JPH07167804A - 2層めっき鋼板のオンライン分析方法及びオンライン分析装置 - Google Patents

2層めっき鋼板のオンライン分析方法及びオンライン分析装置

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JPH07167804A
JPH07167804A JP31302493A JP31302493A JPH07167804A JP H07167804 A JPH07167804 A JP H07167804A JP 31302493 A JP31302493 A JP 31302493A JP 31302493 A JP31302493 A JP 31302493A JP H07167804 A JPH07167804 A JP H07167804A
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JP
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theoretical
ray
intensity
rays
steel sheet
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JP31302493A
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Shigeyuki Mori
茂之 森
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Zn−FeとAl−Mnとの合金めっき層が
形成された2層めっき鋼板にX線を異なる角度で照射
し、高低二つの取出角で得られる蛍光X線強度より各合
金めっき層の付着量と組成とを得る方法であって、高取
出角でのMnKα線とZnKα線及び低取出角でのFe
Kα線とZnKα線の夫々の理論強度計算式を求める工
程と、簡易理論強度換算式を用いて未知試料より得た各
蛍光X線強度より理論強度近似値を算出する工程と、理
論強度計算式中の各合金めっき層の付着量と組成とを変
化させ、夫々の値に対応して得られる各蛍光X線の理論
強度と理論強度近似値との差の平方値を夫々求め、それ
らの合計が最小値となる付着量や組成を分析値とする工
程とを含むオンライン分析方法。 【効果】 未知数が測定可能なX線強度の数より多い場
合でも、2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成の分析
を行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は2層めっき鋼板のオンラ
イン分析方法及びオンライン分析装置に関し、より詳細
には最表層(以下、第1層と記す)にAl−Mn合金め
っき層、その下の層(以下、第2層と記す)にZn−F
e合金めっき層を有する2層めっき鋼板の各合金めっき
層の付着量及び組成を求めることができる2層めっき鋼
板のオンライン分析方法及びオンライン分析装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】基板上にめっきや蒸着等の被覆処理を複
数回施した多層板の各層の厚さや組成を蛍光X線を用い
て分析する方法についてはまだ報告例は少なく、その分
析方法も確立されてはいないものの、従来より以下のよ
うな指針の下に分析対象に応じて個別にその分析方法が
検討されている。
【0003】その指針として、分析対象毎に、付着量、
組成等の未知数と最も相関の強い分析線を選択するこ
と、及び相互に独立性の強い分析線を選択することの2
点が挙げられている。
【0004】また、実際に多層板の分析方法として使用
できるためには、各層の組成むらが小さいこと、分析対
象からの蛍光X線が十分な強度で検出されること、分析
対象となる多層板の付着量や組成に関する未知数と分析
線の数が一致すること等の条件が前提となる。また分析
可能な層の数や成分数は、検出された分析線の演算処理
を行うコンピューターの処理能力により決定されるが、
現在のところ最大で8層16成分まで分析可能であり、
また単層の場合は最大で16成分まで可能である。
【0005】そして、実際にポリカーボネート基板の上
に、順次Si34 誘電体層、TbFeCo磁性層、S
34 誘電体層及びAl反射層が形成された光磁器デ
ィスク等について、その厚さ及び組成が分析された例
(第27回X線分析討論会講演要旨集 47頁)等が知
られている。
【0006】このように、上記分析対象の未知数と分析
線の数が一致する場合、コンピューター等を用いる方法
によりその付着量や組成を分析することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一方、本発明がその対
象としている、第1層にAl−Mnの合金めっきが形成
され、第2層には合金化溶融ZnめっきによりZn−F
eの合金めっき層が形成されている2層めっき鋼板のよ
うな多層板では、第1層の合金めっき層中にAlが含ま
れており、このような軽元素を蛍光X線を用いオンライ
ン分析しようとしても、X線経路に存在する空気による
散乱吸収が大きいため、定量的に十分な蛍光X線強度の
データの検出が困難になる。このため、前記2層めっき
鋼板の分析では、Al元素より発生する蛍光X線を分析
線として使用することができず、分析線のうち散乱吸収
が小さく強度の強いKα線は他の元素に基づく3個にな
ってしまうため、通常の方法では前記2層めっき鋼板の
組成及び付着量を分析することはできないという課題が
あった。
【0008】一方、本発明で対象としている前記2層め
っき鋼板の分析方法に近いものとして、同様に軽元素で
あるPを含有し、第1層及び第2層の両方にFeを含有
するFe−P/Zn−Fe2層めっき鋼板の分析方法と
して、X線回折分析及び蛍光X線分析を組み合わせ、F
e−P/Zn−Fe2層めっき鋼板の各層の付着量及び
組成をオンライン分析する方法(川崎製鉄技報 Vo
l.21 No.2 1989年 53頁)が提案され
ている。
【0009】この分析方法は、塩化物浴めっきで形成
される第2層のZn−Fe金属間化合物の回折ピーク位
置とFe含有率の間に相関があることを利用し、複数の
