JPH07243118A - 高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維およびその製造方法 - Google Patents

高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維およびその製造方法

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JPH07243118A
JPH07243118A JP6036095A JP3609594A JPH07243118A JP H07243118 A JPH07243118 A JP H07243118A JP 6036095 A JP6036095 A JP 6036095A JP 3609594 A JP3609594 A JP 3609594A JP H07243118 A JPH07243118 A JP H07243118A
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JP
Japan
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fiber
polyolefin
strength
polyethylene
molecular weight
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Application number
JP6036095A
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English (en)
Inventor
Michiharu Uenishi
理玄 上西
Takayuki Hirai
孝之 平井
Masaharu Oda
雅春 小田
Jun Kamo
純 加茂
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 複合材料のマトリックスとの接着性に優れた
高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維を提供する。 【構成】 芯部に配向された平均分子量200万以上の
ポリエチレンが配され、鞘部に平均孔径0.01〜2μ
mの微孔が開孔率20〜90%で存在するポリオレフィ
ンが配された引張強度が1GPa以上、引張弾性率が1
0GPa以上であることを特徴とする高強度、高弾性率
ポリオレフィン繊維であり、該繊維は、溶融紡糸したポ
リオレフィン中空繊維に、溶媒中で平均分子量200万
以上のポリエチレンを中空部分に含浸させ、該繊維を延
伸することによる得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度、高弾性率ポリ
オレフィン繊維及びその製造方法に関する。さらに詳し
くは、樹脂複合材料、セメント複合材料等の機械的強度
を向上するために用いられる複合材料補強用の高強度、
高弾性率ポリオレフィン繊維及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】樹脂複合材料、セメント複合材料等の補
強用繊維としては、アラミド繊維、高強力ポリエチレン
繊維等の有機高分子系補強用繊維、ガラス繊維、炭素繊
維、ウィスカー繊維等の無機系補強用繊維がある。この
うち有機高分子系補強用繊維は、無機系補強用繊維に比
べて、低密度であり、複合材料の軽量化が可能である点
において優れている。ポリプロピレン繊維も、ポリエチ
レン繊維と共に汎用素材として知られ、またポリエチレ
ン繊維に比べ耐熱性に優れていることから、高強度、高
弾性率とするならば、有機高分子系補強用繊維として用
い得る繊維である。
【0003】高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維につ
いては、例えば、次に示す(I),(II)のような製造
方法が提案されている。 (I) ジャーナル アプライド ポリマー サイエン
ス(Journal Applied Polymer
Science)Vol.28、P.179〜189
(1983)に、ポリエチレン、またはポリプロピレン
を、ノズルから溶融押し出し適切なドラフト比で巻取り
ながら冷却し高配向結晶性の未延伸糸とし、この未延伸
