JPH07145456A - 鉄損の低い無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
鉄損の低い無方向性電磁鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
鋼板を得る。 【構成】 C:0.01%以下、Si:2.5 〜5.0 %を含
み、かつS,NおよびOをS:0.0030%以下、N:0.00
30%以下、O:0.0020%以下に抑制し、しかも4μm以
上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体積分
率で60%以下、かつ1μm未満の鋼中介在物が全鋼中
介在物に対する体積分率で15%以下、さらには5%以
下とする。
Description
等の鉄心材料として使用される、鉄損が低くさらには回
転鉄損にも優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
に関するものである。
等の鉄心材料として広範囲にわたって使用されている。
近年、省エネルギーの観点より、電気機器の効率向上に
対する要求が強く、鉄心材料についても、より一層の鉄
損低減が望まれるようになってきている。
は、Si, Alなどの合金元素の添加量を増やし、鋼板の電
気抵抗を高める方法が一般的に知られている。しかしな
がら、現在の無方向性電磁鋼板のハイグレード品の鉄損
レベルをなお一層向上させるためSi, Alなどの添加量を
増加することは圧延性の面で問題がある。しかも、Si,A
l添加量の増加は材料のコスト高を招く不利も生じる。
条件を改善し、集合組織を改善して鉄損を低減する方法
が、例えば特公昭56-22931号公報(鉄損が低く磁束密度
の高い無方向性珪素鋼板の製造方法)に開示されてい
る。しかし、これらの集合組織改善手段は添加Si量およ
び製造工程に合った集合組織最適条件がすでに提案され
ている現状では、集合組織の最適化による、より一層の
鉄損低減は極めて難しい。
よび析出物個数を低減することにより、鉄損を低減する
方法{例えば特開昭59-74258号公報(鉄損の少ない無方
向性珪素鋼板)}がある。この方法は、鉄損の低減に効
果的であるが、かような不純物低減のための鋼の高純度
化は製銑および製鋼技術に依存するものであり、無方向
性電磁鋼板の製造分野における高純度化は現在の製銑お
よび製鋼技術のほぼ極限で行っているので、高純度化に
よるより一層の鉄損低減は製銑、製鋼技術のさらなる進
歩を持たなければならない。
しては、特開昭59-74256号(鉄損の少ない無方向性珪素
鋼板)、同60-152628 号(鉄損の低い無方向性けい素鋼
板の製造方法)および特開平3-104844 号(磁気特性の
優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法)各公報
に、介在物の個数を減少させて低鉄損化を達成する手段
が開示されている。しかし、これらの手段によって、鋼
中の介在物および析出物個数を低減させることは、結局
のところ上記従来技術と同様に高純度化技術に依存して
おり、従って、これらの手段による場合もより一層の鉄
損の改善は製銑、製鋼技術の進歩を待たなければならな
い。
詳しくみると、特開昭59-74256号公報においては、1μ
m 以上の大きさの介在物の個数が 120個/mm2 以上の領
域で介在物個数と鉄損との間に相関が認められるもの
の、1μm 未満の介在物およびその個数が鉄損に及ぼす
影響に関しては明確にされていない。
m 以上の介在物頻度を80個/mm2 以下にすることが、最
終焼鈍の効果を引き出すのに必要であると記載されてい
る。しかしながら、介在物の個数およびその大きさが鉄
損に及ぼす影響については述べられていない。
量が 0.1〜2.0 wt%の無方向性けい素鋼板における介在
物の大きさおよび個数を制御する方法が開示されてい
る。しかし、Si量が 2.5〜5.0 wt%でかつS量が0.0030
wt%以下のフルプロセス材の無方向性けい素鋼板におけ
る鉄損に及ぼす影響および介在物の制御方法は述べられ
ていない。また、0.5 μm 以下の微細なMnS の低減によ
り鉄損を改善しても、0.5 μm 以上5μm 以下の酸化物
を多数残存させることになるので、これらの酸化物が鉄
損に悪影響を及ぼすのは不可避で、鉄損低減効果が減少
