JP2001107198A - 耐ssc性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプおよびその製造方法 - Google Patents

耐ssc性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプおよびその製造方法

Info

Publication number
JP2001107198A
JP2001107198A JP28737599A JP28737599A JP2001107198A JP 2001107198 A JP2001107198 A JP 2001107198A JP 28737599 A JP28737599 A JP 28737599A JP 28737599 A JP28737599 A JP 28737599A JP 2001107198 A JP2001107198 A JP 2001107198A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
stainless steel
martensitic stainless
ssc resistance
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP28737599A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshiharu Sakamoto
俊治 坂本
Masaharu Oka
正春 岡
Hitoshi Asahi
均 朝日
Koichi Nose
幸一 能勢
Shinichi Tamura
眞市 田村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP28737599A priority Critical patent/JP2001107198A/ja
Publication of JP2001107198A publication Critical patent/JP2001107198A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】特定成分の鋼に対し金属組織を最適化して、We
1dab1e13Crの実用性能として特に重視される低降伏強度
と耐SSC性の改善技術を提供する。 【解決手段】wt%で、C≦0.02、Si≦0.50 、Mn≦1.5、P
≦0.03、S:0.005 、Cr:10.0-14.0、Ni:5.0-8.0、Mo:2.5
-3.5、N≦0.03、A1≦0.15、及びCu≦1.0、Ti:0.003-0.05
0、Zr:0.01-0.2、Nb≦0.05 、V≦0.1、Ta≦0.15、Ca:0.000
5-0.005 、Mg:0.0005-0.005 、B:0.0005-0.0050 の1種
又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物から
なり、焼戻マルテンサイト組織主体のマルテンサイト系
ステンレス鋼であり、体積分率で15〜40%の残留オース
テナイト相を含有させる。そのため2相域熱処理と焼戻
処理を各1回以上施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に腐食性の高い
油ガス田から生産される原油や天然ガスの輸送に使用さ
れる、耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレス
鋼ラインパイプおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】高腐食性油ガス環境の開発に伴って、開
発資材である油井管やラインパイプに対する耐食性要求
が高まり、油井管用途としてのModified13Crや、ラ
インパイプ用途としてのWeldable13Crなどの呼称で
称されるNi,Mo,Cuなどの合金元素を多量に含有
する、各種マルテンサイト系ステンレス鋼材が開発され
てきており、継目無鋼管を始め、電縫管や丸鋼などの製
品として実用化されている。
【0003】ラインパイプ用途のWe1dable13Crに対
して要求される重要特性としては、 溶接熱影響部の最高硬さや靭性等に代表される溶接
性、CO2 に対する耐食性、微量に含まれるH2
による硫化物応力腐食割れ(硫化物応力腐食割れを以後
SSCと略す)に対する抵抗性、そして溶接部に変形
を集中させないための低降伏強度が挙げられる。
【0004】ラインパイプ用途のWeldable13Crに関
する従来技術としては、特開平8−41599号公報や
特開平9−316611号公報に見られるように、耐食
性維持に必須となるCr,Ni,Moといった合金元素
を含有させつつ、良好な溶接性を確保するために有害な
C,Nを低レベルかつ適正範囲に制限する合金設計が開
示されている。しかしながら、主に成分に支配される耐
CO2 腐食性や溶接性等は別としても、低降伏強度や耐
SSC性といった特性は鋼成分のみに依存するものでは
なく、成分に加えて金属組織を最適化して始めて確保で
きるものである。しかし、これら従来技術では金属組織
に関して何ら配慮されていなかったため、前記の要求特
性において満足すべきレベルに達していなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の問題
