JPH0714625U - ガス絶縁計器用変圧器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】１次コイルの外周に取付けられる電位固定板の
加工を容易にする。 【構成】積層された部分を有しない帯状の１枚板の幅方
向の端部２ｂ，２ｂ及び長手方向の端部にアール付け加
工を施した素材板を１ターンを形成しないように湾曲さ
せることにより、電位固定板２を形成し、この電位固定
板を１次コイル１の外周に配置する。電位固定板の外周
面に位置決め穴２ｈを設け、高圧コロナシールド３に取
付けた押えボルト５の端部を位置決め穴２ｈに挿入し
て、高圧コロナシールド３を位置決めする。電位固定板
２を押えボルト５により押圧して１次コイル１に固定す
る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、計器用変圧器の本体をＳＦ₆ ガスが封入されたタンク内に収容した 構造を有するガス絶縁計器用変圧器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

ガス絶縁計器用変圧器においては、プラスチックフィルムによりレヤー間を絶 縁して巻回した２次コイル（低圧コイル）を鉄心に巻装し、該２次コイルの外側 に同じくプラスチックフィルムによりレヤー間を絶縁して巻回した１次コイル（ 高圧コイル）を配置している。

【０００３】 この種の変圧器では、１次コイルの外周側の電界を緩和するため、該１次コイ ルの外周に電位固定板を配置し、該電位固定板の外側に更に高圧コロナシールド を配置している。

【０００４】 図３は従来のガス絶縁計器用変圧器の電位固定板と高圧コロナシールド付近の 構造を示したもので、同図において１は２次コイルの外周に巻回された１次コイ ル、２´は１次コイル１の外周に嵌合された電位固定板、３は高圧コロナシール ドである。

【０００５】 電位固定板２´は、図４（Ａ），（Ｂ）に示したように、１mm程度の厚さの帯 板状の銅板の幅方向の両端を折り返して、その幅方向の中央部に所定幅Ｗ（通常 は約２０mm）の溝部２ａ´を形成した後、１ターンを形成しない状態で１次コイ ル１を囲む形状を呈するようにその周方向の一部に隙間ｇを残して全体を環状に 曲げ加工したもので、１次コイルの外周に嵌合することができるようにその内径 寸法が設定されている。

【０００６】 電位固定板２´においては、電界が集中するエッジ部を生じさせないように、 幅方向の両端及び間隙ｇに臨む周方向の両端にそれぞれアールをつけておく必要 がある。従来用いられていた電位固定板２´においては、銅板を折り返すことに より幅方向の両端２ｂ´，２ｂ´に所定の曲率のアールをつけ、間隙ｇに臨む周 方向の両端２ｃ´，２ｃ´に切削加工を施すことによりアールをつけていた。

【０００７】 高圧コロナシールド３は、幅方向の中央部に溝部３ａを有し、外側に凸な形状 の湾曲部３ｂ，３ｂを溝部３ａの両側に有する環状の部材からなっていて、電位 固定板２´と同様に、１ターンを形成しないようにその周方向の一部がカットさ れている。溝部３ａの底部には周方向に等間隔を開けて３個または４個のボルト 貫通孔が設けられ、各ボルト貫通孔に整合させた状態で配置されたナット４が、 径方向の内側から溝部３ａの底部に溶接されている。各ナット４にボルト５が螺 合され、各ボルト５の内径側への突出長が調節された後、該ボルト５にロックナ ット６が螺合されている。

【０００８】 高圧コロナシールド３は、その内周部３b1，３b1を電位固定板２´の外周に嵌 合させた状態で配置され、等角度間隔で配置された３個または４個の押えボルト ５の頭部５ａが電位固定板２´の溝部２ａ´内に挿入されている。押えボルト５ の頭部が周方向に移動して高圧コロナシールドの位置がずれることがないように するため、電位固定板２´の溝部２ａ´の底部には、角柱状のストッパ２ｄ´， ２ｄ´が銀ろう付けされて固定され、これらのストッパ２ｄ´，２ｄ´の間の部 分に押えボルト５の頭部５ａが挿入されてコロナシールド３が位置決めされてい る。

【０００９】 上記の計器用変圧器では、押えボルト５により電位固定板２´が１次コイル１ 側（径方向の内側）に押え込まれた状態で固定されている。

【００１０】

【考案が解決しようとする課題】

従来の計器用変圧器では、電位固定板の幅方向の両端２ｂ´，２ｂ´の角部に アールをつけるために、銅板の幅方向端部を折り返して積層構造としていたため 、折り返した後に焼きなましを必要し、またストッパ２ｄ´，２ｄ´を銀ろう付 けする際には酸洗いを必要としたため、電位固定板の加工の工数が多くなるのを 避けられなかった。

