JPH07173318A - 抗菌性熱可塑性樹脂発泡体 - Google Patents

抗菌性熱可塑性樹脂発泡体

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JPH07173318A
JPH07173318A JP32204493A JP32204493A JPH07173318A JP H07173318 A JPH07173318 A JP H07173318A JP 32204493 A JP32204493 A JP 32204493A JP 32204493 A JP32204493 A JP 32204493A JP H07173318 A JPH07173318 A JP H07173318A
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JP
Japan
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antibacterial
particles
thermoplastic resin
foam
resin
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Application number
JP32204493A
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English (en)
Inventor
Mitsuyuki Hashizume
光行 橋詰
Tatsuya Saeki
達哉 佐伯
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Sekisui Kasei Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Plastics Co Ltd
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Publication date
Application filed by Sekisui Plastics Co Ltd filed Critical Sekisui Plastics Co Ltd
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  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 抗菌性を有する銀イオンを吸着した非晶質リ
ン酸カルシウム粒子からなる抗菌性粒子7と、熱可塑性
樹脂とが押し出し発泡成形により得られたものである抗
菌性熱可塑性樹脂発泡体。 【効果】 非晶質リン酸カルシウムを用いることによっ
て、菌を吸着することができて抗菌性を向上でき、さら
に、銀イオンの溶出が回避される。これらのことから、
高い安全性と高い抗菌性を長期間維持でき、かつ、抗菌
性粒子7の添加による成形したときの変色を回避でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、雑菌が増殖し易い魚箱
や、浴槽等に使用される抗菌性熱可塑性樹脂発泡体に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、熱可塑性樹脂の高分子発泡体
に抗菌性を付与したものは広く知られており、例えば特
開平4−142340号公報には、銀、銅および亜鉛な
どの抗菌性金属をリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、
珪酸カルシウムおよびハイドロキシアパタイトなどの抗
菌性カルシウム系セラミックスを焼成し、その焼成物を
含有する抗菌および防カビ性を有する高分子発泡体が開
示されている。上記高分子発泡体は、抗菌性カルシウム
系セラミックスを高温で焼成することにより金属イオン
の溶出が抑制されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、抗菌性金属
を担持した抗菌性カルシウム系セラミックスである抗菌
性アパタイトの焼成物を使用した、抗菌性を有する高分
子発泡体の場合では、樹脂との混練に際して樹脂等が黄
色などの色に変色または着色するという問題が生じてい
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
抗菌性熱可塑性樹脂発泡体は、以上の課題を解決するた
めに、抗菌性金属イオンを吸着した非晶質リン酸カルシ
ウム粒子からなる抗菌性粒子と、熱可塑性樹脂とが押し
出し成形されて得られたものであることを特徴としてい
る。
【0005】本発明の請求項2記載の抗菌性熱可塑性樹
脂発泡体は、以上の課題を解決するために、抗菌性金属
イオンを吸着した非晶質リン酸カルシウム粒子からなる
抗菌性粒子を有する塗膜層が、熱可塑性樹脂発泡体の表
面に形成されていることを特徴としている。
【0006】本発明の請求項3記載の抗菌性熱可塑性樹
脂発泡体は、以上の課題を解決するために、抗菌性金属
イオンを吸着した非晶質リン酸カルシウム粒子からなる
抗菌性粒子を有するフィルムが、熱可塑性樹脂発泡体に
積層されていることを特徴としている。
【0007】本発明の請求項4記載の抗菌性熱可塑性樹
脂発泡体は、以上の課題を解決するために、請求項1、
2または3記載の抗菌性熱可塑性樹脂発泡体において、
抗菌性粒子は、非晶質リン酸カルシウム粒子を含むスラ
リーと、抗菌性金属イオンとが混合され、造粒化された
ものであることを特徴としている。
【0008】上記抗菌性熱可塑性樹脂発泡体は、抗菌性
粒子と、発泡剤を含む発泡性熱可塑性樹脂と、および均
一に発泡させるための核剤とから主としてなり、前記発
泡性熱可塑性樹脂の総重量に対して、抗菌性粒子を0.01
〜10重量%、発泡剤を5〜15重量%および核剤を 0.1〜
5重量%の範囲内で配合し、それら配合物を、押し出し
成形により発泡成形したものである。
【0009】上記抗菌性粒子は、非晶質リン酸カルシウ
ム(Amorphous Calcium Phosphate:以下、ACPと略
す)粒子を含むスラリーと抗菌性金属イオンとを混合す
ることにより、抗菌性金属イオンを吸着担持したACP
粒子であって、上記抗菌性金属イオンにより、微生物の
増殖を抑制するものである。以下に、その詳細を述べ
る。
【0010】上記ACP粒子を含むスラリーは、攪拌下
の水酸化カルシウム懸濁液に、中性あるいは弱アルカリ
性の水溶性高分子分散剤、例えば、弱アルカリ性のトリ
アクリル酸アンモニウム塩を 0.1〜10重量%添加し、好
ましくは 0.1〜3重量%添加して混合溶液を得た後、攪
拌下の上記混合溶液をリン酸水溶液の滴下によってpH
10〜5に調整することにより、粒径約0.1μm以下のA
CP粒子を含むものである。上記スラリーでは、前記の
水溶性高分子分散剤の添加によってACP粒子の凝集を
