JP4176231B2 - 密閉形電動圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素とフッ素を含まない炭化水素系化合物の冷媒を使用する密閉型電動圧縮機に係り、特に、圧縮機構成部材の冷媒に対する適合性の向上を図った密閉型電動圧縮機に関する。
【従来の技術】
従来、HFC冷媒を用いた圧縮機構成材料の一例としては、特開平4−183788号公報に記載されたものがある。また、HC冷媒を用いた圧縮機構成材料としては特願平6−325558号公報に記載されたものがある。この後者の圧縮機構成材料はHCFC22冷媒にて用いられた耐冷媒樹脂材料と同等もしくはそれよりも耐熱性が高く、かつ不純物量が少なく、使用される冷媒もしくは油系に適合性を有するために使用されている。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような代替冷媒を使用する従来の圧縮機を備えた空気調和機では、次の課題がある。
【0003】
1.代替冷媒の採用の流れが空気調和機の場合、HCFC22からHFC410A(HFC407C)へと推移するにつれ、HFC冷媒では系内の水分が増加するので、圧縮機構成部材の樹脂組成物などの有機材料の劣化が促進される。このために、圧縮機構成部材としてコストの高い耐劣化性の有機材を使用する必要があるので、高コストであるという課題がある。
【0004】
2.また、HFC冷媒を使用する圧縮機では、HFC特有の極性を有する系のために電動機の漏れ電流が増加するので、電動機巻線などの電線の絶縁被膜の膜厚はむしろ増厚させる必要がある。このために、電線の絶縁被膜の膜厚をコスト低減のために薄肉化を図ることは、その絶縁被膜の電気絶縁性を低下させるので、電線の製造信頼性および性能の低下を招き、困難であるという課題がある。また、圧縮機の樹脂組成物には、その添加剤などが冷媒または油に抽出(析出)するという課題があるので、非極性含有物質などの添加剤の添加制限があり、コスト高や量産製造信頼性の低下を招くという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、安価で製造信頼性と製品信頼性の高い耐冷媒組成物を有する密閉型電動圧縮機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上述した課題を解決するために、密閉容器内に、塩素とフッ素を含まない炭化水素系化合物の冷媒を圧縮する圧縮機およびこの圧縮機を駆動する電動機と、この冷媒と相溶性を有する冷凍機油とを収容する密閉型冷媒圧縮機において、密閉容器内に、塩素とフッ素を含まない炭化水素系化合物の冷媒を圧縮する圧縮機およびこの圧縮機を駆動する電動機と、この冷媒と相溶性を有する冷凍機油とを収容する密閉型冷媒圧縮機において、前記電動機のステータのティース部に5wt%以内の内部離型剤を含有した直鎖型のPPS樹脂及び5wt%以内の内部離型剤を含有したPBT樹脂の一方で形成した絶縁ボビンを嵌めるとともに樹脂絶縁厚さがJIS1種または2種のポリエステルイミド線を巻き、クラスタハウジングを5wt%以内の内部離型剤を含有したPBT樹脂で形成したことを特徴とするものである。
【0007】
ここで、PPS樹脂はポリフェニレンスルフィド、PBT樹脂はポリブチレンテレフタレートである。
【0008】
請求項2の発明は、前記絶縁ボビン及びクラスタハウジングを形成する直鎖型のPPS樹脂及びPBT樹脂の内部離型剤含有率が1wt%以内であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、前記直鎖型のPPS樹脂及びPBT樹脂はガラス繊維を含有していることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、前記直鎖型のPPS樹脂はガラス繊維を30wt%〜50%含有していることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。なお、これらの図中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0016】
