JPWO2010140381A1 - 電力機器用鉄心及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

コイルが巻き回されて使用されるこの電力機器用鉄心は、前記コイルの軸方向に延在する、第一の磁性体からなる複数の縦部材と;前記コイルの軸方向と異なる方向に延在し、前記各縦部材と磁気的に結合されるように配置される、第二の磁性体からなる複数の横部材と;を備え、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界が前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体中に生じたときの、前記第二の磁性体の鉄損が、前記第一の磁性体の鉄損よりも小さい。

Description

本発明は、電力機器用鉄心とその製造方法に関する。特に、縦部材と横部材とを組み合わせて構成される電力機器用鉄心とその製造方法に関する。
本願は、2009年6月4日に、日本に出願された特願2009−135065号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来から、変圧器等の電力機器に使用される鉄心を、コイルが巻き回される複数の縦部材と、この縦部材に対して磁気的に結合される複数の横部材とを用いて製造することが行われている。
特許文献1には、図12A〜12Cに示すように、縦部材121a〜121cと、横部材122a〜122dとを有する鉄心120が開示されている。
具体的に特許文献1では、縦部材121a〜121c及び横部材122a〜122dとして方向性電磁鋼板(GO材)を用い、図12Aの矢印に示す方向が方向性電磁鋼板の磁化容易軸と一致するように、縦部材121a〜121c及び横部材122a〜122dを配置している。また、縦部材121a〜121cを構成する方向性電磁鋼板を、鉄心120の板厚方向(図12B及び図12C中の板厚方向)に積層している。さらに、横部材122a〜122dを構成する方向性電磁鋼板を、鉄心120の高さ方向(図12A中の高さ方向)に積層している。加えて、特許文献1では、鉄心120の中央部分の縦部材121aと、上部の横部材122a及び122bとの2本の境界線の交点が鉄心120の外周よりも外側に位置している。同様に、鉄心120の中央部分の縦部材121aと、下部の横部材122c及び122dとの2本の境界線の交点が鉄心120の外周よりも外側に位置している。
以上のように鉄心120を構成することによって、縦部材121aと各横部材122a〜122dとの各境界近傍における回転磁界の発生を抑制し、鉄心120の鉄損と鉄心120の唸り(鉄心120を構成する電磁鋼板が振動することによって生じる騒音)とを低減している。
また、特許文献2には、後述する図1A〜1Cの鉄心10と類似する鉄心が開示されている。しかしながら、特許文献2では、この鉄心に用いられる鋼材の磁気特性を考慮していない。特に、後述する図2Aに示す回転磁界に対する磁気特性および傾角incに対する磁気特性について考慮されていなかった。
日本国特開2005−56942号公報 日本国特開平6−349643号公報 日本国特開2005−69933号公報 日本国特開2006−258481号公報 日本国特開2006−258480号公報 日本国特開2005−172525号公報 日本国特開2005−43340号公報
藤崎、玉木、安廣「三次元多結晶磁場解析と実測結果との比較」電気学会論文誌A、129巻11号、pp.821−826、2009 M. Enokizono, I. Tanabe, and T. Kubota, "Localized distribution of two-dimensional magnetic properties and magnetic domain observation", J. Magnetism & Magnetic Materials, 196-197, pp.338-340, 1999 千田、石田、佐藤、小松原、山口「探針法による方向性電磁鋼板の局所磁気測定」電気学会論文誌A、107巻9号、pp.942−949、1997
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、縦部材121a〜121cの電磁鋼板の積層方向が横部材122a〜122dの電磁鋼板の積層方向と異なるように鉄心120を構成する必要があった。また、鉄心120の中央部分の縦部材121aと、横部材122a〜122dとの境界線の交点(上部の交点と下部の交点)を、鉄心120の外周よりも外側に位置させる必要があった。
以上のように特許文献1に記載の技術では、鉄心120の鉄損を低減するために、縦部材121a〜121c及び横部材122a〜122dの形状が制限されるという問題点があった。
また、特許文献2に記載されている変圧器では、変圧器の構造に係る磁束密度特性として、回転磁界に対する磁気特性および傾角incに対する磁気特性を考慮していなかった。そのため、磁気特性が優れた素材(鋼材)を使用しても、構造上、変圧器全体の鉄損を抑えることは困難であった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、縦部材及び横部材を組み合わせて構成された鉄心の鉄損を低減し、かつ、従来よりも縦部材及び横部材の形状に対する制限を低減することを目的とする。
(1)本発明の一態様に係るコイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心は、前記コイルの軸方向に延在する、第一の磁性体からなる複数の縦部材と;前記コイルの軸方向と異なる方向に延在し、前記各縦部材と磁気的に結合されるように配置される、第二の磁性体からなる複数の横部材と;を備え、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界が前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体中に生じたときの、前記第二の磁性体の鉄損が、前記第一の磁性体の鉄損よりも小さい。
(2)上記(1)に記載の電力機器用鉄心では、前記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれる。
(3)上記(1)又は(2)に記載の電力機器用鉄心では、前記傾角incと前記軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの前記各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、前記第二の磁性体の平均鉄損が、前記第一の磁性体の平均鉄損よりも小さい。
(4)上記(1)又は(2)に記載の電力機器用鉄心では、前記軸比αが0であり、且つ前記傾角incが0°である交番磁界が前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体中に生じたときの、前記第一の磁性体の鉄損が、前記第二の磁性体の鉄損よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力機器用鉄心。
(5)上記(1)又は(2)に記載の電力機器用鉄心では、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体は、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有し、前記第一の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記縦部材の延在方向と一致し、前記第二の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記横部材の延在方向と一致し、前記第一の磁性体の第二の磁化困難軸の方向は、前記第二の磁性体の第二の磁化困難軸の方向と一致する。
(6)本発明の一態様に係るコイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心は、前記コイルの軸方向に延在し、第一の磁性体からなる複数の縦部材と;前記コイルの軸方向と異なる方向に延在し、第二の磁性体からなる複数の横部材と; 前記横部材の延在方向、且つ前記電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部に配置され、第三の磁性体からなる複数のコーナ部材と;を備え、前記各縦部材と、前記各横部材と、前記各コーナ部材とは、それぞれ、磁気的に結合され、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界が前記第一の磁性体、前記第二の磁性体、及び第三の磁性体中に生じたときの、前記第三の磁性体の鉄損が、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体の鉄損よりも小さい。
(7)上記(6)に記載の電力機器用鉄心では、前記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれることを特徴とする請求項6に記載の電力機器用鉄心。
(8)上記(6)又は(7)に記載の電力機器用鉄心では、前記傾角incと前記軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの前記条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、前記第三の磁性体の平均鉄損が、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体の平均鉄損よりも小さい。
