JP3600108B2 - 冷凍装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷凍装置に関し、特に環境に対する負荷が小さくまた大きな熱量を取り出すことが可能な冷凍装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷蔵庫、自動販売機及びショーケース用の冷凍機は従来冷媒としてジクロロジフルオロメタン(CFC−12)などのクロロフルオロカーボン系冷媒やクロロジフルオロメタン(HCFC−12)などのハイドロクロロフルオロカーボン系冷媒が多様されていた。これらの冷媒は、大気中に放出されて地球上空のオゾン層に到達すると、オゾン層を破壊する問題があることから、これまで冷凍機に使用されてきた冷媒であるクロロフルオロカーボン系フロンやハイドロクロロフルオロカーボン系フロンが使用禁止または規制されつつある。
そのため、上記冷媒の代替フロンとして、CH2FCF3(HFC−134a)等のハイドロフルオロカーボン系のものが使用されるようになってきた。しかし、HFC冷媒であっても、地球環境問題のもう一つの課題である地球温暖化に対する影響が、従来のHCFC冷媒のHCFC−22(CHClF2)と同程度に近いという問題点がある。
また、暖房および冷房、さらにこれらの機能に加え給湯の機能を備えた冷凍装置においては、従来の冷媒では放熱器において80℃程度の熱を取り出すことしかできず、たとえば120℃(得られる湯温にしておよそ80℃)といった高熱量を取り出すことは不可能であり、給湯機能としては不充分であった。
このように、環境に対する負荷が小さくかつ大きな熱量を取り出すことが可能な冷凍装置は実現されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境に対する負荷が小さく高熱量を取り出すことが可能であり、また、冷凍機油の圧縮機への戻りも良好で、さらに長期にわたり安定に使用することができる冷凍装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の冷凍装置を提供することにより解決される。
(1)圧縮機、放熱器、膨張機構および蒸発器を含む冷凍回路に冷媒として二酸化炭素を循環させる冷凍装置であって、前記圧縮機に用いる冷凍機油として粘度が40℃において5〜300cStで、体積固有抵抗が108Ω・cm以上で、また二酸化炭素が飽和溶解したときの流動点が−30℃以下であるポリアルキレングリコール冷凍機油を使用し、かつ、冷凍回路において使用する有機材料が高温高圧の二酸化炭素により物理的および/または化学的に変性を受けない材料であることを特徴とする冷凍装置。
(2)前記材料が耐溶剤性、耐抽出性、熱的・化学的安定性および耐発泡性を有することを特徴とする前記(1)に記載の冷凍装置。
(3)前記材料がモーターの巻線の被覆材料であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の冷凍装置。
(4)前記モーターの巻線の絶縁被覆材料がポリビニルフォルマール、ポリエステル、THEIC変性ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミドからなる群から選ばれることを特徴とする前記(3)に記載の冷凍装置。
(5)前記材料がモーターの絶縁フィルムであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の冷凍装置。
(6)前記モーターの絶縁フィルムがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドの群から選ばれることを特徴とする前記(5)に記載の冷凍装置。
(7)前記材料がシール材料であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の冷凍装置。
