JPH07215185A - 坂道発進補助装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 勾配センサあるいは加速度センサを用いず
に、車輪と路面が滑っている状態を判定し、車輪の回転
速度が零であっても車速が零でない場合にブレーキ圧力
の保持動作を禁止する。 【構成】 ブレーキ・センサ出力が制動状態を示し車速
が零であるときに、制御弁に対してブレーキ圧力を保持
させる。そのときの車輪の回転加速度の絶対値が所定値
ａを越えたときに車速を車輪の回転加速度から演算し、
その値を判定して車速が零でなければブレーキ圧力の保
持動作を禁止する。 【効果】 高い装備費を要せずに、滑り易い路面上での
走行安全性をさらに向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は自動車に装備して利用す
る。本発明は運転補助装置に関する。本発明は自動車が
坂道に停車した状態から発進するときに、ブレーキ圧力
の解除動作を補助するコンピュータ制御による運転補助
装置に関する。

【０００２】本発明は、クラッチおよび変速ギヤを運転
者がクラッチ・ペダルおよびセレクト・レバーにより操
作する自動車に適用されるものであって、運転席にクラ
ッチ・ペダルがなく、クラッチおよび変速ギヤが自動的
に操作されるいわゆるオートマチック車に適用するもの
ではない。

【０００３】本発明は、本願出願人の先願（特願平１−
２３２２４５号、特開平３−９６４６０号公報参照、発
明の名称「坂道発進補助装置」）に開示した発明の改良
に関する。

【０００４】

【従来の技術】坂道路上に停止した自動車を発進させる
ときには、運転者はいったんパーキング・ブレーキを引
いて車両に制動力を与え、変速ギヤを発進ギヤに選択
し、クラッチを緩やかにつなぎながらアクセル・ペダル
を踏み込みエンジンの出力を大きくするとともに、パー
キング・ブレーキを緩めるという複雑な操作を行うこと
が必要である。このような操作は自動車の運転操作では
基本事項であるが、トラックやバスなどでは積載荷重に
よってその操作が大きく異なるなど、エンストあるいは
車両後進を起こしやすい。

【０００５】このような運転操作を補助するための装置
として、特開昭６０−１１７１９号公報、あるいは特開
平４−２４４４６２号公報などに開示された坂道発進補
助装置が知られている。またこのような装置は実用化さ
れて自動車に装備され販売されＨＳＡ（Hill Start Ai
d) などの名称で広く利用されるようになった。

【０００６】従来の坂道発進補助装置は、ブレーキ圧力
が一定値を越えて車速が零になったとき、すなわち車両
が走行状態を経て停車したときに、（車両の走行方向に
勾配があることが検出されると、）運転者がブレーキ・
ペダルから足を離しても自動的にブレーキ圧力を保持す
るように構成されている。この状態で、運転者がセレク
ト・レバーを発進位置に選択し、クラッチを繋ぎ、アク
セル・ペダルを踏み込んだときに、装置がそれを自動的
に検出して、最も適切なタイミングで自動的にそのブレ
ーキ圧力を解放するように構成されている。このような
坂道発進補助装置を装備した車両では、運転者はパーキ
ング・ブレーキの操作を伴うことなく坂道発進操作を行
うことができる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このような坂道発進補
助装置では、車速が零になり、変速ギヤがニュートラル
になり、エンジンが回転中であるときに、自動的にブレ
ーキ圧力を保持状態に設定するように構成されている。
車速が零であることは車輪の回転が停止したことにより
検出される。

【０００８】しかし、滑りやすい路面を走行中にサービ
ス・ブレーキの操作により、車輪は停止状態になったに
もかかわらず車速が零になっていないことがある。この
ような場合には坂道発進補助装置がブレーキ圧力を保持
状態に設定することがあっては不都合である。このため
に、本願出願人は前記先願（特開平３−９６４６０号公
報参照）により、勾配センサを利用して車両の加速度を
検出し、その加速度から車速零を演算により検出する方
法を提案した。

【０００９】ところが、勾配センサを車両に装備するこ
とは高価である。勾配センサそのものは簡単であって
も、車両に搭載し車両の振動を受けないように防護する
ための装置は複雑になる。特に、車輪と路面が滑ってい
る状態を判定できる程度に、車両に加わる進行方向の加
速度を正確に検出する装置はどうしても高価になる。

