JPH07173524A

JPH07173524A - 鋼板の連続焼鈍炉用ハースロール

Info

Publication number: JPH07173524A
Application number: JP5318526A
Authority: JP
Inventors: Akira Tsuyuki; 明露木
Original assignee: Nippon Steel Corp
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 1993-12-17
Filing date: 1993-12-17
Publication date: 1995-07-11

Abstract

(57)【要約】【目的】酸化性又は還元性雰囲気中で使用されるハー
スロールに適用する耐摩耗性と耐ビルドアップ性の良い
ロール基材との密着性に優れ剥離することのないハース
ロールを提供すること。【構成】熱処理炉内に配設され、鋼板を焼鈍し搬送す
るためのロールにおいて、該ロールはフラット部を有す
るロール胴体とテーパー部より構成され、全ロール長さ
の２０〜６０％をフラット部なるロール胴体とし、該フ
ラット部にＺｒＯ ₂，Ｃｒ₂Ｏ₃或いはＡｌ₂Ｏ₃の単
独又は複合酸化物系セラミックス溶射皮膜を付与させた
鋼板の連続焼鈍用ハースロール。【効果】従来ロールに比較してロール寿命延長が図ら
れ、ロール取替周期の延長に伴うライン稼働率向上によ
る生産性の向上及び整備費の削減等が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は熱処理炉内に配設され、
鋼板を焼鈍し搬送するためのハースロールにに関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】一般に熱処理炉内に配設され、鋼板を焼
鈍し搬送するためのハースロールに６００〜１１００℃
の酸化性又は還元性の雰囲気温度で長時間連続して被熱
処理材を焼鈍し、搬送されるために、その表面は摩耗を
受けたり、また被熱処理材の付着酸化物、鉄粉がロール
表面に凝着堆積して、いわゆるビルドアップを形成した
りしている。このような摩耗やビルドアップによる凹凸
がハースロール上に発生すると、被熱処理材である鋼板
を搬送させる間に疵付けられて品質の低下の原因となっ
ている。このような鋼板の品質低下を防止するために、
定期的に操業を中断して熱処理炉内を冷却した後作業者
が炉内に入ってハースロールの表面を研削手入れした
り、ロールそのものを取り替えたりしている。そのため
に、従来からハースロールの材質を高クロム、高ニッケ
ル含有の耐熱合金に改良したり、あるいはロール表面に
ジルコニアやアルミナ等を溶射被覆したりしている。

【０００３】しかし、耐熱合金の改良でも凝着堆積に起
因するビルドアップの発生防止には効果が薄く、またジ
ルコニアやアルミナ等の溶射被覆は高温雰囲気中で強度
が劣化して皮膜自体の剥離が生成するという欠点があ
り、高温耐摩耗性とビルドアップ防止において充分に満
足し得るものとなっていない。そのために特公昭６３−
２６１８３号公報のように、Ｙ₂Ｏ₃４〜２５ｗｔ％，
残部実質的にＺｒＯ₂より成るセラミックス被覆した高
温耐摩耗性とビルドアップ防止をした連続焼鈍炉のハー
スロールが知られている。

【０００４】更には、特開昭６３−１９９８５７号公報
のように、Ａｌ₂Ｏ₃を５１〜９５ｖｏｌ％含み、残部
がＣｏ，Ｎｉ，Ｃｒ，Ｍｏ，Ｆｅ，Ａｌ，Ｙ，Ｓｉ金属
から選ばれた１種又は２種以上よりなる溶射被覆を施し
た、いわゆるサーメット材を被覆した高温耐用性溶射被
覆材や特公昭６０−２３１７１号公報のように、ロール
表面にニッケルクロム合金を溶射し、この外層に炭化ク
ロムを、前記ニッケルクロム合金との合金膜厚が０．０
３〜０．１ｍｍとなるように溶射した連続式熱処理炉用
ハースロールが知られている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来技術である酸化物系セラミックス及びサーメット
層の溶射被覆並びに耐熱性合金の合金皮膜のロールへの
被覆層はいずれもロール表面のフラット部およびテーパ
ー部の全域に付与されているのが実状である。そのため
にロールと板温度に差がある場合、板接触部と非接触
部、特にロール胴体のフラット部とテーパー部の肩部の
境においてロール幅方向に温度差を生じ、熱応力により
セラミックスの溶射被覆に亀裂が生じ、剥離となる。ま
た、フラット部とテーパー部の境部分で板とロールの接
触が不安定になる箇所で板のエッジ部によって皮膜が叩
かれることによって、溶射被覆に亀裂が生じ、剥離とな
る。これらの現象は特に酸化物系セラミックスの場合に
顕著となる。この点サーメット溶射皮膜の場合は亀裂の
問題は解消されるが、しかし皮膜中に金属が存在するた
め、耐ビルドアップ性が劣り、特にロールのフラット部
分にビルドアップによる突起が発生し鋼板に押疵を付与
させるという問題がある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述した問題を解消する
ために、発明者らは鋭意開発を進め、その問題の解明に
当たり、ビルドアップ現象はロール胴部のフラット部分
に選択的に発生することがわかった。一方、溶射皮膜の
亀裂や剥離現象はロール表面がフラット部からテーパー
部の勾配になり始めた直後の、いわゆる肩部外側で発生
するとこがわかり、これらの２つの問題点を解消するた
めに溶射皮膜の最適な付与方法を見出したものである。
すなわち、耐ビルドアップ性に優れるか、靱性のない酸
化物系セラミックス溶射皮膜についてはハースロールの
フラット部のみに付与させ、一方、靱性値が高いか耐ビ
ルドアップ性に劣るサーメット溶射皮膜をロールのテー
パー部分に付与させることで、両者の長所を採用するこ
とにより、酸化性又は還元性雰囲気中で使用されるハー
スロールに適用すべき耐摩耗性と耐ビルドアップ性の良
いロール基体との密着性に優れ剥離することのないハー
スロール用皮膜を提供することにある。