糸を熱延伸してラメラ結晶内の分子鎖の折りたたみを解
きほぐし分子鎖が繊維軸方向に伸長された繊維とするこ
とにより、引張り強度0.76GPa(ギガパスカル)
及び引張り弾性率17.2GPaのポリプロピレン繊維
が得られることが報告されている。
【0004】(II) ポリマー コミュニケーション
(Polymer Communications)V
ol.25、P39−42(1984)には、超高分子
量のポリエチレンまたはポリプロピレンをデカリンに溶
解させ、0.5〜2.0重量%のポリマー溶液から溶剤
を多量に含むゲル糸を作製し、このゲル糸を延伸し、繊
維軸方向に分子鎖が伸長された繊維集合体を製造するこ
とによって、高強度、高弾性率のポリオレフィン繊維を
得ることが報告されている。ポリプロピレンの場合、繊
維軸方向の引張弾性率36.0GPa、引張強度1.0
3GPaの性能が得られ、ポリエチレンの場合は、繊維
軸方向の引張弾性率18〜40GPa、引張強度0.8
〜2GPaの性能が得らを得ること報告されている。
【0005】しかしながら、ポリオレフィン繊維は、複
合材料におけるマトリックスとの接着性が一般に不良で
あり、接着性を改良する方法として代表的なものとして
次の〜が提案されている。 ポリプロピレンに石膏針状結晶繊維を混ぜ、溶融紡
糸、延伸し繊維表面に石膏を突き出させる。(特公昭5
7−8790号公報) マトリックスとして補強用繊維より低融点のポリマー
を使用し、マトリックスを補強用繊維に熱融着させる。
(特公平4−4148号公報) 溶媒を用いて紡糸し、紡糸繊維中の溶媒を蒸発させて
繊維表面にボイドを形成し延伸でボイドを引き延ばして
縦長状の溝をつくる。(特開昭60−174646号公
報) 補強用繊維をエポキシ基或いはカルボン酸基含有ポリ
オレフィンで表面処理する。(特開昭60−17464
6号公報) 補強用繊維表面をプラズマ処理或いはコロナ放電処理
して繊維表面に凹凸をつくる。(特開昭57−1770
32号、特開昭60−146078号、特公昭53−7
94号、特公昭58−5314号各公報)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、これらの方
法では、次のような問題点がある。即ち、では熱延伸
時に糸切れを起こし易い、では接着力が不十分で良好
な機械特性が得られにくい、では残存溶媒により良好
な機械特性が得られにくい、ではマトリックスが限定
される、では強度低下により十分な機械強度が得られ
にくい。本発明の目的は、かかる問題点を解決し、ポリ
オレフィンの溶融紡糸、熱延伸により、複合材料におけ
るマトリックスとの接着性に優れた高強度、高弾性率ポ
リオレフィン繊維を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、芯部に配向さ
れた平均分子量200万以上のポリエチレンが配され、
鞘部に平均孔径0.01〜2μmの微孔が開孔率20〜
90%で存在するポリオレフィンが配された引張強度が
1GPa以上、引張弾性率が10GPa以上であること
を特徴とする高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維を第
1の要旨とし、溶融紡糸したポリオレフィン中空繊維
に、溶媒中で平均分子量200万以上のポリエチレンを
中空部分に含浸させ、該繊維を延伸することを特徴とす
る高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維の製造方法を第
2の要旨とする。
【0008】本発明で用いるポリオレフィンとは、ポリ
エチレン、ポリプロピレン等である。本発明のポリオレ
フィン複合繊維の鞘部に相当するポリオレフィン中空繊
維部分は、その繊維表面に多数の微孔が存在し、形成さ
れている微孔の平均孔径は、0.01〜2μmである。
孔径が0.01μm未満では、マトリックスとの接着性
が不十分であり、2μmを超えると、繊維の強度低下を
生じる。また、微孔は、繊維表面において開孔して存在
し、開孔した微孔のアンカー効果によりマトリックスと
本発明のポリプロピレン繊維とは、強固に接着する。か
かる接着性を確保するためには、繊維表面での微孔の開
孔率、即ち繊維単位表面積に対する微孔部分の占める総
表面積の割合は、20〜90%、好ましくは25〜80
%である必要がある。開孔率が20%未満では、マトリ
