JPH07215814A - 抗菌性歯科用組成物 - Google Patents

抗菌性歯科用組成物

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JPH07215814A
JPH07215814A JP6007799A JP779994A JPH07215814A JP H07215814 A JPH07215814 A JP H07215814A JP 6007799 A JP6007799 A JP 6007799A JP 779994 A JP779994 A JP 779994A JP H07215814 A JPH07215814 A JP H07215814A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】重合性単量体、重合開始剤および式(i)〜(i
ii)の少なくとも1つの重合性単量体、および式(2)
に示すリン酸残基を有する重合性化合物含有の抗菌性歯
科用組成物であって、組成物中の重合性単量体重量の総
和に対して、式(i)〜(iii)の含有量が1以上50重
量%以下で、リン酸残基を有する重合性化合物の含有量
が1以上50重量%以下で、かつ式(i)〜(iii)の重
合性単量体とリン酸残基を有する重合性化合物の含有量
の合計が、重合性単量体重量の総和に対して10以上5
0重量%以下である。 :H、CH、R:C〜C18のアルキレン
基、R:HまたはC〜C18のアルキル基、R
CH、CHCH、CHCHOH、X:O、
S、NH、Z:Cl、Br、I 【効果】硬化物の表面に接触した細菌を速やかに死滅さ
せることができる強い抗菌性を有する歯科用組成物を提
供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗菌成分が溶出しない、
非溶出型抗菌性歯科用組成物に関する。特に歯科用コン
ポジットレジン、歯科用接着材、義歯床用レジン、歯科
用コート材、常温重合型即時重合レジン、小窩裂溝填塞
材、歯科用レジン系セメント等の抗菌性歯科用組成物に
関する。
【0002】
【従来の技術】コンポジットレジン等の歯科用材料に
は、細菌の付着に基づく歯垢が形成されやすいために、
これらの材料でう蝕部分の充填修復や欠損部の補綴処置
(例えば義歯)を行うと、二次う蝕や歯周炎の原因にな
りやすいことが問題となっている。
【0003】う蝕の予防法としては、酸性フッ素リン酸
溶液やフッ化ジアミン銀溶液等の歯質への塗布、いわゆ
るフッ素塗布によりエナメル質の耐酸性を向上する方法
が一般的に行われている。また、歯垢の形成、特に歯料
材料表面の歯垢の形成を防ぐ方法として、材料の立場か
らいくつか試みがなされている。その試みの1つとして
歯料材料に抗菌剤を配合することが試みられており、ク
ロロヘキシジンを配合したコンポジットレジン(竹村金
造ら、日本歯料保存学会誌、第26巻第2号540〜5
47ページ、1983年)やメトロニダゾールを配合し
たリン酸カルシウム系セメント(岩久正明ら、日本歯料
保存学会誌、第30巻第5号1444〜1448ペー
ジ、1987年)などが報告されている。
【0004】しかしながら、このように抗菌剤を単に歯
料材料に配合するだけでは材料より抗菌剤が短期間に溶
出してしまい、抗菌効果の持続性の点で満足できるもの
ではなかった。また、抗菌剤の配合により材料の機械的
性質も低下するという問題があった。さらに、歯科用組
成物より抗菌剤が溶出することは、歯科用組成物表面だ
けでなく、その周囲の口腔内細菌叢への影響が懸念され
る。
【0005】これらの問題を解決するために、重合性単
量体、重合性開始剤、および下記の構造式で表される抗
菌性を有する重合性単量体(i)から(iii)のうち少な
くともひとつ以上を含有する歯科用組成物に関する特許
(特願平3ー299958)が出願されている。
【0006】
【化3】
【0007】しかし、該出願に記載されている抗菌性試
験法は、重合硬化後の組成物表面の抗菌性を定性的に評
価するものであり、材料表面の抗菌性の強さを定量的に
把握することはできなかった。従って、重合性単量体と
抗菌活性を有する重合性単量体の配合比を変えた場合
や、重合性単量体の種類を変えた場合の抗菌性の違いを
比較検討することができず、非溶出型抗菌性歯科材料の
至適組成を決定することは困難であった。
【0008】また、該出願記載の抗菌性試験方法は、重
合後の組成物表面への細菌プラークの付着抑制効果を評
価する方法であり、表面に接触した細菌が死滅するかど
うかを確認することは不可能であった。従って、材料表
面で細菌が生存し得る条件下では、材料が口腔内で長期
間、細菌と接触した場合に、そこに徐々にプラークが形
成されることが懸念された。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、非溶出型の抗菌性を有する歯科用組成物を
