JPH07184647A - α−L−フコシダーゼ、その製造方法およびアルカリジェネス・デニトリフィカンス サブsp. デニトリフィカンス KSF−0901菌株 - Google Patents

α−L−フコシダーゼ、その製造方法およびアルカリジェネス・デニトリフィカンス サブsp. デニトリフィカンス KSF−0901菌株

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JPH07184647A
JPH07184647A JP33251293A JP33251293A JPH07184647A JP H07184647 A JPH07184647 A JP H07184647A JP 33251293 A JP33251293 A JP 33251293A JP 33251293 A JP33251293 A JP 33251293A JP H07184647 A JPH07184647 A JP H07184647A
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JP
Japan
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denitrificans
fucosidase
enzyme
alpha
alcaligenes
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JP33251293A
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English (en)
Inventor
Satoru Watanabe
渡辺  哲
Kozo Nagayama
孝三 永山
Hiroshi Abe
洋 阿部
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Kumiai Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kumiai Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 新規なα−L−フコシダーゼおよびその製造
法を確立する。 【構成】 アルカリジェネス デニトリフィカンス サ
ブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes denitrif
icans subsp. denitrificans) KSF−0901菌株
(FERM P−13993)を液体培地で培養し、液
体培地中にα−L−フコシダーゼを生産させた後、精製
する。 【効果】 上記方法では活性画分を菌体内から抽出する
操作を必要とせず、酵素を工業的に安価に製造すること
が可能である。また得られたα−L−フコシダーゼは中
性付近に至適pHを有し、合成基質および天然基質に作
用するので、糖鎖の構造解析や機能の研究に極めて有用
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルカリジェネス属に
属する細菌により生産される新規なα−L−フコシダー
ゼ、その製造方法および新規なアルカリジェネス・デニ
トリフィカンス サブsp. デニトリフィカンス(Al
caligenes denitrificans subsp. denitrificans)KS
F−0901菌株に関する。
【0002】
【従来の技術】α−L−フコシダーゼは合成基質、オリ
ゴ糖、天然高分子などのα−L−フコシル結合に作用し
て、L−フコースを遊離する酵素であり、細菌、放線
菌、糸状菌、植物、軟体動物、哺乳類等に見出されてい
る。ところで、高等動物由来の糖タンパク質や糖脂質中
に含まれる複合糖質の糖鎖の非還元末端または枝分れ部
分には、α−L−フコシル基を含むものが多く見出され
ており、近年、α−L−フコシル基の代謝と細胞のガン
化との間に深い関係があることが示唆されている。α−
L−フコシダーゼはこれらのα−L−フコシル結合を分
解する酵素であり、複合糖質中の糖鎖の構造解析や、構
造と機能との関連を研究する上でL−フコースが重要な
役割を果たす。
【0003】α−L−フコシダーゼのうち、サザエやホ
ラガイなどの動物由来のα−L−フコシダーゼ(J.Bioc
hem., 75, 509, 1974)は広い基質特異性を有してお
り、p−ニトロフェニル−α−L−フコシド等の合成基
質およびブタ顎下腺ムチン等の天然高分子基質に作用す