(9)上記(6)又は(7)に記載の電力機器用鉄心では、前記軸比αが0であり、且つ前記傾角incが0°である交番磁界が前記第一の磁性体、前記第二の磁性体、及び前記第三の磁性体中に生じたときの、前記第一の磁性体及び第二の磁性体の鉄損が、前記第三の磁性体の鉄損よりも小さい。
(10)上記(6)又は(7)に記載の電力機器用鉄心では、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体は、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有し、前記第一の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記縦部材の延在方向と一致し、前記第二の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記横部材の延在方向と一致し、前記第一の磁性体の第二の磁化困難軸の方向は、前記第二の磁性体の第二の磁化困難軸の方向と一致する。
(11)本発明の一態様に係る電力機器用鉄心の製造方法は、複数の磁性体を準備し、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材とに使用する磁性体を選定する、コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心の製造方法であって、前記各横部材を構成する第二の磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材を構成する第一の磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記複数の磁性体から、前記第一の磁性体と前記第二の磁性体とを選定し;前記各縦部材を前記コイルの軸方向に延在するように配置し、前記各横部材を前記コイルの軸方向と異なる方向に延在するように、且つ前記各縦部材と磁気的に結合されるように配置する。
(12)本発明の一態様に係る電力機器用鉄心の製造方法は、複数の磁性体を準備し、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材と複数のコーナ部材とに使用する磁性体を選定する、コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心の製造方法であって、前記各コーナ部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材及び前記各横部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記各縦部材と前記各横部材と前記コーナ部材と構成する前記磁性体をそれぞれ選定し;前記各コーナ部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材及び前記各横部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記各縦部材と前記各横部材と前記コーナ部材とを作製し;前記コイルの軸方向に延在するように前記各縦部材を配置し、前記縦部材と磁気的に結合されるように、且つ前記コイルの軸方向と異なる方向に延在するように前記各横部材を配置し、前記縦部材及び前記横部材と磁気的に結合されるように、前記各横部材の延在方向、且つ前記電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部に前記各コーナ部材を配置する。
本発明によれば、横部材を構成する鋼板(磁性体)の回転磁界に対する鉄損又はコーナ部材を構成する鋼板の回転磁界に対する鉄損が、その他の部材を構成する鋼板の回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように鉄心を構成した。したがって、縦部材及び横部材を構成する鋼板の積層方向の組み合わせ等の形状に対する制限を従来よりも低減しながら、電力機器用鉄心の鉄損を低減することができる。よって、縦部材及び横部材を組み合わせて構成された鉄心の鉄損を低減し、従来よりも柔軟に縦部材及び横部材の形状を選択できる。
本発明の第1の実施形態に係る電力機器用鉄心の正面図である。 本発明の第1の実施形態に係る電力機器用鉄心の図1AのA−A’方向から見た断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る電力機器用鉄心の図1AのB−B’方向から見た断面図である。 回転磁界を説明する図である。 交番磁界を説明する図である。 縦部材と横部材とに同じ材質を使用した場合の、一入力条件における各種磁気特性の電磁場解析結果の一例を示す図である。 縦部材と横部材とに同じ材質を使用した場合の、各入力条件における各種磁気特性の電磁場解析結果の一例を示す図である。 縦部材と横部材とに同じ材質を使用した場合の、各入力条件における傾角inc及び軸比αの横部材中の発生頻度分布の電磁場解析結果の一例を示す図である。 材料1の鉄損の測定結果の一例を示す図である。 材料2の鉄損の測定結果の一例を示す図である。 材料3の鉄損の測定結果の一例を示す図である。 所定の磁束密度(回転磁界及び交番磁界)に対する重み付け係数の一例を示す図である。 傾角incの発生頻度と軸比αの発生頻度とを考慮して、横部材中に回転磁界が生じたときの鉄損を算出した結果の一例を示す図である。 材料4の鉄損の測定結果の一例を示す図である。 材料5の鉄損の測定結果の一例を示す図である。 材料6の鉄損の測定結果の一例を示す図である。 傾角incの発生頻度と軸比αの発生頻度を考慮して、横部材中に回転磁界が生じたときの鉄損を算出した結果の一例を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る電力機器用鉄心の正面図である。 本発明の第2の実施形態に係る電力機器用鉄心の図11AのA−A’断面の断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る電力機器用鉄心の図11AのB−B’断面の断面図である。 従来の電力機器用鉄心の一例の正面図である。 従来の電力機器用鉄心の一例における図12AのA−A’断面の断面図である。 従来の電力機器用鉄心の一例における図12AのB−B’断面の断面図である。 鉄心内に発生する磁束密度(回転磁界及び交番磁界)の解析モデルの一例を示す概略図である。 方向性電磁鋼板(磁性体)の磁気特性(B−Hカーブ)の一例を示す図である。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1A〜1Cは、電力機器用鉄心10の構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図1Aは、電力機器用鉄心10の正面図である。図1Bは、図1AのA−A’方向から見た電力機器用鉄心10の断面図である。図1Cは、図1AのB−B’方向から見た電力機器用鉄心10の断面図である。
図1Aに示すように電力機器用鉄心10は、縦部材11a〜11cと、横部材12a、12bとを有している。この電力機器用鉄心10は、縦部材にコイル(図示しない)が巻き回されて使用される。そのため、縦部材11a〜11cは、コイルの軸方向に延在する。
横部材12a、12bは、横部材12a、12bの長手方向が電力機器用鉄心10の横方向と一致するように配置される。そのため、横部材12a、12bは、コイルの軸方向と異なる方向に延在する。また、横部材12aは、横部材12bと所定の距離離れた位置に対向して配置される。縦部材11a〜11cは、電力機器用鉄心10の脚に対応し、横部材12aと横部材12bとの間に存在する。この縦部材11a〜11cは、縦部材11a〜11cの長手方向が電力機器用鉄心10の高さ方向と一致するように配置される。この縦部材11a〜11cは、閉磁路が形成されるように横部材12a、12bと磁気的に結合される。例えば、縦部材の延在方向の端面と縦部材の延在方向と交差する横部材の面とを相互に対向させることにより、閉磁路を形成させている。このようにして、図1Aでは、横部材12a、12bが、それぞれ、縦部材11a〜11cと磁気的に結合されるように配置されている。
縦部材11a〜11c及び横部材12a、12bは、例えば、図1Aに示すような形状に打ち抜かれた方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。
例えば、縦部材11aに使用する方向性電磁鋼板(第一の磁性体)は、長方形状の脚部とこの脚部の2つの短辺と連続する先細り形状の突出部とを有する。具体的には、この方向性電磁鋼板の形状は、長方形(脚部)の2つの短辺に二等辺三角形(突出部)の底辺を結合した形状である。ここで、二等辺三角形(突出部)の底辺の長さは、長方形(長方形部)の短辺の長さと同じである。縦部材11aは、この方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。
縦部材11b、11cに使用する方向性電磁鋼板の形状は、上底の長さが、縦部材11aを構成する方向性電磁鋼板の脚部の長辺の長さと同じ等脚台形である。縦部材11b、11cは、この方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。ここで、縦部材11bの形状は、縦部材11cの形状と同一である。
なお、積層された各方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向は、全て略同じである。そのため、縦部材11aが最も磁化しやすい方向は、縦部材11aを構成する方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向と略一致する。
