JPH07238939A - 電食防止転がり軸受とその製造装置 - Google Patents

電食防止転がり軸受とその製造装置

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JPH07238939A
JPH07238939A JP2823894A JP2823894A JPH07238939A JP H07238939 A JPH07238939 A JP H07238939A JP 2823894 A JP2823894 A JP 2823894A JP 2823894 A JP2823894 A JP 2823894A JP H07238939 A JPH07238939 A JP H07238939A
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Japan
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peripheral surface
outer ring
side mold
ring
rolling bearing
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JP2823894A
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Toshimi Takagi
敏己 高城
Shigeaki Abe
重昭 阿部
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C45/00Injection moulding, i.e. forcing the required volume of moulding material through a nozzle into a closed mould; Apparatus therefor
    • B29C45/14Injection moulding, i.e. forcing the required volume of moulding material through a nozzle into a closed mould; Apparatus therefor incorporating preformed parts or layers, e.g. injection moulding around inserts or for coating articles
    • B29C45/1459Coating annular articles
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C45/00Injection moulding, i.e. forcing the required volume of moulding material through a nozzle into a closed mould; Apparatus therefor
    • B29C45/14Injection moulding, i.e. forcing the required volume of moulding material through a nozzle into a closed mould; Apparatus therefor incorporating preformed parts or layers, e.g. injection moulding around inserts or for coating articles
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  • Manufacturing & Machinery (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電気絶縁性、耐衝撃性を確保しつつ、転がり
軸受からの熱の放散を良好にし、耐久性を向上させる。 【構成】 外輪2の外周面6及び両端面7、7を被覆す
る絶縁皮膜を、ガラス繊維を含有したポリアミド46に
より造る。絶縁皮膜形成用の移動側金型12Aは、第一
部分22と第二部分24とから成る。このうちの第一部
分22は、放射方向に変位自在な複数の金型素子23、
23から成る。絶縁皮膜を射出成形した後は、これら各
金型素子23、23は外方に変位させてからエジェクト
ピン20、20を突出させ、離型作業を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄道車両用電動機等の
回転支持部分に組み込まれる電食防止転がり軸受と、こ
の電食防止転がり軸受を造る為の製造装置との改良に関
する。
【0002】
【従来の技術】鉄道車両用電動機(主として車輪駆動
用)の回転支持部分に組み込まれる転がり軸受には、何
らの対策も施さないと電流が流れる。そして、電流が流
れた場合には構成各部材同士の接触部でこれら各部材の
金属表面が溶出する、所謂電食が発生する。この様な電
食が発生すると、軌道輪に形成した軌道面や転動体の転
動面に細かな凹凸が形成される等、転がり軸受の性能が
著しく劣化して、この転がり軸受の耐久性を損なう。こ
の為従来から、転がり軸受を構成する軌道輪の周面に絶
縁皮膜を形成し、この軌道輪とこの軌道輪を嵌合させる
相手部材との間に電流が流れる事を防止している。
【0003】図8には、この様な目的で造られた電食防
止転がり軸受の構造の2例を示している。先ず、図8
(A)に示した第1例の構造に就いて説明する。この電
食防止転がり軸受は、一般の転がり軸受と同様に、内周
面に外輪軌道1を有する外輪2と、外周面に内輪軌道3
を有する内輪4と、上記外輪軌道1と内輪軌道3との間