提供することにあり、その表面に細菌が付着した場合に
速やかに細菌を死滅させるだけの強い抗菌性を有するも
のを提供することにある。
【0010】課題を解決するために、本発明者は、前述
の特許の実施例で用いられている定性的抗菌性試験法に
代えて、後述する定量的抗菌性試験法を考案し、重合性
単量体と重合性基を有する抗菌性単量体の割合を変えて
調製した組成物や、複数の重合性単量体を組み合わせて
用いた場合などについて、表面の抗菌性の強さを定量的
に比較検討した。すなわち、組成物の表面に直接細菌を
接触させた後に残存している細菌数を測定することによ
り、組成物に接触した細菌がどの程度死滅したかを判定
する方法を用いて、組成物表面の抗菌性を比較検討し
た。
【0011】
【課題を解決するための手段】その結果、抗菌性基を有
する重合性単量体に、さらに、下記の構造式で示される
構造を分子中に有するリン酸化合物を、特定の配合量で
併用した場合に、組成物表面に接触した細菌が完全に死
滅する強い抗菌性が発現することを見い出し、本発明を
完成した。この強い抗菌性は、従来技術である抗菌性基
を有する重合性基のみを含有する場合には観察されない
ものである。即ち本発明は、重合性単量体、重合開始剤
および下記一般式(i)〜(iii)から選ばれる少なくと
も1つの重合性単量体、および下記式(2)に示すリン
酸残基を有する重合性化合物を含有する抗菌性歯科用組
成物であって、組成物中の重合性単量体重量の総和に対
して、一般式(i)〜(iii)の重合性単量体の含有量が
1重量%以上50重量%以下であり、リン酸残基を有す
る重合性化合物の含有量が1重量%以上50重量%以下
であり、かつ一般式(i)〜(iii)の重合性単量体とリ
ン酸残基を有する重合性化合物(以下、リン酸化合物と
言う)の含有量の合計が、組成物中の重合性単量体重量
の総和に対して10重量%以上50重量%以下であるこ
とを特徴とする抗菌性歯科用組成物である。
【0012】
【化4】
【0013】
【化5】
【0014】上記の殺菌的な抗菌性を発現させるために
は、抗菌性を有する重合性単量体の含有量が、組成物中
の重合性単量体重量の総和に対して1重量%以上50重
量%以下であり、リン酸化合物の含有量が、組成物中の
重合性単量体重量の総和に対して1重量%以上50重量
%以下であり、かつ抗菌性を有する重合性単量体とリン
酸化合物の含有量の合計が、組成物中の重合性単量体重
量の総和に対して、10重量%以上50重量%以下であ
ることが必要である。
【0015】抗菌性を有する重合性単量体の含有量が、
組成物中の重合性単量体の総和に対して1重量%未満の
場合は、目的とする抗菌性が得られない。また、リン酸
化合物の含有量が組成物中の重合性単量体の総和に対し
て1重量%未満の場合にも、目的とする抗菌性は得られ
ない。さらに、抗菌性基を有する重合性単量体とリン酸
化合物の含有量の合計が、組成物中の重合性単量体の総
和に対して10重量%未満の場合にも、目的とする抗菌
性は得られない。
【0016】抗菌性の発現だけを目的とするならば、抗
菌性を有する重合性単量体およびリン酸化合物の含有量
は、多ければ多いほど効果が大きい。しかし、これらの
化合物の含有量が多くなると、重合硬化後の材料表面か
ら、これらの化合物が溶出を始めるため、非溶出型の抗
菌性という本来の目的が達成できないことが判った。こ
れらの化合物の溶出を防ぐためには、抗菌性を有する重
合性単量体の含有量を、組成物中の重合性単量体の総和
に対して50重量%以下に抑えるのが望ましい。また、
リン酸化合物の含有量を、組成物中の重合性単量体の総
和に対して50重量%以下に抑えるのが望ましい。さら
に、抗菌性基を有する重合性単量体とリン酸化合物の含
有量の合計が、組成物中の重合性単量体の総和に対して
50重量%以下に抑えるのが望ましい。
【0017】リン酸化合物としては、特公昭55ー22
35に開示されている単量体が挙げられる。これらの単
量体は、上記公報においては、分子中に下記の構造を有
する単量体として包括的に示されているが、本発明にお
いてもかかる型の単量体が広く用いられる。
【0018】
【化6】
【0019】また、特開昭58ー21607号に示され
ている下記の一般式で表される化合物も同様に用いられ
る。
【0020】
【化7】 〔ただし、R1 はHまたはCH3 を表し、Raは炭素数
4〜40の2価の有機基を表す。X1 およびY1 は、
O、SまたはNRb(Rbは、Hまたは炭素数1〜4の
アルキル基)を表す。kは、0または1を表す。〕
【0021】本発明では、R1 がHの場合をアクリレー
ト系重合性単量体とし、R1 がCH3 の場合をメタクリ
レート系重合性単量体とする。そして、これら両者を意
味する表記として(メタ)アクリレート系重合性単量体
を用いる。以下、特に断らない限り、同じ意味に(メ
タ)アクリレート系の用語を用いる。
【0022】また、上記化合物に類似した構造である下