るが、これらの酵素は特定のフコシル結合のみを分解さ
せることはできず、また大量供給が困難であり工業化に
は不利である。
【0004】一方、微生物由来の酵素は厳密な基質特異
性を有しているが、合成基質や天然高分子基質にはあま
り作用しないために、酵素活性を簡便に測定できないと
いう問題点を有している。合成基質および天然基質に作
用する酵素として、フラボバクテリウム・ファルギニュ
ーム IAM1493またはコリネバクテリウム s
p. FS−0077から得られるα−L−フコシダー
ゼ(特開昭62−155086号公報)が知られている
が、この酵素は培養物中の菌体内に生産されるため、酵
素を得るには菌体を破壊する必要があり、工業的生産に
は適さないという問題点がある。また、フザリウム・オ
キシスポラム SA252から生産される酵素(特開昭
61−58587号公報)は至適pHが4.5〜5.5
であるため、細胞表面の糖類の機能を検査するには適さ
ないという問題点がある。従って、中性付近に至適pH
を有し、合成基質および天然基質のα−L−フコシル結
合に特異的に作用し、培養物中の菌体外に生産される微
生物由来のα−L−フコシダーゼの開発が望まれてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題点を解決するため、中性付近に至適pHを有し、合
成基質、オリゴ糖および天然高分子基質の特定のフコシ
ル結合に作用し、しかも培養物中の菌体外に生産される
新規なα−L−フコシダーゼを提供することである。本
発明の他の目的は、上記α−L−フコシダーゼを容易に
製造することができるα−L−フコシダーゼの製造方法
を提案することである。本発明の別の目的は、上記α−
L−フコシダーゼを生産する新規なアルカリジェネス・
デニトリフィカンス サブsp. デニトリフィカンス
Alcaligenesdenitrificans subsp. denitrificans
KSF−0901菌株を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、中性付近
に至適pHを有し、活性画分を菌体内から抽出する操作
を必要とせず、熱に安定でp−ニトロフェニル−α−L
−フコシド等の合成基質、オリゴ糖、ムチン等の天然高
分子基質に作用するα−L−フコシダーゼ生産能を有
し、培養液中にこの酵素を生産する微生物を広く自然界
より検索した結果、アルカリジェネス・デニトリフィカ
ンス サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes
denitrificans subsp. denitrificans) KSF−09
01菌株が合成基質、オリゴ糖、およびムチン等天然高
分子基質のα−1→2結合、およびオリゴ糖中のα−1
→6結合に作用するα−L−フコシダーゼを培養液中に
生産することを見出し、本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明は次のα−L−フコシダ
ーゼ、その製造方法およびアルカリジェネス・デニトリ
フィカンス サブsp. デニトリフィカンス(Alcali
genes denitrificans subsp. denitrificans) KSF
−0901菌株である。 (1)次の酵素学的性質を有することを特徴とするα−
L−フコシダーゼ。 作用 天然高分子基質、オリゴ糖および合成基質中のα−L−
フコシル結合に作用して、L−フコースを遊離する。 基質特異性 合成基質および天然基質中のα−1→2またはα−1→
6フコシル結合に作用する。一方、天然基質中のα−1
→3またはα−1→4フコシル結合には作用しない。 至適pHおよび安定pH範囲 至適pHはpH7.0〜8.0である。45℃で1時間
保持した場合、安定pH範囲は6.0〜9.0である。 反応至適温度および安定温度範囲 反応の至適温度は55℃である。pH7.0で10分間
保持した場合、50℃までは安定であり、65℃以上で
失活する。 阻害剤の影響 銅、水銀、パラクロロメルクリ安息香酸により著しく阻
害される。L−フコースにはほとんど影響を受けない。 分子量 PAGEにより測定した分子量は約102000であ
る。SDS−PAGEにより測定した分子量は約510
00である。 (2)アルカリジェネス・デニトリフィカンス サブs
p. デニトリフィカンス(Alcaligenes denitrifican
s subsp. denitrificans) KSF−0901菌株由来
