JPH0725060Y2 - 矯正患者用歯ブラシ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、歯並びの矯正治療を受
けている患者が使用する歯ブラシに関する。

【０００２】

【従来の技術】歯並びの悪さは、虫歯の発生原因となる
ばかりか美観上の問題ともなることから、歯並びの矯正
治療を行うことが薦められている。従来はこのような治
療には矯正帯環が用いられてきたが、最近では帯環を用
いず直接歯牙面にブラッケットを接着する方法が多用さ
れている。この装置は図６及び図７に示すように、歯面
ｃに固定した側面視Ｔ字型のブラッケットａにワイヤｂ
を連結して構成されている。このような装置を装着した
歯列は、ワイヤｂやブラッケットａが邪魔となることか
ら、一般の４列歯ブラシでは磨きにくく、この為、従来
より矯正患者用の歯ブラシなるものが市販されている。

【０００３】従来の矯正患者用歯ブラシは大きく２つの
タイプに類別され、１つは図８に示す如く３列植毛で且
つブラッケットを跨ぐべく、植毛部ｈの先端を逆アーチ
状にカットしたタイプであり、他は図９に示す如く植毛
部ｈの先端をブラッケットと歯面間に位置づけ可能とな
るように２列植毛となし且つ植毛先端面をストレートカ
ットしたタイプである。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】前記２タイプの矯正患
者用歯ブラシは一般歯ブラシに比べれば矯正患者にとっ
て使い易いものの、矯正患者用歯ブラシとしては充分な
ものとはいえなかった。即ち、矯正患者用歯ブラシに要
求される特別な機能としては、ブラッケットと歯面間
の清掃が可能なこと。歯間の清掃がワイヤに邪魔され
ることなく行えること。ブラッケットに邪魔されるこ
となく歯と歯茎の境界が磨けることが重要であるが、前
記した２タイプの従来歯ブラシではこれら全てを満足す
ることはできなかった。即ち、３列植毛の歯ブラシを用
いた場合は、図10（イ）に示すようにブラッケットａと
歯面ｃ間を清掃しようとしても、植毛先端面の横幅が広
すぎることから植毛部が先割れを起こし、ブラッケット
ａと歯面ｃ間を清掃することが困難である。又、図10
（ロ）に示すように歯ｅと歯茎ｆの境界を清掃しようと
したときには、植毛先端面が幅広であることから植毛先
端面中央が対象部位から浮き上がる傾向があるうえに、
該歯ブラシは植毛先端形状が逆アーチ型となっているこ
とから、植毛先端面中央を歯ｅと歯茎ｆの境界部に接触
させることは極めて困難である。又、２列植毛の歯ブラ
シでは、植毛先端面幅が狭いことから、ブラッケットａ
と歯面ｃ間の清掃や歯ｅと歯茎ｆの境界を磨くことはで
きるものの、植毛本数が少ない為、植毛部が早期にへた
りやすく、歯ブラシとしての耐久性が低いという問題が
あり、又、如何に２列で植毛先端面が幅狭であるからと
いっても、この幅は歯間を清掃するには広すぎる結果、
歯間に毛束を到達させることはできず、図11においてＰ
として示される歯間部分の清掃が不充分となる問題があ
る。

【０００５】本考案はかかる現況に鑑みてなされたもの
であり、ブラッケットと歯面間の清掃が可能であるとと
もに歯間の清掃がワイヤに邪魔されることなく行なうこ
とができ、且つ歯と歯茎の境界がブラッケットに邪魔さ
れることなく磨くことが可能で、しかも長期間の使用に
も毛先がへたることが少ない耐久性に優れた矯正患者用
歯ブラシを提供せんとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】かかる課題を解決した本
考案の矯正患者用歯ブラシは、植毛台の長手方向に沿っ
て２列の植毛穴列が形成され、植毛台最先端位置には前
記植毛穴よりも大径の植毛穴が１穴設けられてなること
を特徴としている。

【０００７】２列の植毛穴列に毛束を植設して構成され
る２列植毛部の先端幅は２mm〜４mmとすることが好まし
く、又、該２列植毛部を構成する植毛穴のそれぞれを、
相対する植毛穴に向かって傾斜させて、２列植毛部を斜
め植毛となすことが好ましい。又、相対する植毛穴の穴
間ピッチは2.2 mm〜2.8 mmとなし、且つ植毛穴の傾斜角
度は 2.0°〜 5.0°の範囲に設定することが望まれる。
更に、最先端１穴の直径はφ2.0 mm〜φ2.5 mmの範囲と
なし、且つ後部２列の植毛穴の直径はφ1.6 mm〜φ1.8
mmの範囲に設定することが望ましく、又、毛丈長さは9.
0 mm〜10.0mmの範囲に設定することが最適である。

