JPH07204881A - 耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靱性に優れた溶接構造物の製造方法 - Google Patents

耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靱性に優れた溶接構造物の製造方法

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JPH07204881A
JPH07204881A JP7003600A JP360095A JPH07204881A JP H07204881 A JPH07204881 A JP H07204881A JP 7003600 A JP7003600 A JP 7003600A JP 360095 A JP360095 A JP 360095A JP H07204881 A JPH07204881 A JP H07204881A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】従来より板厚が厚くても、低温靱性に優れしか
も耐硫化水素応力腐食割れに対する感受性が低い、大容
量のLPG貯蔵圧力容器等の溶接構造物を提供する。 【構成】重量比で、Cが0.02〜0.15%,Si が0.05〜0.
6 %,Mn が0.5 〜2.0 %,Ni が0.3 %以下,不純物
元素のP及びSがそれぞれ0.035 %以下,0.005 %以
下、更に0.05%以下のCr と0.05%以下のVと0.5 %以
下のCu を含有し、残部がFe と不可避不純物からなる
組成の鋼を圧延し、Ac3変態点+30℃〜Ac3変態点+20
0 ℃の温度範囲で焼入れし、次いでAc1変態点−40℃〜
c1変態点−200 ℃の温度範囲で焼戻しを施した鋼材
を、重量比で、Cが0.02〜0.13%,Si が0.05〜0.6
%,Mn が0.5 〜2.0 %,Pが0.035 %以下,Sが0.01
%以下,Ti が0.001 〜0.05%,Bが0.001 〜0.08%及
びNi が0.1 %以下で、残部がFe と不可避不純物から
なる溶着金属成分の被覆アーク溶接棒で溶接した後、焼
きなましを行って、溶接熱影響部を含む鋼材の硬度がブ
リネル硬さHB で200 以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、石油工業等で使用する
圧力容器、パイプ、配管、架台等の溶接構造物に係わ
り、詳しくは耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靱性に
優れた溶接構造物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】液化石油ガス(LPG)等のプラントお
よび貯蔵設備、更には寒冷地向けの溶接構造物において
は、低温用構造材料を溶接して形成されている。最近で
は、LPG等の使用量の増大に伴い、これを貯蔵する容
器等の大型化が図られ、これに適合できる溶接構造物が
要望されている。
【0003】LPG貯蔵圧力容器を大型化するには、使
用材料の板厚を厚くする必要があるが、従来材料では断
面内の均一性,焼入れのむら等の問題があり、板厚は30
〜50mm程度が限度であった。従って、これ以上の板厚の
容器を必要とする場合には、容器を複数設けるしかなか
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、LPG貯蔵
圧力容器では、従来からLPG中に不純物として含有し
ている硫化水素による応力腐食割れ(Sulfide Stress C
orrosion Crack, 以下SSCCとする)が発生すること
が知られている。このSSCCに対する感受性を低下さ
せるには、材料の溶接後の硬度を低く抑えるのが効果的
であり、材料の抗張力(引張強度) をある程度低くする
ことも有効であることが知られている。また、低温用構
造材料で重要な低温靱性、特に−40℃〜−50℃程度
でも十分な低温靱性特性を得るには、通常Ni を添加す
ることが有効であることも知られている。
【0005】しかし、従来材料において、板厚を厚くし
てしかも低温靱性を確保しようとするとNi 添加量の増
大によりSSCCの抑制効果が低減するという問題を有
している。さらに、低温靱性を有した従来材料では、S
SCCに対する感受性を低下させるために溶接後の硬度
を低く抑える場合、溶接により材料硬度が大幅に増大す
るという溶接硬化性のため、材料自身の硬度をあらかじ
め低くせねばならない。硬度を下げると抗張力が必要以
上に低下し従来以上の大型容器を作る上で必要な強度が
得られないという問題を有している。
【0006】また、LPG貯蔵圧力容器等の溶接構造物
は、溶接後の残留応力除去と硬度低下を目的に、焼きな
ましを行うことがあるが、これにより、材料の強度低下
を招き、そのため、従来では前記焼きなましは通常1回
しか行えなかった。このため、運転中のメンテナンス時
の溶接補修等が制約される。本発明は上記の事情に鑑み
なされたもので、特定の極厚肉低溶接硬化性高張力鋼を
特定の溶接棒で溶接して特定の熱処理を行うことによ
り、従来より板厚が厚くても、低温靱性に優れしかもS
SCCに対する感受性が低い、大容量のLPG貯蔵圧力
容器等の溶接構造物の製造方法を提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】このため本発明
の耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靱性に優れた溶接
構造物の製造方法としては、重量比で、Cが0.02〜0.15
%,Si が0.05〜0.6 %,Mn が0.5 〜2.0 %,Ni が
0.3 %以下,不純物元素のPおよびSがそれぞれ0.035
%以下,0.005 %以下であり、更に0.05%以下のCr と
0.05%以下のVと0.5 %以下のCu を含有し、残部がF
e と不可避不純物からなる組成の鋼を圧延し、その後A
c3変態点+30℃〜Ac3変態点+200 ℃の温度範囲で焼入
れし、次いでAc1変態点−40℃〜Ac1変態点−200 ℃の
温度範囲で焼戻しを施した鋼材を、重量比で、Cが0.02
〜0.13%,Si が0.05〜0.6 %,Mn が0.5 〜2.0 %,
Pが0.035 %以下,Sが0.01%以下,Ti が0.001 〜0.