横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板(第二の磁性体)の形状は、上底(短い底辺)の中央部に溝部を有する等脚台形である。この等脚台形の斜辺の長さは、縦部材11b、11cを構成する方向性電磁鋼板の斜辺の長さと同じである。また、方向性電磁鋼板の溝部は、縦部材11aを構成する方向性電磁鋼板の突出部と正確にはめ合うことができる形状(例えば、二等辺三角形)を有する。横部材12a、12bは、この方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。ここで、横部材12aの形状は、横部材12bの形状と同一である。なお、上述した突出部及び溝部は、必ずしも二等辺三角形である必要はなく、電力機器用鉄心10を構成した場合に縦部材11aと横部材12bとが磁気的に結合される形状であればよい。
電力機器用鉄心10は、以上のような縦部材11a〜11cと横部材12a、12bとを組み合わせて固定することによって構成される。尚、図1Aにおいて、縦部材11a〜11c及び横部材12a、12b中に示している矢印の方向が磁化容易軸の方向である。また、方向性電磁鋼板の鋼板面内の磁化容易軸と直交する方向(磁化容易軸と板厚方向とに直交する方向)が磁化困難軸(第一の磁化困難軸)の方向である。また、磁化容易軸と磁化困難軸(第一の磁化困難軸)とに直交する方向(板厚方向)が非常な磁化困難軸(第二の磁化困難軸)の方向である。この非常な磁化困難軸(第二の磁化困難軸)の方向は、第一の磁化困難軸の方向に比べ、磁化し難い。
また、本実施形態では、縦部材11a〜11cにおける方向性電磁鋼板の積層方向が、電力機器用鉄心10の板厚方向(図1A及び図1B中の板厚方向)と一致している。また、横部材12a、12bにおける方向性電磁鋼板の積層方向も、電力機器用鉄心10の板厚方向と一致している。すなわち、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の積層方向は、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の積層方向と同じである。なお、図1B及び1C中の横線は、方向性電磁鋼板(方向性電磁鋼板15、16)を示している。
また、本実施形態では、縦部材11aと横部材12aとの2つの境界面(すなわち、電力機器用鉄心10のT字の接合部(コーナ部)における縦部材11aと横部材12aとの境界面)が交わる辺が、電力機器用鉄心10(横部材12a)の外周面よりも内周側に位置するように縦部材11aと横部材12aとを構成している。同様に、縦部材11aと横部材12bとの2つの境界面(すなわち、電力機器用鉄心10のT字の接合部における縦部材11aと横部材12bとの境界面)が交わる辺も、電力機器用鉄心10(横部材12b)の外周面よりも内周側に位置するように縦部材11aと横部材12aとを構成している。このように、本実施形態では、縦部材11aの長手方向における先端面は、電力機器用鉄心10の外周面に露出しないように、直接又は絶縁材を介して横部材12a、12bの内周面と相互に対向している。
電力機器用鉄心10中には、回転磁界と交番磁界とが生じる。以下では、回転磁界を時間とともに軌跡(磁束密度ベクトル)が回転する磁束密度と定義し、交番磁界を時間とともに軌跡(磁束密度ベクトル)が回転せず同一直線上で変化(振動)する磁束密度と定義する。
本実施形態では、同一の入力条件(例えば、後述の入力磁束密度が1.7[T]、周波数が50[Hz])において、(1)式を満たす傾角incと、(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなる。
0[°]≦inc≦4[°] ・・・(1)
0<α≦0.2 ・・・(2)
ここで、変圧器を構成して方向性電磁鋼板の鉄損を評価してもよく、専用装置(例えば、特許文献3または特許文献4の磁気測定装置)を使用して方向性電磁鋼板の鉄損を測定してもよい。
尚、変圧器を構成して方向性電磁鋼板(磁性体)の鉄損を評価する場合には、入力条件に応じた巻数のコイルを測定対象である変圧器の対応する部材(ここでは、縦部材11a〜11c)に巻き回すことは言うまでもない。
このように、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、傾角incが(1)式の範囲に含まれ、軸比αが(2)式の範囲に含まれることが好ましい。
図2Aは、回転磁界を説明する図である。また、図2Bは、交番磁界を説明する図である。図2A及び2B中において、x軸は、磁性体の磁化容易軸方向の磁束密度の大きさであり、y軸は、磁性体の第一の磁化困難軸方向の磁束密度の大きさである。図2A及び2Bの紙面垂直方向は、第二の磁化困難軸方向(電磁鋼板の積層方向)であるため、磁束は、主にxy平面内を流れる。回転磁界の場合、交流励磁された磁束密度ベクトルの大きさ及び向きは、交流の1周期の間に時々刻々と変化する。また、交番磁界の場合、交流励磁された磁束密度ベクトルの大きさは、交流の1周期の間に時々刻々と変化する。そこで、ある点における磁束密度ベクトルの軌跡(時間変化)を描くと、図2Aのように楕円状に変化する場合もあれば、図2Bのように直線状に変化する場合もある。図2Aの回転磁界では、磁束密度変化の1周期における磁束密度ベクトルの向きと大きさとが連続的に変化する。一方、図2Bの交番磁界では、磁束密度変化の1周期における磁束密度ベクトルの向きが連続的には変わらない(磁束密度ベクトルの大きさが0になる時に逆方向に変化する)が、磁束密度ベクトルの大きさが連続的に変化する。ここで、回転磁界の軸比αは、以下の(3)式で表される。(3)式において、最大磁束密度Bmaxは、磁束密度変化の1周期における磁束密度の大きさの最大値である。最小磁束密度Bminは、磁束密度ベクトルの大きさが最大となる磁束密度ベクトル(最大磁束密度Bmaxの磁束密度ベクトル)に垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値である。また、回転磁界の傾角incは、図2Aに示すように、磁気特性を表す楕円の長軸とx軸とがなす角度(最大磁束密度Bmaxを有する磁束密度ベクトルの磁化容易軸からの角度)で表される。一方、交番磁界の傾角incは、図2Bに示すように、最大磁束密度Bmaxの磁束密度ベクトルとx軸とがなす角度で表される。
α=Bmin/Bmax ・・・(3)
ここで、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板と、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板とを前述したように異ならせる理由について説明する。
図3は、縦部材と横部材とに同じ材質を使用した場合の、一入力条件における各種磁気特性の電磁場解析結果の一例を示す図である。
なお、以下では、二次元の電磁場解析において変圧器に入力する入力磁束密度は、電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部を構成する縦部材の長手方向中心を通り、かつこの縦部材の長手方向に垂直な線上(図13におけるML線上)における磁束密度ベクトルを位置平均して、この位置平均された磁束密度ベクトルの1周期(時間変化)における最大磁束密度Bmaxによって定義される。また、実際に変圧器を構成して使用する場合や三次元の電磁場解析を使用する場合には、位置平均される磁束密度ベクトルとして、電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部を構成する縦部材の長手方向中心を通り、かつこの縦部材の長手方向に垂直な断面における磁束密度ベクトルを使用して、変圧器に入力する入力磁束密度を定義する。
具体的に、図3の入力条件は、入力磁束密度が1[T]、周波数が50[Hz]である。また、同種の方向性電磁鋼板を用いて縦部材及び横部材を構成した。なお、この方向性電磁鋼板においては、例えば特許文献3の磁気測定装置または特許文献4の磁気測定装置を用いて各磁束密度(様々な軸比α及び傾角incを有する交番磁界及び回転磁界)に対する磁気特性を測定することができる。図3中には、「最大磁束密度Bmaxの分布」、「傾角incの分布」、「軸比αの分布」、「回転磁界(軸比α)及び異方性(傾角inc)を考慮しない鉄損分布」、「回転磁界(軸比α)及び異方性(傾角inc)を考慮した鉄損分布」及び「それらの鉄損分布の差分の分布(鉄損の差分分布)」を示している。
図4は、縦部材と横部材とに同じ材質を使用した場合の、複数の入力条件における各種磁気特性の電磁場解析結果の一例を示す図である。
具体的に、図4には、入力条件として、1[T]、1.5[T]、1.7[T]、1.9[T]の入力磁束密度及び50[Hz]の周波数を用いた場合の、「最大磁束密度Bmaxの分布」、「傾角incの分布」及び「軸比αの分布」を示している。
図5は、縦部材と横部材とに同じ材質を使用した場合の、複数の入力条件における傾角inc及び軸比αの横部材中の発生頻度分布の電磁場解析結果の一例を示す図である。
具体的に、図5には、入力条件として、1[T]、1.5[T]、1.7[T]、1.9[T]の入力磁束密度、50[Hz]の周波数を用いた場合の、傾角inc及び軸比αの発生頻度分布を示している。