を克服しようとするものであり、特定成分の鋼に対して
金属組織を最適化することにより、Weldable13Crの
実用性能として特に重視される低降伏強度と耐SSC性
に関する改善技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、先ずマル
テンサイト系ステンレス鋼ラインパイプの実用性能とし
て要求される溶接性、耐CO2 腐食性、靭性に配慮した
多くの実験を行い、次にパイプに成形するまでの熱間加
工工程で生じる疵問題に配慮して熱間加工性を評価し、
これらの結果に基づいて鋼成分を特定範囲に絞り込ん
だ。その後、この特定成分組成の鋼材に対し、種々の熱
処理を施して金属組織を変化させ、降伏強度および耐S
SC性と金属組織の対応関係を調査解析した。その結
果、耐SSC性は降伏強度に依存し、降伏強度は残留オ
ーステナイト分率と熱処理条件に依存することを知見し
た。
【0007】本発明は、上記の知見に基づいて構築した
ものであり、その要旨は以下の通りである。 (1)重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
焼戻マルテンサイト組織を主体としたマルテンサイト系
ステンレス鋼であって、体積分率で15〜40%の残留
オーステナイト相を含むことを特徴とする耐SSC性に
優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプ。
【0008】(2)重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 および Cu:1.0%以下、 Ti:0.003〜0.050%、 Zr:0.01〜0.2%、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下、 Ta:0.15%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなり、焼戻マルテンサイト組織を主体と
したマルテンサイト系ステンレス鋼であって、体積分率
で15〜40%の残留オーステナイト相を含むことを特
徴とする耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレ
ス鋼ラインパイプ。
【0009】(3)重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 および Ca:0.0005〜0.005%、 Mg:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなり、焼戻マルテンサイト組織を主体と
したマルテンサイト系ステンレス鋼であって、体積分率
で15〜40%の残留オーステナイト相を含むことを特
徴とする耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレ
ス鋼ラインパイプ。
【0010】(4)重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 および Cu:1.0%以下、 Ti:0.003〜0.050%、 Zr:0.01〜0.2%、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下、 Ta:0.15%以下 の1種または2種以上を含有し、さらに Ca:0.0005〜0.005%、 Mg:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなり、焼戻マルテンサイト組織を主体と
したマルテンサイト系ステンレス鋼であって、体積分率
で15〜40%の残留オーステナイト相を含むことを特
徴とする耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレ
ス鋼ラインパイプ。
【0011】(5)前記(1)乃至(4)項のいずれか
1項に記載された組成からなるマルテンサイト系ステン
レス鋼に熱間加工を施してMs点以下まで冷却した後、
A(℃)=−660C(%)−15Ni(%)+3.3
Mo(%)+700で算出されるAを基準として、A以
上A+150℃以下の温度に加熱した後、Ms点以下ま
で冷却する処理を1回または2回以上施し、その後A−
50℃からA+40℃の温度に加熱した後、Ms点以下
まで冷却する処理を1回または2回以上施すことを特徴
とする、耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレ
ス鋼ラインパイプの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。先ず本発明における成分の限定理由について述べ
る。成分量は重量%である。 C:Cは耐CO2 腐食性を劣化させる。また、溶接熱影
響部の硬さを上昇させ、靭性および耐SSC性を低下さ
せる元素である。このため可及的低レベルが望ましく、
現在の精錬技術で工業的かつ経済的に到達可能な範囲と
して0.02%以下とした。
【0013】Si:Siは、精錬工程での脱酸のために
添加されて残留しているもので、耐SSC性、靭性、熱
間加工性に有害なδフェライト形成傾向を有する元素で
あるため、脱酸に必要とされる最小限の含有量とすべき
であり、0.5%以下を適正範囲とした。
