JPH07243119A - ポリオレフィン繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリオレフィン繊維及びその製造方法

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JPH07243119A
JPH07243119A JP3609694A JP3609694A JPH07243119A JP H07243119 A JPH07243119 A JP H07243119A JP 3609694 A JP3609694 A JP 3609694A JP 3609694 A JP3609694 A JP 3609694A JP H07243119 A JPH07243119 A JP H07243119A
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JP
Japan
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fiber
polyolefin
present
micropores
metal salt
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Application number
JP3609694A
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English (en)
Inventor
Jun Kamo
純 加茂
Michiharu Uenishi
理玄 上西
Takayuki Hirai
孝之 平井
Atsushi Okumura
淳 奥村
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 複合材料のマトリックスとの接着性に優れた
高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維を提供する。 【構成】 95〜99重量%のポリオレフィンと1〜5
重量%の炭素数が10以上の脂肪酸の金属塩から構成さ
れ、繊維表面に平均孔径0.01〜2μm、開孔率20
〜90%の多数の微孔が存在し、3%以上の破断伸度、
0.8GPa以上の引張り強度及び10GPa以上の引
張り弾性率、繊維直径1〜500μmを有するポリオレ
フィン繊維であり、該繊維は、メルトフローインデック
ス0.05〜30.0のポリオレフィンと炭素数が10
以上の脂肪酸の金属塩を混練後、溶融紡糸し、得られた
未延伸繊維をアニール処理した後、熱延伸時の変形速度
が1分あたり30%を越える1段以上の熱延伸を総延伸
量で300%以上に熱延伸することによって得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度、高弾性率ポリ
オレフィン繊維及びその製造方法に関する。さらに詳し
くは、マトリックスとの接着性に優れた樹脂複合材料、
セメント複合材料等の複合材料補強用の高強度、高弾性
率ポリオレフィン繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂複合材料、セメント複合材料等の補
強用繊維としては、アラミド繊維、高強力ポリエチレン
繊維等の有機高分子系補強用繊維、ガラス繊維、炭素繊
維、ウィスカー繊維等の無機系補強用繊維がある。この
うち有機高分子系補強用繊維は、無機系補強用繊維に比
べて、低密度であり、複合材料の軽量化が可能である点
において優れている。ポリプロピレン繊維も、ポリエチ
レン繊維と共に汎用素材として知られ、またポリエチレ
ン繊維に比べ耐熱性に優れていることから、高強度、高
弾性率とするならば、有機高分子系補強用繊維として用
い得る繊維である。
【0003】高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維につ
いては、例えば、次に示す(I),(II)のような製造
方法が提案されている。 (I) ジャーナル アプライド ポリマー サイエン
ス(Journal Applied Polymer
Science)Vol.28、P.179〜189
(1983)に、ポリエチレン、またはポリプロピレン
を、ノズルから溶融押し出し適切なドラフト比で巻取り
ながら冷却し高配向結晶性の未延伸糸とし、この未延伸
糸を熱延伸してラメラ結晶内の分子鎖の折りたたみを解