本発明に係る密閉形電動圧縮機は、例えば室内を冷暖房する空気調和機の冷凍サイクルに組み込む場合に好適なもので、レシプロタイプ,ロータリタイプ,スクロールタイプ,ヘリカルタイプを含む。ロータリタイプの密閉形電動圧縮機には、冷蔵庫等に用いられる低温用ロータリ圧縮機と、空気調和機等に用いられる高温用ロータリ圧縮機がある。
【0017】
図1は本発明の第1の実施形態に係るロータリタイプの密閉形電動圧縮機1Aの縦断面図である。この密閉形電動圧縮機1Aは、空気調和機の冷凍サイクルに組み込まれる縦置のツインタイプの高温用ロータリ圧縮機であり、高温用ロータリ圧縮機とは冷媒の蒸発温度が5℃以上の圧縮機をいう。
【0018】
この密閉形電動圧縮機1Aは、密閉ケース1内に、塩素とフッ素を含まない炭化水素系化合物の冷媒(以下炭化水素冷媒という)であるR290(プロパン)を圧縮するロータリタイプの圧縮機2およびこの圧縮機2を駆動する電動機3と、この炭化水素冷媒と相溶性を有する冷凍機油4とを収容し、圧縮機2は電動機3の下方に配設される。冷凍機油4は密閉ケース1の内底部上に溜められ、圧縮機2の下部を浸漬している。
【0019】
電動機3は、密閉ケース1内の上部に圧入されるステータ5とこのステータ5に回転自在に設けられるロータ6とを有し、ロータ6にはクランクシャフト7を一体に設けている。このクランクシャフト7の下部は、図中上下に配設されたメインベアリング8とサブベアリング9により回転自在に支持される。さらに、このクランクシャフト7の下部ないし下端部には、ロータ6よりも下方に突出して、冷凍機油4の溜まり内に延びて、クランクシャフト7の回転により、冷凍機油4をクランクシャフト7の軸上方へ吸い上げてメインベアリング8とサブベアリング9の摺動部に給油する図示しないオイルポンプを形成している。
【0020】
圧縮機2は上下一対の2個のシリンダ(シリンダブロック)10,11を有し、各シリンダ10,11のシリンダ室12,13内にピストンローラ14,15が収容されている。各ピストンローラ14,15はクランクシャフト7のクランク部7a,7bに各々外嵌され、クランクシャフト17の回転により両ピストンローラ14,15が各シリンダ室12,13内で転動しつつ偏心回転されるようになっている。各シリンダ10,11間は仕切プレート16で仕切られている。
【0021】
各シリンダ室12,13は各ブレード17により吸込側と吐出側とに仕切られ、各ブレード17は各シリンダ10,11に形成された各ブレード溝18に摺動自在に収容され、各スプリング19により常時ピストンローラ14,15側に弾性的に押圧するようにばね付勢される。
【0022】
密閉ケース1には、各シリンダ10,11の一端に対向して吸込用貫通孔20,21を形成し、この吸込用貫通孔20,21に、アキュムレータ22からの吸込管23,24を各々挿通させて各シリンダ10,11の各吸込孔に接続させることにより、アキュムレータ22を各シリンダ室12,13の吸込側にそれぞれ連通させている。
【0023】
したがって、圧縮機2が電動機3により駆動されると、その圧縮機2の各シリンダ室12,13内でピストンローラ14,15が転動しつつ偏心回転するので、これら各シリンダ室12,13の吸込側に、炭化水素冷媒がアキュムレータ22から吸込管23,24を通って吸い込まれ、ここで圧縮作用が行われる。さらにシリンダ室12,13で圧縮された冷媒は各吐出室25から第2吐出室26を経て密閉ケース1に放出され、その後、吐出管27を経て密閉ケース1外の冷凍サイクルに吐出される。
【0024】
また、電動機3の駆動によりクランクシャフト7が回転すると、このクランクシャフト7のオイルポンプにより、冷凍機油4がクランクシャフト7の軸上方へ吸い上げられて、メインベアリング8とサブベアリング9などの摺動部に給油され、その摺動部を潤滑する。この摺動部としては、クランクシャフト7と、メインベアリング8及びサブベアリング9、並びにこれらベアリング8,9と各ピストンローラ14,15や仕切プレート16、さらにブレード19とローラ14,15、さらにまた、ブレード19とシリンダ10,11の各ブレード溝18などの摺動部がある。