図3〜5に示す各種磁気特性の電磁場解析結果は、特許文献5に示す磁界解析方法を用いて得られている。以下に、磁界解析に用いた、解析モデルと解析条件とを示す。図13には、解析対象(鉄心)の解析モデルを示す。図13に示すように、鉄心210の両端の縦部材211b、211cは、上底450[mm]、下底750[mm]、高さ150[mm]の等脚台形の形状(寸法)を有する。また、鉄心210の中央の縦部材211aは、長辺450[mm]、短辺150[mm]の長方形に、長辺(底辺)150[mm]の直角二等辺三角形の長辺を接続した形状(寸法)を有する。鉄心210の横部材212a、212bは、上底450[mm]、下底750[mm]、高さ150[mm]の等脚台形の上底の中心部から長辺(底辺)150[mm]の直角二等辺三角形を切り取った形状を有する。上述した縦部材211a〜211c及び横部材212a、212bは、磁性体の磁化容易軸の方向が図13中のL方向と一致するように配置されている。また、長さ300[mm]、厚さ25[mm]のコイル213a〜213cが、縦部材211a〜211cのそれぞれに巻き回されている。これらのコイル213a〜213cには、図13中の点線MLにおける入力磁束密度に応じた励磁電流密度の交流が与えられる。すなわち、入力磁束密度を1.0、1.5、1.7、1.9[T]に制御するために、この入力磁束密度に対応する励磁電流密度且つ周波数50[Hz]の交流を流す。また、鉄心210に用いる縦部材211a〜211c及び横部材212a、212bには、図14に示す磁気特性(B−Hカーブ)の方向性電磁鋼板を使用している。
横部材については、図3に示すように、回転磁界(軸比α)及び磁界の異方性(傾角inc)を考慮した場合の方が、それらを考慮しない場合よりも鉄損が大きくなる(図3の鉄損の差分分布のコンター図を参照)。また、横部材中に発生する回転磁界については、図3に示すように、軸比αは、概ね上述した(2)式の範囲にある(図3中の軸比α[−](回転磁界)のコンター図を参照)。この軸比αは、図4及び5に示すように入力条件を変えた場合であってもほとんど変化しない(図4中の軸比α[−]のコンター図、または図5を参照)。したがって、横部材については、上述の(2)式の範囲の軸比αを有する回転磁界が生じたときの鉄損を小さくすれば、横部材全体の鉄損を小さくすることができる。そのため、横部材には、上述の(2)式の範囲の軸比αを有する回転磁界に対する鉄損が小さい方向性電磁鋼板(第二の磁性体)を使用することが好ましい。図3〜5に示すように、特に、軸比αが0.1付近の領域(頻度)が大きい。そのため、横部材には、0.1付近(例えば、0.05以上0.15以下)の軸比αを有する回転磁界に対する鉄損が小さい方向性電磁鋼板を使用してもよい。
また、横部材については、図3に示すように、傾角inc[°]は、概ね上述した(1)式の範囲にある(図3中のinc[°](異方性)のコンター図を参照)。この傾角incは、図4及び図5に示すように、励磁する入力磁束密度が1.9[T]の場合を除くと入力条件を変えた場合であってもほとんど変化しない(図4中のinc[°]のコンター図、または図5を参照)。したがって、横部材については、上述の(1)式の範囲の傾角inc[°]を有する回転磁界が生じたときの鉄損を小さくすれば、横部材全体の鉄損をより一層小さくすることができる。そのため、横部材には、上述の(1)式の範囲の傾角incを有する回転磁界に対する鉄損が小さい方向性電磁鋼板(第二の磁性体)を使用することが好ましい。尚、励磁する入力磁束密度が1.9[T]の場合の傾角inc[°]の分布が、その他の入力磁束密度(入力条件)の場合の傾角inc[°]の分布と異なる。この理由は、励磁する入力磁束密度が1.9[T]になると方向性電磁鋼板が磁気飽和を起こすためであると考えられる。
以上のことから本実施形態では、前述したように縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板と、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板とが異なる。
次に、電力機器用鉄心10の製造方法について説明する。
前述したように、本実施形態では、同一の入力条件において、(1)式を満たす傾角incと、(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択している。
なお、電磁場解析には、例えば、特許文献6に示すような磁界解析方法も利用できる。また、直接縦部材と横部材とを用いて鉄心を構成し、非特許文献1〜3に示すような方法により測定を行い、磁気特性を決定してもよい。なお、電磁場解析を行う際には、計算精度と計算時間とを考慮して、各部材中の格子幅及び推定する傾角inc、軸比α、鉄損の階級幅を適切に設定する。後述の磁束密度(回転磁界及び交番磁界)の発生頻度分布は、上述の解析または測定により求めることができる。
さらに、電力機器用鉄心10に使用する材料(方向性電磁鋼板)の製造方法について説明する。電力機器用鉄心10に使用する材料の磁気特性は、磁区幅によって大きな影響を受ける。材料の磁区幅を狭くすると、磁壁移動による異常渦電流損が小さくなるので、軸比αが0、傾角incが0[°]である交番磁界に対する鉄損が小さくなる。しかしながら、軸比αが0、傾角incが0[°]である交番磁界から軸比α、傾角incの少なくとも一方を少し変化させた磁束密度(例えば、0.05の軸比αを有する回転磁界や5[°]の傾角incを有する交番磁界)に対する磁気特性は、磁壁移動以外の影響によって低下することがある。例えば、この磁壁移動以外の影響は、ランセット磁区の形成、困難軸の磁化および回転磁界の発生である。このため、(1)式を満たす傾角incと、(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界に対する材料の磁気特性が劣化し、鉄損が増大することがある。
また、磁区幅を制御する方法として、例えば、レーザ照射などの外部入力によって電磁鋼板にパワー(エネルギー)を注入する方法がある。この方法では、パワーを注入した近傍の磁区構造が複雑になる。その結果、材料の磁気特性が種々の影響を受ける。このため、パワー注入量を適切に制御することによって、電磁鋼板の磁気特性を最適化することができる。
すなわち、複雑な磁区構造に伴う複雑な磁化過程を考慮しながら、パワー注入量を適切に制御することにより、様々な磁気特性をもつ材料を製造することができる。
本実施形態では、例えば、同一の母材(方向性電磁鋼板)に対して、異なるレーザを照射したり、機械的に異なる疵をつけたりすることにより、材料間で磁区幅が異なるように制御する。例えば、これらの材料の中から、縦部材11a〜11cと横部材12a、12bとに使用する材料を前述したような関係が得られるように選択する。
例えば、仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板に対して、その板幅方向にレーザ光を照射し、方向性電磁鋼板の圧延方向(長手方向)に所定の間隔(ピッチ)を空けてこのレーザ光の照射部を形成する。このとき、照射するレーザ光のエネルギー、及びレーザ光の照射間隔(上記ピッチ)の少なくとも何れか一方を縦部材11a〜11cと横部材12a、12bとの間で異ならせることにより、縦部材11a〜11cの鉄損と横部材12a、12bの鉄損との間に前述した関係を満足させる。尚、レーザ光の代わりに、電子ビーム、イオンビーム、赤外線、誘導加熱等の熱線を利用することもできる。また、機械的に疵をつける場合には、例えば、方向性電磁鋼板の表面に対して型を押圧して、その板幅方向に線状の微小歪みを付与し、方向性電磁鋼板の長手方向に所定の間隔(ピッチ)を空けてこの線状の微小歪み部を形成する。このとき、型の大きさ、型を押圧する力、及び型を押圧する間隔(前記ピッチ)の少なくとも何れか一方を縦部材11a〜11cと横部材12a、12bとの間で異ならせることにより、縦部材11a〜11cの鉄損と横部材12a、12bの鉄損との間に前述した関係を満足させる。なお、上述の微小歪み部を、エッチングにより形成しても良い。
また、熱処理により方向性電磁鋼板中の結晶粒の形状と方位とを制御したり、微量元素の添加により方向性電磁鋼板中に析出物を析出させたりすることによって、磁区構造を制御することもできる。
図6A〜6Cには、縦部材及び横部材として使用される方向性電磁鋼板の候補となる材料の鉄損の測定結果の一例を示している。具体的に図6A〜6Cでは、0[°]、2[°]または4[°]の傾角incと、0、0.1または0.2の軸比αとを有する磁束密度(回転磁界または交番磁界)が生じたときの3種の材料の鉄損の測定結果の一例を示している。また、図6A〜6Cでは、各材料の鉄損を測定する際、変圧器への入力条件は、1.7[T]の入力磁束密度かつ50[Hz]の周波数になる同一の条件である。図6A〜6Cにおける単純aveは、各条件の磁束密度における鉄損[W/kg]の単純平均値である。具体的には、この単純aveは、各条件の磁束密度における鉄損の合計値を測定条件の数(図6A〜6Cの例では、9)で割ることにより得られる。
従来では、同じ材料を縦部材及び横部材の双方に用いていた。これに対し、単純ave(単純平均)の値が縦部材(ここでは、図6Aの特性を有する材料1)の材料よりも小さい材料(図6Bの特性を有する材料2)を横部材に使用する。
その結果、図6Aの特性を有する材料1を縦部材に使用し、図6Bの特性を有する材料2を横部材に使用した変圧器の鉄損は、図6Aの特性を有する材料1を縦部材及び横部材の両方に使用した変圧器の鉄損の0.94倍であった。ここで、各変圧器の横部材の材料以外の材料の製造条件は、それぞれ同じであり、各変圧器の鉄損を測定する際の入力条件は、それぞれ同じである。
