JPH0741909A - 油井用ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents
油井用ステンレス鋼およびその製造方法Info
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- JPH0741909A JPH0741909A JP18362493A JP18362493A JPH0741909A JP H0741909 A JPH0741909 A JP H0741909A JP 18362493 A JP18362493 A JP 18362493A JP 18362493 A JP18362493 A JP 18362493A JP H0741909 A JPH0741909 A JP H0741909A
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Abstract
足し、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:10.0〜14.0
%、Mo:0.5〜7.0 %、Ni:4.0〜8.0 %、Al:0.001〜0.1
%、さらに下記式を満たすTiまたは下記式を満たす
Zrを含み、不純物中のC、P、S、N、Vがそれぞれ一
定値以下で、組織中の残留オーステナイトが体積分率で
2〜20%、残りは主としてマルテンサイト。 4 (%C) ≦%Ti≦〔{−0.01/ (%C+0.015)}+0.
75〕・・・・・ 10 (%C) ≦%Zr≦2.0 %・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・ また上記組成の素材鋼に、焼入れ処理後、Ac1点を超え
700 ℃未満で焼戻し処理を施す上記油井用ステンレス鋼
の製造方法。 【効果】厳しい油井環境下においても良好な耐食性を備
え、かつ油井用材料として十分な強度が安定して得られ
る鋼である。
Description
(以下、本発明ではガス井を含めて、単に「油井」と総
称する)に使用されるステンレス鋼に関し、特に炭酸ガ
ス、硫化水素、塩素イオンなど腐食性不純物を含有して
いる極めて厳しい腐食環境で使用するのに適する、耐食
性と適正な強度レベルを有する油井用ステンレス鋼に関
する。
めの井戸の環境がますます苛酷なものになっており、深
さの増加に加えて炭酸ガス、硫化水素を含む油井が増
え、それにつれて腐食などによる材料の脆化が大きな問
題となっている。
管には炭素鋼や低合金鋼を使用するのが通常であるが、
使用する油井の環境が苛酷になるにつれて、合金含有量
を増加させた鋼が用いられるようになってきている。例
えば、炭酸ガスを多く含む油井用の材料では、Crを添加
すると耐食性が著しく向上することが知られており、Cr
を9%含有する9%Cr−1%Mo鋼や、Crを13%含有する
SUS420 マルテンサイト系ステンレス鋼が多く用いら
れている。ところが、このような多量のCrを含有する鋼
はステンレス鋼であるにもかかわらず、硫化水素に対す
る耐食性が芳しくなく、前述のような炭酸ガスだけでな
く硫化水素をも同時に含むような環境下では硫化物応力
割れが発生しやすいので、その使用が制限されているの
が実情である。
含む油井環境では、現状ではさらに合金含有量を高めた
2相ステンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼を用
いざるを得ないが、合金元素の添加量が多くなるので材
料コストの上昇が著しい。
S420 鋼をベースにNi、Moを添加し、さらに0.02%以下
へC含有量の低下を図って、硫化水素を含む腐食性の高
い油井環境下での耐食性を確保させようという試みが開
示されている。
よび特開平3−120337号公報には、SUS420 鋼をベー
スとして低C化する一方、Ni、Mo、Ti、Nb、Zr、Vの適
量添加、もしくは低Mn化、低S化などの手段によって、
良好な硫化物応力腐食割れ性を確保した鋼とその製造方
法が開示されている。
て、Crを10.0〜14.0%含有する強度安定性と耐硫化物応
力腐食割れ性に優れた油井用マルテンサイト系ステンレ
ス鋼を示した。
報に示される改良SUS420 鋼でも、厳しい腐食性環境
での耐食性は十分とはいえない。
37号公報に示される発明は、Ti、Nb、V、Zrを添加して焼
戻し後の強度を安定化するものであるが、さらに詳細に
検討すると、この強度のばらつきが異常に大きい場合が
あり、工業的に安定な強度レベルを有する材料を製造す
る方法としては、やや問題がある。
ト系ステンレス鋼は、当然マルテンサイト単相組織にし
なければその特徴が得られないものであり、特に耐全面
腐食性を向上させる点については全く検討されていな
い。
サイト系ステンレス鋼の耐食性は、従来の13Cr鋼(AISI
420系) と22Cr系2相ステンレス鋼との中間に位置す
る。当然、10数%Crマルテンサイト系ステンレス鋼は、
22Cr系2相ステンレス鋼よりも安価であり、その低コス
トに見合った使用条件における耐食性がメリットである
が、さらに耐食性(耐硫化物応力腐食割れ性と耐全面腐
食性)を向上させ、上級鋼である22Cr系2相ステンレス
鋼に近づければ、このメリットは一層大きいものとな
る。
れたものであり、本発明の目的は、、焼戻し処理後の強
度ばらつきが生じにくく、しかも特に耐全面腐食性にも
優れた油井用ステンレス鋼とその製造方法を提供するこ
とにある。
(1)、(3) 、(5) および (7)の油井用ステンレス鋼と、
(2) 、(4) 、(6) および (8)のそれらの製造方法にあ
る。
%以下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni:
4.0〜8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記
式を満足するTiを含有し、かつ下記式および式を満
足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物からな
り、不純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05
%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下および
0.2 %以下であり、その組織中の残留オーステナイトが
体積分率で2〜20%であり、残りは主としてマルテンサ
イトからなることを特徴とする強度安定性、耐硫化物応
力腐食割れ性および耐全面腐食性に優れた油井用ステン