【0025】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1Bの縦断面図である。この密閉形電動圧縮機1Bは、密閉ケース1内に、塩素とフッ素を含まない炭化水素系化合物の冷媒(炭化水素冷媒)であるR290(プロパン)とR600a(n−ブータン)の混合冷媒を圧縮するレシプロタイプの圧縮機2Bと、この圧縮機2Bを駆動する電動機3とを収容している。この電動機3と圧縮機2Bは密閉ケース1内で固定フレーム28により一体的に組み付けられ、複数の支持スプリング29により緩衝的に支持される。
【0026】
電動機3はステータ5とロータ6とを有し、ロータ6には回転シャフトであるクランクシャフト7が一体に軸装される。クランクシャフト7は固定フレーム28に固定された軸受30に回転自在に支持される。
【0027】
クランクシャフト7は、軸受30よりも上方に突出する突出端部において、クランク部7aを形成し、このクランク部7aにピストンロッドを形成するコンロッド31の大端部31aを軸装している。一方、コンロッド31は、その小端ボール部31bをピストン32に球継手を介して連結し、このピストン32をシリンダ33のシリンダ室34内で摺動自在に支持する。球継手はコンロッド31の小端ボール部31bとピストン32の球座部35とにより形成される。
【0028】
シリンダ33は、その一側端を図示しない吐出弁および吸込弁を備えたヘッドプレート36を介してシリンダカバー37により被覆しており、このシリンダカバー37内に吸込室および吐出室38を形成している。吐出室38は図示しない吐出マフラから吐出パイプ39を経て密閉ケース1外の吐出管(図示せず)に吐出されるようになっている。
【0029】
一方、図示しない吸込管から密閉ケース1内に吸い込まれる炭化水素冷媒は、図示しない吸込チャンバから吸込室に入り、さらに、この吸込室からシリンダ室34内に入り、このシリンダ室34内でのピストン32の往復運動により、断熱圧縮される。この密閉形電動圧縮機1Bは、縦置型で密閉ケース1内を低圧とする圧縮機であるが、密閉ケース1内を高圧とするタイプや、横置型でもよい。
【0030】
そして、密閉ケース1の底部には、コンプレッサ摺動部を潤滑し、かつ冷却する冷凍機油4Bを貯溜させている。この冷凍機油4Bはクランクシャフト7内に形成されたオイルポンプ7bの回転により吸い上げられて、コンプレッサ摺動部に案内され、コンプレッサ摺動部を潤滑する。
【0031】
このコンプレッサ摺動部は、摺動材を摺動自在に支持する支持構造に形成され、一方の摺動部材とこの摺動部材の相手方を構成する他方の摺動部材とから構成される。具体的には、コンプレッサ摺動部には、クランクシャフト7と軸受30,クランクシャフト7のクランク部7aとコンロッド大端部31a,コンロッド小端ボール部31bとピストン32の球座部35,ピストン32とシリンダ33とがある。
【0032】
したがって、圧縮機2Bが電動機3により駆動されると、その圧縮機2Bのシリンダ室34の吸込側に、R290とR600aの混合冷媒がアキュムレータから吸込管を通って吸い込まれ、ここで圧縮される。さらにシリンダ室34で圧縮された冷媒は吐出室38から吐出パイプ39を経て密閉ケース1内に放出され、その後、吐出管から密閉ケース1外の冷凍サイクルに吐出される。
【0033】
また、電動機3の駆動によりクランクシャフト7が回転すると、このクランクシャフト7のオイルポンプ7bにより、冷凍機油4Bがクランクシャフト7の軸上方へ吸い上げられて、メインベアリング8とサブベアリング9などのコンプレッサ摺動部に給油され、その摺動部を潤滑する。このために、クランクシャフト7と軸受30、クランクシャフト7のクランク部7aとコンロッド大端部31a、コンロッド小端ボール部31baとピストン32の球座部35、ピストン32とシリンダ33などの摺動部が潤滑される。
【0034】
図3は、このようなロータリタイプとレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1Bの電動機3の要部横断面図である。この電動機3の電気絶縁用構成部材としては、例えば電動機巻線とステータ5の電気絶縁用構成部材がある。電動機3の巻線としては、その芯線(導線)の外面にポリエステルを被覆し、または、このポリエステル層の外面に、さらにポリアミドイミドもしくはナイロンを被覆してなるポリエステルイミド線を使用しており、これらの樹脂絶縁厚さをJIS1種または2種に設定している。