【0014】Mn:Mnは熱間加工性に有害なSを硫化
物として固定して無害化する元素であると共にオーステ
ナイト安定化元素でもあり、耐SSC性、靭性、熱間加
工性に有害なδフェライトの形成を抑制する作用を有す
るため含有させるが、含有し過ぎてもその効果は飽和す
るため、上限を1.5%とした。
【0015】P:Pは粒界に偏析して耐SSC性および
靭性を劣化させる元素である。このため可及的低レベル
が望ましく、現在の精錬技術で工業的かつ経済的に到達
可能な範囲として0.03%以下とした。
【0016】S:Sは熱間加工性を劣化させる代表的元
素であるため可及的低レベルが望ましい。精錬コストも
考慮して上限を0.005%とするが、より望ましい上
限としては0.002%である。
【0017】Cr:Crは耐CO2 腐食性および耐SS
C性の確保に必須の元素であり、10.0%以上の含有
が必要であるが、反面フェライト安定化元素でもあり、
含有量が多いと耐SSC性、靭性、熱間加工性に有害な
δフェライトが形成されるため、14.0%を上限とし
た。
【0018】Ni:Niは耐CO2 腐食性改善に有効な
元素であり、かっオーステナイトを安定化させδフェラ
イト生成を防止する効果をもつ元素である。このため5
%を下限として含有させるが、多量に含有させると熱間
変形抵抗を高めて熱間加工性を低下させると共に、Ac
1 点を低下させて低強度化を困難にするので、上限を
8.0%とした。
【0019】Mo:MoはCrと同様、耐CO2 腐食
性、耐SSC性の向上に有効かつ不可欠の元素である。
また、Pの粒界偏析を抑制して靭性改善にも有効であ
る。このため2.5%を下限として含有させるが、δフ
ェライト形成能の強い元素であるため、熱間加工時の加
熱温度を1250℃以下に制限する場合において3.5
%まで含有させることができる。
【0020】N:NはCと同様に、溶接熱影響部の硬さ
を上昇させ、靭性および耐SSC性を低下させる元素で
ある。このため可及的低レベルが望ましく、現在の精錬
技術で工業的かつ経済的に到達可能な範囲として0.0
3%以下とした。
【0021】Al:AlはSiと同様、脱酸に必要な元
素であると共に、脱硫を促進して前記のS含有量を安定
的に確保するために含有させるが、過度に含有させると
酸化物系介在物が多くなることに加えて窒化物も生成さ
れるようになり、靭性が低下する。このため、含有量の
上限を0.15%とした。
【0022】以上の組成をべースとして、さらにCO2
およびH2 Sに対する耐食性あるいは耐SSC性、溶接
性や靭性、熱間加工性を改善するために、以下に述べる
元素の1種以上を選択的に添加する。Cu:CuはNi
と同様、耐食性改善に有効な元素であると共に、δフェ
ライト生成防止効果を有する元素であるため含有させる
が、過剰に含有させると熱影響部硬さが高くなるため、
上限を1.0%とした。
【0023】Ti:Tiは、酸化物または窒化物として
存在し、溶接熱影響部の粒成長を抑止して靭性を改善す
る効果を有する。また、Mnと同様、熱間加工性に有害
なSを硫化物として固定して無害化する効果も有する。
このため、0.003%を下限として含有させるが、過
剰に含有させると粗大窒化物が現われて熱間加工性が低
下すると共に、炭化物が形成されて靭性劣化をきたすた
め、上限を0.050%とした。
【0024】Zr:Zrは耐SSC性、靭性に有害なP
を安定な化合物として固定したり、Cを炭化物として固
定して熱影響部硬さを下げる効果を有するため含有させ
るが、含有量が多すぎると粗大酸化物も形成されて反っ
て靭性が低下するため、適正含有量を0.01〜0.2
%とした。
【0025】Nb,V,Ta:Nb,V,Taは、いず
れも炭化物形成元素であり熱影響部硬さを低下させるの
に有効であるが、多く含有させても効果は飽和するの
で、含有量の上限をそれぞれ0.05%,0.1%,
0.15%とした。
【0026】Ca:0.0005〜0.005%、M
g:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% Ca,Mg:Ca,Mgは、熱間加工性改善に有効な元
素であり、必要に応じて0.0005%以上含有させる
が、含有量が多すぎると粗大酸化物による靭性劣化を招
くため、含有量の上限を0.005%とした。Bも熱間
加工性改善に有効な元素であり、0.0005%を下限
として含有させるが、0.0050%を超えて含有させ
ると溶接割れを起こすため、適正範囲を0.0005〜
0.0050%とした。
【0027】上記した成分を含有する鋼は、通常の方法
によって鋳造され、さらにラインパイプ用のシームレス
パイプに熱間加工する。熱間加工の加工方法は特に限定
するものではなく、通常の方法を採用すればよい。
【0028】次に、本発明のラインパイプにおける残留
オーステナイト量に関する限定理由を述べる。以上述べ
た成分範囲の鋼よりなるラインパイプは、主に成分によ
って支配されるCO2 耐食性、溶接熱影響部硬さに代表
される溶接性、熱間加工性といった諸特性においては、
良好な特性を発揮する。しかしながら、耐SSC性や降
伏強度については、金属組織にも強く依存するため、目
的とする良好な耐SSC性、低降伏強度を得るには金属
組織の最適化が必要となる。
【0029】当該鋼の金属組織構成要素は、マルテンサ
イト相、焼戻マルテンサイト、残留オーステナイトの3