回避して上記ACP粒子を粒径約0.1μm以下とするこ
とができる。
【0011】上記ACP粒子は、粉末X線回折法によ
り、そのパターンからリン酸カルシウム〔Ca3(PO4)2
nH2O〕であり、また、そのパターンがブロードであるこ
とから、非晶質なリン酸カルシウムであることが確認さ
れる。その上、上記ACP粒子は、結晶水を含むことか
ら静電気的に活性な物質であると思われ、種々の菌体や
ウイルス、分子内で分極しているカルボン酸基等のよう
な親水性基等とを吸着し易くなっていると想定される。
【0012】上記スラリー中に、50重量%以下となるよ
うに抗菌性金属粉末、抗菌性金属化合物、あるいはそれ
らの水溶液を添加してスラリー溶液を得る。このような
スラリー溶液では、ACP粒子におけるイオン交換可能
な金属イオンが抗菌性金属イオンに置換されている。
【0013】このようなスラリー溶液を乾燥して、抗菌
性金属イオンを吸着担持したACP粒子からなる抗菌性
粒子を得る。なお、上記抗菌性粒子を造粒化してもよ
い。この場合、上記スラリー溶液を噴霧乾燥造粒法など
により造粒すればよい。
【0014】また、得られた抗菌性粒子が大きな比表面
積をそなえるために、スラリーのACP粒子は、その粒
径が 0.1μm以下であることが好ましい。また、加える
抗菌性金属粉末および抗菌性金属化合物粉末の粒径は20
μm以下であることが溶解性の点から望ましい。その
上、スラリーと加える抗菌性金属粉末、抗菌性金属化合
物粉末あるいは抗菌性金属水溶液とは室温中で混合する
ことが望ましい。
【0015】一方、スラリーにおけるACP粒子が90重
量%以上となると、スラリーの粘度が高くなるので、造
粒に不適となる。なお、スラリーにおけるACP粒子の
含量を1〜90重量%の範囲で変えることにより、所望の
平均粒径を有する、造粒化された抗菌性粒子を得ること
ができる。
【0016】また、造粒法としては、得られる粒子が、
粒径 200μm以下の略球状で、かつ、比表面積を10m2/g
以上にできる多孔質のものであれば、特に限定されるも
のではないが、噴霧乾燥造粒法の他に、例えばフリーズ
ドライ後に粉砕してなる造粒法、また、高速攪拌型造粒
法を用いてもよい。
【0017】抗菌性金属としては、金、銀、亜鉛、銅、
錫、鉛、砒素、白金、鉄、アンチモン、ニッケル、アル
ミニウム、バリウム、カドミウム、マンガンから少なく
とも一種の金属、またはそれらの混合物、あるいはそれ
らの金属化合物、およびそれらの水溶液を用いることが
できる。
【0018】次に、抗菌性粒子を有する抗菌性熱可塑性
樹脂発泡体について詳細に説明する。本発明に用いられ
ている熱可塑性樹脂としては、通常の押し出し発泡成形
に用いられるものであれば特に限定されないが、例え
ば、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体
等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン
系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびABS樹脂などが使
用でき、中でもポリスチレン系樹脂およびポリオレフィ
ン系樹脂が好適に使用される。
【0019】上記の熱可塑性樹脂に抗菌性粒子を配合す
る方法としては、直接ロール、バンバリー、ニーダー、
押出機等の混練機で溶融混練する方法、また、あらかじ
めヘンシェル型ミキサー等で熱可塑性樹脂の粉体と混合
した後、前述の混練機等で溶融混練する方法、あるい
は、抗菌性粒子の含有量が高濃度の熱可塑性樹脂による
マスターバッチペレットを作り、そのマスターバッチペ
レットを熱可塑性樹脂との混練により希釈する方法な
ど、公知の方法を用いることができる。
【0020】より均一な分散を可能とするための抗菌性
粒子のマスターバッチ化は、上記で分かるように、熱可
塑性樹脂の総重量に対して抗菌性粒子を5〜20重量%、
分散剤を0.05〜 0.1重量%を添加して混練すればでき
る。
【0021】本発明に用いられる核剤は、微細なセルを
発泡体内に作るために添加する。そしてこの核剤はタル
ク、炭酸水素ナトリウム、クレー、クエン酸および炭酸
カルシウム等が挙げられる。一般的には核剤として粒子
が微細なものを用いるほど、微細で且つ均一なセルがで
きる。このことから、抗菌性粒子は、タルク等と同じ無
機物であり、造粒体を用いた場合においても、粒子が
(1μm〜30μm)と微細であるため、核剤として兼用
することができる。これにより、添加する核剤の使用量
を軽減できる。
【0022】次に上記抗菌性粒子を有する熱可塑性樹脂
発泡体の製造方法について述べる。熱可塑性樹脂とし
て、例えば、ポリスチレンGP-PS でMI=1.5〜24.0の範囲
のもの、好ましくはMI=2.0〜3.5 の範囲のものの総重量
に対して、抗菌性粒子を0.1〜10重量%、好ましくは0.8
〜5重量%、また、核剤を0.5 〜5重量%、好ましく
は0.5 〜1重量%を添加して混合機でミキシングを約1
分〜1.5 分間ドライブレンドし、押出機のホッパーに投
入する。
【0023】押し出し発泡成形のための押出機には大別
して単段スクリュー型押出機とタンデム型押出機があり
そのいずれでも良い。以下、タンデム型押出機を用い、
例えばシート状の成形体を得る場合について説明する。
【0024】押出機ホッパーに投入された抗菌性粒子混
合原料(以下混合原料と略す)をまず押出機のフィード
ゾーンで一定の比率で押出機のスクリューに食い込まれ
送り出される。
【0025】押出機のメルトゾーンで前記混合原料を加
熱およびスクリューの混練で十分に溶融させ、抗菌性粒
子および核剤を均一にスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂
の中に分散させる。次に、発泡剤を注入し易いように押
出機の注入口より発泡剤を注入する。
【0026】そして、スクリーンゾーン、短管ゾーンを
介してNo.2押出機の冷却ゾーンに前記混合原料を送り、
該冷却ゾーンで熱可塑性樹脂と発泡剤、抗菌性粒子およ
び核剤とを良く混練し、熱可塑性樹脂の粘度が必要粘度
になるまで十分冷却する。しかる後、熱可塑性樹脂を必
要粘度まで冷却した混合原料をダイスのリップ口より低
圧帯域(大気圧)中に押し出し発泡させる。
【0027】該リップ口より発泡した発泡体をリップ出
口付近でブロア冷却、すなわち、冷たい空気を吹き付
け、該発泡体をブローまたは冷却しながらマンドレルに
かぶせ内側を冷却する。
【0028】冷却した該発泡体は、円筒体であるからマ
ンドレルを通して上下にセンターでカットしてシート状
の2枚の発泡シート体を得た後、上記各発泡シート体を
それぞれ引き取り機で引き取り、各巻き取り機でコイル
状に巻き付ける。この時、押し出し回転数(押し出し
量)と引き取りスピードで抗菌性粒子を有する熱可塑性
樹脂発泡体である上記各発泡シート体の厚みを設定する