に転動自在に設けられた複数個の転動体5、5とを有す
る。更に電食防止転がり軸受では、上記外輪2の外周面
6と軸方向両端面7、7とのほぼ全面に、絶縁皮膜8を
被覆している。尚、上記各面6、7にはそれぞれ凹溝
9、9を形成し、上記絶縁皮膜8を構成する絶縁材の一
部を各凹溝9、9に進入固化させて、この絶縁皮膜8と
上記外輪2との結合強度を確保している。
【0004】次に、図8(B)に示した第2例の構造に
就いて説明する。上述の第1例の構造が、転動体5、5
がころであるころ軸受を電食防止構造としているのに対
して、この第2例の場合には、転動体5a、5aが玉で
ある玉軸受を電食防止構造としている。又、絶縁皮膜8
a、8aにより、外輪2aの外周面6a及び軸方向両端
面7a、7aだけでなく、内輪4aの内周面及び軸方向
両端面も被覆している。更に、これら絶縁皮膜8a、8
aが、外輪2aの内周面両端部及び内輪4aの外周面両
端部も被覆している。又、転動体5a、5aが玉である
事に合わせて外輪軌道1a及び内輪軌道3aも、断面円
弧形としている。その他の構成は上述した第1例と同様
である為、同等部分には対応する符号にaを加えた符号
を付して、重複する説明を省略する。
【0005】上述の様に構成される電食防止転がり軸受
により、例えば鉄道車両用電動機の回転軸を支持する場
合には、前記外輪2、2aを電動機ケースの一部に内嵌
固定すると共に、前記内輪4、4aを上記回転軸に外嵌
固定する。電動機の運転時には、前記転動体5、5aの
転動に基づいて上記内輪4、4aが、上記回転軸と共に
回転する。鉄道車両用電動機の場合には、上記電動機ケ
ースと回転軸との間に電位差を生じる。この為、一般的
な転がり軸受を使用した場合には、上記転動体5、5a
を通じて電流が流れ、前述した様な電食が発生する。こ
れに対して、図8に示した様な電食防止転がり軸受を使
用すれば、絶縁皮膜8、8aの存在に基づいて上記電流
が流れなくなり、構成各部材同士の当接部に電食が発生
する事を防止できる。
【0006】上述の様な電食防止転がり軸受の絶縁皮膜
8、8aを造る為の絶縁材料としては、従来から各種の
ものが知られている。例えば、特開平3−277818
号公報には上記絶縁材料として、ポリアミド66(PA
66)、ポリアミド6(PA6)、ポリブチレンテレフ
タレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(P
ET)、ガラス繊維を含有したポリフェニレンサルファ
イド樹脂(PPS)が記載されている。更に、特願平5
−79447号には、上記絶縁材料に加えて、ガラス繊
維を含有する芳香族ポリアミド樹脂が記載されている。
【0007】又、何れの絶縁材料を使用する場合でも、
外輪2、2aの外周面6、6a及び端面7、7aを覆う
絶縁皮膜8、8aを造る作業は、図9に示す様な製造装
置により行なっている。この図9に示した製造装置は、
図8(A)に示した構造を造る為のもので、固定側金型
10とコアピン11と移動側金型12とを有する。この
うちのコアピン11は、図9の左右方向に平行移動し
て、上記固定側金型10に対し遠近動する。そして、こ
の固定側金型10への近接時にその先端面11aを、こ
の固定側金型10の側面10aに密接させる。又、上記
コアピン11の先端部11bは、上記外輪2を外嵌支持
自在な外径寸法を有する円柱状に形成している。
【0008】一方、上記移動側金型12は、上記コアピ
ン11の周囲に設けられて、このコアピン11と共に上
記固定側金型10に対し遠近動自在である。即ち、これ
ら移動側金型12とコアピン11とは、一体的に結合さ
れている。この移動側金型12の一部で上記コアピン1
1の先端部11bの周囲部分には、円環状の凹部13を
形成している。この凹部13の内径寸法は、上記先端部
11bに外嵌支持される外輪2の外径寸法よりも僅かに
大きい。従って、この外輪2の外周面6と上記凹部13
の内周面との間には円筒状空間14が形成される。
【0009】又、上記外輪2の片方(図9の左方)の端
面7と上記凹部13の奥面13aとの間には円輪状空間
15aを、上記外輪2の他方(図9の右方)の端面7と
上記固定側金型10の側面10aに形成した円環状の凹
部16との間には円輪状空間15bを、それぞれ形成し
ている。これら両円輪状空間15a、15bの外周縁部
と上記円筒状空間14の軸方向両端とが互いに連続し
て、絶縁皮膜8を射出成形する為のキャビティ17を構
成している。
【0010】又、上記固定側金型10の側面10aで、
上記円輪状空間15bに対向する、上記コアピン11を
中心とする単一円周上位置には、複数のゲート18、1
8を、円周方向等間隔に形成している。そして、上記固
定側金型10の内部には通路19を設け、この通路19
に送り込む溶融樹脂を、上記各ゲート18、18を介し
て上記キャビティ17内に送り込み自在としている。
【0011】更に、上記移動側金型12の内側には複数
本のエジェクトピン20、20を、この移動側金型12
の移動方向(図9の左右方向)に亙る出入り自在に設け
ている。このエジェクトピン20、20は、上記キャビ
ティ17内に溶融樹脂を送り込む際には上記移動側金型
12内に引っ込んで、その先端面を前記奥面13aと同
一平面上に位置させる。そして、上記キャビティ17内
に注入した樹脂が固化した後に上記各エジェクトピン2
0、20は、その先端部を上記奥面13aから突出させ
て、上記キャビティ17内で射出成形された絶縁皮膜8
を、上記外輪2と共に移動側金型12に形成した凹部1
3の内側から押し出す。
【0012】上述の様に構成される製造装置により、図
8(A)に示す様な絶縁皮膜8を、外輪2の外周面6と
端面7、7とを覆う状態で形成する作業は、次の様にし
て行なう。先ず、図9、10に示す様に、固定側金型1
0の側面10aとコアピン11の先端面11a及び移動