(8)前記シール材料がポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエラストマー、フッ素ゴムからなる群から選ばれることを特徴とする前記(7)に記載の冷凍装置。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の冷凍装置は、圧縮機、放熱器、膨張機構および蒸発器を含む冷凍回路に冷媒として二酸化炭素を循環させる冷凍装置であって、前記圧縮機に用いる冷凍機油として粘度が40℃において5〜300cStで、体積固有抵抗が108Ω・cm以上で、また二酸化炭素が飽和溶解したときの流動点が−30℃以下である冷凍機油を使用し、かつ、冷凍回路において使用する有機材料が高温高圧の二酸化炭素により物理的および/または化学的に変性を受けない材料を使用することにより、環境に対する影響が小さくまた高熱量を取り出すことが可能な冷凍装置であって、圧縮機への冷凍機油の戻りが良好で焼きつきを起こさず、しかも、長期にわたり安定に使用することができる冷凍装置を実現することができたものである。
本発明の冷凍装置は、冷却(冷房等)だけを目的とするのみならず、冷却(冷房等)および加熱(暖房、給湯等)の両機能を備えた冷凍装置にも使用することが可能である。
【0006】
次に、本発明の冷凍装置を図を用いて説明する。
図1は、本発明の冷凍装置における冷凍回路の一例を説明する概念図である。図1は冷房および暖房が可能な冷凍装置の冷凍回路の一例を示す。図1中、100は圧縮機、120は室外熱交換器(冷房時には放熱器として、暖房時(または加熱時)には蒸発器として機能)、140は膨張機構、160は室内熱交換器(冷房時には蒸発器として、暖房時(または加熱時)には放熱器として機能)、180は四方弁、200は乾燥装置をそれぞれ示す。また矢印は冷媒が流れる方向を示し、実線は室内熱交換器が冷房を行う場合を、破線は室内熱交換器が暖房を行う場合を示す。乾燥装置は、図1では膨張弁と室内熱交換器の間に設けている例を示しているが、この位置だけでなく、低圧の位置に設けてもよい。なお、図1の実線は冷房時の乾燥装置の位置を示している。暖房(加熱)時には点線で示す位置に乾燥装置の接続を切り換えることができるような配管切換部を設ける。
【0007】
例えば、室内を冷房する場合、圧縮機100より断熱的に圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、四方弁200を通り室外熱交換器120で冷却され、低温高圧の冷媒液となる。この冷媒液は膨張機構140(例えば、キャピラリーチューブ、温度式膨張弁など)で断熱的に減圧され、僅かにガスを含む低温低圧液となって室内熱交換器160に至り、室内の空気から熱を得て低温ガスの状態で再び四方弁200を通って圧縮機100に至る。室内を暖房する場合は、四方弁200によって冷媒の流れは逆方向に変えられ、逆の作用となる。
【0008】
次に、本発明の冷凍装置において使用される圧縮機の一例を示す。図2は、本発明の冷凍装置に使用する2シリンダの回転式圧縮機(ロータリ式コンプレッサ)の一例を示すもので、冷媒ガスである二酸化炭素ガスを二段階で圧縮する。
図2中、1は回転式圧縮機、2は鉄などの金属からなる密閉容器、2Aは容器体、2Bは密閉蓋、3は電動要素、4は電動要素の回転軸、5は回転軸4により駆動される回転圧縮要素、6は密閉蓋2B に取りつけられた前記電動要素3に電力を供給するためのターミナル端子(配線は省略)をそれぞれ示す。
【0009】
電動要素3は、ロータ7及びステータ8からなり、ロータ7は電磁鋼板からなる積層体10の内部に図示しない永久磁石を設けてなるもので、ステータ8はリング状の電磁鋼板を積層した積層体12に巻線11を取り付けてなるものである。尚、9はバランサーである。この構造は、直流モータと称するものであるが、積層した電磁鋼板にアルミニウム製のアルミ芯を挿入してなる交流モータと称するモータを用いてもよい。
また、回転圧縮要素5は、プレートミドル(中間仕切板)13と、このプレートミドル13の上下に取り付けられた上シリンダ14、下シリンダ15と、この上下シリンダ14、15 内を回転軸4 の上下偏心部16、17 によって回転する上下ローラ18、19 と、この上下ローラ18、19に接して上下シリンダ14、15内を高圧室と低圧室とに区画する上下ベーン20、21と、上下シリンダ14、15の上下の開口を閉塞すると共に、前記回転軸4の回転を許容するメインフレーム22、ベアリングプレート23とで構成されている。
【0010】
更にこれらは、メインフレーム22、上シリンダ14、プレートミドル13、下シリンダ15、ベアリングプレート23の順に配置され、ボルト24にて連結されているものである。
【0011】
また、前記回転軸4には、前記回転圧縮要素5の各摺動部に潤滑油、即ちオイルを供給するための給油孔25が設けられている。更に、回転軸4の外周面には、この給油孔25と連通し、オイルを上下ローラ18、19の内側に導く給油溝26が形成されている。更に、前記上下ベーン20、21には前記上下ローラ18、19に対して常時付勢するためのスプリング27が設けられている。
