JPH07165471A - 高密度炭素焼成体の黒鉛化方法 - Google Patents

高密度炭素焼成体の黒鉛化方法

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JPH07165471A
JPH07165471A JP5341866A JP34186693A JPH07165471A JP H07165471 A JPH07165471 A JP H07165471A JP 5341866 A JP5341866 A JP 5341866A JP 34186693 A JP34186693 A JP 34186693A JP H07165471 A JPH07165471 A JP H07165471A
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Keiichiro Teramoto
恵一郎 寺本
Kazuyuki Kakehashi
和幸 掛橋
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 表面組織に酸化によるピンホールを発生させ
ることなしに、等方性高密度質の炭素焼成体を効率よく
黒鉛化処理する方法を提供する。 【構成】 静水圧プレス(CIP) により成形した炭素質成
形体を焼成炭化処理して得られる等方性高密度組織を備
える炭素焼成体を、パッキング材に埋め込んだ状態で黒
鉛化炉により2600〜3000℃の温度に昇温して黒
鉛化処理する方法において、黒鉛化処理の送電終了後、
炉温が800〜400℃の温度範囲で黒鉛化炉の上面に
水を散布もしくは噴霧して強制冷却する。強制冷却の開
始温度は、800〜700℃の間に設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、等方性高密度質の炭素
焼成体を組織欠陥の発生を伴うことなしに効率よく黒鉛
化処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】等方性高密度黒鉛材は、例えば放電加工
用電極、ホットプレス用ダイス、アルミニウム蒸着用や
半導体製造用のルツボ、耐熱耐食性の各種治具材など多
くの用途に汎用されているが、近時、材料の組織性状に
対する要求は益々厳しくなってきている。
【0003】現在、一般に実用されている等方性黒鉛材
の工業的な製造プロセスは、石油系または石炭系コーク
ス粉の骨材にピッチ系バインダーを配合して混練処理す
る捏合工程、混練物を再粉砕した原料粉を冷間静水圧プ
レス(CIP) により等方的に成形する成形工程、成形体を
焼成炭化して等方性高密度組織の炭素成形体を得る焼成
工程、および炭素焼成体を黒鉛化処理する黒鉛化工程か
らなっている。
【0004】このうち、黒鉛化工程は、アチソン炉と呼
ばれる電気抵抗加熱式の黒鉛化炉に炭素焼成体を詰め、
周囲をコークス粉粒、珪砂などの断熱パッキング材で被
包したのちターミナル電極を介して低電圧大電流を送電
し、炉内の炭素焼成体およびパッキング材の抵抗熱によ
り2600〜3000℃の高温度に昇温する操作でおこ
なわれる。この際の温度制御は、所定のプログラムに沿
った昇温速度、最高温度保持、および降温速度の条件に
調整しながら実施されるが、送電終了後における降温段
階は炉の自然放冷によっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、等方性
高密度炭素焼成体を上記の工程で黒鉛化すると、処理過
程で材質表面に直径10μm 〜0.1mm程度の微細凹状
のピンホールが発生し、組織欠陥を与えることがある。
本発明者らはこの原因を探るため、原料コークスの灰
分、パッキング材の質、酸化雰囲気の状況、炉出の温度
等の影響について詳細に解析した結果、その主因は送電
終了後の放冷時における酸化侵食にあり、とくに450
〜700℃の温度域で酸化によるピンホールが多く発生
することが判明した。この対策について多角的な検討を
進めたところ、放冷段階の特定温度域で黒鉛化炉の上面
