JPH07208338A - 密閉形コンプレッサおよびこのコンプレッサを用いた冷凍サイクル - Google Patents

密閉形コンプレッサおよびこのコンプレッサを用いた冷凍サイクル

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JPH07208338A
JPH07208338A JP410194A JP410194A JPH07208338A JP H07208338 A JPH07208338 A JP H07208338A JP 410194 A JP410194 A JP 410194A JP 410194 A JP410194 A JP 410194A JP H07208338 A JPH07208338 A JP H07208338A
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JP
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refrigerant
compressor
oil
refrigeration cycle
electric motor
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JP410194A
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English (en)
Inventor
Makoto Sugiyama
誠 杉山
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】低温用冷凍サイクルから高温用冷凍サイクルに
至る広範囲での使用が可能で、信頼性の高い密閉形コン
プレッサおよびこのコンプレッサを用いた冷凍サイクル
を提供するにある。 【構成】密閉ケース30内に固定子33と回転子35と
からなる電動機31とこの電動機31に回転軸34を介
して駆動連結される圧縮機械32とを収容した密閉形コ
ンプレッサ11において、コンプレッサ用冷媒にHCF
C冷媒を用い、コンプレッサ摺動部を冷凍機油57で潤
滑する一方、電動機31のモータ絶縁材料にポリエチレ
ンナフタレート(PEN)を用いたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は冷蔵庫やショーケース等
の冷凍機械や室内の冷暖房等の空気調和を行なう空気調
和機に備えられる密閉形コンプレッサおよびこのコンプ
レッサを用いた冷凍サイクルに関する。
【0002】
【従来の技術】冷蔵庫やショーケース等の冷凍機械や空
気調和機には、コンプレッサ,コンデンサ,キャピラリ
チューブ等の減圧装置およびエバポレータを備えた冷凍
サイクルが組み込まれている。この冷凍サイクルは冷蔵
庫やショーケース等の低温用密閉形コンプレッサを搭載
した蒸発温度5℃以下の低温用冷凍サイクルと、空気調
和機のように高温用密閉形コンプレッサを搭載した高温
用冷凍サイクルに大別される。
【0003】冷蔵庫等の冷凍機械や空気調和機に組み込
まれる冷凍サイクルには、従来からR12,R502等
のCFC(クロロフルオロカーボン)冷媒が使用されて
いる。
【0004】しかしながら、近年では、地球環境保護の
問題から大気圏で超安定でオゾン層を破壊するおそれの
ある塩素系フロンが使用規制の対象となっており、塩素
系フロンであるCFC冷媒の使用も近い将来禁止される
ことになっている。
【0005】最近では、CFC冷媒に代ってオゾン層破
壊係数の低いHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボ
ン)冷媒の使用が検討され、空気調和機のような高温用
冷凍サイクルには、HCFC冷媒としてHCFC22
(以下、R22という。)を採用したものがある。
【0006】また、冷凍機械や空気調和機の冷凍サイク
ルに組み込まれる密閉形コンプレッサは、密閉ケース内
に固定子と回転子からなる電動機と、この電動機に回転
軸を介して駆動連結される圧縮機械が収容される一方、
密閉形コンプレッサの密閉ケース内に潤滑油である冷凍
機油が貯溜され、この冷凍機油でコンプレッサ潤滑部を
潤滑している。
【0007】さらに、密閉形圧縮機の密閉ケース内に収
容される電動機はモータ絶縁材料により周囲から電気的
に絶縁されている。このモータ絶縁材料にはポリエチレ
ンテレフタレート(以下、PETという。)が採用され
ている。PETにはオリゴマ含有率が0.7wt%程度
の通常のPETと低オリゴマPETの2種類があり、最
近では低オリゴマPETがモータ絶縁材料である絶縁シ
ート,口出線,縛り糸等に採用される傾向にある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】コンプレッサ用冷媒と
してR22(HCRC22)冷媒を採用した冷凍サイク
ルでは、従来のR12(CFC12)冷媒を採用した冷
凍サイクルより、オリゴマが抽出され易い性質がある。
密閉形コンプレッサのモータ絶縁材料に低オリゴマPE
Tを採用しても、冷媒や冷凍機油中にオリゴマが抽出さ
れ易い同様の性質を有する。
【0009】モータ絶縁材料のPETから抽出されるオ
リゴマは、吐出冷媒や吐出冷媒に混って吐出される冷凍
機油に混入して冷凍サイクル内を循環せしめられる。空
気調和機のような高温用冷凍サイクルでは、モータ絶縁
材料のPETからオリゴマが抽出され、吐出冷媒や冷凍
機油に溶解して冷凍サイクル内に循環せしめられても、
冷凍サイクル内で高温のためオリゴマが析出されること
がない。したがって、冷凍サイクルのサイクル不良を起
こすことなく、良好な運転状態が充分に維持される。
【0010】しかしながら、低温用冷凍サイクルにR2
2冷媒を採用する冷蔵庫やショーケース等では、膨脹弁