レス鋼。
0.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜8.0 %お
よびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記式を満足するTi
を含有し、かつ下記式および式を満足する組成を有
し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不純物中の
C、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05%以下、0.04%
以下、0.005 %以下、0.05%以下および0.2 %以下であ
る鋼に、焼入れ処理を施し、次いでAc1点を超え700 ℃
未満の温度域で焼戻し処理を施すことを特徴とする上記
(1) の油井用ステンレス鋼の製造方法。
0.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜8.0 %お
よびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜0.05%お
よびCe: 0.001〜0.05%の一方または両方、さらに下記
式を満足するTiを含有し、かつ下記式および式を
満足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物から
なり、不純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.
05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下およ
び0.2 %以下であり、その組織中の残留オーステナイト
が体積分率で2〜20%であり、残りは主としてマルテン
サイトからなることを特徴とする強度安定性、耐硫化物
応力腐食割れ性および耐全面腐食性に優れた油井用ステ
ンレス鋼。
0.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜8.0 %お
よびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜0.05%お
よびCe: 0.001〜0.05%の一方または両方、さらに下記
式を満足するTiを含有し、かつ下記式および式を
満足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物から
なり、不純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.
05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下およ
び0.2 %以下である鋼に、焼入れ処理を施し、次いでA
c1点を超え700 ℃未満の温度域で焼戻し処理を施すこと
を特徴とする上記(3) の油井用ステンレス鋼の製造方
法。
0.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜8.0 %お
よびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記式を満足するZr
を含有し、かつ下記式および式を満足する組成を有
し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不純物中の
C、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05%以下、0.04%
以下、0.005 %以下、0.05%以下および0.2 %以下であ
り、その組織中の残留オーステナイトが体積分率で2〜
20%であり、残りは主としてマルテンサイトからなるこ
とを特徴とする強度安定性、耐硫化物応力腐食割れ性お
よび耐全面腐食性に優れた油井用ステンレス鋼。
0.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜8.0 %お
よびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記式を満足するZr
を含有し、かつ下記式および式を満足する組成を有
し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不純物中の
C、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05%以下、0.04%
以下、0.005 %以下、0.05%以下および0.2 %以下であ
る鋼に、焼入れ処理を施し、次いでAc1点を超え700 ℃
未満の温度域で焼戻し処理を施すことを特徴とする上記
(5) の油井用ステンレス鋼の製造方法。
0.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜8.0 %お
よびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜0.05%お
よびCe: 0.001〜0.05%の一方または両方、さらに下記
式を満足するZrを含有し、かつ下記式および式を
満足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物から
なり、不純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.
05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下およ
び0.2 %以下であり、その組織中の残留オーステナイト
が体積分率で2〜20%であり、残りは主としてマルテン
サイトからなることを特徴とする強度安定性、耐硫化物
応力腐食割れ性および耐全面腐食性に優れた油井用ステ
ンレス鋼。
0.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜8.0 %お
よびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜0.05%お
よびCe: 0.001〜0.05%の一方または両方、さらに下記
式を満足するZrを含有し、かつ下記式および式を
満足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物から
なり、不純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.