検出器を回折角が少しづつ異なるように固定設置する固
定チャンネルX線回折法で測定される回折ピーク位置か
らFe含有率を求める工程、Zn、Feの蛍光X線を
高角及び低角の二つの取出し角で測定し、被測定めっき
鋼板が変位するに従ってそのX線経路長が変動する、い
わゆるバタツキによるZnの蛍光X線測定強度の変動
を、同時に測定したFeの蛍光X線測定強度で補正する
工程、蛍光X線理論強度式から導出した高角用のZn
Kα強度近似式、低角用のZnKα強度近似式にそれぞ
れの補正後のZnKα強度及びで求めたFe含有率を
代入し、これらの近似式を連立させることにより、第1
層及び第2層の付着量を求める工程からなる。
【0010】しかし前記分析方法において、第2層のF
e含有率を求めることができるのは、塩化物浴めっきで
形成されるZn−Fe金属間化合物等、回折ピーク位置
とFe含有率との間に相関がある特殊な場合に限られ、
本発明の対象とする合金化溶融Znめっきにより形成さ
れたZn−Fe合金めっき層を有する鋼板には適用でき
ない。また、蛍光X線の理論強度式から高い取出し角
用、低い取出し各用に近似式を導出する際、めっき上層
のFe−P組成が一定と仮定されているが、本発明の対
象とするAl−Mn合金めっきでは、Al−Mn組成は
一定ではない。さらに集中光学系を用いているために、
鋼板のバタツキによる蛍光X線の強度変動が大きく、測
定強度に対する補正の割合が大きくなるため、補正強度
の誤差が大きくなる問題がある。
【0011】従って、本発明で対象としている2層めっ
き鋼板の分析には、前記方法を適用することはできな
い。
【0012】また、取出し角の異なる2種類の蛍光X線
を使用してめっき層の付着量及び組成を分析する分析方
法及び分析装置が、特開平2−257045号公報に開
示されている。
【0013】この分析方法の一の発明は、めっき鋼板
に所定の入射角で単色のX線を入射した場合に得られ
る、2種類の所定の取出し角での、分析目的元素のK系
列の蛍光X線測定強度又は強度比の理論計算式を予め求
めておく工程、めっき付着量及びめっき被膜組成が既
知の標準試料を用い、前記理論計算式を求めたのと同じ
条件で、蛍光X線測定強度又は強度比を実測し、この実
測値と前記理論計算式より、前記実測値を理論計算値に
換算する変換係数を求めおく工程、前記理論計算式を
求めたのと同じ条件で、めっき付着量及びめっき被膜組
成が未知の被測定めっき鋼板から得られる前記蛍光X線
測定強度又は強度比を測定し、前記変換係数を使用して
理論強度又は強度比に変換する工程、前記理論計算式
より得られる理論強度又は強度比を、前記変換された理
論強度又は強度比に最も近づける、前記理論計算式中の
パラメーターであるめっき付着量及び被膜組成を、前記
被測定鋼板のめっき付着量及びめっき被膜組成とする工
程を有している。
【0014】しかしこの分析方法では、単層のめっき合
金層を有する鋼板のみを対象としているため、本発明が
対象としている2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成
を求めることはできない。
【0015】またこの分析方法に用いられている分析装
置においては、X線管球と試料との間にモノクロメータ
を挿入して入射X線を単色化したり、管球とモノクロメ
ータ、モノクロメータと試料との間にピンホールコリメ
ータを導入しているため、蛍光X線測定強度が低下し、
満足な測定値を得るためには長時間測定を続けてカウン
ト数を増大させなければならないという課題があった。
【0016】さらに前記分析装置においては、蛍光X線
の分光を波長分散方式と比較して分解能で劣るエネルギ
ー分散方式で行っているため、FeKα線の近傍に存在
するMnKα線の影響を受けて、FeKα線の強度を正
確に測定することが難しいという課題があった。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らはオンライン
分析による分析が困難な元素であるAlを第1層に含有
する2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成を求めるこ
とができるオンライン分析方法、及び発生した蛍光X線
の強度低下を最小限に抑え、各分析線の強度を比較的良
い分解能で測定することができ、分析対象となる2層め
っき鋼板のバタツキの影響を受けにくいオンライン分析
装置を提供することを目的として検討を行った結果、分
析方法については前記特開平2−257045号公報に
記載されているような2種類の異なる取出し角で得られ
る蛍光X線の強度を測定する方法を基本とし、高い取出
し角においてMnKα線とZnKα線を、また低い取出
し角においてFeKα線とZnKα線をそれぞれ検出
し、これらの値を基にして簡便的に求めた理論強度近似
値と、既知の理論強度式を基に分析対象鋼板毎に導出し
た理論強度計算式を用いて求めた理論強度とを比較する
方法を採用することにより、また分析装置についてはX
線管球と試料との間に照射X線強度を低下させるモノク
ロメータやコリメータは設置せずに、比較的強度低下の
小さいソーラースリットのみを配設し、さらに試料と分
光結晶、分光結晶と検出器との間にソーラースリットを
配設し、各分析線ごとに専用の固定検出器を設け、光学
系を鋼板のバタツキの影響を受けにくい平行光学系とす
ることにより、Alを第1層に含有するにも拘らず前記
2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成を分析すること
ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】すなわち本発明に係る2層めっき鋼板のオ
ンライン分析方法は、下地の鋼板の表面にZn−Fe合
金めっき層が形成され、さらにその上にAl−Mn合金
めっき層が形成された2層めっき鋼板に2層めっき鋼板
にX線を異なる角度で互いに照射し、高い取出し角及び
低い取出し角で得られる蛍光X線測定強度より各合金め
っき層の付着量及び組成を得る2層めっき鋼板のオンラ
イン分析方法であって、前記X線照射と同一条件下にお
ける高い取出し角でのMnKα線とZnKα線、及び低
い取出し角でのFeKα線とZnKα線のそれぞれの理
論強度計算式を予め求める第1工程と、該第1工程で対