05%,Bが0.001 〜0.08%およびNi が0.1 %以下であ
り、残部がFe と不可避不純物からなる溶着金属成分の
被覆アーク溶接棒を用いて溶接し、溶接後、焼きなまし
を行って、溶接熱影響部を含む鋼材の硬度がブリネル硬
さHB で200以下とすることを特徴とする。
【0008】かかる製造方法による溶接構造物によれ
ば、板厚が厚くとも低温靱性に優れSSCCに対する感
受性の低い溶接構造物の製造が可能となる。これによ
り、例えば従来より容量の大きいLPG貯蔵圧力容器等
の製造が可能となり、しかも、組立て溶接加工後に、焼
戻し温度−20℃〜焼戻し温度−100 ℃の範囲の温度で3
回の焼きなましを施しても十分な強度を維持できるの
で、その溶接構造物のメンテナンスでの溶接補修や再焼
きなましを可能ならしめ、溶接構造物の寿命を延すこと
ができる。
【0009】この耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靱
性に優れた溶接構造物に使用する極厚肉低溶接硬化性高
張力鋼の各元素の限定理由を以下に述べる。C:Cの含
有量と材料強度は比例関係にあり、強度を確保するため
に0.02%以上必要とし、高張力鋼ほど通常の鋼に比べC
含有量を増加させなければならない。また、同時に低温
靱性と低溶接硬化性にはC含有量は低ければ低いほど良
く、特に溶接後のHB ≦200 の硬度を得るにはC含有量
は0.15%以下好ましくは0.10%以下とする必要がある。 Si:Si は鋼中の脱酸に必要であり、0.05%以上必要で
あるが、低温靱性に悪影響を及ぼさぬ範囲として0.6 %
を上限とする。 Mn:Mn は鋼の強度増加にある程度まで必要である。目
的の強度を得るためには0.5 %以上必要である。また、
含有量が多いと硬度が増し、低温靱性が劣化するので、
好ましくは1.4 〜1.8 %とし2.0 %を上限とする。 Ni:Ni は低温靱性を改良することは広く知られている
が、一方で、SSCCには、多量な場合は害となる。N
i 含有量が0.25%では、SSCCは生じないが、Ni 含
有量が0.6 %では、多くのSSCCの発生が認められる
ことから、0.30%を上限とする。 P,S:PとSは高張力鋼においては、不可避不純物で
あるが、含有量がそれぞれ0.035 %, 0.005 %以下であ
れば影響が少ないのでこれを上限とする。 Cr:Cr は粒子の微細化による靱性の増強と、焼入性の
改善に微量の添加で効果があるが、それと共に硬度も増
大させるので、Cr は0.05%を上限とする。 V :Vは微量の添加により強度の増強に効果があるが、
硬度増加も伴うので、Vは0.05%を上限とする。 Cu:Cu は鋼中への水素の侵入を防止する目的と共に、
溶接後の残留応力除去焼きなまし後のCu の析出硬化性
を有効に利用して強度補正を行うために添加するが、溶
接性を損なわないため0.5 %を上限とする。
【0010】尚、上記組成に加えて、下記の式に示す炭
素当量(Ceq)を0.45%以下とする。これにより、この
発明の目的に沿ったより良い鋼を得ることができる。 Ceq=C +(Mn/6)+ (Cr+Mo+V)/5 + (Cu+Ni)/15
(重量%) (この場合、本発明ではMo はトレース(TR)であっ
て不検出成分である。) このような化学成分を有する鋼材を通常の圧延方法にて
圧延を行い、Ac3変態点+30℃乃至Ac3変態点+200 ℃
の温度範囲で焼入れを行い、Ac1変態点−40℃乃至Ac1
変態点−200 ℃の温度範囲で焼戻しを行うことにより、
鋼板組織を微細化することで、引張強度と靱性の増強に
寄与することができる。
【0011】ここで、焼入れ温度としては、炭化物等の
固溶化のために完全にオーステナイトにする必要がある
ので、Ac3変態点+30℃を下限とし、一方、靱性の低下
を防ぐためオーステナイト粒の粗大化を阻止する目的か
らAc3変態点+200 ℃を上限とする。また、焼戻し温度
は、焼入れ処理により得られた高い強度の低下を防ぐた
め、再加熱温度をAc1変態点より低い温度にする必要か
らAc1変態点−40℃を上限とし、靱性の回復には焼入れ