側金型12の側面12aとを突き合わせる。この状態
で、図11に示す様に上記通路19に溶融樹脂を圧入
し、この溶融樹脂を、上記複数のゲート18、18を通
じて上記キャビティ17内に送り込む。
【0013】この様にしてキャビティ17内に送り込ま
れた溶融樹脂は、このキャビティ17内を軸方向及び円
周方向に流れてこのキャビティ17内に充満し、短時間
経過後に冷却固化する。そこで、冷却固化後に、先ず上
記移動側金型12を固定側金型10から退避させ(図9
の左方に移動させ)、この固定側金型10の側面10a
とコアピン11の先端面11a及び移動側金型12の側
面12aとを離隔させる。次いで、それまで引っ込んで
いた上記エジェクトピン20、20を突出させ、成形直
後の絶縁皮膜8を、外輪2ごと上記凹部13から押し出
す。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述の様な
従来から知られた絶縁材料は、電気絶縁性だけでなく熱
絶縁性も高い(熱伝導率が悪い)為、これらの材料によ
り電食防止転がり軸受の絶縁皮膜8、8aを造ると、次
に述べる様な問題を生じる。
【0015】即ち、電食防止転がり軸受を組み込む鉄道
車両用電動機は、運転時に電機子部分等からの発熱によ
って温度上昇し、この熱が電動機の回転軸等を通じて電
食防止転がり軸受の構成各部材に伝わる。この様に構成
各部材に伝わった熱が、電動機ケース等に迅速に伝われ
ば、特に問題を生じないが、上記絶縁皮膜8、8aの存
在に基づき、この熱の伝達は必ずしも効率良く行なわれ
ない。この結果、上記電動機の運転時に電食防止転がり
軸受の温度が相当に上昇し、この電食防止転がり軸受の
耐久性を損なう原因となる。
【0016】この様な問題を解決する為に、上記絶縁皮
膜8、8aを構成する絶縁材料中に、熱伝導性の高い充
填材を混入する事も考えられる。ところが、現時点に於
いては、熱伝導性が高くしかも十分な電気絶縁性を有
し、且つ、上記絶縁皮膜8、8aを構成するのに適当な
材料が知られていない。従って、この様な方法は現実的
ではない。
【0017】この為本発明者は、上記各絶縁皮膜8、8
aの厚さ寸法を小さく(薄く)する事で、これら絶縁皮
膜8、8aを通じての熱伝達効率を向上させる事を考え
た。即ち、絶縁皮膜8、8aを通じて流れる熱の伝達量
は、各絶縁皮膜8、8aの厚さ寸法に反比例する為、こ
の厚さ寸法を小さくする事で十分な熱伝達量を確保すれ
ば、電食防止転がり軸受の温度上昇を抑えられる。例え
ば、従来から使用されていた一般的な電食防止転がり軸
受の場合には、絶縁皮膜8、8aの厚さ寸法が0.8〜
1.0mm程度であったが、この厚さ寸法を0.6mm以
下、好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm
程度にまで小さくすれば、十分な熱伝達量を確保できる
と考えられる。
【0018】ところが、単に絶縁皮膜8、8aの厚さ寸
法を小さくしただけでは、十分な性能(耐久性、信頼性
を含む)を有する電食防止転がり軸受を得る事ができな
い。この様に、厚さ寸法を小さくする事で性能が不足す
る原因としては、次のの2通りの原因が考えられ
る。
【0019】 絶縁皮膜8、8aを構成する絶縁材料
として従来から知られていたものを使用したのでは、厚
さ寸法を小さくする事で十分な性能を得られなくなる。 従来の成形装置を使用したのでは、絶縁皮膜8、8
aの厚さ寸法を小さくする事に伴って、成形直後の絶縁
皮膜8、8aが破損し易くなる。
【0020】先ず、上記に就いて説明する。前述の従
来から知られた各種絶縁材料のうち、例えばPPSや芳
香族ポリアミド樹脂は、衝撃強度が弱く、電動機組立作
業時等、電食防止転がり軸受の取り扱い中や、組立後電
動機使用中に破損する可能性があり、厚さ寸法をあまり
小さくした場合には、十分な信頼性を確保できない。
又、PA66は耐熱性が不足し、鉄道車両用電動機の使
用温度(一般に100〜120℃程度)に長期間曝らさ
れた場合には劣化する為、耐久性が不十分となる。
【0021】次に、上記に就いて説明する。図9に示
す様な製造装置により絶縁皮膜8、8aを造る場合、キ
ャビティ17内に溶融樹脂を、複数のゲート18、18
から高速で送り込む。隣り合うゲート18、18からキ
ャビティ17内に送り込まれた溶融樹脂は、これらゲー
ト18、18の中間位置で互いに合流し、合流部にウェ
ルドと呼ばれる合わせ目を形成する。この様なウェルド
には、上記溶融樹脂の送り込み前にキャビティ17内に
存在した空気や、溶融樹脂から発生したガスが集中し易
い。そして、これら空気やガスは、キャビティ17内に
送り込まれる溶融樹脂の流れにより断熱圧縮されて温度
上昇し、高温になる。この結果、上記ウェルド部分に存
在する樹脂が高温により劣化する、所謂焼けを起こし、
このウェルド部分の強度が低下する。
【0022】この様にして生じるウェルド部分の強度低
下は、電食防止転がり軸受の取り扱い時又は使用時に、
外部から加えられた衝撃や樹脂中の残留応力等に起因し
て、当該部分に亀裂が発生する原因となる。この様にし
て亀裂が生じると、亀裂部分に摩耗金属粉等が進入する
等により、電気絶縁性が損なわれ、電食を生じる原因と
なる。
【0023】この様な絶縁皮膜8、8aの破損の原因と
なる残留応力とウェルド部分の強度との関係に就いて、
本発明者が行なった実験に就いて説明する。溶融樹脂の
射出成形に基づいて絶縁皮膜8の内部に生じる残留応力
は、この絶縁皮膜8の外周面の接線方向に亙る応力と軸
方向に亙る応力とに大別されるが、このうちの接線方向
の応力が、上記ウェルド部分の破損に結び付く。又、こ
の様な残留応力は、 (射出成形後の樹脂収縮率)×(樹脂の引っ張り弾性
率) で概算できる。
【0024】そこで、上記絶縁皮膜8を形成するのに従
来から一般的に使用されていた2種類の樹脂に就いて、