【００１０】本発明はこのような背景から行われたもの
であって、勾配センサあるいは加速度センサを利用しな
くとも、車輪と路面が滑っている状態を判定し、車輪の
回転速度が零であっても車速が零でない場合に、ブレー
キ圧力の保持動作を禁止させることができる坂道発進補
助装置を提供することを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は、運転者がクラ
ッチ・ペダルおよびセレクト・レバーによりクラッチお
よび変速ギヤを操作する自動車の坂道発進を補助する装
置に関するものであって、ブレーキ・センサと、クラッ
チ・センサと、回転センサと、変速レバーのニュートラ
ルを示すニュートラル・スイッチとを備え、ブレーキ・
ペダルが解放されても制御信号にしたがってブレーキ圧
力を保持する制御弁と、前記各センサの出力を入力とし
前記制御信号を送出するプログラム制御回路とを備え、
このプログラム制御回路は、前記ブレーキ・センサ出力
が制動状態を示し車速が零であるときに、前記制御弁に
対してブレーキ圧力を保持させるための制御信号を送出
する制御手段を備えた坂道発進補助装置において、車輪
の回転加速度の絶対値が所定値ａを越えたとき、車速を
車輪の回転速度から判定する代りに車速を車輪の回転加
速度から演算する手段を備えたことを特徴とする。

【００１２】前記演算する手段により演算された車速が
零になったタイミングから短い時間τを経過するまで前
記制御信号の送出を禁止する手段を含むことが望まし
い。

【００１３】

【作用】ブレーキ・センサ出力が制動状態を示し車速が
零であるときに、制御弁に対してブレーキ圧力を保持
し、そのときの車輪の回転速度の絶対値が所定値ａを越
えたときに、車速を車輪の回転速度から判定する代わり
に車輪の回転加速度から演算し、その値から車速が零で
あるか否かを判定し、車速が零でなければ、かりに車輪
回転速度が零であっても、ブレーキ圧力の保持動作を禁
止する。

【００１４】これにより、車輪の回転速度が零であって
も車速が零でない場合、すなわち、車輪と路面が滑って
いる状態を勾配センサあるいは加速度センサを用いるこ
となく検出することができ、滑りが発生したときにはブ
レーキ制動が解除されるので、滑り易い路面上での走行
安全性をさらに高めることができる。

【００１５】

【実施例】次に、本発明実施例を図面に基づいて説明す
る。図１は本発明実施例の構成を示すブロック図であ
る。

【００１６】本発明実施例は、クラッチ油圧スイッチ１
と、ブレーキ・センサ２と、クラッチ・センサ３と、車
速およびまたはエンジン回転速度を検出する回転センサ
５と、変速レバーのニュートラルを示すニュートラル・
スイッチ６と、ブレーキ・ペダル１１が解放されても制
御信号にしたがってブレーキ圧力を保持する制御弁９
と、前記各センサの出力を入力とし前記制御信号を送出
するプログラム制御回路１０とを備え、このプログラム
制御回路１０は、ブレーキ・センサ２の出力が制動状態
を示し車速が零であるときに、制御弁９に対してブレー
キ圧力を保持させるための制御信号を送出する制御手段
を備え、本発明の特徴として、プログラム制御回路１０
に、車輪の回転加速度の絶対値が所定値ａを越えたと
き、車速を車輪の回転速度から判定する代りに車速を車
輪の回転加速度から演算する手段を備え、この演算する
手段により演算された車速が零になったタイミングから
短い時間τを経過するまで前記制御信号の送出を禁止す
る手段を含む。

【００１７】運転席には、運転者が運転しながら操作を
行うことができる位置にコントロールユニット２０が設
けられる。このコントロールユニット２０には、メイン
スイッチ２１、７セグメント表示器２２、解除調整スイ
ッチ２３、および初期調整スイッチ２４が設けられてい
る。

【００１８】メインスイッチ２１は、本装置への電源供
給の開閉を行うもので、この例ではスイッチノブを上げ
れば閉状態となって装置を駆動し、下げれば停止状態と
なる。７セグメント表示器２２はデシマル・ポイント２
５付きの７セグメント数字表示器であって調整の過程で
数字が表示される。

【００１９】ブレーキ解除点の調整は次のようにして行
う。運転者は初期調整スイッチ２４を数秒間押しつづけ
るとプログラム制御回路１０は初期調整モードに入る。
運転者は初期調整スイッチ２４を押しつづけた状態で、
クラッチペダルを踏んでゆくとクラッチ油圧スイッチ１
が作動したところでそのときのクラッチ・センサ３の検
出値を取込み格納する。運転者が変速レバーを操作し変
速ギヤを設定する。そうするとニュートラル・スイッチ
６がこれを検出する。その状態で運転者はクラッチペダ
ルを緩やかに戻しながら、最適の半クラッチ位置で初期
調整スイッチ２４から手を離す。その手を離した半クラ
ッチの位置が解除点として記憶される。この状態で運転
試験を行い、解除点の位置を解除調整スイッチ２３を操
作して変更する。すなわち、解除点がもっとクラッチペ
ダルを踏み込んだ位置にある方がよいと考えれば解除調
整スイッチ２３を上方に１回押す。解除点がもっとクラ
ッチペダルを戻した位置にある方がよいと考えれば解除
調整スイッチ２３を下方に１回押す。この動作を運転試
験を行いながら繰り返す。このときの初期値からの調整
ステップが７セグメント表示器２２に表示される。調整
ステップが下方（マイナス方向）であるときには７セグ
メント表示器２２のデシマル・ポイント２５が点灯す
る。