によるマルテンサイトを微細なソルバイトに変化させる
必要があるためAc1変態点−200 ℃を下限とする。
【0012】次に、上記の極厚肉低溶接硬化性高張力鋼
を用いて溶接加工を行う際に使用する被覆アーク溶接棒
の溶着金属成分の限定理由についても以下に述べる。 C:Cの含有量と材料強度は比例関係にあり、強度を確
保するために0.02%以上必要とし、高張力鋼用ほど通常
の鋼に比べC含有量を増加させなければならない。ま
た、同時に低温靱性と低溶接硬化性にはC含有量は低け
れば低いほど良く、特に溶接後のHB ≦200 の硬度を得
るにはC含有量は0.13%以下、好ましくは0.10以下とす
る必要がある。 Si:Si は脱酸に必要であり、0.05%以上必要である
が、低温靱性に悪影響を及ぼさぬ範囲として0.6 %を上
限とする。 Mn:Mn は強度増加にある程度まで必要である。目的の
強度を得るためには0.5 %以上必要である。また、含有
量が多いと硬度が増し、低温靱性が劣化するので、好ま
しくは1.4 〜1.8 %とし2.0 %を上限とする。 P,S:PとSは、不可避不純物であるが、含有量がそ
れぞれ0.035 %, 0.01%以下であれば影響が少ないので
これを上限とする。 Ti:Ti は低温靱性を得るために結晶を微細化するため
に0.001 %以上は必要であるが、過剰に加えても比例し
て効果が期待できないので0.05%を上限とする。 B:Bは微量の添加により焼なましによる強度低下を生
じないよう熱処理感受性を高くするものとして0.001 %
以上必要であるが、一方、過剰の添加は靱性の低下をも
たらすので、0.08%を上限とする。 Ni:Ni は低温靱性を改良することは広く知られている
が、一方で、SSCCには、多量な場合は害となること
から、0.1 %を上限とする。
【0013】通常、この被覆アーク溶接棒を用いて上記
極厚肉低溶接硬化性高張力鋼を溶接加工し溶接構造物を
製造するが、溶接熱影響による残留応力と硬度上昇が発
生する。このために、前記焼戻し温度−20℃乃至前記焼
戻し温度−100 ℃の温度範囲で、最小保持時間を、板厚
が50mm以下の場合には板厚25mmにつき1時間の割合で算
出した時間、板厚が50mmを越える場合には板厚50mmを越
える部分の板厚に対して25mmにつき15分の割合で算出
した時間と2時間とを加えた時間とし、焼きなましを行
う。そして、本発明のものでは、3回繰返してもHB
200 の低溶接硬化性で、50kg/mm2 級の高張力鋼板を得
ることができる。
【0014】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。表
1に示す化学成分の鋼板を通常の圧延方法により圧延し
て圧延鋼材を得て、ローラクエンチ設備により840 ℃で
焼入れを行い、640 ℃で焼戻しを行い、厚さ71mmの鋼板
を得た。この鋼板を低温靱性確保のためNi 添加量を減
じてTi,Bを添加した表2に示す溶着金属成分の溶接棒
にて、入熱量40,000ジュール以下にてアーク溶接し、溶
接後、610 ℃で保持時間2時間15分にて焼きなましを3
回繰返した。
【0015】このようにして得られた鋼板の機械的性質
を表3に示す。尚、50kg/mm2 級高張力鋼は、米国AS
TM規格においては、A 516 Gr70(表中、比較例1とす
る)がこれに類似し、JIS規格においては、JIS G 31
06 SM50B(表中、比較例2とする)が類似するので、こ
れら規格値と比較した。また、本実施例により得られた
鋼板の母材,熱影響部,溶接金属部における硬度の測定
結果を図面に示す。溶接施工法試験は、ASME Boiler An
d Pressure Vessel Code Section IX Welding and Braz
ing Qualifications PART QWによる。
【0016】尚、参考として、試験鋼材の硬度測定条件
より悪条件である現場における熱処理後の溶接部の硬度
測定結果を表4に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】表1に示すように、上記鋼材はCの含有量