05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下およ
び0.2 %以下である鋼に、焼入れ処理を施し、次いでA
c1点を超え700 ℃未満の温度域で焼戻し処理を施すこと
を特徴とする上記(7) の油井用ステンレス鋼の製造方
法。
ンサイト系ステンレス鋼の耐食性をさらに改善すべく、
低C−Cr−Ni−Mo系のステンレス鋼の耐食性に及ぼす組
織の影響を調べるために、各種の実験、検討を重ねた結
果、今まで知られていない以下の〜のような知見を
得た。
量 H2S−高圧 CO2−塩水環境における腐食挙動を調査し
た結果、旧オーステナイト粒界が比較的選択的に腐食
し、加えて粒界で硫化物応力割れが発生している。
なステンレス鋼のミクロ組織および成分偏析を調査した
結果、マルテンサイト単相ではあるが、耐食性元素であ
るCrおよびMoの負偏析部が存在する。同様に、粒界には
それらの欠乏層が存在する場合がある。したがって、こ
のような耐食性元素の負偏析部や欠乏層を解消すれば、
耐食性が著しく向上することが期待される。
ことによって各元素を拡散させて偏析を減らすことが考
えられ、Ac1点を超え、望ましくは600 ℃以上での焼戻
し処理により、その効果が得られる。
れ性は、残留オーステナイトが一定体積分率で存在する
組織の方が、単相マルテンサイト組織の場合よりも優れ
ている。これに関する従来の知見は、低合金鋼または13
Cr鋼(AISI 420系) では、残留オーステナイトは選択的
腐食によって孔食となり、それが応力集中源として割れ
の起点となったり、また、水素のトラップ源として水素
脆化や硫化物応力腐食割れを加速する、すなわち、残留
オーステナイトは望ましくない因子である、というもの
であった。
ば、強度の安定性は損なわれないのみならず、油井用と
して必要な強度を確保することができる。
ましい効果は、下記(a) 〜(c) の重畳効果によってもた
らされると推定される。
高温で焼戻し処理することによって、成分の均一化が図
れること。
から優先的に形成され、これが粒界近傍の耐食性元素の
欠乏層を解消すること。
ほとんどなく、粒界に析出した残留オーステナイトが水
素脆化の一種である硫化物応力割れの発生と伝播を抑制
すること。
記のように限定した理由を説明する。以下、%は重量%
を意味する。
を超えると靱性が低下するので1.0 %を上限とした。
添加する。しかし、含有量が多いと残留オーステナイト
が過度に生成しやすくなるので1.0 %以下とした。特に
耐孔食特性を向上させたいときには0.5 %未満に制限し
た方がよく、少なければ少ないほど孔食に対する耐食性
を向上させる効果があるので、好ましいのは0.3 %以下
である。
以上が必要である。しかし、14.0%を超えると耐食性の
向上の効果以上に材料コストの上昇が著しくなる。さら
にMoとの相乗作用でδフェライトが生成して、かえって
耐食性が低下するので上限を14.0%とした。
効果を有する元素である。0.5 %未満ではその効果が小
さく、7.0 %を超えるとCrとの相乗作用でδフェライト
が生成し易くなり、耐食性が低下するので、Mo含有量の
範囲は 0.5〜7.0 %とした。
な強度と、さらに耐食性を確保するために含有させる元
素である。4.0 %未満ではその効果が十分でなく、一方
8.0%を超えると、焼入れ処理したときに残留オーステ
ナイトが多量に生成し、耐食性が低下する。よって、Ni
含有量の範囲は 4.0〜8.0 %とした。
ではその効果がなく、0.1 %を超えると介在物が多くな
って耐食性が損なわれので、Al含有量の範囲は 0.001〜
0.1 %とした。
し、異常強化の原因となるCr炭化物、V炭化物が微細析
出するのを抑制するために含有させる。この効果を得る
には、C含有量に見合う含有量が必要であり、その下限
を4(%C)とした。一方、〔{−0.01/(%C+0.01
5)}+0.75〕を超えると、TiNi金属間化合物が析出して
かえって硬度が上昇する。よって、Tiを用いる場合の含
有量の範囲は、4(%C)以上、〔{−0.01/(%C+
0.015)}+0.75〕以下とした。
として固定し、異常強化の原因となるCr炭化物、V炭化
物が微細析出するのを抑制するために含有させる。この
効果を得るには、C含有量に見合う含有量が必要であ
り、その下限を10( %C) とした。
さないので強度の面からの上限はない。しかし、 2.0%
を超えると、靱性と熱間加工性が低下する。よって、Zr
を用いる場合の含有量の範囲は、10( %C) 以上、2.0
%以下とした。
必要に応じて、それぞれ 0.001〜0.05%のMgおよびCeの
うち1種または2種を含有させてもよい。
足しなければならない。
と優れた耐食性を確保するために、マルテンサイト組織
の中に一定の残留オーステナイトを含むものであること
が望ましい。このためには、高温でδフェライトが生成
せずに、通常のオーステナイト化温度である 800〜1100
℃でオーステナイト単相となり、冷却すればマルテンサ