ックスとの接着性が不十分であり、90%を超えると、
繊維の強度維持が不十分となる。特に、繊維が中空形状
を有する場合には、開孔率が70%以下であることが繊
維強度を維持する上で好ましい。
【0009】微孔の形態は、特に限定はないが、繊維軸
方向に伸びた楕円形またはスリット状であることがマト
リックスとの接着性の点で好ましい。
【0010】本発明の高強度、高弾性率ポリオレフィン
複合繊維においては、表面から繊維中心へ向かう方向へ
の微孔分布は繊維の強度と相関がある。繊維の機械的強
度を確保する上から、本発明の鞘部のポリオレフィン繊
維部分は、繊維断面が中空形状であるので、微孔は、図
1で示すように繊維半径r2の20〜70%、好ましく
は30〜50%に相当する繊維膜厚さ(繊維半径r2
中空部半径r3)を有する繊維の表面から0.2〜5μ
m、好ましくは0.2〜2μmの深さまでの表層領域
に、繊維断面における膜状繊維断面積に対する微孔総断
面積の比で25〜60%の範囲で分布して存在すること
が好ましい。
【0011】本発明のポリオレフィン複合繊維の形態
は、補強用繊維として適用するのに有効な直径として1
〜500μm、好ましくは3〜400μmの範囲とする
以外は、特に限定はなく、断面形状も円形のみならず円
形以外の形状であってもよい。
【0012】さらに、本発明においては、芯部に配向さ
れた平均分子量200万以上のポリエチレンが存在する
ことにより、繊維強度および弾性率が向上する。
【0013】このような構成より、本発明のポリオレフ
ィン複合繊維は、引張強度が1GPa以上、引張弾性率
が10GPa以上の高強度、高弾性率ポリオレフィン繊
維が得られる。
【0014】次に本発明のポリオレフィン複合繊維の製
造方法について説明する。本発明のポリオレフィン繊維
を製造するに用いるポリオレフィンとしては、ポリエチ
レン、ポリプロピレン等を用いることができる。いずれ
の場合も、本発明で用いるポリオレフィンのメルトフロ
ーインデックス(MI値)は、0.05〜30の範囲に
あることが好ましい。MI値が0.05未満であると、
溶融粘度が高すぎて繊維を得る際に安定して紡糸するこ
とが困難となりやすくなり、30を超えると、溶融粘度
が低く冷却不足を生じ、安定な紡糸が困難となりやすく
なる。なお、MI値は、JIS K7210に準じ温度
190℃でのノズル通過量(単位g/10min、荷重
2.169Kg)をもって表す。
【0015】本発明で用いるポリオレフィンとして、ポ
リエチレンを用いる場合は、分岐の少ない高密度ポリエ
チレンであることが好ましく、密度が0.960g/c
3以上、好ましくは0.965g/cm3 以上のもの
である。
【0016】このポリエチレンの分子量は15万〜10
0万の範囲であり、より好ましくは20万〜100万の
範囲である。分子量が15万未満のポリエチレンを用い
た場合には、本発明の引張り強度が8g/d以上の多孔
質繊維は得られない。また分子量が100万を越えるポ
リエチレンでは繊維表面の微孔形成が困難である。
【0017】また、本発明で用いるポリオレフィンとし
て、ポリプロピレンを用いる場合はアイソタクティクポ
リプロピレンが好ましく、そのタクティシティが96%
以上であることが好ましい。タクティシティは、n−ヘ
プタン不溶分についてマクロモリキュール(Macro
molecules)Vol.6,P.925(197
3)及び同Vol.8、P.687(1975)の記載
の方法に準じて測定した値である。
【0018】タクティシティが96%よりも小さいポリ
マーを用いた場合、延伸後の繊維の表面には微孔が形成
されない。一般に、タクティシティが高いほど、結晶性
が高くなり、タクティシティ96%以上は、結晶化度で
は50%以上に対応する。ポリマー ハンドブック(P
olymer Handbook)ウイリィ、ニューヨ
ーク、1975、P.V−23による結晶部密度0.9
36g/cm3、非晶部密度0.850g/cm3を用い
ると、結晶化度50%以上は、平均密度0.890g/
cm3に対応する。本発明でのポリプロピレンの密度と
は、この平均密度を示し、0.890g/cm3以上で
あることが必要である。
【0019】本発明においては、上記特定のポリオレフ
ィンを繊維製造用のノズルを用いて溶融紡糸し、高配向
結晶性の未延伸繊維を用意とする。中空繊維とするノズ
ルは、二重管構造を有するノズルを用いることが偏肉が