また、前記上下シリンダ14、15には冷媒を導入する上下導入管(図示せず)が設けられていると共に、冷媒を吐出する上下出口管30、31がそれぞれ設けられている。そして、これら上下導入管及び上下出口管30、31には冷媒配管34、32がそれぞれ接続され、冷媒配管33は上シリンダ14に接続している。
また、冷媒配管44は、後述の過冷却器42からの冷媒が通る管であり、前記冷媒配管34とは、サクションマフラー36内で結合されている。尚 、35は密閉容器2を支持するための台座である。
そして、圧縮機の容器体2Aの底部には、冷凍機油が貯留される。
【0012】
次に前記のごとき2シリンダ回転圧縮機を用いた冷凍サイクルについて説明する。図3は、図2で示す2シリンダ回転圧縮機を用いる冷凍サイクルの概念図であり、図3中、1は2シリンダ回転圧縮機、37は凝縮器、38は冷却器(蒸発器)、39は膨張弁、41はバイパス膨張弁、42は過冷却器をそれぞれ示し、32、33、40、41、43および44はそれぞれ冷媒配管を示す。34、、回転式圧縮機1の下シリンダ15に設けられた下出口管31は、凝縮器37と、吐出側冷媒配管32を介して接続されており、また、上シリンダ14は吸込側冷媒配管33を介して冷却器38と接続されている。
【0013】
圧縮機1からの高温高圧の圧縮ガス(図のB点)は凝縮器37で放熱するとともに高温高圧の液体(図のC点)となる。高温高圧の液体は、途中で分岐し、1つはバイパス膨張弁41を通って低温低圧の液体となり(D点参照)さらに過冷却器42を通る。
C点からの冷媒で分岐したもう一方の冷媒は、冷媒配管40内を流れ、前記過冷却器42においてバイパス膨張弁41を通って低温低圧の液体となった冷媒と熱交換される。たとえば過冷却器42を二重管に構成し、内側にバイパス管43からの冷媒を、外側に冷媒配管40からの冷媒が流れるようにする、あるいはこの逆にすることにより熱交換を行って、より低温の冷媒とする。
バイパス膨張弁41および過冷却器42を通った冷媒は、冷媒管44内を流れ、後述の冷媒管34からの冷媒と合流して圧縮機1に入り、下シリンダ15により圧縮を受け冷媒配管32に向かう。冷媒配管34からの冷媒は、上シリンダ14によって圧縮され高温高圧になった冷媒である。
上記の2シリンダ回転圧縮機を用いた冷凍回路においては、上記のような構成としたために圧縮機における圧力を中間圧とすることができ、またバイパス膨張弁および過冷却機圧縮機からの吐出ガスの温度を低く抑えることができる。
上記の例では、圧縮機は2段で圧縮するタイプのものを説明したが、本発明の冷凍回路において使用する圧縮機は、1段で圧縮するものであってもよい。
【0014】
本発明の冷凍装置は、放熱器からの熱を取り出して利用する湯沸し機、蒸発器で冷却を行う通常の冷凍庫、冷凍冷蔵庫、エアコン、除湿機、自動販売機、ショーケース等に好ましく用いられる。
【0015】
本発明の冷凍装置で使用する冷媒である二酸化炭素の純度は99.9vol%以上であることが好ましく、また、全硫黄分が0.1wtppm以下であることが好ましい。純度は99.9vol%より低いと不純物の影響が出る場合があるので、前記の純度以上であることが好ましい。また全硫黄分が0.1wtppmを超えると、配管である銅との反応が許容量を超えるため好ましくない。
【0016】
冷凍機油は、圧縮機のなかに封入される潤滑油であり、冷凍回路を冷媒および少量の冷凍機油の混合物がその系全体にわたって循環することになる。したがって、この冷凍機油の低温特性および冷媒に対する混和性は、この冷却系の性能に対して重要な要素となる。冷媒および冷凍機油の混合物は、冷凍装置における作動温度において安定(たとえば耐加水分解性)でなければならず、しかも圧縮機をはじめとする冷凍回路において使用する材料に対して、有害な作用(たとえば腐食性、絶縁性低下)を及ぼしてはならない。
また、冷凍機油の一部は、圧縮された冷媒ガスに混入し、冷媒と共に冷凍機の冷凍回路内を循環して、毛細管あるいは膨張弁などの膨張機構を経て蒸発器に流入する。冷凍回路における低温部分では圧縮機から移動した冷凍機油は流動性を失いやすく、そのままそこに留まりやすい。冷凍機油が蒸発器から圧縮機に戻らないと、圧縮機において油面低下が起こり、かじりや焼きつきが発生する。