その残留応力を計算により求めたところ、次の様な値を
得た。尚、残留応力は、射出圧力等、成形時の条件によ
り多少変動するので、次の値はあくまでも概算値であ
る。 芳香族系ポリアミド樹脂である、三井石油化学株式会社
製の『アーレン』(商品名)にガラス繊維を40重量%
加えたものでは、40〜60MPa PPSである、ポリプラスチック株式会社製の『フォー
トロン』(商品名)にガラス繊維を40重量%加えたも
のでは、40〜70MPa これら2種類の材料により絶縁皮膜8を形成した場合、
ウェルド部分には上述の様な大きさの残留応力が、この
ウェルド部分を破壊する(引き離す)方向の力として加
わる。
【0025】そこで、実際にこれら2種類の材料により
上記絶縁皮膜8を造った場合に、ウェルド部分の引っ張
り強度が上記残留応力に十分対抗できるか否かを知る
為、次の様な実験を行なった。即ち、上記2種類の材料
により、JIS1号引っ張り試験用ダンベル片を、射出
成形により造って試験片とし、この試験片を引っ張り試
験に供した。各試験片はその中央部に、図9に示した装
置により造られる絶縁皮膜8の場合と同様のウェルド部
を有する。引っ張り試験には、株式会社島津製作所製の
オートグラフ AG50KNDを使用し、引っ張り速度5mm/min
で各試験片を引っ張った。この結果、上記『アーレン』
で造られた試験片のウェルド部分の引っ張り強度は71
MPa 、『フォートロン』で造られたものの引っ張り強度
は77MPaであった。
【0026】この様にして求めた、実際のウェルド部分
の引っ張り強度と、残留応力に基づいてこのウェルド部
分に加わると考えられる応力の概算値とを比較すると、
引っ張り強度が応力を上回ってはいるが、その差が小さ
い事が解る。従って、外部から上記ウェルド部分を破壊
する方向に少しの力が加わった場合でも、このウェルド
部分が破損する可能性が高い。特に、上記絶縁皮膜8を
薄くする事で、上記ウェルド部分の絶対強度が低下した
場合には、この傾向が顕著になる。従って、絶縁皮膜8
を薄くし、しかも十分な耐久性、信頼性を確保する為に
は、上記ウェルド部分の強度を向上させる事が重要にな
る。
【0027】又、ウェルド部分に集中した空気やガス
は、ボイドと呼ばれる気泡となってこのウェルドの内部
に残り易い。このボイドは、その内部に油分、水分、グ
リース等の異物が進入し易い。従って、上記ボイドが、
絶縁皮膜8の内周面から外周面まで連続した状態で形成
されていると、このボイド内に進入した導電性の異物に
よって電気絶縁性が損なわれ、やはり電食を生じる原因
となる。
【0028】更に、図9に示す様な従来装置により外輪
2の外周面を覆う状態で絶縁皮膜8を形成する場合、次
の様な理由で、十分に薄くしかも大きな強度を有する絶
縁皮膜8を形成する事ができない。即ち、上記絶縁皮膜
8を形成する場合に上記外輪2は、図10に示す様にコ
アピン11の先端部11bの周囲に、緩く外嵌する。こ
の状態で上記外輪2の内周縁と上記先端部11bの外周
面との間には、数μm〜数十μm程度の隙間21が存在
する。
【0029】一方、上記絶縁皮膜8の強度を高める為に
は、前記キャビティ17内に溶融樹脂を送り込む際の射
出圧力を高くする事が効果がある。ところが、キャビテ
ィ17内に送り込む樹脂の圧力が高くなると、射出に伴
って上記外輪2の外周面6に、直径方向内方に向いた強
い力が加わり、この外輪2の直径が弾性的に縮まる。こ
の様にして縮まった外輪2の直径は、樹脂の送り込み停
止に伴って弾性的に広がり、成形直後の絶縁皮膜8の外
周面を、移動側金型12の凹部13の内周面に向け強く
押圧する。
【0030】この結果、成形直後の絶縁皮膜8の外周面
と凹部13の内周面との間に大きな摩擦力が作用する。
この状態でエジェクタピン20を突出させ、上記絶縁皮
膜8を設けた外輪2を上記凹部13から押し出そうとす
ると、上記絶縁皮膜8の一部でエジェクタピン20によ
り押される部分に過大な圧縮応力が加わる。又、上記絶
縁皮膜8の一部で上記凹部13の内周面と外輪2の外周
面6との間部分に過大な剪断応力が加わる。この結果、
成形直後の絶縁皮膜8が破損する可能性が高くなる等、
円滑な離型作業を行なえなくなる。
【0031】この様に離型作業の妨げとなる上記摩擦力
の大きさは、上記キャビティ17内に送り込む溶融樹脂
の圧力にほぼ比例する。この為、図9に示す様な従来の
製造装置を使用する限り、上記圧力を十分に高くでき
ず、射出圧力を高める事による絶縁皮膜8の強度向上を
図る事ができない。この様な現象は、図8(B)に示し
た構造で、内輪4aの内周面に絶縁皮膜8aを形成する
場合にも、(内外周方向に逆になるが)同様に現われ
る。
【0032】本発明の電食防止転がり軸受とその製造装
置は、上述の様な事情に鑑みて発明したものである。
【0033】
【課題を解決するための手段】本発明の電食防止転がり
軸受とその製造装置のうち、請求項1〜2に記載した電
食防止転がり軸受は、前述の従来から知られた電食防止
転がり軸受と同様に、内周面に外輪軌道を有する外輪
と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、上記外輪軌道と
内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体
と、上記外輪の外周面と上記内輪の内周面との少なくと
も一方の周面をその全面に亙って被覆した絶縁皮膜とを
備える。特に、本発明の電食防止転がり軸受に於いて
は、上記絶縁皮膜が、ガラス繊維を含有するポリアミド
46により0.6mm以下の厚さ寸法に、又は、PPS若
しくは芳香族ポリアミド樹脂により0.5〜0.6mmの
厚さ寸法に造られている。
【0034】又、請求項3に記載した電食防止転がり軸
受の製造装置は、軌道面を形成した第一の周面と軌道面