やキャピラリチューブ等の減圧装置の絞り量が、R22
冷媒使用の高温冷凍サイクルに比べて大きいため、モー
タ絶縁材料のPETから抽出されるオリゴマが冷媒や冷
凍機油に溶融して冷凍サイクルを循環する間にサイクル
低温域で析出して堆積されるおそれが大きい。
【0011】冷凍サイクルの低温域で析出したオリゴマ
が、コンプレッサからコンデンサ,エバポレータに至る
冷媒配管やキャピラリチューブに付着あるいは堆積する
と冷凍サイクルの通路面積が減少してオリゴマによるサ
イクル詰まりが生じ、冷凍サイクルの冷凍能力低下を招
いたり、サイクル運転が不可能になるおそれがあった。
【0012】また、析出したオリゴマが密閉形コンプレ
ッサの圧縮機械やコンプレッサ摺動部の小さなクリアラ
ンス部分に侵入すると、コンプレッサ摺動部をかじり、
円滑な摺動を損ね、コンプレッサ始動不良を生じたり、
また、圧縮機械のシリンダ被膜を破り、冷媒リークを生
じさせて密閉性を損ね、冷媒吐出圧力の低下を招く等の
問題があり、密閉形コンプレッサは信頼性に欠けるおそ
れがあった。
【0013】本発明は上述した事情を考慮してなされた
もので、低温用冷凍サイクルから高温用冷凍サイクルに
至る広範囲での使用が可能で、信頼性の高い密閉形コン
プレッサおよびこのコンプレッサを用いた冷凍サイクル
を提供するにある。
【0014】本発明の他の目的は、モータ絶縁材料から
のオリゴマ抽出量を大幅に減少させ、冷凍サイクルのサ
イクル詰まりや冷凍能力の低下を有効的に防止できる密
閉形コンプレッサおよびこのコンプレッサを用いた冷凍
サイクルを提供するにある。
【0015】本発明のさらに他の目的は、HCFC22
(R22)冷媒を使用してもモータ絶縁材料から抽出さ
れるオリゴマによる冷凍サイクルのサイクル不良を確実
に防止した密閉形コンプレッサおよびこのコンプレッサ
を用いた冷凍サイクルを提供するにある。
【0016】本発明の別の目的は、HFC(ハイドロフ
ルオロカーボン)冷媒にも対応可能な密閉形コンプレッ
サおよびこのコンプレッサを用いた冷凍サイクルを提供
するにある。
【0017】本発明のさらに他の目的は、コンプレッサ
摺動部を円滑に摺動させ、コンプレッサの始動不良や冷
媒吐出圧力の低下を効果的に防止し、信頼性の高い密閉
形コンプレッサを提供するにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明に係る密閉形コン
プレッサは、上述した課題を解決するために、請求項1
に記載したように、密閉ケース内に固定子と回転子とか
らなる電動機とこの電動機に回転軸を介して駆動連結さ
れる圧縮機械とを収容した密閉形コンプレッサにおい
て、コンプレッサ用冷媒にHCFC冷媒を用い、コンプ
レッサ摺動部を冷凍機油で潤滑する一方、電動機のモー
タ絶縁材料にポリエチレンナフタレート(PEN)を用
いたものである。
【0019】また、上述した課題を解決するために、本
発明に係る密閉形コンプレッサは、請求項1の記載内容
に加えて、請求項2に記載したように、冷凍機油に鉱油
またはアルキルベンゼン系油、エステル系油等の合成油
を用いたり、また、請求項3に記載したように、冷凍機
油に鉱油,アルキルベンゼン系油およびエステル系油の
いずれか2種以上の混合油を用いたり、さらに、請求項
4に記載したように、コンプレッサ用冷媒にHCFC2
2冷媒を用いたものである。
【0020】さらに、本発明に係る密閉形コンプレッサ
は、上述した課題を解決するために、請求項5に記載し
たように、密閉ケース内に固定子と回転子とからなる電
動機とこの電動機に回転軸を介して駆動連結される圧縮
機械とを収容した密閉形コンプレッサにおいて、コンプ
レッサ用冷媒にHFC単冷媒またはHFC混合冷媒を用
い、コンプレッサ摺動部を、アルキルベンゼン系油等の
合成油またはアルキルベンゼン系油とエステル系油との
混合油の冷凍機油で潤滑する一方、電動機の絶縁材料に
ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いたものであ
る。
【0021】一方、上述した課題を解決するために、本
発明に係る密閉形コンプレッサにおいては、請求項1〜
5のいずれかの記載内容に加え、請求項6に記載したよ
うに、電動機のモータ絶縁材料である絶縁シート,口出
線および縛り糸の少なくとも1つをポリエチレンナフタ
レート(PEN)の絶縁材料で構成したものである。
【0022】他方、本発明に係る冷凍サイクルは、上述
した課題を解決するために、請求項7に記載したよう
に、コンプレッサ,コンデンサ,減圧装置およびエバポ
レータを順次接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルに
おいて、コンプレッサ用冷媒にHCFC冷媒またはHF
C冷媒を用い、コンプレッサ摺動部を冷凍機油で潤滑す
る一方、コンプレッサに収容される電動機のモータ絶縁
材料にポリエチレンナフタレートを用いたものである。
【0023】
【作用】請求項1に係る密閉形コンプレッサにおいて
は、コンプレッサ用冷媒に使用されるHCFC冷媒は、
大気圏で分解し易く、オゾン層を破壊しにくくなり、地
球環境に優しいのみならず、電動機の絶縁材料にポリエ
チレンナフタレート(PEN)を用いたので、HCFC
冷媒を採用しても、モータ絶縁材料からのオリゴマの抽
出量が従来のPETを採用したモータ絶縁材料の10%
程度以下となり、抽出されたオリゴマによる悪影響を有
効的に防止することができ、密閉形コンプレッサの信頼
性を向上させることができる。
【0024】また、モータ絶縁材料にPENを採用する
と、オリゴマの抽出量を大幅に低下させることができる
ので、このPENのモータ絶縁材料を採用した密閉形コ
ンプレッサは、低温冷凍サイクル用にも適し、低温用冷
凍サイクルから高温用冷凍サイクルに至る広範囲での冷