【００２０】プログラム制御回路１０には、前述の各セ
ンサからの出力の他に、ストップランプスイッチ、バッ
クスイッチ、ドアスイッチ、パーキングブレーキスイッ
チ、キースイッチなどからの出力が入力されるが、これ
らの出力は本発明に直接関係がないのでここでは図面へ
の記載および説明を省略する。

【００２１】次に、このように構成された本発明実施例
におけるブレーキ保持動作およびブレーキ解除動作につ
いて説明する。図２は本発明実施例におけるプログラム
制御回路のブレーキ保持動作の流れを示す流れ図であ
る。

【００２２】プログラム制御回路１０は、ブレーキ・セ
ンサ２からの出力を取り込み、あらかじめ設定された踏
み込み量の値を越えているか否かを判定する。設定値を
越えていなければ制動により停車した状態ではないので
制御弁９への制御信号の送出を禁止して坂道発進の補助
動作を停止する。設定値を越えている場合は制動状態に
あるので、回転センサ５からの出力を取り込み、車輪の
回転速度（ｄｖ／ｄｔ）を演算する。その演算された値
が負であり、その絶対値｜ｄｖ／ｄｔ｜が所定値ａを越
えたか否かを判定し、越えていれば制御マップを参照し
て近似車速Ｖ_Ref を演算し、演算された車速（近似車
速：Ｖ_Ref ）が零になった時点から時間τが経過するま
で制御信号の送出を禁止し、時間τが経過したときに制
御弁９へ制御信号を送出し、坂道発進補助を行うことが
できる状態にする。

【００２３】このとき、求められた近似車速Ｖ_Ref に基
づき別の係数を用いてスリップ率λを演算し補正を行う
ことがなおよい。すわなちスリップ率λが所定値を越え
ているか否かを判定し、越えていなければ制御弁９へ制
御信号を送出し坂道発進補助動作を実行する。所定値を
越えていればスリップ状態にあるので、制御弁９への制
御信号の送出を禁止し、坂道発進補助動作を停止する。

【００２４】図３は制動時における車速と車輪回転速度
の変化を示す図である。ブレーキ・ペダル１１が踏まれ
て制動状態となり、路面に対するタイヤトルクよりもブ
レーキトルクが増加すると、車輪回転速度Ｖ_R は急速に
低下し、零になったときにプログラム制御回路１０から
制御弁９に制御信号が送出され、坂道発進補助動作（Ｈ
ＡＳ作動）が行われて車輪はロック状態になる。このと
き実際の車速Ｖ_F も同様に低下するものの零にならずス
リップ状態となる。

【００２５】本発明は、このような状態になることを回
避するために、車輪回転速度Ｖ_R から車輪回転加速度を
演算により求め、この車輪回転加速度から車速Ｖ_F が零
以外の値にあるか否か、すなわちスリップ状態にあるか
否かを判定し、スリップ状態にあれば坂道発進補助動作
による制動を禁止するものである。

【００２６】図４は制動時における車速と車輪回転速度
の変化およびその変化に対応した制御動作を示す図であ
る。ブレーキ・センサ２の出力が設定値を越えると、回
転センサ５から車輪回転速度Ｖ_R を取り込み、車輪回転
加速度ｄｖ／ｄｔを演算する。その値が負でありその絶
対値が所定値ａを越えていれば急減速中と判断し、その
瞬間の車輪回転速度Ｖ_R を初期として、定められた傾斜
をもって変化する近似車速Ｖ_Ref を演算する。この値は
摩擦係数μの低い（滑り易い）路面のデータとして記憶
される。

【００２７】次いで、演算された近似車速Ｖ_Ref と車輪
回転速度Ｖ_R を用いて、次式によりスリップ率λを演算
する。

【００２８】 スリップ率λ＝（Ｖ_Ref −Ｖ_R ）／Ｖ_Ref ×１００ 図４は摩擦係数μの高い路面のスリップ率λ₁ （１０
％）および摩擦係数μの低い路面のスリップ率λ₂ （２
０％）を示したものである。