冷凍機油の40℃における粘度は5〜300cStであることが必要である。300以上であると流動性が十分でなく特に低温下では流動性を失い易い。また、5以下であると、潤滑面における油膜強度不足や圧縮機構におけるシール効果不足となりやすい。
また、冷凍機油に対する二酸化炭素の溶解度が大きいものが好ましい。このような冷凍機油を用いることにより、冷凍機油に二酸化炭素が溶解すると、流動点を冷凍機油が本来有している流動点よりさらに、低温側に移行させることが可能である。すなわち、二酸化炭素が飽和溶解したときの流動点が−30℃以下であるような冷凍機油が好ましく用いられる。
さらに、本発明の冷凍装置における冷凍機油の体積固有抵抗は108Ω・cm以上であることが必要である。
【0017】
上記のごとき条件を満たす冷凍機油としては、ポリアルキレングリコール、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが用いられる。
ポリアルキレングリコールとしてはポリプロピレングリコールが好ましく使用される。また、前記冷凍機油としては1種あるいは2種以上の冷凍機油を混合してもよい。
【0018】
また、本発明の冷凍装置においては冷媒として二酸化炭素を使用するため、冷凍回路を構成する部材は二酸化炭素により物理的・化学的な攻撃を受けない材料を用いることが必要である。加えて、二酸化炭素を高圧状態におくと超臨界状態に移行することが往々にしてあり、二酸化炭素を高圧で圧縮する圧縮機内では二酸化炭素が超臨界状態になることがある。特に、超臨界状態の二酸化炭素は有機材料に対して悪影響を与える。たとえば超臨界状態にある二酸化炭素は有機材料たとえば高分子材料であるシリコーン樹脂を透過し易いので、シリコーン樹脂からなるシール材料を圧縮機に使用することはできない。また超臨界状態の二酸化炭素は有機溶剤としても作用するので、材料の表面が侵されるなどの物理的および/または化学的に変性を受ける虞がある。したがって、圧縮機をはじめとする冷凍回路において、超臨界状態に曝される可能性のある箇所で使用する有機材料としては、二酸化炭素が超臨界状態であっても前記変性を受けない有機材料を用いることが必要である。
【0019】
さらに、本発明の冷凍装置は冷媒として二酸化炭素を使用することに起因して、冷凍回路が高温高圧の二酸化炭素に曝されることになる。ここで高圧とは冷凍回路の中の最も圧力が大きくなる箇所、すなわち圧縮機内の最大圧力を意味し、また高温とは冷凍回路の中の最も温度が上昇する箇所を意味する。
したがって、冷凍回路において使用する材料は高温高圧の二酸化炭素に接触した場合でも、またその二酸化炭素が臨界状態にある場合でも、物理的および/または化学的に変性を受けないことが必要となる。
特許請求の範囲に記載の「高温高圧の二酸化炭素により物理的および/または化学的に変性を受けない」とは、前記のように「冷凍回路において使用する材料は高温高圧の二酸化炭素に接触した場合でも、またその二酸化炭素が臨界状態にある場合でも、物理的および/または化学的に変性を受けないこと」を意味する。このような材料として、特に耐溶剤性、耐抽出性、熱的・化学的安定性、耐発泡性を有しているものがよい。
【0020】
したがって、冷凍回路に使用される材料、中でも有機材料は「高温高圧の二酸化炭素により物理的および/または化学的に変性を受けない」性質を有していることが必要で、特に耐溶剤性、耐抽出性、熱的・化学的安定性、耐発泡性を有しているものが望ましい。
たとえば圧縮機のモーターの巻線の絶縁被覆材料も上記のごとき特性を有している必要があり、そのための絶縁被覆材料としてはポリビニルフォルマール、ポリエステル、THEIC変性ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド等が使用される。中でも上層がポリアミドイミド、下層がポリエステルイミドの二重被覆線が好ましく使用される。
モーターの絶縁フィルムも同様の特性を有する材料を用いることが好ましく、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド等が用いられ、PETにより良好な結果が得られた。
またシール材料についても同様であり、シール材料はポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエラストマー、フッ素ゴム等が使用され、パーフルオロエラストマーにより良好な結果が得られた。
【0021】