【０００７】その発明の要旨とするところは、（１）熱処理炉内に配設され、鋼板を焼鈍し搬送するた
めのロールにおいて、該ロールはフラット部を有するロ
ール胴体とテーパー部より構成され、全ロール長の２０
〜６０％をフラット部なるロール胴体とし、該フラット
部にＺｒＯ₂，ＣｒＯ₃或いはＡｌ₂Ｏ₃の単独又は複
合酸化物系セラミックス溶射皮膜を付与させたことを特
徴とする鋼板の連続焼鈍炉用ハースロール。（２）（１）記載のロール胴部のフラット部以外のテー
パー部に酸化物あるいは非酸化物系のサーメット皮膜を
溶射により付与したことを特徴とする鋼板の連続焼鈍炉
用ハースロール。（３）（１）記載のロール胴部のフラット部に連続する
テーパー部０〜３０％に酸化物あるいは非酸化物系のサ
ーメット皮膜を溶射により付与したことを特徴とする鋼
板の連続焼鈍炉用ハースロールにある。

【０００８】

【作用】以下本発明について図面に従って詳細に説明す
る。図１は本発明に係る連続焼鈍用ハースロールの正面
断面図である。図１に示すように、連続焼鈍用ハースロ
ール胴体２に鋼板１を巻付けて熱処理炉内に配設され、
鋼板を焼鈍し搬送する場合にロール胴体２のフラット部
３とテーパー部４の変曲点５と鋼板１との接触する境部
分６で鋼板とロールの接触が不安定となる部分である。
この鋼板接触部と非接触部にロール幅方向に温度差を生
じて熱応力によって、例えばセラミックスの溶射皮膜に
亀裂が生じる、いわゆる肩部７に該当する。

【０００９】そこで、本発明においてはセラミックス溶
射をロール胴部のフラット部のみに適用するものであ
る。その場合にフラット部をロール全長さの２０〜６０
％とする。その限定した理由は２０％未満ではフラット
部の長さが過小となり、そのために高温状態で張力が作
用し、鋼板の形状を阻害するためである。すなわち、ロ
ール中央部が鋼板の長さ方向に部分的に伸びる現象によ
って形状を阻害するものである。また、６０％超えると
板幅の狭い鋼板が通過した場合、フラット部の幅が鋼板
幅を上回り、本来の蛇行防止するための調芯機能を発揮
することが出来ないからである。

【００１０】次にフラット部の溶射皮膜材質として、Ｚ
ｒＯ₂，Ｃｒ₂Ｏ₃及びＡｌ₂Ｏ₃のいずれか１種以上
としたのは、これらの材質が界面の自由エネルギーが低
く熱力学的に安定なためで鋼板表面のスケール又は付着
鉄粉との反応が緩慢で耐ピックアップ性に優れているた
めである。更にセラミックス溶射を胴部のフラット部の
みに適用するのは、図１に示すように９０°又は１８０
°巻き付けた状態で使用されるハースロールの幅方向ほ
ぼ均一に張力が作用した鋼板の板とロール表面の接触面
圧の分布によるものである。

【００１１】図２はロール中心からの距離と鋼板の接触
面圧との関係を示す図である。この図よりフラット部と
テーパー部の変曲点から境界部分、いわゆる肩部で鋼板
の接触面圧がピークとなるが、それから外側にずれるに
従って減少する。鋼板は振動や鋼板自身の形状の悪さに
より、肩部の外側、つまり面圧が低下した部分で接触状
態が不安定になり、周期的に接触と非接触を繰り返す。
その際、ロール表面の溶射皮膜に周期的な衝撃力が作用
し、疲労により皮膜に亀裂が生じ、やがては剥離に進展
する。そのため、この衝撃力が作用する部位には皮膜を
付与しないか、また、靱性の優れたサーメットの溶射皮
膜を適用し、セラミックス溶射は面圧が高いピックアッ
プ性が発生するフラット部のみに付与すると言うもので
ある。