【００２９】スリップ率λ₁ のみが算出されたときは高
い摩擦係数の路面上にあると判断して破線で示す近似車
速が零になったときに、制御弁９に制御信号を送出して
坂道発進補助動作（ＨＡＳ作動）を実行する。スリップ
率λ₁ およびλ₂ が算出されたときには摩擦係数μが低
い路面上にあると判断して一点鎖線で示す近似車速Ｖ
_Ref が零になるまで制御弁９への制御信号の送出を禁止
し、坂道発進補助動作（ＨＡＳ作動）が行われないよう
にする。近似車速が零に達し、誤差を考慮して設定され
た時間τ（０．１〜０．５ｓｅｃ）が経過したときに、
制御弁９に制御信号を送出し坂道発進補助動作（ＨＡＳ
作動）を実行する。

【００３０】次に、ブレーキ解除動作について説明す
る。図５は本発明実施例におけるプログラム制御回路の
ブレーキ解除動作の流れを示す流れ図である。

【００３１】車両が坂道でブレーキ保持状態にあるとき
にクラッチ・センサ３およびニュートラル・スイッチ６
からの出力を取り込みクラッチが踏み込まれてギヤが前
進発進位置（ローまたはセカンド）あるいは後退の位置
に設定されたか否かを判定する。

【００３２】クラッチが踏み込まれギヤが発進状態に設
定された場合には、クラッチ・センサ３の出力からあら
かじめ設定された所定ストローク以下になったか否かを
判定する。所定ストローク以下になったときには発進が
行われるものとして、制御弁９への制御信号の送出を禁
止しブレーキを解除する。ギヤが発進状態に設定されて
いなく、もしくはクラッチの踏み込み量が所定ストロー
ク以上である場合は、制御弁９への制御信号の送出を継
続しブレーキ保持状態を維持する。

【００３３】クラッチおよびブレーキの初期設定は、運
転者による好み、あるいはブレーキおよびクラッチの摩
耗による変化に適応し任意に行うことができる。設定さ
れたクラッチペダルおよびブレーキ・ペダル１１の踏み
込みストロークの値は再設定されるまで保持される。そ
れぞれの踏み込みストロークがその設定された基準値を
越えていなければプログラム制御回路１０は制御弁９へ
の制御信号の送出を禁止して発進補助動作を停止し、そ
れぞれの踏み込みストロークがその設定された基準値を
越えていれば発進補助動作を継続する。メインスイッチ
２１をオフ状態にすると装置への電源供給が停止され発
進補助動作は行われない。

【００３４】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、勾
配センサあるいは加速度センサを利用せずに、車輪回転
速度から車輪回転加速度を演算することにより、車輪と
路面が滑っている状態を判定することができ、車輪の回
転速度が零があっても車速が零にならない場合には坂道
発進補助動作の実行を停止して路面スリップを防止する
ことができる効果がある。これにより滑り易い路面上で
の走行安全性をさらに向上させることができる。本発明
の装置はソフトウェアにより対応するので、勾配センサ
により減速度を検出するものに比べて安価に製作でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施例の構成を示すブロック図。

【図２】本発明実施例におけるプログラム制御回路のブ
レーキ保持動作の流れを示す流れ図。

【図３】制動時における車速と車輪回転速の変化を示す
図。

【図４】制動時における車速と車輪回転速度の変化およ
びその変化に対応した制御動作を示す図。

【図５】本発明実施例におけるプログラム制御回路のブ
レーキ解除動作の流れを示す流れ図。

【符号の説明】

１ クラッチ油圧スイッチ ２ ブレーキ・センサ ３ クラッチ・センサ ５ 回転センサ ６ ニュートラル・スイッチ ９ 制御弁 １０ プログラム制御回路 １１ ブレーキ・ペダル １２ ブレーキバルブ ２０ コントロールユニット ２１ メインスイッチ ２２ ７セグメント表示器 ２３ 解除調整スイッチ ２４ 初期調整スイッチ ２５ デシマル・ポイント

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ブレーキ・センサと、クラッチ・センサ
   と、回転センサと、変速レバーのニュートラルを示すニ
   ュートラル・スイッチとを備え、 ブレーキ・ペダルが解放されても制御信号にしたがって
   ブレーキ圧力を保持する制御弁と、前記各センサの出力
   を入力とし前記制御信号を送出するプログラム制御回路
   とを備え、 このプログラム制御回路は、前記ブレーキ・センサ出力
   が制動状態を示し車速が零であるときに、前記制御弁に
   対してブレーキ圧力を保持させるための制御信号を送出
   する制御手段を備えた坂道発進補助装置において、 車輪の回転加速度の絶対値が所定値ａを越えたとき、車
   速を車輪の回転速度から判定する代りに車速を車輪の回
   転加速度から演算する手段を備えたことを特徴とする坂
   道発進補助装置。
2. 【請求項２】 前記演算する手段により演算された車速
   が零になったタイミングから短い時間τを経過するまで
   前記制御信号の送出を禁止する手段を含む請求項１記載
   の坂道発進補助装置。