【００１１】 また、銅板の幅方向端部を折り返して積層構造とした場合には、銅板を環状に 湾曲させた際に折り返した部分の外径側と内径側との伸び率が異なるため、湾曲 させた際に周方向端部２ｃ´，２ｃ´が変形する。従って、周方向端部２ｃ´， ２ｃ´にアールを付ける加工は曲げ加工前に行うことができず、幅方向の両端を 折り返した銅板を環状に湾曲させる曲げ加工を行った後に行う必要があった。そ のため周方向端部２ｃ´，２ｃ´にアール付けを行う切削加工を狭い間隙ｇ内で 行う必要があり、加工が面倒であった。

【００１２】 上記のように、従来の計器用変圧器では、電位固定板の加工の工数が多い上に 、面倒な加工を必要としたため、製造コストが高くなるという問題があった。

【００１３】 本考案の目的は、電位固定板の加工を容易にして、コストの低減を図ることが できるようにしたガス絶縁計器用変圧器を提供することにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】

本考案に係わるガス絶縁計器用変圧器は、２次コイルと、該２次コイルの外側 に同心的に配置された１次コイルと、１次コイルの外周に添わせて配置されたほ ぼ環状の電位固定板と、電位固定板の外周に嵌合されたほぼ環状の高圧コロナシ ールドとを備えている。高圧コロナシールドには、周方向に間隔をあけて少なく とも３つの押えボルトが固定されて、該押えボルトが電位固定板に当接され、電 位固定板が押えボルトにより押え込まれて１次コイル側に押圧固定されている。 本考案においては、上記電位固定板が、積層された部分を有しない帯状の１枚 板の幅方向の端部及び長手方向の端部にアール付け加工を施した素材板を１ター ンを形成しないように湾曲させたものからなっていて、該電位固定板の外周面に 少なくとも１つの有底の位置決め穴が設けられ、少なくとも１つの押えボルトの 端部が位置決め穴に挿入されて高圧コロナシールドが位置決めされている。

【００１５】

【作用】

上記のように、積層された部分を有しない（折り畳まれた部分を有しない）１ 枚板のすべての幅方向の端部及び長手方向の端部にアール付け加工を施した素材 板を湾曲させることにより電位固定板を構成すると、幅方向の両端を折り返す加 工を行わないため、焼鈍を必要としない。また積層された部分を有しない１枚板 を湾曲させた場合、その周方向の両端の端面の形状は湾曲前と変わらないため、 電位固定板のすべての端部のアール付け加工を曲げ加工前に行っておくことがで き、すべてのアール付け加工を精度よく、しかも容易に行うことができる。アー ル付け加工を精度よく行っておくと、電界分布を良好にすることができるため、 絶縁の信頼性を向上させることができる。

【００１６】 更に上記のように、電位固定板の外周に位置決め孔を形成して、押えボルトの 端部を該位置決め孔に挿入することにより高圧コロナシールドを位置決めするよ うにすると、電位固定板の外周にストッパを銀ろう付けする必要がないため、酸 洗い工程を省略することができる。従って、焼鈍を必要としないことと相俟って 、電位固定板の加工の工数が少なくなり、製造コストが低減する。

【００１７】

【実施例】

図１は本考案の実施例の要部を示したもので、同図において１は１次コイル、 ２は電位固定板、３は高圧コロナシールドである。１次コイル（高圧コイル）１ は、プラスチックフィルムをレヤー間絶縁物として巻回されたもので、図示しな い鉄心に巻装された２次コイル（低圧コイル）の外側に同心的に配置されている 。高圧コロナシールド３は、従来のものと同様に、溝部３ａの両側に、外側に凸 な形状の湾曲部３ｂ，３ｂを対称に有する環状の部材からなっていて、１ターン を形成しないようにその周方向の一部がカットされ、その内周部３b1が電位固定 板２の外周に嵌合するように形成されている。

【００１８】 溝部３ａの底部には周方向に等間隔を開けて３個または４個のボルト貫通孔が 設けられ、各ボルト貫通孔に整合させた状態で配置されたナット４が、径方向の 内側から溝部３ａの底部に溶接されている。各ナット４には径方向の内側から押 えボルト５が螺合され、各押えボルト５は、径方向の内側への突出長が調整され た状態でロックナット６により固定されている。

【００１９】 電位固定板２は、積層された部分を有しない帯状の１枚板の幅方向の両端部２ ｂ，２ｂ及び長手方向の両端部２ｃ，２ｃにアール付け加工を施した素材板を１ ターンを形成しないように、周方向の一部に間隙ｇを残した状態で環状に湾曲さ せたものからなっていて、１次コイル１の外周に添うようにその内径が設定され ている。電位固定板２の外周面には、１つの有底の位置決め穴２ｈが座ぐり加工 により形成されている。この位置決め孔２ｈは、電位固定板の周方向に長い楕円 形または小判形の形状に形成されていて、ボルト５の頭部５ａを挿入し得るよう にその幅寸法が設定されている。電位固定板２を構成する素材板としては、２mm 程度の板厚を有する銅板または鉄板を用いる。

