JPH07158700A - 歯付ベルト - Google Patents

歯付ベルト

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JPH07158700A
JPH07158700A JP5340651A JP34065193A JPH07158700A JP H07158700 A JPH07158700 A JP H07158700A JP 5340651 A JP5340651 A JP 5340651A JP 34065193 A JP34065193 A JP 34065193A JP H07158700 A JPH07158700 A JP H07158700A
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和廣 秋田
Hiroo Osada
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 べルト歯部の中で最も圧縮応力を受けるベル
ト歯元部とそれを含む領域を補強して高負荷伝動を可能
にし、しかも製造の容易な歯付ベルトを提供することを
目的とする。 【構成】 歯付ベルトの歯部2における心線5の位置か
らベルト歯部先端6に至るまでの領域を2つに区分し、
心線5からベルト歯部先端6に至るまでの高さをHとし
た場合に、心線5からHの2/3付近までの区域を動力
伝達領域7に、残りのベルト歯部先端6に至る区域をベ
ルト歯先部8としたエラストマー材料からなる歯付ベル
ト1であり、エラストマー材料を含浸した不織布11が
溝部3の歯底面12と動力伝達領域7内に連続して配置
され、上記動力伝達領域7内に位置する不織布11付近
に分散した短繊維14が該動力伝達領域7内のみに存在
している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は歯付ベルトに係り、液状
ポリウレタン等のエラストマー材料から形成された歯付
ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の歯付ベルトは、加硫ゴムから成形
されたものや液状ポリウレタン等を原料として形成され
たものが知られている。このうち、ポリウレタン製歯付
ベルトは、耐候性と耐摩耗性に優れているために、屋外
で使用される自転車等の動力伝達装置に装着されてい
る。このポリウレタン製歯付ベルトは、ベルト長手方向
に一定ピッチで歯部と溝部を交互に有し、ピッチライン
上にガラス繊維やアラミド繊維等のロープからなる心線
を背部に埋設した構成からなっている。
【0003】しかし、この歯付ベルトは溝部の歯底面に
補強材が存在しないために、歯底面が摩耗して心線の損
傷が起こりやすくなっていた。具体的には、駆動中にほ
こり、砂等の異物がプーリ歯部表面とベルト歯底面の間
に噛み込み、ベルト歯底面が擦られて摩耗しやすくな
り、心線を露出させていた。その結果、心線は水分を吸
収して強度低下を起こし、ベルトを早期に切断させてい
た。
【0004】この点を改善するために、荒目の織布をベ
ルト歯底面に沿って配置したポリウレタン製歯付ベルト
が実公昭46−6412号公報に提案され、またエラス
トマー材料を含浸した不織布をベルト歯底面に沿って配
置したポリウレタン製歯付ベルトが実開昭63−666
48公報に記載されている。
【0005】更に、高負荷伝動の能力をもつベルトとし
て、心線にグレーグフィラメントの引張弾性率が約1.
3×106 kg/cm2 のアラミド2型コード材料を使
用し、ベルト歯部と歯底面に帆布を被覆したポリウレタ
ン製歯付ベルトが、特公平3−9335号公報に開示さ
れている。更に、他のポリウレタン製歯付ベルトとし
て、ベルト歯底面にエラストマー材料を含浸し薄く圧縮
された圧縮不織布を設け、歯部内ではこの圧縮不織布と
連続する不織布が非加圧の拡散状態として分散され、歯
部を補強した構成のものが、特公平5−62657号公
報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のベルト
歯部と歯底面に帆布を被覆したポリウレタン製歯付ベル
トは、帆布がベルト歯部と歯底面を充分に保護している
ために、心線の損傷が小さくて高負荷伝動を可能にして