きほぐし分子鎖が繊維軸方向に伸長された繊維とするこ
とにより、引張り強度0.76GPa(ギガパスカル)
及び引張り弾性率17.2GPaのポリプロピレン繊維
が得られることが報告されている。
【0004】(II) ポリマー コミュニケーション
(Polymer Communications)V
ol.25、P39−42(1984)には、超高分子
量のポリエチレンまたはポリプロピレンをデカリンに溶
解させ、0.5〜2.0重量%のポリマー溶液から溶剤
を多量に含むゲル糸を作製し、このゲル糸を延伸し、繊
維軸方向に分子鎖が伸長された繊維集合体を製造するこ
とによって、高強度、高弾性率のポリオレフィン繊維を
得ることが報告されている。ポリプロピレンの場合、繊
維軸方向の引張弾性率36.0GPa、引張強度1.0
3GPaの性能が得られ、ポリエチレンの場合は、繊維
軸方向の引張弾性率18〜40GPa、引張強度0.8
〜2GPaの性能が得らを得ること報告されている。
【0005】しかしながら、ポリオレフィン繊維は、複
合材料におけるマトリックスとの接着性が一般に不良で
あり、接着性を改良する方法として代表的なものとして
次の〜が提案されている。 ポリプロピレンに石膏針状結晶繊維を混ぜ、溶融紡
糸、延伸し繊維表面に石膏を突き出させる。(特公昭5
7−8790号公報) マトリックスとして補強用繊維より低融点のポリマー
を使用し、マトリックスを補強用繊維に熱融着させる。
(特公平4−4148号公報) 溶媒を用いて紡糸し、紡糸繊維中の溶媒を蒸発させて
繊維表面にボイドを形成し延伸でボイドを引き延ばして
縦長状の溝をつくる。(特開昭60−174646号公
報) 補強用繊維をエポキシ基或いはカルボン酸基含有ポリ
オレフィンで表面処理する。(特開昭60−17464
6号公報) 補強用繊維表面をプラズマ処理或いはコロナ放電処理
して繊維表面に凹凸をつくる。(特開昭57−1770
32号、特開昭60−146078号、特公昭53−7
94号、特公昭58−5314号各公報)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、これらの方
法では、次のような問題点がある。即ち、では熱延伸
時に糸切れを起こし易い、では接着力が不十分で良好
な機械特性が得られにくい、では残存溶媒により良好
な機械特性が得られにくい、ではマトリックスが限定
される、では強度低下により十分な機械強度が得られ
にくい。本発明の目的は、かかる問題点を解決し、ポリ
オレフィンの溶融紡糸、熱延伸により、複合材料におけ
るマトリックスとの接着性に優れた高強度、高弾性率ポ
リオレフィン繊維を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、95〜99重
量%のポリオレフィンと1〜5重量%の炭素数が10以
上の脂肪酸の金属塩から構成され、繊維表面に平均孔径
0.01〜2μm、開孔率20〜90%の多数の微孔が
存在し、3%以上の破断伸度、0.8GPa以上の引張
り強度及び10GPa以上の引張り弾性率、繊維直径1
〜500μmを有することを特徴とするポリオレフィン
繊維を第1の要旨とし、メルトフローインデックス0.
05〜30.0のポリオレフィンと炭素数が10以上の
脂肪酸の金属塩を混練後、溶融紡糸し、得られた未延伸
繊維をアニール処理した後、熱延伸時の変形速度が1分
あたり30%を越える1段以上の熱延伸を総延伸量で3
00%以上に熱延伸することを特徴とするポリオレフィ
ン繊維の製造方法を第2の要旨とする。
【0008】本発明のポリオレフィン繊維を構成する成
分である炭素数10以上の脂肪酸の金属塩は補強用繊維
の濡れ性を改善し、マトリックスとの接着性を向上させ
る効果を示すが、その含有量は、繊維重量に対して、1
重量%〜5重量%である必要がある。その含有量が、1
重量%未満では、濡れ性改善効果が少なく、その含有量
が5重量%を越えて含まれる場合、繊維に微孔が開孔し
にくくなり、マトリックスとのアンカー効果が低下しや
すくなったり、繊維強度が低下したりする。
【0009】脂肪酸の金属塩としては、炭素数が10以
上の脂肪酸の金属塩であればいかなるものでも差し支え
ない。単独で用いても、何種類かを混合して使用しても
よい。最も好ましいのはステアリン酸の金属塩である。
好ましい金属としては、カルシウム、バリウム、亜鉛、
アルミニウム、マグネシウムである。最も好ましいのは
カルシウムである。
【0010】本発明のポリオレフィン繊維の形態は、補