凍サイクルの使用が可能になる。
【0025】さらに、この密閉形コンプレッサを冷凍サ
イクルに組み込んだ場合、オリゴマ抽出量を大幅に減少
できるので、冷凍サイクルのサイクル詰まりや冷凍能力
の低下を確実かつ有効的に防止できる。
【0026】また、請求項2に係る密閉形コンプレッサ
においては、冷凍機油に鉱油を採用すると、安価であ
り、冷蔵庫やショーケース等の冷凍機械に搭載される低
温用密閉形コンプレッサに適したものとなり、冷凍機油
にアルキルベンゼン系油,エステル系油等の合成油を採
用すると、この合成油は耐熱性に優れているので、低温
用密閉形コンプレッサのみならず高温用密閉形コンプレ
ッサにも適するものとなり、コンプレッサ摺動部の潤滑
性能を長期間に亘り充分に維持できる。
【0027】また、請求項3に係る密閉形コンプレッサ
においては、冷凍機油に鉱油,アルキルベンゼン系油お
よびエステル系油のいずれか2種類以上の混合油を用い
ると、耐熱性に優れ、低温用密閉形コンプレッサから高
温用密閉形コンプレッサに至る広範囲のコンプレッサ用
として使用できる。
【0028】また、請求項4に係る密閉形コンプレッサ
においては、コンプレッサ用冷媒としてHCFC22冷
媒を使用したので、オゾン層を破壊しにくく、地球環境
に優しい冷媒を提供できる一方、吐出冷媒温度が従来の
CFC冷媒より高温となり、コンプレッサ冷凍能力を5
0%以上高めることができる。HCFC22冷媒を採用
しても、モータ絶縁材料にPENを採用しているので、
オリゴマの抽出量を低減でき、密閉形コンプレッサから
吐出されるオリゴマ量を少なくしてオリゴマの析出等に
よるサイクル詰まりを防止し、冷凍能力の低下を確実に
かつ未然に防止できる。
【0029】請求項5に係る密閉形コンプレッサは、コ
ンプレッサ用冷媒としてHFC冷媒であるHFC単冷媒
またはHFC混合冷媒を用いたので、オゾン層を破壊す
ることがなく、また大気圏ではHCFC冷媒より安定で
長寿命であり地球環境により一層優しいものとなる。
【0030】また、電動機の絶縁材料にポリエチレンナ
フタレート(PEN)を用いたので、モータ絶縁材料か
ら抽出されるオリゴマの抽出量を大幅に減少させること
ができ、信頼性の高い密閉形コンプレッサを提供でき
る。また、密閉形コンプレッサから吐出されるオリゴマ
量を大幅に減少させ、オリゴマの析出等による冷凍サイ
クルのサイクル詰まりを防止できるので、低温用冷凍サ
イクルから高温用冷凍サイクルまで広範囲な冷凍サイク
ルに適用できる密閉形コンプレッサを提供できる。
【0031】さらに、冷凍機油にアルキルベンゼン系油
等の合成油またはアルキルベンゼン系油とエステル系油
の混合油を用いたので、コンプレッサ冷媒にHFC冷媒
を用いて吐出冷媒圧力が従来のCFC冷媒のときの吐出
冷媒圧力より上昇しても、充分な耐熱性を有するので、
コンプレッサ潤滑部の潤滑性能を充分に維持できる。
【0032】請求項6に係る密閉形コンプレッサにおい
ては、電動機のモータ絶縁材料である絶縁シート,口出
線,縛り糸の少なくとも1つをポリエレンナフタレート
(PEN)を採用したので、PENの採用によりモータ
絶縁材料に含まれるオリゴマの抽出量を低減でき、冷凍
サイクルを循環するオリゴマが少なくなり、オリゴマの
析出等による冷凍サイクルのサイクル詰まりを防止でき
る。
【0033】請求項7に係る冷凍サイクルにおいては、
コンプレッサ用冷媒にHCFC冷媒またはHFC冷媒
(HFC単冷媒もしくはHFC混合冷媒)を用いたの
で、地球環境に優しい冷媒を使用できる。
【0034】また、電動機のモータ絶縁材料にポリエチ
レンナフタレート(PEN)を採用したので、モータ絶
縁材料に含まれるオリゴマの抽出量を低減でき、冷凍サ
イクルを循環するオリゴマ量を大幅に低減できる。した
がって、高温用冷凍サイクルのみならず、低温用冷凍サ
イクルであっても、オリゴマの析出等によるサイクル詰
まりを防止でき、冷凍サイクル能力の低下を防止でき
る。また、オリゴマの析出量を大幅に低減できるので、
コンプレッサ摺動部や圧縮機械の小さなクリアランス部
分に析出したオリゴマが侵入するのを有効的に防止で
き、コンプレッサ摺動部の円滑な摺動を維持して、コン
プレッサの始動不良を回避できる。また、析出したオリ
ゴマ量を大幅にかつ充分低減できるので、圧縮機械のシ
リンダ被膜を析出したオリゴマで破損させることがな
く、冷媒リークを防止して圧縮機械の摺動部のシール性
を維持できるので、コンプレッサ能力の低下を招くこと
なく、信頼性の高いものとなる。
【0035】さらに、冷凍サイクル中を循環するオリゴ
マ量を大幅に軽減できるので、この冷凍サイクルは低温
用冷凍サイクルから高温用冷凍サイクルに至る広範囲な
冷凍サイクルに適したものとなる。
【0036】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付図面を参照し
て説明する。
【0037】図1〜図3は本発明を冷凍機械である冷蔵
庫の低温用冷凍サイクルに適用した例を示す。
【0038】この冷凍サイクル10は、基本的には密閉
形コンプレッサ11,コンデンサ12,減圧装置13お
よびエバポレータ14を順次冷媒配管15で接続して閉
じた冷媒循環回路を構成している。
【0039】具体的には、この冷凍サイクル10は図2
および図3に示すように、密閉形コンプレッサ11,蒸
発パイプ16,サブコンデンサ17,オイルクーラ18
を経てメインコンデンサ12を構成するコンデンサ1
9,クリーンパイプ20に順次接続された後、ドライヤ
21からキャピラリチューブ22等の減圧装置13を経
てエバポレータ14に接続される。このエバポレータ1
4は続いてアキュムレータ23およびマフラ24を経て
サクションパイプ25により密閉形コンプレッサ11の
吸込側に接続され、閉じた冷凍サイクル循環回路が構成
される。