いる。しかし、このベルトを製造方法する場合、帆布を
予め金型の溝部に沿わせておかないと、帆布が歯部表面
に密着することができなかった。また、特公平5−62
657号公報に開示された伝動ベルトは、歯部全体を補
強している。
【0007】しかし、従来の歯付べルトを検討した結
果、歯付べルトでは歯部全体をまんべんなく補強する必
要はなく、歯付べルトがプーリと噛み合う時にべルト歯
部の中でも最も圧縮応力を受けるベルト歯元部とそれを
含む領域を補強すればよいことが明らかになった。本発
明はこのような問題点を改善するものであり、特にべル
ト歯部の中で最も圧縮応力を受けるベルト歯元部とそれ
を含む領域を補強して高負荷伝動を可能にし、しかも製
造の容易な歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の特徴は、
長さ方向に沿って歯部と溝部を交互に形成し、心線を背
部に埋設し、上記歯部における心線の位置からベルト歯
部先端に至るまでの領域を2つに区分し、心線からベル
ト歯部先端に至るまでの高さをHとした場合に、心線か
らHの2/3付近までの区域を動力伝達領域に、残りの
ベルト歯部先端に至る区域をベルト歯先部としたエラス
トマー材料からなる歯付ベルトにおいて、エラストマー
材料を含浸した不織布が溝部の歯底面と動力伝達領域内
に連続して配置され、短繊維が上記動力伝達領域内の不
織布付近に分散し、かつ動力伝達領域内のみに存在して
いる歯付ベルトにある。また、動力伝達領域内の短繊維
が不織布から分離し拡散した場合や、動力伝達領域内の
短繊維の分散密度がベルト歯元部付近で最も高くなって
いる場合も含む。
【0009】図1は本発明に係る歯付ベルトの要部断面
図であり、図2は図1に示す歯付ベルトの歯部の拡大図
である。本発明の歯付ベルト1は、液状ポリウレタン等
を原料として形成され、ベルト長手方向(図中矢印)に
沿って複数の歯部2と溝部3とを交互に有し、背部4に
心線5を埋設している。
【0010】上記歯部2は、心線5の外面Lからベルト
歯部先端6に至るまでの領域を2つに区分され、心線5
に近い領域がプーリからの大きな圧縮応力を受けて動力
の伝達を担う動力伝達領域7になり、ベルト歯部先端6
に至る領域をベルト歯先部8になる。ベルト歯元部9は
動力伝達領域7の一部となり、最も圧縮応力を受ける箇
所になっている。動力伝達領域7とベルト歯先部8との
境界線Bは、心線5の外面Lからベルト歯部先端6に至
るまでの高さをHとした場合に、心線5の外面LからH
の2/3付近、好ましくは1/2付近にある。
【0011】エラストマー材料を含浸した不織布11
は、溝部の歯底面12と動力伝達領域7内に連続して配
置されている。動力伝達領域7内の不織布11は、歯底
面12のそれよりやや薄くなって心線5から垂れ下がっ
た状態になり、動力伝達領域7を補強している。更に、
上記動力伝達領域7内では、短繊維14が不織布11付
近に分散して動力伝達領域7の補強を助長している。具
体的には、短繊維14は不織布11から分離し拡散して
いる。ベルト歯元部9では、他の動力伝達領域7に比べ
ると不織布11および短繊維14の添加量を多くして、
補強強化を向上させている。また、短繊維14の分散状
態は、均一あるいは不均一でもよい。
【0012】短繊維14を不均一に分散させた実施例が
図3に示される。この歯付ベルト1では、短繊維14の
分散密度がベルト歯元部9付近で最も高くなり、ベルト
歯元部9を局部的に補強して亀裂発生を阻止している。
この場合、動力伝達領域7とベルト歯先部8との境界線
Bは、心線5の外面LからHの1/2付近にある。
【0013】また、ここで使用する不織布11は、長さ
5〜60mmのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリア
ミド、ポリエステル、アクリル、ガラス等の繊維を素材
とし、例えばウエブ中の繊維を機械的な作用により絡み
合わせ、交絡させて強力を生じさせるニードルパンチ等
により成形され、バインダー処理をしていない。構成し
ている短繊維14は分離可能になっている。
【0014】その目付量は130〜250g/m2 で、
成形する前の不織布11の厚みは、JISL1085に
準じて測定すると1.0〜2.0mmである。不織布1
1の厚みが2.0mmを超えると、歯底面12から心線
