JPH07216826A - プレキャストコンクリート床版合成桁橋における床版と鋼桁との接合構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 施工性が向上され、構造的に信頼性を有し、
工費の節減が図られるプレキャストコンクリート床版合
成桁橋における床版と鋼桁との接合構造を提供する。 【構成】 プレキャストコンクリート床版２１に工場製
作の段階であらかじめスタッドジベル２２を埋設し、同
スタッドジベルの下端を前記床版の下縁に露出して配設
されたＴ型断面鋼材２３の水平部片２３ａに接合すると
ともに、同水平部片２３より垂設された垂直部片２３ｂ
を鋼桁２４の上部フランジより立設された垂直部片２５
に、スプライスプレート２６、ハイテンションボルト２
７を介して接合した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は鉄筋コンクリートプレキ
ャストコンクリート床版合成桁橋の床版と鋼桁との接合
構造に係るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のコンクリート床版合成桁橋では、
あらかじめ上フランジ上縁にスタッドジベルを接合した
鋼桁を架設しておき、同鋼桁上にコンクリートを現場打
ちすることにより床版と鋼桁との合成作用を図ってい
た。最近ではコンクリート床版の強度、耐久性、床版工
事における省力化、簡素化、単純化、迅速化等を考慮し
た上でプレキャストコンクリート床版を使った施工法も
行われるようになってきている。現在行われているプレ
キャストコンクリート床版と鋼桁との合成方法としては
図４乃至図６に示す以下の３つの方法がある。

【０００３】図４はコンクリートとスタッドジベルによ
る前記床版と鋼桁との結合構造を示したものである。図
４（ａ）はプレキャストコンクリート床版にハンチを設
けない代わりに、鋼桁２にハンチプレート３を設けて鋼
桁２に植立したスタッドジベル４を介して床版との接合
を保持している。図中５は舗装部である。また図４
（ｂ）はプレキャストコンクリート床版１にハンチ１ａ
を設けるとともにスポンジパッキン６により前記床版１
と鋼桁２との密着を図っている。図４（ａ）（ｂ）とも
プレキャストコンクリート床版１のスタッドジベル４埋
め込み位置にはあらかじめ穴を穿設しておき、前記床版
１の設置後同穴にモルタルを充填して前記床版１と鋼桁
２の結合を図るものである。

【０００４】図５はボルトによる前記床版と鋼桁との結
合構造を示したものである。図５（ａ）はあらかじめボ
ルト穴１ｂを穿設して製作されたプレキャストコンクリ
ート床版１と鋼桁２とをボルト穴１ｂに貫挿されたハイ
テンションボルト７で緊締することによって前記床版１
と鋼桁２との結合を図っている。図５（ｂ）はプレキャ
ストコンクリート床版１にあらかじめナット８を埋め込
んでおくとともに板バネ９とプレキャストコンクリート
床版１の下面に定着した取着金具１０との間に鋼桁２を
はさみ込み、ナット８に螺着され、取着金具１０、板ば
ね９を貫通するボルト１１をハードロックナット１２及
び座金１３で締結することにより前記床版１と鋼桁２と
の結合を図っている。図５（ｃ）はプレキャストコンク
リート床版１にあらかじめインサート１４を設置した穴
を穿設しておき、前記床版１設置の際にハンチ部に無収
縮モルタル１５を流し込み、しかるのち、締付けボルト
１６を前記インサート１４に通して締めつけることによ
り、前記床版１と鋼桁２の結合を図るものである。図５
（ｄ）はプレキャストコンクリート床版１に外筒管１７
を埋め込んでおき、内筒管１８を鋼桁２に全周溶接ωし
たのち、無収縮モルタル１５を注入することにより、前
記床版１と鋼桁２との結合を図るものである。