前記冷凍機油には、消泡剤、酸化防止剤、水分および/または酸捕捉剤、極圧添加剤若しくは耐摩耗性向上剤、金属不活性化剤等の、添加剤を添加することにより、冷凍機油の変性(分解、酸化劣化、スラッジ生成等)を防止することが好ましい。この他に耐熱性向上剤、腐食防止剤、防錆剤等を適宜添加してもよい。
冷凍機油に対する添加剤は、冷凍機油自身に特定の効果を発現させるのみならず、結果的にコンプレッサの摺動部、絶縁材や配管金属に対しても効果を発揮させるものである。これらの添加剤は1種または2種以上を配合することも可である。また、前記添加剤は、高温高圧の二酸化炭素雰囲気下において前記冷凍機油の機能低下を抑制するものであることが好ましい。また、前記のように冷凍回路の中を冷媒と少量の冷凍機油の混合物が循環するため、冷凍機油が冷凍回路で使用する材料に有害な作用を及ぼさないようにすることも必要である。
さらに、本件発明においては冷媒として二酸化炭素を使用するため、前記の添加剤は二酸化炭素を冷媒として用いる冷凍回路に用いても安定な性質を有していることが必要である。
【0022】
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン油、トリフルオロプロピルメチルシリコーン油、フェニルメチルシリコーン油等が好ましく使用される。
消泡剤の添加量は冷凍機油に対し1〜50ppmが好ましい。1ppmより少ないと消泡剤としての効果が十分でなく、また50ppmを超えて添加しても消泡剤としての効果が増加しないので、前記範囲が好ましい。
消泡剤を添加することにより、冷媒封入前に冷媒圧縮機と回路内の空気を脱気する際、冷凍機油から発生する泡量を低減し、脱気装置への泡混入を防止することができる他、冷凍機油に溶存している気体を脱気する際の泡立ちを防止するなどが可能である。
【0023】
また、前記酸化防止剤としてはジターシャリーブチルパラクレゾール(DBPC)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4′−メレチンビス(2,6−ジ−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、p,p′−ジオクチルジフェニルアミン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、フェニルーα−ナフチルアミン、ジ(アルキルフェニル)アミン(アルキル基は炭素数4〜20)、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン(アルキル基は炭素数4〜20)、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、N、N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミン、アクリジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、ジビルジルアミン、ジフェニルアミン、フェノールアミン、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノパラクレゾール等のアミン系酸化防止剤、アルキルジサルファイド等の硫黄系などが使用できる。
中でも特にDBPCが好ましく使用される。
酸化防止剤の添加量は冷凍機油に対し0.1〜0.5重量%が好ましい。0.1重量%より少ないと酸化防止剤としての効果が十分でなく、また0.5重量%を超えて添加しても酸化防止剤としての効果がそれ以上得られないので前記範囲が好ましい。
冷凍回路における残留酸素は冷凍回路内容積に対し0.1vol%以下であることが好ましい。
【0024】
冷凍機油には水分および/または酸捕捉剤を添加することが好ましい。水および酸性物質は圧縮機の中で使用される金属を腐食させる原因となる他、冷凍機油としてエステル系油を用いた場合加水分解を起こし、脂肪酸成分を遊離させ、これがまた腐食や金属石鹸の生成による閉塞現象などを起こすこと、さらに、エステル系絶縁材の加水分解を引き起こすことなどが危惧される。 水分および/または酸捕捉剤としては、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物等が用いられる。また、エポキシ化合物はラジカルを補足することもできる。前記エポキシ系化合物としては、グリシジルエステル、グリシジルエーテル等が例示される。たとえばフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステル等を使用することができる。