してしまう。同様の微細介在物低減の手段として、特開
昭51-62115号(鉄損の低い無方向性珪素鋼板)および同
55-24942号(鉄損の低い無方向性電磁鋼板)各公報に
は、REM および Ca を用いて微細な硫化物の析出を防止
する方法が開示されている。しかし、いずれの方法も介
在物の個数およびその大きさが鉄損に及ぼす影響につい
ては述べられていない。
問題を有利に解決するもので、積極的に鋼中の介在物お
よび析出物(以下、介在物として総称する)の大きさ、
そして大きさごとの全介在物に対する体積分率を制御す
ることにより、鉄損さらには回転鉄損を低減した無方向
性電磁鋼板を、その有利な製造方法と共に提案すること
を目的とする。
問題を解決すべく、各種の調査および検討を行った結
果、無方向性電磁鋼板の介在物は、その大きさにより鉄
損に及ぼす影響が異なることを見出した。すなわち、鉄
損劣化の要因となる大きさの介在物を低減するような製
造方法を積極的に採用し、その大きさの介在物を全介在
物に対して、所定の体積分率以下にすることにより、全
介在物個数あるいは総体積が従来鋼と同じでも鉄損を大
幅に改善できることが究明されたのである。
のであり、その要旨とするところは以下の通りである。
入をそれぞれS:0.0030mass%以下、N:0.0030mass%
以下およびO:0.0020mass%以下に抑制し、残部は実質
的にFeの組成になり、しかも4μm 以上の大きさの鋼中
介在物が全鋼中介在物に対する体積分率で60%以下、か
つ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体積
分率で15%以下であることを特徴とする鉄損の低い無方
向性電磁鋼板(第1発明)。
て、さらに、 Al:2.0 mass%以下を含有する鉄損の低い無方向性電磁
鋼板(第2発明)。
て、さらに、 P:0.005 〜0.15mass%を含有する鉄損の低い無方向性
電磁鋼板(第3発明)。
換して、さらに、 Al:2.0 mass%以下およびP:0.005 〜0.15mass%を含
有する鉄損の低い無方向性電磁鋼板(第4発明)。
み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれS:0.0030ma
ss%以下、N:0.0030mass%以下およびO:0.0020mass
%以下に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しか
も4μm 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対
する体積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物
が全鋼中介在物に対する体積分率で5%以下であること
を特徴とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板(第5発
明)。
て、さらに、 Al:2.0 mass%以下を含有する鉄損の低い無方向性電磁
鋼板(第6発明)。
て、さらに、 P:0.005 〜0.15mass%を含有する鉄損の低い無方向性
電磁鋼板(第7発明)。
換して、さらに、 Al:2.0 mass%以下およびP:0.005 〜0.15mass%を含
有する鉄損の低い無方向性電磁鋼板(第8発明)。
よびFeの組成になる鋼スラブを、熱間圧延し、コイルに
巻取ったのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延
を行い、ついで仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって無
方向性電磁鋼板を製造するに当たり、鋼中S,Nおよび
O量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、N:0.0030mass%以下および
O:0.0020mass%以下に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、の少なくともいず
れか一方の処理を施すことを特徴とする鉄損の低い無方
向性電磁鋼板の製造方法(第9発明)。
て、さらに、 Al:2.0 mass%以下を含有する鉄損の低い無方向性電磁
鋼板の製造方法(第10発明)。
て、さらに、 P:0.005 〜0.15mass%を含有する鉄損の低い無方向性