少ない繊維を得る上で望ましいが、弧状スリット組合せ
構造等のノズルを用いてもよい。二重管構造のノズルに
おいては、繊維中空部へ中空状態を保持するために供給
する気体は、自然吸気であっても、また強制吸気であっ
てもよい。
【0020】紡糸においては、紡糸温度は、本発明の中
空繊維を製造するポリオレフィンポリマーの融点より3
0℃〜150℃、好ましくは30〜80℃高い温度に設
定するのが望ましい。この温度範囲より低温で紡糸した
場合は、ポリマーの溶融が不完全となりメルトフラクチ
ャーが起こり易く、延伸工程での安定性が低下し、また
この温度範囲より高温で紡糸した場合は、延伸での微孔
の形成が困難である。
【0021】ノズルより吐出されたポリオレフィンポリ
マーは、紡糸ドラフト比5〜5000で引き取り、未延
伸繊維とされる。引き取りの際、紡糸ドラフト比が5未
満では、高配向の未延伸繊維が得られず、延伸しても微
孔の形成は困難であり、紡糸ドラフト比が5000を超
えると、300%以上の総延伸量を得ることが可能な未
延伸繊維が得られない。
【0022】得られた未延伸繊維は、ラメラ結晶の結晶
面が繊維軸に垂直であり、ラメラ結晶が高度に配向積層
した構造の繊維となる。このラメラ構造の配向積層構造
をより完全なものとするためには、未延伸繊維をポリエ
チレンの場合は100〜130℃好ましくは115〜1
30℃、ポリプロピレンの場合は120〜160℃、好
ましくは140〜155℃で3分以上のアニール処理と
もいわれる熱処理を施すことが有効な手段である。
【0023】次に、本発明では、得られた中空ポリオレ
フィン繊維の中空部分に、重量平均分子量が200万以
上の超高分子量ポリエチレンを含浸させる。
【0024】なお、含浸させる中空ポリオレフィン繊維
は、紡糸後未延伸の繊維、または、延伸した繊維のどち
らでも良い。しかしながら、超高分子量ポリエチレンを
含浸させた後の微孔の形成を考慮すると未延伸繊維であ
ることが好ましい。以下は、未延伸に超高分子量のポリ
エチレンを含浸させる場合についてのみ説明する。
【0025】なお、この超高分子量ポリエチレンポリマ
ーは微粉末の形態で市販されており代表的な製品として
は三井石油化学製ハイゼックスミリオン240M,32
0M,340M,630Mがあげられる。
【0026】まず、超高分子量ポリエチレンを溶媒に浸
し、室温から昇温し、溶解させる。溶媒としては昇温下
でのみ溶解する単一の低分子量化合物を使用する。この
低分子量化合物は、室温下では非溶剤でなければならな
い。溶解温度はポリエチレンの分解温度より低くする必
要がある。具体的には、デカリン,テトラリン,p−キ
シレンが挙げられる。例えばデカリン中に超高分子量ポ
リエチレンを入れ約160℃まで1時間かけて昇温し、
この温度で1時間攪拌し、完全に溶解させる。攪拌溶解
を高温下で長時間行うことは分子量低下につながるので
好ましくない。
【0027】超高分子量ポリエチレンが溶解した溶液を
徐々に冷却する。この冷却によって超高分子量ポリエチ
レンの微小なゲル粒子物集合体が生成する。
【0028】本発明で含浸する超高分子量ポリエチレン
とは、この微小なゲル粒子物集合体である。この集合体
を得る冷却はできるだけゆっくりと行う必要がある。徐
冷しないで急冷するとフィルム状の粗大なゲル状物とな
り微小なゲル粒子物集合体は得られない。徐冷した場合
には、溶剤を吸蔵するゲル粒子物集合体となる。本発明
におけるこのゲル粒子物集合体は、溶媒を吸蔵する単球
晶ゲルもしくは単球晶ゲルが2個以上集合し、結ばれた
複合球晶ゲルとの混合物である。徐冷はゲル粒子物集合
体中に占める単球晶ゲルの割合を大きくする手段として
有効である。本発明においてゲル粒子物集合体中に占め
る単球晶ゲルの割合は50重量%以上好ましくは60重
量%以上を占めるのが良い。単球晶ゲルは通常の偏光顕
微鏡観察した場合“マルテズ・クロス”により織別する
ことができる。
【0029】ゲル粒子物集合体が生成する最低濃度とし
ては、超高分子量ポリエチレン分子が、溶液中で相互に
交絡(entanglement)を始める臨界濃度以
上とすることが必要である。超高分子量ポリエチレン分
子が溶液中で相互に交絡を始める臨界濃度は溶液濃度と
零せん断粘度との関係が変化する濃度として知ることが
できる。一般にポリマー濃度が前記臨界濃度より低い場
合には、ゲル粒子物を形成しなくなる。またポリマー濃