が少なく、またCeqも低いので溶接性が良好であり、溶
接構造物用として有効である。また、図面に示す如く、
溶接後の溶接熱影響部を含む溶接構造物の硬度が、最高
値でブリネル硬さHB で200(ビッカース硬さHV で220)
以下と低く、しかも、表4に示すように、より悪条件下
での測定結果も極めて良好であり、更に、表1,3から
明らかなように、引張強度の上限を60kg/mm2 以下,N
i 含有量も0.25%に抑えたことからも、LPG等石油製
品に不純物として含有される硫化水素に起因して発生す
るSSCCに対する感受性が低く、SSCCを抑制する
のに有効である。
【0022】また、−46℃におけるシャルピー衝撃値
が、27.9kg・m(3個の平均値),25.8kg・m(最低値)で
あり、超厚肉にも拘らず、低温靱性に優れており、例え
ば液化プロパンの球形タンク等の溶接構造物に十分使用
することができる。更に、通常は1回の焼きなまししか
行えないが、これを3回繰返した結果、表3のような機
械的性質が得られたことは、運転中のメンテナンス時で
も、溶接補修,再焼きなましを可能として容器の寿命を
延ばすことができる。
【0023】そして、肉厚が厚く従来では不可能であっ
た大容量の貯蔵圧力容器等の溶接構造物を製造すること
が可能となる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、極
厚肉であっても、−40℃〜−50℃における低温靱性
に優れ、しかも、Ni 含有量を0.3 %以下に抑える組成
とすることで、この優れた低温靱性を維持しながら、優
れた耐硫化水素応力腐食割れ特性を有し、且つ、溶接熱
影響部を含む鋼材の硬度がブリネル硬さHB で200以
下に抑制しても強度を引張り強さ50kg/mm2以上に維持
でき、更に焼きなましを施しても十分な強度を維持でき
るので、その溶接構造物のメンテナンスでの溶接補修や
再焼きなましを可能とする溶接構造物を製造することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により製造した溶接構造物の一実施例の
硬度測定結果を示す図
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C22C 38/00 301 F 38/46 (72)発明者 立川 実 東京都大田区蒲田本町1丁目9番3号 株 式会社新潟鉄工所内 (72)発明者 関 隆治 東京都大田区蒲田本町1丁目9番3号 株 式会社新潟鉄工所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で、Cが0.02〜0.15%,Si が0.
    05〜0.6 %,Mn が0.5 〜2.0 %,Ni が0.3 %以下,
    不純物元素のPおよびSがそれぞれ0.035 %以下,0.00
    5 %以下であり、更に0.05%以下のCr と0.05%以下の
    Vと0.5 %以下のCu を含有し、残部がFe と不可避不
    純物からなる組成の鋼を圧延し、その後Ac3変態点+30
    ℃〜Ac3変態点+200 ℃の温度範囲で焼入れし、次いで
    c1変態点−40℃〜Ac1変態点−200 ℃の温度範囲で焼
    戻しを施した鋼材を、 重量比で、Cが0.02〜0.13%,Si が0.05〜0.6 %,M
    n が0.5 〜2.0 %,Pが0.035 %以下,Sが0.01%以
    下,Ti が0.001 〜0.05%,Bが0.001 〜0.08%および
    Ni が0.1 %以下であり、残部がFe と不可避不純物か
    らなる溶着金属成分の被覆アーク溶接棒を用いて溶接
    し、 溶接後、焼きなましを行って、溶接熱影響部を含む鋼材
    の硬度がブリネル硬さHB で200以下とすることを特
    徴とする耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靱性に優れ
    た溶接構造物の製造方法。
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