電磁鋼板の製造方法(第11発明)。
て、さらに、 Al:2.0 mass%以下およびP:0.005 〜0.15mass%を含
有する鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法(第12
発明)。
成分のFeと置換して、さらに、 Mn:0.4 〜1.5 mass%をそれぞれ含有する鉄損の低い無
方向性電磁鋼板の製造方法である(第13、14、15
および16発明)。
この発明に至った経緯を実験結果にもとづいて説明す
る。まず、介在物の個数と鉄損との関係を、Si含有量が
3.0 mass%で板厚:0.5 mmの無方向性電磁鋼板において
調査した。なお、介在物調査は光学顕微鏡により行っ
た。その結果として、介在物個数と鉄損との関係を図1
に示す。全体の傾向からすると、鋼中の介在物を少なく
することで鉄損が改善されるようであるが、前記従来技
術で述べたような明確な介在物の個数と鉄損との関係は
得られなかった。そこで、今回調査した無方向性電磁鋼
板およびその製造条件についてさらに詳細に調べた結
果、調査材は鋼中S,N量とも同一レベル(S≦0.0030
mass%、N≦0.0030mass%)、同一工程で製造したが、
製鋼および熱間圧延などの工程における製造条件が若干
ばらついていたことが判明した。
件の変化により、介在物の存在形態、特に介在物のサイ
ズが変化すると考えられるため、介在物サイズが鉄損に
およぼす影響に着目して実験を行った。すなわち、Si:
3.5 mass%を含む無方向性電磁鋼板を用い、4μm 以
上、2μm 以上4μm 未満、1μm 以上2μm 未満、1
μm 未満の範囲の介在物個数をそれぞれ測定し、鉄損
(W15/50 )と介在物サイズごとの1mm2 当りの個数と
を重回帰分析し、鉄損におよぼす介在物サイズごとの影
響を調査した。この介在物サイズごとの鉄損におよぼす
影響の解析結果を図2に示す。図2より4μm 以上の介
在物が鉄損を最も劣化させ、次いで1μm 未満の微細な
介在物が鉄損を劣化させるが、2μm 以上4μm 未満お
よび1μm 以上2μm 未満の介在物が鉄損におよぼす影
響は小さいことが判明した。この4μm 以上の介在物が
鉄損におよぼす影響が大きくなった理由としては、再結
晶過程で4μm 以上の介在物は磁気特性の面より好まし
くない方位の結晶粒を発生させる原因となったためと考
えられる。また、1μm 未満の介在物については、鉄損
に直接影響する磁壁の移動を妨げる作用が他のサイズの
介在物よりも大きかったためと推定される。
μm 以上の大きさの介在物体積分率と鉄損との関係を図
3に示す。図3から明らかなように、4μm 以上の介在
物体積分率が60%を超えると急激に鉄損(W15/50 )が
劣化するのがわかる。また、全介在物に対する4μm 以
上の介在物体積分率が50%以下の鋼板の1μm 未満の介
在物体積分率と鉄損との関係を図4に示す。ここでの介
在物調査は電子顕微鏡により行った。上記の4μm 以上
の大きさの介在物ほど体積分率増加による鉄損劣化は明
確ではないが、1μm 未満の介在物の体積分率が15%を
超えると、鉄損(W15/50 )は劣化する。このことよ
り、鉄損を改善するためには介在物の体積分率としては
4μm 以上の介在物が60%以下、1μm 未満の介在物が
15%以下とする必要があることがわかる。
の断面について観察したものであり、観察には光学顕微
鏡または電子顕微鏡のどちらを用いてもかまわず、光学
顕微鏡の場合は倍率を400 倍以下、電子顕微鏡の場合は
400 倍〜1000倍で観察を行った。試験片の作製および試
験方法(測定面積など)は JIS G0555に規定された、鋼
の非金属介在物の顕微鏡試験方法に基づき作製(研磨き
ずや、錆が出ないように試料を調整)および試験を行う
が、測定方法に関しては介在物によって占められた格子
点の数を数えるのではなく、介在物の個数および大きさ
は画像解析処理により測定した。介在物の大きさ(サイ
ズ及び体積)は観察像より画像解析処理装置を用いて介
在物の面積が等価となる円の直径を求め、その値より計
算した。
学顕微鏡および低倍率の電子顕微鏡では測定が困難であ
った1μm 未満の介在物観察および測定も技術的になん
ら問題なく行うことができた。今回の測定により得られ
た結果は、介在物の分布が鋼板面内方向において等方的
であると推測できるので、試料の平均的な介在物存在状