ことができる。なお、上記の熱可塑性樹脂の成形の際の
形状としては、シート状の他に板状のものを得ることも
できる。
【0029】
【実施例】本発明の各実施例について図1ないし図4に
基づいて説明すれば、以下の通りである。抗菌性熱可塑
性樹脂発泡体は、図1に示すように、抗菌性金属イオン
としての銀イオンを吸着した非晶質リン酸カルシウム
(Amorphous Calcium Phosphate :以下、ACPと略
す)粒子からなる抗菌性粒子7を有するものである。
【0030】上記抗菌性粒子7は、ACP粒子を含むス
ラリーと、抗菌性金属イオンとしての銀イオンとを混合
し、造粒化してなるものである。まず、上記スラリーの
製造方法について説明すると、攪拌下の水酸化カルシウ
ム懸濁液に、弱アルカリ性で水溶性の高分子分散剤とし
てのトリアクリル酸アンモニウム塩を 0.5重量%添加し
て混合溶液を得た後、攪拌下の上記混合溶液をリン酸水
溶液の滴下によってpH10に調整することにより、粒径
約0.1μm以下のACP粒子を含むスラリーを得た。
【0031】上記スラリーをイオン交換水により希釈し
て、ACPの濃度が20重量%となるように調製したAC
Pスラリーを得た。そのACPスラリーに、イオン交換
水に溶解した無水硝酸銀を、所定濃度、例えば0.5 mol
%となるようにそれぞれ混合し、攪拌モータで1時間攪
拌して混合物スラリーを得た。なお、銀イオンの添加量
としては 0.1〜10 mol%の範囲内である。また、上記 m
ol%の表示を重量%の表示に変換するには換算係数1.07
をかければよい。
【0032】上記各混合物スラリーは、前記の高分子分
散剤の添加によってACP粒子の凝集を回避しながら、
ACP粒子におけるイオン交換可能な金属イオンが、銀
イオンにほぼ完全に置換されて、銀イオンを各含有量に
て吸着し、粒径約0.1μm以下となるACP粒子を含む
ものである。
【0033】次に、上記混合物スラリーから造粒によっ
て抗菌性粒子を調製する方法について説明すると、ま
ず、図2に示すように、ACP粒子1および銀イオン2
を含む上記混合物スラリー3を、定量ポンプ4によりス
プレードライヤー(大川原化工機社製、 L−8 )5に供
給した。
【0034】その後、スプレードライヤー5のアトマイ
ザー6を高速回転させて、上記混合物スラリー3を、ス
プレードライヤー5内の乾燥用の熱空気流中に上記アト
マイザー6によって噴霧することにより、噴霧造粒法に
より造粒乾燥した。
【0035】造粒乾燥により得られた銀イオン含有AC
P粒子である略球状の抗菌性粒子7は、粒径1〜100 μ
mのものがサイクロン8によって採取された。このと
き、サイクロン8により採取しきれない超微粉体はバグ
フィルター(図示せず)により別に採取された。
【0036】なお、上記噴霧乾燥造粒における操作条件
は次の通りであった。定量ポンプ4による原料としての
混合物スラリー3の供給量は1〜3kg/hr であり、エア
フィルター9を介して電気ヒーター10によって加温さ
れた熱空気の温度は、熱ガス室11の入口温度が 200〜
250℃に、サイクロン8に繋がる排出孔12における出
口温度が 100℃を常に越えるように制御され、また、ア
トマイザー6の回転数は 10000〜37000rpmの範囲内に設
定された。
【0037】また、上記スプレードライヤー5をよりス
ケールアップした2種のスプレードライヤー(大川原化
工機社製 FOC-20,OD-25G、FOC-25,OC-25) を用いて、ス
ラリー供給量を100kg/hrとし、他の条件は上記と同様に
抗菌性粒子を調製したところ、上記スプレードライヤー
5による抗菌性粒子7と同様の抗菌性粒子が得られた。
このようにして得られた抗菌性粒子は真球状であった。
【0038】このような抗菌性粒子7は、ACPが分解
し始める1250℃程度までの加熱に耐える耐熱性を有して
いるが、上記抗菌性粒子7への加熱条件では、用いたA
CPが非晶質を維持できる 800℃までが望ましい。これ
により、ACPが非晶質の状態を維持できて、後述する
ように、上記抗菌性粒子7が優れた抗菌性を発揮するた
めの菌吸着能を維持できる。
【0039】次に、0.5mol%、0.7mol%の銀イオンを含
有する各抗菌性粒子7の抗菌力をそれぞれ測定した。比
較例1として市販品の抗菌性アパタイト粒子(銀イオン
含有量2重量%のもの)を用いた。
【0040】試験方法 1.菌液の調製 寒天培地で37℃、18時間培養した試験菌体をリン酸緩衝
液(1/15M、pH 7.2)に浮遊させ108 cells/mlの懸濁
液である原液を調整し、その原液を適宜希釈して試験に
用いた。
【0041】2.抗菌性試験(シェークフラスコ法) 各抗菌性粒子7および抗菌性アパタイト粒子を試料とし
て 0.1gそれぞれ秤量し、上記リン酸緩衝液 100mlの入
った 200ml三角フラスコに入れ、これに、試験菌懸濁液
を約105 cells/mlになるように加えた後、この三角フラ
スコを25℃±5℃に保ちながら振とうし、経時的に上記
三角フラスコ内の生菌数(1ml当りの菌数)を測定し
た。使用菌株は次の通り。
【0042】使用菌株 Escherichia coli(大腸菌) IFO-12
734 Staphylococcus aureus (黄色ブドウ状球菌) IFO-12
732 Psedomonas aeruginosa (緑膿菌) IFO-12
689 Candida albicans(カンジダ) IFO-10
60 使用培地 細菌:Mueller Hinton 2 (BBL) 真菌:ポテトデキストロース寒天培地(栄研) 上記の測定結果を表1〜4に示した。なお、上記各表で
は、0.5mol%の銀イオンを含有する抗菌性粒子7を試料
No.1とし、0.7mol%の銀イオンを含有する抗菌性粒子7
を試料No.2として示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】このように上記抗菌性粒子7は、従来の抗
菌性粒子として市販されている前記抗菌性アパタイト粒
子に対して、銀イオンの含有量が約1/4であっても、
上記抗菌性アパタイト粒子より抗菌性が大きいことが示
された。これは、上記抗菌性粒子7が粒径 0.1μm以下
のACP粒子1からなる造粒体であるから、菌と接触し
得る面積である比表面積が大きく、その上、基材として
用いたACP粒子1が高い菌吸着能(朝日新聞、1993年
1月16日付け夕刊、参照)を有するためと想定される。
【0048】次に、銀イオンを0.5mol%含有し、平均粒
径30μmの上記抗菌性粒子7を用いた抗菌性熱可塑性樹
脂発泡体の各実施例について図1、図3および図4に基
づいて説明する。 〔実施例1〕本発明の一実施例であり、ポリスチレン樹
脂からなる熱可塑性樹脂発泡体内に抗菌性粒子7が含有
された抗菌性熱可塑性樹脂発泡体を実施例1として説明
する。まず、ポリスチレン樹脂GP−PS(MI=11.