であることを特徴とする上記(1)記載のα−L−フコ
シダーゼ。 (3)上記(1)のα−L−フコシダーゼ生産能を有す
ることを特徴とするアルカリジェネス・デニトリフィカ
ンス サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes
denitrificans subsp. denitrificans) KSF−09
01菌株。 (4)アルカリジェネス属に属し、α−L−フコシダー
ゼを生産する能力を有する微生物を培養し、培養物から
α−L−フコシダーゼを分離することを特徴とするα−
L−フコシダーゼの製造方法。 (5)α−L−フコシダーゼを生産する能力を有する微
生物が、上記(3)記載のアルカリジェネス・デニトリ
フィカンス サブsp. デニトリフィカンス(Alcali
genes denitrificans subsp. denitrificans) KSF
−0901菌株であることを特徴とする上記(4)記載
の製造方法。 (6)培養物が培養液であることを特徴とする上記
(4)または(5)記載の製造方法。
【0008】本発明のα−L−フコシダーゼの酵素学的
および理化学的性質について説明する。 〈1〉酵素の作用 本発明のα−L−フコシダーゼはムチン等の天然高分子
基質;2’−フコシルラクトース、6’−フコシル−N
−アセチルグルコサミン等のオリゴ糖;およびp−ニト
ロフェニル−α−L−フコシド等の合成基質中のα−L
−フコシル結合を特異的に加水分解し、L−フコースを
遊離する。
【0009】〈2〉基質特異性 本発明のα−L−フコシダーゼの種々のα−L−フコシ
ド含有基質に対する活性を表1に示す。本発明の酵素は
p−ニトロフェニル−α−L−フコシド等の合成基質;
2’−フコシルラクトース、6−フコシル−N−アセチ
ルグルコサミン等のオリゴ糖;ムチン等の天然高分子基
質などに作用し、これら基質中のα−1→2結合または
オリゴ糖鎖中α−1→6結合のフコース残基を加水分解
する。一方、オリゴ糖鎖中のα−1→3またはα−1→
4フコシル結合には作用しない。またp−ニトロフェニ
ル−β−L−フコピラノシドには作用しない。なお、相
対活性は、p−ニトロフェニル−α−L−フコシドに対
する活性を100として表1に示されている。
【0010】
【表1】
【0011】〈3〉至適pHおよび安定pH範囲 至適pHはpH7.0〜8.0である(図1参照)。安
定pH範囲は、45℃で1時間保持した場合pH6.0
〜9.0である(図2参照)。
【0012】〈4〉力価の測定法 酵素活性の測定は、p−ニトロフェニル−α−L−フコ
シドを基質とする場合は、pH6〜8、好ましくはpH
7.0の緩衝液、好ましくはリン酸カリウム緩衝液中に
おいて、30〜55℃、好ましくは50℃で10〜60
分間、好ましくは15分間反応を行った後、グリシン−
NaOH緩衝液(pH10.0)などを加えて反応を停
止させ、次に遊離したp−ニトロフェノールの量を41
0nmの吸光度で測定することにより行うことができ
る。酵素の単位は1分間に1μmolのp−ニトロフェ
ノールを遊離する酵素量を1ユニットとすることができ
る。その他の基質についてはpH6〜8、好ましくはp
H7.0の緩衝液、好ましくはリン酸カリウム緩衝液中
において、30〜55℃、好ましくは50℃で10〜6
0分間、好ましくは30分間反応を行った後、沸騰浴中
で3分間程度加熱して反応を停止し、次に遠心し、上澄
み液中の遊離L−フコース量をシュードモナス由来のL
−フコースデヒドロゲナーゼを用いて定量することによ
り測定することができる。
【0013】〈5〉至適温度および安定温度 反応の至適温度は55℃である(図3参照)。安定温度
範囲はpH7.0の10mMリン酸緩衝液中に各温度で
10分間保温した結果、50℃までは安定であり、55
℃で約60%残存活性を示した(図4参照)。
【0014】〈6〉pH、温度などによる失活の条件 65℃で10分間保持することにより完全に失活する。
またpH11以上において45℃で60分間保持するこ
とにより完全に失活する。
【0015】〈7〉阻害剤等の影響 銅(0.1mM)、水銀(0.1mM)、パラクロロメ
ルクリ安息香酸(0.5mM)により著しく阻害される
が、その他の金属イオン(1mM)、SH試薬(1m
M)または生成物であるL−フコース(1mM)により
ほとんど影響を受けない。
【0016】〈8〉精製方法 本発明のα−L−フコシダーゼの精製は、公知の酵素の
精製法を単独で、または併用して行うことができる。本
