JPH0723520A - 架空送電線の融雪装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】発熱特性が低下せず、耐食性、撥水性の送電線
融雪装置を提供する。 【構成】送電線(5) に巻付ける融雪線(1) の低キューリ
ー点磁性線材(2) に設けたアルミ、亜鉛等の１次防食被
覆層(3) の上に、弗素樹脂、シリコン樹脂等の高耐熱
性、高撥水性樹脂の２次防食被覆層(4) を設けることに
より、１次防食被覆層の薄肉化を可能にして磁性線材の
発熱特性の低下を防ぎ、送電線巻付け時に１次防食被覆
層にクラックが生じても２次防食被覆層により腐食の進
行を防ぎ、また、高撥水性の２次防食被覆層により、氷
雪片を付着し難くして僅かな着氷雪状態で速やかに融雪
できるようにし、また、磁性線材を低キューリー点にし
て着雪のない高温時に無駄な発熱をしないようにし送電
損失を防ぐ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、架空送電線の着雪を防
ぐ融雪装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】架空送電線に着氷雪が生ずると、電線や
その支持物に過大な重量がかかって電線の破断や鉄塔の
倒壊事故を起こしたり、着氷雪塊が落下して地上の設備
等を損壊することがあり、また着氷雪のある送電線が横
風を受けるとギャロッピング振動を起こして上下の電線
相互の接触事故を起こすことがあるので、この着氷雪を
防止するため電線に難着雪リング等を装着して着雪の肥
大化を防止しているが、このような難着雪リングによる
着雪の肥大化防止は完全な着氷雪防止には必ずしも有効
でなく、また特公平３−５５００６号の電線のように、
電線表面に着氷防止塗料の塗布層を設けた電線が知られ
ているがこれも着氷雪防止が完全でない。

【０００３】送電線の着氷雪を防止する効果的な対策と
して送電線の電流により発熱する磁性線材を電線に巻付
けその発熱により着氷雪を融かすことが知られている
が、これは鉄・ニッケル系合金または鉄・ニッケル・ク
ロム系合金等の磁性線材を送電線の鋼心アルミより線の
外周に巻付け、送電線の電流の交番磁界により磁性線材
に生ずるヒステリシス損、渦電流損による発熱で着雪を
融かすものである。このような磁性線材により融雪する
ものとしては、特開平１−９５４０７号の難着雪電線の
ように、低キューリー点磁性材のスパイラル線と強磁性
体のスパイラル線を並列させて電線の外周に巻付け送電
線の電流により発熱させて着雪を融かすようにした電線
が知られている。また、特公平４−４９７２３号の磁性
線材のように、送電線に巻付け発熱させて融雪する磁性
線として、磁性線材の周面にアルミ系の高導電性金属被
覆を断面積の１５〜４０％の厚さで設けたものが知られ
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記のような磁性線材
は以下のような問題点がある。 (1) 磁性線材を鋼心アルミより線の外周面上に直接巻付
けると耐食性の悪い磁性線材の腐食によりアルミより線
が悪影響を受けるので、磁性線材にアルミメッキや亜鉛
メッキ等を施したものが使用されているが、このメッキ
被覆を厚くすると発熱特性が低下する。 (2) 前記のように磁性線材にアルミ被覆をしても、アル
ミ被覆線材は沿岸地域においては腐食しやいので使用で
きない。 (3) 磁性線材を送電線に巻付ける時に磁性線材上のアル
ミ、亜鉛等のメッキ被覆にクラック等が生じ、そのクラ
ック発生個所から腐食が進行する。 (4) 送電線に巻付けた従来の磁性線材は表面の撥水性が
劣り氷雪片が付着しやすいために良好な融雪効果が得ら
れない。

【０００５】本発明は、前記のような問題点を解決し、
発熱特性が低下せず、高耐食性かつ高撥水性を有する架
空送電線の融雪装置を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め本発明の架空送電線の融雪装置は、低キューリー点の
磁性線材２の外周に、アルミニウムメッキまたは亜鉛メ
ッキまたはアルミニウム被覆等の防食金属被覆の１次防
食被覆層３を設け、この１次防食被覆層３の上に弗素樹
脂、シリコン樹脂等の高耐熱性、高撥水性樹脂被覆の２
次防食被覆層４を設けた融雪線１を構成し、この融雪線
１を送電線に巻付けたことを特徴とするものである。