つであり、各相の機械的特性に関する特徴は以下の通り
である。マルテンサイト相は他の2相より硬質のため、
これが多いと引張強度を増大させて降伏比を低下させる
反面、耐SSC性および靭性を劣化させる。焼戻マルテ
ンサイト相は、マルテンサイトを回復させたもので、こ
れが多いと引張強度は低下し靭性が向上する反面、降伏
強度が上昇して降伏比が上昇する。残留オーステナイト
相は、引張強度が低く、靭性に優れ、降伏強度も低い。
【0030】したがって、耐SSC性および靭性を損な
わないためにはマルテンサイト相を多量に導入せずに、
焼戻マルテンサイト相と残留オーステナイト相を主体と
した混合組織において、残留オーステナイト相分率を高
めることが重要となる。しかしながら、残留オーステナ
イトは耐SSC性に必要なCr,Moといった合金元素
濃度が低いため、それ自体は母相より耐SSC性に劣る
ので、この分率を高めるには自ずと限界がある。
【0031】図1は、残留オーステナイト相分率と降伏
強度および耐SSC性の関係を示す。残留オーステナイ
ト分率を高めると低降伏強度が得られる。しかしなが
ら、降伏強度を下げるために多量の残留オーステナイト
を導入すると、耐SSC性が劣化する。これは、オース
テナイト中のCr,Moなどの耐SSC性に有効な元素
の濃度が低いことによる。このため、本発明では導入で
きる残留オーステナイト量の上限を40%と規定した。
また、残留オーステナイト量を40%以下とした場合で
も、降伏強度が高い場合には耐SSC性が劣化する。こ
れは、高強度化によってSSCの本質である水素脆化に
対する抵抗性が低下するためである。この結果から、耐
SSC性を劣化させることなく、導入可能となる残留オ
ーステナイト分率は15〜40%の範囲であり、この場
合に得られる降伏強度としては550MPa程度まで低
下できる。
【0032】なお、本発明で言う残留オーステナイトの
分率は、オーステナイト相(fcc構造)とマルテンサ
イトおよび焼戻マルテンサイト(bcc構造)のX線回
折による回折ピークの面積比から求められ、体積%で定
義するものである。また、本発明における残留オーステ
ナイト量の適正範囲は、「島津評論」(Vol.43,No.2-3,
p.269-272(1986))に記載の回転振動法による定量結果
をもとに規定したものである。
【0033】このような残留オーステナイトを15〜4
0%導入させた焼戻マルテンサイト主体の組織を得るに
は、熱間加工後にMs点以下まで冷却された鋼材に対
し、A(℃)=−660C−15Ni(%)+3.3M
o(%)+700で定義されるAを基準として、A以上
A+150℃以下の温度に加熱した後、Ms点以下まで
冷却する処理を1回または2回以上施し、その後A−5
0℃〜A+40℃の温度に加熱した後、Ms点以下まで
冷却する処理を1回または2回以上施す必要がある。
【0034】熱間加工後にMs点以下まで冷却された前
記鋼材は、マルテンサイト組織となっている。これに残
留オーステナイトを導入するには、先ず(α十γ)2相
温度域に加熱しなければならない。2相域に加熱するこ
とによりマルテンサイトの一部がオーステナイトに逆変
態すると共に、残りのマルテンサイトは過度の焼戻しを
受ける。この際の2相の間では、C,N,Cr,Ni,
Mo,Cuなどの成分の分配が進み、オーステナイト安
定化元素であるC,N,Niなどはオーステナイト中に
濃化され、この高温のオーステナイトの一部は、その後
Ms点以下まで冷却されてもマルテンサイト変態を起こ
さずにオーステナイトのまま残留して、残留オーステナ
イトとして検出される。しかしながら、加熱温度によっ
ては成分分配が進まず、また加熱時のオーステナイト分
率が不適当で、適正な残留オーステナイト量が確保でき
ない。
【0035】本発明では、残留オーステナイトを安定確
保できる条件として、A以上A+150℃以下の温度を
2相域熱処理として必要な温度条件とした。この場合の
Aは実質的にAc1 点であり、A以下の温度では逆変態
オーステナイトが生成されないため残留オーステナイト
も生じ得ない。また、A+150℃を上回る温度では成
分分配が不十分で、逆変態オーステナイトの多くは冷却
過程でマルテンサイトに変態し、十分な残留オーステナ
イト量を確保できない。前記温度条件の中でも、残留オ
ーステナイト量確保の点から、最初の2相域熱処理とし
て望ましい温度条件は、A+40℃〜A+100℃の範
囲である。
【0036】このように最初の2相域処理条件を最適化
しても、1回の処理によって確保できる残留オーステナ
イト量が、必ずしも本発明で必要とする分率条件に入る
とは限らない。特に、Cr,Moといったフェライト安
定化元素の含有量が多い鋼種ほど、オーステナイト量の
確保は難しくなる。したがって、1回で所定量の残留オ
ーステナイトが得られない場合は、2回以上の処理を施
すことになる。この場合、最初の2相域熱処理で一度逆
変態させているため、Ac1 はA点より低温側にシフト
している。この点を考慮した2回目以降の2相域処理の
望ましい温度条件は、A〜A+80℃の範囲である。
【0037】2相域熱処理の加熱時の逆変態オーステナ
イトの一部は、冷却された後マルテンサイトとなってお
り、靭性や耐SSC性に有害である。このため、マルテ
ンサイトを焼き戻す必要がある。低強度化のためには可
及的に高温で処理するのが望ましいが、その適正温度と
しては、A−50℃〜A+40℃である。A−50℃未