例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテルを用いることができ、アルキルフェニルグリシジルエーテルとしては、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものであり、エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、例えば、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルを挙げることができる。特に、エポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチルおよびフェニル等が好ましい。
【0025】
水分および/または酸捕捉剤の添加量は冷凍機油に対し0.1〜0.5重量%が好ましい。0.1重量%より少ないと捕捉剤としての効果が十分でなく、また0.5重量%を超えると重合物を生成しやすくなるので前記範囲が好ましい。
残留水分は、冷媒と冷凍機油の合計に対し500ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることがさらに好ましい。上記のように水分捕捉剤を用いることにより下記式で示す冷凍回路内の平衡水分を運転初期状態において200ppm以下とすることができる。前記水分量が500ppmを超えるとキャピラリ−チュ−ブ内での氷結となりやすく、また、前記冷凍機油としてポリエステル系油を用いた場合に生ずる加水分解、またそれに伴う金属セッケンスラッジの生成等を抑制することができる。
式1
[(冷凍回路内の残留水分量)/(充填オイル量+充填冷媒量)]×106PPM
【0026】
前記極圧添加剤としては、例えば、熱的に安定なトリフェニルホスフェート(TPP)やトリクレジルホスフェート(TCP)等の第三級ホスフェート系のリン化合物が用いられる。中でも特にTCPが好ましく使用される。
極圧添加剤の添加量は冷凍機油に対し0.1〜2重量%が好ましい。0.1重量%より少ないと極圧剤としての効果が十分でない。く、また2重量%を超えて添加しても効果が増加しないので前記範囲が好ましい。
【0027】
前記金属(銅等)不活性化剤としては、例えばベンゾトリアゾール(BTA)、トリアゾール、トリアゾール誘導体、チアジアゾール、チアジアゾール誘導体、ジチオカルパメート、アリザニン、キニザリン等が用いられるが、中でもBTAが好ましく使用される。
金属不活性化剤の添加量は冷凍機油に対し1〜100ppmが好ましい。1ppmより少ないと金属不活性化剤としての効果が十分でなく、また100ppmを超えて添加してもそれ以上の効果が得られないので前記範囲が好ましい。
【0028】
また、本発明の冷凍装置は、図1に示すように冷凍回路の膨張機構と蒸発器の間に乾燥装置を配置することが好ましく(前記のように冷房と暖房では冷媒の流路を切り換える)、乾燥装置は冷凍回路に直列に配置せず、回路から分岐させて配置することが好ましい。その理由は、乾燥装置を回路に直列に挿入すると高圧冷媒液体がその中を流通する際乾燥剤が破砕されやすいからである。また乾燥装置の中に入れられる乾燥剤が、乾燥装置の回路における接続点(分岐点)よりも垂直方向において上方に位置するように乾燥剤の配置を配慮することが好ましい。これは、冷媒により乾燥剤が浸漬されないようにするためである。乾燥剤としては合成ゼオライト等が好ましく使用され、中でもナトリウムA型合成ゼオライト、カリウムA型合成ゼオライトが好ましい。また、ゼオライトの粒径は、冷媒回路中の水分を有効に捕捉するために、有効径が3〜6Åの範囲内にあることが好ましい。
冷凍装置で使用する乾燥装置としては、容器内に乾燥剤を収容しこれを冷媒回路に配管で接続すればよい。
【0029】
【実施例】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
図1に示す冷凍回路および図2に示す圧縮機を用い、以下のような材料を用いて冷凍装置を組み立てた。
冷媒:二酸化炭素(純度99.95%)
冷凍機油:ポリプロピレングリコール
粘度(40℃)100cSt、 体積固有抵抗5×108Ω・cm 、
二酸化炭素が飽和溶解したときの流動点−70℃
冷凍機油添加剤(添加量は冷凍機油に対する重量%)
消泡剤:シリコーン系消泡剤(10ppm)
酸化防止剤:DBPC(0.3%)