【０００５】図６はプレキャストコンクリート床版１内
にあらかじめスタッドジベル４付きのＨ型鋼１９を埋め
込んでおき、現場で鋼桁２の上部フランジとＨ型鋼１９
における前記床版１より突出した下フランジをボルト２
ａで締結するものである。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】前記従来技術では下記
の問題点がある。 （イ）図４及び図５に示す工法では、鋼桁とプレキャス
トコンクリート床版のずれ止め効果をあまり期待するこ
とができない。またスタッドタイプでは必要ずれ止め量
が大きすぎて、現場でのモルタルによる結合が困難であ
る。さらに主桁の上フランジと床版との高さ調整に手間
がかかる上に、後述の如き、ＰＣ床版を鋼桁上に設置す
る毎に両者の合成を行っていき、次に設置する床版の荷
重に対しては一部合成桁として負担していく逐次合成作
用を期待することができない。（ロ）図６の工法ではＨ
型鋼をプレキャストコンクリート床版内に埋め込んでい
るため、同Ｈ型鋼が邪魔になってＰＣ鋼棒の配置が困難
である。またＨ型鋼とプレキャストコンクリート床版の
付着強度に問題があり、Ｈ型鋼のフランジと主桁の上フ
ランジをボルトで結合するため高さ的に調整が難しく、
可成りの精度が要求される。さらに主桁のフランジ同志
の継手とＨ型鋼と主桁の継手とがラップし、主桁のみ先
行架設する構造を採用できない。

【０００７】本発明は前記従来技術の有する問題点に鑑
みて提案されたもので、その目的とする処は、施工性が
向上され、構造的に信頼性を有し、工費の節減が図られ
るプレキャストコンクリート床版合成桁橋における床版
と鋼桁との接合構造を提供する点にある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め、本発明に係るプレキャストコンクリート床版合成桁
橋における床版と鋼桁との接合構造は、プレキャストコ
ンクリート床版にあらかじめスタッドジベルを埋設する
とともに、同スタッドジベルの下端を前記床版下縁に露
出して配設されたＴ型断面鋼材の水平部片に接合すると
ともに、同水平部片より垂設された垂直部片を鋼桁に接
合して構成されている。

【０００９】

【作用】本発明は前記したように、プレキャストコンク
リート床版の工場生産の段階であらかじめスタッドジベ
ルを埋設するとともに、同スタッドジベルの下端を、前
記床版下縁に露出して配設されたＴ型断面鋼材の水平部
片に接合することによって、同Ｔ型断面鋼材とスタッド
ジベルとが一体化され、更に同Ｔ型断面鋼材の水平部片
より垂設された垂直部片が鋼桁に接合されたことによっ
て、プレキャストコンクリート床版と鋼桁とが簡単にし
かも確実に一体的に接合され、前記床版と鋼桁との間に
生じるずれが確実に防止される。

【００１０】また本発明によれば鋼桁を先行架設するこ
とも可能であり、前述のように、同鋼桁上にプレキャス
トコンクリート床版を設置する度毎にその部分における
両者の合成化を行い、以後のプレキャストコンクリート
床版の設置による荷重に対しては床版、鋼桁の合成断面
として同荷重を負担していく所謂逐次合成工法に対して
最適の構造が構成される。

【００１１】

【実施例】以下、本発明を図１に示す実施例について説
明する。プレキャストコンクリート床版２１に工場製作
の段階であらかじめスタッドジベル２２を埋設してお
き、同スタッドジベル２２の下端を前記床版２１の下縁
に露出して配設された、床版首振りに対する疲労強度が
大きいＴ型断面鋼材２３の水平部片２３ａより垂設され
た垂直部片２３ｂを、現場で先行架設されたＨ型鋼より
なる鋼桁２４に接合する。同接合作業に際しては鋼桁２
４の上部フランジより立設された垂直部片２５と前記Ｔ
型断面鋼材２３の垂直部片２３ｂとに亘って添接された
スプライスプレート２６をハイテンションボルト２７で
締結する。

【００１２】また鋼桁２４相互間の接合に際しては同鋼
桁２４の上下フランジ及びウエブにあらかじめスプライ
スプレート２６を配設し、鋼桁２４の先行架設を可能な
らしめるものである。なお前記プレキャストコンクリー
ト床版２１と鋼桁２４との接合に際しては、図２に示す
如く前記Ｔ型断面鋼材２３の垂直部片２３ｂ、及び鋼桁
２４上の垂直部片２５に標準ボルト孔２８より大径の拡
大孔２９を穿設したことによって、前記床版１と鋼桁２
との間の高さ方向の誤差δに容易に対応できるような構
造が採用されている。