満の温度では焼戻しが十分進まず、残留オーステナイト
量が本発明範囲に入っても十分に低強度化されない。ま
た、A+40℃超の温度では、2相域に突入し、冷却後
にマルテンサイトが再度生成されるため、満足すべき耐
SSC性が得られないためである。
【0038】なお、最初の2相域熱処理を施す前にAc
3 点以上の温度に加熱してMs点以下まで冷却する焼準
処理あるいは焼入処理を施しても、以後の熱処理条件や
最終的な残留オーステナイト量には何ら影響しないた
め、実施しても支障ない。
【0039】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明する。表1に示す組成の鋼を溶製して造塊法にて
鋳造した後、該鋳片を1200℃に加熱して熱間圧延を
施した後、表2の熱処理を施した。熱処理前後の残留オ
ーステナイト量はX線回折法によって定量し、最終熱処
理終了後の鋼材について引張試験を行うと共に耐SSC
性を評価した。SSC試験は、NACE−TM−017
7−Aに規定される定荷重試験片に降伏強度の90%の
引張り応力を付加した状態で、pH=4.5の10%N
aClを含む酢酸系緩衝液に5%H2 S+95%C02
の混合ガスを常圧で飽和させた試験液に720時間にわ
たって曝し、破断の有無を評価した。試験結果を表2に
併せて示す。
【0040】No.1〜13は本発明例であり、優れた
耐SSC性を示すと共に、降伏強度も最低559MPa
といった低い値が得られている。一方、比較例No.1
7,18は、熱処理条件および金属組織が適正で降伏強
度も526乃至530MPaと低レべルであるにもかか
わらず、鋼成分が本発明の範囲を外れているため、十分
な耐SSC性が得られていない。また、比較例No.1
4〜16では、熱処理条件が本発明範囲を外れており、
結果として適正な金属組織が得られていないため、耐S
SC性も不十分である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によって、鋼
成分に加えて金属組織を最適化することにより、耐SS
C性に優れた低降伏強度のマルテンサイト系ステンレス
鋼が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】残留オーステナイト量と降伏強度および耐SS
C性の関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 朝日 均 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 能勢 幸一 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 田村 眞市 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 Fターム(参考) 4K032 AA00 AA01 AA02 AA04 AA08 AA13 AA14 AA16 AA20 AA21 AA22 AA24 AA27 AA29 AA31 AA33 AA35 AA36 AA39 BA03 CA03 CE01 CF02

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    焼戻マルテンサイト組織を主体としたマルテンサイト系
    ステンレス鋼であって、体積分率で15〜40%の残留
    オーステナイト相を含むことを特徴とする耐SSC性に
    優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプ。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 および Cu:1.0%以下、 Ti:0.003〜0.050%、 Zr:0.01〜0.2%、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下、 Ta:0.15%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
    避的不純物からなり、焼戻マルテンサイト組織を主体と
    したマルテンサイト系ステンレス鋼であって、体積分率
    で15〜40%の残留オーステナイト相を含むことを特
    徴とする耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレ
    ス鋼ラインパイプ。
  3. 【請求項3】 重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 および Ca:0.0005〜0.005%、 Mg:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
    避的不純物からなり、焼戻マルテンサイト組織を主体と
    したマルテンサイト系ステンレス鋼であって、体積分率
    で15〜40%の残留オーステナイト相を含むことを特
    徴とする耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレ
    ス鋼ラインパイプ。
