ない、さらに吐出口や液流路溝を形成する加工を行なって得た長尺の溝付天板の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は(b)のX−X線断面図である。図4は液体噴射記録ヘッドの主要な部品の構成を説明する図である。ここで、吐出口の密度が360dpi(25.4mm当たり360個すなわち間隔が70.5μm)、吐出口の数が3008個(印字幅212mm)である液体噴射記録ヘッドについて説明する。
【0016】
先ず、図3に図示する溝付天板10について説明するに、樹脂による成形後に吐出口プレート表面(吐出口面)と液流路溝形成面と基板接合面(突き当て面)とを同時に切削加工することによって、あるいはある精度をもった樹脂の成形によって、天板を形成する。そして、吐出口プレート表面に、オリフィス周縁部がインクによって濡れることにより吐出性能が低下することを防ぐために、撥水性の被膜を形成する。その後、上述したように、エキシマレーザによって液流路溝形成面を掘り込むことによって、後述する基板100の各吐出エネルギー発生素子101に対応した液流路溝15と大陸だな16を同時に形成する(図2の(b)参照)。このレーザビームによる加工は、レーザマスクを使用し、基板100の単位と同様に128流路単位で加工をくり返すことによって行なわれる。液流路溝加工後、各液流路溝の一端の吐出口プレート12の裏面側より、液流路溝と同様に128単位で、レーザマスクを用いてレーザビームにより吐出口(オリフィス)17を穿孔加工する。このようにして溝付天板10が最終的に完成する。
【0017】
吐出口が3008個であるから、少なくとも吐出エネルギー発生素子は3008個必要であるが、ここでは、図4に示すように、吐出エネルギー発生素子101をそれぞれ128個ずつ有する基板(ヒータボード)100を複数枚用意して一直線上に配列することにより、所定の数の吐出エネルギー発生素子が確保されるようにした。各基板100は、それぞれ、吐出エネルギー発生素子101が所定の位置に360dpiの密度にて128個設けられ、さらに、外部からの電気信号により任意のタイミングで吐出エネルギー発生素子101を駆動させるための信号や駆動のための電力などを供給するパッド102を有している。各基板100は、ステンレス鋼で作られたベースプレート(支持体)300の表面上に配置され、接着剤にて接着固定されている。
【0018】
図5は、基板100を並べた状態の詳細図である。各基板100は、ベースプレート300の所定の場所に、所定の厚さで塗布された接着剤301によって接着固定されている。この際、隣接する2つの基板100間において、一方の基板上にあって他方の基板に最も近い吐出エネルギー発生素子と、他方の基板上にあって一方の基板に最も近い吐出エネルギー発生素子と間のピッチは、各基板100上での吐出エネルギー発生素子101のピッチP(=70.5μm)と同一にする。したがって、基板100が20数個設けられていたとしても、これら基板100全体を通して吐出エネルギー発生素子101は同一のピッチPで配設されていることになる。この際、隣接する基板100間に隙間が生じるが、この隙間は封止剤302にて封止される。
【0019】
吐出エネルギー発生素子101としては、具体的には、記録信号に応じて通電することにより発熱する電気熱変換体が使用される。吐出エネルギー発生素子101は、シリコン基板である基板100に対し、半導体デバイス製造技術を用いて形成される。そして、通電によって吐出エネルギー発生素子101が発熱した場合、この吐出エネルギー発生素子に対応する液流路内の記録液が加熱されて発泡し、その発泡のエネルギーによって液流路内の記録液が吐出口から液滴として吐出されることになる。この発泡は、好ましくは膜沸騰によるものである。吐出エネルギー発生素子101としては、圧電素子からなるものなども使用することができる。
【0020】
図4に戻って、ベースプレート300には、配線基板200も接着貼付されている。配線基板200は、各基板100に対して信号や電力を供給するためのものであり、基板100上のパッド102と配線基板200上に設けられた信号・電力供給パッド202とが所定の位置関係となるように、配線基板200は配置されている。配線基板200の基板100側でない端部には、外部から印字信号や駆動電力が供給されるコネクタ201が設けられている。
【0021】