以上のように、上記(1)式を満たす傾角inc[°]と上記(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が横部材中に生じたときの鉄損が小さい材料を選択する一方法として、候補となる材料のうち単純aveの値が最小の材料を選択している。しかしながら、本実施形態では、以下のようにして横部材及び縦部材に使用する材料を決定してもよい。すなわち、図6A〜6Cに示した各条件の磁束密度に対応する鉄損に対して、横部材における傾角inc及び軸比αの回転磁界の発生頻度分布(図5を参照)に基づいて決定された重み付け係数を乗算し、重み付け係数を乗じた各鉄損の合計値(加重平均鉄損)を求める。この加重平均鉄損が最も小さい材料を、上記(1)式を満たす傾角inc[°]と上記(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの鉄損が小さい材料として選択する。例えば、図5に示す4つの入力条件における発生頻度分布のうち、変圧器の使用状態に近い1.7[T]の入力磁束密度かつ50[Hz]の周波数における発生頻度分布に基づいて、図7に示すような重み付け係数を決定する。すなわち、図7に示す例では、発生頻度分布において発生頻度が高いほど重み付け係数が大きくなり、且つ各重み付け係数の合計値が1となる。例えば、図7において、2[°]の傾角incと0.1の軸比αを有する回転磁界に対する重み付け係数は、発生頻度分布における1[°]超かつ3[°]以下の傾角incと0.05超かつ0.15以下の軸比αとを有する回転磁界の発生頻度を、0[°]以上かつ4[°]以下の傾角incと0以上かつ0.2以下の軸比αとを有する磁束密度(回転磁界及び交番磁界)の発生頻度で割ることにより求められる。このように、0[°]、2[°]、4[°]の傾角incを有する磁界に対して、それぞれ、0[°]超かつ1[°]以下、1[°]超かつ3[°]以下、3[°]超かつ4[°]以下の傾角incを有する磁束密度の発生頻度を使用する。同様に、0、0.1、0.2の軸比αを有する磁界に対して、それぞれ、0超かつ0.05以下、0.05超かつ0.15以下、0.15超かつ0.2以下の軸比αを有する磁束密度の発生頻度を使用する。しかしながら、各条件の磁束密度の重み付け係数の計算方法は、上記の方法に制限されない。例えば、磁気特性を測定する装置の能力に応じて、各条件の磁束密度の重み付け係数を決定するための発生頻度分布の階数の数値範囲を決定しても良い。この重み付け係数の決定方法は、計算精度や計算時間等の条件を勘案して任意に設定することができる。図6A〜6Cに示した各材料について、各条件の磁束密度(傾角inc及び軸比α)に対する鉄損に、それぞれの磁束密度に対応する重み付け係数を乗算した値の合計値(加重平均鉄損)を算出する。例えば、図6Aの特性を有する材料1に対しては、以下の(4)式のように、傾角incと軸比αとを有する磁束密度(回転磁界及び交番磁界)の発生頻度を考慮して、回転磁界が生じた横部材中の鉄損を算出することができる。
0.95×(9/20)+1.37×(2/20)+1.61×(1/20)+1.81×(2/20)+2.47×(1/20)+2.90×(1/20)+2.57×(2/20)+3.51×(1/20)+4.12×(1/20)≒1.73[W/kg]・・・(4)
材料2および3についても材料1の場合と同様の計算を行った。材料1〜3を横部材として使用した場合の各材料中に生じる鉄損(加重平均鉄損)の計算結果を図8に示す。
なお、横部材については、図8に示す鉄損が最も小さい材料(図6A〜Cに示す例では、図6Cの特性を有する材料3)を使用している。
その結果、図6Aの特性を有する材料1を縦部材に使用し、図6Cの特性を有する材料3を横部材に使用した変圧器の鉄損は、図6Aの特性を有する材料1を縦部材及び横部材の両方に使用した変圧器の鉄損の0.93倍であった。ここで、各変圧器の横部材の材料以外の材料の製造条件は、それぞれ同じであり、各変圧器の鉄損を測定する際の入力条件は、それぞれ同じである。したがって、単純aveの値を用いて横部材として使用する材料を選択するよりも、傾角incと軸比αとを有する磁束密度の発生頻度に基づいて決定された重み付け係数を各条件の磁束密度に対応する鉄損に乗算した値の合計値(加重平均鉄損)を用いて横部材として使用する材料を選択した方が変圧器の鉄損をより一層低減することができる。
尚、以上のような材料1〜3から何れか一つの材料を選択するために、RAMをワークエリアとして用い、ROMに記憶された制御プログラム(材料選択アルゴリズム)をCPUに実行させてもよい。
上述したように、本実施形態では、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、横部材に使用する材料(第二の磁性体)の平均鉄損が、縦部材に使用する材料(第一の磁性体)の平均鉄損よりも小さくなる。この平均鉄損は、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の合計値を、傾角incと軸比αとの組み合わせの数で除した単純平均鉄損であってもよい。また、平均鉄損は、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が横部材中に発生する頻度に基づいて予め決定され、各磁界に対応する複数の重み付け係数と、各重み付け係数に対応する各磁束密度によって磁性体中に生じる各鉄損との積を合計した加重平均鉄損であってもよい。
以上のように本実施形態では、上記(1)式を満たす傾角inc[°]と上記(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように、例えば各方向性電磁鋼板の磁区幅を調整する。したがって、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の積層方向と、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の積層方向とを異ならせたり、鉄心10の中央部分の縦部材11aと横部材12aとの間の境界線と、縦部材11aと横部材12bとの間の境界線との交点を、鉄心10の外周よりも外側に位置させたりしなくても、変圧器の鉄損を低減することができる。よって、縦部材及び横部材を組み合わせて構成された鉄心の鉄損を低減でき、縦部材及び横部材の形状に対する制約を従来よりも小さくすることができる。
また、本実施形態では、傾角incが0[°]以上かつ4[°]以下の範囲にあり、軸比α[−]が0以上かつ0.2以下の範囲にある磁束密度について、傾角incと軸比αとを有する磁束密度の発生頻度に基づいて決定された重み付け係数を、各条件の磁束密度に対応する各鉄損に乗算した値の合計値(加重平均鉄損)を用いて、横部材12a、12bとして使用する方向性電磁鋼板を選択した。すなわち、磁束密度の発生頻度に基づく重み付けをした鉄損(加重平均鉄損)において、横部材12a、12bの鉄損は、縦部材11a〜11cの鉄損よりも小さい。したがって、実際に横部材12a、12bに生じている磁束密度(特に、回転磁界)による鉄損がより小さい方向性電磁鋼板を横部材12a、12bとして使用することができる。
尚、本実施形態では、0[°]、2[°]または4[°]の傾角incと、0、0.1または0.2の軸比αとを有する磁束密度(9種類の磁束密度)が生じたときの各条件の磁束密度に対応する各鉄損を用いて3種の材料から、縦部材11a〜11c及び横部材12a、12bに使用する材料をそれぞれ選択した場合を例に挙げて説明した(図6A〜6Cを参照)。なお、単純平均(算術平均)及び加重平均を使用する場合には、0[°]、4[°]を含む所定の傾角incと、0、0.2を含む所定の軸比αとにより定まる磁束密度(交番磁界と回転磁界とを含む少なくとも4種類の磁界)が生じたときの各条件の磁束密度に対応する各鉄損を用いて2種以上の材料から、縦部材11a〜11c及び横部材12a、12bに使用する材料をそれぞれ選択してもよい。このように加重平均を使用する場合には、所定の磁束密度の区分(階数)、すなわち、所定の傾角incと所定の軸比αとの組み合わせの数に応じて重み付け係数の数も変化する。この組み合わせ(所定の磁束密度)の数を多くすれば、計算負荷が大きくなるが、実際に横部材12a、12bに生じている磁束密度(特に、回転磁界)をより一層正確に計算結果に反映させることができる。よって、実際に横部材12a、12bに生じている磁束密度(特に、回転磁界)による鉄損がより一層小さい方向性電磁鋼板を横部材12a、12bとして使用することができる。
また、本実施形態では、上記(1)式を満たす傾角incと上記(2)式を満たす軸比αとを有する回転磁界が生じたときの、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択した場合を例に挙げて説明した。特に、本実施形態では、少なくとも、上記(1)式を満たす所定の傾角inc及び上記(2)式を満たす所定の軸比αを有する回転磁界を考慮して、横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択している。しかしながら、この回転磁界の傾角inc及び軸比αは、(1)式及び(2)式の範囲に制限されない。より広い範囲の傾角inc及び軸比αを有する磁束密度を考慮すれば、より一層正確に横部材12a、12bに生じる鉄損を計算することができる。また、より狭い範囲の傾角inc及び軸比αを有する磁束密度を考慮すれば、より一層高速かつ簡便に横部材12a、12bに生じる鉄損を計算することができる。例えば、回転磁界の軸比αを、以下の(5)式の範囲に設定してもよい。また、上記実施形態では、磁性体の磁化容易軸と異なる方向の磁束密度(回転磁界及び傾角incが0[°]でない交番磁界)を考慮して、横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択してもよい。この磁性体の磁化容易軸と異なる方向の磁束密度は、傾角incが0[°]でない交番磁界と、傾角incが0[°]である回転磁界とを含んでもよい。
0<α≦0.1 ・・・(5)