【0040】密閉形コンプレッサ11は、コンプレッサ
用冷媒を圧縮して高温高圧化し、冷凍サイクル10に吐
出するようになっているが、このコンプレッサ用冷媒に
オゾン層を破壊するオゾン破壊係数(ODP)がCFC
冷媒の5%程度と少なく、大気圏で分解し易い地球環境
に優しいHCFC(ハイドロクロロフルカーボン)冷媒
が用いられる。このHCFC冷媒として代表的なものに
HCFC22(R22)冷媒が存在する。
【0041】R22冷媒を採用する密閉形コンプレッサ
11は図4に示すように構成される。
【0042】この密閉形コンプレッサ11は例えば横置
型ロータリコンプレッサであり、密閉ケース30内に電
動機31とこの電動機31により駆動されるロータリ式
圧縮機械32が収容される。密閉ケース30は3分割可
能なケース本体30aとカバーケース30b,30cを
密閉構造に組み立てて構成される。密閉ケース30はケ
ース本体とカバーケースとから2分割可能な密閉ケース
構造としてもよい。
【0043】電動機31は密閉ケース30に圧入される
固定子(ステータ)33と、回転軸34を軸装した回転
子(ロータ)35とを有する。固定子31に巻装される
固定子巻線36はモータ絶縁材料である絶縁フィルム3
7で覆われて固定子収納溝に納められる一方、上記固定
子巻線36のコイルエンド部38は縛り糸39でリング
状に束ねられ、口出線40を介して電源端子41に接続
される。この電源端子41は密閉ケース30に取り付け
られる。電動機31のモータ絶縁材料は絶縁フィルム3
7や縛り糸39,口出線40等で構成される。
【0044】また、回転子35に回転一体に軸装された
回転軸34は圧縮機械32のメインベアリング44およ
びサブベアリング45により回転自在に支持される。メ
インベアリング44は密閉ケース30に固定支持される
支持枠46に取り付けられる一方、このメインベアリン
グ44とシリンダブロック47およびサブベアリング4
5により内部にシリンダ室48が形成され、このシリン
ダ室48にピストンローラ49が収容される。
【0045】ピストンローラ49は回転軸34のクラン
ク部34aに装着され、回転軸34の回転に伴ってシリ
ンダ室48内で偏心回転せしめられる。このピストンロ
ーラ49にはスプリング50で押圧されたブレード51
が押圧接触し、シリンダ室48内を吸込側と吐出側に区
画しており、ピストンローラ49の回転に伴い、サクシ
ョンパイプ25を通ってシリンダ室48内に吸い込まれ
たR22冷媒は圧縮されて高温高圧化され、吐出側から
吐出ポート53を経て吐出室54に吐出される。
【0046】吐出室54に吐出されたR22冷媒は続い
て密閉ケース30内に案内された後、冷媒配管である吐
出パイプ55を経てコンデンサ12側に送られる。
【0047】また、密閉ケース30内には、圧縮機械3
2の摺動部を潤滑する冷凍機油57が貯溜されており、
この冷凍機油57はオイルポンプ58によりオイル供給
管59を経て回転軸34の軸受部等の摺動部に供給さ
れ、摺動部をオイル潤滑している。オイルポンプ58は
ブレード51の進退作用に共同して貯溜された冷凍機油
57をオイル供給管59に吸い込んで潤滑部に供給する
ようになっている。
【0048】密閉ケース30内に貯溜される冷凍機油5
7はオイルクーラ18により冷却され、冷凍機油57の
潤滑性能を維持するようになっている。オイルクーラ1
8は冷凍機油を冷却する熱交換パイプ60が密閉ケース
30内のデッドスペースを利用して配設されている。
【0049】ところで、密閉形ロータリコンプレッサ1
1のコンプレッサ摺動部を潤滑する冷凍機油57には、
鉱油(ナフテン系油)でもよいが、R22冷媒を使用す
ると、R12冷媒を使用したものに較べ、吐出冷媒温度
が高くなるので、冷凍機油57の劣化や炭化を生じさせ
ないように耐熱性に優れたアルキルベンゼン系油やエス
テル系油の合成油、またはアルキルベンゼン系油とエス
テル系油の混合油が用いられる。冷凍機油57は、鉱油
とアルキルベンゼン系油,エステル系油のいずれか2種
以上の混合油であってもよく、これらの冷凍機油57を
用いることにより、潤滑油の耐熱性を向上させることが
できる。
【0050】冷凍機油57にアルキルベンゼン系油,エ
ステル系油等の合成油,もしくはこれらの混合油,また
は鉱油,アルキルベンゼン系油およびエステル系油の混
合油を用いることにより、耐熱性に優れたものとなり、
R22冷媒を使用し、吐出冷媒温度が上昇しても、オイ
ルクーラ18の冷却作用の助けを受けて冷凍機油57の
劣化や炭化を有効的に防止でき、冷凍機油57の潤滑性
能の低下を確実に防ぐことができる。
【0051】これにより、圧縮機械32の軸受面やピス
トンローラ49,ブレード51間の摺動面を効率よく潤
滑でき、密閉形コンプレッサ11の信頼性を充分に維持
できる。
【0052】次に、密閉形コンプレッサおよび冷凍サイ
クルの作用を説明する。
【0053】密閉形コンプレッサ11の電動機31に通
電することにより、電動機31が駆動され、回転子35
が回転駆動せしめられる。この回転子35の回転に伴っ
て回転軸34が一体に回転し、回転軸34のクランク部
34aに装着されたピストンローラ49がシリンダ室4
8内を偏心回転せしめられる。これにより、ロータリ式
圧縮機械32が駆動される。
【0054】ピストンローラ49の偏心回転により、サ
クションパイプ25を通ってシリンダ室48の吸込側に
案内されたR22冷媒はシリンダ室48内で圧縮され、
高温高圧となってその吐出側から吐出室54を経て密閉
ケース30内に吐出される。密閉ケース30内に吐出さ
れたR22冷媒は続いて吐出パイプ55を経て冷凍サイ
クル10の蒸発パイプ16に送られ、この蒸発パイプ1
6で蒸発皿に貯溜されたドレン水を蒸発させている。
【0055】蒸発パイプ16でドレン水を蒸発させたR
22の吐出冷媒は続いてサブコンデンサ17に案内され