5中心位置までのPLDが大きくなりすぎ、また不織布
11と心線5を巻き付けた内金型を、予め液状ポリウレ
タンを注型した外金型に挿入してベルトを成形する方法
では、動力伝達領域7内の不織布14から分離し拡散し
た短繊維14がベルト歯先部8まで分散し、動力伝達領
域7内での短繊維の分散密度が小さくなって補強効果が
低下する。一方、不織布11の厚みが1.0mm未満に
なると、PLDが小さくなりすぎて心線5が充分に保護
されず、また不織布11から分散する短繊維14の量が
減少して、動力伝達領域7を充分に補強できなくなる。
【0015】動力伝達領域7内で不織布14から分離し
拡散した短繊維14は、元の不織布14の30〜60体
積%が好ましい。
【0016】上記心線5としては、パラ系アラミド繊維
(商品名:トワロン、ケブラー、テクノーラ)あるいは
ガラス繊維(Eガラス、高強度ガラス)のいずれでもよ
く、その構成、太さ、撚り数等には左右されない。
【0017】本発明の歯付ベルト1は、以下の通り製造
される。まず、図5に示すように、溝部21を有する内
金型20の外面に、厚1.0〜2.0mmのエンドレス
状の不織布11を装着した後、その上から心線5を巻き
付けて不織布11を押し付ける。不織布11は少し溝部
21へ入り込む。この内金型20を予め所定量の液状ポ
リウレタンを注入した外金型22内に挿入し、金型を密
閉した後に金型内を減圧して液状ポリウレタン内の気泡
を除去するとともに、液状ポリウレタンを上方へ流動さ
せて不織布11に浸透させる。このとき、液状ポリウレ
タンの乱流によって不織布11から一部の短繊維14が
分離し拡散する。液状ポリウレタンが上昇し終わると、
金型を開けて空気を入れて加圧し、金型温度を80〜1
30°Cで液状ポリウレタンを硬化させる。硬化後にベ
ルトスリーブを内金型20から抜き取り、輪状に切断し
て歯付ベルトが得られる。
【0018】
【作用】この発明の歯付ベルト1は、不織布11および
短繊維14がべルト歯部2の中で最も圧縮応力を受ける
ベルト歯元部9とこれを含む動力伝達領域7を補強し
て、ベルト歯元部9の亀裂発生とその伝播を阻止するこ
とができる。即ち、図4に示すように、ベルト歯部2に
おいて心線5の位置からベルト歯部先端6に至るまでの
領域は、力学的にベルト歯部2の高さ方向に2つに分割
される。心線5に近い動力伝達領域7は、図中矢印方向
へ回転しているプーリ17からベルト歯元部9付近で大
きな圧縮応力Fを受け、ベルト歯先部8に向かって序々
に小さな圧縮応力を受けている。ベルト歯元部9は大き
な圧縮歪みを受けている。
【0019】この動力伝達領域7とベルト歯先部8の境
界線Bは、心線5の下面Lからベルト歯部先端6に至る
までの高さをHとした場合に、心線5の下面LからHの
約2/3付近にある。この動力伝達領域7に不織布11
を配置するとともに、この不織布11から分離し拡散し
た短繊維14をこの領域7内のみに存在させることで、
集中的に動力伝達領域7を補強することができる。ベル
ト歯先部8は、圧縮応力を受けるけれども短繊維14を
存在させる必要がなく、エラストマー材料で充分であ
る。また、動力伝達領域7内で拡散した短繊維14の分
散密度をベルト歯元部9付近で最も高くすることで、ベ
ルト歯元部9をさらに補強して亀裂発生を阻止すること
ができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。 実施例1 目付量170g/m2 、厚さ1.3mmで、ニードルパ
ンチにより成形され、バインダー処理がされていない
6.6ナイロン繊維からなる筒状の不織布を、溝部を有
する内金型の外面に装着した。次に、この上に、アラミ
ド繊維(商品名:トワロン:エンカ社製)1,090デ
ニール/5本(5,450デニール)を引き揃え、S方
向に11回/10cm、Z方向に25回/10cmの割
合で撚られたS、Z一対の撚りコードを心線とし、この
心線を接着処理せずにスピニングした。心線占有率は9
0.0〜94.2%である。
【0021】上記内金型を予め所定量の液状ポリウレタ
ン原料を注入した外金型内に挿入して、金型内を密閉し
て減圧し液状ポリウレタンを上昇させて不織布内に浸透
させた。液状ポリウレタンが上昇し終わると、金型内を
開けて空気を入れて加圧し、所定温度で液状ポリウレタ