また、所定の傾角incと所定の軸比αとを有する回転磁界が生じたときの、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択してもよい。すなわち、この回転磁界の傾角inc及び軸比αは、(1)式及び(2)式の範囲に制限されない。例えば、軸比αが0.1、傾角incが2[°]の回転磁界が生じたときの、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板(例えば、図6Bに示す材料2)の鉄損が、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板(例えば、図6Aに示す材料1)の鉄損よりも小さくなるように横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択してもよい。更に、傾角incを考慮せずに軸比αのみを考慮して、縦部材11a〜11c及び横部材12a、12bに用いる方向性電磁鋼板を決定してもよい。傾角incが(1)式の範囲の何れかであり、且つ、軸比αが(2)式の範囲の何れかである回転磁界が生じたときの、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択することもできる。
また、本実施形態では、図1A〜1Cに示すように、鉄心10の中央部分の縦部材11aと横部材12aとの間の境界線と、縦部材11aと横部材12bとの間の境界線との交点が、鉄心10の外周よりも内側に位置する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、鉄心10の中央部分の縦部材11aと横部材12aとの間の境界線と、縦部材11aと横部材12bとの間の境界線との交点が、鉄心10の外周と一致するようにしたり、鉄心の外周よりも外側に位置するようにしたりしてもよい。
また、本実施形態では、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の積層方向と、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の積層方向とが同じである場合を例に挙げて説明したが、これらの積層方向が異なってもよい。しかしながら、電磁場解析を確実に行い、横部材12a、12b中の磁場を容易に推定できるように、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の積層方向と、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の積層方向とが同じであることが好ましい。更に、少なくとも2つの縦部材が、2つの横部材と磁気的に結合するようにこの2つの横部材の間に配置されていれば、縦部材及び横部材の数及び形状は、図1A〜1Cに示した実施形態に限定されない。
また、本実施形態では、縦部材11a〜11cとして使用する方向性電磁鋼板(の磁区幅)と、横部材12a、12bとして使用する方向性電磁鋼板(の磁区幅)とを異ならせるために、同一の母材に対してレーザを照射する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにして方向性電磁鋼板の磁気特性(磁気異方性)を制御する必要はない。例えば、縦部材11a〜11cとして使用する方向性電磁鋼板(の磁区幅)と、横部材12a、12bとして使用する方向性電磁鋼板(の磁区幅)とを異ならせるために、熱処理時間及び熱処理温度の少なくとも何れか一方を変えたり、鋼板(母材)の成分を変えたりしてもよい。
また、本実施形態では、縦部材11a〜11c及び横部材12a、12bとして方向性電磁鋼板を用いた場合を例に挙げて説明した。しかしながら、磁性体の板を用いていれば、必ずしも方向性電磁鋼板を用いる必要はない。例えば、縦部材11a〜11c及び横部材12a、12bとして無方向性電磁鋼板を用いることができる。
上述の例では、図6A〜6Cに示すように、傾角incが0[°]であり、軸比αが0である交番磁界が生じたときの鉄損について、縦部材に使用する材料の鉄損と横部材に使用する材料の鉄損とが同じである。これに対し、軸比αが0、傾角incが0[°]である交番磁界が生じたときの鉄損について、縦部材を構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、横部材を構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように横部材に使用する方向性電磁鋼板を選択してもよい。なお、前述の説明と内容が重複する部分については、詳細な説明を省略する。
図3に示すように、縦部材については、回転磁界(軸比α)及び異方性(傾角inc)を考慮した場合であっても縦部材中に生じる鉄損は概ね変わらない(図3中の鉄損の差分分布のコンター図を参照)。また、縦部材については、図4に示すように、入力条件を変えた場合であっても、軸比αは、一様に概ね0[−]である(図4中の軸比α[−]のコンター図を参照)。したがって、縦部材については、軸比αが0[°]の交番磁界が生じたときの鉄損を小さくすれば、縦部材全体の鉄損を小さくすることができる。
また、縦部材については、図3に示すように、傾角inc[°]は、概ね0[°]であり(図3のinc[°](異方性)のコンター図を参照)、図4に示すように、入力条件を変えた場合であっても、傾角incは、概ね0[°]から変わらない(図4のinc[°]のコンター図を参照)。したがって、縦部材については、傾角inc[°]が0[°]の交番磁界が生じたときの鉄損を小さくすれば、縦部材全体の鉄損をより一層小さくすることができる。
そこで、本実施形態では、軸比αが0、傾角incが0[°]である交番磁界が各種方向性電磁鋼板に生じたときの、縦部材11a〜11cを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、横部材12a、12bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板を選択している。
したがって、縦部材11a〜11cに使用する方向性電磁鋼板の鉄損と横部材12a、12bに使用する方向性電磁鋼板の磁束密度に対する鉄損との間に前述の関係が得られるように母材(方向性電磁鋼板)の磁区幅を制御してもよい。同一の母材に対してレーザ光を照射したり、機械的に疵をつけたりすることにより、母材(方向性電磁鋼板)の磁区幅を制御することができる。
図9A〜9Cには、縦部材及び横部材として使用される方向性電磁鋼板の候補となる材料の鉄損の測定結果の一例を示している。具体的に図9A〜9Cでは、0[°]、2[°]または4[°]の傾角incと、0、0.1または0.2の軸比αとを有する磁束密度が生じたときの3種の材料の鉄損の測定結果の一例を示している。また、図9A〜9Cでは、各材料の鉄損を測定する際、変圧器への入力条件は、1.7[T]の入力磁束密度かつ50[Hz]の周波数になる同一の条件である。図9A〜9Cにおける単純aveは、各条件の磁束密度における鉄損[W/kg]の単純平均値(算術平均)である。具体的には、この単純aveは、各条件の磁束密度における鉄損の合計値を測定条件の数(図9A〜9Cの例では、9)で割ることにより得られる。
従来では、複数の材料を比較して、傾角incが0[°]であり、且つ軸比αが0である交番磁界が生じた場合に鉄損が最も小さい材料(図9A〜9Cに示す例では、図9Bの特性を有する材料5)を縦部材及び横部材の双方に用いていた。これに対し、傾角incが0[°]であり、軸比αが0である交番磁界が生じたときの鉄損が最も小さい材料(図9A〜9Cに示す例では、図9Bの特性を有する材料5)を縦部材に使用する。一方、単純aveの値が最も小さい材料(図9A〜9Cに示す例では、図9Aの特性を有する材料4)を横部材に使用する。
その結果、図9Bの特性を有する材料5を縦部材に使用し、図9Aの特性を有する材料4を横部材に使用した変圧器の鉄損は、図9Bの特性を有する材料5を縦部材及び横部材の両方に使用した変圧器の鉄損の0.96倍であった。ここで、各変圧器の横部材の材料以外の材料の製造条件は、それぞれ同じであり、各変圧器の鉄損を測定する際の入力条件は、それぞれ同じである。
以上のように、上記(1)を満たす傾角inc[°]と上記(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの鉄損が小さい材料を選択する一方法として、候補となる材料のうち単純aveの値が最小の材料を選択している。しかしながら、以下のようにして横部材及び縦部材に使用する材料を決定することもできる。すなわち、図9A〜9Cに示した各条件の磁束密度に対応する鉄損に対して、横部材における傾角inc及び軸比αの発生頻度分布(図5を参照)に基づいて決定された重み付け係数を乗算し、重み付け係数を乗じた各鉄損の合計値(加重平均鉄損)を求める。この加重平均鉄損が最も小さい材料を、上記(1)式を満たす傾角inc[°]と上記(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの鉄損が小さい材料として選択する。例えば、図5に示す4つの入力条件における発生頻度分布のうち、変圧器の使用状態に近い1.7[T]の入力磁束密度かつ50[Hz]の周波数における発生頻度分布に基づいて、図7に示したような重み付け係数を決定する。図9A〜9Cに示した各材料について、各条件の磁束密度(傾角inc及び軸比α)に対する各鉄損値に、それぞれの磁束密度に対応する重み付け係数を乗算した値の合計値(加重平均鉄損)を算出する。
図10には、横部材中の磁束密度(回転磁界及び交番磁界)について、傾角incが0[°]以上かつ4[°]以下の範囲にあり、軸比α[−]が0以上0.2以下の範囲にあるときの、横部材中に生じる鉄損を算出(推定)した結果の一例を示している。