記の構造式で表される化合物も用いられる。
【化8】 〔ただし、mは1〜4の整数。nは2〜6の整数。R’
aは炭素数5〜60の(m+n)価の有機基。R1 、X
1 、Y1 、kは前記に同じ。〕
【0023】以上述べた化合物の具体例を以下に示す。
【化9】
【化10】
【0024】本発明の歯科用組成物は、歯科用コンポジ
ットレジン、歯科用接着材、小窩裂溝填塞材、義歯床用
レジン、歯科用コート材、暫間修復用レジン、歯科用レ
ジン系セメント等として用いられる。これらは前記成分
の他に、有機ポリマー、充填材、安定剤、着色剤等をそ
の目的に応じて適宜組合せて構成される。以下にこれら
重要な構成成分について説明する。
【0025】本発明において用いられている重合性単量
体としてはα−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル
酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イ
タコン酸などの不飽和カルボン酸と、1価又は2価アル
コールとのエステル類さらに、N−イソブチルアクリル
アミドのような(メタ)アクリルアミド類、酢酸ビニル
などのようなカルボン酸のビニルエステル類、ブチルビ
ニルエーテルのようなビニルエーテル類、N−ビニルピ
ロリドンのようなモノ−N−ビニル化合物、スチレン誘
導体などが挙げられるが特に下記のような一官能性、多
官能性の(メタ)アクリル酸エステル類およびウレタン
(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0026】(i)一官能性 (メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−も
しくはi−プロピル、(メタ)アクリル酸n−、i−も
しくはt−ブチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アク
リレートなど。
【0027】(ii)二官能性 一般式が
【化11】 (ここでnは3〜20の整数、Rは水素またはメチル基
を表わす。)で示される化合物。例えばプロパンジオー
ル、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオ
ール、ノナンジオール、デカンジオール、エイコサンジ
オールなどのジ(メタ)アクリレート類。
【0028】一般式が
【化12】 (ここでnは1〜14の整数、Rは水素またはメチル基
を表わす。)で示される化合物。例えば、エチレングリ
コール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、テトラエチレングリコール、ドデカエチレングリコ
ール、テトラデカエチレングリコール、プロピレングリ
コール、ジプロピレングリコール、テトラデカプロピレ
ングリコールなどのジ(メタ)アクリレート類の他、グ
リセリンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−
(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキ
シ)フェニル〕プロパン(Bis−GMA)、ビスフェ
ノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ
(メタ)アクリレート、2,2−ジ(4−メタクリロキ
シポリエトキシフェニル)プロパン(1分子中にエトキ
シ基2〜10)、1,2−ビス(3−メタクリロキシ−
2−ヒドロキシプロポキシ)ブタンなど。
【0029】(iii)三官能性以上 トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペ
ンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど。
【0030】(iv)ウレタン(メタ)アクリレート系 ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート単量体2
モルとジイソシアネート1モルの反応生成物、両末端N
COのウレタンプレポリマーとヒドロキシル基を有する
(メタ)アクリレート単量体の反応生成物などが挙げら
れ、かかる反応生成物の構造は次式に示すものが挙げら
れる。
【化13】 (ここでR1は水素またはメチル基、R2はアルキレン
基、R3は有機残基である。)
【0031】具体的なものとして特公昭51−3696
0号に記載されている2,2,4−トリメチルヘキサメ
チレンジイソシアネートとメタクリル酸オキシプロピル
との反応生成物、特公昭55−33687号に記載され
ている両末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと
メタクリル酸−2−オキシエチルとの反応生成物が挙げ