【００２０】 高圧コロナシールド３は、その内周部３b1，３b1を、１次コイル１の外周に巻 き付けられた電位固定板２の外周に嵌合させた状態で配置され、コロナシールド ３に取付けられた１つのボルト５の頭部５ａが電位固定板２の位置決め穴２ｈに 挿入されて、高圧コロナシールド３が周方向及び軸線方向に位置決めされている 。位置決め穴２ｈに挿入された押えボルト以外の押えボルトはその頭部が電位固 定板２の外周面に当接された状態で配置されている。

【００２１】 各押えボルト５は、その頭部が電位固定板２にきつく当接するようにコロナシ ールド３からの突出長が調整され、各押えボルトにより電位固定板２が径方向の 内側に（１次コイル側に）押圧されて、電位固定板２が１次コイル１に固定され ている。

【００２２】 上記のように電位固定板及び高圧コロナシールドが取付けられた変圧器本体が 、ＳＦ₆ ガスを封入したタンク内に収容されてガス絶縁計器用変圧器が構成され ている。

【００２３】 上記のように、積層された部分を有しない１枚板のすべての幅方向の端部及び 長手方向の端部にアール付け加工を施した素材板を湾曲させることにより電位固 定板を構成すると、幅方向の両端を折り返す加工を行わないため、焼鈍を行う必 要がない。

【００２４】 また上記のように積層された部分を有しない１枚板を湾曲させるようにすると 、その周方向の両端の端面の形状が湾曲前と変わることがないため、電位固定板 のすべての端部のアール付け加工を曲げ加工前に行っておくことができ、すべて のアール付け加工を精度よく行うことができる。

【００２５】 更に上記のように、電位固定板の外周に位置決め穴２ｈを形成して、押えボル ト５の端部を該位置決め穴２ｈに挿入することにより高圧コロナシールドを位置 決めするようにすると、電位固定板の外周にストッパをろう付けする必要がない ため、酸洗い工程を行う必要がない。

【００２６】 上記の実施例では、位置決め穴２ｈを１つだけ設けているが、２以上の位置決 め穴を設けて、それぞれの位置決め穴に押えボルトの端部を挿入するようにして もよい。

【００２７】 また上記の実施例では、押えボルト５の頭部を位置決め穴２ｈに挿入するよう にしているが、押えボルト５を逆向きに取付けて、そのネジ部の先端部を位置決 め穴２ｈに挿入するようにしてもよい。

【００２８】

【考案の効果】

以上のように、本考案によれば、積層された部分を有しない１枚板のすべての 幅方向の端部及び長手方向の端部にアール付け加工を施した素材板を湾曲させる ことにより電位固定板を構成し、その外周部に押えボルトを挿入するための位置 決め穴を設けたので、焼鈍及び酸洗いを行うことなく電位固定板を製作すること ができ、電位固定板の加工の工数を少なくしてコストの低減を図ることができる 。

【００２９】 また本考案によれば、電位固定板のすべての端部のアール付け加工を曲げ加工 前に行うことができるため、すべてのアール付け加工の精度を向上させて電界分 布を良好にすることができ、絶縁の信頼性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例の要部を示す断面図である。

【図２】（Ａ）及び（Ｂ）はそれぞれ本考案の実施例で
用いる電位固定板の正面図及び側面断面図である。

【図３】従来の計器用変圧器の要部を示した断面図であ
る。

【図４】（Ａ）及び（Ｂ）はそれぞれ従来の計器用変圧
器で用いられていた電位固定板の正面図及び側面断面図
である。

【符号の説明】

１ １次コイル ２ 電位固定板 ２ｂ アール付けがされた幅方向端部 ２ｃ アール付けがされた周方向端部 ２ｈ 位置決め穴 ３ 高圧コロナシールド ４ ナット ５ 押えボルト

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ２次コイルと、該２次コイルの外側に同
   心的に配置された１次コイルと、前記１次コイルの外周
   に添わせて配置されたほぼ環状の電位固定板と、前記電
   位固定板の外周に嵌合されたほぼ環状の高圧コロナシー
   ルドとを備え、周方向に間隔をあけて配置されて前記高
   圧コロナシールドに固定された少なくとも３つの押えボ
   ルトの端部が前記電位固定板に当接されて、該押えボル
   トにより前記電位固定板が１次コイルの外周側に押圧固
   定されているガス絶縁計器用変圧器において、 前記電位固定板は、積層された部分を有しない帯状の１
   枚板の幅方向の端部及び長手方向の端部にアール付け加
   工を施した素材板を１ターンを形成しないように湾曲さ
   せたものからなっていて、該電位固定板の外周面に少な
   くとも１つの有底の位置決め穴が設けられ、 少なくとも１つの押えボルトの端部が前記位置決め穴に
   挿入されて前記高圧コロナシールドが位置決めされてい
   ることを特徴とするガス絶縁計器用変圧器。