象とした各分析線と同じ分析線に関する簡易理論強度換
算式を得るために、標準試料より得られた蛍光X線測定
強度と前記第1工程で求めた理論強度計算式から得られ
る蛍光X線理論強度とから前記簡易理論強度換算式の各
係数を求め、前記一定条件下で前記2層めっき鋼板にX
線を照射して得られた各蛍光X線測定強度を前記簡易理
論強度換算式に代入して理論強度近似値をそれぞれ算出
する第2工程と、前記理論強度計算式中のパラメーター
群である各合金めっき層の付着量と組成とを変化させ、
それぞれのパラメーター群に対応して得られる各蛍光X
線の前記理論強度と前記理論強度近似値との差の平方を
それぞれ求め、それらの合計量が最も小さい値となる前
記理論強度式中の各パラメーターを分析値とする第3工
程とを含むことを特徴としている(1)。
【0019】また本発明に係る2層めっき鋼板のオンラ
イン分析方法は、下地の鋼板の表面にZn−Fe合金め
っき層が形成され、さらにその上にAl−Mn合金めっ
き層が形成された2層めっき鋼板に2層めっき鋼板にX
線を異なる角度で互いに照射し、高い取出し角及び低い
取出し角で得られる蛍光X線測定強度より各合金めっき
層の付着量及び組成を得る2層めっき鋼板のオンライン
分析方法であって、前記X線照射と同一条件下における
高い取出し角でのMnKα線とZnKα線、及び低い取
出し角でのFeKα線とZnKα線のそれぞれについて
求めた理論強度計算式を基にし、該理論強度計算式中の
パラメーター群である各合金めっき層の付着量と組成の
それぞれに関する理論強度の検量線を作成する第1工程
と、該第1工程で対象とした各分析線と同じ分析線に関
する別の簡易理論強度換算式を得るために、標準試料よ
り得られた蛍光X線測定強度と前記第1工程で求めた理
論強度計算式から得られる蛍光X線理論強度とから前記
簡易理論強度換算式の各係数を求め、前記一定条件下で
前記2層めっき鋼板にX線を照射して得られた各蛍光X
線測定強度を前記簡易理論強度換算式に代入して理論強
度近似値をそれぞれ算出する第2工程と、前記パラメー
ター群の各パラメーターをそれぞれ一定値に定めた場合
に前記検量線より得られる各分析線の理論強度と前記理
論強度近似値とを比較してその差の平方を求め、それら
の合計量が最も小さい値となる前記各パラメーターを分
析値とする第3工程とを含むことを特徴としている
(2)。
【0020】また本発明に係る2層めっき鋼板のオンラ
イン分析装置は、上記(1)記載の2層めっき鋼板のオ
ンライン分析方法に用いられる分析装置であって、X線
を発生するX線発生部と、X線のパスラインを決め、2
層めっき鋼板に所定の入射角で投射し、所定の取出し角
で受光するためのスリット系と、2層めっき鋼板から発
生するMnKα線、ZnKα線及びバックグランド強度
を高い取出し角で検出する3個の検出器と、2層めっき
鋼板から発生するFeKα線、ZnKα線及びバックグ
ランド強度を低い取出し角で検出する3個の検出器とを
備えた蛍光X線測定強度測定部及び該蛍光X線測定強度
測定部の制御を行う制御部からなる蛍光X線測定手段を
有し、さらに前記高い取出し角で検出するMnKα線と
ZnKα線及び低い取出し角で検出するFeKα線とZ
nKα線のそれぞれの分析線について、分析時と同一の
条件下における理論強度計算式を求める理論強度計算式
導出手段と、該理論強度計算式導出手段で対象とした各
分析線と同じ分析線に関する別の簡易理論強度換算式を
記憶し、標準試料を対象として前記蛍光X線測定手段を
作動させることにより検出された各蛍光X線測定強度と
前記標準試料の蛍光X線理論強度とから前記簡易理論強
度換算式の各係数を求め、次に2層めっき鋼板を対象と
して前記蛍光X線測定手段を作動させることにより検出
された各蛍光X線測定強度を前記簡易理論強度換算式に
代入して理論強度近似値をそれぞれ算出する理論強度近
似値算出手段と、前記理論強度計算式中のパラメーター
群である各合金めっき層の付着量と組成とを変化させ、
それぞれのパラメーター群に対応して算出される各分析
線の理論強度と前記理論強度近似値との差の平方をそれ
ぞれ求め、それらの合計量が最も小さい値となる前記理
論強度式中の各パラメーターを分析値とする分析値算出
手段とを備えていることを特徴としている(3)。
【0021】さらに本発明に係る2層めっき鋼板のオン
ライン分析装置は、上記(2)記載の2層めっき鋼板の
オンライン分析方法に用いられる分析装置であって、X
線を発生するX線発生部と、X線のパスラインを決め、
2層めっき鋼板に所定の入射角で投射し、所定の取出し
角で受光するためのスリット系と、2層めっき鋼板から
発生するMnKα線、ZnKα線及びバックグランド強
度を高い取出し角で検出する3個の検出器と、2層めっ
き鋼板から発生するFeKα線、ZnKα線及びバック
グランド強度を低い取出し角で検出する3個の検出器と
を備えた蛍光X線測定強度測定部及び前記蛍光X線測定
強度測定部の制御を行う制御部からなる蛍光X線測定手
段を有し、さらに前記高い取出し角で検出するMnKα
線とZnKα線及び低い取出し角で検出するFeKα線
とZnKα線のそれぞれの分析線について、分析時と同
一条件下で作成した前記理論強度計算式中のパラメータ
ー群である各合金めっき層の付着量と組成のそれぞれに
関する理論強度の検量線を記憶する検量線記憶手段と、
前記検量線記憶手段で対象とした各分析線と同じ分析線
に関する別の簡易理論強度換算式を記憶し、標準試料を
対象として前記蛍光X線測定手段を作動させることによ
り検出された各蛍光X線測定強度と前記標準試料の蛍光
X線理論強度とから簡易理論強度換算式の各係数を求
め、次に2層めっき鋼板を対象として前記蛍光X線測定
手段を作動させることにより検出された各蛍光X線測定
強度を前記簡易理論強度換算式に代入して理論強度近似
値をそれぞれ算出する理論強度近似値算出手段と、前記
パラメーター群の各パラメーターをそれぞれ一定値に定
めた場合に前記検量線より得られる各分析線の理論強度
と前記理論強度近似値とを比較してその差の平方を求
め、それらの合計量が最も小さい値となる前記各パラメ
ーターを分析値とする分析値算出手段とを備えているこ
とを特徴としている(4)。
【0022】
【作用】上記構成のオンライン分析方法(1)によれ
ば、分析対象が第1層にオンラインで蛍光X線分析が困
