JPH0719912Y2 - 自動車の吊り天井 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、車体の上部を構成するルーフパネルの車内側
の面に沿って張設される可撓性を備えた天井内張材と、
該内張材の端縁部が固着されていて、天井内張材を車体
に固定するリテーナとを有する自動車の吊り天井に関す
るものである。

〔従来の技術〕

自動車の車室内の美観を高めるため、車室内上部に上記
形式の吊り天井を付設することは従来より周知である。

第１図は自動車上部の外観斜視図、第５図は従来の吊り
天井の一例を示す断面図である。第５図において、１は
車体２の上部を構成するルーフパネルであり、該パネル
１の前部と後部にはルーフフロントレール３とルーフリ
ヤレール４がそれぞれ固着されている。５はフロントガ
ラス、６はリヤガラスである。

車室７の上部には、次に説明するように天井内張材9aを
有する吊り天井8aが付設されている。天井内張材9aは可
撓性を有していて、ルーフパネル１の車内側の面に沿っ
て張設されている。ルーフフロントレール３には、ねじ
10aによってリテーナ11aが固着され、該リテーナ11a
の、符号Ｘで示す部分に、天井内張材9aの前端縁部が溶
着により固着されている。天井内張材9aはリテーナ11a
から車体後方側に延び、その後端縁部にトリム材12aが
固定されている。車体後方側のルーフリヤレール４にも
ねじ13aによってリテーナ14aが固着されていて、このリ
テーナ14aに上記トリム材12aが係止されている。

天井内張材9aの自動車進行方向における左右の端縁部
は、図示していないルーフサイドレールに固定され、ま
た天井内張材9aに形成された袋状部15aには、車体２の
横方向に延びるリスティングワイヤ16aが挿通され、こ
れらのワイヤ16aはルーフサイドレールに係止されてい
る。

〔考案が解決しようとする課題〕

上述の如く、従来の吊り天井8aはその天井内張材9aの前
端縁部と後端縁部が、リテーナ11a,14a、ねじ10a,13a及
びトリム材12aによって車体に固定されている。

ところがこの構成によると、天井内張材9aのサイズがわ
ずかにばらついたり、車体構造やこれに固定されるリテ
ーナ11a,14aの取付位置がわずかにばらついただけで、
天井内張材9aがだぶついた状態にたるんだり、或いはこ
れにしわが発生するおそれがあった。

また各リテーナ11a,14aを車体２に固着する際、ねじ10
a,13aを螺着しなければならないため、天井内張材9aの
装着に時間がかかり、作業性が低下せざるを得なかっ
た。

さらに、リテーナ11aの形状やその取付位置のばらつき
によって、このリテーナ11aとフロントガラス５との間
の隙間Ｇが変動し、その美観が損われる恐れもあった。

本考案の目的は、上述した従来の問題を一挙に解決する
ことができ、しかも構造を一層簡素化できる自動車の吊
り天井を提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形
式の自動車の吊り天井において、リテーナは、その全体
がスプリング材より成る一成形品によって構成され、か
つ当該リテーナは、車体のフランジ部に嵌合して係止さ
れる嵌着部と、車体面に弾性的に圧接して天井内張材に
対して張力を付与する板ばね部とを有し、前記嵌着部
は、リテーナの一端側に形成されたフランジと、該フラ
ンジに対して間隔をあけて対置され、かつリテーナ自体
を切り起こして形成された対向舌片とにより構成され、
前記板ばね部は、前記リテーナの他端側をほぼハの字状
に開いた状態に切り起こすことによって形成された対を
なした耳片によって構成され、当該対をなした耳片が車
体の曲折部をまたいだ状態で車体面に圧接しており、前
記天井内張材は、その端縁部が前記リテーナのフランジ
に固着され、かつ前記リテーナの嵌着部と板ばね部を車
室内側から覆い隠すように、当該嵌着部と板ばね部の間
のリテーナ部分の表面に当接しながら、その表面に沿っ
て延びていることを特徴とする吊り天井を提案する。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に従って説明する。

第２図は第１図のII-II線断面図であって、本考案に係
る自動車の吊り天井の一例を示している。

第２図に示した車体構造自体は第５図と変りはない。す
なわち、１は車体２の上部を構成するルーフパネル、3,
4はその前部と後部に固着されたルーフフロントレール
及びルーフリヤレール、5,6はフロントガラスとリヤガ
ラスをそれぞれ示し、７は車室を示している。

車室７の上部に付設された本考案に係る吊り天井８も、
従来と同様に例えば塩化ビニルシートやファブリック材
等の可撓性材料より成る天井内張材９を有し、かかる可
撓性を備えた天井内張材９はルーフパネル１の車内側の
面に沿って張設されている。また天井内張材９に形成さ
れた袋状部15に、車体の横の方向に延びるリスティング
ワイヤ16が挿通され、これらの端部が図示していないル
ーフサイドレールに係止されていることも従来と変りは
ない。

