JPH07229018A - 易分割性アクリル繊維 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた嵩高性、軽量性、保温性及び良好な風
合いを与えることが可能な易分割性アクリル繊維を提供
する。 【構成】 アクリロニトリルを５０ｗｔ％以上含有し、
かつアクリロニトリルの含有量の差が２〜５０ｗｔ％で
ある２種のアクリロニトリル系重合体を複合成分とし、
２成分の各々が他成分により分劃され繊維表面に露出し
た複合構造を有する易分割性アクリル繊維。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、易分割性を有するアク
リル繊維に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、分割性繊維として易溶出性の
成分と難溶出性の成分を複合構造とした繊維や互いに非
相溶性の成分を複合構造とした繊維が知られ、任意の段
階で溶剤で化学的に或いは外力で機械的に分割して細繊
度繊維とされている。しかしながら、従来の分割性繊維
は、その構成がポリエステル、ポリアミドまたはポリオ
レフィンを主体とするものであり、アクリロニトリル系
重合体を主体とし、かつ分割された細繊度繊維が繊維と
しての使用に耐えるようなアクリル繊維の分割性繊維
は、全くなかった。これは、分割性繊維となるアクリル
複合繊維の構成成分の重合体の選択、目的工程までの非
分割状態の維持等の困難さに基因している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アク
リル繊維を特定構成成分の複合構造の繊維としたことに
より、繊維構造物上で機械的に分割して優れた嵩高性、
軽量性、保温性及び良好な風合いを与えることが可能な
易分割性アクリル繊維を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、アクリロニト
リルを５０ｗｔ％以上含有し、かつアクリロニトリルの
含有量の差が２〜５０ｗｔ％である２種のアクリロニト
リル系重合体を複合成分とし、２成分の各々が他成分に
より分劃され繊維表面に露出した複合構造を有すること
を特徴とする易分割性アクリル繊維にある。

【０００５】本発明の易分割性アクリル繊維は、２種の
アクリロニトリル系重合体を複合成分とする複合構造の
繊維であり、各成分は、アクリロニトリルを５０ｗｔ％
以上含有するアクリロニトリル系重合体からなり、一方
の成分は、他方の成分とはアクリロニトリル含有量で２
〜５０ｗｔ％、好ましくは１０〜５０ｗｔ％の差のある
アクリロニトリル系重合体で構成される。アクリロニト
リル含有量の差が２ｗｔ％未満では、２成分の層間剥離
が生じにくく分割性に劣り、５０ｗｔ％を超えると、２
成分の層間剥離が極めて生じ易く製糸工程、後加工工程
で分割してしまい、工程通過性を悪化させる。

【０００６】本発明において、構成成分のアクリロニト
リル系重合体は、アクリロニトリル含有量に差を設けた
範囲で、染色性等の性能を向上させるため、或いは一方
の成分により熱収縮性等の性能を与えるため、共重合成
分を含有していてもよく、またその含有を異ならせて共
重合されていてもよい。かかる共重合成分として、酢酸
ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ア
クリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタク
リル酸メチル、メタクリルスルホン酸ナトリウム等が挙
げられる。

【０００７】本発明におけるアクリル繊維の複合構造
は、２成分の各々が他成分により分劃され繊維表面に露
出した複合構造を有し、２成分が並列の張り合わせ構
造、２成分が交互層状の張り合わせ構造、芯部により鞘
部が複数に花弁状に分割された構造（花弁型鞘芯複合構
造）等の２成分が各成分の細繊度繊維としてそれぞれ複
数に分離しうる構造であればよく、海島構造、芯鞘構造
では、分離が困難で好ましくない。なお、複合成分は、
一方の成分が他方の成分により分劃されていれば複合構
造部のいずれの部に配置されていてもよい。

【０００８】本発明のアクリル繊維における複合比は、
特に限定はされないが、分割後の細繊度繊維の繊維物性
の確保、或いは細繊度繊維の任意の断面形状の選択上、
重量比で、好ましくは１／１〜１／４０、より好ましく
は１／１〜１／２０である。

【０００９】本発明のアクリル繊維は、紡糸及び紡糸に
引き続く製糸過程においては、２成分間の分割はない
が、物理的に外力を加える機械的な分割処理により２成
分間の重合体の組成差に基づく界面剥離により細繊度繊
維となる分割性を有する。分割処理は、製糸後の任意の
工程で施すことができるが、製織、製編後に施すことが
好ましい。分割処理には、高圧水噴射、機械的なしご
き、打撃等が好ましく用いられる。

【００１０】以下に本発明のアクリル繊維の製造方法に
ついて説明する。本発明のアクリル繊維の製造には、ア
クリル繊維の製造に一般に用いられている湿式紡糸法、
乾湿式紡糸法、乾式紡糸法が適用され、複合成分の一方
のアクリロニトリル５０ｗｔ％以上含有のアクリロニト
リル系重合体の紡糸原液、他方のアクリロニトリル５０
ｗｔ％以上含有し、かつアクリロニトリル含有量に２〜
５０ｗｔ％差のあるアクリロニトリル系重合体の紡糸原
液を、それぞれ調製し、これら２種の紡糸原液を用い、
２成分を所定位置に配置する複合紡糸口金を用いて複合
紡糸する。

【００１１】複合紡糸口金としては、断面形状、繊度等
また最終的に目的とする細繊度繊維の断面形状、繊度等
に応じ適宜選択可能であるが、例えば並列複合紡糸口
金、交互並列複合紡糸口金、花弁型鞘芯複合紡糸口金等
が用いられる。