て放熱し、冷却された後、オイルクーラ18に案内さ
れ、ここで密閉ケース30内に貯溜された冷凍機油57
を冷却し、この劣化を防止し、潤滑性能を維持してい
る。
【0056】オイルクーラ18を出たR22吐出冷媒
は、続いてメインコンデンサ12に送られ、コンデンサ
19やクリーンパイプ20で放熱される。クリーンパイ
プ20はコンデンサ19に直列接続されてコンデンサ機
能を有し、庫内と室温の温度差に起因して生じる本体前
面への結露を防止するものである。
【0057】クリーンパイプ20を経たR22冷媒はド
ライヤ21で乾燥された後、減圧装置13であるキャピ
ラリチューブ22に案内されて減圧され、断熱膨脹せし
められる。減圧装置13はキャピラリチューブ22に代
えて膨脹弁であってもよい。
【0058】キャピラリチューブ22で減圧されたR2
2冷媒は、続いてエバポレータ14に案内され、このエ
バポレータ14で周囲から熱を奪って蒸発せしめられ
る。エバポレータ14で蒸発したR22冷媒は、アキュ
ムレータ23にて気液分離され、ガス成分がサクション
パイプ25に案内される。R22冷媒の液成分はこのア
キュムレータ23内に貯えられる。
【0059】サクションパイプ25に案内されたR22
ガス冷媒は必要に応じて設けたマフラ24により消音さ
れた後、密閉形コンプレッサ11の吸込側に吸引されて
次のコンプレッサ11で再び圧縮され、次の冷凍サイク
ル10に備えられる。
【0060】ところで、密閉ケース11に収容される電
動機31の固定子33には固定子巻線36が巻装されて
いる。この固定子巻線36は耐熱耐冷媒性に優れた巻線
であり、耐機械巻線性や低オリゴマ抽出率に優れた電線
が使用される。
【0061】固定子巻線36は具体的には図5に示すよ
うに芯線62に下層63および上層64が多層構造に被
覆されて構成される。この巻線36には、EI/AI巻
線,EAI/AI巻線,EAI/自己潤滑材巻線,自己
接着(融着)性絶縁巻線がある。
【0062】EI/AI巻線は上層64にポリアミドイ
ミド(AI)樹脂,下層63にポリエステルイミド(E
I)樹脂を被覆した絶縁巻線であり、EAI/AI巻線
は上層64にポリアミドイミド(AI)樹脂,下層63
にポリエステルアミドイミド(EAI)樹脂を被覆した
絶縁巻線である。また、EAI/自己潤滑材巻線は、上
層64に自己潤滑材とポリエステルアミドイミド(EA
I)を混合した樹脂、下層63にポリエステルアミドイ
ミド(EAI)樹脂を被覆させた絶縁巻線で、上層64
は自己潤滑材をワニス状態にしてポリエステルアミドイ
ミド(EAI)樹脂に混合塗布し、焼付けたものであ
る。
【0063】また、自己接着性絶縁電線は、上層64に
ポリアミドイミド(AI)、下層63にポリエステルイ
ミド(EI)樹脂を被覆させ、この上層64上に微粒潤
滑剤入り接着層を設けたもので、接着層にはエポキシ樹
脂,フェノキシ樹脂,架橋剤混合物,架橋密度向上剤,
またはシクロヘキサン,セロソロブ等の溶剤が用いられ
る。
【0064】さらに、電動機31のモータ絶縁材料であ
る絶縁シート37,口出線40,縛り糸39にはポリエ
チレンナフタレート(PEN)が用いられる。ポリエチ
レンナフタレート(PEN)は図6(A)に示す分子構
造を有し、図6(B)に示す従来のモータ絶縁材料であ
るポリエチレンナフタレート(PEN)の分子構造に較
べ、ベンゼン環が1つ多く、PETと同様な絶縁作用を
有する。
【0065】また、PENは図7に示すようにオリゴマ
含有率が0.5wt%(重量パーセント)とPETのオ
リゴマ含有率(0.7wt%)より少ない一方、密閉形
コンプレッサ11にコンプレッサ冷媒としてR22冷媒
を、冷凍機油57に鉱油を用いて所定の運転条件下での
オリゴマ抽出率を調べると、PENはオリゴマ抽出率が
PETの約1/10程度以下と大幅に減少させ得ること
がわかった。
【0066】具体的には、密閉形コンプレッサ11から
R22冷媒の吐出温度が130℃〜140℃で、密閉形
コンプレッサ11を30時間同一運転条件で運転した後
のオリゴマ抽出率を調べると、電動機31のモータ絶縁
材料にPETを使用した密閉形コンプレッサ11ではオ
リゴマ抽出率が0.5wt%であるのに対し、PENで
は0.05wt%のオリゴマ抽出率となり、オリゴマ抽
出率がPENのモータ絶縁材料を使用すると、PETの
場合の約1/10になっている。オリゴマ抽出量の算出
には、オリゴマの環状1量体から5量体までを高速液ク
ロマトグラフィで測定し、定量値をwt%で計測し、そ
の測定値をイニシャル品(モータ絶縁材料)と比較する
ことにより行なわれる。
【0067】PENのオリゴマ抽出率がPETのオリゴ
マ抽出率より大幅に低下する理由は、オリゴマは5量体
以下の結合分子のうち抽出されるwt%の大きい3量体
以下の占める割合がPET>PENであることと、図6
(A)に示すようにPENの分子構造からして5量体以
下のオリゴマが抽出されにくいためである。これは、P
ENの方がPETに較べると分子の平面性が高く、厚さ
方向への低分子の移動が生じにくいためである。
【0068】このように、密閉形コンプレッサ11の電
動機31のモータ絶縁材料にPENを用いると、従来の
PETを用いたモータ絶縁材料に較べ、オリゴマ抽出量
が約1/10程度と大幅に減少するため、冷凍サイクル
10中にR22冷媒に混入して吐出されるオリゴマ量を
大幅に減少させることができる。
【0069】冷凍サイクル10に吐出されるオリゴマ量
が減少するため、冷凍サイクル10中、特にサイクル低
温域で析出するオリゴマ量も大幅に減少する。したがっ
て、析出したオリゴマが堆積して冷凍サイクル10の通
路面積を減少させることも少なく、冷凍サイクル10の
機能低下を有効的に防止でき、信頼性の高いものとな
る。冷凍サイクル10に吐出されたり、析出されるオリ