図3に図示する溝付天板10は、基板100に設けられた吐出エネルギー発生素子101に対応して設けられた液流路溝15、各液流路溝15に対応し記録液を記録媒体に向けて吐出させるための当該液流路溝15に連通した吐出口(オリフィス)17、各液流路溝15に対して記録液を供給するために各液流路溝に連通した液室11、液室11に対して記録液タンク(図示せず)から供給された記録液を流入させるための記録液受け口18といった構成要素が一体的に設けられた構成となっている。溝付天板10は、当然のことながら、基板100を複数並べて設けられた吐出エネルギー発生素子列をほぼ覆い被さるような長さを有している。そして、図4および図6に示されるように、溝付天板10は、その液流路溝15とベースプレート300上に並べられた基板100上の吐出エネルギー発生素子101との位置関係が所定の位置関係になるように、ベースプレート300側に結合させる。この結合の方法としては、図7に図示するように、ばね400とばね400を保持するばねホルダー410とによって機械的に押え込む方法や、接着剤によって固定する方法や、これらの方法を併用する方法など、各種の方法がある。
【0022】
溝付天板10を構成する材料としては、液流路溝や吐出口を設けるため、正確に溝や吐出口を形成できる樹脂が好ましく、さらに機械的強度、寸法安定性、耐インク性に優れたものであることが望ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ジグリコールジアルキルカーボネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等が望ましく、特にポリサルフォンやポリエーテルサルフォン等の樹脂がその成型性、耐液性等の観点から望ましい。
【0023】
溝付天板10を樹脂で構成した場合、その線熱膨張係数は1×10-5/℃から1×10-4/℃程度である。ここではポリサルフォン(線熱膨張係数56×1×10-6/℃)を用いるものとして説明する。一方、基板である基板100はシリコン基板で構成されており、その線熱膨張係数は2.4×10-6/℃である。また、基板100を配列するベースプレート300はステンレス鋼製であり、その線熱膨張係数は17.3×10-6/℃である。ここで、記録ヘッドの組み立てが25℃近傍の温度で行なわれたものとする。組み立てた記録ヘッドがその動作時において温度が上昇して60℃程度になることは、十分にあり得る。そのため、上述したままの構成では、ここで25℃で精度良く組み立てられたものとして、膨張係数の差による60℃でのずれを計算すると、
3008ノズル×0.0705(ピッチ)×(60−25)×(56×10-5−17.3×10-5
=0.287 mm
となる。すなわち、0.287mmのずれが生じ、これは、吐出口4個分の大きさであって、このようなずれが生じるのでは、液体噴射記録ヘッドとしてとても実用になり得るものでない。そこで溝付天板10には、図1および図3に示されるように、溝付天板10の熱膨張率を規制するための支持部材19が、溝付天板10の長手方向すなわち液流路配列方向に沿って、溝付天板10の樹脂の中に設けられて、その両端部は溝付天板10の本体部分から突出している。ここで、支持部材19は、ベースプレート300と同じステンレス鋼製の円柱体またはパイプであり、支持部材19に液室11と連通する穴を予め加工しておき、支持部材19を介して記録液受け口と液室11と連通させる。また、パイプを用いる場合には、溝付天板10の本体部分から突出する両端部をインクの供給口とすることができる。なお、支持部材19の表面には、ブラスト加工やローレット加工といった表面加工が施されており、これによって支持部材19と溝付天板10の樹脂との密着度が向上するようになっている。支持部材19と溝付天板10を構成する樹脂との機械的強度(弾性係数など)の関係から、溝付天板10全体としての線熱膨張係数は、ステンレス鋼の線熱膨張係数と一致する。こうすることにより、溝付天板10とベースプレート300は同一の熱膨張係数を持つことになって、温度上昇に伴なうずれが全く生じなくなる。
【0024】
シリコン基板からなる基板100と、ベースプレート300や溝付天板10との間にも熱膨張差が生じる。しかし、基板100が128ドット単位に分割されていることから、この熱膨張差は無視し得るものである。すなわち、上述と同様に25℃と60℃との間での熱膨張差を計算すると、
128 ×0.0705×(60−25)×(17.3×10-6−2.4 ×10-6
= 0.005
となる。これは基板100の両端の吐出エネルギー発生素子と、溝付天板10側の吐出口や液流路とのずれが、0.005/2=0.0025mm、すなわち2.5μmとなることを示している。この2.5μmという値は、ピッチP=70.5μmと比較するとわずかであり、液体噴射記録ヘッドの吐出性能になんらの影響を与えないものである。
【0025】
次に、液体噴射記録ヘッドおよび液体噴射記録装置について、図8および図9を用いてさらに詳しく説明する。今まで説明してきたように、吐出エネルギー発生素子が作り込まれた基板をガラス、シリコン、セラミックス、金属等からなるベースプレートの上に複数個精度良く配置接着したものに対し、吐出口および液流路溝が作り込まれた溝付天板を接合することによって、液流路が形成され、液体噴射記録ヘッドが作製される。このように作製された液体噴射記録ヘッドを適用した液体噴射記録ヘッドカートリッジは、液体噴射記録装置に対して着脱可能に取り付けられるものであって、液体噴射記録ヘッドと、その液体噴射記録ヘッドに供給するための記録液を貯蔵する記録液タンクとが一体的に形成される。