また第２図に示した吊り天井８も、天井内張材９の端縁
部が固着されていて、その天井内張材９を車体２に固定
するリテーナ20,120を有している。これらのリテーナ2
0,120はルーフパネル１の前端側と後端側に取付けら
れ、かかるリテーナ20,120によって天井内張材９の前端
縁部と後端縁部が車体２にそれぞれ固定されている。こ
れらのリテーナ20,120の構成が従来のリテーナと異なっ
ている。

前部側のリテーナ20は、第３図に示すように車体２の横
方向に長く延び、その全体が例えばばね鋼等のスプリン
グ材より成る一成形品によって構成されている。このリ
テーナ20は、その一端側、本例では前端側に形成された
フランジ21を有していると共に、該フランジ21に対して
間隔をあけて対置され、かつリテーナ20自体を切り起こ
して形成された複数の対向舌片22を有している。このフ
ランジ21と対向舌片22とにより後述する嵌着部50が構成
される。またフランジ21の先端部、すなわち第２図に符
号Ｙで示した部分に、天井内張材９の前端縁部が例えば
溶着によって固着されている。

リテーナ20は、車体面に弾性的に圧接して天井内張材９
に対して張力を付与する板ばね部を有しており、かかる
板ばね部は、リテーナ20の他端側、本例ではその後端側
をほぼハの字形に開いた状態に切り起こすことにより形
成された対をなした耳片23,24によって構成されてい
る。

後部側のリテーナ120も上述のリテーナ20と全く同様に
形成され、実質的に異なるところはない。よって前部側
のリテーナ20の各部分に対応する後部側リテーナ120の
各部分には、前部側のリテーナ20に付した符号に100を
加えた符号を付し、その説明は省略することにする。後
部側のリテーナ120のフランジ121に天井内張材９の後端
縁部が固着されていることも前部側と変りはない。

車体２の一部を構成するルーフフロントレール３とルー
フパネル１の前端部は、互いに重ね合されてフランジ部
25を形成している。一方、リテーナ20は、フランジ21と
対向舌片22により構成された嵌着部50を有しているが、
かかる嵌着部50は、上述した車体のフランジ部25に嵌合
して係止される。このようにしてリテーナ20が車体２に
対して固定係止される。その際、リテーナ20の対をなし
てハの字状に開いた耳片23,24が、車体面を構成するリ
ーフフロントレール３の面に、その曲折部30をまたいだ
状態で圧接する。これは、後部側のリテーナ120におい
ても同様である。

上述のようにして前端縁部がリテーナ20のフランジ21に
固着された天井内張材９は、リテーナ20の嵌着部50と板
ばね部を車室内側から覆い隠すように、その嵌着部50と
板ばね部の間のリテーナ部分の表面に接しながら、その
表面に沿って延びている。これは、後部側リテーナ120
においても同様である。リテーナ20を離れた天井内張材
９は、ルーフパネル１の車内側の面に沿って後方に延
び、その後端縁部が、上述したところと全く同様に車体
２のフランジ部125に係止された後部側のリテーナ120を
介して、車体２に対して固定される。

天井内張材９の前後の後縁部は上述のようにリテーナ2
0,120を介して車体２に固定されるが、このとき両リテ
ーナ20,120の板ばね部を構成する耳片23,24と123,124
が、ルーフフロントレール３とルーフリヤレール４の面
にそれぞれ弾性的に圧接する。第２図には、板ばね部が
フリー状態にあるときの形態を鎖線で示してあり、各リ
テーナ20,120を車体に取付けると、両板ばね部の耳片2
3,24と123,124は天井内張材９によって加圧され、実線
のように弾性変形して車体面にそれぞれ圧接する。逆に
言えば、各板ばね部がその弾性によって、天井内張材９
に対し張力を付与するのである。このとき、対をなした
耳片23,24と123,124の間に車体の曲折部が位置するの
で、耳片が車体から外れる不具合を阻止できる。

上述した構成によれば、天井内張材９のサイズがその製
造誤差等によって多少ばらついても、該内張材９を常に
張った状態に装着しておくことができる。例えば、天井
内張材９の前後方向の長さが多少短かめに形成されてい
るときは、これに作用する張力が強くなるが、これに応
じて、リテーナ20が嵌着部50側を中心として弾性的に曲
げ変形し、板ばね部を構成する耳片23,24が第４図
（ａ）に示す如く開き角を大きくするように弾性変形す
る。これは後部側のリテーナ120においても全く同様で
ある。よって、天井内張材９を支障なく張った状態で車
体２に装着しておくことができる。