られる。また、特開昭56−162408号に開示され
ているような四官能性のモノマーも用いられる。
【0032】本発明において必要によって添加される充
填材(フィラー)としては、α−石英、シリカ、アルミ
ナ、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、フルオロ
アルミノシリケートガラス、硫酸バリウム、酸化チタ
ン、ジルコニア、ガラス、超微粒子シリカおよび有機成
分と無機成分を含有する有機複合フィラーなどを用いる
ことができる。また、ポリメチルメタクリレート、メチ
ルメタクリレートと架橋性モノマーとの共重合体、ポリ
スチレン、ポリ塩化ビニル等のポリマー粉末などが必要
に応じて添加される。かかるガラスとしては、シリカガ
ラス、ソーダ石灰ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バ
リウムガラス、ストロンチウムガラス、亜鉛ガラス、ラ
ンタンガラス、イットリアガラス、バリウムボロアルミ
ノシリケートガラス、アルミナケイ酸ガラス、ストロン
チウムボロアルミノシリケートガラス、合成シリカ、チ
タニウムシリケートガラスなどが挙げられる。
【0033】本発明において使用する無機充填材には、
表面処理をして用いることが望ましい。表面処理剤とし
ては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラ
ン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラ
ン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシ
シランおよびビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン等
の有機ケイ素化合物が用いられ、シラン化は、通常の方
法により行われる。
【0034】本発明において用いられる重合開始剤とし
ては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパー
オキサイドなどの過酸化物、トリブチルボラン、ベンゾ
イルパーオキサイド−芳香族第3級アミン系、芳香族ス
ルフィン酸(またはその塩)−芳香族第2級または第3
級アミン−アシルパーオキサイド系などの常温重合開始
剤が挙げられる。更にカンファーキノン、カンファーキ
ノン−第3級アミン系、カンファーキノン−過酸化物、
カンファーキノン−アルデヒド系、カンファーキノン−
メルカプタン系、アシルフォスフィンオキサイドなどの
光重合開始剤を挙げることができる。また、紫外線照射
による光重合を行う場合には、ベンゾインメチルエーテ
ル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、2−
メチルチオキサントン、ジアセチル、ベンジル、アゾビ
スイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフ
ィドなどが好適である。また、本発明の組成物には、所
望により、重合禁止剤、着色剤、蛍光剤、紫外線吸収剤
等を添加することができる。
【0035】
【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、本発
明はこれらの実施例に限定されるものではない。 (試験片の調製方法)組成物を、直径20mm、厚さ
0.5mmの金型に填入、両面を1分間ずつ光照射して
重合硬化させ、円盤状の試験片を作成した。得られた試
験片をアセトン、メタノールで洗浄し、表面の未重合モ
ノマーを除去した後、エチレンオキサイドガス滅菌を行
った。
【0036】(抗菌性試験方法)S.mutans(I
FO13955)を、BHI(ブレインハートインフー
ジョン)培地中で一夜培養した後、細菌濃度が5×10
3(CFU/ml)になるように生理食塩水で希釈し
た。この希釈液10μlを試験片の上にマイクロピペッ
ターを用いて滴下し、そのまま15分間静置した後、試
験片をさかさまにして、試験片上の液をBHI寒天培地
に押しつけて残存細菌を回収した。さらに、試験片をB
HI寒天培地の異なる部分に押しつけて、細菌を残らず
寒天培地に回収した。その後、37℃で48時間好気培
養を行った後、寒天培地に形成されるコロニー数を計測
した。各サンプルについて、形成コロニー数と、接種し
た全細菌数をもとに、下記の計算式に従って、細菌死滅
率を求めた。
【数1】
【0037】同じようにして、細菌濃度が5×10
4(CFU/ml)、5×105(CFU/ml)になる
ように希釈した細菌希釈液を用いて、全く同じ試験を行
った。さらに、S.mutansの代わりに、枯草菌
(B.subtilis、IFO13721)、ブドウ
球菌(S.aureus、IFO12732)、大腸菌
(E.coli.、IFO12734)を用いて、上記