本実施形態では、図9A〜9Cを参照して、傾角incが0[°]であり、且つ軸比αが0である交番磁界が生じたときの鉄損が最も小さい材料(図9A〜9Cに示す例では、図9Bの特性を有する材料5)を縦部材に使用する。一方、図10に示す鉄損(加重平均鉄損)が最も小さい材料(図9A〜9Cに示す例では、図9Cの特性を有する材料6)を横部材に使用する。
その結果、図9Bの特性を有する材料5を縦部材に使用し、図9Cの特性を有する材料6を横部材に使用した変圧器の鉄損は、図9Bの特性を有する材料5を縦部材及び横部材の両方に使用した変圧器の鉄損の0.94倍であった。ここで、各変圧器の横部材の材料以外の材料の製造条件は、それぞれ同じであり、各変圧器の鉄損を測定する際の入力条件は、それぞれ同じである。したがって、単純aveの値を用いて横部材として使用する材料を選択するよりも、傾角incと軸比αとを有する磁束密度の発生頻度に基づいて決定された重み付け係数を各条件の磁束密度に対応する鉄損に乗算した値の合計値(加重平均鉄損)を用いて横部材として使用する材料を選択した方が変圧器の鉄損をより一層低減することができる。
尚、以上のような材料4〜6から何れか一つの材料を選択するために、RAMをワークエリアとして用い、ROMに記憶された制御プログラム(材料選択アルゴリズム)をCPUに実行させてもよい。
以上のように本実施形態では、傾角inc[°]が0[°]の交番磁界が生じたときの縦部材に使用する材料の鉄損が、横部材に使用する材料の鉄損よりも小さくなるように縦部材に使用する方向性電磁鋼板を選択した。そのため、鉄心全体に生じる鉄損をより一層減少させることができる。尚、各条件の磁束密度(傾角incと軸比αとの組み合わせ)、種々の鉄心の構成、方向性電磁鋼板の製造方法、磁性材料の種類等の各種条件を採用することができる。
本実施形態のコイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心は、図6A〜6C、図7、図8または図9A〜9C、図10を用いて説明した方法によって製造することができる。この方法では、回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材とに使用する磁性体(方向性電磁鋼板)を選定している。すなわち、各横部材を構成する方向性電磁鋼板の回転磁界に対する鉄損が、各縦部材を構成する方向性電磁鋼板の回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、複数の方向性電磁鋼板から、各縦部材と各横部材とを構成する方向性電磁鋼板(第一の磁性体及び第二の磁性体)を選定する。構成された各縦部材をコイルの軸方向に延在するように配置し、構成された各横部材をコイルの軸方向と異なる方向に延在するように、且つ各縦部材と磁気的に結合されるように配置する。
上記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれることが好ましい。また、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が方向性電磁鋼板中に生じたときの各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、横部材を構成する方向性電磁鋼板の磁束密度に対する平均鉄損が、縦部材を構成する方向性電磁鋼板の磁束密度に対する平均鉄損よりも小さくなるように、複数の方向性電磁鋼板から、各縦部材と各横部材とを構成する方向性電磁鋼板を選定することが好ましい。さらに、軸比αが0であり、且つ傾角incが0[°]である交番磁界によって方向性電磁鋼板中に生じる鉄損を測定し、縦部材を構成する方向性電磁鋼板の交番磁界に対する鉄損が、横部材を構成する方向性電磁鋼板の交番磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、複数の方向性電磁鋼板から、各縦部材と各横部材とを構成する方向性電磁鋼板を選定してもよい。加えて、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有する縦部材を構成する方向性電磁鋼板及び横部材を構成する方向性電磁鋼板について、縦部材を構成する方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向が、縦部材の延在方向と一致し、横部材を構成する方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向が、横部材の延在方向と一致し、縦部材を構成する方向性電磁鋼板の第二の磁化困難軸の方向が、横部材を構成する方向性電磁鋼板の第二の磁化困難軸の方向と一致するように各縦部材と各横部材とを配置してもよい。
(第2の実施形態)
前述した第1の実施形態では、縦部材11a〜11cと横部材12a、12bとに異なる方向性電磁鋼板を用いた場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、縦部材と横部材とが組み合わさっているT字状の接続部を形成するコーナ部に位置する方向性電磁鋼板が、その他の領域に位置する方向性電磁鋼板と異なる場合について説明する。このように本実施形態と前述した第1の実施形態とでは、縦部材及び横部材の構成の一部が異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、詳細な説明を省略する。
図11A〜11Cは、電力機器用鉄心110の構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図11Aは、電力機器用鉄心110の正面図である。図11Bは、A−A’方向から見た電力機器用鉄心110の断面図である。図11Cは、図11AのB−B’方向から見た電力機器用鉄心110の断面図である。
図11Aに示すように電力機器用鉄心110は、縦部材111a〜111cと、横部材112a〜112dと、コーナ部材113a、113bとを有している。この電力機器用鉄心110は、縦部材にコイル(図示しない)が巻き回されて使用される。そのため、縦部材111a〜111cは、コイルの軸方向に延在する。
横部材112a〜112dは、横部材112a〜112dの長手方向が電力機器用鉄心110の横方向と一致するように配置される。そのため、横部材112a、112bは、コイルの軸方向と異なる方向に延在する。また、横部材112a、112bは、それぞれ横部材112c、112dと所定の距離離れた位置に対向して配置される。コーナ部材113aは、横部材112aと横部材112bとの間に存在し、コーナ部材113bは、横部材112cと横部材112dとの間に存在する。縦部材111a〜111cは、電力機器用鉄心110の脚に対応し、コーナ部材113a及び横部材112a、112bとコーナ部材113b及び横部材112c、112dとの間に存在する。この縦部材111a〜111cは、縦部材111a〜111cの長手方向が電力機器用鉄心110の高さ方向と一致するように配置される。そのため、コーナ部材113a、113bは、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部に位置する。縦部材111a〜111c、横部材112a〜112d、及びコーナ部材113a、113bは、閉磁路が形成されるように相互に磁気的に結合される。
縦部材111a〜111c、横部材112a〜112d、及びコーナ部材113a、113bは、例えば、図11Aに示すような形状に打ち抜かれた方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。
例えば、縦部材111aは、長方形状の方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。
縦部材111b、111cに使用する方向性電磁鋼板の形状は、上底の長さが、縦部材111aを構成する方向性電磁鋼板の長手方向(長辺)の長さと同じ等脚台形である。縦部材111b、111cは、この方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。ここで、縦部材111bの形状は、縦部材111cの形状と同一である。
なお、積層された各方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向は、全て略同じである。そのため、縦部材111aが最も磁化しやすい方向は、縦部材111aを構成する方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向と略一致する。
横部材112a〜112dに使用する方向性電磁鋼板の形状は、縦部材111b、111cを構成する方向性電磁鋼板の斜辺の長さと同じ斜辺の長さを有する直角台形である。横部材112a〜112dは、この方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。ここで、横部材112aの形状は、横部材112bの形状と同一である。
本実施形態では、コーナ部材113a、113bは、矩形状である。この矩形の一方の辺(第一の辺)の長さは、横部材112a〜112dを構成する直角台形状の方向性電磁鋼板の高さと同じである。また、この矩形の他方の辺(第二の辺)の長さは、縦部材111aを構成する方向性電磁鋼板の短辺の長さと同じである。コーナ部材113a、113bは、この方向性電磁鋼板をその板厚方向に積層させることにより構成される。ここで、コーナ部材113aの形状は、コーナ部材113bの形状と同一である。