【0035】
また、電動機3のステータ5については、その図示しないティース部に絶縁ボビンとして直鎖型のPPS樹脂(ポリフェニレンスルフィド)を嵌め込むか、またはこのティース部をPPS樹脂によりモールド成型して、このポリエステルイミド線を施してステータに構成する。
【0036】
このPPS材はガラス繊維を40重量(wt)%含有したものを射出成形により製作したものである。そのガラス繊維量は30wt%〜50wt%含有したものが耐冷媒強度から望ましい。それ以下である場合には、強度上不足が生じるので、望ましくない。また、PPS材の無機フィラーとして、炭酸カルシュウム、水酸化アルミニウム、タルクが含まれても耐冷媒性上問題はない。
【0037】
さらに、上記電気絶縁ボビンとしては、PA樹脂(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)により形成してもよい。
【0038】
その際、これら樹脂材料には、内部離型剤として例えば天然パラフィンワクッスを5wt%含有させているので、離型性が向上する。このために、射出成型時の成形型の寿命の向上を図ることができると共に、電気絶縁性を確保できる。望ましくは、樹脂材料中の均一性、冷凍サイクル内での抽出(析出)の観点より1wt%がよい。また、電動機3の電源充電部に接続する口出線部としては、上記電動機巻線の口出芯線を、例えば赤黒白に区分(色別)したFEP(フロロエチレンプロピレン共重合体)製押出しチューブ内に通し、その端子をかしめてクラスタハウジングとしてアンモニアフリーのフェノール樹脂を用いて接続できるようにした。クラスタハウジングとしてはガラス繊維入りのPBT樹脂を用いてもよい。これについても内部離型剤を含有し、若しくは成形型に直接塗布することにより製造してもよい。
【0039】
このように電動機3のステータ5を構成した密閉形電動圧縮機1A,1Bによれば、これを空気調和機に組み込み、1000時間運転を行った結果、その運転初期と1000時間後の性能に変化は殆ど無く、運転終了後、密閉形電動圧縮機1A,1Bを分解して樹脂組成物を調べた結果、耐劣化性も良好であり、またサイクル部品に抽出(析出)した物質の存在も確認されず良好であった。
【0040】
また、塩素とフッ素を含まない炭化水素系化合物の冷媒を使用するので、オゾン層の破壊と地球温暖化とを共に低減することができる。
【0041】
本発明の第3の実施形態に係る密閉形電動圧縮機は、上記ロータリタイプとレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1Bにおいて、炭化水素系冷媒として、R170、R600、R1150,R1270の群から選択される少なくとも1種類を使用した点に特徴がある。これら電動圧縮機1A,1Bについても上記同様に空気調和機に組み込み、運転試験を行なったところ、樹脂組成物の耐劣化性も良好であり、またサイクル部品に抽出(析出)した物質の存在も確認されず良好であった。
ここに、炭化水素系化合物の冷媒は、R170(エタン)、R290(プロパン)、R600(n−ブタン)、R600a(I−ブタン)、R1150(エチレン)、R1270(プロピレン)の群から選択される1種類以上の冷媒からなる。
【0042】
本発明の第4の実施形態に係る密閉形電動圧縮機は、上記ロータリタイプとレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1Bにおいて、上記炭化水素冷媒と相溶性を有する冷凍機油として、鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステル油、ポリエーテル油、PAG、PAO、フッ素油の群から選択される少なくとも1種類以上の冷凍機油を使用した点に特徴がある。これら冷凍機油についてもそれぞれ40℃での動粘度1,7,10,22,32,45、56,68,120mm2/Sを試験したところ、炭化水素冷媒との適合性などで問題がないことが確認された。また、これらの冷凍機油には、添加剤として、酸化防止剤、加水分解安定剤、油性剤、極圧剤、腐食防止剤、消泡剤、発泡剤が含まれても問題がなかった。さらに、これらの冷凍機油は単独か、或いは1種以上の油が混合されて用いられても炭化水素冷媒との適合性などに問題がないことが確認された。その結果、HFC用の冷凍機油や、HC−HCFC用の冷凍機油と共用できることにより、レトロフィットとしても対応でき、これらの冷凍機油が混入しても冷媒との適合性などに問題がないことが確認された。