ンを硬化させた。この時の金型温度は、110°Cであ
った。硬化後にベルトスリーブを内金型から抜き取り、
輪状に切断して歯付ベルトを得た。得られたベルトサイ
ズは、ベルトの歯型:S8M(STPD)、歯数:15
6、ベルト幅:12mm、歯ピッチ:8mmであった。
ベルトは、図2に示すように、エラストマー材料を含浸
した不織布が溝部の歯底面と動力伝達領域内に連続して
配置され、動力伝達領域内に位置する不織布から拡散し
た短繊維がこの領域内のみに存在するものであった。
【0022】次に、このベルトを2軸走行試験機に取り
付けて走行させ、耐久試験を行った。この走行試験で
は、ベルトを駆動プーリ(歯数36)と従動プーリ(歯
数36)に巻き付け、駆動プーリの回転数1,200r
pm、負荷4.8KW、ベルト初張力48kgで走行さ
せた。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】尚、比較例1として、実施例1と同様の方
法で作製した不織布を使用しない歯付ベルトを用いた。
また、比較例2として、不織布の代わりに、厚さ0.4
mmの6ナイロン繊維からなる織布を用いて、実施例1
と同様の方法で作製した歯付ベルトを用いた。この結果
によると、本発明の歯付ベルトは、比較例2に比べて優
れた耐久性を有していることが判る。
【0025】
【発明の効果】以上のように、本発明の歯付ベルトで
は、不織布を最も圧縮応力を受ける動力伝達領域内に配
置するとともに、この不織布付近に分離した短繊維をこ
の領域内のみに存在させることで、集中的に動力伝達領
域を補強することができ、ベルト歯元部を含む動力伝達
領域を効率よく補強してベルト歯元部から発生しやすい
亀裂を阻止することができ、また動力伝達領域内の短繊
維の分散密度をベルト歯元部付近で最も高くすること
で、ベルト歯元部をさらに補強して高負荷伝動を可能に
する効果がある。更に、従来のようにベルト歯部全体を
補強する場合に比べて、ベルト歯先部に補強材となる短
繊維を存在させる必要がないために、添加する補強材を
減量することができ、また製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯付ベルトの要部断面図である。
【図2】図1に示す歯付ベルトの歯部拡大図である。
【図3】本発明に係る他の歯付ベルトの歯部拡大図であ
る。
【図4】本発明に係る歯付ベルトとプーリとが噛み合っ
ている状態を示す図である。
【図5】本発明に係る歯付ベルトの製造工程における金
型の断面図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト 2 歯部 3 溝部 4 背部 5 心線 6 ベルト歯部先端 7 動力伝達領域 8 ベルト歯先部 9 ベルト歯元部 11 不織布 12 歯底面 14 短繊維

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長さ方向に沿って歯部と溝部を交互に形
    成し、心線を背部に埋設し、上記歯部における心線の位
    置からベルト歯部先端に至るまでの領域を2つに区分
    し、心線からベルト歯部先端に至るまでの高さをHとし
    た場合に、心線からHの2/3付近までの区域を動力伝
    達領域に、残りのベルト歯部先端に至る区域をベルト歯
    先部としたエラストマー材料からなる歯付ベルトにおい
    て、エラストマー材料を含浸した不織布が溝部の歯底面
    と動力伝達領域内に連続して配置され、短繊維が上記動
    力伝達領域内の不織布付近に分散し、かつ動力伝達領域
    内のみに存在していることを特徴とする歯付ベルト。
  2. 【請求項2】 動力伝達領域内の短繊維が不織布から分
    離し拡散したものである請求項1記載の歯付ベルト。
  3. 【請求項3】 動力伝達領域内の短繊維の分散密度がベ
    ルト歯元部付近で最も高くなっている請求項1または2
    記載の歯付ベルト。
  4. 【請求項4】 動力伝達領域が、心線からベルト歯部先
    端に至るまでの高さをHとした場合に、心線からHの1
    /2付近までの領域である請求項1または2記載の歯付
    ベルト。
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