強用繊維として適用するのに有効な直径として1〜50
0μm、好ましくは10〜400μmの範囲とする以外
は、特に限定はなく、中空部のない中実繊維(図1)で
も、中空部のある中空繊維(図2)であってもよく、ま
た断面形状も円形のみならず円形以外の形状であっても
よい。中空状繊維の場合も、繊維直径は1〜500μm
が好ましく、より好ましくは1.5〜200μmであ
る。膜厚値は(図2におけるr2 −r3 )は繊維半径の
20〜70%の範囲のものが好ましく、より好ましくは
30〜50%の範囲のものである。
【0011】本発明のポリオレフィン繊維は、その繊維
表面に多数の微孔が存在し、形成されている微孔の平均
孔径は、0.01〜2μmである。孔径が0.01μm
未満では、マトリックスとの接着性が不十分であり、2
μmを超えると、繊維の強度低下を生じる。また、微孔
は、繊維表面において開孔して存在し、開孔した微孔の
アンカー効果によりマトリックスと本発明のポリオレフ
ィン繊維とは、強固に接着する。かかる接着性を確保す
るためには、繊維表面での微孔の開孔率、即ち繊維単位
表面積に対する微孔部分の占める総表面積の割合は、2
0〜90%、好ましくは25〜80%である必要があ
る。開孔率が20%未満では、マトリックスとの接着性
が不十分であり、90%を超えると、繊維の強度維持が
不十分となる。特に、繊維が中空形状を有する場合に
は、開孔率が70%以下であることが繊維強度を維持す
る上で好ましい。
【0012】前記微孔の分布としては、繊維表層領域に
存在しても良く、また、繊維内部に存在しても良い。し
かし、表面から繊維中心へ向かう方向への微孔分布は繊
維の強度と相関があり、繊維の機械的強度を確保する上
から、微孔の分布は、繊維が中空部のない中実繊維であ
る場合は、繊維表面から0.2μm〜10μmの深さ領
域にみに微孔が存在することが好ましい。特に好ましく
は、繊維表面から0.2〜5μm、さらに好ましくは
0.2〜2μmの深さまでの表層領域に存在し、かつ繊
維断面における中心部の微孔の存在しない非多孔質部と
微孔の存在する多孔質部の比が、図1及び図2で示すよ
うに繊維半径r2に対する非多孔質部半径r1の比で60
〜99.92%の範囲に分布して存在することが繊維強
度を保持する上で好ましい。一方、微孔が繊維内部まで
存在する場合は、繊維断面積に対する微孔総断面積の比
が25〜60%の範囲であることが繊維強度を保持する
上で好ましい。
【0013】微孔の形態は、特に限定はないが、繊維軸
方向に伸びた楕円形またはスリット状であることがマト
リックスとの接着性の点で好ましい。
【0014】本発明のポリオレフィン繊維は、3%以
上、好ましくは7%以上さらに好ましくは10%以上の
破断伸度、0.8GPa以上、好ましくは1.5GPa
以上の引張り強度及び5GPa以上、好ましくは10G
Paさらに好ましくは15GPaの引張り弾性率を有
し、補強用繊維として有用でかつ有効な機械的特性を有
する。
【0015】さらに、本発明においては、繊維重量に対
して1〜5重量%の脂肪酸の金属塩を含有することによ
り、繊維の親水性または極性度が向上し、マトリックス
との接着性が向上する。脂肪酸の金属塩は繊維表面ある
いは繊維全体に存在しても良いが、少なくとも繊維表面
に存在することにより、繊維表面のマトリックスに対す
る濡れ性を向上させ、マトリックスとの化学的相互作用
を増加させ、マトリックスとの接着性を向上させること
ができる。
【0016】以上のように、本発明では、微孔の存在に
よるアンカー効果によるマトリックス/繊維界面での接
着性の向上とともに、脂肪酸の金属塩が存在による繊維
/マトリックスの化学的な相互作用の向上により、繊維
とマトリックスの接着性を向上させる。
【0017】次に本発明の繊維の製造方法について説明
する。本発明のポリオレフィン繊維を製造するに用いる
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン等を用いることができる。いずれの場合も、本発明で
用いるポリオレフィンのメルトフローインデックス(M
I値)は、0.05〜30の範囲にあることが好まし
い。MI値が0.05未満であると、溶融粘度が高すぎ
て繊維を得る際に安定して紡糸することが困難となりや
すくなり、30を超えると、溶融粘度が低く冷却不足を
生じ、安定な紡糸が困難となりやすくなる。なお、MI
値は、JIS K7210に準じ温度190℃でのノズ