【0026】
図8は、記録媒体の記録幅に対応した幅を有するいわゆるフルラインタイプの液体噴射記録ヘッドおよびその液体噴射記録ヘッドを使用した液体噴射記録装置の模式的概略説明図を示している。フルラインタイプの液体噴射記録ヘッドは、その性質上、吐出口の数が多数であって、本発明の効果が最も顕著に現れるものである。この記録装置では、フルラインタイプの液体噴射記録ヘッド600は、記録媒体搬送ローラ700によって搬送される紙や布等の記録媒体800に対向して配置されている。そして、記録媒体800を搬送しながら、フルラインタイプの液体噴射記録ヘッド600から記録信号に応じて記録液を記録媒体800に向けて吐出することにより、長尺の記録媒体800に記録がなされる。本発明の場合、吐出エネルギー発生素子を設けた基板を複数個並べることで液体噴射記録ヘッドを製造するので、フルラインタイプの記録ヘッドのような長尺の液体噴射記録ヘッドでも容易に製造することができる。
【0027】
図9は、カートリッジタイプの液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置を示している。この記録装置では、記録液タンク部1001と液体噴射記録ヘッド部1002とが一体化され、記録装置本体に対して着脱自在な液体噴射記録ヘッドカートリッジが使用されている。液体噴射記録ヘッドカートリッジは、図示矢印方向に往復移動可能なキャリッジ1010上に搭載されている。また、記録媒体800を搬送するための搬送ローラやこのキャリッジ1010を駆動する駆動源としてのモータ1003、駆動源からの動力をキャリッジ1010に伝えるためのキャリッジ軸1004等が設けられている。さらに、液体噴射記録ヘッド部1002に対してインクを吐出するための信号を供給する信号供給手段(不図示)が設けられている。
【0028】
また、本発明によって製造された液体噴射記録ヘッドは、特にインクジェット記録方式の中で熱エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記録を行なうインクジェット記録方式において優れた効果をもたらすものである。
【0029】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されており、本発明による記録ヘッドはこれらの基本的な原理を用いて行なうものが好ましい。この記録方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。
【0030】
この記録方式を簡単に説明すると、記録液(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換素子に、記録情報に対応して記録液に核沸騰現象を越え、膜沸騰現象を生じる様な急速な温度上昇を与えるための少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせる。このように記録液から電気熱変換素子に付与する駆動信号に一対一的に対応した気泡を形成できるため、特にオンデマンド型の記録法には有効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介して記録液を吐出させて、少なくとも一つの液滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた記録液の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行なうことができる。
【0031】
また、本発明によって製造された液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置に、記録ヘッドに対する回復手段や予備的な補助手段を付加することは、記録装置を一層安定にすることができるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換素子あるいはこれとは別の加熱素子、あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出モード手段を付加することも安定した記録を行なうために有効である。
【0032】