ゴマ量を大幅に軽減できるので、低温用冷凍サイクル1
0にR22冷媒を使用しても、充分に適用でき、室内を
冷暖房する空気調和機のような高温用冷凍サイクルのみ
ならず、低温用冷凍サイクル10まで幅広い冷凍サイク
ルに適用できる。
【0070】また、電動機31のモータ絶縁材料にPE
Nを使用することにより、オリゴマ抽出量を大幅に減少
させることができるので、析出したオリゴマがコンプレ
ッサ摺動部や圧縮機械の小さなクリアランス部分に侵入
するのを有効的に防止でき、コンプレッサ摺動部の円滑
な摺動を維持して、コンプレッサの始動不良を回避する
ことができる。また、析出するオリゴマを大幅に減少で
きるので、圧縮機械32のシリンダ被膜を析出したオリ
ゴマで破損させたり、かじることがなく、冷媒リークを
防止できるので、コンプレッサ吐出圧力の低下を招くこ
となく、大きな余裕度をもち、信頼性の高い密閉形コン
プレッサ11を提供できる。
【0071】また。電動機31のモータ絶縁材料にPE
Nを使用した密閉形コンプレッサ11を冷蔵庫やショー
ケース等の冷凍機械の低温用コンプレッサ11に採用す
ると、次のメリットがある。
【0072】(1)低温用コンプレッサ11は、機器の
構成上、高圧縮化運転となって吐出冷媒温度が上昇し、
電動機31の巻線温度も上昇し、オリゴマが発生し易く
なるが、モータ絶縁材料としてPENの使用により、オ
リゴマの発生量(抽出量)を抑制できる。 (2)低温用コンプレッサ11は長時間連続運転され、
運転効率が高いため、長期間の信頼性確保が要求される
が、モータ絶縁材料にPENを使用することにより、運
転モードの範囲が拡がり、コンプレッサの信頼性を長期
間維持できる。 (3)低温用コンプレッサ11は室内や室外設置等の設
置条件により使用条件が異なるが、モータ絶縁材料にP
ENを採用することにより、広範囲な使用条件に対応で
きる。
【0073】また、本発明の一実施例では、冷凍サイク
ル10の密閉形コンプレッサ11に用いられるコンプレ
ッサ用冷媒としてR22冷媒を用いた例を説明したが、
このR22冷媒に代えてHFC(ハイドロフルオロカー
ボン)冷媒を用いてもよい。HFC冷媒は、HCFC冷
媒より大気圏で安定で長寿命であり、オゾン層を破壊す
ることがないので、HCFC冷媒より地球環境により優
しい冷媒となる。
【0074】HFC冷媒は単冷媒として、R22冷媒よ
り吐出圧力の高いジフルオロメタン(R32),ペンタ
フルオロエタン(R125),1,1,2,2−テトラ
フルオロエタン(R134),R22冷媒に近い冷媒特
性の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134
a),1,1,2−トリフルオロエタン(R143),
1,1,1−トリフルオロエタン(R143a),1,
1−ジフルオロエタン(R152a),モノフルオロエ
タン(R161)が挙げられる。
【0075】これらの中では、R134,R134a,
R143,R143aが従来のCFC12(R12)に
近い沸点を有し、代替冷媒として好ましい。
【0076】また、HFC冷媒は単冷媒として用いるだ
けでなく、HFC冷媒を2種以上混合させた混合物であ
ってもよい。HFC混合冷媒としては、R125/R1
43a/R134aの混合冷媒,R32/R134aの
混合冷媒,R32/R125の混合冷媒,R32/R1
25/R134aの混合冷媒が考えられる。
【0077】図7には、密閉形コンプレッサ11のコン
プレッサ冷媒にHCFC冷媒であるR22冷媒を用いた
実施例Aと、HFC冷媒であるR134a冷媒を用いた
実施例Bとを、従来の空気調和機等に組み込まれる高温
用コンプレッサにR22冷媒を使用した従来例を比較し
て示す。
【0078】実施例Aは、冷凍機油に鉱油を、モータ絶
縁材料にPENを使用したもので、低温用コンプレッサ
に適するものである。
【0079】また、実施例Bは、冷凍機油にアルキルベ
ンゼン系油とエステル系油の混合油を、モータ絶縁材料
にPENを使用したもので、高温用コンプレッサに適す
る。
【0080】さらに、従来例は、冷凍機油に鉱油を、モ
ータ絶縁材料にPETを使用した高温用コンプレッサで
ある。
【0081】これらの実験例を比較すると、電動機31
のモータ絶縁材料にPENを使用すると、コンプレッサ
用冷媒としてHCFC冷媒を用いても、HFC冷媒を用
いても、オリゴマ抽出率が0.05wt%,0.03w
t%程度であり、従来のPETを使用したオリゴマ抽出
率0.5wt%に較べ、オリゴマ抽出率が1/10以下
に減少していることがわかる。
【0082】また、地球環境に優しいHCFC冷媒であ
るR22冷媒およびHFC冷媒であるR134a冷媒を
従来のCFC冷媒であるR12冷媒,R502冷媒と、
図8のP−i線図に示す米国のASHRAE条件と日本
冷凍協会で定める冷凍能力測定条件に当てはめて比較し
た冷媒特性データを図9および図10(A)および
(B)にそれぞれ示す。図10(A)は日本冷凍協会で
定める冷凍能力測定条件(凝縮温度Tc:45℃,蒸発
温度Te:−23.3℃)に基づいて得られた各冷媒の
特性比較データであり、図10(B)は米国のASHR
AE条件(Tc:54.4℃,Te:−23.3℃)に
基づいて得られた各冷媒の特性比較データである。
【0083】なお、R502冷媒は、R22冷媒とR1
15冷媒を混合させた極低温用のCFC冷媒である。
【0084】この特性比較データから、R22冷媒を用
いたコンプレッサは、R12冷媒を用いたコンプレッサ
に較べ、コンプレッサ冷凍能力が約60%向上し、コン
プレッサ吐出温度が約20℃程度上昇していることがわ
かり、また、HFC冷媒であるR134a冷媒を用いた
コンプレッサは、R12冷媒のコンプレッサに較べ、コ
ンプレッサ冷凍能力はほぼ等しいが、コンプレッサ吐出
温度が約10℃程度下がることがわかる。