【０００７】

【作用】送電線に巻付けられた磁性線材２は、送電線の
電流による交番磁界によりヒステリシス損、渦電流損を
生じて発熱し、この発熱により送電線の着氷雪を融雪す
る。着氷雪が生じない高温時期においては融雪を要しな
いので磁性線材２を発熱させる必要がないが、磁性線材
２はキューリー温度が常温近い低キューリー点であるか
ら、着氷雪が生じない高温時期には磁気特性が低下する
ことになり、したがってヒステリシス損による発熱を生
ぜず、無駄な送電損失を防ぐ。

【０００８】アルミ、亜鉛等の防食金属被覆の１次防食
被覆層３があることにより、融雪線１を送電線に巻付け
たときにこの１次防食被覆層３が鋼心アルミより線に接
触しても腐食が生じない。

【０００９】２次防食被覆層４を１次防食被覆層３の上
に設けたことにより、１次防食被覆層３の防食金属被覆
の厚さを薄くすることができ防食金属被覆の厚さ増加に
よる磁性線材２の発熱特性の低下が生じない。また、融
雪線１を送電線に巻付ける時に防食金属の１次防食被覆
層３にクラック等が生じても、その個所の上に防食プラ
スチックの２次防食被覆層４がありクラック発生個所の
腐食の進行が妨げられるので高耐食性となる。また、１
次防食被覆層３上の防食プラスチックの２次防食被覆層
４は、沿岸地域における使用を可能にする。

【００１０】弗素樹脂、シリコン樹脂等の高撥水性の樹
脂被覆の２次防食被覆層４を設けたことにより、氷雪片
が付着し難くなってそ付着量が少量となり、このため僅
かな着氷雪を融雪すればよいので速やかに融雪される。

【００１１】

【実施例】以下本発明の実施例を図面により説明する。
本発明の１実施例の架空送電線用融雪線を断面で示した
図１において、１は融雪線であり、これは低キューリー
点の磁性線材２の外周に防食金属被覆の１次防食被覆層
３を被覆し、その外周に高耐熱性、高撥水性樹脂被覆の
２次防食被覆層４を被覆したものである。

【００１２】前記の低キューリー点の磁性線材２には、
Fe−Ni系合金、またはFe−Ni−Cr−Si系合金、またはイ
ンバー等の磁性材料を用い、特にキューリー点が常温付
近の磁性材が好適である。たとえばFe−Ni系合金におい
て、Niが約３０％ではキューリー点が常温近くになり、
また磁気特性の温度変化が大きくなる。このような特性
は送電線の着氷雪を送電電流により発熱して融かすため
に送電線に巻付ける融雪線として好適である。着氷雪が
生ぜず融雪を必要としない高温時になってもヒステリシ
ス損、渦電流損を生じさせて無駄な発熱をさせることは
送電損失の増加となるので、高温で着氷雪がなく発熱を
必要としない時期には磁気特性が低下してヒステリシス
損による発熱を生じなくなり送電損失を生じないような
低キューリー点の発熱線が望ましいが、これには前記の
ようにキューリー点が常温近く、磁気特性の温度変化が
大きい特性の磁性線材が好適である。

【００１３】前記の１次防食被覆層３は、アルミニウム
メッキまたは亜鉛メッキまたはアルミニウム被覆等の防
食金属の被覆により形成する。磁性線材２の上の亜鉛メ
ッキ層やアルミ被覆層の厚さを厚くすると、その工程
で、たとえばメッキ温度の浸漬時間や過度の線引き加工
等により磁性線材２の特性が悪化するので、この特性が
悪化しない範囲で前記の防食金属被覆の１次防食被覆層
３を施す。この防食金属被覆の１次防食被覆層３を設け
ることにより、送電線の鋼心アルミより線に巻付けたと
きにアルミより線に直接接触しても腐食が生じない。

【００１４】また前記の２次防食被覆層４は、弗素樹脂
たとえばポリテトラフルオルエチレン（ＰＴＦＥ）、ま
たはシリコン樹脂等の高耐熱性、高撥水性の樹脂を塗布
または被覆または蒸着その他の手段により形成する。こ
の２次防食被覆層４を１次防食被覆層３の上に設けるの
で、１次防食被覆層３の防食金属被覆の厚さは薄くても
よいことになる。融雪線１を送電線に巻付けてその送電
電流により磁性線材２が発熱して着氷雪を融かす時に、
前記の防食金属被覆の厚さが増大すると、磁性線材２の
発熱特性が低下するが、前記のように１次防食被覆層３
の防食金属被覆の厚さを薄くできるので、発熱特性の低
下が生じない。