を形成していない第二の周面とを有する軌道輪に、上記
第二の周面を覆う状態で絶縁皮膜を形成するものであ
る。この様な本発明の電食防止転がり軸受の製造装置
は、固定側金型と、この固定側金型に対し遠近動自在
で、その先端部に軌道輪を、上記第一の周面側で嵌合支
持自在とし、上記固定側金型への近接時にその先端面を
この固定側金型の側面に突き合わせ自在な保持部材と、
この保持部材と同心に設けられて、この保持部材と共に
上記固定側金型に対し遠近動自在な移動側金型と、この
移動側金型の一部周面と上記保持部材の先端部に支持さ
れた軌道輪の第二の周面との間の円筒状空間を含んで形
成されるキャビティと、上記固定側金型の側面でこのキ
ャビティに対向する部分の円周方向等間隔位置に形成さ
れた複数のゲートと、上記固定側金型の内部に設けら
れ、上記各ゲートを介して上記キャビティ内に溶融樹脂
を送り込む通路と、上記移動側金型の内側に、この移動
側金型の移動方向に亙る出入り自在に設けられ、突出時
に上記キャビティ内で射出成形された絶縁皮膜を上記軌
道輪と共に移動側金型の内側から押し出すエジェクトピ
ンとを備えている。
【0035】上記移動側金型は、上記第二の周面に対向
する部分に位置する第一部分と、この第二の周面に対向
する部分から軸方向に外れた部分に位置する第二部分と
から成る。そして、上記第一部分は、上記ゲートの数と
同数で、それぞれが上記軌道輪の直径方向に変位自在な
複数の金型素子から成り、この複数の金型素子が合わさ
って上記第二の周面と対向する円筒面を構成する。又、
隣り合う金型素子の円周方向端面同士の合わせ面は、隣
り合うゲートの円周方向中間位置に存在し、上記エジェ
クトピンは上記第二部分の内側に設けられている。
【0036】
【作用】上述の様に構成される本発明の電食防止転がり
軸受とその製造装置によれば、十分な電気絶縁性を確保
し、しかも絶縁皮膜を薄くして熱を外部に逃がす性能の
優れた電食防止転がり軸受を得られる。即ち、ガラス繊
維を含有するポリアミド46は強度が大きく、薄くして
も十分な耐久性と電気絶縁性とを確保できる。従って、
絶縁皮膜を薄くして転がり軸受内に熱が蓄積される事を
防止できて、電食防止転がり軸受の耐久性向上を図れ
る。
【0037】そして、絶縁皮膜を薄く形成する事によ
り、吸水性を有し寸法変化が大きいポリアミド樹脂を使
用できて、電食防止転がり軸受として十分に実用的な性
能を得られる。即ち、ポリアミド46(ナイロン46)
を含む脂肪族ポリアミド樹脂は、吸水により寸法変化を
起こす。この為従来は、ハウジングに対して外輪を高精
度で内嵌したり、回転軸に対して内輪を高精度で外嵌し
たりする必要のある電食防止転がり軸受の絶縁皮膜の材
料としては不向きであるとされていた。しかしながら、
本発明の電食防止転がり軸受の場合には、絶縁皮膜の厚
さ寸法の絶対値が小さい為、吸水により上記絶縁皮膜の
厚さ寸法が変化した(大きくなった)場合でも、その変
化量は実用上問題ない程度に小さなものとなる。又、P
PSや芳香族ポリアミド樹脂により絶縁皮膜を形成する
場合でも、厚さ寸法を0.5〜0.6mm程度に規制すれ
ば、実用に耐える放熱性と耐久性とを得られる。
【0038】更に、本発明の電食防止転がり軸受の製造
装置によれば、キャビティ内に送り込む溶融樹脂の圧力
を高くしても、成形後の絶縁皮膜を含む軌道輪の取り出
しを、成形直後の絶縁皮膜に無理な応力を加える事なく
行なえる。又、ウェルド部分にボイドが形成されにくく
なって、このウェルド部分の強度並びに電気絶縁性の向
上を図れる。
【0039】
【実施例】図1〜4は、本発明の電食防止転がり軸受の
製造装置の第一実施例を示している。この製造装置は、
前述の図9に示した従来から知られた製造装置と同様
に、固定側金型10と、保持部材であるコアピン11
と、移動側金型12Aとを有する。このうちのコアピン
11は、図1の左右方向に平行移動して、上記固定側金
型10に対し遠近動する。そして、この固定側金型10
への近接時にその先端面11aを、この固定側金型10
の側面10aに密接させる。又、上記コアピン11の先
端部11bは、軌道輪である外輪2を、その内周面(第
一の周面)部分で外嵌支持自在な外径寸法を有する、円
柱状に形成している。
【0040】一方、上記移動側金型12Aは、上記コア
ピン11の周囲に設けられて、このコアピン11と共に
上記固定側金型10に対し遠近動自在である。即ち、こ
れら移動側金型12Aとコアピン11とは、一体的に結
合されている。この移動側金型12Aの一部で上記コア
ピン11の先端部11bの周囲部分には、円環状の凹部
13Aを形成している。この凹部13Aの内径寸法は、
上記先端部11bに外嵌支持される外輪2の外径寸法よ
りも僅かに(例えば直径で0.8mm程度)大きい。従っ
て、この外輪2の外周面6(第二の周面)と上記凹部1
3Aの内周面との間には円筒状空間14Aが形成され
る。
【0041】又、上記外輪2の片方(図1の左方)の端
面7と上記凹部13Aの奥面13aとの間には円輪状空
間15aを、上記外輪2の他方(図1の右方)の端面7
と上記固定側金型10の側面10aに形成した円環状の
凹部16との間には円輪状空間15bを、それぞれ形成
している。これら両円輪状空間15a、15bの外周縁
部と上記円筒状空間14の軸方向両端とが互いに連続し
て、絶縁皮膜8を射出成形する為のキャビティ17Aを
構成している。
【0042】又、上記固定側金型10の側面10aで、
上記キャビティ17Aを構成する円輪状空間15bに対
向する、上記コアピン11を中心とする単一円周上位置
には、複数のゲート18、18を、円周方向等間隔に形
成している。そして、上記固定側金型10の内部には通
路19を設け、この通路19に送り込む溶融樹脂を、上
記各ゲート18、18を介して上記キャビティ17A内
に送り込み自在としている。