  4. 【請求項4】 重量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、 S :0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:5.0〜8.0%、 Mo:2.5〜3.5%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下 および Cu:1.0%以下、 Ti:0.003〜0.050%、 Zr:0.01〜0.2%、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下、 Ta:0.15%以下 の1種または2種以上を含有し、さらに Ca:0.0005〜0.005%、 Mg:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
    避的不純物からなり、焼戻マルテンサイト組織を主体と
    したマルテンサイト系ステンレス鋼であって、体積分率
    で15〜40%の残留オーステナイト相を含むことを特
    徴とする耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレ
    ス鋼ラインパイプ。
  5. 【請求項5】 前記請求項1乃至4のいずれか1項に記
    載された組成からなるマルテンサイト系ステンレス鋼に
    熱間加工を施してMs点以下まで冷却した後、A(℃)
    =−660C(%)−15Ni(%)+3.3Mo
    (%)+700で算出されるAを基準として、A以上A
    +150℃以下の温度に加熱した後、Ms点以下まで冷
    却する処理を1回または2回以上施し、その後A−50
    ℃からA+40℃の温度に加熱した後、Ms点以下まで
    冷却する処理を1回または2回以上施すことを特徴とす
    る、耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼
    ラインパイプの製造方法。
JP28737599A 1999-10-07 1999-10-07 耐ssc性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプおよびその製造方法 Pending JP2001107198A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28737599A JP2001107198A (ja) 1999-10-07 1999-10-07 耐ssc性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプおよびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28737599A JP2001107198A (ja) 1999-10-07 1999-10-07 耐ssc性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプおよびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001107198A true JP2001107198A (ja) 2001-04-17

Family

ID=17716555

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP28737599A Pending JP2001107198A (ja) 1999-10-07 1999-10-07 耐ssc性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプおよびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001107198A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1584699A1 (en) * 2002-12-20 2005-10-12 Sumitomo Metal Industries, Ltd. High-strength martensitic stainless steel with excellent resistances to carbon dioxide gas corrosion and sulfide stress corrosion cracking
WO2006054430A1 (ja) * 2004-11-19 2006-05-26 Sumitomo Metal Industries, Ltd. マルテンサイト系ステンレス鋼
JP2007332442A (ja) * 2006-06-16 2007-12-27 Jfe Steel Kk 耐食性に優れる油井用高靭性超高強度ステンレス鋼管およびその製造方法
CN108251759A (zh) * 2018-02-01 2018-07-06 南京理工大学 逆变奥氏体韧化的马氏体不锈钢及其制造方法
EP3690074A4 (en) * 2017-09-29 2020-08-05 JFE Steel Corporation SEAMLESS MARTENSITIC STAINLESS STEEL TUBE FOR OIL HOLE AND MANUFACTURING PROCESS FOR IT