0)と、そのポリスチレン樹脂の総重量に対して20重量
%の上記抗菌性粒子7とをタンブラーで混合し、押出機
のホッパーより投入し、 240℃に加熱して溶融混合し
た。次いで、前記溶融混合物をノズルより押出し、水冷
した後切断することにより、マスターバッチとしての径
2mm、長さ2mmの練り混みペレットを作成した。
【0049】次に、このペレット25重量部とポリスチレ
ン樹脂(MI=11.0)75重量部を混合し、押出機のホッ
パーより投入し、 220℃に加熱して溶融混合するととも
に、シリンダーに設けた発泡剤注入口より発泡剤として
のブタンを圧入し、前記溶融樹脂と混合した。
【0050】次いで、前記押出機内で 160℃に冷却し、
先端に取り付けたサーキュラー金型(口径 100mm、リッ
プ間隙 0.7)から大気中に押し出し発泡させ、径 410mm
マンドレルにてシート状にして引き取り、図1に示すよ
うに、上記抗菌性粒子7を5重量%、内部に均一に分散
して含有するシート状の抗菌性発泡体15を抗菌性熱可
塑性樹脂発泡体として得た。なお、上記抗菌性発泡体1
5の発泡倍率は25〜30倍であった。
【0051】〔実施例2〕本発明の他の実施例であり、
ポリエチレン樹脂からなる熱可塑性樹脂発泡体内に上記
抗菌性粒子7が含有された抗菌性熱可塑性樹脂発泡体を
実施例2として説明する。まず、低密度ポリエチレン樹
脂LDPE(MI= 7.0)と、そのポリエチレン樹
脂の総重量に対して20重量%の上記抗菌性粒子とをタン
ブラーで混合し、押出機のホッパーより投入し、 220℃
に加熱して溶融混合した。次いで、前記溶融混合物をノ
ズルより押出し、水冷した後切断することにより、マス
ターバッチとしての径2mm、長さ2mmの練り混みペレッ
トを作成した。
【0052】次に、このペレット25重量部とポリエチレ
ン樹脂(MI= 7.0)75重量部を混合し、押出機のホッ
パーより投入し、 200℃に加熱して溶融混合するととも
に、シリンダーに設けた発泡剤注入口より発泡剤として
のブタンを圧入し、前記溶融樹脂と混合した。
【0053】次いで、前記押出機内で 160℃に冷却し、
先端に取り付けたサーキュラー金型(口径 100mm、リッ
プ間隙 0.7)から大気中に押出し発泡させ、径 410mmマ
ンドレルにてシート状にして引き取り、上記抗菌性粒子
7を5重量%含有するシート状の抗菌性発泡体15を抗
菌性熱可塑性樹脂発泡体として得た。なお、上記抗菌性
発泡体15の発泡倍率は25〜30倍であった。
【0054】このような上記実施例1、2における抗菌
性発泡体15では、抗菌性粒子7が造粒化によって略球
状であるから、混合性がよく均一に分散されて、抗菌性
粒子7の偏在による抗菌性の低下を回避できる。
【0055】また、上記抗菌性発泡体15は、押し出し
成形による熱可塑性樹脂発泡体であるから、外部と連通
した連続気泡や独立気泡である気泡15aを備えており
また、各気泡15a…間の樹脂セルの厚みが薄くな
り、その樹脂セルの表面に抗菌性粒子7の一部を露出さ
せることができる。
【0056】すなわち、親水性となる抗菌性粒子7(平
均粒径30μm)と、疎水性となるポリスチレン樹脂およ
びポリエチレン樹脂との間に親和性が少なく、上記両者
は混合されたとき相互に濡れない状態となる。
【0057】このことから、押し出し成形時において発
泡剤としてのブタンが基体となって膨張して気泡15a
を形成するとき、上記気泡15a…間に形成される樹脂
セルにおける抗菌性粒子7に面する両表面側が特に薄く
なり、上記両表面側の少なくとも一方が表面張力により
略円形状に開口して、上記抗菌性粒子7を樹脂セルの両
表面側の少なくとも一方に露出させることができる。
【0058】なお、このように一部が露出した抗菌性粒
子7は、冷却された後に若干元に復元する樹脂セルによ
り弾性的に保持されるので、上記樹脂セルから外れるこ
とが防止されている。また、上記気泡15aの形成の
際、抗菌性粒子7とポリスチレン樹脂やポリエチレン樹
脂との間の摩擦抵抗が小さいので、押し出し成形時の気
泡15a…間の樹脂セルの延伸によって上記抗菌性粒子
7が潰れることは抑制されている。
【0059】このように抗菌性粒子7を有することによ
り、前記抗菌性発泡体15は、各気泡15a内に侵入し
た水に対しても抗菌性を発揮できて、例えば、上記抗菌
性発泡体15が、鮮魚等のドリップを吸水しても、上記
ドリップにおける雑菌の増殖を防止できる。したがっ
て、上記抗菌性発泡体15は、異臭の発生や腐敗を回避
できて、上記鮮魚等の鮮度をより長期間にわたって維持
することが可能となる。
【0060】〔実施例3〕本発明のさらに他の実施例で