度が高すぎると延伸工程において高倍率の延伸が困難に
なる傾向がある。この場合溶液中のポリエチレン濃度
は、0.5〜15重量%の範囲とするとよい。望ましく
は2〜8重量%が良い。
【0030】冷却の具体的条件としては150〜160
℃の溶液を20℃〜50℃の温度で10〜40時間かけ
て徐々に冷却する条件が良い。このような方法でゲル粒
子物集合体を作製しておき、溶媒中から濾過等の方法を
用いてこのゲル粒子物集合体を分離しておく。
【0031】次に、デカリン等ゲル粒子物集合体を作製
した同一の溶媒が望ましいが、溶融紡糸したポリエチレ
ン中空繊維を溶解可能な溶媒を昇温して一定温度に保
つ。この昇温された溶媒をせん断力等の外力下でゆっく
り流動させ、この流動溶媒中に上記ポリオレフィン中空
繊維を浸す。この中空繊維表面がやや溶解しはじめたな
らば、この溶媒中にあらかじめ作製しておいたゲル粒子
物集合体を加える。ゲル粒子物集合体は流動下少しづつ
溶解し、中空繊維の表面の溶解により生じた孔部より中
空繊維の中空部分に含浸する。より含浸を早く行うに
は、あらかじめ中空繊維を後述する熱延伸により微孔を
形成させておく方法を取ることができる。含浸するにし
たがってゲル粒子物集合体の間隔は密になり、互いに接
する様、中空部分に充てんが行われる。密に接した部分
が溶媒中で少しづつ溶解し合い、しだいに粒子間の界面
が不明確となるよう十分長い時間をかけて堆積させる。
この際の溶媒の設定温度は、ゲル粒子が溶解して消えて
しまう温度より20℃〜30℃低温とする。具体的には
100〜120℃の温度とする。この様にして含浸した
ポリエチレン分子鎖集合体を芯部分、溶融紡糸ポリオレ
フィン中空繊維を鞘部分とする複合繊維を作製する。
【0032】次に得られた未延伸糸は、延伸処理される
が、この熱延伸で、鞘部分のポリオレフィン表面に微孔
が形成され、芯部分のポリエチレンが配向され強度を増
す。
【0033】本発明においては、前述のように用意され
た未延伸繊維を次のいずれかの方法で延伸することがで
きる。 (イ)冷延伸を行い、引き続き熱延伸を行う。 (ロ)冷延伸を行うことなく、熱延伸のみを行う。 (イ)の方法における冷延伸では、結晶構造を破壊しミ
クロクレーズを発生させる。結晶ラメラ中の分子鎖の熱
振動による結晶緩和を起こさせることなく、ミクロクレ
ーズを発生させるためには、冷延伸における温度は、4
0℃以下とすることが望ましい。冷延伸は、延伸量で1
〜150%に延伸することが好ましい。かかる冷延伸を
行った後、熱延伸を行う。次にこの複合繊維を溶融中か
ら取り出し、鞘部がポリエチレンの場合は90℃から1
30℃、ポリプロピレンの場合は120〜160℃の温
度下で熱延伸することが望ましい。熱延伸における温度
が90℃未満(ポリエチレンの場合)、または120℃
未満(ポリプロピレンの場合)では、孔径が0.01μ
m未満となり、かつ開孔率が20%未満となり、目的と
する微孔が形成されず、130℃(ポリエチレンの場
合)、または160℃(ポリプロピレンの場合)を超え
ると、繊維が透明化し、望ましい微孔の形成が困難とな
る。熱延伸は、1段のみで行っても2段以上の多段で行
ってもよいが、総ての段でそれぞれ変形速度が1分あた
り30%を超える、好ましくは35%を超えるように設
定することが望ましい。変形速度が1分あたり30%以
下では、繊維表面から5μmを超える深い領域まで開孔
し繊維の強度低下が生ずる場合がある。
【0034】(ロ)の方法においては、熱延伸は、
(イ)の方法におけると同様、熱延伸温度90〜130
℃(ポリエチレンの場合)、または120〜160℃
(ポリプロピレンの場合)で行うことが望ましく、2段
以上の多段で行うが、各段でそれぞれ変形速度が1分あ
たり30%を超えるように設定し、好ましくは、1段目
は、変形速度が1分あたり30%を超え、2段目以降
は、変形速度が1分あたり35%を超えるよう設定する
ことが望ましい。なお、本発明における熱延伸時の変形
速度とは、延伸区間における延伸量(%)を繊維が延伸
区間を通過する時間で除して求めた値である。
【0035】本発明においては、総延伸量は、冷延伸を
行う場合を含め、300%以上、好ましくは500%以
上とすることが微孔の形成上好ましい。しかしながら、
総延伸量の増大に伴い破断伸度が低下することから、破
断伸度を5%以上となすためには、総延伸量の上限は、
約1000%である。
【0036】熱延伸された繊維は、ほぼ形態の安定性が