難な元素であるAlを含有する2層めっき鋼板であるに
も拘らず、前記2層めっき鋼板にX線を異なる角度で互
いに照射し、Al以外の成分の特定の蛍光X線測定強度
を高い取出し角及び低い取出し角で同時に測定する方法
をとっているので、同一の蛍光X線にも拘らず高い取出
し角で得たX線と低い取出し角で得たX線が独立とな
り、Alの蛍光X線を用いることができないため、未知
数が既知のX線強度の数よりも多くなる場合でも、前記
2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成の分析が可能と
なる。
【0023】また上記構成のオンライン分析方法(2)
によれば、上記(1)記載の方法を基本とし、前記理論
強度計算式に基づいて作成した検量線を使用するという
上記(1)記載の分析方法よりも簡便な方法を用いるこ
とにより、同様に前記2層めっき鋼板の各層の付着量及
び組成の分析が可能になる。
【0024】また上記構成のオンライン分析装置(3)
によれば、X線管球と試料との間に照射X線強度を低下
させるモノクロメータやコリメータは設置せずに、比較
的強度低下の小さいソーラースリットのみを配設し、さ
らに試料と分光結晶、分光結晶と検出器との間にソーラ
ースリットを配設し、各分析線ごとに専用の固定検出器
を設けているので、発生する蛍光X線の強度低下が最小
限に抑えられ、各分析線の強度が精度良く測定される。
また光学系を鋼板のバタツキの影響を受けにくい平行光
学系としているので、分析対象となる2層めっき鋼板の
分析時の変位に起因するX線経路長の変動の影響を受け
ず、迅速かつ高精度で前記2層めっき鋼板の各層の付着
量及び組成の分析が行われる。
【0025】さらに上記構成のオンライン分析装置
(4)によれば、上記(3)記載の分析装置を基本と
し、前記理論強度計算式に基づいて予め作成した検量線
を記憶し、この検量線に基づいて分析値を算出する手段
を備えているので、より簡便な手段により、迅速かつ高
精度で前記2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成の分
析が行われる。
【0026】
【実施例】以下、本発明に係る2層めっき鋼板のオンラ
イン分析方法及びオンライン分析装置の実施例を図面に
基づいて説明する。まず、実施例に係るオンライン分析
方法について説明する。
【0027】図1は、下地の鋼板11の上にZn−Fe
合金めっき層12が形成され、このZn−Fe合金めっ
き層12の上にさらにAl−Mn合金めっき層13が形
成された2層めっき鋼板10の分析方法を説明するため
の模式的な断面図である。
【0028】また図2は、図1に示した2層めっき鋼板
10の分析方法の手順を示したフローチャートである。
図2に示したフローチャートに従い、各ステップ(S1
〜S8)毎に実施例に係るオンライン分析方法の説明を
行っていく。
【0029】まずステップ1では、一般的な理論強度式
を基礎とし、前述した2層めっき層10の各層の付着量
及び組成からなるパラメーター群と種々の基礎物理定数
とから構成される具体的な理論強度計算式を算出する。
【0030】次にステップ2では、図1に示したように
2層めっき鋼板10にX線管球から発生したX線を入射
角φ1 、φ2 (φ1 <φ2 )で照射し、まず入射角φ1
で入射したX線に対して被測定物である2層めっき鋼板
10から発生するFeKα線の強度、ZnKα線の強度
及びバックグランド強度(以下、BG強度と記す)を取
出角ψ1 またはその近傍で測定する。次に、同じ種類又
は異なる種類のX線管球から入射角φ2 で入射したX線
に対して2層めっき鋼板10から発生するMnKα線の
強度、ZnKα線の強度及びBG強度を取出角ψ2 また
はその近傍で測定する。
【0031】なお、測定角(φ1 、ψ1 )の条件下で測
定したFeKα線の強度、ZnKα線の強度及びBGの
強度をそれぞれI1(Fe) 、I1(Zn) 、I1(BG) とし、測
定角(φ2 、ψ2 )の条件下で測定したMnKα線の強
度、ZnKα線の強度及びBGの強度をそれぞれI2(M
n) 、I2(Zn) 、I2(BG) とする。
【0032】次に、これらの強度より下記の数1式〜数
4式の演算を行う。
【0033】
【数1】X1(Fe) =I1(Fe) /I1(BG)
【0034】
【数2】X1(Zn) =I1(Zn) /I1(BG)
【0035】
【数3】X2(Mn) =I2(Mn) /I2(BG)
【0036】
【数4】X2(Zn) =I2(Zn) /I2(BG) 次に、ステップ3として、上記数1式〜数4式で得られ
た強度比X1(Fe) 、X1(Zn) 、X2(Mn) 、X2(Zn) を理
論強度近似値Y1(Fe) 、Y1(Zn) 、Y2(Mn) 、Y2(Zn)
に変換する。
【0037】本発明では、下記の数5式〜数8式に示し
た簡易理論強度変換式を用いて、実測値X1(Fe) 、X
1(Zn) 、X2(Mn) 、X2(Zn) を理論強度近似値Y1(Fe)
、Y1(Zn) 、Y2(Mn) 、Y2(Zn) に変換する。
【0038】
【数5】Y1(Fe) =a1(Fe) X1(Fe) +b1(Fe)
【0039】
【数6】Y1(Zn) =a1(Zn) X1(Zn) +b(Zn)
【0040】
【数7】Y(Mn) =a2(Mn) X2(Mn) +b2(Mn)
【0041】
【数8】Y2(Zn) =a2(Zn) X2(Zn) +b2(Zn) なお、上記数5式〜数8式において、a1(Fe) 、a1(Z
n) 、a2(Mn) 、a2(Zn) 、b1(Fe) 、b1(Zn) 、b2(M
n) 、b2(Zn) は変換係数であるが、この変換係数は、
以下のようにして求める。すなわち、図1に示した2層
めっき鋼板10の各層の付着量や組成が既知の標準試料
を用い、予めステップ2で未知試料につき求めたのと同
じ条件で、I1(Fe) 、I1(Zn) 、I1(BG) 、I2(Mn) 、
2(Zn) 、I2(BG) を実測し、実測値から求めたX1(F
e) 、X1(Zn) 、X2(Mn) 、X2(Zn)と理論強度値Y1(F
e) 、Y1(Zn) 、Y2(Mn) 、Y2(Zn) との間に上記した
数5式〜数8式の簡易理論強度換算式が成立するよう
に、回帰分析等を行って各変換係数を定める。ただし、
