JPH07171603A - 純チタン六角棒の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 鋼と比較するとロールに焼き付き易く、ま
た、熱間圧延後のねじれ矯正が困難である純チタンを、
正確な断面形状で、圧延状態でねじれがないように熱間
圧延する。 【構成】 図１（ａ）に示すように、六角形の対向する
頂点を結ぶ線で半切した台形形状の孔型１１を有する１
対のロール１２、１３をほぼ密着させて熱間圧延を行な
う。また、仕上ロール直前のガイドに、遊びのないロー
ラガイドを使用する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、純チタン（Ｔｉ）の六
角棒を製造（圧延）する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】六角棒は、滑りが許されない回転軸や、
複数の機械要素間の角度を所定位置関係に保つ必要があ
る場合の固定軸、装飾的構造物等に用いられる。鋼の場
合、六角棒は、丸棒から機械加工により削り出す方法、
冷間引抜による方法、及び、熱間圧延による方法の３種
の方法が目的に応じて用いられている。機械加工による
方法では、寸法精度が良好であるものの、生産性が低
く、歩留まりも悪いことから製造コストが非常に高い。
冷間引抜による方法も寸法精度の点では良好であるが、
硬い材料は加工が難しく、加工できる材料が限られる。
熱間圧延による方法については後述する。

【０００３】純チタン（純度９９％以上）の熱間圧延に
ついては、高温酸化、表面疵の発生等種々の問題点があ
るが、本願出願人は特開昭６４−５６０６号において、
加熱温度を５００〜８００℃、圧延温度を５００〜７０
０℃、そして仕上圧延温度を４５０℃以上とすることに
より、表面疵やスケールの発生を大幅に低減し得ること
を明らかにした。更に、本願出願人は特開平１−１７６
０５９号において、純チタンの形材を製造する方法につ
いて述べ、その中で具体的な圧延パス等を開示した。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】純チタンの六角棒は従
来主に引き抜き或いは切削加工などにより製造されてお
り、生産性が低く、コストが高い。従って、低コストで
六角棒を製造しようとする場合には、熱間圧延によるこ
とになる。従来、鋼の六角棒を熱間圧延により製造する
場合、図１（ｂ）のようなロール孔型が使用されてい
た。これは、六角棒では特にコーナー部の欠肉（Ｒ部の
寸法不良）が製品として大きな欠陥であるとされるた
め、６個のコーナー部を全てロール孔型により成形する
ためである。

【０００５】しかし、鋼と比較すると、純チタンは焼き
付きが非常に生じ易いという特性を持っている。図１
（ｂ）に示すような孔型では、垂直部Ｖにおいて圧延材
とロールとの間に大きな滑りを生ずるため、純チタンを
このような従来の方法で圧延することは困難である。

【０００６】また、六角棒では、長手方向のねじれが製
品品質上、大きな問題となる。鋼の六角棒の場合には、
熱間圧延後のねじれは冷間の矯正加工により或る程度矯
正することが可能であるが、純チタン六角棒の場合に
は、このような冷間矯正加工は困難である。従って、圧
延時点でねじれのない六角棒を製造しておく必要があ
る。

【０００７】本発明はこれらの課題を解決した純チタン
の六角棒製造法を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に成された本発明に係る純チタン六角棒の製造方法は、
図１（ａ）及び図２に示すように、六角形の対向する頂
点を結ぶ線で半切した台形形状の孔型１１を有する１対
のロール１２、１３をほぼ密着させて熱間圧延を行なう
ことを特徴とする。

【０００９】なお、そのようなロールを使用することに
加え、仕上ロール直前のガイドに遊びのないローラガイ
ドを使用することが望ましい。

【００１０】

【作用】図１（ａ）に示すような形状の孔型では、図１
（ｂ）のような垂直部Ｖがないため、ロール１２、１３
と圧延材との間の滑りが小さく、純チタン圧延材とロー
ル１２、１３との間の焼き付きが防止される。また、六
角棒圧延材の６個の頂点のうち４個Ａ，Ｃ，Ｄ，Ｆはロ
ール孔型により形成され、対向する２個の頂点Ｂ，Ｅ
は、密着する上下ロール１２、１３の孔型１１の合流部
１４により形成される。