【００１２】図３は本発明に係る他の実施例を示すハー
スロールの正面断面図である。図３に示すように、ロー
ル胴体２のフラット部３は酸化物系セラミックスの溶射
皮膜を形成すると共に、テーパー部４にはサーメット系
のセラミックスの溶射皮膜８を形成させると言うもので
ある。前述のようにテーパー部は鋼板との直接接触がな
い個所であることからピックアップ性をあまり考慮する
必要がないからである。従って、テーパー部４にサーメ
ット系のセラミックスの溶射皮膜８を形成させることに
よって、高温耐摩耗性、耐衝撃性をより強化しようとす
るものである。

【００１３】また、第３の発明はロール胴体のフラット
部に連続する変曲点からの、いわゆる肩部を強化するた
めにフラット部に連続するテーパー部の０〜３０％に酸
化物あるいは非酸化物系のサーメット皮膜を溶射するこ
とにより、耐衝撃性及び高温耐摩耗性の向上を図るもの
である。

【００１４】

【実施例】

実施例１連続焼鈍炉内に配設され、鋼板を焼鈍し搬送するために
使用するハースロールであって、このハースロール幅２
１００ｍｍで、中央部を中心に長さ１０００ｍｍのフラ
ット部を設けた。鋼板の接触長さＬ＝１１２０ｍｍ、こ
の接触長さのフラット部のみに、ＺｒＯ₂およびＡｌ₂
Ｏ₃の複合酸化物系セラミックスの溶射皮膜を被覆し
た。その結果、３年間使用した後いずれもセラミックス
溶射皮膜部分にピックアップ性の発生は殆ど無く、テー
パー部の肩部近傍の亀裂及び剥離は見られなかった。

【００１５】実施例２連続焼鈍炉内に配設され、鋼板を焼鈍し搬送するために
使用するハースロールであって、このハースロール幅２
１００ｍｍで、中央部を中心に長さ１０００ｍｍのフラ
ット部を設けた。鋼板の接触長さＬ＝１１２０ｍｍ、こ
の接触長さのフラット部にＺｒＯ₂系の溶射皮膜を付与
し、その他のテーパー部にはＣｏＣｒＮｉＡｌＹなる合
金溶射皮膜を被覆した。また溶融亜鉛めっきラインでの
熱処理炉に使用するロールにあっては、テーパー部には
酸化物系サーメット材を溶射被覆した。その結果、３年
間使用した後いずれもセラミックス溶射皮膜部分にピッ
クアップの発生は殆ど無く、テーパー部の肩部近傍の亀
裂及び剥離は見られなかった。

【００１６】

【発明の効果】以上述べたように、従来ロールのフラッ
ト部とテーパー部の全域にセラミックス溶射皮膜を付与
した場合の皮膜寿命の１．５年に対して、本発明に係る
ロールは３年使用しても皮膜に何らの亀裂をも生ずるこ
となくロール寿命延長を図ることが出来ると共に、従来
に比較してセラミックス溶射部の面積の低減により、溶
射コストの削減が可能となり、しかもライン休止時のロ
ール取替本数の低減により、休止時間の削減に伴うライ
ン稼働率向上による生産性の向上及び整備費の削減並び
にロール取替えの危険作業の排除等工業上極めて優れた
効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る連続焼鈍用ハースロールの正面断
面図、

【図２】ロール中心からの距離と鋼板の接触面圧との関
係を示す図、

【図３】本発明に係る他の実施例を示すハースロールの
正面断面図である。

【符号の説明】

１鋼板２ロール胴体３フラット部４テーパー部５変曲点６境部分７肩部８サーメット系セラミックスの溶射皮膜

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】熱処理炉内に配設され、鋼板を焼鈍し搬
送するためのロールにおいて、該ロールはフラット部を
有するロール胴体とテーパー部より構成され、全ロール
長の２０〜６０％をフラット部なるロール胴体とし、該
フラット部にＺｒＯ₂，Ｃｒ₂Ｏ₃或いはＡｌ₂Ｏ₃の
単独又は複合酸化物系セラミックス溶射皮膜を付与させ
たことを特徴とする鋼板の連続焼鈍炉用ハースロール。
【請求項２】請求項１記載のロール胴部のフラット部
以外のテーパー部に酸化物あるいは非酸化物系のサーメ
ット皮膜を溶射により付与したことを特徴とする鋼板の
連続焼鈍炉用ハースロール。
【請求項３】請求項１記載のロール胴部のフラット部
に連続するテーパー部０〜３０％に酸化物あるいは非酸
化物系のサーメット皮膜を溶射により付与したことを特
徴とする鋼板の連続焼鈍炉用ハースロール。