水分および/または酸捕捉剤:エポキシ化合物(0.25%)
極圧添加剤:TCP(1%)
金属不活性化剤:BTA(5ppm)
【0030】
モーター巻線の絶縁被覆材料:上層がポリアミドイミド、下層がポリエステルイミド
絶縁フィルム:PET
O−リング:フッ素ゴム
乾燥剤:合成ゼオライト(有効径3Å)
この冷凍機を給湯器として使用した場合、放熱部で100℃の温度が得られ、熱交換により80℃の湯を得ることができた。また冷却に用いる場合は、吸熱部では−5℃の温度が得られ、冷却冷凍にも十分対応することができた。また、2000時間運転の後、圧縮機のモーター巻線の絶縁被覆材料、絶縁フィルム、O−リングの表面状態を点検したところ、表面の変性(異常)は観察されなかった。
【0031】
【発明の効果】
上記のように、本発明の冷凍装置は冷媒として二酸化炭素を使用したため、地球の温暖化やオゾン破壊を起こすなどの環境に対する負荷が小さく、熱交換器において高温を取り出すことができ、また二酸化炭素に対し特定の冷凍機油を使用するので、冷凍機油の圧縮機への戻りがよく、圧縮機のかじりや焼きつきが発生することがない。また本発明の冷凍装置は長期間にわたり安定に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における冷凍回路の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の冷凍回路に用いる圧縮機の一例を示す図である。
【図3】図2の圧縮機を用いる冷凍回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【符号の説明】
1 2 シリンダの回転式圧縮機
2 密閉容器
3 電動要素
5 回転圧縮要素
14 上シリンダ
15 下シリンダ
18 上ローラ
19 下ローラ
20 上ベーン
21 下ベーン
22 メインフレーム
23 ベアリングプレート
37 放熱器
38 蒸発器
39 膨張弁
41 バイパス膨張弁
42 過冷却器
100 圧縮機
120 室外熱交換器
140 膨張機構
160 室外熱交換器
140 乾燥装置
Claims (8)
- 圧縮機、放熱器、膨張機構および蒸発器を含む冷凍回路に冷媒として二酸化炭素を循環させる冷凍装置であって、前記圧縮機に用いる冷凍機油として粘度が40℃において5〜300cStで、体積固有抵抗が108Ω・cm以上で、また二酸化炭素が飽和溶解したときの流動点が−30℃以下であるポリアルキレングリコール冷凍機油を使用し、かつ、冷凍回路において使用する有機材料が高温高圧の二酸化炭素により物理的および/または化学的に変性を受けない材料であることを特徴とする冷凍装置。
- 前記材料が耐溶剤性、耐抽出性、熱的・化学的安定性および耐発泡性を有することを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
- 前記材料がモーターの巻線の被覆材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍装置。
- 前記モーターの巻線の絶縁被覆材料がポリビニルフォルマール、ポリエステル、THEIC変性ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミドからなる群から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の冷凍装置。
- 前記材料がモーターの絶縁フィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍装置。
- 前記モーターの絶縁フィルムがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドの群から選ばれることを特徴とする請求項5に記載の冷凍装置。
- 前記材料がシール材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍装置。
- 前記シール材料がポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエラストマー、フッ素ゴムからなる群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の冷凍装置。
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