【００１１】また、仕上ロールの直前に遊びのないロー
ラガイドを使用することにより、圧延材がこのローラガ
イドと仕上ロールの孔型により長手方向に規制されるた
め、圧延材にねじれが生じない。

【００１２】

【実施例】本発明に係る方法を用いた純チタン六角棒の
熱間圧延のパススケジュールの一例を図３に示す。な
お、図３（ｂ）〜（ｅ）において、点線３１〜３４はロ
ール孔型の形状を示し、細い実線２１〜２４はそのパス
を通る前の圧延材の断面を、太い実線２２〜２５はその
パスを通った後の圧延材の断面を示す。本実施例では圧
延材料として四角棒２１（図３（ａ））を用い、４パス
で最終製品である六角棒２５（図３（ｆ））を得る。な
お、圧延温度は上記の通り、材料を５００〜８００℃に
加熱し、これら４パスの圧延時の材料温度が７００〜５
００℃の範囲内に収まるようにし、そして、最終パス
（第４パス）を出た時点での材料温度が４５０℃を下回
らないようにした。

【００１３】第１パスでは図３（ｂ）に示すように、材
料の四角棒２１を偏平六角棒２２に圧延する。このパス
ではオープン孔型３１を使用し、左右の辺は規制しな
い。これにより、図３（ｂ）に示すように、圧延材２２
の左右の辺２２ａはやや凹となる。第１パスにおける圧
延率（断面減少率）は約２５％である。

【００１４】第２パスでは図３（ｃ）に示すように、圧
延材２２を９０°回転させた縦長の状態で、やや偏平率
を下げるように（すなわち、正六角形に近くなるよう
に）圧延する。このパスでは左右の辺を規制した台形孔
型３２を使用するが、孔型３２の上下の辺３２ａは圧延
材２２の上下の辺２２ａ（図３（ｂ））よりもやや短く
なるようにし、圧延材２３の上下の辺２３ａの凹部がロ
ールに密着しないようにする。また、上下ロールの間に
は隙間を設け、圧延材の左右の頂点２３ｂがその隙間に
やや突出するようにする。本実施例においては、第２パ
スにおける圧延率は約２６％である。

【００１５】第３パスでは図３（ｄ）に示すように再び
圧延材２３を９０°回転させ、横長の状態で圧延する。
このパスではやや偏平度を上げ、更に横長になるように
するが、圧延率は約１２％と小さくする。また、孔型３
３の左右辺は垂直とせず、やや広げておく。これによ
り、圧延材２４の左右辺２４ａは凹部のままとなるが、
ロールと圧延材２４とが接触しないため、焼き付きによ
る圧延材表面（及びロール表面）の損傷が防止される。
このパスで重要な点は、第２パスで形成された突出頂点
２３ｂを孔型の上下頂点で規制することにより、欠肉の
ない頂点２４ｂを形成することである。

【００１６】最終パスである第４パスでは、図３（ｅ）
に示すように、再び圧延材２４を９０°回転させ、縦長
の状態で圧延する。前述の通り、最終パスでは上下ロー
ルを密着させておくが、圧延材２４（２５）をかみ込ん
だ状態では、僅かに隙間が生じる。このパスでは、孔型
３４の上下辺により圧延材の上下辺の凹部２４ａを平坦
化するとともに、第３パスで形成された（第３パスにお
ける上下の）頂点２４ｂを上下ロール孔型３４の合流点
において正確な正六角形の頂点形状に仕上げる。本実施
例においては、第４パスの圧延率は約２５％である。