【0085】なお、本発明の一実施例の説明では、密閉
形コンプレッサとして横置型ロータリコンプレッサを採
用した例を示したが、この横置型ロータリコンプレッサ
に限定されず、縦置型ロータリコンプレッサでもよい。
また、ロータリコンプレッサに代えて、スクロールやレ
シプロタイプのコンプレッサでもよく、ロータリコンプ
レッサやレシプロコンプレッサは多段式コンプレッサで
あってもよい。
【0086】また、一実施例では、冷凍庫に採用される
低温用冷凍サイクルの例を示したが、ショーケース等の
他の冷凍機械に採用される冷凍サイクルにも適用でき、
また、空気調和機等の高温用冷凍サイクルにも適用する
ことができる。
【0087】さらに、電動機のモータ絶縁材料である絶
縁フィルムや口出線,縛り糸を全てPENで形成した例
を示したが、少なくとも1つ以上をPENの絶縁材料で
形成してもよい。
【0088】
【発明の効果】以上に述べたように本発明の請求項1に
係る密閉形コンプレッサにおいては、コンプレッサ用冷
媒に使用されるHCFC冷媒は、大気圏で分解し易く、
オゾン層を破壊しにくくなり、地球環境に優しいのみな
らず、電動機の絶縁材料にポリエチレンナフタレート
(PEN)を用いたので、HCFC冷媒を採用しても、
モータ絶縁材料からのオリゴマの抽出量が従来のPET
を採用したモータ絶縁材料の10%程度以下となり、抽
出されたオリゴマによる悪影響を有効的に防止すること
ができ、密閉形コンプレッサの信頼性を向上させること
ができる。
【0089】また、モータ絶縁材料にPENを採用する
と、オリゴマの抽出量を大幅に低下させることができる
ので、このPENのモータ絶縁材料を採用した密閉形コ
ンプレッサは、低温冷凍サイクル用にも適し、低温用冷
凍サイクルから高温用冷凍サイクルに至る広範囲での冷
凍サイクルの使用が可能になる。
【0090】さらに、この密閉形コンプレッサを冷凍サ
イクルに組み込んだ場合、オリゴマ抽出量を大幅に減少
できるので、冷凍サイクルのサイクル詰まりや冷凍能力
の低下を確実かつ有効的に防止できる。
【0091】また、請求項2に係る密閉形コンプレッサ
においては、冷凍機油に鉱油を採用すると、安価であ
り、冷蔵庫やショーケース等の冷凍機械に搭載される低
温用密閉形コンプレッサに適したものとなり、冷凍機油
にアルキルベンゼン系油,エステル系油等の合成油を採
用すると、この合成油は耐熱性に優れているので、低温
用密閉形コンプレッサのみならず高温用密閉形コンプレ
ッサにも適するものとなり、コンプレッサ摺動部の潤滑
性能を長期間に亘り充分に維持できる。
【0092】また、請求項3に係る密閉形コンプレッサ
においては、冷凍機油に鉱油,アルキルベンゼン系油お
よびエステル系油のいずれか2種類以上の混合油を用い
ると、耐熱性に優れ、低温用密閉形コンプレッサから高
温用密閉形コンプレッサに至る広範囲のコンプレッサ用
として使用できる。
【0093】また、請求項4に係る密閉形コンプレッサ
においては、コンプレッサ用冷媒としてHCFC22冷
媒を使用したので、オゾン層を破壊しにくく、地球環境
に優しい冷媒を提供できる一方、吐出冷媒温度が従来の
CFC冷媒より高温となり、コンプレッサ冷凍能力を5
0%以上高めることができる。HCFC22冷媒を採用
しても、モータ絶縁材料にPENを採用しているので、
オリゴマの抽出量を低減でき、密閉形コンプレッサから
吐出されるオリゴマ量を少なくしてオリゴマの析出等に
よるサイクル詰まりを防止し、冷凍能力の低下を確実に
かつ未然に防止できる。
【0094】請求項5に係る密閉形コンプレッサは、コ
ンプレッサ用冷媒としてHFC冷媒であるHFC単冷媒
またはHFC混合冷媒を用いたので、オゾン層を破壊す
ることがなく、また大気圏ではHCFC冷媒より安定で
長寿命であり地球環境により一層優しいものとなる。
【0095】また、電動機の絶縁材料にポリエチレンナ
フタレート(PEN)を用いたので、モータ絶縁材料か
ら抽出されるオリゴマの抽出量を大幅に減少させること
ができ、信頼性の高い密閉形コンプレッサを提供でき
る。また、密閉形コンプレッサから吐出されるオリゴマ
量を大幅に減少させ、オリゴマの析出等による冷凍サイ
クルのサイクル詰まりを防止できるので、低温用冷凍サ
イクルから高温用冷凍サイクルまで広範囲な冷凍サイク
ルに適用できる密閉形コンプレッサを提供できる。
【0096】さらに、冷凍機油にアルキルベンゼン系油
等の合成油またはアルキルベンゼン系油とエステル系油
の混合油を用いたので、コンプレッサ冷媒にHFC冷媒
を用いて吐出冷媒圧力が従来のCFC冷媒のときの吐出
冷媒圧力より上昇しても、充分な耐熱性を有するので、
コンプレッサ潤滑部の潤滑性能を充分に維持できる。
【0097】請求項6に係る密閉形コンプレッサにおい
ては、電動機のモータ絶縁材料である絶縁シート,口出
線,縛り糸の少なくとも1つをポリエレンナフタレート
(PEN)を採用したので、PENの採用によりモータ
絶縁材料に含まれるオリゴマの抽出量を低減でき、冷凍
サイクルを循環するオリゴマが少なくなり、オリゴマの
析出等による冷凍サイクルのサイクル詰まりを防止でき
る。
【0098】請求項7に係る冷凍サイクルにおいては、
コンプレッサ用冷媒にHCFC冷媒またはHFC冷媒
(HFC単冷媒もしくはHFC混合冷媒)を用いたの
で、地球環境に優しい冷媒を使用できる。
【0099】また、電動機のモータ絶縁材料にポリエチ
レンナフタレート(PEN)を採用したので、モータ絶
縁材料に含まれるオリゴマの抽出量を低減でき、冷凍サ
イクルを循環するオリゴマ量を大幅に低減できる。した
がって、高温用冷凍サイクルのみならず、低温用冷凍サ
イクルであっても、オリゴマの析出等によるサイクル詰
まりを防止でき、冷凍サイクル能力の低下を防止でき
る。また、オリゴマの析出量を大幅に低減できるので、
コンプレッサ摺動部や圧縮機械の小さなクリアランス部