ル通過量(単位g/10min、荷重2.169Kg)
をもって表す。
【0018】本発明で用いるポリオレフィンとして、ポ
リエチレンを用いる場合は、分岐の少ない高密度ポリエ
チレンであることが好ましく、密度が0.960g/c
3以上、好ましくは0.965g/cm3 以上のもの
である。
【0019】このポリエチレンの分子量は15万〜10
0万の範囲であり、より好ましくは20万〜100万の
範囲である。分子量が15万未満のポリエチレンを用い
た場合には、本発明の引張り強度が8g/d以上の多孔
質繊維は得られない。また分子量が100万を越えるポ
リエチレンでは繊維表面の微孔形成が困難である。
【0020】また、本発明で用いるポリオレフィンとし
て、ポリプロピレンを用いる場合はアイソタクティクポ
リプロピレンが好ましく、そのタクティシティが96%
以上であることが好ましい。タクティシティは、n−ヘ
プタン不溶分についてマクロモリキュール(Macro
molecules)Vol.6,P.925(197
3)及び同Vol.8、P.687(1975)の記載
の方法に準じて測定した値である。
【0021】タクティシティが96%よりも小さいポリ
マーを用いた場合、延伸後の繊維の表面には微孔が形成
されない。一般にタクティシティが高いほど結晶性が高
くなり、タクティシティ96%以上は、結晶化度では5
0%以上に対応する。ポリマー ハンドブック(Pol
ymer Handbook)ウイリィ、ニューヨー
ク、1975、P.V−23による結晶部密度0.93
6g/cm3、非晶部密度0.850g/cm3を用いる
と、結晶化度50%以上は、平均密度0.890g/c
3に対応する。本発明でのポリプロピレンの密度と
は、この平均密度を示し、0.890g/cm3以上で
あることが好ましい。
【0022】本発明においては、上記特定のポリオレフ
ィンを繊維製造用のノズルを用いて溶融紡糸し、高配向
結晶性の未延伸繊維を用意とする。中空繊維とするノズ
ルは、二重管構造を有するノズルを用いることが偏肉が
少ない繊維を得る上で望ましいが、弧状スリット組合せ
構造等のノズルを用いてもよい。二重管構造のノズルに
おいては、繊維中空部へ中空状態を保持するために供給
する気体は、自然吸気であっても、また強制吸気であっ
てもよい。
【0023】紡糸においては、紡糸温度は、本発明の中
空繊維を製造するポリオレフィンポリマーの融点より3
0℃から80℃高い温度に設定するのが望ましい。この
温度範囲より低温で紡糸した場合は、ポリマーの溶融が
不完全となりメルトフラクチャーが起こり易く、延伸工
程での安定性が低下し、またこの温度範囲より高温で紡
糸した場合は、延伸での微孔の形成が困難である。
【0024】ノズルより吐出されたポリオレフィンポリ
マーは、紡糸ドラフト比200〜5000で引き取り、
未延伸繊維とされる。引き取りの際、紡糸ドラフト比が
200未満では、高配向の未延伸繊維が得られず、延伸
しても微孔の形成は困難であり、紡糸ドラフト比が50
00を超えると、300%以上の総延伸量を得ることが
可能な未延伸繊維が得られない。
【0025】得られた未延伸繊維は、ラメラ結晶の結晶
面が繊維軸に垂直であり、ラメラ結晶が高度に配向積層
した構造の繊維となる。このラメラ構造の配向積層構造
をより完全なものとするためには、未延伸繊維をポリエ
チレンの場合は、100〜130℃、好ましくは115
〜130℃、ポリプロピレンの場合は、120〜160
℃、好ましくは140〜155℃で3分以上のアニール
処理ともいわれる熱処理を施すことが有効な手段であ
る。
【0026】本発明においては、前述のように用意され
た未延伸繊維を次のいずれかの方法で延伸することがで
きる。 (イ)冷延伸を行い、引き続き熱延伸を行う。 (ロ)冷延伸を行うことなく、熱延伸のみを行う。 (イ)の方法における冷延伸では、結晶構造を破壊しミ
クロクレーズを発生させる。結晶ラメラ中の分子鎖の熱
振動による結晶緩和を起こさせることなく、ミクロクレ
ーズを発生させるためには、冷延伸における温度は、4
0℃以下とすることが望ましい。冷延伸は、延伸量で1
〜100%に延伸することが好ましい。かかる冷延伸を
行った後、熱延伸を行う。熱延伸は、90〜130℃
(ポリエチレンの場合)、または120〜160℃(ポ
リプロピレンの場合)で行うことが望ましく、熱延伸に
おける温度が90℃(ポリエチレンの場合)、または1
20℃(ポリプロピレンの場合)未満では、孔径が0.