ここに、冷凍機油は、40℃での動粘度が1〜120mm 2 /Sである鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステル油、ポリエーテル油、PAG,PAO、フッ素系油の群から選択される1種類以上の油よりなる。
【0043】
本発明の第5の実施形態に係る密閉形電動圧縮機は、上記ロータリタイプとレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1Bの電動機3の巻線として、その芯線(導線)の外面にポリエステルを被覆し、または、このポリエステル層の外面に、さらにポリアミドイミドもしくはナイロンを被覆してなるポリエステルイミド線を使用し、これらの樹脂絶縁厚さをJIS1種または2種に設定して、空気調和機に組み付けた点に特徴がある。この電動機3の巻線の耐久試験によれば、電気絶縁破壊電圧と、密着性において良好であり、問題はなかった。
【0044】
また、この樹脂絶縁厚さを薄くした場合に、漏れ電流が増加する問題についても、インバーター制御の直流モータを電動機3として組み付けた空気調和機で運転試験をした結果、この漏れ電流の増加は殆ど見られなかった。
【0045】
図3は本発明の第6の実施形態に係る密閉形電動圧縮機の要部横断面図である。この密閉形電動圧縮機は、上記ロータリまたはレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1BにおけるHC冷媒用の耐冷媒組成物として、電動機3の電気絶縁紙40に、溶融重合型のPETフィルムを使用して、空気調和機に組み付けた点に特徴がある。なお、図3中、符号41はステータコア、42は電線である。
【0046】
これによれば、ΗCFC22やHFC系冷媒では、その含有水分が多いので、溶融重合型のPETフィルムでは加水分解を生ずる問題があったが、HC冷媒下では吸湿性が少ないことにより加水分解の問題がなく、コストを低減できる。
【0047】
本発明の第7の実施形態に係る密閉形電動圧縮機は、上記ロータリまたはレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1Bにおいて、その構成部品のうち、金属部品と有機樹脂部品を、その製造工程(加工工程含む)時に、炭化水素系溶剤により最終洗浄する点に特徴がある。この金属部品としては、特にシリンダ10,11,33や各軸受8,9,30に鋳物や繞結金属を用いる場合、その黒鉛や空孔部に、この炭化水素系洗浄液が残存しても炭化水素系溶剤であれば炭化水素系冷媒との適合性に問題がなく使用ができる。また、ブレード17やローラ14,15などに有機樹脂部品を用いる場合でも、これら樹脂部品に炭化水素系洗浄剤が含浸しても適合性に問題はなかった。
【0048】
図4は本発明の第8の実施形態に係る空気調和機51の冷凍サイクル図である。この空気調和機51は、上記各実施形態に係るロータリまたはレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1Bのいずれかを組み付けた点に特徴がある。
【0049】
すなわち、この空気調和機51は、上記各実施形態に係るロータリまたはレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1Aまたは1B、例えば1Aに、四方弁52、室外フアン53を有する室外側熱交換器54、減圧器である膨張弁55、室内ファン56を有する室内側熱交換器57を冷媒配管58により、この順に順次、かつ環状に接続し、炭化水素系冷媒を可逆的に循環させる閉じた冷凍サイクルを構成している。
【0050】