確保されたものであり、必ずしも多数の微孔の存在構造
の固定を目的とする熱セットを必要とはしないが、必要
に応じて、熱延伸温度と同じ温度領域で、応力緊張下で
定長若しくは収縮させつつ熱セットを行う。
【0037】熱延伸によって鞘部分が、多孔質構造とな
ると同時に芯部分の超高分子量ポリエチレン分子も熱延
伸される。芯部分のゲル粒子物集合体中には、溶媒が存
在する。鞘部分が多孔質構造となるにつれて、この孔を
通してゲル粒子物集合体中の溶媒は徐々に蒸発乾燥す
る。ゲル粒子物中の規則正しく折りたたまれた分子鎖は
熱延伸によって解きほぐされてゆき、延伸とともに繊維
軸方向に配向する割合が増してゆく。一般に分子鎖が長
くなると交絡が著しくなり、十分な延伸ができないが、
ゲル粒子物中の残留溶媒のため、この交絡は低減され、
比較的延伸しやすくなる。
【0038】以上の熱延伸を行うことにより、引張強度
が1GPa以上、引張弾性率が10GPa以上の高強
度、高弾性率ポリオレフィン繊維が得られる。
【0039】なお、本発明でいう繊維の強度、弾性率は
引張試験後の繊維断面積当たりについて求めた値であ
る。特に繊維形態が中空状である場合は、繊維断面積の
うち中空部の面積を除いた面積を繊維断面積とした。繊
維断面の膜面積を繊維断面積とした。引張試験は、東洋
ボールドウイン社製テンシロンUTM−4−100を用
い、JIS L−1096に記載の方法に従って試料長
20mmの試料を引張速度20mm/minで行った。
【0040】また、本発明でいう開孔率とは繊維単位表
面積に対する微孔部分の表面積の割合を持って表す。
【0041】さらに、本発明でいう微孔の孔径は水銀圧
入法で測定した値である。測定にはCARLOERBA
社(イタリア)製POROSIMETER−200を用
いた。
【0042】
【実施例】以下実施例により本発明を更に詳細に説明す
る。 (実施例1)密度0.968g/cm3 、メルトインデ
ックス0.7の高密度ポリエチレン(三菱化成株式会社
製 NOVATEC Bu 007u)を吐出口径16
mm、円環スリット幅が2.5mm、吐出断面積が1.
06cm2 の中空糸賦形用紡糸口金を用い、紡糸温度1
85℃、吐出速度32.1cm/minで紡糸し、温度
が25℃、速度が4.0m/secの向流冷却風で冷却
し、巻取速度85m/min、紡糸ドラフト265で巻
取った。得られた未延伸中空糸の寸法は内径が520μ
m、膜厚が160μmであった。この未延伸中空糸を1
25℃で24時間定長で熱処理した。こうして溶融紡糸
ポリエチレン未延伸繊維を作製した。次に、重量平均分
子量2.3×106 である超高分子量ポリエチレン(三
井石油化学株式会社製 ハイゼックスミリオン240
M)3重量%をデカリンに混ぜ、20℃から160℃ま
で1時間で加熱し、160℃に保ちながら1時間攪拌を
行い、超高分子量ポリエチレンを溶解した。この溶液か
らゲル粒子集合体を形成するために20時間かけて20
℃まで徐冷した。この徐冷の後、平均粒子直径が80μ
mであるゲル粒子を作製した。この粒子を溶液から濾過
して分離した。120℃に保ったデカリン中に、上記溶
融紡糸ポリエチレン未延伸繊維を入れ、500rpmの
回転速度で2時間回転させ、この溶液中に上記で作製し
たゲル粒子集合体を4.93g加えた。デカリンの比重
0.896g/cm3 、ハイゼックスミリオン240M
の比重0.935g/cm3 、ゲル粒子1個の平均比重
0.919g/cm3 から換算するとこの重量は約2×
107 個に対応する。加えたゲル粒子のうち全体数の約
30%の重量(個数 約6×106 個)が中空繊維の中
空部に含浸した。含浸した状態で1時間保った後、この
複合繊維を溶液から取り出し、110℃に加熱した3つ
の加熱函中で1段目は1秒につき5.6%の変形速度で
未延伸糸に対して4倍まで延伸し、2段目では3.2%
の変形速度で5倍まで延伸し、3段目では1.4%の変
形速度で6倍まで延伸した。延伸後の複合繊維表面に
は、最小孔径0.2μm、最大孔径1.4μm、平均孔
径0.8μmの孔が開孔率40%で開いており、この微
孔は、繊維表面から10μmの深さまでに分布してい
た。この複合繊維の引張強度は1.5GPa、引張弾性
率は12GPaであり、破断伸度は10%であった。
【0043】(実施例2)実施例1で用いた中空繊維お
よび超高分子量ポリエチレンとして重量平均分子量3.