発明のα−L−フコシダーゼは菌体内および菌体外に生
産されるので、微生物の培養物、例えば培養液、菌体破
壊液またはこれらの混合物などから分離、精製すること
ができるが、培養液中に生産された酵素を精製する場合
には菌体を破壊する必要がないので簡単に行うことがで
き、このため大量生産に適しているので、培養液中に生
産された酵素を精製するのが好ましい。培養液から精製
する場合は、培養液を濾過または遠心分離により菌体を
除去し、次いで塩析法、各種クロマトグラフ法等の公知
の方法を適宜組み合わせることにより目的物を得ること
ができる。
【0017】具体的には、次のような方法により分離、
精製することができる。培養液をそのまま、または菌体
を除去した後、あるいは菌体破壊液をストリームライン
−ディアエカラム(ファルマシア社製、商標)に通し、
吸着画分を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄
後(この洗浄は省略することができる)、0.2M塩化
ナトリウムを含む同緩衝液で活性画分を溶出する。この
活性画分に最終濃度が1Mになるように硫安を加える。
これをブチル−トヨパール650Mカラム(東ソー
(株)製、商標)に通して吸着させ、1Mの硫安を含む
10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後(この洗
浄は省略することができる)、1M〜0Mの硫安を含む
同緩衝液によるリニアーグラジェント法により活性画分
を溶出させる。
【0018】この活性画分またはこの活性画分を同緩衝
液で一夜透析した透析内液を、同緩衝液で予め平衡化し
たフコース−セルロファインカラムに通し、吸着した酵
素を50mMのL−フコースを含む10mMリン酸緩衝
液で溶出する。活性画分を集め、10mMリン酸緩衝液
(pH7.0)で一夜透析する。この透析内液を、同緩
衝液で予め平衡化したFPLC−Mono Qカラム
(ファルマシア社製、商標)に通し、吸着した酵素を同
緩衝液で洗浄後(この洗浄は省略することができる)、
0M〜0.3Mの塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝液
(pH7.0)で溶出する(リニアーグラジェント
法)。ここまでの精製により目的物は電気泳動的に均一
であるが、ポリッシングのためセファクリルS−300
HRによりゲル濾過を行うのが好ましい。
【0019】〈9〉分子量 本発明のα−L−フコシダーゼの分子量は約102,0
00である(PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳
動)法)。 〈10〉ポリアクリルアミド電気泳動 精製されたα−L−フコシダーゼは、PAGEおよびS
DS−PAGEにおいて単一のバンドを示す。この時の
分子量はそれぞれ102,000、51,000であ
る。 〈11〉Km値 本発明のα−L−フコシダーゼのp−ニトロフェニル−
α−L−フコシドに対するKm値は、1.32×10-3
Mである。
【0020】以上の結果と公知のα−L−フコシダーゼ
の性質とを比較すると、フラボバクテリウム・ファルギ
ニューム IAM1493またはコリネバクテリウム
sp. FS−0077から得られるα−L−フコシダ
ーゼ(特開昭62−155086号公報)は至適pHが
約8.5、至適温度が34℃であるのに対し、本発明の
α−L−フコシダーゼは至適pHが7.0〜8.0、至
適温度が55℃である点で特に異なっている。
【0021】また、フザリウム・オキシスポラム SA
252から得られるα−L−フコシダーゼ(特開昭61
−58587号公報)は至適pHが4.5〜5.5で、
α−1→4結合に作用するのに対し、本発明のα−L−
フコシダーゼは至適pHが7.0〜8.0で、α−1→
4結合に作用しない点で特に異なっている。このよう
に、本発明のα−L−フコシダーゼは公知のものとは性
質が異なり、新規な酵素である。
【0022】本発明のα−L−フコシダーゼはアルカリ
ジェネス属に属する菌株から得ることができる。アルカ
リジェネス属に属する菌株としては、α−L−フコシダ
ーゼ生産能を有するものであればいかなる菌株でも使用
することができ、これらの菌株の変異株でも使用するこ
とができる。アルカリジェネス属に属するα−L−フコ
シダーゼ生産能を有する菌株の具体例として、例えばア
ルカリジェネス・デニトリフィカンス サブsp. デ
ニトリフィカンス(Alcaligenes denitrificans subsp.
