JPH06930B2 - 耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靭性に優れた極厚肉低溶接硬化性高張力鋼の製造方法 - Google Patents

耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靭性に優れた極厚肉低溶接硬化性高張力鋼の製造方法

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JPH06930B2
JPH06930B2 JP1310777A JP31077789A JPH06930B2 JP H06930 B2 JPH06930 B2 JP H06930B2 JP 1310777 A JP1310777 A JP 1310777A JP 31077789 A JP31077789 A JP 31077789A JP H06930 B2 JPH06930 B2 JP H06930B2
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hydrogen sulfide
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宏平 池上
泰弘 原
一郎 福井
実 立川
隆治 関
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Niigata Engineering Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、石油工業等で使用する圧力容器用材料に用い
られる耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靭性に優れた
低溶接硬化性と極厚肉高張力鋼の製造方法に関する。
<従来の技術> 近年、液化石油ガス(LPG)等のプラント及び貯槽設
備、更には寒冷地向け溶接構造部材の需要が増加しつつ
あり、それに使用される低温用構造材料が注目されるよ
うになってきた。しかも、最近では、LPG等の使用量
の増大に伴い、これを貯蔵する容器の大型化が図られ、
これに適合できる材料が要望されている。
<発明が解決しようとする課題> LPG貯蔵圧力容器を大型化するには、使用材料の板厚
を厚くする必要があるが、従来材料では断面内の均一
性,焼入れのむら等の問題があり、板圧は30〜50mm程度
が限度であつた。従って、これ以上の板厚の容器を必要
とする場合には、容器を複数設けるしかなかった。
ところで、LPG貯蔵圧力容器では、従来からLPG中
に不純物として含有している硫化水素による応力腐食割
れ(sulfide Steress Corrosion Crafc,以下SSCCと
する)が発生することが知られている。このSSCCに
対する感受性を低下させるには、材料の溶接後の硬度を
≦200に抑えるのが効果的であり、材料の抗張力
(引張強度)をある程度低くすることも有効であること
が知られている。また、低温用構造材料で重要な低温靭
性、特に−46℃で十分な低温引性特性を得るには、通常
Niを添加することか有効であることも知られている。
しかし、従来材料において、板厚を厚くしてしかも低温
靭性を確保しようとするとNi添加量の増大によりSS
CCの抑制効果が低減するという問題を有している。
さらに、低温靭性を有した従来材料では、SSCCに対
する感受性を低下させるために溶接後の硬度をH≦20
0に抑える場合、溶接により材料硬度が大幅に増大する
という溶接硬化性のた材料の硬度を低くせねばならな
い。硬度を下げると抗張力が必要以上に低下し従来以上
の大型容器を作る上で必要な強度が得られないという問
題を有している。
また、LPG貯蔵圧力容器等の溶接構造物は、溶接後の
残留応力除去と硬度低下を目的に、焼きなましを行うこ
とがあるが、これにより、材料の強度低下を招き、その
ため、従来では前記焼きなましは通常1回しか行えなか
つた。このため、運転中のメンテナンス時の溶接補修等
が制約される。
本発明の上記の事情に鑑みなされたもので、従来より板
厚が厚く、低温靭性に優れしかもSSCCに対する感受
性が低く、大容量のLPG貯蔵圧力容器の製造に好適な
耐SSCC特性及び低温靭に優れ、溶接により硬度が増
大することが少ない極厚肉低溶接硬化性高張力鋼の製造
方法を提供することを目的とする。
<課題を解決するための手段及び作用> このため本発明の耐硫化水素力腐食割れ特性と低温靭性
に優れた極厚肉低溶接硬化性高張力鋼の製造方法として
は、重量比で、Cが0.02〜0.15%,Siが0.05〜0.6
%,Mnが0.5〜2.0%,Niが0.3%以下,不純物元素
のP及びSがそれぞれ0.035%以下,0.005%以下であ
り、更に、0.05%以下のCrと0.05%以下のVと0.5%
以下のCuを含有し、残部がFeと不可避不純物からな
る組成の鋼を圧延し、その後AC3変態点+30℃〜AC3
態点+200℃の温度範囲で焼入れし、次いでAC1変態点
−40℃〜AC1変態点−200℃の温度範囲で焼戻しを施し
たことを特徴とする。
かかる製造方法による鋼材によれば、板厚が厚く低温靭
性に優れSSCCに対する感受性の低い従来より容量の
大きいLPG貯蔵圧力容器等の製造が可能となる。ま
た、組立て溶接加工後に、焼戻し温度−20℃〜焼戻し温
度−100℃の範囲の温度で3回の焼きなましを施しても
十分な強度が得られる。
この耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靭性に優れた極
厚肉低溶接硬化性高張力鋼の各元素の限定理由を以下に
述べる。
C: Cの含有量と材料強度は比例関係にあり、強度を
確保するために0.02%以上必要とし、高張力鋼ほどの通
常の鋼に比C含有量と増加させなければならない。ま
た、同時に低温靭性と低溶接硬化性にはC含有量は低け
れば低いほど良く、特に溶接後のH≦200の硬度を得
るにはC含有量ぱ0.15%以下好ましくは0.10%以下とす
る必要がある。
Si: Siは鋼中の脱酸に必要であり、0.05%以上必
要であるが、低温靭性に悪影響を及ぼさぬ範囲として0.