イトに変態し、かつ焼戻し後に残留オーステナイトが生
成するような化学組成を選択しなければならない。この
理由で、式および式を満足させる必要がある。な
お、式は加熱時にオーステナイト化させるための、
式は室温に冷却したときに主としてマルテンサイト化さ
せるための、それぞれ必要条件である。
など他の相が生成することもあるが、本発明のステンレ
ス鋼では、上記のように、TiあるいはZrをCに応じて適
正に含有させた上で、および式を同時に満足させれ
ば、望ましくない炭化物などの影響はなくなる。
めた理由を説明する。
の硬度が上昇し過ぎ、硫化物応力腐食割れ感受性が高く
なる。同時に炭化物が析出しやすくなり、局部腐食も発
生しやすくなるので、上限を0.05%とした。なお、Tiお
よびZrの添加量を節約すること、および耐食性の確保の
両面から、C含有量は少なければ少ないほどよく、望ま
しいのは0.025 %以下である。
性が著しく上昇するので、上限を0.04%とした。
れば少ないほど望ましい。脱硫コストとのかねあいで、
上限を0.005 %とした。
受性を大きくする元素である。0.05%を超えると強度が
上昇しすぎるので耐食性が大きく低下する。このため、
0.05%以下としたが、耐食性の面からはN含有量は少な
い方が良好であるから、望ましいのは、0.02%以下であ
る。
き、焼戻し後の硬度を著しく上昇させるので、できるだ
け低い方が望ましい。しかし、Vは溶解原料に混入しや
すく、通常ではその含有量を0.01%以下にするのは困難
な成分である。前述のように、TiまたはZrを適正な範囲
で含有させることで、この異常硬化を回避できるが、V
が 0.2%を超えるとTi、Zrを含有させてもその回避が困
難になる。この理由で0.2 %以下とした。
〜20%であり、残りは主としてマルテンサイトからなる
ものである。残留オーステナイトとマルテンサイト以外
の組織としては、炭化物、窒化物あるいはAl2O3 などの
酸化物があり、偏析部には稀にδフェライトが生成する
ことがある。「主として」とは、このような意味であ
る。
では、耐食性、特に耐全面腐食性の改善効果が得られな
い。すなわち、2%以上では粒界での残留オーステナイ
トの組織専有率が優先的になり、耐食性が向上する。一
方、20%を超えると耐食性向上効果が飽和する上に、強
度低下が著しくなり、油井用として必要な強度が得られ
ない。
在する場合に耐食性が向上する理由は、次の〜のよ
うに説明される。
焼戻し温度を高温にする必要があるが、その高温焼戻し
で成分が均一化される。
ら優先的に形成され、これによって粒界近傍の耐食性元
素の欠乏層が解消される。
とんどなく、粒界に析出した残留オーステナイトが水素
脆化の一種である硫化物応力割れの発生と伝播を抑制す
るという重畳効果により、耐食性が向上する。
れ処理を施し、次いでAc1点を超え700 ℃未満の温度域
で焼戻し処理を施す。
す。焼入れ処理の温度範囲は 850〜1000℃が望ましい。
はオーステナイト変態が開始せず所望の組織が得られな
い。一方、700 ℃以上では多量のオーステナイトが生成
し、強度低下が著しくなって、油井用として必要な強度
( 降伏応力: 80ksi以上、1ksi =6.89MPa)を得るこ
とが困難になる。
乏層の解消を高水準で得るには、高温側条件を選択する
のがよく、望ましい範囲は 600〜650 ℃、さらに望まし
いのは 615〜650 ℃である。
招かない範囲で効果が得られる15分〜2時間とするのが
望ましい。
(4) に示す、鋼種A〜Q(A〜Hが本発明鋼、I〜Kが
従来鋼、L〜Qが比較鋼)をそれぞれ溶製し、熱間鍛
造、熱間圧延で厚さ8mmの板材とした。次いで、表2
(1) 、表2(2) および表2(3) に示す条件で水冷の焼入
れ処理後、焼戻し処理した。これらの板材を用いて、残
留オーステナイトの体積分率の測定、引張試験、耐全面
腐食性試験および硫化物応力割れ性試験を実施した。
X線測定法によった。強度は、引張試験の降伏応力で評
価した。
図1の (a)、(b) および(c) に示す厚さ2mm×幅10mm×
長さ75mmで中央に0.25Rのノッチ2を切った4点曲げ試
験片1をそれぞれ2個作製し、次いで、図2(a)に示す
ように試験片1を曲げ治具3によって、同図中の式で
表される応力が、1σy (σy:0.2%耐力) になるよう
に曲げ応力を負荷した状態で行った。このときの試験片
1の曲げ形状は、図2(b) に示すとおりである。
m.H2S +30atm.CO2 とし、硫化物応力腐食割れ性は、25
℃で336 時間の浸漬後、試験片を取り出して脱スケール
した後、ノッチ部の試験片断面の500 倍の光学顕微鏡観
察によって割れの有無を調査する方法で評価した。
の腐食減量から腐食速度をmm/年に換算して求める方法
で評価した。
び表2(3) に併せて示す。
くなるほど残留オーステナイト量(体積分率)が増加
し、それにともなって腐食速度が低下している。
びNo.2、3、9、15、22(焼戻し温度が本発明の範囲
外)では、残留オーステナイト量が1%以下と低いため