あり、ポリスチレン樹脂からなる熱可塑性樹脂発泡体の
表面に上記抗菌性粒子7を含有した樹脂フィルム層が形
成された抗菌性熱可塑性樹脂発泡体を実施例3として説
明する。
【0061】まず、ポリスチレン樹脂GP−PS(MI
=11.0)ペレットを押出機のホッパーより投入し、 220
℃に加熱して溶融混合するとともに、シリンダーに設け
た発泡剤注入口より発泡剤としてのブタンを圧入し、前
記溶融樹脂等と混合した。
【0062】次いで、前記押出機内で 160℃に冷却し、
先端に取り付けたサーキュラー金型(口径 100mm、リッ
プ間隙 0.7)から大気中に押出し発泡させ、径 410mmマ
ンドレルにてシート状にして引き取り、図3に示すよう
に、ポリスチレン樹脂からなり、連続気孔を有する高分
子発泡体16を得た。なお、上記高分子発泡体16の発
泡倍率は25〜30倍であった。
【0063】次に、抗菌性粒子7を含有した樹脂フィル
ムについて説明すると、ポリスチレン樹脂GP−PS
(MI=11.0)と、そのポリスチレン樹脂の総重量に対
して20重量%の上記抗菌性粒子とをタンブラーで混合
し、押出機のホッパーより投入し、 240℃に加熱して溶
融混合した。次いで、前記溶融混合物をノズルより押出
し、水冷した後切断することにより、マスターバッチと
しての径2mm、長さ2mmの練り混みペレットを作成し
た。
【0064】このペレット25重量部とポリスチレン樹脂
GP−PS(MI=11.0)75重量部とを単軸押出機で溶
融混練し、Tダイ成形機で押し出して、抗菌性粒子7を
含有する厚さ 100μmの樹脂フィルムを作成し、これを
一軸方向に延伸して引き取り、厚さ30μmの上記抗菌性
粒子7を5重量%含有する樹脂フィルム17を得た。
【0065】前記高分子発泡体16と抗菌性粒子7を含
有する樹脂フィルム17とを、例えば特公昭61−22
634号公報における第1図に示すようなラミネート装
置により加熱融着することにより、高分子発泡体16の
表面に樹脂フィルム17が積層された抗菌性熱可塑性樹
脂発泡体を得た。
【0066】このような上記樹脂フィルム17の表面で
は、延伸によって抗菌性粒子7の一部を露出させること
ができる。つまり、抗菌性粒子7(平均粒径30μm)と
ポリスチレン樹脂との間に親和性が少なく、上記両者は
混合されたとき相互に濡れない状態となる。
【0067】このことから、 100μmの樹脂フィルムが
延伸されたときに、上記樹脂フィルムにおける抗菌性粒
子7に面する表裏面側が特に薄くなり、上記表裏面の少
なくとも一方が、表面張力により略円形状に開口して上
記抗菌性粒子7を表裏面の少なくとも一方に露出させる
ことができる。
【0068】なお、このように一部が露出した抗菌性粒
子7は、延伸した後に若干復元される樹脂フィルム17
により弾性的に保持されるので、上記樹脂フィルム17
から外れることが防止されている。また、上記延伸の
際、抗菌性粒子7とポリスチレン樹脂との間の摩擦抵抗
が小さいので、延伸によって上記抗菌性粒子7が潰れる
ことは抑制されている。
【0069】〔実施例4〕本発明のさらに他の実施例で
あり、ポリスチレン樹脂からなる熱可塑性樹脂発泡体の
表面に上記抗菌性粒子7を含有した塗膜層が形成された
抗菌性熱可塑性樹脂発泡体を実施例4として説明する。
【0070】上記実施例1における抗菌性粒子を省いた
ことの他は、全く同様にして、図4に示すように、ボリ
スチレン樹脂からなる高分子発泡体19を得た。なお、
上記高分子発泡体19の発泡倍率は25〜30倍であった。
【0071】次に、上記抗菌性粒子を含有したウレタン
系樹脂バインダーを、前記高分子発泡体19の表面に塗
布して塗布膜を形成し、その塗布膜を硬化させることに
より、抗菌性粒子7を表面に露出させた塗布層18が表
面に形成された高分子発泡体19からなる抗菌性熱可塑
性樹脂発泡体を得た。
【0072】このような上記塗布層18の表面では、硬
化によって抗菌性粒子7の一部を露出させることができ
る。すなわち、抗菌性粒子7(平均粒径30μm)とウレ
タン系樹脂バインダーとの間に親和性が少なく、上記両
者は混合されたとき相互に濡れない状態となる。
【0073】このことから、ウレタン系樹脂バインダー
が塗布されて塗布膜が形成され、上記塗布膜が硬化した
ときに、上記塗布膜における抗菌性粒子7に面する表面
側が特に薄くなり、上記表面側が表面張力により略円形
状に開口して上記抗菌性粒子7を表面に露出させること
ができる。
【0074】次に、上記各実施例1〜4にて得られた各
抗菌性熱可塑性樹脂発泡体の特性を説明するための比較
例2、3の調製について説明する。 〔比較例2〕ポリスチレン樹脂GP−PS(MI=11.