分に析出したオリゴマが侵入するのを有効的に防止で
き、コンプレッサ摺動部の円滑な摺動を維持して、コン
プレッサの始動不良を回避できる。また、析出したオリ
ゴマ量を大幅にかつ充分低減できるので、圧縮機械のシ
リンダ被膜を析出したオリゴマで破損させることがな
く、冷媒リークを防止して圧縮機械の摺動部のシール性
を維持できるので、コンプレッサ能力の低下を招くこと
なく、信頼性の高いものとなる。
【0100】さらに、冷凍サイクル中を循環するオリゴ
マ量を大幅に軽減できるので、この冷凍サイクルは低温
用冷凍サイクルから高温用冷凍サイクルに至る広範囲な
冷凍サイクルに適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る密閉形コンプレッサおよびこのコ
ンプレッサを備えた冷凍サイクルを冷蔵庫用に適用した
一実施例を示す図。
【図2】図1に示した冷蔵庫用冷凍サイクルの斜視図。
【図3】図1に示す冷蔵庫用冷凍サイクルの冷媒流れを
示す図。
【図4】図1に示す冷蔵庫用冷凍サイクルに組み込まれ
る横置型密閉形コンプレッサの一実施例を示す図。
【図5】図4の密閉形コンプレッサに収容される電動機
のモータ巻線を示す断面図。
【図6】(A)は電動機のモータ絶縁材料に用いられる
ポリエチレンナフタレート(PEN)の分子構造を示す
図、(B)は従来のモータ絶縁材料として用いられたポ
リエチレンテレフタレート(PET)の分子構造を示す
図。
【図7】密閉形コンプレッサの冷媒としてHCFC冷媒
とHFC冷媒を採用した本発明の実施例(A)、(B)
と従来の高温用コンプレッサにR22冷媒を採用した従
来例とを比較して示す図。
【図8】日本冷凍協会の冷凍能力測定条件と米国のAS
HRAE条件とを比較して示す冷凍サイクルのP−i線
図。
【図9】CFC冷媒であるR12冷媒やR502冷媒
を、HCFC冷媒であるR22冷媒、HFC冷媒である
R134a冷媒と、日本冷凍協会の冷凍能力測定条件と
米国のASHRA条件と比較して示す冷媒特性比較表。
【図10】(A)は、R12、R502、R22および
R134a冷媒を日本冷凍協会の冷凍能力測定条件で測
定した冷媒特性比較データ、(B)は、R12、R50
2、R22およびR134a冷媒を米国のASHRAE
条件で測定した冷媒特性比較データ。
【符号の説明】
10 冷凍サイクル 11 密閉形コンプレッサ 12 コンデンサ(メインコンデンサ) 13 減圧装置 14 エバポレータ 15 冷媒配管 16 蒸発パイプ 17 サブコンデンサ 18 オイルクーラ 19 コンデンサ 20 クリーンパイプ 22 キャビラリチューブ 23 アキュムレータ 25 サクションパイプ 30 密閉ケース 31 電動機 32 ロータリ式圧縮機械 33 固定子 34 回転軸 35 回転子 36 固定子巻線 37 絶縁フィルム 38 コイルエンド部 39 縛り糸 40 口出線 44 メインベアリング 45 サブベアリング 47 シリンダブロック 48 シリンダ室 49 ピストンローラ 51 ブレード 54 吐出室 57 冷凍機油 58 オイルポンプ 60 熱交換パイプ 62 芯線 63 下層 64 上層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年10月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 密閉ケース内に固定子と回転子とからな
    る電動機とこの電動機に回転軸を介して駆動連結される
    圧縮機械とを収容した密閉形コンプレッサにおいて、コ
    ンプレッサ用冷媒にHCFC冷媒を用い、コンプレッサ
    摺動部を冷凍機油で潤滑する一方、電動機のモータ絶縁
    材料にポリエチレンナフタレート(PEN)を用いたこ
    とを特徴とする密閉形コンプレッサ。
  2. 【請求項2】 冷凍機油に鉱油またはアルキルベンゼン
    系油、エステル系油等の合成油を用いた請求項1記載の
    密閉形コンプレッサ。
  3. 【請求項3】 冷凍機油に鉱油,アルキルベンゼン系油
    およびエステル系油のいずれか2種以上の混合油を用い
    た請求項1記載の密閉形コンプレッサ。
  4. 【請求項4】 コンプレッサ用冷媒にHCFC22冷媒
    を用いた請求項1ないし3のいずれか記載の密閉形コン
    プレッサ。
  5. 【請求項5】 密閉ケース内に固定子と回転子とからな
    る電動機とこの電動機に回転軸を介して駆動連結される
    圧縮機械とを収容した密閉形コンプレッサにおいて、コ
    ンプレッサ用冷媒にHFC単冷媒またはHFC混合冷媒
    を用い、コンプレッサ摺動部を、アルキルベンゼン系油
    等の合成油またはアルキルベンゼン系油とエステル系油
    との混合油の冷凍機油で潤滑する一方、電動機の絶縁材
    料にポリエチレンナフタレート(PEN)を用いたこと
    を特徴とする密閉形コンプレッサ。
  6. 【請求項6】 電動機のモータ絶縁材料である絶縁シー
    ト,口出線および縛り糸の少なくとも1つをポリエチレ
    ンナフタレート(PEN)の絶縁材料で構成した請求項
    1ないし5のいずれか記載の密閉形コンプレッサ。
  7. 【請求項7】 コンプレッサ,コンデンサ,減圧装置お
    よびエバポレータを順次接続して冷媒を循環させる冷凍
    サイクルにおいて、コンプレッサ用冷媒にHCFC冷媒
    またはHFC冷媒を用い、コンプレッサ摺動部を冷凍機
    油で潤滑する一方、コンプレッサに収容される電動機の
    モータ絶縁材料にポリエチレンナフタレートを用いたこ
    とを特徴とする冷凍サイクル。
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