に、腐食速度が高く、硫化物応力腐食割れも発生した。
No.4〜7、10〜13、16〜19、23〜27、29〜33の焼戻し温
度がAc1点を超え700 ℃未満のものでは、残留オーステ
ナイト量が2%以上であるために、腐食速度が低く、応
力腐食割れも発生しなかった。
の方が低温側で残留オーステナイトの生成量が多く、耐
食性が良好であった。すなわち、例えば No.11では、同
じ焼戻し温度のNo.4よりも、残留オーステナイトの生成
量が多く、腐食速度も低い。
応力腐食割れも発生していない。
温度で処理したものは、油井用材料として通常必要とさ
れる強度(降伏応力:80ksi 以上、1ksi=6.89MPa )
を下回るが、耐食性は良好であるので、このレベルの強
度が要求されない部材として使用できる。
速度と硫化物応力割れに及ぼす残留オーステナイト量の
影響を示す図である。図示するように、残留オーステナ
イト量が本発明で定める範囲の鋼では、割れが発生せ
ず、腐食速度も低いことがわかる。
から、80ksi 以上で安定していることがわかる。
織からなる低C−Cr−Ni−Mo系ステンレス鋼において、
残留オーステナイトを適正な範囲で存在させることの特
徴として、強度安定性と、耐硫化物応力腐食割れ性およ
び耐全面腐食性で代表される耐食性とに優れたものであ
る。塩素イオン、炭酸ガス、硫化水素ガスが同時に存在
する苛酷な環境下でも十分満足しうる耐食性を備え、か
つ油井用材料として使用するに十分な強度が安定して得
られる鋼である。
る。
を説明する図である。
テナイト量の影響の例を示す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記式を満
足するTiを含有し、かつ下記式および式を満足する
組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不
純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05%以
下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下および0.2
%以下であり、その組織中の残留オーステナイトが体積
分率で2〜20%であり、残りは主としてマルテンサイト
からなることを特徴とする強度安定性、耐硫化物応力腐
食割れ性および耐全面腐食性に優れた油井用ステンレス
鋼。 4 (%C) ≦%Ti≦〔{−0.01/ (%C+0.015)}+0.75〕・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・ - 【請求項2】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記式を満
足するTiを含有し、かつ下記式および式を満足する
組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不
純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05%以
下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下および0.2
%以下である鋼に、焼入れ処理を施し、次いでAc1点を
超え700 ℃未満の温度域で焼戻し処理を施すことを特徴
とする請求項1の油井用ステンレス鋼の製造方法。 4 (%C) ≦%Ti≦〔{−0.01/ (%C+0.015)}+0.75〕・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・ - 【請求項3】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜
0.05%およびCe: 0.001〜0.05%の一方または両
方、さらに下記式を満足するTiを含有し、かつ下記
式および式を満足する組成を有し、残部はFeおよび不
可避不純物からなり、不純物中のC、P、S、Nおよび
Vがそれぞれ0.05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、
0.05%以下および0.2 %以下であり、その組織中の残留
オーステナイトが体積分率で2〜20%であり、残りは主
としてマルテンサイトからなることを特徴とする強度安
定性、耐硫化物応力腐食割れ性および耐全面腐食性に優
れた油井用ステンレス鋼。 4 (%C) ≦%Ti≦〔{−0.01/ (%C+0.015)}+0.75〕・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・ - 【請求項4】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜
0.05%およびCe: 0.001〜0.05%の一方または両方、さ
らに下記式を満足するTiを含有し、かつ下記式およ
び式を満足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不