【0043】又、上記移動側金型12Aの内側には複数
本のエジェクトピン20、20を、この移動側金型12
Aの移動方向(図1の左右方向)に亙る出入り自在に設
けている。このエジェクトピン20、20は、上記キャ
ビティ17A内に溶融樹脂を送り込む際には上記移動側
金型12A内に引っ込んで、その先端面を前記奥面13
aと同一平面上に位置させる。そして、上記キャビティ
17A内に注入した樹脂が固化した後に上記各エジェク
トピン20、20は、その先端部を上記奥面13aから
突出させて、上記キャビティ17A内で射出成形された
絶縁皮膜を、上記外輪2と共に移動側金型12Aに形成
した凹部13Aの内側から押し出す。
【0044】更に、本発明の電食防止転がり軸受の製造
装置に於いては、上記移動側金型12Aは、上記外輪2
の周囲に位置する第一部分22と、この外輪2の周囲か
ら外れた部分に位置する第二部分24とから成る。又、
上記第一部分22は、複数の金型素子23、23を組み
合わせて成る。これら各金型素子23、23の数は、上
記ゲート18、18の数と同数(第一実施例の場合には
4個)としている。又、これら各金型素子23、23
は、それぞれが上記外輪2の直径方向に変位自在であ
る。
【0045】そして、これら複数の金型素子23、23
が上記直径方向の内側に変位した場合に、隣り合う金型
素子23、23の円周方向端面同士が合わさって、上記
外輪2の外周面6を囲む円筒面25を構成する。又、隣
り合う金型素子23、23の円周方向端面同士の合わせ
面26、26は、隣り合うゲート18、18の中央位置
に存在する。更に、上記複数のエジェクトピン20、2
0は、上記第二部分24の内側に設けられている。
【0046】上述の様に構成される本発明の電食防止転
がり軸受の製造装置によれば、キャビティ17A内に送
り込む溶融樹脂の圧力を高くしても、成形後の絶縁皮膜
8を含む外輪2の取り出しを、成形直後の絶縁皮膜8に
無理な応力を加える事なく行なえる。又、ウェルド部分
にボイドが形成されにくくなって、このウェルド部分の
強度並びに電気絶縁性の向上を図れる。
【0047】即ち、上記絶縁皮膜8を射出成形する際に
は、上記複数の金型素子23、23を直径方向内方に変
位させる事により、隣り合う金型素子23、23の円周
方向端面同士を突き合わせる。そして、図3に示す様
に、上記内輪2の外周面6を囲む円筒面25を形成す
る。そして、この状態で、これら外周面6と円筒面25
とで囲まれるキャビティ17A内に、前記複数のゲート
18、18から溶融樹脂を、十分に高圧で送り込む。
尚、各ゲート18、18からキャビティ17A内への溶
融樹脂の送り込みは、各ゲート18、18ごとに同じ条
件(同量、同圧)で行なう。
【0048】この様に複数のゲート18、18からキャ
ビティ17A内に送り込まれた溶融樹脂は、このキャビ
ティ17A内を軸方向に流れると同時に円周方向に流れ
て、このキャビティ17A内に充満する。隣り合うゲー
ト18、18からキャビティ17A内に送り込まれた溶
融樹脂は、隣り合うゲート18、18の丁度中間位置で
合流し、ウェルドを形成する。この様にウェルドを形成
する部分には、丁度円周方向に隣り合う金型素子23、
23の合わせ面26、26が存在する。
【0049】この合わせ面26、26を構成する、上記
各金型23、23の円周方向端面は、これら端面同士を
密接させるべく、平滑面に仕上げられている。しかしな
がら、上記合わせ面26、26部分には、加工精度上不
可避な、微細な隙間が存在する。この様な隙間には、溶
融樹脂は殆ど入り込まないが、この溶融樹脂に押された
気体は入り込む。従って、上記隣り合うゲート18、1
8から送り込まれた溶融樹脂に押されて、上記キャビテ
ィ17Aの一部(ウェルド部分)に集中した空気やガス
は、これら隙間を通じて排出される。
【0050】従って、これら空気やガスがウェルド部分
にボイドを造る事がなくなり、ボイドの存在によりウェ
ルド部分の強度や電気絶縁性が低下する事を防止でき
る。又、上記空気やガスが断熱圧縮される事がなくなる
為、上記ウェルド部分で焼けが生じる事もなくなり、や
はりこのウェルド部分の強度向上を図れる。
【0051】上述の様にして、キャビティ17A内に溶
融樹脂を送り込む事で、外輪2の外周面6及び両端面
7、7を覆う絶縁皮膜8を成形した後、この絶縁皮膜8
を外輪2と共に取り出す際には、先ず、図4に示す様
に、第一部分22を構成する複数の金型素子23を直径
方向外方に変位させる。この結果、これら複数の金型素
子23の内周面と、形成されたばかりの絶縁皮膜8の外
周面とが離隔する。この状態で、前記複数のエジェクト
ピン20を前記凹部13Aの奥面13aから突き出せ
ば、上記絶縁皮膜8の外周面と上記各金型素子23の内
周面とを摺接させる事なく、移動側金型12Aの内部か
ら絶縁皮膜8を形成した外輪2を取り出せる。従って、
絶縁皮膜8の強度を向上させるべく、上記キャビティ1
7A内に送り込む溶融樹脂の圧力を高くしても、取り出
し作業時に上記絶縁皮膜8に無理な応力が作用しない。
【0052】次に、図5は本発明の製造装置の第二実施
例を示している。本実施例の場合には、円筒状空間14
Aの外周面と円輪状空間15aの外側面とを滑らかに連
続させる為の湾曲部27を、第一部分22を構成する各
金型素子23、23の内周面に形成している。その他の
構成及び作用は、上述した第一実施例と同様である為、
同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略す
る。
【0053】次に、図6〜7は本発明の製造装置の第三
〜第四実施例を示している。前述した第一実施例が移動
側金型12Aの第一部分22を、4個の金型素子23、
23により構成していた。これに対し、これら各実施例
の場合には、3個の金型素子23a、23a(図6に示