denitrificans) KSF−0901菌株があげられ
る。この菌株は、静岡県掛川市内の土壌より本発明者ら
が新たに採取した菌株で、その菌学的性質は次の通りで
ある。
【0023】〈形態的所見〉 (1)細胞の形態、大きさ:桿菌、0.7〜0.8×
1.5〜2.5μm (2)多形性 :なし (3)運動性 :あり (4)胞子 :なし (5)べん毛 :周べん毛 (6)グラム染色性:陰性
【0024】〈生育状態〉 (1)肉汁寒天平板培養 集落の形状は円形であり、周縁は平滑で、表面隆起は扁
平状である。また、集落の色調は乳白色である。 (2)肉汁液体培養 生育し混濁する。 (3)ゼラチン穿刺培養 液化しない。
【0025】〈生理学的性質〉 (1)硝酸塩の還元 :陽性 (2)色素の生成 :陰性 (3)インドールの生成:陰性 (4)デンプンの分解 :陰性 (5)クエン酸の利用 :陽性 (6)カタラーゼ :陽性 (7)オキシダーゼ :陽性 (8)MRテスト :陰性 (9)VPテスト :陰性 (10)エスクリンの加水分解:陰性 (11)脱窒反応:陽性 (12)ポリハイドロキシ酪酸の蓄積:陽性 (13)栄養要求性:陰性 (14)リジン デカルボキシラーゼ:陽性 (15)アルギニン ジヒドロラーゼ:陰性 (16)オルニチン デカルボキシラーゼ:陽性 (17)生育温度 :15〜42℃ 至適温度 :30〜37℃ (18)生育pH :6.0〜9.0 至適pH :7.0〜8.0 (19)酸素に対する態度:好気性 〈その他〉α−L−フコシダーゼを菌体内および菌体外
に生産する。
【0026】以上の性質から、ベルゲイズ マニアル
オブ システマチック バクテリオロジイ(Bergey's M
anual of Systematic Bacteriology)を参照し、上記菌
株をアルカリジェネスに属する菌株と同定した。そし
て、公知のアルカリジェネス属に属する菌株とはα−L
−フコシダーゼを生産するという点において区別され
る。この菌株は、アルカリジェネス デニトリフィカン
ス サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes de
nitrificans subsp. denitrificans) KSF−090
1と命名した。なおこの菌株は、工業技術院生命工学工
業技術研究所にFERM P−13993の受託番号で
寄託されている。
【0027】アルカリジェネス属に属する微生物を用い
てα−L−フコシダーゼを生産するには、通常の微生物
の培養に用いる炭素源および窒素源を使用し、微生物を
培養することにより行うことができる。培養は液体培地
または固体培地を用いて行うことができるが、液体培地
を使用するのが好ましい。培養は次のようして行うのが
好ましい。
【0028】炭素源および窒素源としてペプトン、酵母
エキス、肉エキス、カザミノ酸、コーンスチープリカ
ー、ビタミン、アミノ酸等を用い、厳密な炭素源として
は各種有機酸、厳密な窒素源としては各種アンモニウム
塩、各種硝酸塩、尿素等を用いて、培地を通常の方法で
滅菌した後、アルカリジェネス属に属する微生物、例え
ばアルカリジェネス デニトリフィカンス サブsp.
デニトリフィカンス(Alcaligenes denitrificans su
bsp. denitrificans) KSF−0901菌株を接種
し、30〜37℃、pH7.0〜8.0で1〜4日間振
とうまたは通気撹拌により好気的に液体培養する。
【0029】酵素を菌体外に生産する微生物、例えばア
ルカリジェネス デニトリフィカンス サブsp. デ
ニトリフィカンス(Alcaligenes denitrificans subsp.