況を十分に代表しているものと考えられる。
準じて行った。ここでの介在物は、上述した測定方法か
らも明らかなように、鋼中の非金属介在物の全てを包含
することを意味しており、当然硫化物系やAlN , Al2O3
などの析出物等も含むことは言うまでもない。ここで、
鉄損特性は25cmエプスタイン法により調べ、従来は考慮
に入れていなかった試料中の歪などの影響も考慮して、
特性を比較した。
極的に鋼中介在物の大きさおよびサイズごとの体積分率
を制御することにより、鉄損の小さい無方向性電磁鋼板
を得るものであり、従来の不純物成分量および介在物量
を低減する清浄な無方向性電磁鋼板の製造手段による低
鉄損化よりも、清浄化することなく一層低い鉄損を安定
して得られることが明らかになった。
の体積分率制御の効果について、より綿密な検討を加え
たところ、新たに、三相変圧器鉄心のT接合部や回転機
鉄心の歯後背部で発生することが知られている回転鉄損
が、この介在物サイズ別の体積分率制御を強化すること
により効果的に低減されることが明らかになった。
鉄損値について調査した結果を、鋼板の1μm 未満の介
在物体積分率との関係で図5に示す。同図から明らかな
ように、1μm 未満の介在物体積分率を5%以下に低減
することにより回転鉄損の低減に関し、望外の成果が得
られたのである。
鉄損に影響する磁壁の移動の妨げとなり、鉄損(W
15/50 )に比べその影響が大きく、従って回転鉄損低減
には、より一層の1μm 未満の介在物低減が必要となっ
たものと考えられる。なお、回転鉄損はサーミスタを用
いて、試料が損失により発生する熱量、すなわち試料の
温度上昇を測定すること(温度上昇法)により求めた。
て説明する。まず、この発明において、鋼中介在物のサ
イズごとの体積分率を限定した理由について説明する。
すなわち、4μm 以上の大きさの鋼中介在物が全介在物
体積に対する体積分率で60%を超えて鋼中に存在する場
合には、前述したごとく磁気特性に関して好ましくない
集合組織を形成し、急激な鉄損劣化の原因となるので4
μm 以上の大きさの鋼中介在物の体積分率は60%以下と
し、また、1μm 未満の大きさの鋼中介在物が全介在物
体積に対する体積分率で15%を超えて鋼中に存在する場
合も鉄損劣化の原因となるため、1μm 未満の介在物の
体積分率を15%以下とする。
の体積分率を60%以下にするには、不純物元素、とくに
S,N,Oをそれぞれ、S≦0.0030mass%、N≦0.0030
mass%、O≦0.0020mass%の範囲に制御し、併せて、脱
硫効率の向上もしくは脱ガス処理時間の延長などを実施
することが肝要である。
体積分率を15%以下にするには、製造工程中、とくにス
ラブ加熱段階において加熱温度を1150℃以下にするか、
または熱延板の巻取り段階において巻取り温度を600 ℃
以上にするか、少なくともいずれか一方の処理を実施す
れば良い。
ためには、1μm未満の介在物を一層低減して体積分率
で5%以下に制御する必要があるが、そのためには、Mn
を0.4 〜1.5 mass%の範囲で含有させることが有利であ
る。すなわち、Mn量と1μm未満の介在物の全介在物体
積に対する体積分率との関係を図6に示すように、1μ
m未満の介在物の体積分率を5%以下に低減するために
はMnを0.4 mass%以上添加する必要がある。しかし、1.
5 mass%を超えると、介在物以外の原因で回転鉄損が劣
化する。このMn量を0.4 〜1.5 mass%に規制する効果
は、熱延終了時に固溶Sが微細析出物として析出するの
を抑制するための熱延加熱時の固溶S量の低減にあると
考えられる。
分組成の限定理由について記す。 C:0.01 mass %以下 Cは、磁気特性の面からは有害な成分であり、極力低減
するのが好ましいため、その含有量は0.01 mass %以下
とする。
用な成分であるので、低鉄損化のために含有量は2.5 ma
ss%以上が必要であり、一方含有量が5.0 mass%を超え
ると冷延性が阻害されるので、その含有量の上限は5.0
mass%とする。以上、基本成分について説明したが、こ
の発明ではさらに以下の成分を含有させることができ
る。
Siと同様、固有抵抗を高めて、鉄損を向上させる上でも
有用な成分であるが、しかし、含有量が2.0 mass%を超
えると冷延性の劣化を招くので、その含有量は2.0 mass
%以下が好適である。
超えると冷延性が著しく劣化するので、その含有量は0.