【０００８】

【作用】このような構成の歯ブラシは、２列植毛部を歯
面のブラッシングに用いるとともに、該２列植毛部をブ
ラッケットと歯面間に押入れて摺動させることにより該
部分に堆積した食物残滓等や歯垢を刷掃除去することが
でき、又、２列植毛部先端を歯と歯茎の境界に位置づけ
て摺動させれば該境界に堆積した歯垢を除去することが
できる。２列植毛部の先端幅は狭いことから前記各部位
への位置づけは容易である。２列植毛部を斜め植毛とし
たときには、植毛先端部の植毛密度が上がってブラッシ
ング圧が強化され、且つ毛先の広がり防止も有効になさ
れて歯ブラシの耐久性が向上する。又、植毛部先端が傾
斜していることで狭所への位置づけも容易となる。

【０００９】

【実施例】次に本考案の詳細を図示した実施例にもとづ
き説明する。図１は本考案にかかる矯正患者用歯ブラシ
の１実施例の全体概要を示し、本歯ブラシは植毛部１と
ハンドル２とよりなる歯ブラシにおいて、植毛部１の構
成を特定のものとしたことを特徴としている。

【００１０】植毛部１は植毛穴を開設した植毛台３に毛
束４を植設して構成されるが、本考案は図２（イ）に示
す如く、植毛台３の長さ方向にわたって通常サイズの植
毛穴５，５，…が２列縦設され、且つ植毛台３の最先端
位置における幅方向中央に、他の植毛穴５，５，…に比
べて大径となした植毛穴（以下、大径穴６と称す）が１
穴開設されている。図例のものでは植毛穴５，５，…は
７行にわたって縦設されているが、歯面を有効に刷掃で
きる範囲であれば増減させることも任意である。又、２
列の植毛穴５，５，…に毛束を植設して構成される２列
植毛部の先端幅ｄは２mm〜４mmの範囲に設定することが
好ましく、先端面は図例の如くストレートカットするこ
とが好ましい。植毛列を２列としたのは、矯正患者用歯
ブラシはワイヤを避けて歯面を刷掃する必要があること
から植毛部を幅狭とする必要がある為である。又、先端
幅を２mm〜４mmに設定するのは、図７に示すようにブラ
ッケットａと歯面ｃ間に形成される間隙ｓが３mm程度で
あることを考慮したものであり、４mm以上では毛先が前
記間隙ｓに入りきらず毛先がばらける為であり、又、２
mm以下では毛先が狭すぎて毛先が余裕をもって間隙ｓ内
に挿入されることから、当該間隙ｓ内の刷掃が不充分と
なる為である。間隙ｓ内の清掃は、間隙サイズに略一致
した幅の毛束をやや無理をして押し入れたうえ摺動させ
たときに最も効果的となることから、植毛部の先端幅は
2.5 mm〜3.5 mmの範囲に設定することが特に好ましい。

【００１１】又、２列植毛部の植毛穴５，５，…は図２
（ロ）に示す如く、植設する毛束４が斜め植毛となるよ
うに、それぞれ相対する植毛穴に向かって傾斜させてい
る。そして相対する植毛穴５，５，…の穴間ピッチｇは
2.2 mm〜2.8 mmの範囲に設定し、且つ植毛穴５，５，…
の傾斜角度を 2.0°〜 5.0°の範囲に設定することが好
ましい。穴間ピッチｇを2.2 mm〜2.8 mmの範囲に設定し
たのは、2.2 mm以下では植毛台２の機械的強度が低下す
る為であり、他方、2.8 mm以上では植毛部の幅を細くで
きない為である。このように毛束４を傾斜させることに
よってブラッシング圧を高めることができる。矯正患者
用歯ブラシはワイヤを避けて歯面を刷掃することから植
毛部を幅狭とする必要があり、この為、本歯ブラシでは
２列植毛を採用しているものの、２列では植毛本数が少
ないことからブラッシング圧が不充分となる。本歯ブラ
シは毛束４を傾斜させることによって、植毛部先端面の
植毛密度を高め２列植毛でも充分なブラッシング圧が発
揮できるようにした。又、毛束４の傾斜は、植毛部先端
がばらけることを抑止して歯ブラシの耐久性を向上させ
ることにも寄与する。そして傾斜角度を 2.0°〜 5.0°
の範囲内としたのは、 2.0°以下であれば、植毛密度の
増加が不充分でブラッシング圧も不充分であり、他方
5.0°以上であるとフィラメントが寝た状態となって、
この場合もブラッシング圧が不充分となる為である。