0)ペレットを押出機のホッパーより投入し、 220℃に
加熱して溶融混合するとともに、シリンダーに設けた発
泡剤注入口より発泡剤としてのブタンを圧入し、前記溶
融樹脂等と混合した。次いで、前記押出機内で 160℃に
冷却し、先端に取り付けたサーキュラー金型(口径 100
mm、リップ間隙 0.7)から大気中に押出し発泡させ、径
410mmマンドレルにてシート状にして引き取り、ポリス
チレン樹脂製の熱可塑性樹脂発泡体を比較例2として得
た。
【0075】〔比較例3〕ポリスチレン樹脂GP−PS
(MI=11.0)およびポリスチレン樹脂の総重量に対し
て20重量%の市販品アパタイト複合粒子(銀イオン含有
量2重量%のもの)をタンブラーで混合し、押出機のホ
ッパーより投入し、 240℃に加熱して溶融混合した。次
いで、前記溶融混合物をノズルより押し出し、水冷した
後切断することにより、マスターバッチとしての径2m
m、長さ2mmの練り混みペレットを作成した。
【0076】次に、このペレット25重量部とポリスチレ
ン樹脂(MI=11.0)75重量部を混合し、押出機のホッ
パーより投入し、 220℃に加熱して溶融混合するととも
に、シリンダーに設けた発泡剤注入口より発泡剤として
のブタンを圧入し、前記溶融樹脂等と混合した。次い
で、前記押出機内で 160℃に冷却し、先端に取り付けた
サーキュラー金型(口径 100mm、リップ間隙 0.7)から
大気中に押出し発泡させ、径 410mmマンドレルにてシー
ト状にして引き取り、市販品アパタイト複合粒子を5重
量%含有する抗菌性熱可塑性樹脂発泡体を比較例3とし
て得た。
【0077】ところで、従来、抗菌性カルシウム系セラ
ミックスの焼成物からなる上記抗菌性アパタイトは、焼
結後粉砕により得られたものであるため不定型となり、
樹脂組成物に混合したときに、均一な分散が困難であっ
た。しかしながら、上記抗菌性粒子7は真球状であるか
ら、ポリスチレン樹脂やポリエチレン樹脂への混練にお
いても、均一な分散が容易に可能となる。
【0078】次に、上記各実施例1〜4と比較例2、3
で得られた各熱可塑性樹脂発泡体について、目視にて色
の変化を調べた。上記各熱可塑性樹脂発泡体の調製では
共に白色原料を用いたが、各実施例1〜4および比較例
2の熱可塑性樹脂発泡体では白色であったのに対し、比
較例3の熱可塑性樹脂発泡体では黄色に変色していた。
これにより、市販の抗菌性アパタイト粒子を用いた比較
例3の熱可塑性樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂発泡体を作
製するときの加熱条件等により変色したことが判る。
【0079】次に、上記各実施例1〜3および比較例
2、3で得られた熱可塑性樹脂発泡体について抗菌試験
をそれぞれ行った。
【0080】抗菌試験方法 1)試験菌株 Escherichia coli(大腸菌) IFO 33
01 Staphylococcus aureus (黄色ブドウ状球菌) IFO 12
732 2)試験菌液の調製 上記各試験菌株をNutrient Broth(Difco) で37℃、18時
間、振とう培養した後、滅菌水で希釈して菌数が約105
cells/mlになるように調整した。
【0081】3)試験操作 上記各実施例1〜3および比較例2、3の各発泡体を約
5cm×5cm× 0.2cmの大きさにそれぞれ切り取り、各試
験検体とした。これら試験検体を滅菌ポリエチレン袋
(約 6.5cm× 6.5cm)に入れた。この中に菌液5mlを入
れ、袋の口をヒートシールにて袋内には若干の空気が残
るように密閉した。
【0082】振とう24時間後、袋内の液を取り出して生
菌数をそれぞれ測定した。生菌数の測定は普通寒天培地
(日水製薬製)を用いた混釈平板培養法(36℃、2日
間)により行った。なお、対照として滅菌ポリエチレン
袋に菌液のみを加えて同様に試験した。試験結果を表5
に示した。
【0083】
【表5】
【0084】また、試験後、上記各滅菌ポリエチレン袋
内の液をろ取し、そのろ液について、高周波プラズマ発
光分光分析法(用いた分析機器:SEIKO 社製、ICP SPS-
4000、検出限界0.005ppm)により銀イオンの存在をそれ
ぞれ分析したところ、上記銀イオンが各ろ液中に検出で
きなかった。
【0085】このことから、上記各実施例1〜3および
比較例3における抗菌性は、銀イオンの溶出に起因する
ものではないことが判った。また、各ろ液中に銀イオン
が検出できなかったことから、抗菌性粒子7の溶解によ
る銀イオンの放出も回避されていることが判った。
【0086】このように上記各実施例の構成は、表5の
示した結果から明らかなように、比較例3の抗菌性アパ
タイト粒子を用いた抗菌性熱可塑性樹脂発泡体より抗菌
性に優れたものである。これは、ACP粒子1を用いた
ことによって、菌を吸着することができて抗菌性を向上
できたものと考えられた。さらに、上記構成は、銀イオ
ン2の溶出が回避されたものであり、優れた抗菌性を長
期間にわたって維持できるものである。
【0087】その上、上記構成は、従来用いられている
抗菌性アパタイト粒子を用いたものと比べて、抗菌性熱
可塑性樹脂発泡体を製造するときの混練や発泡するとき
の加熱による樹脂の変色および着色の発生が回避できる
ため、抗菌性熱可塑性樹脂発泡体に対する着色印刷等の
加工が容易となり、一方、変色や着色に起因する汚れや
雑菌の増殖等といった使用者の誤認を回避できる。
【0088】また、上記構成は、略球状の造粒化によっ
て、さらに、均一な分散が容易であるため、混合したと
きの不均一な分散による抗菌効果の遍在化を防ぐことが
できるから、より均一な抗菌性を発揮でき、かつ、抗菌
性粒子の凝集部分の美観並びに物性の低下を防止でき
る。
【0089】これらのことから、上記構成は、高い安全
性と高い抗菌性を半永久的に維持することが可能とな
り、その上、軽量で美観に優れているから、生鮮食品等
の食品等の鮮度保持材や、ドリップを生じ易い魚箱等に
好適に使用できるという効果を奏する。
【0090】ところで、従来、抗菌性アパタイト粒子を