変換係数を定める時のみ、数5式〜数8式の理論強度近
似値を理論強度値とを読みかえる。
【0042】ここで理論強度とは、測定条件と同じX線
管球、管電圧、幾何学的条件で測定した場合に得られる
蛍光X線測定強度を、2層めっき鋼板10を構成するZ
n−Fe合金めっき層12及びAl−Mn合金めっき層
13の付着量及び組成をパラメーターとし、この他に種
々の基礎物理定数含んだ理論強度計算式を用いて計算
し、前記X1(Fe) 、X1(Zn) 、X2(Mn) 、X2(Zn) に対
応する値として求めたものをいう。実際の測定値は、検
出器の感度特性やスリット系の影響等の装置定数を含む
ため、一般に理論強度とは異なった値となる。
【0043】このように、簡易理論強度換算式を使用
し、未知の装置定数を標準試料を使用して消去する方法
を採用したので、X1(Fe) 、X1(Zn) 、X2(Mn) 、X
2(Zn) として、未知の試料の実測値を代入することによ
り、そのときの理論強度近似値Y1(Fe) 、Y1(Zn) 、Y
2(Mn) 、Y2(Zn) を求めることができる。
【0044】次に、ステップ4、5として、前記2層め
っき鋼板の付着量及び組成をそれぞれ一定値としたパラ
メーター群Pk(k=1)を用い、前記数5式〜数8式
に示した理論強度近似値Y1(Fe) 、Y1(Zn) 、Y2(Mn)
、Y2(Zn) に対応する理論強度Y'1(Fe)、Y'1(Zn)、
Y'2(Mn)、Y'2(Zn)を求める。
【0045】次に、ステップ6に移行し、ここでは下記
の数9式による演算を行う。
【0046】
【数9】
【0047】次に、ステップ7に移行して、パラメータ
ーPkを変えて(k=k+1)Y'1(Fe)、Y'1(Zn)、
Y'2(Mn)、Y'2(Zn)を再計算し、これらと前記Y1(Fe)
、Y1(Zn) 、Y2(Mn) 、Y2(Zn) を用いて同様な演算
を行う。
【0048】そして、ステップ5〜7のループによる演
算を繰り返して行い、ステップ8において、これらのな
かで数9式に示した値(A)が最小の演算値を与えるパ
ラメーター群Pk(k=n)を決定する。
【0049】そして、ステップ8において決定されたパ
ラメーター群Pk(k=n)をもって、この2層めっき
鋼板10のAl−Mn合金めっき層13の付着量とMn
含有量、及びZn−Fe合金めっき層12の付着量とF
e含有量とすることにより、被測定物である2層めっき
鋼板10の各めっき層の付着量と組成とを得るものであ
る。
【0050】上記実施例に係るオンライン分析方法にお
いて、各分析線から得られた蛍光X線測定強度をそのま
ま使用せずにBG強度との比をとり、強度比X1(Fe) 、
1(Zn) 、X2(Mn) 、X2(Zn) としたのは、蛍光X線測
定強度に及ぼす2層めっき鋼板10のバタツキ及び温湿
度変動、管球より発生するX線強度の変動の影響を低減
でき、より精度の高い分析値を得ることができるからで
ある。
【0051】次に、実施例に係るオンライン分析装置に
ついて説明する。図3は実施例に係るオンライン分析装
置を示した構成図である。
【0052】図中、分析の対象となる2層めっき鋼板1
0は一定の速度で左より右に移動している。この2層め
っき鋼板10の上方には蛍光X線測定強度測定部22が
配設されており、この蛍光X線測定強度測定部22は、
所定の方向にX線を発生するCo管球23及びMo管球
24、このCo管球23及びMo管球24から発生する
X線の平行性を良好にするためのソーラースリット2
5、及び2層めっき鋼板10から発生した蛍光X線の強
度をソーラースリット25に挟まれた平板分光結晶26
を介して測定するための検出器27〜32を含んで構成
されている。この6個の検出器27〜32は、上記実施
例に係る分析方法で説明した4個の分析線強度及び2個
のBGの強度をそれぞれ検出できるように配設されてい
る。BG強度の検出器は、各取出し角において分光結晶
による回折角が2つの蛍光X線の回折角の間になるよう
に配設される。蛍光X線及びBG用の分光結晶は、各取
出し角においてほぼ同一の取出し角を与えるように上下
左右に近設される。このとき鋼板と各分光結晶の間に配
設されているそれぞれのソーラースリットを1個のソー
ラスリットに置き換えてもよい。
【0053】2層めっき鋼板10のバタツキが蛍光X線
の強度に及ぼす影響を小さくするために、上記のような
平行光学系の測定方法を採用すると同時に、分光結晶直
前のソーラースリット25が見込む広さ以上にX線照射
領域を拡大した。
【0054】また、Co管球23、Mo管球24、ソー
ラースリット25、平板分光結晶26、検出器27等
は、制御部38からの制御信号により位置等を制御する
ことができる。これら蛍光X線測定部22と制御部38
とで蛍光X線測定手段37を構成している。
【0055】さらに、33は信号処理手段であり、この
信号処理手段33は理論強度近似値算出手段34、理論
強度式算出手段35及び分析値算出手段36より構成さ
れている。
【0056】次に、以上のように構成された実施例に係
る分析装置の動作について説明する。
【0057】まず理論強度式算出手段35では、既存の
一般的な理論強度計算式に基づき、2層めっき鋼板10
の各層の付着量及び組成をパラメーターとし、分析試料
を対象として蛍光X線測定手段37を作動させるときと
同様の条件における理論強度計算式を導出する。この手
順は、めっき層の構成元素が変わらない限り再び行う必
要はない。
【0058】またMo管球24及びCo管球23から発
生したX線は、2層めっき鋼板10にそれぞれ入射角φ
1 =10〜30°、φ2 =50〜90°なる角度で照射
される。2層めっき鋼板10から発生するFeKα線の
強度、ZnKα線の強度及びBG強度を取出し角ψ1
10〜30°で、またMnKα線の強度、ZnKα線の
強度及びBG強度を取出し角ψ2 =50〜90°で、そ
れぞれ検出器27〜32を用いて検出する。そして、実
際に分析の対象となる2層めっき鋼板10を分析する前
に、2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成が既知の標
準試料を少なくとも二つ使用して、前記した分析線の蛍
光X線測定強度及びBG強度を検出し、これら強度から
数5式〜数8式の係数a1(Fe) 、a1(Zn) 、a2(Mn) 、