05μm未満となり、かつ開孔率が20%未満となり、
目的とする微孔が形成されず、130℃(ポリエチレン
の場合)または160℃(ポリプロピレンの場合)を超
えると、繊維が透明化し、望ましい微孔の形成が困難と
なる。熱延伸は、1段のみで行っても2段以上の多段で
行ってもよいが、総ての段でそれぞれ変形速度が1分あ
たり30%を超える、好ましくは35%を超えるように
設定する。変形速度が1分あたり30%以下では、繊維
表面から5μmを超える深い領域まで開孔し繊維の強度
低下が生ずる。
【0027】(ロ)の方法においては、熱延伸は、
(イ)の方法におけると同様、熱延伸温度120〜16
0℃で行うことが望ましく、2段以上の多段で行うが、
各段でそれぞれ変形速度が1分あたり30%を超えるよ
うに設定し、好ましくは、1段目は、変形速度が1分あ
たり30%を超え、2段目以降は、変形速度が1分あた
り35%を超えるよう設定する。なお、本発明における
熱延伸時の変形速度とは、延伸区間における延伸量
(%)を繊維が延伸区間を通過する時間で除して求めた
値である。
【0028】本発明においては、総延伸量は、冷延伸を
行う場合を含め、300%以上、好ましくは500%以
上とすることが微孔の形成上必要である。しかしなが
ら、総延伸量の増大に伴い破断伸度が低下することか
ら、破断伸度を5%以上となすためには、総延伸量の上
限は、約1000%である。
【0029】熱延伸された繊維は、ほぼ形態の安定性が
確保されたものであり、必ずしも多数の微孔の存在構造
の固定を目的とする熱セットを必要とはしないが、必要
に応じて、熱延伸温度と同じ温度領域で、応力緊張下で
定長若しくは収縮させつつ熱セットを行う。
【0030】なお、本発明でいう繊維の強度、弾性率は
引張試験後の繊維断面積当たりについて求めた値であ
る。特に繊維形態が中空状である場合は、繊維断面積の
うち中空部の面積を除いた面積を繊維断面積とした。繊
維断面の膜面積を繊維断面積とした。引張試験は、東洋
ボールドウイン社製テンシロンUTM−4−100を用
い、JIS L−1096に記載の方法に従って試料長
20mmの試料を引張速度20mm/minで行った。
【0031】また、本発明でいう開孔率とは繊維単位表
面積に対する微孔部分の表面積の割合を持って表す。
【0032】さらに、本発明でいう微孔の孔径は水銀圧
入法で測定した値である。測定にはCARLOERBA
社(イタリア)製POROSIMETER−200を用
いた。
【0033】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)密度0.968g/cm3 のポリエチレン
に2重量%のステアリン酸カルシウムを添加し、混練を
行いポリマーペレットを作製した。このペレットを吐出
孔径17mm、円環スリット幅2mmの中空糸賦形用ノ
ズルにより、240℃、紡糸ドラフト比200で紡糸
し、ポリエチレン中空糸を作製した。この中空糸を12
0℃で毎分30%の変形速度で総延伸倍率20倍に延伸
し、繊維表面に微孔を形成させた。この多孔質ポリエチ
レン中空糸は内径270μm、膜厚65μmであり、水
銀圧入法で求めた平均孔径、最小孔径、最大孔径はそれ
ぞれ0.8、0.2、2.0μmであった。また電子顕
微鏡観察により開孔率は50%であり、繊維表面から3
μmの深さまで微孔が分布していた。力学特性は引張強
度1.0GPa、引張弾性率12GPa、破断伸度5%
であった。この繊維を6mmの長さにカットし、水/セ
メント/メチルセルロース 100/50/0.5の重
量比の混練物に10重量%加え混合した。この混合物を
50×50cmの型枠に流し込み成形した。養生は水中
20℃1日間、水中50℃2日間行った。このサンプル
を4×15cmに切断し、曲げ試験を行った。曲げ強度
は134kg/cm2であった。
【0034】(実施例2)実施例1と同様にして作製し
たペレットを5mmφの紡糸ノズルを装着したプランジ
ャー型押し出し機により220℃、紡糸ドラフト500
で紡糸し、ポリエチレン中実糸を作製した。この中実糸
を140℃で毎分30%の変形速度で総延伸倍率15倍
に延伸し、繊維表面に微孔を形成させた。このポリエチ
レン中実糸は直径41μmであり、水銀圧入法で求めた
平均孔径、最小孔径、最大孔径はそれぞれ0.4、0.