逆に、天井内張材９の前後の長さが多少長めに形成され
ているときは、その内張材９に作用する張力は小さくな
るが、このときも第４図（ｂ）に示すようにリテーナ20
の曲げ変形量が小さくなり、板ばね部を構成する耳片2
3,24が開き角を小さくするように弾性変形しつつ、ルー
フフロントレール３の面に圧接する。後部側のリテーナ
120も全く同じく作用する。このため、天井内張材９に
たるみ等を生じることなく、該内張材を張った状態で装
着しておくことができる。

上述のように板ばね部は車体面に圧接して天井内張材９
に対して張力を付与し、これにより該内張材９を常に張
った状態に保つことができる。

また天井内張材９を車体２に取付けるとき、各リテーナ
20,120の嵌着部50,150を車体２のフランジ部25,125に嵌
合させるだけで、従来のようにねじを螺着する必要はな
い。このため天井内張材９の取付作業は至って簡単であ
る。

しかも、リテーナ20,120が車体自体のフランジ部25,125
に嵌着固定されるため、これらリテーナ20,120とガラス
5,との間の隙間G1,G2が大きくばらつくようなことはな
く、常にこれらの隙間G1,G2はほぼ一定に保たれる。

さらに、各リテーナ20,120は、その全体が一成形品より
成り、そのリテーナ自体のばね性を利用して天井内張材
９に張力を付与するので、吊り天井の構成を簡素化で
き、しかも天井内張材９を極く簡単に車体２に組付ける
ことができる。また天井内張材９を組付けたあとは、リ
テーナ20,120がこの内張材９によって覆い隠されるの
で、特別なカバー部材などを用いずとも、車室内の美観
が低下するおそれはない。

以上、天井内張材９の前端縁部と後端縁部を車体に固定
する実施例を説明したが、前端縁部と後端縁部のいずれ
か一方だけを本考案に係る構成によって車体に固定する
ようにしてもよく、また天井内張材９の左右の端縁部を
本考案に係る構成によって車体に固定することも可能で
ある。

〔考案の効果〕

本考案によれば天井内張材にしわやたるみを生じさせる
ことなくこの内張材を車体に固定でき、しかも各リテー
ナとガラスとの隙間をほぼ一定に保つことができる。ま
たねじなどを用いることなく、極く簡単に天井内張材を
車体に対して組付けることができ、その作業性を高める
ことができる。しかもリテーナはその全体が一成形品よ
り成り、かつそれ自体のばね性を利用して天井内張材に
張力を与えるので、吊り天井の構成部品点数を低減で
き、その組付性を高めることができる。さらに、天井内
張材を組付けた後は、この内張材がリテーナを覆い隠す
ので、車室内の美観が低下する不具合を阻止できる。リ
テーナを覆い隠すための特別なカバー部材などを全く必
要としない。またリテーナの対をなした耳片が車体の曲
折部をまたいだ状態で車体面に圧接するので、リテーナ
が車体面から外れてしまう不具合を阻止できる。

【図面の簡単な説明】 第１図は自動車上部の外観斜視図、第２図は第１図のII
-II線断面図、第３図はリテーナの斜視図、第４図
（ａ），（ｂ）はリテーナの板ばね部の作用を説明する
図、第５図は従来の吊り天井の一例を示す、第２図と同
様な断面図である。 １……ルーフパネル、２……車体 ７……車室、８……吊り天井 ９……天井内張材、20,120……リテーナ 21,121……フランジ、22,122……対向舌片 23,24,123,124……耳片、25,125……フランジ部 30……曲折部、50,150……嵌着部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】車体の上部を構成するルーフパネルの車内
   側の面に沿って張設される可撓性を備えた天井内張材
   と、該内張材の端縁部が固着されていて、天井内張材を
   車体に固定するリテーナとを有する自動車の吊り天井に
   おいて、 前記リテーナは、その全体がスプリング材より成る一成
   形品によって構成され、かつ当該リテーナは、車体のフ
   ランジ部に嵌合して係止される嵌着部と、車体面に弾性
   的に圧接して天井内張材に対して張力を付与する板ばね
   部とを有し、前記嵌着部は、リテーナの一端側に形成さ
   れたフランジと、該フランジに対して間隔をあけて対置
   され、かつリテーナ自体を切り起こして形成された対向
   舌片とにより構成され、前記板ばね部は、前記リテーナ
   の他端側をほぼハの字状に開いた状態に切り起こすこと
   によって形成された対をなした耳片によって構成され、
   当該対をなした耳片が車体の曲折部をまたいだ状態で車
   体面に圧接しており、前記天井内張材は、その端縁部が
   前記リテーナのフランジに固着され、かつ前記リテーナ
   の嵌着部と板ばね部を車室内側から覆い隠すように、当
   該嵌着部と板ばね部の間のリテーナ部分の表面に当接し
   ながら、その表面に沿って延びていることを特徴とする
   吊り天井。