2(Zn)、b1(Fe) 、b1(Zn) 、b2(Mn) 、b2(Zn) を
決定し、その値を理論強度近似値算出手段34に送出し
ておく。
【0059】理論強度近似値算出手段34では、分析試
料を対象として蛍光X線測定手段37を作動させ、6個
の検出器27〜32より検出された蛍光X線測定強度及
びBG強度の値を取り込み、上記実施例に係る分析方法
で説明したようにステップ1〜3に従い理論強度近似値
1(Fe) 、Y1(Zn) 、Y2(Mn) 、Y2(Zn) を求める。
【0060】さらに分析値算出手段36では、理論強度
式算出手段35で得た理論強度計算式に、具体的にパラ
メーターであるZn−Fe合金めっき層12及びAl−
Mn合金めっき層13の付着量及び組成を代入してそれ
ぞれの分析線における理論強度Y'1(Fe)、Y'1(Zn)、
Y'2(Mn)、Y'2(Zn)を得、前記理論強度と理論強度近似
値算出手段34で得た理論強度近似値Y1(Fe) 、Y1(Z
n) 、Y2(Mn) 、Y2(Zn)とから数9式に示したような演
算を行い、その値(A)が最も小さいときの前記パラメ
ーターを分析値とする。このようにして、分析の対象と
している2層めっき鋼板10の各層の付着量及び組成を
得るものである。
【0061】次に、本発明に係るオンライン分析方法の
別の実施例を説明する。
【0062】上記実施例では、理論強度計算式を導出
し、これを用いてパラメーター群に対する理論強度を計
算したが、本実施例ではこのような理論強度計算式を用
いて、各パラメーターに関する検量線を求めておき、こ
の検量線を使用して理論強度値を求める。この場合のフ
ローチャートは図4のようになる。上記方法とステップ
11及び14以降の工程が異なるので、その部分につい
て説明する。
【0063】ステップ11では、上記の方法で導出した
ような理論強度計算式を用い、各パラメーターに関し
て、各分析線強度との関係をグラフ化した検量線を他の
パラメーターの変動範囲毎に複数個作成する。パラメー
ターは4つ存在するので、一つのパラメーターについて
検量線を求めようとすれば、他の3つのパラメーターを
固定せねばならない。従って、他の3つのパラメーター
は、検量線が余り変化しない限られた範囲内で変化する
ものとして検量線を作成するが、各検量線につき他の3
つのパラメーターの変動範囲を小さくとりすぎると、膨
大な数の検量線が必要となる。そこで、他の3つのパラ
メーターの変動範囲をそれぞれ大きく幾つかの範囲に分
けて各範囲毎に検量線を描くようにすれば、検量線の数
を一定の数に抑えることができる。また、実際の分析で
は、パラメーターの変動の範囲が限られていることが多
いため、作成する検量線の数を一定範囲に納めることが
できる。
【0064】次に、ステップ14では、ある程度各層の
付着量や組成を予想し、ステップ15でその値をパラメ
ーターにした場合につき、検量線を使用して各検量線に
おける蛍光X線測定強度(以下、検量線強度と記す)
Y”1(Fe) 、Y”1(Zn) 、Y”2(Mn) 、Y”2(Zn) を求
める。そして、ステップ16で上記実施例の場合と同様
に下記の数10式の計算を行い、さらに予想される範囲
でパラメーターを変動させて、同様に数10式の計算を
行い、最も小さい値(B)を与えるパラメーターを分析
値とするものである。
【0065】
【数10】
【0066】次に、本発明に係るオンライン分析装置の
別の実施例について説明する。
【0067】このオンライン分析装置は上述した別の実
施例に係るオンライン分析方法を用いて2層めっき鋼板
10の各層の付着量及び組成を得るものである。図5
は、本実施例に係るオンライン分析装置を示した構成図
である。
【0068】本実施例に係るオンライン分析装置は上記
したオンライン分析装置と基本的な構成はほぼ同様で、
理論強度式算出手段34に代わり、検量線記憶手段45
を備えている点が大きな相違点であり、ここではその点
を中心にして説明する。
【0069】この検量線記憶手段45では、上記オンラ
イン分析装置で用いた理論強度計算式等から作成した検
量線を記憶させておく。検量線の作成については、上記
別の実施例に係るオンライン分析方法で説明したので、
ここでは省略する。記憶させた検量線は、理論強度計算
式と比較すると簡単であるので、分析値の算出に複雑な
ソフトウエアや高速演算の可能なコンピュータを必要と
しないため、より安価な装置を製作できる。すなわち検
量線を用いる分析装置では、高価につく理論強度計算を
省略できる。
【0070】この検量線記憶手段45より得られた検量
線を使用し、予想されるパラメーター群(初期値)を代
入することにより検量線強度を求める。そして、得られ
た検量線強度と理論強度近似値を数10式に代入して、
分析値算出手段36においてその値(B)を求める。次
に、各パラメーターを許容変動範囲内で変化させて同様
にBを計算し、得られるB値が最も小さいときのパラメ
ーターを分析値とする。各パラメーターの許容範囲外で
B値がより小さくなる場合は、検量線をそのパラメータ
ー値に合致するものに入れ替えて同様の計算を行う。
【0071】図6〜図9は、図4に示した実施例に係る
オンライン分析装置を用いて実際に分析を行った際に得
られた2層めっき鋼板の各層の付着量と組成を、同じ試
料を化学分析により分析した結果と比較して示したもの
であり、縦軸は実施例に係る分析値であり、横軸は前記
化学分析による分析値である。詳細には、図6はAl−
Mn合金めっき層13の付着量、図7はAl−Mn合金
めっき層13の組成、図8はZn−Fe合金めっき層1
2の付着量、図9はZn−Fe合金めっき層12の組成
をそれぞれ示している。このときの測定角は、(φ1
ψ1 )=(20°,20°)、(φ2 ,ψ2 )=(70
°,70°)であり、Co管球23及びMo管球24に
よるX線照射の条件は40kV、70mAである。
【0072】ここで比較の対象としている化学分析値
は、めっき被膜を酸溶解後、ICP発光分光分析法で分
析することにより得られた値であり、この方法によれ
ば、オンライン分析はできないものの、各層の付着量及
び組成をより正確に求めることができることが知られて
いる。
【0073】図6〜図9から明らかなように、2層めっ
き鋼板10のバタツキや温湿度の変動等が加わる実ライ
ンであるにも拘らず、正確な分析値を得ることができ