005 〜0.15mass%の範囲が好適である。
た、Sに起因した熱間脆性を抑制するために添加される
ものであるが、含有量が0.4 mass%未満ではその効果に
乏しく、一方、1.5 mass%を超えると磁気特性の劣化を
招くので、その含有量は0.4 〜1.5 mass%の範囲が好適
である。
りその含有量を0.0030mass%以下に抑制することが必要
である。すなわち、SおよびNは、粗大介在物の核とな
る硫化物および窒化物を形成するが、とくにSはその傾
向が強く、例えば、Si:3.8 mass%を含む無方向性電磁
鋼板の従来材及びこの発明にしたがう介在物制御を施し
た試料の鋼中S量と鉄損との関係を示す図7から明らか
なように、介在物制御による鉄損の低減効果がS量の高
いレベルでは阻害されてしまう。よってS含有量は0.00
30mass以下とする。
し、また、微細な介在物としても鋼中に存在する。そし
て0.0030massを超えるNを含んでいると鉄損の劣化を招
くので、その含有量は0.0030mass%以下とする必要があ
る。
は広く知られている事実である。特に0.0020mass%を超
えるOを含んでいると鉄損の劣化を招くので、その含有
量は、0.0020mass%以下とする必要がある。その他、成
分としてSb、Sn、CuおよびNiなどを必要に応じて添加す
ることもできる。
る。この発明の対象となる無方向性電磁鋼板は、おおむ
ね通常の製造方法にしたがって製造するが、その製造に
際しては、鋼中の介在物の大きさ毎の体積分率制御に留
意することが肝要である。
を施した溶鋼を連続鋳造法もしくは造塊−分塊圧延法に
よってスラブとし、ついで、スラブ加熱後、熱間圧延お
よび冷間圧延を施し、しかるのち最終仕上げ焼鈍を施す
わけであるが、この成分調整、脱硫、脱ガスなどの鋼の
溶製工程および熱間圧延工程において鋼中介在物のサイ
ズおよびサイズごとの体積分率は主として制御される。
介在物の全介在物体積に対する体積分率を60%以下とす
るためには、溶製段階において、S≦0.0030mass%、N
≦0.0030mass%、O≦0.0020mass%とする必要がある
が、そのためには適切な脱硫、脱窒、脱酸処理を施す必
要がある。たとえば、脱硫処理としてはCa等を含む脱硫
フラックス、またはREM(希土類成分:Ceが約50%)
と上記脱硫フラックスとを併用して脱硫を行えばよい。
の占める体積分率を15%以下にするためには、スラブ加
熱温度を1150℃以下とするか、または巻取り温度を600
℃以上とするか、少なくともいずれか一方の処理を施す
ことが必要である。というのは、スラブ加熱温度を1150
℃以下とすると、熱間圧延時において、4μmを超える
ほどの析出介在物の粗大化、さらには1μmを下回るほ
どの析出物の再固溶−微細析出が共に抑制され、鉄損の
劣化要因である粗大介在物と共に微細介在物が低減され
るからであり、また巻取り温度を600 ℃以上とすると、
同様に、微細介在物の生成が低減されるからである。す
なわち、巻取り温度を600 ℃以上とすることにより熱間
圧延時に析出した1μm未満の微細析出物を効果的に粗
大化して、弊害が比較的小さい1〜4μmの介在物とす
ることができるからである。
熱間圧延を行っても、鋳造あるいは分塊圧延後降温する
ことなく熱間圧延もしくは再加熱−熱間圧延を行っても
どちらでもよい。また、上記製造工程において熱延板焼
鈍を行うことは一向に差支えない。さらに冷間圧延は常
法に従い1回法又は中間焼鈍を挟む2回法のどちらで行
ってもよい。
μm未満の介在物量を一層低減して、体積分率で5%以
下にする必要があるが、そのためには、Mnを0.4 〜1.5
mass%の範囲で含有させることが重要である。というの
は、このMn添加により熱延加熱時の鋼中の固溶S量が効
果的に低減するからであり、かくして微細介在物の一層
の低減が可能になるのである。
ぞれ連続鋳造によりスラブとした。なお、上記の溶製に
あたっては、脱硫、脱酸ならびに脱ガス処理を強化して
行った。
り板厚:2.0 mmの熱延板としたのち、コイルに巻き取っ
た。ついで熱延板を酸洗後、連続焼鈍してから、冷間圧
延により0.5 mmの最終板厚とし、しかるのち仕上げ焼鈍
を施した。かくして得られた鋼板について介在物のサイ
ズ別体積分率を測定するとともに鉄損の測定を行った。
なお、介在物サイズ別体積分率の測定は光学顕微鏡によ
り、鉄損は25cmエプスタイン法により測定し、回転鉄損
は前記した温度上昇法により測定した。
めて示し、スラブ加熱温度等の鋼板の製造条件および介
在物サイズ別体積分率、鉄損の測定結果を表2にまとめ
て示す。
する成分組成および製造条件で製造された鋼板の介在物
サイズ別体積分率はこの発明の限定範囲内にあり、鉄損
(W 15/50)も低い値を示している。
連続鋳造スラブを、実施例1と同様の工程にて鋼板を製
造し、得られた鋼板について、介在物の体積分率、鉄損
および回転鉄損を測定した。なお、介在物サイズ別体積
分率および鉄損、回転鉄損は実施例1と同様の方法によ
り測定した。鋼の溶製条件および成分組成を表3にまと
めて示し、スラブ加熱温度等の鋼板の製造条件および鋼
板についての各測定結果を表4にまとめて示す。
する成分組成、介在物サイズ別体積分率を有する試料は
鉄損はもとより回転鉄損も低い値を示している。
度:1080℃〜1170℃で加熱した後、熱間圧延により熱延
板とし、コイルに巻き取った。ついで熱延板を連続焼鈍
してから800 ℃×30秒の中間焼鈍を挟む2階圧延法によ
り最終板厚0.50mmとし、しかるのちに仕上げ焼鈍を施し
た。得られた鋼板について、介在物の体積分率、鉄損お
よび回転鉄損を測定した。なお、介在物サイズ別体積分
率および鉄損、回転鉄損は実施例1と同様な方法により
測定した。スラブ加熱温度等の鋼板の製造条件および鋼
板についての各測定結果を表5にまとめて示す。
で製造された鋼板の介在物サイズ別体積分率はこの発明
の限定範囲内であり、鉄損は低い値を示している。
するとともに介在物のサイズ別体積分率を特定する無方
向性電磁鋼板であって、この発明によれば鉄損、さらに
は回転鉄損を低減することができる。
果を示す図である。
体積分率と鉄損との関係を示す図である。
体積分率が50%以下の鋼板の1μm未満の介在物体積分
率と鉄損との関係を示す図である。
係を示す図である。
関係を示す図である。
Claims (16)