純物からなり、不純物中のC、P、S、NおよびVがそ
れぞれ0.05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%
以下および0.2 %以下である鋼に、焼入れ処理を施し、
次いでAc1点を超え700 ℃未満の温度域で焼戻し処理を
施すことを特徴とする請求項3の油井用ステンレス鋼の
製造方法。 4 (%C) ≦%Ti≦〔{−0.01/ (%C+0.015)}+0.75〕・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・ - 【請求項5】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記式を満
足するZrを含有し、かつ下記式および式を満足する
組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不
純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05%以
下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下および0.2
%以下であり、その組織中の残留オーステナイトが体積
分率で2〜20%であり、残りは主としてマルテンサイト
からなることを特徴とする強度安定性、耐硫化物応力腐
食割れ性および耐全面腐食性に優れた油井用ステンレス
鋼。 10 (%C) ≦%Zr≦2.0 %・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・ - 【請求項6】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %、さらに下記式を満
足するZrを含有し、かつ下記式および式を満足する
組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不
純物中のC、P、S、NおよびVがそれぞれ0.05%以
下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%以下および0.2
%以下である鋼に、焼入れ処理を施し、次いでAc1点を
超え700 ℃未満の温度域で焼戻し処理を施すことを特徴
とする請求項5の油井用ステンレス鋼の製造方法。 10 (%C) ≦%Zr≦2.0 %・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・ - 【請求項7】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜
0.05%およびCe: 0.001〜0.05%の一方または両方、さ
らに下記式を満足するZrを含有し、かつ下記式およ
び式を満足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不
純物からなり、不純物中のC、P、S、NおよびVがそ
れぞれ0.05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%
以下および0.2 %以下であり、その組織中の残留オース
テナイトが体積分率で2〜20%であり、残りは主として
マルテンサイトからなることを特徴とする強度安定性、
耐硫化物応力腐食割れ性および耐全面腐食性に優れた油
井用ステンレス鋼。 10 (%C) ≦%Zr≦2.0 %・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・ - 【請求項8】重量%で、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以
下、Cr:10.0〜14.0%、Mo: 0.5〜7.0 %、Ni: 4.0〜
8.0 %およびAl: 0.001〜0.1 %ならびにMg: 0.001〜
0.05%およびCe: 0.001〜0.05%の一方または両方、さ
らに下記式を満足するZrを含有し、かつ下記式およ
び式を満足する組成を有し、残部はFeおよび不可避不
純物からなり、不純物中のC、P、S、NおよびVがそ
れぞれ0.05%以下、0.04%以下、0.005 %以下、0.05%
以下および0.2 %以下である鋼に、焼入れ処理を施し、
次いでAc1点を超え700 ℃未満の温度域で焼戻し処理を
施すことを特徴とする請求項7の油井用ステンレス鋼の
製造方法。 10 (%C) ≦%Zr≦2.0 %・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (%Cr) +36 (%Mo) +14 (%Si) −28 (%Ni) ≦455 ・・・・・・ 21 (%Cr) +25 (%Mo) +17 (%Si) +35 (%Ni) ≦731 ・・・・・・
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