に水を散布または噴霧して強制冷却するとピンホールの
発生は効果的に減少する事実を確認した。
【0006】本発明は、前記の知見に基づいて開発され
たもので、その目的は、表面組織に酸化によるピンホー
ルを発生させることなしに等方性高密度炭素焼成体を効
率的に黒鉛化処理することができる炭素焼成体の黒鉛化
方法を提供することにある。
【0007】
【課題が解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による高密度炭素焼成体の黒鉛化方法は、静
水圧プレス(CIP) により成形した炭素質成形体を焼成炭
化処理して得られる等方性高密度組織を備える炭素焼成
体を、パッキング材に埋め込んだ状態で黒鉛化炉により
2600〜3000℃の温度に昇温して黒鉛化処理する
方法において、黒鉛化処理の送電終了後、炉温が800
〜400℃の温度範囲で黒鉛化炉の上面に水を散布もし
くは噴霧して強制冷却することを構成上の特徴とする。
【0008】本発明による黒鉛化処理の対象となる等方
性高密度組織の炭素焼成体は、次のようにして製造され
る。まず、石油コークスまたはピッチコークスもしくは
その混合物を機械的に微粉砕して骨材原料とする。骨材
原料はバインダーとともに捏合する。バインダーには、
石炭系の硬ピッチ、中ピッチ、軟ピッチ、コールタール
のほか石油系ピッチなどが用いられ、骨材成分100重
量部に対して60〜110重量部の割合で配合する。バ
インダー量が70重量部未満では結合力が不十分とな
り、110重量部を越えると焼成後の材質に亀裂や破損
を与えるようになる。捏合工程は、骨材原料とバインダ
ーが均一に分散混練するように捏合装置を用いておこな
う。
【0009】捏合された混練物は、適宜な機械的粉砕装
置により再粉砕処理して成形粉を作製する。成形粉の平
均粒径は骨材段階における平均粒径と同等以上とする必
要がある。この理由は、骨材粒径より細かく粉砕すると
表面にバインダー成分が介在しない粒子の割合が高くな
り、緻密な材質組織が得られ難くなるためである。ま
た、成形粉の最大粒径は骨材段階にける最大粒径の3倍
以下に設定することが好ましい。前記の最大粒径を越え
るようになると材質組織中に大きな気孔が生成し、緻密
な組織が得られなくなる。成形粉は、所定のラバーケー
スに充填し静水圧プレス(CIP) により成形する。つい
で、成形体を常法により非酸化性雰囲気下の加熱炉で約
1000℃までの温度で焼成炭化処理して等方性高密度
組織の炭素焼成体を得る。
【0010】黒鉛化処理は、上記の工程で得られた等方
性高密度組織の炭素焼成体を黒鉛化炉に詰め、周辺をパ
ッキング材で被包して埋め込んだ状態で炉に送電し、所
定の昇温速度で2600〜3000℃まで上昇し、この
温度に一定時間保持したのち送電を停止して放冷する操
作でおこなわれる。
【0011】本発明の主要な構成要件は、前記の送電終
了後における放冷段階であって、炉温が800〜400
℃の温度範囲で黒鉛化炉の上面に水を散布もしくは噴霧
し、炉を強制冷却するところにある。該強制冷却の開始
温度が800℃を越えるとピンホールの発生に対する抑
制効果が発現せず、また400℃を下廻る温度域では最
早ピンホールが発生しないから、それより低温段階を強
制急冷の停止点とする必要はなくなる。寧ろ、低温度域
での散水は、処理後のパッキング材に水分が残留して塊
状化する等の不都合を生じるようになる。前記した強制
冷却の開始温度は700℃まで下げることは許容される
が、650℃まで下げるとピンホールの発生が認められ
るようになる。したがって、強制冷却の開始温度は、8
00〜700℃の間で設定する必要がある。水の散布も
しくは噴霧は、黒鉛化炉の上部に炉面全体が均等に濡れ
るようにシャワー式、スピンクラー式の散布装置または
霧化機構の噴霧装置を設置しておこなわれ、散布または
噴霧する水量は特に限定されない。
【0012】
【作用】黒鉛化炉の上面に散布もしくは噴霧された水は
高温のパッキング材と均一に接触して直ちに気化し、そ