denitrificans) KSF−0901菌株を用いてα−
L−フコシダーゼを生産すると、活性画分を菌体内から
抽出する操作を必要とせず、培養液から酵素を精製でき
るので、工業的生産に適している。
【0030】培養終了後は、前記精製方法によりα−L
−フコシダーゼを分離、精製する。得られたα−L−フ
コシダーゼは中性付近に至適pHを有し、熱に安定で、
しかもp−ニトロフェニル−α−L−フコシド等の合成
基質、オリゴ糖、およびムチン等天然高分子基質に作用
する基質特異性を有しているので、糖鎖の構造解析や機
能の研究に好適に利用できる。
【0031】アルカリジェネス デニトリフィカンス
サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes denitr
ificans subsp. denitrificans) KSF−0901菌
株は次のようにしてスクリーニングすることができる。
炭素源、窒素源等とリン酸塩、カリウム塩等の金属塩類
等およびp−ニトロフェニル−α−L−フコシドを含む
寒天平板上に菌体懸濁液を適量塗布し、37℃で1日〜
4日間培養し、培地中の黄色く発色してくるコロニーを
分離する。
【0032】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳しく説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 次のようにしてアルカリジェネス デニトリフィカンス
サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes deni
trificans subsp. denitrificans) KSF−0901
菌株をスクリーニングした。すなわち、グルコース1
%、ペプトン0.5%、カザミノ酸0.25%、KH 2
PO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.02%、
p−ニトロフェニル−α−L−フコシド0.05%およ
び寒天2%をpH9.0に調整し、平板上に静岡県掛川
市より採取した土壌を滅菌水により希釈し、この土壌懸
濁液を上記培地に広げ37℃で2日間培養を行い、培地
中の黄色く発色しているコロニーを分離した。
【0033】実施例2 実施例1で得たアルカリジェネス デニトリフィカンス
サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes deni
trificans subsp. denitrificans) KSF−090
1、ペプトン0.5重量%、酵母エキス0.25重量
%、リン酸水素二カリウム0.1重量%、および硫酸マ
グネシウム0.02重量%(pH7.2)を含む液体培
地を500ml容器で振とう培養し、種培養とした。次
いで種培養と同組成の培地3 literを5 liter容ジャー
ファーメンター3基に入れ、121℃で20分間殺菌し
た。冷却後、上記の種培養液を接種し、37℃で1日
間、毎分3 literの通気量と毎分300回転の撹拌速度
の条件で培養した。
【0034】培養終了後、最終濃度10mMになるよう
に0.5Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加え、予め1
0mMリン酸緩衝液で平衡化したストリームライン−デ
ィアエカラム(ファルマシア社製、5.0×17cm、
商標)に菌体を含む培養物を通し、吸着した酵素を0.
2M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液で溶出
した。この活性画分を集め、最終濃度が1Mになるよう
に硫安を溶解した。これを1M硫安を含む10mMリン
酸緩衝液で予め平衡化したブチル−トヨパール650M
カラム(東ソー(株)製、2.6×30cm、商標)に
通して吸着させ、1Mないし0Mの硫安を含む10mM
リン酸緩衝液のリニアーグラジェント法で溶出した。
【0035】溶出された活性画分を集め、予め10mM
リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したフコース−セ
ルロファインカラム(1.6×7.5cm)に通し、吸
着した酵素を50mMのL−フコースを含む同緩衝液で
溶出した。活性画分を一晩10mMリン酸緩衝液(pH
7.0)にて透析を行った。この透析内液を、同緩衝液
にて平衡化したFPLC−Mono Qカラム(ファル
マシア社製、商標)に通し、吸着した酵素を0M−0.
3Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液のリ
ニアーグラジェント法で溶出した。
【0036】この時点で得られた酵素は電気泳動的に単
一バンドを与えるが、ポリッシングのため、活性画分を
濃縮後セファクリルS−300HR(ファルマシア社
製、1.6×60cm、商標)でゲル濾過を行い、α−
L−フコシダーゼの精製標品74μg(比活性568u
nits/mg、収率24%)を得た。
【0037】実施例3 実施例2で得たα−L−フコシダーゼの種々の基質に対
する酵素活性を次のようにして測定した。p−ニトロフ
ェニル−α−L−フコシドを基質とした場合は、pH
7.0の100mMリン酸カリウム緩衝液に100μl
の酵素および200μlの基質を加え、50℃で15分
間反応を行った後、グリシン−NaOH緩衝液(pH1
0.0)を加えて反応を停止させ、次に遊離したp−ニ
トロフェノールの量を410nm吸光度で定量した。そ
の他の基質についてはpH7.0の100mMリン酸カ
リウム緩衝液に100μlの酵素および200μlの基