た。また、測定時間は10秒という短時間で十分であっ
た。
【0074】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係るオンラ
イン分析方法(1)にあっては、分析対象が第1層にオ
ンラインで蛍光X線分析が困難な元素であるAlを含有
する2層めっき鋼板であるにも拘らず、前記2層めっき
鋼板にX線を互いに異なる角度で照射し、Al以外の成
分の特定の蛍光X線強度を高い取出し角及び低い取出し
角で同時に測定する方法をとっているので、同一の蛍光
X線にも拘らず、高い入射・取出し角で得たX線と低い
入射・取出し角で得たX線とが独立となり、Alの蛍光
X線を用いることができないために未知数の数が既知の
X線強度の数よりも大きくなる場合でも、前記2層めっ
き鋼板の各層の付着量及び組成の分析が可能となる。
【0075】また上記構成のオンライン分析方法(2)
によれば、上記(1)記載の方法を基本とし、前記理論
強度計算式に基づいて作成した検量線を使用するという
上記(1)記載の分析方法よりも簡便な方法により、前
記2層めっき鋼板の各層の付着量及び組成を分析が可能
となる。
【0076】また上記構成のオンライン分析装置(3)
によれば、X線管球と試料との間にモノクロメーターや
コリメータは設置せずにソーラースリットのみを配設
し、さらに試料と分光結晶、分光結晶と検出器との間に
ソーラースリットを配設し各分析線ごとに専用の固定検
出器を設けているので、発生する蛍光X線の強度低下が
最小限に抑えられ、各分析線の強度が精度良く測定され
る。また、光学系を鋼板のバタツキの影響を受けにくい
平行光学系としているので、分析対象となる2層めっき
鋼板の分析時の変位に起因するX線経路長の影響を受け
ず、迅速かつ高精度で前記2層めっき鋼板の各層の付着
量及び組成を分析することができる。
【0077】さらに上記構成のオンライン分析装置
(4)によれば、上記(3)記載の分析装置を基本と
し、前記理論強度計算式に基づいて検量線を作成し、こ
の検量線に基づいて分析値を算出する手段を備えている
ので、より簡便な手段により、迅速かつ高精度で前記2
層めっき鋼板の各層の付着量及び組成を分析することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2層めっき鋼板の分析方法を説明するための模
式的な断面図である。
【図2】本発明の実施例に係るオンライン分析方法の各
ステップを示したフローチャートである。
【図3】実施例に係るオンライン分析装置を示したブロ
ック構成図である。
【図4】別の実施例に係るオンライン分析方法の各ステ
ップを示したフローチャートである。
【図5】別の実施例に係るオンライン分析装置を示した
ブロック構成図である。
【図6】実施例に係るAl−Mnめっき層の付着量の分
析値を化学分析法による分析値と比較して示したグラフ
である。
【図7】実施例に係るAl−Mnめっき層の組成の分析
値を化学分析法による分析値と比較して示したグラフで
ある。
【図8】実施例に係るZn−Feめっき層の付着量の分
析値を化学分析法による分析値と比較して示したグラフ
である。
【図9】実施例に係るZn−Feめっき層の組成の分析
値を化学分析法による分析値と比較して示したグラフで
ある。
【符号の説明】
10 2層めっき鋼板 11 鋼板 12 Zn−Fe合金めっき層 13 Al−Zn合金めっき層 22 蛍光X線強度測定部 23 Co管球 24 Mo管球 25 ソーラースリット 27〜32 検出器 34 理論強度近似値算出手段 35 理論強度式算出手段 36 分析値算出手段 37 蛍光X線測定手段 38 制御部 45 検量線記憶手段

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下地の鋼板の表面にZn−Fe合金めっ
    き層が形成され、さらにその上にAl−Mn合金めっき
    層が形成された2層めっき鋼板にX線を異なる角度で互
    いに照射し、高い取出し角及び低い取出し角で得られる
    蛍光X線強度より各合金めっき層の付着量及び組成を得
    る2層めっき鋼板のオンライン分析方法であって、 前記X線照射と同一条件下における高い取出し角でのM
    nKα線とZnKα線、及び低い取出し角でのFeKα
    線とZnKα線のそれぞれの理論強度計算式を予め求め
    る第1工程と、 該第1工程で対象とした各分析線と同じ分析線に関する
    別の簡易理論強度換算式を得るために、標準試料より得
    られた蛍光X線測定強度と前記第1工程で求めた理論強
    度計算式から得られる蛍光X線理論強度とから前記簡易
    理論強度換算式の各係数を求め、前記一定条件下で前記
    2層めっき鋼板にX線を照射して得られた各蛍光X線測
    定強度を前記簡易理論強度換算式に代入して理論強度近
    似値をそれぞれ算出する第2工程と、 前記理論強度計算式中のパラメーター群である各合金め
    っき層の付着量と組成とを変化させ、それぞれのパラメ
    ーター群に対応して得られる各蛍光X線の前記理論強度
    と前記理論強度近似値との差の平方をそれぞれ求め、そ
    れらの合計量が最も小さい値となる前記理論強度式中の
    各パラメーターを分析値とする第3工程とを含むことを
    特徴とする2層めっき鋼板のオンライン分析方法。
  2. 【請求項2】 下地の鋼板の表面にZn−Fe合金めっ
    き層が形成され、さらにその上にAl−Mn合金めっき
    層が形成された2層めっき鋼板にX線を異なる角度で互
    いに照射し、高い取出し角及び低い取出し角で得られる
    蛍光X線測定強度より各合金めっき層の付着量及び組成
    を得る2層めっき鋼板のオンライン分析方法であって、 前記X線照射と同一条件下における高い取出し角でのM
    nKα線とZnKα線、及び低い取出し角でのFeKα
    線とZnKα線のそれぞれについて求められた理論強度
    計算式を基にし、該理論強度計算式中のパラメーター群
    である各合金めっき層の付着量と組成のそれぞれに関す
    る理論強度の検量線を作成する第1工程と、 該第1工程で対象とした各分析線と同じ分析線に関する