以上、本発明によって製造された液体噴射記録ヘッドが使用される液体噴射記録装置について、単色のインクを吐出する液体噴射記録ヘッドを1個のみ搭載する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、複数色のインクのそれぞれに対応した複数個の液体噴射記録ヘッド、あるいは複数色のインクをそれぞれの液室に収容した1個の液体噴射記録ヘッドを搭載するカラー記録装置に対して本発明の液体噴射記録ヘッドを使用することは、当然である。さらに加えて、以上説明した実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液化するものを用いてもよく、あるいは液体噴射方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよい。加えて、放置状態で固化し、加熱によって液化するインクを用いても良い。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、吐出口や液流路用の溝が形成されていない天板部材に、液流路用の溝と大陸だなをレーザの照射によって同時に加工することで、液室分離壁を備えた1ヘッド2色以上の構成でも、互いの色が混色しない液体噴射記録ヘッドを得ることができ、さらに、大陸だな後端の成形面にノズル列方向のそりが生じていても、流路長が一定な液流路溝を加工することができる。
【0034】
また、本発明によれば、多数の例えば2000個以上にもおよぶ吐出口を有する液体噴射記録ヘッドが容易に構成できる。したがって本発明は、記録媒体の記録幅に対応する長さを有するフルラインタイプの液体噴射記録ヘッドに適用することにより、特に顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の液体噴射記録ヘッドを構成する天板を示す図であり、(a)は液流路溝を加工する前の液流路溝形成面を備えた天板の断面図であり、(b)はその一部分の拡大断面図である。
【図2】 本発明の液体噴射記録ヘッドを構成する天板を示す図であり、(a)は液流路溝形成面と加工する液流路溝および大陸だなの位置関係を示す天板の一部の拡大斜視図であり、(b)は液流路溝および大陸だなを加工形成した状態を示す拡大断面図である。
【図3】 長尺の溝付天板の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は(b)のX−X線断面図である。
【図4】 液体噴射記録ヘッドの主要な部品の構成を説明する図である。
【図5】 吐出エネルギー発生素子を有する基板をベースプレート上に配列した状態の詳細図である。
【図6】 ベースプレート、基板および溝付天板の位置関係を示す模式図である。
【図7】 液体噴射記録ヘッドの構成を示す模式的斜視図である。
【図8】 本発明のフルラインタイプの液体噴射記録ヘッドを適用した液体噴射記録装置の概念的構成を示す斜視図である。
【図9】 本発明によって製造された液体噴射記録ヘッドを適用した液体噴射記録装置の概念的構成を示す斜視図である。
【図10】 天板成形体における吐出口プレート面と液流路溝形成面をカッターによる同時切削加工により形成する従来の加工態様を示す図であり、(a)はその斜視図であり、(b)は模式的側面図である。
【図11】 (a)は従来のカッターによる同時切削加工により液流路溝形成面と大陸だなを同時に加工した際の天板の状態を示す断面図であり、(b)はその一部分の拡大断面図である。
【図12】 液室分離壁により複数の共通液室に分離した天板において、液流路溝形成面と大陸だなを従来のカッターにより同時に加工する際の天板の状態を示す模式的な拡大斜視図である。
【符号の説明】
10 (溝付)天板
11 共通液室
12 吐出口プレート
13 液流路溝形成面
14 液室枠
15 液流路溝
16 大陸だな
17 吐出口
19 支持部材
100 基板
101 吐出エネルギー発生素子
200 配線基板
300 ベースプレート
600 フルラインタイプの液体噴射記録ヘッド
1002 液体噴射記録ヘッド部
1010 キャリッジ

Claims (3)

  1. 記録液に吐出エネルギーを付与する複数の吐出エネルギー発生素子が液流路に対応して設けられた基板と、前記複数の液流路に対応する溝と該溝の一端に連通して記録液を吐出する吐出口が設けられる吐出口プレートとを一体的に形成した天板部材とを有し、前記基板と前記天板部材とを接合させることによって前記液流路が形成され、前記接合時に前記基板が突き当たる突き当て面が前記天板部材に形成されている液体噴射記録ヘッドの製造方法において、
    成型により前記溝を形成するための液流路溝形成面を有する前記天板部材を用意する工程と、
    前記液流路溝形成面の前記複数の液流路に対応する前記溝と、前記複数の液流路の配列方向に沿った前記溝の後端に対応する部分と、をレーザによ同時加工によって掘り込む工程とを有することを特徴とする液体噴射記録ヘッドの製造方法
  2. 天板部材が樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法
  3. 天板部材において、溝後端で溝に連通する共通液室が、前記溝の配列方向に垂直な方向の液室分離壁により少なくとも2以上に分離されて構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法
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