3×106 であるハイゼックスミリオン340Mを用い
た以外は、同一の方法で作製した9.85g(約4×1
7 個)のゲル粒子集合体を120℃に保ったデカリン
中に入れ、700rpmの回転速度で2時間回転させ
た。ゲル粒子のうち全体数の約25%の重量(約1×1
7 個)が、中空繊維の中空部に含浸した。含浸した状
態で1時間保った後、この複合繊維を溶液から取り出
し、20℃下で初期長さに対して20%冷延伸した後、
110℃に加熱した3つの加熱函中で1段目は1秒につ
き5.0%の変形速度で未延伸糸に対して4倍まで延伸
し、2段目では3.0%の変形速度で5倍まで延伸し、
3段目では1.4%の変形速度で6倍まで延伸した。延
伸後の複合繊維表面には最小孔径0.3μm、最大孔径
1.0μm、平均孔径0.65μmの孔が開孔率35%
で開いており、この微孔は繊維表面から10μmの深さ
までに分布していた。この複合繊維の引張強度は1.3
GPa、引張弾性率は13GPaであり、破断伸度は1
2%であった。
【0044】
【発明の効果】本発明のポリオレフィン繊維は、繊維表
面に開孔した多数の微孔が存在し、樹脂複合材料、セメ
ント複合材料等の複合材料の樹脂、セメント等の広範囲
のマトリックスとの接着性に優れた補強用繊維として極
めて有用なるものであり、また高い破断伸度を有するこ
とから複合材料への瞬間的衝撃に対しても繊維の損傷が
少なく、補強用繊維としての機能維持性が高いものであ
る。さらに、本来の低比重に加え多孔質であることか
ら、軽量でありながら、高強度、高弾性率を有する繊維
であるのに加え、芯部分に含浸された超高分子量のポリ
エチレンが配向し、さらに、高強度、高弾性率のポリオ
レフィン繊維となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリオレフィン複合繊維の一例を示す
拡大模式断面図である。
【符号の説明】
1 微孔 2 非多孔質部 3 配向されたポリエチレン部分 r1 非多孔質部半径 r2 繊維半径 r3 中空部半径
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 11/06 D02J 1/22 Q (72)発明者 加茂 純 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芯部に配向された平均分子量200万以
    上のポリエチレンが配され、鞘部に平均孔径0.01〜
    2μmの微孔が開孔率20〜90%で存在するポリオレ
    フィンが配された引張強度が1GPa以上、引張弾性率
    が10GPa以上であることを特徴とする高強度、高弾
    性率ポリオレフィン繊維。
  2. 【請求項2】 溶融紡糸したポリオレフィン中空繊維
    に、溶媒中で平均分子量200万以上のポリエチレンを
    中空部分に含浸させ、該繊維を延伸することを特徴とす
    る高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 メルトフローインデックス0.05〜3
    0.0のポリオレフィンを用いる請求項2記載の高強
    度、高弾性率ポリオレフィン繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 熱延伸時の変形速度が1分あたり30%
    を越える1段以上の熱延伸を総延伸量で300%以上に
    熱延伸する請求項2または請求項3記載の高強度、高弾
    性率ポリオレフィン繊維の製造方法。
JP6036095A 1994-03-07 1994-03-07 高強度、高弾性率ポリオレフィン繊維およびその製造方法 Pending JPH07243118A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7238423B2 (en) 2004-12-20 2007-07-03 Kimberly-Clark Worldwide, Inc. Multicomponent fiber including elastic elements

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