と全く同じ試験を行った。
【0038】上記の細菌死滅率が100%の場合には、
サンプル上に接種した細菌がすべて死滅したことを示
し、サンプル表面に非常に強い抗菌性が発現しているこ
とを示すものである。逆に細菌死滅率が0%の場合に
は、接種した細菌がすべて生存していることを示し、サ
ンプル表面には抗菌性がないことを示すものである。さ
らに、細菌死滅率が0%から100%の間の場合には、
細菌を完全に死滅させることはできないものの、ある程
度の抗菌性を有していることを示すものである。本発明
の目的からすれば、死滅率100%のものが好ましい
が、死滅率80%以上の場合には、十分目的を達しうる
ものと判断される。
【0039】(溶出試験方法)S.mutans(IF
O13955)を、BHI(ブレインハートインフージ
ョン)培地中で一夜培養した後、細菌濃度が1×106
(CFU/ml)になるように生理食塩水で希釈した。
この希釈液を、BHI寒天プレートに塗布した後乾燥し
た。その上に試験片を置き、37℃で48時間好気培養
を行った後、試験片の周辺に形成される阻止斑の有無を
観察し、以下の判定基準により判定した。 (+):
サンプルの周囲に細菌の増殖が抑制された阻止斑が形成
された。 (−):サンプルの周囲に阻止斑が全く形成されなかっ
た。
【0040】さらに、S.mutansの代わりに、枯
草菌(B.subtilis、IFO13721)、ブ
ドウ球菌(S.aureus、IFO12732)、大
腸菌(E.coli.、IFO12734)を用いて、
上記と全く同じ試験を行った。
【0041】上記の判定の結果、(+)のものは、サン
プル表面から抗菌性物質が溶出されたことを示してお
り、本発明の目的のひとつである非溶出型抗菌性の発現
という要求を満たしていないことになる。前述の抗菌性
試験の結果、100%の死滅率を示したサンプルであっ
ても、この溶出試験で阻止斑が形成されたものは、本発
明の目的を達成することはできないと判断される。
【0042】実施例1 表1に示したように、BisGMA23.5重量部、ト
リエチレングリコールジメタクリレート23.5重量
部、メタクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマ
イド(以下MDPBと略記する。構造式を下記に示し
た。)を25重量部、メタクリロイルオキシデシルジハ
イドロジェンホスフェート(以下MDPと略記する。構
造式を下記に示した。)を25重量部、カンファーキノ
ン1重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート2重
量部より成るモノマー混合物を調製した。
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】このモノマー混合物50重量部とγ−メタ
クリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した
石英粉(平均粒径2.4μm)50重量部を混合し、ペ
ースト状の組成物を調製した。該組成物を用いて前述の
方法により試験片を作製し、前述の抗菌性試験方法に従
い、4種の細菌に対する抗菌性を評価した。結果を表2
に示す。さらに、同じ方法で調製した試験片を用いて、
前述の溶出試験方法に従い、4種の細菌に対する阻止斑
形成の有無を観察した。結果を表3に示す。
【0046】実施例2〜6 実施例1で用いたモノマー混合物の代わりに、BisG
MA、MDPB、MDPの含有量を表1に示した割合に
変えたモノマー混合物を調製した。以下、実施例1と同
様に、該モノマー混合物50重量部と石英粉50重量部
を混合してペースト状の組成物を調製し、実施例1と同
様に試験片を作成し、4種の細菌に対する抗菌性試験を
行った。結果を表2に示す。さらに、同じ方法で調製し
た試験片を用いて、前述の溶出試験方法に従い、4種の
細菌に対する阻止斑形成の有無を観察した。結果を表3
に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】実施例7〜12 実施例1で用いたモノマー混合物のMDPを下記のメタ
クリロイルオキシデシルエチルフェニルホスフェート
(以下フェニルP)と略記する。下記に構造式を示し
た。)に置き換え、BisGMA、MDPB、フェニル
Pの含有量を表4に示した割合に変えたモノマー混合物
を調製した。
【化16】 以下、実施例1と同様に、該モノマー混合物50重量部
と石英粉50重量部を混合してペースト状の組成物を調
製し、実施例1と同様に試験片を作成し、4種の細菌に
対する抗菌性試験を行った。結果を表5に示す。さら
に、同じ方法で調製した試験片を用いて、前述の溶出試
験方法に従い、4種の細菌に対する阻止斑形成の有無を
観察した。結果を表6に示す。
【0051】比較例1、2 実施例1で用いたモノマー混合物の代わりに、表1に示