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1584699A1 (en) * 2002-12-20 2005-10-12 Sumitomo Metal Industries, Ltd. High-strength martensitic stainless steel with excellent resistances to carbon dioxide gas corrosion and sulfide stress corrosion cracking
EP1584699A4 (en) * 2002-12-20 2009-06-03 Sumitomo Metal Ind HIGH-STRENGTH MARTENSITIC STAINLESS STEEL WITH EXCELLENT RESISTANCE TO CARBONIC CORROSION AND SULPHID TREATMENT CRACK CORROSION
WO2006054430A1 (ja) * 2004-11-19 2006-05-26 Sumitomo Metal Industries, Ltd. マルテンサイト系ステンレス鋼
JP2007332442A (ja) * 2006-06-16 2007-12-27 Jfe Steel Kk 耐食性に優れる油井用高靭性超高強度ステンレス鋼管およびその製造方法
EP3690074A4 (en) * 2017-09-29 2020-08-05 JFE Steel Corporation SEAMLESS MARTENSITIC STAINLESS STEEL TUBE FOR OIL HOLE AND MANUFACTURING PROCESS FOR IT
US11827949B2 (en) 2017-09-29 2023-11-28 Jfe Steel Corporation Martensitic stainless steel seamless pipe for oil country tubular goods, and method for manufacturing same
CN108251759A (zh) * 2018-02-01 2018-07-06 南京理工大学 逆变奥氏体韧化的马氏体不锈钢及其制造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5685198B2 (ja) フェライト−オーステナイト系ステンレス鋼
AU2014294080B2 (en) High-strength steel material for oil well and oil well pipes
WO2006109664A1 (ja) フェライト系耐熱鋼
WO2011078165A1 (ja) 高強度ばね用鋼
JP2000345281A (ja) 溶接性と低温靭性に優れた低合金耐熱鋼およびその製造方法
JP2003160811A (ja) 靭性に優れた調質高張力鋼板の製造方法
EP2803741B1 (en) Method of post weld heat treatment of a low alloy steel pipe
WO2007029687A1 (ja) 低合金鋼
JP2000129392A (ja) 耐疲労き裂進展特性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP2001279392A (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼および製造方法
JPH0517850A (ja) 耐カツパーチエツキング性に優れた高クロムフエライト系耐熱鋼
JPH0375337A (ja) 高強度かつ耐食性の優れたマルテンサイト系ステンレス鋼
JPH09249940A (ja) 耐硫化物応力割れ性に優れる高強度鋼材およびその製造方法
JP2002212684A (ja) 高温強度の高いマルテンサイト系ステンレス鋼
JP2001107198A (ja) 耐ssc性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプおよびその製造方法
JP2003166039A (ja) 鋭敏化特性、高温強度および耐食性に優れたオーステナイト系耐熱鋼とその製造方法
JP3666388B2 (ja) マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管
JPH0543986A (ja) 溶接熱影響部の強度低下の小さい高クロムフエライト耐熱鋼
JP3814836B2 (ja) 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法
JPH07292445A (ja) 二相ステンレスクラッド鋼およびその製造方法ならびに溶接方法
JP3201081B2 (ja) 油井用ステンレス鋼およびその製造方法
JP2001073071A (ja) 引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板およびその製造方法
JP2002030392A (ja) 耐食性に優れた高Crマルテンサイトステンレス鋼及びその製造方法
JP3451993B2 (ja) 耐硫化水素腐食性および耐炭酸ガス腐食性能に優れたCr含有油井管用鋼
JPH0387332A (ja) 高強度低合金耐熱鋼の製造方法