【００１５】前記の融雪線１は図２に示したように送電
線５に巻付ける。図２は前記の融雪線１を３条並列にし
て平均ピッチＰで送電線５に巻付けた状態を示してい
る。融雪線１の直径ｄは送電線５の直径Ｄにもよるが電
線直径Ｄが１８〜２０ｍｍの範囲では融雪線１の直径ｄ
は２〜４ｍｍである。平均ピッチＰは５〜５０ｍｍ程度
にして巻付ける。前記のように送電線５に巻付けた融雪
線１は、着氷雪が生ずる冬季においては、送電線の電流
による交番磁界により磁性線材２にヒステリシス損、渦
電流損が生じて発熱し送電線の着氷雪を融雪する。着氷
雪が生じない高温期においては磁性線材２が低キューリ
ー点のため磁気特性が低下するのでヒステリシス損によ
る発熱を生じない。

【００１６】冬季において送電電流の潮流が小さく前記
のように送電線５に融雪線１を巻付けても融雪効果が顕
著でない場合や、径間の電線の直下に民家、道路等があ
る個所を局部的に効率良く融雪したいような場合には、
前記のように送電線５上に融雪線１を巻付けた第１巻付
層６の上にさらに重ねて点線で示した第２巻付層７の融
雪線１を巻付ける。この第２巻付層７は、その巻付けピ
ッチを第１巻付層６の巻付けピッチとは異ならせ、その
巻付け方向は第１巻付層６と同方向または逆方向にして
巻付ける。必要に応じてこの第２巻付層７の上にさらに
第３巻付層の融雪線１を巻付けることもできるが、少な
くとも第１巻付層６と第２巻付層７の２層を巻付ける。
融雪線１の発熱量は送電線の電流を一定とすると磁性線
材２の巻付け量すなわち体積に比例するので、前記のよ
うに融雪線１を重ねて巻付けることにより効果的に融雪
することができる。また、逆方向に巻付けると細い融雪
線１を使用することができるので巻付け作業が容易とな
る。なお、前記のように送電線５に巻付ける融雪線１
は、その発熱量を増大させまたは調節するため、巻付層
の巻付量、巻付ピッチ、融雪線１の太さ等を適宜に選択
変更する。

【００１７】

【発明の効果】前記のように本発明の架空送電線の融雪
装置は、磁性線材上の上に設けた１次防食被覆層の上に
さらに弗素樹脂、シリコン樹脂等の高撥水性の樹脂被覆
の２次防食被覆層を設けたので、氷雪片はこの高撥水性
層により付着し難くなり、たとえ付着してもその付着量
は少量となり、このため僅かな着氷雪状態で融雪すれば
よいことになるので従来よりも速やかに融雪することが
可能となる。

【００１８】また、１次防食被覆層の上に２次防食被覆
層を設けたので、融雪線を送電線に巻付ける時に防食金
属の１次防食被覆層にクラック等が生じてもその個所の
上の防食プラスチックの２次防食被覆層にはクラックが
生ぜず、このクラック発生個所からの腐食の進行が防止
され、高耐食性の融雪線が得られる。

【００１９】また、１次防食被覆層の上に２次防食被覆
層を設けたことにより、１次防食被覆層の防食金属被覆
の厚さを薄くすることができ、防食金属被覆の厚さ増加
による磁性線材の発熱特性の低下が生じない。

【００２０】また、アルミ、亜鉛等の防食金属被覆の１
次防食被覆層の上に防食プラスチックの２次防食被覆層
を設けたことにより、沿岸地域において使用することが
可能になり、さらに、２次防食被覆層は高耐熱性である
から磁性線材が発熱しても変質劣化することがない。

【００２１】また、磁性線材の外周にアルミ、亜鉛等の
防食金属被覆の１次防食被覆層を設けたので、融雪線を
送電線の鋼心アルミより線に巻付けたときに１次防食被
覆層がアルミより線に接触しても腐食が生じない。

【００２２】さらに、磁性線材は低キューリー点である
から、着氷雪が生ずる冬季においては発熱して融雪し、
着氷雪が生じない高温期においては発熱せず無駄な送電
損失を生じないものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の１実施例の融雪線の断面図

【図２】使用状態を示す図

【符号の説明】

１：融雪線 ２：磁性線材 ３：１次防食被覆層 ４：２次防食被覆層 ５：送電線

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】低キューリー点磁性線材(2) の外周にアル
   ミ、亜鉛等の防食金属の１次防食被覆層(3) を設け、そ
   の外周に弗素樹脂、シリコン樹脂等の高耐熱性、高撥水
   性樹脂の２次防食被覆層(4) を設けた融雪線(1) を送電
   線(5) に巻付けたことを特徴とする架空送電線の融雪装
   置。