したようにMDPをBisGMA、トリエチレングリコ
ールジメタクリレートに置き換えたモノマー混合物を調
製した。以下、実施例1と同様に、該モノマー混合物5
0重量部と石英粉50重量部を混合してペースト状の組
成物を調製し、実施例1と同様に試験片を作成し、4種
の細菌に対する抗菌性試験を行った。結果を表2に示
す。さらに、同じ方法で調製した試験片を用いて、前述
の溶出試験方法に従い、4種の細菌に対する阻止斑形成
の有無を観察した。結果を表3に示す。
【0052】比較例3 実施例1で用いたモノマー混合物の代わりに、表1に示
したようにMDPB、MDPをBisGMA、トリエチ
レングリコールジメタクリレートに置き換えたモノマー
混合物を調製した。以下、実施例1と同様に、該モノマ
ー混合物50重量部と石英粉50重量部を混合してペー
スト状の組成物を調製し、実施例1と同様に試験片を作
成し、4種の細菌に対する抗菌性試験を行った。結果を
表2に示す。さらに、同じ方法で調製した試験片を用い
て、前述の溶出試験方法に従い、4種の細菌に対する阻
止斑形成の有無を観察した。結果を表3に示す。
【0053】比較例4、5 実施例7で用いたモノマー混合物の代わりに、表4に示
したようにフェニルPをBisGMA、トリエチレング
リコールジメタクリレートに置き換えたモノマー混合物
を調製した。以下、実施例1と同様に、該モノマー混合
物50重量部と石英粉50重量部を混合してペースト状
の組成物を調製し、実施例1と同様に試験片を作成し、
4種の細菌に対する抗菌性試験を行った。結果を表5に
示す。さらに、同じ方法で調製した試験片を用いて、前
述の溶出試験方法に従い、4種の細菌に対する阻止斑形
成の有無を観察した。結果を表6に示す。
【0054】比較例6 実施例7で用いたモノマー混合物の代わりに、表4に示
したようにMDPB、フェニルPをBisGMA、トリ
エチレングリコールジメタクリレートに置き換えたモノ
マー混合物を調製した。以下、実施例1と同様に、該モ
ノマー混合物50重量部と石英粉50重量部を混合して
ペースト状の組成物を調製し、実施例1と同様に試験片
を作成し、4種の細菌に対する抗菌性試験を行った。結
果を表5に示す。さらに、同じ方法で調製した試験片を
用いて、前述の溶出試験方法に従い、4種の細菌に対す
る阻止斑形成の有無を観察した。結果を表6に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【発明の効果】抗菌性を有する重合性単量体を歯科用組
成物に配合することにより、重合後の組成物表面に非溶
出型の抗菌性を付与することは公知であるが、該技術に
よる歯科用組成物は、重合後の表面に抗菌性を有するも
のの、接触した細菌を速やかに死滅させることはできな
かった。これに対して、本発明により、抗菌性を有する
重合性単量体に加えて、さらに特許請求の範囲に記載さ
れたリン酸化合物を、特許請求の範囲に記載された割合
で配合することにより、その歯科用組成物の表面に接触
した細菌を速やかに死滅させることができる強い抗菌性
を有する歯科用組成物が提供できる。
【0059】上記の抗菌性は、重合後の組成物をアセト
ン、メタノールなどで洗浄することにより、未重合の重
合性単量体やリン酸化合物を洗浄除去した後にも確認さ
れたことから、これらの抗菌性成分の溶出による効果で
はなく、組成物表面に共有結合で固定化された非溶出型
の抗菌性であることが判った。従って、抗菌成分が水
(唾液)に溶出することはなく、口腔内で使用した場合
にも、その抗菌性は半永久的に保持される。また、この
抗菌性は組成物の表面に限定されるため、口腔内の細菌
叢を破壊する心配もない。したがって、本組成物を歯科
材料として用いた場合には、副作用を最低限に抑えなが
ら、齲蝕や歯周病の原因となる細菌プラークの付着を長
期間にわたり防止する効果がある。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合性単量体、重合開始剤および下記一
    般式(i)〜(iii)から選ばれる少なくとも1つの重合
    性単量体、および下記式(2)に示すリン酸残基を有す
    る重合性化合物を含有する抗菌性歯科用組成物であっ
    て、組成物中の重合性単量体重量の総和に対して、一般
    式(i)〜(iii)の重合性単量体の含有量が1重量%以
    上50重量%以下であり、リン酸残基を有する重合性化
    合物の含有量が1重量%以上50重量%以下であり、か
    つ一般式(i)〜(iii)の重合性単量体とリン酸残基を
    有する重合性化合物の含有量の合計が、組成物中の重合
    性単量体重量の総和に対して10重量%以上50重量%
    以下であることを特徴とする抗菌性歯科用組成物。 【化1】 【化2】
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