の蒸発潜熱により冷却作用が効果的に促進される。した
がって、最も酸化を受け易い650〜450℃の冷却温
度域を含む800〜400℃(急冷開始温度:800〜
700℃の間)の温度範囲において冷却速度が著しく速
まり、この強制冷却作用で黒鉛化冷却時の酸化による炭
素焼成体組織のピンホール発生は効果的に抑制され、殆
ど発生が認められなくなる。同時に、強制冷却の作用に
より全体的な冷却時間が短縮化されるから、生産能率の
向上にも寄与する。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して詳
細に説明する。
【0014】実施例1から2、比較例1〜4 (1) 炭素焼成体の製造 平均粒径2.5μm 、最大粒径10μm の石炭系コーク
ス粉100重量部にピッチバインダー110重量部を配
合して捏合機で投入し、200℃に加熱しながら捏合処
理した。混練物を冷却したのち、ジェットミル粉砕機に
より平均粒径7μm 、最大粒径28μm に再粉砕して成
形粉を得た。この成形粉をラバープレスに充填して静水
圧プレス(CIP) にセットし、ブロック形状に成形した。
ついで、成形体を焼成炉に詰めて非酸化性雰囲気下で約
1000℃の温度で焼成炭化処理し、等方性高密度組織
を備える炭素焼成体を製造した。
【0015】(2) 黒鉛化処理 上記の炭素焼成体を黒鉛粉パッキング材に埋め込んだ状
態で黒鉛化炉に炉詰めした。送電を開始して30℃/hr
の昇温速度で2800℃まで上昇し、この温度段階の特
定の温度になったら黒鉛化炉の上部に多数の孔を穿設し
た散水パイプを設置し、散水パイプから炉の上部全面に
水を散水しながら特定の温度範囲を強制冷却した。冷却
時の温度測定は、炭素焼成体の上端部から300mmの位
置を測温点とした。
【0016】(3) 黒鉛化品の材質評価 このようにして散水温度範囲を変動させた条件で冷却し
た各黒鉛化品の表面組織を電子顕微鏡で観察し、ピンホ
ールの発生率を評価した。その結果を散水温度範囲と対
比して表1に示した。なお、ピンホールの発生率は、直
径5μm 以上のピンホールが確認された黒鉛化品の全処
理品に対する比率として示した。
【0017】表1の結果から、実施例による散水条件で
得た黒鉛化品の表面組織には殆どピンホールが認められ
ず、冷却時の酸化が効果的に抑制されていることが判明
した。これに対し、散水の強制冷却開始温度が800℃
以上の比較例1、2ではピンホールの発生が抑制され
ず、また強制冷却開始温度が650℃の比較例3でも同
様にピンホールが発生した。また、比較例3では散水停
止温度が300℃と低い関係で処理後のパッキング材に
塊状化が生じた。
【0018】
【表1】
【0019】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば等方性高
密度組織を有する炭素焼成体を黒鉛化する際の冷却過程
において、特定温度範囲を散水等で強制冷却することに
より、酸化に伴うピンホールの発生をほぼ完全に抑制す
ることが可能となる。したがって、本発明を適用すれ
ば、常に材質組織欠陥のない高品質の等方性高密度黒鉛
材を効率的に工業生産することができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 静水圧プレス(CIP) により成形した炭素
    質成形体を焼成炭化処理して得られる等方性高密度組織
    を備える炭素焼成体を、パッキング材に埋め込んだ状態
    で黒鉛化炉により2600〜3000℃の温度に昇温し
    て黒鉛化処理する方法において、黒鉛化処理の送電終了
    後、炉温が800〜400℃の温度範囲で黒鉛化炉の上
    面に水を散布もしくは噴霧して強制冷却することを特徴
    とする高密度炭素焼成体の黒鉛化方法。
  2. 【請求項2】 強制冷却の開始温度を800〜700℃
    の範囲に設定する請求項1記載の高密度炭素焼成体の黒
    鉛化方法。
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