【００１２】２成分の各紡糸原液に用いられる溶剤とし
ては、アクリロニトリル系重合体の溶剤として一般に用
いられている溶剤が適用可能であり、例えばジメチルア
セトアミド、ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクト
ン、エチレンカーボネート、硝酸チオシアン酸ナトリウ
ム、塩化亜鉛水溶液等が挙げられる。各紡糸原液の濃度
は、特に限定されるものではなく、紡糸方式に応じて適
宜決定される。また、紡糸後は、アクリル繊維の製造に
一般に用いられていると同じ製糸工程が適用される。

【００１３】

【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。

【００１４】（実施例１）アクリロニトリル９４ｗｔ％
及びメタクリル酸６ｗｔ％のアクリロニトリル系重合体
の２４ｗｔ％ジメチルアセトアミド溶液を鞘成分の紡糸
原液とし、アクリロニトリル５９ｗｔ％及び塩化ビニリ
デン４１ｗｔ％のアクリロニトリル系重合体の２４ｗｔ
％ジメチルアセトアミド溶液を芯成分の紡糸原液とし
て、花弁型鞘芯複合紡糸口金を用い、芯／鞘紡糸原液吐
出比を１／３とし、ジメチルアセトアミド５５ｗｔ％水
溶液、５０℃の凝固浴を用い湿式紡糸し、５倍に延伸
し、その後１７０℃で乾燥緻密化処理を行いアクリル繊
維を得た。得られたアクリル繊維は、単糸繊度２デニー
ルでその繊維断面を図１に示した。

【００１５】得られたアクリル繊維を用い、製編してメ
リヤス編地とした後、ビーティングによる分割処理を施
した。得られた編地は、未分割処理の編地に比し嵩高で
ソフトな風合いを示した。この編地の構成繊維の繊維断
面を図２に示したが、繊維は明瞭に分割されていた。

【００１６】（実施例２）アクリロニトリル９１ｗｔ％
及び酢酸ビニル９ｗｔ％のアクリロニトリル系重合体の
２４ｗｔ％ジメチルアセトアミド溶液を鞘成分の紡糸原
液とし、アクリロニトリル９３ｗｔ％及び酢酸ビニル７
ｗｔ％のアクリロニトリル系重合体の２０ｗｔ％ジメチ
ルアセトアミド溶液を芯成分の紡糸原液として、花弁型
鞘芯複合紡糸口金を用い、芯／鞘紡糸原液吐出比を１／
３とし、ジメチルアセトアミド７０ｗｔ％水溶液、５０
℃の凝固浴を用い乾湿式紡糸し、６倍に延伸し、その後
２１５℃で乾燥緻密化処理を行いアクリル繊維を得た。
得られたアクリル繊維は、単糸繊度５デニールでその繊
維断面を図３に示した。

【００１７】得られたアクリル繊維を用い、製編してメ
リヤス編地とした後、機械的な力を加える分割処理し
た。得られた編地は、未分割処理の編地に比し嵩高でソ
フトな風合いを示した。この編地の構成繊維の繊維断面
を図４に示したが、繊維は明瞭に分割されていた。

【００１８】（実施例３）実施例１において、用いた複
合紡糸口金に代えて他の複合紡糸口金を用いた以外は、
実施例１と同様にしてアクリル繊維を得た。得られた繊
維の繊維断面を図５に示した。また得られた編地は、嵩
高でソフトな風合いを示した。

【００１９】（比較例１）実施例１における鞘成分、芯
成分の紡糸原液に代えてアクリロニトリル９３ｗｔ％及
び酢酸ビニル７ｗｔ％のアクリロニトリル系重合体の２
５．５ｗｔ％ジメチルアセトアミド溶液を鞘成分の紡糸
原液とし、アクリロニトリル９３ｗｔ％及び酢酸ビニル
７ｗｔ％のアクリロニトリル系重合体の２５．５ｗｔ％
ジメチルアセトアミド溶液を芯成分の紡糸原液を用いた
以外は、実施例１と同様にしてアクリル繊維を得た。得
られた繊維の繊維断面を図６に示した。また得られた編
地は、嵩高性、風合いに変化がなく、構成繊維の分割
は、認められなかった。

【００２０】

【発明の効果】本発明の易分割性アクリル繊維は、紡糸
工程等の工程通過性及び加工性については何等問題のな
い繊維であり、通過性機械的な力を加えることにより容
易に細繊度繊維に分割し、織編物に嵩高性、軽量性、保
温性かつソフトな風合いを与えることが可能で、本発明
によれば、衣料用途等に好適なアクリル繊維を提供する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例１で得られた繊維の繊維断面の
走査型電子顕微鏡写真である。

【図２】本発明の実施例１の分割処理で得られた繊維の
繊維断面の走査型電子顕微鏡写真である。

【図３】本発明の実施例２で得られた繊維の繊維断面の
走査型電子顕微鏡写真である。

【図４】本発明の実施例２の分割処理で得られた繊維の
繊維断面の走査型電子顕微鏡写真である。

【図５】本発明の実施例３で得られた繊維（ａ）〜
（ｅ）の繊維断面図である。

【図６】本発明の比較例１の分割処理で得られた繊維の
繊維断面図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 省治 広島県大竹市御幸町20番１号 三菱レイヨ ン株式会社中央研究所内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アクリロニトリルを５０ｗｔ％以上含有
   し、かつアクリロニトリルの含有量の差が２〜５０ｗｔ
   ％である２種のアクリロニトリル系重合体を複合成分と
   し、２成分の各々が他成分により分劃され繊維表面に露
   出した複合構造を有することを特徴とする易分割性アク
   リル繊維。