した第三実施例)、或は6個の金型素子23b、23b
(図7に示した第四実施例)により構成している。その
他の構成及び作用は、前述した第一実施例と同様であ
る。
【0054】次に、絶縁皮膜8を構成する材料として、
ガラス繊維を含むポリアミド46を使用する事による効
果を確認する為、本発明者が行なった実験に就いて説明
する。実験は、図8(A)に示す様な電食防止転がり軸
受の外輪2に、同図に示す様な絶縁皮膜8を形成して、
本発明の実施例となる試験片を3種類、本発明からは外
れる比較例としての試験片を4種類、合計7種類の試験
片を作成する事で行なった。そして、これら各試験片の
絶縁皮膜8の寸法安定性、電気絶縁性能、耐クリープ
性、耐衝撃性を測定した。尚、使用した外輪2の外径寸
法×幅寸法は160×37mmである。又、絶縁皮膜8の
形成作業には、図1〜4(厚さが0.4mmの絶縁皮膜8
の製造時)又は図9(同じく1.0mmの絶縁皮膜の製造
時)に示す様な製造装置を使用した。
【0055】絶縁皮膜8を形成する為の絶縁材料として
は、ガラス繊維を含有するポリアミド46の他、PP
S、芳香族ポリアミド樹脂を使用した。ポリアミド46
は帝人株式会社製の『テイジンナイロン46』(商品
名)を、PPSはポリプラスチック株式会社製の『フォ
ートロン』(商品名)を、芳香族ポリアミド樹脂として
は三井石油化学株式会社製の『アーレン』(商品名)
を、それぞれ使用した。又、ガラス繊維としては何れ
も、繊維径が10〜15μmで、長さが0.2〜1.0
mmのものを使用した。
【0056】尚、上記した4種類の試験項目は、次の点
で、電食防止転がり軸受にとって重要である。先ず、寸
法安定性は、絶縁皮膜8を設けた外輪2をハウジングに
対し、精度良く内嵌固定する為に重要である。この様な
寸法安定性の試験は、試験片を水中に浸漬して20時間
放置し、浸漬前後の寸法変化量を、上記絶縁皮膜8の厚
さ寸法として測定した。変化量(増加量)が8μm以下
であれば合格(次表の)とし、8μmを越えた場合には
不合格(同じく×)とした。
【0057】次に、電気絶縁性能は、転がり軸受の構成
各部材の電食を防止する為に重要である。この様な絶縁
性能の試験は、上記寸法安定性の試験後、表面に付着し
た水を拭き取った後、上記絶縁皮膜8の外周面に金属製
の環体を装着し、この環体と外輪2との間の電気抵抗値
を測定する事で行なった。抵抗値が2000MΩ以上の
場合に合格とし、2000MΩ未満の場合には不合格と
した。
【0058】又、耐クリープ性は、ハウジングに内嵌固
定した外輪2が、長時間経過後にもこのハウジングの内
側でがたつかない様にする為に重要である。即ち、電食
防止転がり軸受は使用時に比較的高温に曝らされる場合
が多い。高温に曝らされると、上記絶縁皮膜8を構成す
る樹脂材料が、ハウジング内周面から加えられる押圧力
により側方に逃げ(クリープし)、上記絶縁皮膜8の厚
さ寸法が減少する傾向になる。この様にして発生する厚
さ寸法の減少量が多くなると、ハウジングの内側で外輪
2ががたつく様になり、電食防止転がり軸受を組み込ん
だ回転支持部で異音や振動が発生する、ハウジングに対
し外輪2が回転して、上記絶縁皮膜8の外周面が摩耗し
てよりがたつきが大きくなる、等の不具合が生じる。
【0059】そこで、前記各試験片を締め代30μmで
鋼製のハウジングに圧入し、100℃の雰囲気中に10
0時間放置して、放置前後の寸法変化を、上記絶縁皮膜
8の厚さ寸法として測定した。変化量(減少量)が8μ
m以下であれば合格とし、8μmを越えた場合には不合
格とした。
【0060】更に、耐衝撃性は、絶縁皮膜8の破損防止
を図る為に重要である。この耐衝撃性を測定すべく、前
記各試験片を100mmの高さから鋼製定盤の上に落下さ
せ、上記絶縁皮膜8に亀裂が発生するか否かを観察する
事で行なった。亀裂が発生しなかったものを合格、発生
したものを不合格とした。上述の様にして行なった実験
の結果を次表に示す。
【0061】
【表1】
【0062】この表の記載から明らかな通り、本発明の
電食防止転がり軸受の場合には、寸法安定性、絶縁性
能、耐クリープ性、耐衝撃性の何れの点でも実用上十分
な性能を発揮できる。尚、ガラス繊維は耐クリープ性を
向上させる為に含有させるが、含有量が10重量%未満
の場合には効果が不十分となる。又、60重量%を越え
て含有させた場合には、溶融樹脂の流動性が悪化し、こ
の溶融樹脂を前記キャビティ17A内にまんべんなく行
き渡らせる事が難しくなる。従って、ポリアミド46中
へのガラス繊維の含有量は、10〜60重量%、更に好
ましくは20〜40重量%とする。
【0063】尚、図示の実施例は、外輪2の外周面6及
び両端面7、7を覆う絶縁皮膜8を形成する為の製造装
置に就いて示したが、本発明は、図8(B)に示す様
な、内輪4aの内周面及び両端面を覆う絶縁皮膜8aを
造る為の製造装置にも適用できる。但しこの場合には、
内輪4aの内周面と対向する円筒面を構成する為の金型
素子を、絶縁皮膜8aを射出成形した後、直径方向内方
に退避させる必要がある。そこで、隣り合う金型素子の
円周方向端縁同士の干渉を防止すべく、これら隣り合う
金型素子の円周方向両端面同士の間にスペーサを設け
る。このスペーサは、軸方向に変位する事で、上記両端
面同士の間に出入りする。
【0064】射出成形時上は、各スペーサが上記両端面
同士の間に入り込んで、上記各金型素子と共に、上記内
輪4aの内周面と対向する円筒面を形成する。絶縁皮膜
8aを射出成形した後は、各スペーサを軸方向に移動さ
せ上記両端面同士の間から抜き出した後、上記各金型素
子を直径方向内方に変位させる。更に、本発明の製造装
置は、特にガラス繊維を含有したポリアミド46により
0.6mm以下の絶縁皮膜を形成する場合に限定されず、
PPS、芳香族ポリアミド樹脂を0.5〜0.6mm程度