【００１２】又、大径穴６の直径はφ2.0 mm〜φ2.5 mm
の範囲となし、且つ２列植毛部を構成する各植毛穴５，
５，…の直径はφ1.6 mm〜φ1.8 mmの範囲に設定するこ
とが好ましい。植毛台最先端に１穴の大径穴６を設けた
のは、２列植毛部では太すぎて清掃困難な歯間の清掃を
可能にする為であり、大径穴６に植設された毛束を用い
てつま先磨きをすることにより、歯間の清掃を可能にせ
んとしたものである。又、植毛台先端部は大径穴６が１
穴であることに対応して先細に形成され、口腔内の狭い
空間への挿入と該部分におけるつま先磨きを容易にして
いる。又、先端に形成する１穴を他の植毛穴に比べて大
径としたのは、通常大の植毛穴１穴ではブラッシング圧
が不足して歯垢除去効果が不充分であるうえに、毛束を
構成する各フィラメントに過剰なブラッシング圧がかか
って耐久性が低下することが懸念されるからである。そ
して大径穴６の直径がφ2.0 mm以下では上記問題が顕在
化し、他方、直径がφ2.5 mm以上では歯間への位置づけ
が困難となることから、大径穴６の直径はφ2.0 mm〜φ
2.5 mmの範囲に設定することが望まれる。又、２列植毛
部を構成する各植毛穴５，５，…の直径をφ1.6 mm〜φ
1.8 mmの範囲に設定したのは、φ1.8 mm以上であると２
列植毛部の先端面を歯と歯茎の境界に位置づけることが
困難となるうえに植毛台の機械的強度が低下して耐久性
に問題が生じる為であり、他方、直径をφ1.6 mm以下と
すると植毛本数が少なくなることから毛束に腰がなくな
ってブラッシング効果が著しく低下する為である。又、
毛丈長さは9.0 mm以下であると歯間や歯と歯茎の境界を
清掃することがやや困難となり、他方、10.0mm以上であ
ると、毛腰がなくなってブラッシング圧が低下すること
から、9.0 mm〜10.0mmの範囲に設定することが好まし
い。

【００１３】以上、述べた実施例では２列植毛部を構成
する各植毛穴５，５，…に植設された各毛束４は相対す
る毛束と毛束先端角部で接触した構成となっているが、
図３（イ）に示す如く、毛束４を先端部において互いに
重なり合わせたり、図３（ロ）に示す如く毛束先端を非
接触とすることも可能である。特に毛束先端を重なり合
わせたときには、互いの毛束が補強し合って毛腰を強め
合い、ブラッシング圧を大幅に高めることができる。

【００１４】又、前述した実施例では植毛部先端はスト
レートカットすることとしたが、図４（イ）に示す如く
円弧状にカットしたり、図４（ロ）に示す如く山型カッ
トとすることも適宜採用される。

【００１５】このような構成の本矯正患者用歯ブラシ
は、幅狭となした２列植毛部を用いてワイヤを避けて歯
面を刷掃できることは勿論のこと、図５（イ）に示す如
くブラッケットａと歯面ｃ間の間隙に毛束を挿入して該
部分を刷掃することができ、更に図５（ロ）に示す如く
歯ｅと歯茎ｆの境界の窪みも効果的に刷掃することがで
きる。又、植毛台最先端に開設した１穴の大径穴６に植
設された毛束を用いれば、つま先磨きによって歯間を清
掃することが可能である。そして大径穴であることから
該大径穴に植設される毛束の植毛本数は多く、充分なブ
ラッシング圧が発揮できるとともに耐久性も優れたもの
とすることができる。

【００１６】

【考案の効果】本考案の矯正患者用歯ブラシは、植毛台
の長手方向に沿って２列の植毛穴列を形成し、植毛台最
先端位置には前記植毛穴よりも大径の植毛穴を１穴設け
た構成トしているので、２列植毛部を用いることによっ
て、ワイヤを回避しながら歯面を刷掃することが可能で
あり、又、２列植毛部をブラッケットと歯面との間隙に
挿入して該部分を刷掃することができ、更に２列植毛部
により歯と歯茎の境界の窪みもブラッケットに邪魔され
ることなく清掃することができる。又、植毛台先端に開
設された１穴の大径穴に植設された毛束を用いれば、ワ
イヤに邪魔されることなく歯間をつま先磨きで清掃する
ことができる。大径穴に植設される毛束の植毛本数は普
通より多いので、ブラッシング圧も充分であり耐久性に
も優れている。又、大径穴は１穴であることから植毛台
の形状もこれに合わせて先細とすることが可能であり、
口腔内の狭い場所へも容易に位置づけることができる。