【００１７】以上のようにして、本実施例の圧延方法に
より、正確な、欠肉のない断面六角形状を有する純チタ
ン六角棒を得ることができる。

【００１８】次に、圧延時のねじれを防止するための方
策について説明する。本実施例では、仕上圧延である第
４パスの直前において４対のローラガイドを使用する。
これら４対のローラガイド４１、４２、４３、４４は、
図４に示すように、ロールの仕上孔型４５の前に、その
位置に合わせて直列に配置する。図４に示すように、仕
上ロール４６が水平に置かれているとすると、第１ロー
ラガイド４１は垂直に、第２ローラガイド４２は水平
に、そして、第３及び第４ローラガイド４３、４４は共
に垂直に配置する。

【００１９】第１ローラガイド４１は、孔型を持たない
単純ローラとする。また、１対のローラの間に圧延材４
８の幅よりもやや大き目の隙間を設けておく。これによ
り圧延材４８は、上下にはフリーの状態で、左右には大
きな振れが生じないように、ガイドされる。

【００２０】第２ローラガイド４２は、孔型を有する１
対のローラで構成し、圧延材４８に対して僅かの隙間を
有するように配置する。これにより第２ローラガイド
は、圧延材４８を上下左右の両方向で（主に上下方向
に）緩やかに規制する。

【００２１】第３及び第４ローラガイド４３、４４は同
一のものを使用する。１対のローラには圧延材４８の側
面と同じ形状の孔型を設け、これにより左右から圧延材
４８を隙間無く規制する。また、上下方向についても、
ほとんど振れのないように規制する。

【００２２】これにより、仕上圧延の孔型４５に入る前
の圧延材４８は仕上ロール４６に確実にかみ込まれるよ
うになるとともに、一旦かみ込まれた後は、孔型４５と
これらのローラガイド４４、４３、４２、４１により、
真直に保持される。このため、圧延された純チタン六角
棒はねじれのないものとなる。

【００２３】

【発明の効果】本発明に係る圧延方法では、従来の鋼の
六角棒の圧延で用いられていたような垂直部Ｖを有する
孔型を使用しないため、純チタン圧延材とロールとの間
の焼き付きが防止される。上下ロールをほぼ密着させて
いるため、孔型で規制されない２個の頂点についても、
確実に所期の形状が得られる。

【００２４】また、仕上ロールの直前に遊びのないロー
ラガイドを使用することにより、圧延材がこのローラガ
イドと仕上ロールの孔型により長手方向に規制されるた
め、圧延材にねじれが生じない。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係る純チタン六角棒の圧延方法で使
用するロール孔型の形状を示す正面図（ａ）、及び従来
の鋼の六角棒の圧延方法で使用するロール孔型の形状を
示す正面図（ｂ）。

【図２】 本発明に係る純チタン六角棒の圧延方法にお
けるロール孔型付近の斜視図。

【図３】 本発明の一実施例である圧延パススケジュー
ルを示す説明図。

【図４】 本発明の一実施例で用いる仕上圧延前のロー
ラガイドの配置を示す平面図。

【符号の説明】

１１…孔型 １２、１３…上下ロー
ル １４…上下孔型の合流部 ２１、２２、２３、２４、２５…圧延材 ３１、３２、３３、３４…孔型 ４１、４２、４３、４４…ローラガイド ４５…仕上孔型 ４６…仕上ロール ４８…圧延材

フロントページの続き (72)発明者 石田 健典 愛知県東海市荒尾町ワノ割１番地 愛知製 鋼株式会社内 (72)発明者 梶野 隆 愛知県東海市荒尾町ワノ割１番地 愛知製 鋼株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 六角形の対向する頂点を結ぶ線で半切し
   た台形形状の孔型を有する１対のロールをほぼ密着させ
   て熱間圧延を行なうことを特徴とする純チタン六角棒の
   製造方法。
2. 【請求項２】 仕上ロール直前のガイドに、遊びのない
   ローラガイドを使用した請求項１記載の純チタン六角棒
   の製造方法。