含有する高分子発泡体が知られている。上記抗菌性アパ
タイト粒子は抗菌性カルシウム系セラミックスに抗菌性
金属を担持させ、焼成した焼成物である。このような抗
菌性粒子を使用する場合には、樹脂との混練に際して樹
脂が黄色などの色に変色または着色した。
【0091】そこで、上記従来の抗菌性高分子発泡体で
は、上記のような変色等の要因として、混練時の温度条
件や樹脂の種類、分散剤などの添加剤等様々な要因が挙
げられるから、上記変色等を回避するために、それぞれ
の要因を考え合わせながらの混練が必要となる。
【0092】さらに、上記抗菌性アパタイト粒子では、
高温での焼成により抗菌性金属が金属として担持される
ため抗菌力が低下し、特に黄色ブドウ状球菌などへの抗
菌効果は低くなりがちである。
【0093】そこで、十分な抗菌性を発揮させるために
樹脂への抗菌剤添加量を増加させることが考えられる
が、その場合、高分子樹脂に本来備わっている物性が損
なわれる。すなわち、透明性、スリップ性および通気性
等に悪影響を及ぼし、その加工性や外観の劣化等に問題
を生じていた。
【0094】しかしながら、上記各実施例の構成では、
上述したように、上記各問題を回避することができ、高
い安全性および抗菌性を維持しながら、加熱によっても
無色である白色を維持できるから、混練時等の温度条件
等を考慮する必要がなく加工性や外観の劣化を改善でき
るものとなっている。
【0095】また、上記構成は、高い抗菌性を有するこ
とにより、抗菌性粒子7の添加量を軽減できるので、上
記のような大量の添加に起因する加工性への影響を防止
できる。また、略球状に造粒化された抗菌性粒子7を用
いることによって、均一な分散性も保持できるものとな
っている。
【0096】また、従来、他の抗菌性を有する高分子発
泡体としては、例えば、有機系抗菌剤としてN(フルオ
ロジクロロメチルチオ)フタルイミドを含有する発泡体
が、特開昭63−160657号公報に開示され、他の
有機系抗菌剤としては、他に、ジンク2−ピリジンチオ
ール−1−オキサイド系の抗菌剤をポリオレフィン系樹
脂と高吸水性樹脂との混合系に配合した発泡体が、特開
平5−9344号公報に開示されている。
【0097】また、特開平5−32812号公報には、
防カビ剤として有機系物質であるメチルベンズイミダゾ
ール−2−イルカルバメートを、抗菌剤としては無機系
物質である銀イオンおよび亜鉛イオンが担持されたゼオ
ライトをそれぞれ使用した防カビ・抗菌性ポリオレフィ
ン発泡体とその製造方法が開示されている。
【0098】しかし、有機系抗菌剤の場合には、一般に
高温状態では揮発や劣化を起こしやすく抗菌効果を失う
恐れが生じるため、樹脂との混練など加熱工程が必要な
加工には向かない。例えば、上記抗菌剤のうち、ジンク
2−ピリジンチオール−1−オキサイドの場合では、分
解温度が 240℃であるため樹脂との混練において分解す
ることが容易に予想できる。
【0099】それを避けるために、樹脂との混練を抗菌
剤が分解しないような低温で行うことが考えられるが、
その場合には、充分に混練するためにより多くの時間が
必要となり、生産効率を低下させる原因となる。
【0100】その上、樹脂表面または内部に含有した場
合に、溶出および揮発により、その抗菌効果に持続性が
ないばかりでなく、安全性にも問題がある。最近では、
合成樹試製品に混入された、抗菌防カビ剤として知られ
るチアベンダゾール(TBZ)が、製品として使用され
ている段階で、使い方により溶出する危険があるという
問題が報じられている(1993.6.30 付け、日本経済新聞
夕刊)。
【0101】しかしながら、上記各実施例の構成では、
ACPを用いたことにより、銀イオン2の溶出が回避さ
れており、また、用いた抗菌性粒子7が、1250℃程度ま
での加熱に対して耐える耐熱性を有することができるの
で、樹脂との混練時の加熱条件等を考慮する手間を省く
ことができ、また、銀イオン2の溶出による安全性の劣
化も防止できる。
【0102】また、有機系抗菌剤と抗菌性ゼオライトを
併用したものでは、上述したように有機系抗菌剤が有す
る問題を有し、かつ、抗菌性ゼオライトの添加によっ
て、得られた高分子発泡体に変色が生じ易く、食品や魚
箱等の容器としては不適なものとなっていた。
【0103】しかしながら、上記各実施例の構成は、混
練などの加熱工程においても極めて安定で変色などが回
避されたものであり、また、保持した銀イオン2を溶出
しないから、安全性が高く、また、ACP粒子1による
抗菌性粒子7の菌吸着能によって、抗菌性を長く安定に
発揮することができる。
【0104】さらに、他の抗菌性を有する高分子発泡体
として、例えば、特開昭62−241932号公報で
は、殺菌作用を有する銀等の金属およびその金属塩を吸
着担持したゼオライトを合成樹脂等に混合し発泡成形す
ることにより、安全に長期間にわたって抗菌性を有する
樹脂発泡体が開示されている。
【0105】同様な抗菌性ゼオライトを含有した熱可塑
性樹脂発泡体としては、特開昭63−317538号公
報、特開平1−306473号公報にそれぞれ開示され
ている。いずれもゼオライトの耐熱性を有効に利用し、
樹脂との混練等において抗菌効果が失われない、また、
抗菌性金属を含有するゼオライトが長期にわたって安定
した抗菌効果を発揮するものである。
【0106】ところが、抗菌剤として上記従来の抗菌性
金属イオンを含有する抗菌性ゼオライトを用いた場合で
は、溶融した合成樹脂に混練する際の加熱により、ゼオ
ライト本体の相変化などにより安定した抗菌特性が得ら
れないという問題を有している。
【0107】また、ゼオライトは水分やCO2 ガス等の
極性分子を容易に吸着する性質を有するため、ゼオライ
トの含水量が多い時には樹脂混練および成形の際の加熱
により、蒸発水分による気泡が生じるために、均一な混
練が困難であり成形体の性状を損なうという問題があ
る。
【0108】それを防ぐためには、乾燥工程により充分
脱水することが考えられるが、それには一般に 250〜50
0 ℃の加熱または 150〜350 ℃の減圧加熱脱水が必要で