1、0.7μmであった。また電子顕微鏡観察により開
孔率は40%であり、繊維表面から1.5μmの深さま
で微孔が分布していた。力学特性は引張強度0.7GP
a、引張弾性率6GPa、破断伸度5%であった。この
繊維を実施例1と同一の条件でセメントに混合し、曲げ
試験を行った。曲げ強度は144kg/cm2 であっ
た。
【0035】(比較例1)実施例1において120℃に
おける延伸条件を毎分5%の変形速度で、総延伸倍率2
5倍とし、それ以外は実施例1と同一の条件で多孔質ポ
リエチレン中空糸を作製した。この多孔質ポリエチレン
中空糸は内径250μm、膜厚65μmであり、水銀圧
入法で求めた平均孔径、最小孔径、最大孔径はそれぞれ
0.6、0.2、1.6μmであった。また電子顕微鏡
観察により開孔率は75%であり、繊維断面全体に渡っ
て微孔が分布していた。力学特性は引張強度9.7MP
a、引張弾性率75MPa、破断伸度4%であった。こ
の繊維を実施例1と同一の条件でセメントに混合し、曲
げ試験を行った。曲げ強度は68kg/cm2 であっ
た。
【0036】(比較例2)実施例1と同様にして作製し
たペレットを2.5mmφの紡糸ノズルを装着したプラ
ンジャー型押し出し機により220℃、紡糸ドラフト2
00で紡糸し、ポリエチレン中実糸を作製した。このポ
リエチレン中実糸は直径42μmであり、水銀圧入法及
び、電子顕微鏡観察により表面に微孔は存在していなか
った。力学特性は引張強度1.1GPa、引張弾性率3
2.5GPa、破断伸度750%であった。この繊維を
実施例1と同一の条件でセメントに混合し、曲げ試験を
行った。曲げ強度は49kg/cm2 であった。
【0037】
【発明の効果】本発明のポリプロピレン繊維は、多数の
微孔が存在し、本来の低比重に加え多孔質であることか
ら、軽量でありながら、高強度、高弾性率を有する繊維
であり、樹脂複合材料、セメント複合材料等の複合材料
の樹脂、セメント等の広範囲の補強用繊維として極めて
有用なるものであり、また高い破断伸度を有することか
ら複合材料への瞬間的衝撃に対しても繊維の損傷が少な
く、補強用繊維としての機能維持性が高いものである。
しかも、繊維表面に開孔した多数の微孔によるマトリッ
クスとのアンカー効果と脂肪酸の金属塩を含有している
ことによるマトリックスとの化学的相互作用の向上によ
り、マトリックスとの接着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリオレフィン繊維(中実)の例の拡
大模式断面図である。
【図2】本発明のポリオレフィン繊維(中空)の例の拡
大模式断面図である。
【符号の説明】
1 微孔 2 非多孔質部 3 中空部 r1 非多孔質部半径 r2 繊維半径 r3 中空部半径
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 1/10 6/46 A D02J 1/22 J (72)発明者 奥村 淳 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 95〜99重量%のポリオレフィンと1
    〜5重量%の炭素数が10以上の脂肪酸の金属塩から構
    成され、繊維表面に平均孔径0.01〜2μm、開孔率
    20〜90%の多数の微孔が存在し、3%以上の破断伸
    度、0.8GPa以上の引張り強度及び10GPa以上
    の引張り弾性率、繊維直径1〜500μmを有すること
    を特徴とするポリオレフィン繊維
  2. 【請求項2】 繊維表面から0.2μm〜10μmの深
    さ領域に微孔が存在する請求項1に記載のポリオレフィ
    ン繊維。
  3. 【請求項3】 メルトフローインデックス0.05〜3
    0.0のポリオレフィンと炭素数が10以上の脂肪酸の
    金属塩を混練後、溶融紡糸し、得られた未延伸繊維をア
    ニール処理した後、熱延伸時の変形速度が1分あたり3
    0%を越える1段以上の熱延伸を総延伸量で300%以
    上に熱延伸することを特徴とするポリオレフィン繊維の
    製造方法。
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