6%を上限とする。
Mn: Mnは鋼の強度増加にある程度まで必要であ
る。目的の強度を得るためには0.5%以上必要である。
また、含有量が多いと硬度が増し、低温靭性が劣化する
ので、好ましくは1.4〜1.8%とし2.0%を上限とする。
Ni: Niは低温靭性を改良することは広く知られて
いるが、一方で、SSCCには、多量な場合は害とす
る。Ni含有量が0.25%では、SSCCは生じないが、
Ni含有量が0.6%では多くのSSCCの発生が認めら
れることから、0.30%を上限とする。
P,S: PとSは高張力鋼においては、不可避不純物
であるが、含有量がそれぞれ0.035%,0.005%以下であ
れば影響が少ないのでこれを上限とする。
Cr: Crは粒子の微細化による靭性の増強と、焼入
性の改善に微量の添加で効果があるが、それと共に硬度
も増大させるので、Crは0.05%を上限とする。
V: Vは微量の添加により強度の増強に効果がある
が、硬度増加も伴うので、Vは0.05%を上限とする。
Cu: Cuは鋼中への水素の侵入を防止する目的と共
に、溶接後の残留応力除去焼きなまし後のCuの析出硬
化性を有効に利用して強度補正を行うために添加する
が、溶接性を損なわないため0.5%を上限とする。
尚、上記組成に加えて、下記の式に示す炭素当量(Ce
q)を0.45%以下とする。これにより、この発明の目的
に沿つたより良い鋼を得ることができる。
(この場合、本発明でMoはトレース(TR)であつて
不検出成分である。) このような化学成分を有する鋼材を通常の圧延方法にて
圧延を行い、AC3変態点+30℃乃至AC3変態点+200℃
の温度範囲で焼入れを行い、AC1変態点−40℃乃至AC1
変態点−200℃の温度範囲で焼戻しを行うことにより、
鋼板組成を微細化することがで、引張強度と靭性の増強
に寄与することができる。
ここで、焼入れ温度としては、炭化物等の固溶化のため
に完全にオーステナイトにする必要があるので、AC3
態点+30℃を下限とし、一方、靭性の低下を防ぐためオ
ーステナイト粒の粗大化を阻止する目的からAC3変態点
+200℃を上限とする。
また、焼戻し温度は、焼入れ処理により得られた高い強
度の低下を防ぐため、再加熱温度をAC1変態点より低い
温度にする必要からAC1変態点−40℃を上限とし、靭性
の回復には焼入れによるマルテンサイトを微細なソルバ
イトに変化させる必要があるためAC1変態点−200℃を
下限とする。
通常、この状態で構造物として溶接加工を行うが、溶接
熱影響による残留応力と硬度上昇が発生する。このため
に、前記焼戻し温度−20℃乃至前記焼戻し温度−100℃
の温度範囲で、最小保持時間を、板厚が50mm以下の場合
には板厚25mmにつき1時間の割合で算出した時間、板厚
が50mmを越える場合には板厚50mmを越える部分の板厚に
対して25mmにつき15分の割合で算出した時間と2時間
とを加えた時間とし、焼きなましを行う。そして、本発
明のものでは、3回繰返してもH≦200の低溶接硬化
性で、50kg/mm2級の高張力鋼板を得ることができる。
なお、上記の構造物として溶接加工を行う際の溶接棒と
しては下記に示す溶着金属成分の被覆アーク溶接棒を使
用するのが好ましい。
C : 0.02〜0.13% Si : 0.05〜0.6% Mn : 0.5〜2.0% P : 0.035%以下 S : 0.01%以下 Ti : 0.001〜0.05% B : 0.001〜0.08% Ni : 0.1%以下 残部 : 不可避不純物及びFe 尚、成分比は重量%である。
<実施例> 以下に本発明の実施例について説明する。
表1に示す化学成分の鋼板を通常の圧延方法により圧延
して圧延鋼材を得て、ローラクエンチ設備により840℃
で焼入れを行い、640℃で焼戻しを行い、厚さ71mmの鋼
板を得た。
この鋼板を低温靭性確保のためNiに代えてTi,Bを添
加した表2に示す溶着金属成分の溶接棒にて、入熱量4
0,000ジュール以下にてアーク溶接し、溶接後、610℃で
保持時間2時間15分にて焼きなましを3回繰返した。
このようにして得られた鋼板の機械的性質を表3に示
す。尚、50kg/mm2、級高張力鋼は、米国ASTM規格に