あるため、該高分子発泡体の製造工程において煩雑な工
程を加えることになる。さらに脱水後も、二次凝集を生
じないよう十分に分散させる必要がある。
【0109】さらに、ゼオライトはアルミン酸基を交換
基とするものであり、物理的に不安定で、CO2 ガスな
どを強く吸着することが認められている。一方、発泡体
は、発泡剤の添加で発生するガスにより発泡させるもの
であるから、これらのガス発生が妨害されず、均質に発
泡が行われなければならない。
【0110】従って、発生ガスに作用する添加物の使用
は避けるべきである。よって、発泡体にゼオライトを使
用すると、発泡剤の種類によっては、均質な発泡体が得
られにくい可能性があり、添加する抗菌性ゼオライトの
添加量が制約される可能性がある。
【0111】しかしながら、上記各実施例1〜4の構成
では、ガスの吸着能は認められなかったから、上記ゼオ
ライトのようなガスの吸着に起因する問題を回避でき、
また、水分の吸着を除去するための乾燥工程も省くこと
ができる。その上、上記構成では、ACPを用いること
によって、混練時の温度条件や発泡性樹脂の種類、分散
剤などの添加剤等に起因する変色や着色を回避でき、変
色や着色を防止するために上記温度条件等の各要因を考
慮する手間を省くことができる。
【0112】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載の抗菌性熱可塑
性樹脂発泡体は、抗菌性金属イオンを吸着した非晶質リ
ン酸カルシウム粒子からなる抗菌性粒子と、熱可塑性樹
脂とが押し出し成形されて得られたものである構成であ
る。
【0113】それゆえ、上記構成は、非晶質リン酸カル
シウムを用いることによって、菌を吸着することができ
て抗菌性を向上でき、かつ、抗菌性金属イオンの溶出が
回避される。
【0114】その上、上記構成は、従来用いられている
抗菌性アパタイト粒子を用いたものと比べて、熱可塑性
樹脂発泡体を押し出し発泡成形によって製造するときの
混練や発泡するときの加熱による変色および着色の発生
を回避できるため、熱可塑性樹脂発泡体に対する着色印
刷等の加工が容易となり、また、変色等による汚れ等と
いった使用者の誤認も回避できる。
【0115】これらのことから、上記構成は、高い安全
性と高い抗菌性を長期間維持することが可能となり、か
つ、変色等が回避されるから、生鮮食品等の食品等の鮮
度保持材等に好適に使用できるという効果を奏する。
【0116】本発明の請求項2に記載の抗菌性熱可塑性
樹脂発泡体は、抗菌性金属イオンを吸着した非晶質リン
酸カルシウム粒子からなる抗菌性粒子を有する塗膜層
が、熱可塑性樹脂発泡体の表面に形成されている構成で
ある。
【0117】それゆえ、上記構成は、さらに、塗膜層に
よって、熱可塑性樹脂発泡体の表面側に抗菌性粒子を偏
在させたから、上記抗菌性粒子の抗菌性をより有効に発
揮することができて、上記抗菌性粒子の添加量を軽減で
きるという効果を奏する。
【0118】本発明の請求項3に記載の抗菌性熱可塑性
樹脂発泡体は、抗菌性金属イオンを吸着した非晶質リン
酸カルシウム粒子からなる抗菌性粒子を有するフィルム
が、熱可塑性樹脂発泡体に積層されている構成である。
【0119】それゆえ、上記構成は、さらに、表面側に
抗菌性粒子を偏在させたから、上記抗菌性粒子の抗菌性
をより有効に発揮することができて、上記抗菌性粒子の
添加量を軽減できるという効果を奏する。
【0120】本発明の請求項4に記載の抗菌性熱可塑性
樹脂発泡体は、さらに、抗菌性粒子は、非晶質リン酸カ
ルシウム粒子を含むスラリーと、抗菌性金属イオンとが
混合され、造粒化されたものである構成である。
【0121】それゆえ、上記構成は、さらに、略球状に
造粒化できて、熱可塑性樹脂発泡体に対して均一な分散
が容易であるため、混合したときの不均一な分散による
抗菌効果の遍在化や、抗菌性粒子の凝集部分の美観並び
に物性の低下を防ぐことができるから、より均一な抗菌
性を発揮でき、かつ、外観の低下、加工性の劣化を回避
できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1および実施例2における抗菌
性熱可塑性樹脂発泡体の概略断面図である。
【図2】本発明の抗菌性熱可塑性樹脂発泡体に用いられ
た抗菌性粒子の製造に用いるスプレードライヤーの概略
構成図である。
【図3】本発明の実施例3における抗菌性熱可塑性樹脂
発泡体の概略断面図である。
【図4】本発明の実施例4における抗菌性熱可塑性樹脂
発泡体の概略断面図である。
【符号の説明】
7 抗菌性粒子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08K 3/32 KAG // C08L 101:00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】抗菌性金属イオンを吸着した非晶質リン酸
    カルシウム粒子からなる抗菌性粒子と、熱可塑性樹脂と
    が押し出し成形されて得られたものであることを特徴と
    する抗菌性熱可塑性樹脂発泡体。
  2. 【請求項2】抗菌性金属イオンを吸着した非晶質リン酸
    カルシウム粒子からなる抗菌性粒子を有する塗膜層が、
    熱可塑性樹脂発泡体の表面に形成されていることを特徴
    とする抗菌性熱可塑性樹脂発泡体。
  3. 【請求項3】抗菌性金属イオンを吸着した非晶質リン酸
    カルシウム粒子からなる抗菌性粒子を有するフィルム
    が、熱可塑性樹脂発泡体に積層されていることを特徴と
    する抗菌性熱可塑性樹脂発泡体。
  4. 【請求項4】抗菌性粒子は、非晶質リン酸カルシウム粒
    子を含むスラリーと、抗菌性金属イオンとが混合され、
    造粒化されたものであることを特徴とする請求項1、2
    または3記載の抗菌性熱可塑性樹脂発泡体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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