この冷凍サイクルは四方弁52の切換操作により、冷媒を図中実線矢印方向に循環させると、冷房運転され、図中破線矢印方向に循環させると、暖房運転されるように構成されている。
【0051】
そして、この空気調和機51によれば、上記各実施形態に係るロータリまたはレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1Bのいずれかを組み付けているので、これら各実施形態とほぼ同様の効果を奏することができる。
ここにおいて、PPS樹脂はポリフェニレンスルフィド、PTFEはポリテトラフルオロエチレン、ETFEはエチレンフッ化エチレン共重合体、FEPはフロロエチレンプロピレン共重合体、PFAはペルフロロアルコキシフッ素樹脂、PA樹脂はポリアミド、PI樹脂はポリイミド、PBT樹脂はポリブチレンテレフタレート、PET樹脂はポリエチレンテレフタレートである。
また、絶縁用構成部材は、電動機巻線の芯線の外面にポリエステルを被覆し、またはこのポリエステル層の外面にポリアミドイミドもしくはナイロンを被覆して、これらの樹脂絶縁厚さがJIS1種または2種に設定されてなる。
さらに、PET樹脂は、電動機の絶縁紙材料として使用される溶融重縮合タイプのPET材である。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、樹脂製の絶縁用構成部材と摺動部材の少なくとも一方を、その内部に、5wt%以内の内部離型剤を含有し、あるいは射出成型もしくは押し出し成型時の成形型に離型剤を塗布して成型するので、これら樹脂製構成部材の離型性が向上する。このために、成形型の寿命を向上させることができると共に、これら樹脂製構成部材の製造性の向上とコスト低減を図ることができる。
【0053】
また、電気絶縁用構成部材または摺動部材として、PPS樹脂、レゾール型のフェノール樹脂、フッ素樹脂、PA樹脂、PI樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、を使用するので、良好な低抽出特性を得ることができると共に、強度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る密閉形電動圧縮機の縦断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る密閉形電動圧縮機の縦断面図。
【図3】図1,2で示す実施形態の電動機の要部横断面図。
【図4】本発明の第8の実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクル図。
【符号の説明】
1A ロータリタイプの密閉形電動圧縮機
1B レシプロタイプの密閉形電動圧縮機
1 密閉ケース
2,2B 圧縮機
3 電動機
4,4B 冷凍機油
5 ステータ
6 ロータ
7 クランクシャフト
7a,7b クランク部
8 メインベアリング
9 サブベアリング
10,11 シリンダー
14,15 ローラ
17 ブレード
18 ブレード溝
30 軸受
Claims (4)
- 密閉容器内に、塩素とフッ素を含まない炭化水素系化合物の冷媒を圧縮する圧縮機およびこの圧縮機を駆動する電動機と、この冷媒と相溶性を有する冷凍機油とを収容する密閉型冷媒圧縮機において、
前記電動機のステータのティース部に5wt%以内の内部離型剤を含有した直鎖型のPPS樹脂及び5wt%以内の内部離型剤を含有したPBT樹脂の一方で形成した絶縁ボビンを嵌めるとともに樹脂絶縁厚さがJIS1種または2種のポリエステルイミド線を巻き、クラスタハウジングを5wt%以内の内部離型剤を含有したPBT樹脂で形成したことを特徴とする密閉形電動圧縮機。 - 前記絶縁ボビン及びクラスタハウジングを形成する直鎖型のPPS樹脂及びPBT樹脂の内部離型剤含有率が1wt%以内であることを特徴とする請求項1記載の密閉形電動圧縮機。
- 前記直鎖型のPPS樹脂及びPBT樹脂はガラス繊維を含有していることを特徴とする請求項1または2記載の密閉形電動圧縮機。
- 前記直鎖型のPPS樹脂はガラス繊維を30wt%〜50%含有していることを特徴とする請求項3記載の密閉形電動圧縮機。
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