- 【請求項1】C:0.01mass%以下および Si:2.5 〜5.0 mass% を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で15%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項2】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%および Al:2.0 mass%以下 を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で15%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項3】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%および P:0.005 〜0.15mass% を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で15%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項4】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Al:2.0 mass%以下および P:0.005 〜0.15mass% を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で15%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項5】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%および Mn:0.4 〜1.5 mass% を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で5%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項6】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Mn:0.4 〜1.5 mass%および Al:2.0 mass%以下 を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で5%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項7】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Mn:0.4 〜1.5 mass%および P:0.005 〜0.15mass% を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で5%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項8】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Mn:0.4 〜1.5 mass%、 Al:2.0 mass%以下および P:0.005 〜0.15mass% を含み、かつS,NおよびOの混入をそれぞれ S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも4μ
m 以上の大きさの鋼中介在物が全鋼中介在物に対する体
積分率で60%以下、かつ1μm 未満の鋼中介在物が全鋼
中介在物に対する体積分率で5%以下であることを特徴
とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。 - 【請求項9】C:0.01mass%以下および Si:2.5 〜5.0 mass% を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項10】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%および Al:2.0 mass%以下 を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項11】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%および P:0.005 〜0.15mass% を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項12】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Al:2.0 mass%以下および P:0.005 〜0.15mass% を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、 鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項13】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%および Mn:0.4 〜1.5 mass% を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、 鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項14】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Mn:0.4 〜1.5 mass%および Al:2.0 mass%以下 を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、 鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項15】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Mn:0.4 〜1.5 mass%および P:0.005 〜0.15mass% を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、 鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項16】C:0.01mass%以下、 Si:2.5 〜5.0 mass%、 Mn:0.4 〜1.5 mass%、 Al:2.0 mass%以下および P:0.005 〜0.15mass% を含み、残部は不可避的不純物およびFeの組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、コイルに巻取ったのち、1回又
は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、ついで仕上げ
焼鈍を施す一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造
するに当たり、 鋼中S,NおよびO量をそれぞれ、 S:0.0030mass%以下、 N:0.0030mass%以下および O:0.0020mass%以下 に抑制すると共に、 i) スラブ加熱温度を1150℃以下とする、 ii) 巻取り温度を 600℃以上とする、 の少なくともいずれか一方の処理を施すことを特徴とす
る鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
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WO2010140381A1 (ja) * | 2009-06-04 | 2010-12-09 | 新日本製鐵株式会社 | 電力機器用鉄心及びその製造方法 |
JP2020190026A (ja) * | 2019-05-15 | 2020-11-26 | Jfeスチール株式会社 | 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
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