おいては、A 516 Gr70(表中、比較例1とする)がこれ
に類似し、JIS規格においては、JIS G 3106 SM50B
(表中、比較例2とする)が類似するので、これら規格
値と比較した。
また、本実施例により得られた鋼板の母材、熱影響部、
溶接金属部における硬度の測定結果を図面に示す溶接施
工法試験は、ASME Boiler And Pressure Vessel Code S
uctionIX Welding and B-razing Qualifications PART
QWによる。
尚、参考として、試験鋼材の硬度測定条件より悪条件で
ある現場における熱処理後の溶接部の硬度測定結果を表
4に示す。
表1に示すように、本鋼材はCの含有量が少なく、また
Ceqも低いので溶接性が良好であることが考えられ、溶
接構造物用として有効である。
また、図面に示す如く、溶接後の溶接熱影響部を含む鋼
板の硬度が、最高値でブリネル硬さHで200(ビッカ
ーズ硬さHで220)以下と低く、しかも、表4に示す
ように、より悪条件下での測定結果も極めて良好であ
り、更に表1,3から明らかなように、引張強度の上限
を60kg/mm2以下、Ni含有量も0.25以下に抑えたことか
らも、LPG等石油製品に不純物として含有される硫化
水素に起因して発生するSSCCに対する感受性が低
く、SSCCを抑制するのに有効である。
また、−46℃におけるシヤルピー緩衝値が、27.9kg・m
(3個の平均値),25.8kg・m(最低値)であり、超厚肉
にも拘らず、低温靭性に優れており、例えば液化プロパ
ンの球形タンク等の貯蔵用容器に十分使用することがで
きる。
更に、通常は1回の焼きなまししか行えないが、これを
3回繰返した結果、表3のような機械的性質が得られた
ことは、運転中のメインテナンス時でも、溶接補修、再
焼きなましを可能として容器を寿命を延ばすことができ
る。
そして、肉圧が厚く従来では不可能であつた大容量の貯
蔵圧力容器を製造することが可能となる。
<発明の効果> 以上説明したように本発明によれば、極厚肉で低温靭性
に優れ、しかも、Ni含有量を0.3以下に抑える組成と
することで、優れた低温靭性を維持しながら、優れた耐
流水素応力腐食割れ特性を有し、且つ、溶接後の硬度を
適切に抑制し、更に、強度を規定値以上に維持できて運
転中のメインテナンス性も良好で、LPG等の貯蔵圧力
容器用材料に適した高張力鋼を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明により製造した高張力鋼の一実施例の硬度
測定結果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 立川 実 東京都大田区蒲田本町1丁目9番3号 株 式会社新潟鉄工所内 (72)発明者 関 隆治 東京都大田区蒲田本町1丁目9番3号 株 式会社新潟鉄工所内 (56)参考文献 特開 昭63−103021(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比で、Cが0.02〜0.15%、Siが0.05
    〜0.6%,Mnが0.5〜2.0%,Niが0.3%以下,不純物
    元素のP及びSがそれぞれ0.035%以下, 0.005%以下であり、更に、0.05%以下のCrと0.05%
    以下のVと0.5%以下のCuを含有し、残部がFeと不
    可避不純物からなる組成の鋼を圧延し、その後AC3変態
    点+30℃〜AC3変態点+200℃の温度範囲で焼入れし、
    次いでAC1変態点−40℃〜AC1変態点−200℃の温度範
    囲で焼戻しを施したことを特徴とする耐硫化水素応力腐
    食割れ特性と低温靭性に優れた極厚肉低溶接硬化性高張
    力鋼の製造方法。
JP1310777A 1989-12-01 1989-12-01 耐硫化水素応力腐食割れ特性と低温靭性に優れた極厚肉低溶接硬化性高張力鋼の製造方法 Expired - Lifetime JPH06930B2 (ja)

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