【００１７】２列植毛部の先端幅を２mm〜４mmとなした
ときには、毛束をブラッケットと歯面間に容易に挿入す
ることができるとともに、挿入した毛束側面を歯面及び
ブラッケット内面に押圧状態で接触させることができる
ので、これら部分に付着した食物残滓や歯垢を効果的に
掻き落とすことができる。

【００１８】２列植毛部を構成する各植毛穴を、相対す
る植毛穴に向かって傾斜させて２列植毛部を斜め植毛と
した場合は、ブラッケットと歯面との間隙や歯と歯茎と
の境界部に２列植毛部の先端面を位置づけることが容易
となるとともに、植毛部先端面の植毛密度を高めること
が可能となり、２列植毛でも充分なブラッシング圧を得
ることができる。又、毛束が傾斜することにより、毛先
が外方へ開くことも抑止できるので、歯ブラシの耐久性
を高めることもできる。

【００１９】又、２列植毛部における相対する植毛穴の
穴間ピッチを2.2 mm〜2.8 mmとなし、且つ植毛穴の傾斜
角度を 2.0°〜 5.0°の範囲に設定したときは、植毛台
の機械的強度を低下させることなく、ブラッシング圧を
充分なものとすることができる。

【００２０】最先端１穴の大径穴の直径がφ2.0 mm〜φ
2.5 mmの範囲であり、且つ２列植毛部の各植毛穴の直径
をφ1.6 mm〜φ1.8 mmの範囲に設定したときには、大径
穴に植設される毛束は歯間への位置づけが容易でありな
がら充分なブラッシング圧も発揮でき、又、２列植毛部
は歯と歯茎の境界への位置づけを容易となしながら充分
なブラッシング圧を発揮できる。

【００２１】更に、毛丈長さを9.0 mm〜10.0mmの範囲に
設定したときには、毛束先端を充分なブラッシング圧を
維持しながら歯間や歯と歯茎の境界に容易に位置づける
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の矯正患者用歯ブラシの１実施例の全
体概要を示す平面図

【図２】（イ）は同実施例における植毛台の詳細を示す
要部拡大図、（ロ）は同植毛台に毛束を植設した状態を
示す断面説明図

【図３】（イ),（ロ）は本考案の矯正患者用歯ブラシの
他の実施例を示す断面説明図

【図４】（イ),（ロ）は本考案の矯正患者用歯ブラシの
他の実施例を示す断面説明図

【図５】（イ）は本考案の矯正患者用歯ブラシを用いて
ブラッケットと歯面間をブラッシングしている様子を示
す説明図、（ロ）は同歯ブラシを用いて歯と歯茎の境を
ブラッシングしている様子を示す説明図

【図６】矯正装置を装着した状態を示す説明図

【図７】歯へのブラッケットの取付け状態を示す説明図

【図８】（イ）は従来の矯正患者用歯ブラシの正面図、
（ロ）は同歯ブラシの側面図

【図９】（イ）は従来の矯正患者用歯ブラシの正面図、
（ロ）は同歯ブラシの側面図

【図10】（イ),（ロ）は従来の矯正患者用歯ブラシを用
いてブラッシングしている状態を示す説明図

【図11】矯正帯環を装着した状態を示す説明図

【符号の説明】

１ 植毛部 ２ ハンドル ３ 植毛台 ４ 毛束 ５ 植毛穴 ６ 大径穴

Claims (6)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】植毛台の長手方向に沿って２列の植毛穴列
   が形成され、植毛台最先端位置には前記植毛穴よりも大
   径の植毛穴が１穴設けられてなる矯正患者用歯ブラシ。
2. 【請求項２】２列植毛部の先端幅を２mm〜４mmとなした
   請求項１記載の矯正患者用歯ブラシ。
3. 【請求項３】２列植毛部の各植毛穴に植設する毛束が斜
   め植毛となるように植毛穴のそれぞれを、相対する植毛
   穴に向かって傾斜させてなる請求項１又は２記載の矯正
   患者用歯ブラシ。
4. 【請求項４】相対する植毛穴の穴間ピッチを2.2 mm〜2.
   8 mmとなし、且つ植毛穴の傾斜角度を 2.0°〜 5.0°の
   範囲に設定してなる請求項３記載の矯正患者用歯ブラ
   シ。
5. 【請求項５】最先端に形成した大径穴の直径がφ2.0 mm
   〜φ2.5mmの範囲であり、且つ２列植毛部の各植毛穴の
   直径をφ1.6 mm〜φ1.8 mmの範囲に設定してなる請求項
   ３又は４記載の矯正患者用歯ブラシ。
6. 【請求項６】毛丈長さを9.0 mm〜10.0mmの範囲に設定し
   てなる請求項１，２，３，４又は５記載の矯正患者用歯
   ブラシ。