【００１３】また前記床版１を鋼桁２に結合した後の断
面においては、鋼桁２の上フランジが水平スチフナーの
役割を果し、補剛効果を発揮する。更に前記床版１を設
置する度毎に鋼桁２にＴ型断面鋼材２３を介してボルト
結合を行うことによって、瞬時に合成桁としての作用を
発揮することができる。従って次に設置するプレキャス
トコンクリート床版１の自重を合成桁として負担するこ
とができるので、従来よりも鋼桁を小さくすることがで
きるという利点が生じる。このように部分的に合成桁と
しての工法を前述の如く逐次合成工法と称しているが、
その詳細を以下に示す。

【００１４】図３は逐次合成工法の段階毎の状態を左側
に、同各状態における曲げモーメント図を右側に示すも
のであって、図３（ａ）は鋼桁２４を架設したときの状
態を示し、３１Ａは鋼重による曲げモーメント図であ
る。図３（ｂ）は鋼桁２４上に最初のプレキャストコン
クリート床版２１Ａを設置した状態を示し、このとき同
床版２１Ａの自重による曲げモーメント３１Ｂが発生す
るが、この曲げモーメントに対しては鋼桁２４のみで負
担することとなる。次に図３（ｃ）に示すように２番目
のプレキャストコンクリート床版２１Ｂの自重による曲
げモーメント３１Ｃが発生するが、この曲げモーメント
に対しては最初のプレキャストコンクリート床版２１Ａ
を設置した部分が合成桁３２Ａとして負担することがで
きる。

【００１５】図３（ｄ）は次のプレキャストコンクリー
ト床版２１Ｃを設置した状態を示し、図３（ｅ）は最後
のプレキャストコンクリート床版２１Ｅを設置する状態
を示し、曲げモーメント図は各段階のものを合算したも
のである。図中比較対照例として非合成桁が負担する曲
げモーメント４０を示す。この曲げモーメントによると
非合成桁が負担する曲げモーメント４０が可成り低減し
ていることが判る。

【００１６】即ち逐次合成工法を採用することによって
鋼桁２４を小さくすることが可能となる。

【００１７】

【発明の効果】本発明は工場生産の段階でスタッドジベ
ルをプレキャストコンクリート床版に埋設するととも
に、同スタッドジベルの下端を同床版下縁に露出して配
設されたＴ型断面鋼材の水平部片に接合し、同水平部片
より垂設された垂直部片を鋼桁に接合したことによっ
て、鋼桁と前記床版のずれが確実に防止された信頼性の
高い同床版と鋼桁の合成が確保され、従来工法にみられ
る如き現場における前記床版のスタッドジベル挿入孔に
対するモルタル注入作業が不要となり、工期が短縮さ
れ、工場生産によるプレキャストコンクリート床版を使
用することによって、強度、耐久性共信頼のおける床版
と鋼桁との合成構造が構成される。

【００１８】また本発明によれば継手構造が簡単なた
め、将来の破壊時における部材の取り替えが容易にな
り、可成りのコストダウンが見込まれる。更にまた本発
明は前述した逐次合成工法に利用できるので、主桁鋼重
を低減でき、コストを節減しうるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るプレキャストコンクリート床版合
成桁橋における床版と鋼桁との接合構造の一実施例を示
す縦断面図である。

【図２】前記床版と鋼桁の接合構造の高さ調整部を示す
縦断面図である。

【図３】（ａ）（ｂ）（ｃ）（ｄ）（ｅ）は夫々逐次合
成工法の各段階毎の状態、及び同各状態における曲げモ
ーメント図を示す。

【図４】（ａ）（ｂ）はスタッドジベルによって鋼桁と
床版とを結合した従来構造の各例を示す縦断面図であ
る。

【図５】（ａ）（ｂ）（ｃ）（ｄ）はボルトによって鋼
桁と床版とを結合した従来構造の各例を示す縦断面図で
ある。

【図６】床版に埋設したＨ型鋼を使用した従来構造の更
に他の例を示す縦断面図である。

【符号の説明】

２１ プレキャストコンクリート床版 ２２ スタッドジベル ２３ Ｔ型断面鋼材 ２４ 鋼桁 ２５ 垂直部片 ２６ スプライスプレート ２７ ハイテンションボルト

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 プレキャストコンクリート床版にあらか
   じめスタッドジベルを埋設するとともに、同スタッドジ
   ベルの下端を前記床版下縁に露出して配設されたＴ型断
   面鋼材の水平部片に接合するとともに、同水平部片より
   垂設された垂直部片を鋼桁に接合してなることを特徴と
   するプレキャストコンクリート床版合成桁橋における床
   版と鋼桁の接合構造。