    別の簡易理論強度換算式を得るために、標準試料より得
    られた蛍光X線測定強度と前記第1工程で求めた理論強
    度計算式から得られる蛍光X線理論強度とから前記簡易
    理論強度換算式の各係数を求め、前記一定条件下で前記
    2層めっき鋼板にX線を照射して得られた各蛍光X線測
    定強度を前記簡易理論強度換算式に代入して理論強度近
    似値をそれぞれ算出する第2工程と、 前記パラメーター群の各パラメーターをそれぞれ一定値
    に定めた場合に前記検量線より得られる各分析線の理論
    強度と前記理論強度近似値とを比較してその差の平方を
    求め、それらの合計量が最も小さい値となる前記各パラ
    メーターを分析値とする第3工程とを含むことを特徴と
    する2層めっき鋼板のオンライン分析方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の2層めっき鋼板のオンラ
    イン分析方法に用いられる分析装置であって、X線を発
    生するX線発生部と、X線のパスラインを決め、2層め
    っき鋼板に所定の入射角で投射し、所定の取出し角で受
    光するためのスリット系と、2層めっき鋼板から発生す
    るMnKα線、ZnKα線及びバックグランド強度を高
    い取出し角で検出する3個の検出器と、2層めっき鋼板
    から発生するFeKα線、ZnKα線及びバックグラン
    ド強度を低い取出し角で検出する3個の検出器とを備え
    た蛍光X線測定強度測定部及び該蛍光X線測定強度測定
    部の制御を行う制御部からなる蛍光X線測定手段を有
    し、さらに前記高い取出し角で検出するMnKα線とZ
    nKα線及び低い取出し角で検出するFeKα線とZn
    Kα線のそれぞれの分析線について、分析時と同一の条
    件下における理論強度計算式を求める理論強度計算式導
    出手段と、 該理論強度計算式導出手段で対象とした各分析線と同じ
    分析線に関する別の簡易理論強度換算式を記憶し、標準
    試料を対象として前記蛍光X線測定手段を作動させるこ
    とにより検出された各蛍光X線測定強度と前記標準試料
    の蛍光X線理論強度とから前記簡易理論強度換算式の各
    係数を求め、次に2層めっき鋼板を対象として前記蛍光
    X線測定手段を作動させることにより検出された各蛍光
    X線測定強度を前記簡易理論強度換算式に代入して理論
    強度近似値をそれぞれ算出する理論強度近似値算出手段
    と、 前記理論強度計算式中のパラメーター群である各合金め
    っき層の付着量と組成とを変化させ、それぞれのパラメ
    ーター群に対応して算出される各分析線の理論強度と前
    記理論強度近似値との差の平方をそれぞれ求め、それら
    の合計量が最も小さい値となる前記理論強度式中の各パ
    ラメーターを分析値とする分析値算出手段とを備えてい
    ることを特徴とするオンライン分析装置。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の2層めっき鋼板のオンラ
    イン分析方法に用いられる分析装置であって、X線を発
    生するX線発生部と、X線のパスラインを決め、2層め
    っき鋼板に所定の入射角で投射し、所定の取出し角で受
    光するためのスリット系と、2層めっき鋼板から発生す
    るMnKα線、ZnKα線及びバックグランド強度を高
    い取出し角で検出する3個の検出器と、2層めっき鋼板
    から発生するFeKα線、ZnKα線及びバックグラン
    ド強度を低い取出し角で検出する3個の検出器とを備え
    た蛍光X線測定強度測定部及び前記蛍光X線測定強度測
    定部の制御を行う制御部からなる蛍光X線測定手段を有
    し、さらに前記高い取出し角で検出するMnKα線とZ
    nKα線及び低い取出し角で検出するFeKα線とZn
    Kα線のそれぞれの分析線について、分析時と同一条件
    下で作成した前記理論強度計算式中のパラメーター群で
    ある各合金めっき層の付着量と組成のそれぞれに関する
    理論強度の検量線を記憶する検量線記憶手段と、 該検量線記憶手段で対象とした各分析線と同じ分析線に
    関する別の簡易理論強度換算式を記憶し、標準試料を対
    象として前記蛍光X線測定手段を作動させることにより
    検出された各蛍光X線測定強度と前記標準試料の蛍光X
    線理論強度とから前記簡易理論強度換算式の各係数を求
    め、次に2層めっき鋼板を対象として前記蛍光X線測定
    手段を作動させることにより検出された各蛍光X線測定
    強度を前記簡易理論強度換算式に代入して理論強度近似
    値をそれぞれ算出する理論強度近似値算出手段と、 前記パラメーター群の各パラメーターをそれぞれ一定値
    に定めた場合に前記検量線より得られる各分析線の理論
    強度と前記理論強度近似値とを比較してその差の平方を
    求め、それらの合計量が最も小さい値となる前記各パラ
    メーターを分析値とする分析値算出手段とを備えている
    ことを特徴とするオンライン分析装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO1997006430A1 (en) * 1995-08-09 1997-02-20 Asahi Kasei Kogyo Kabushiki Kaisha Method and apparatus for total reflection x-ray fluorescence spectroscopy

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WO1997006430A1 (en) * 1995-08-09 1997-02-20 Asahi Kasei Kogyo Kabushiki Kaisha Method and apparatus for total reflection x-ray fluorescence spectroscopy
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