の厚さ寸法にしたり、更には他の材料により、より厚い
絶縁皮膜を形成する場合にも利用できる事は明らかであ
る。
【0065】
【発明の効果】本発明の電食防止転がり軸受とその製造
装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、十分
な電気絶縁性を確保し、しかも絶縁皮膜を薄くして熱を
外部に逃がす性能の優れた電食防止転がり軸受を得られ
る。又、薄いにも拘らず、優れた耐衝撃性を有する絶縁
皮膜を得られる。従って、電食防止転がり軸受を組み込
んだ回転支持部分の信頼性、耐久性を向上させる事がで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電食防止転がり軸受の製造装置の第一
実施例を示す要部断面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】絶縁皮膜を射出成形する状態を示す、図1のB
部に相当する図。
【図4】射出成形後に絶縁皮膜及び外輪を取り出す状態
を示す、図3と同様の図。
【図5】本発明の電食防止転がり軸受の製造装置の第二
実施例を示す要部断面図。
【図6】同第三実施例を示す、図2と同様の図。
【図7】同第四実施例を示す、図2と同様の図。
【図8】従来から知られた電食防止転がり軸受の2例を
示す断面図。
【図9】従来の電食防止転がり軸受の製造装置を示す要
部断面図。
【図10】絶縁皮膜を射出成形前の状態で示す、図9の
C部に相当する図。
【図11】絶縁皮膜を射出成形している状態で示す、図
10と同様の図。
【符号の説明】
1、1a 外輪軌道 2、2a 外輪 3、3a 内輪軌道 4、4a 内輪 5、5a 転動体 6、6a 外周面 7、7a 端面 8、8a 絶縁皮膜 9、9a 凹溝 10 固定側金型 10a 側面 11 コアピン 11a 先端面 11b 先端部 12、12A 移動側金型 12a 側面 13、13A 凹部 13a 奥面 14、14A 円筒状空間 15a、15b 円輪状空間 16 凹部 17、17A キャビティ 18 ゲート 19 通路 20 エジェクトピン 21 隙間 22 第一部分 23、23a、23b 金型素子 24 第二部分 25 円筒面 26 合わせ面 27 湾曲部

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周
    面に内輪軌道を有する内輪と、上記外輪軌道と内輪軌道
    との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、上記
    外輪の外周面と上記内輪の内周面との少なくとも一方の
    周面をその全面に亙って被覆した絶縁皮膜とを備える電
    食防止転がり軸受に於いて、上記絶縁皮膜が、ガラス繊
    維を含有するポリアミド46により0.6mm以下の厚さ
    寸法に造られている電食防止転がり軸受。
  2. 【請求項2】 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周
    面に内輪軌道を有する内輪と、上記外輪軌道と内輪軌道
    との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、上記
    外輪の外周面と上記内輪の内周面との少なくとも一方の
    周面をその全面に亙って被覆した絶縁皮膜とを備える電
    食防止転がり軸受に於いて、上記絶縁皮膜が、ポリフェ
    ニレンサルファイド樹脂若しくは芳香族ポリアミド樹脂
    により0.5〜0.6mmの厚さ寸法に造られている電食
    防止転がり軸受。
  3. 【請求項3】 軌道面を形成した第一の周面と軌道面を
    形成していない第二の周面とを有する軌道輪に、上記第
    二の周面を覆う状態で絶縁皮膜を形成する、電食防止転
    がり軸受の製造装置であって、 固定側金型と、この固定側金型に対し遠近動自在で、そ
    の先端部に軌道輪を、上記第一の周面側で嵌合支持自在
    とし、上記固定側金型への近接時にその先端面をこの固
    定側金型の側面に突き合わせ自在な保持部材と、この保
    持部材と同心に設けられて、この保持部材と共に上記固
    定側金型に対し遠近動自在な移動側金型と、この移動側
    金型の一部周面と上記保持部材の先端部に支持された軌
    道輪の第二の周面との間の円筒状空間を含んで形成され
    るキャビティと、上記固定側金型の側面でこのキャビテ
    ィに対向する部分の円周方向等間隔位置に形成された複
    数のゲートと、上記固定側金型の内部に設けられ、上記
    各ゲートを介して上記キャビティ内に溶融樹脂を送り込
    む通路と、上記移動側金型の内側に、この移動側金型の
    移動方向に亙る出入り自在に設けられ、突出時に上記キ
    ャビティ内で射出成形された絶縁皮膜を上記軌道輪と共
    に移動側金型の内側から押し出すエジェクトピンとを備
    え、 上記移動側金型は、上記第二の周面に対向する部分に位
    置する第一部分と、この第二の周面に対向する部分から
    軸方向に外れた部分に位置する第二部分とから成り、 上記第一部分は、上記ゲートの数と同数で、それぞれが
    上記軌道輪の直径方向に変位自在な複数の金型素子から
    成り、この複数の金型素子が合わさって上記第二の周面
    と対向する円筒面を構成するものであり、 隣り合う金型素子の円周方向端面同士の合わせ面は、隣
    り合うゲートの円周方向中間位置に存在し、 上記エジェクトピンは上記第二部分の内側に設けられて
    いる電食防止転がり軸受の製造装置。
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