質を加え、50℃で30分間反応を行った後、沸騰浴中
で3分間加熱して反応を停止し、次に遠心し、上澄み液
中の遊離L−フコース量をシュードモナス由来のL−フ
コースデヒドロゲナーゼを用いて定量した。結果は表1
に示した通りである。
【0038】実施例3の結果から、実施例2で得た酵素
はp−ニトロフェニル−α−L−フコシド等の合成基
質;2’−フコシルラクトース、6’−フコシル−N−
アセチルグルコサミン等のオリゴ糖;ムチン等の天然高
分子基質などに作用し、これら基質中のα−1→2結合
またはオリゴ糖鎖中α−1→6結合のフコース残基を加
水分解することが分かる。一方、オリゴ糖鎖中のα−1
→3またはα−1→4フコシル結合には作用しないこと
が分かる。またp−ニトロフェニル−β−L−フコシド
には作用しないことが分かる。
【0039】
【発明の効果】本発明のα−L−フコシダーゼは新規か
つ有用である。本発明のα−L−フコシダーゼは菌体外
に生産されるため、菌体を破砕して活性画分を抽出する
操作を必要せず、このため工業的生産に適している。ま
た、この酵素は中性付近に至適pHを有し、熱に安定
で、しかもp−ニトロフェニル−α−L−フコシド等の
合成基質、オリゴ糖、およびムチン等天然高分子基質に
作用する基質特異性を有しているので、糖鎖の構造解析
や機能の研究に有用である。
【0040】本発明のα−L−フコシダーゼの製造方法
は、アルカリジェネスに属する微生物を用いているの
で、上記α−L−フコシダーゼを容易に製造することが
できる。
【0041】本発明のアルカリジェネス・デニトリフィ
カンス サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligene
s denitrificans subsp. denitrificans) KSF−0
901菌株は新規かつ有用である。この菌株は上記α−
L−フコシダーゼ生産能を有しており、しかも菌体外に
この酵素を生産するので、この菌株を用いることによ
り、α−L−フコシダーゼを容易に製造、精製すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のα−L−フコシダーゼの至適pHを示
すグラフである。
【図2】本発明のα−L−フコシダーゼの安定pHを示
すグラフである。
【図3】本発明のα−L−フコシダーゼの至適温度を示
すグラフである。
【図4】本発明のα−L−フコシダーゼの安定温度を示
すグラフである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の酵素学的性質を有することを特徴と
    するα−L−フコシダーゼ。 作用 天然高分子基質、オリゴ糖および合成基質中のα−L−
    フコシル結合に作用して、L−フコースを遊離する。 基質特異性 合成基質および天然基質中のα−1→2またはα−1→
    6フコシル結合に作用する。一方、天然基質中のα−1
    →3またはα−1→4フコシル結合には作用しない。 至適pHおよび安定pH範囲 至適pHはpH7.0〜8.0である。45℃で1時間
    保持した場合、安定pH範囲は6.0〜9.0である。 反応至適温度および安定温度範囲 反応の至適温度は55℃である。pH7.0で10分間
    保持した場合、50℃までは安定であり、65℃以上で
    失活する。 阻害剤の影響 銅、水銀、パラクロロメルクリ安息香酸により著しく阻
    害される。L−フコースにはほとんど影響を受けない。 分子量 PAGEにより測定した分子量は約102000であ
    る。SDS−PAGEにより測定した分子量は約510
    00である。
  2. 【請求項2】 アルカリジェネス・デニトリフィカンス
    サブsp. デニトリフィカンス(Alcaligenes deni
    trificans subsp. denitrificans) KSF−0901
    菌株由来であることを特徴とする請求項1記載のα−L
    −フコシダーゼ。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のα−L−フコシダーゼ生
    産能を有することを特徴とするアルカリジェネス・デニ
    トリフィカンス サブsp. デニトリフィカンス(Al
    caligenes denitrificans subsp. denitrificans) K
    SF−0901菌株。
  4. 【請求項4】 アルカリジェネス属に属し、α−L−フ
    コシダーゼを生産する能力を有する微生物を培養し、培
    養物からα−L−フコシダーゼを分離することを特徴と
    するα−L−フコシダーゼの製造方法。
  5. 【請求項5】 α−L−フコシダーゼを生産する能力を
    有する微生物が、請求項3記載のアルカリジェネス・デ
    ニトリフィカンス サブsp. デニトリフィカンス
    Alcaligenes denitrificans subsp. denitrificans
    KSF−0901菌株であることを特徴とする請求項
    4記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 培養物が培養液であることを特徴とする
    請求項4または5記載の製造方法。
JP33251293A 1993-12-27 1993-12-27 α−L−フコシダーゼ、その製造方法およびアルカリジェネス・デニトリフィカンス サブsp. デニトリフィカンス KSF−0901菌株 Pending JPH07184647A (ja)

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