電力機器用鉄心110は、以上のような縦部材111a〜111c、横部材112a〜112d、及びコーナ部材113a、113bを組み合わせて固定することによって構成される。尚、図11Aにおいて、縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112d中に示している矢印の方向が磁化容易軸の方向である。
また、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、縦部材111a〜111cを構成する方向性電磁鋼板の積層方向は、横部材112a〜112dを構成する方向性電磁鋼板の積層方向及びコーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の積層方向と同じである。なお、図11B及び11C中の横線は、方向性電磁鋼板(方向性電磁鋼板115〜117)を示している。
(1)式を満たす傾角inc[°]と、(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部に位置するコーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、その他の領域に位置する各部材(縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112d)を構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるようにコーナ部材113a、113bに使用する方向性電磁鋼板を選択している。
このように、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、傾角incが(1)式の範囲に含まれ、軸比αが(2)式の範囲に含まれることが好ましい。
また、軸比αが0であり、且つ傾角incが0[°]である交番磁界が生じたときの、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部以外の領域に位置する縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112dを構成する方向性電磁鋼板の鉄損(すなわち、磁化容易軸の方向に平行な交番磁界による鉄損)が、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部に位置するコーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112dに使用する方向性電磁鋼板を選択している。
図3及び図4に示したように、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部における鉄損が回転磁界の影響を強く受ける。そのため、このコーナ部の領域の鉄損を低減できれば、電力機器用鉄心110の鉄損を確実に低減することができる。そのため、本実施例では、電力機器用鉄心110に縦部材111a〜111c、横部材112a〜112d、及びコーナ部材113a、113bを用いている。
縦部材111a〜111c、横部材112a〜112d、及びコーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板を製造するために、本実施形態では、第1の実施形態と同様の製造方法を使用することができる。例えば、同一の母材(方向性電磁鋼板)に対して、異なるレーザを照射したり、機械的に異なる疵をつけたりすることにより、材料間で磁区幅が異なるように制御する。例えば、これらの材料の中から、縦部材111a〜111c、横部材112a〜112d、及びコーナ部材113a、113bに使用する材料を前述したような関係が得られるように選択する。
例えば、仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板に対して、その板幅方向にレーザ光を照射し、方向性電磁鋼板の圧延方向(長手方向)に所定の間隔(ピッチ)を空けてこのレーザ光の照射部を形成する。このとき、照射するレーザ光のエネルギー、及びレーザ光の照射間隔(上記ピッチ)の少なくとも何れか一方を縦部材11a〜11cと横部材12a、12bとの間で異ならせることにより、縦部材11a〜11cの鉄損と横部材12a、12bの鉄損との間に前述した関係を満足させる。尚、レーザ光の代わりに、電子ビーム、イオンビーム、赤外線、誘導加熱等の熱線を利用することもできる。また、機械的に疵をつける場合には、例えば、方向性電磁鋼板の表面に対して型を押圧して、その板幅方向に線状の微小歪みを付与し、方向性電磁鋼板の長手方向に所定の間隔(ピッチ)を空けてこの線状の微小歪み部を形成する。このとき、型の大きさ、型を押圧する力、及び型を押圧する間隔(前記ピッチ)の少なくとも何れか一方を縦部材11a〜11cと横部材12a、12bとの間で異ならせることにより、縦部材11a〜11cの鉄損と横部材12a、12bの鉄損との間に前述した関係を満足させる。なお、上述の微小歪み部を、エッチングにより形成しても良い。
また、熱処理により方向性電磁鋼板中の結晶粒の形状と方位とを制御したり、微量元素の添加により方向性電磁鋼板中に析出物を析出させたりすることによって、磁区構造を制御することもできる。この平均鉄損は、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の合計値を、傾角incと軸比αとの組み合わせの数で除した単純平均鉄損であってもよい。また、平均鉄損は、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が横部材中に発生する頻度に基づいて予め決定され、各磁界に対応する複数の重み付け係数と、各重み付け係数に対応する各磁束密度によって磁性体中に生じる各鉄損との積を合計した加重平均鉄損であってもよい。
また、傾角incが(1)式の範囲の何れかであり、且つ、軸比αが(2)式の範囲の何れかである回転磁界が生じたときの、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部に位置するコーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、その他の領域に位置する各部材(縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112d)を構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるようにコーナ部材113a、113bに使用する方向性電磁鋼板を選択することもできる。
具体的に図11A〜11Cに示した例では、傾角incが0[°]であり、軸比αが0である交番磁界が生じたときの鉄損が最も小さい材料(図9Bの特性を有する材料5)を縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112dに使用する。一方、単純aveの値が最も小さい材料(図9Aの特性を有する材料4)をコーナ部材113a、113dに使用する。
その結果、図9Bの特性を有する材料5を縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112dに使用し、図9Aの特性を有する材料4をコーナ部材113a、113bに使用した変圧器の鉄損は、図9Bの特性を有する材料5を縦部材及び横部材の両方に使用した変圧器の鉄損の0.95倍であった。ここで、各変圧器の横部材の材料以外の材料の製造条件は、それぞれ同じであり、各変圧器の鉄損を測定する際の入力条件は、それぞれ同じである。
尚、第1の実施形態で説明したように、図9A〜9Cに示した各条件の磁束密度に対応する鉄損に対して、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部における傾角inc及び軸比αの発生頻度分布に基づいて決定された重み付け係数を乗算し、重み付け係数を乗じた各鉄損の合計値(加重平均鉄損)を求めてもよい。この加重平均鉄損が最も小さい材料を、コーナ部材113a、113bに使用してもよい。しかしながら、電力機器用鉄心110のT字状の接続部を形成するコーナ部には、概ね一様な回転磁界が生じるので、本実施形態では、このような重み付けを行わず鉄損の単純aveが低い材料をコーナ部材113a、113bに選択することが好ましい。
したがって、本実施形態では、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、コーナ部に使用する材料(第三の磁性体)の平均鉄損が、縦部材に使用する材料(第一の磁性体)及び横部材に使用する材料(第二の磁性体)の平均鉄損よりも小さくなる。
以上のように本実施形態では、上記(1)式を満たす傾角inc[°]と上記(2)式を満たす軸比α[−]とを有する回転磁界が生じたときの、コーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112dを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように、例えば各方向性電磁鋼板の磁区幅を調整する。また、軸比αが0であり、且つ傾角incが0[°]である交番磁界が生じたときの、縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112dを構成する方向性電磁鋼板の鉄損(すなわち、磁化容易軸の方向に平行な交番磁界による鉄損)が、コーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるように、例えば各方向性電磁鋼板の磁区幅を調整する。したがって、各部材の材料(鋼板)の積層方向を異ならせたり、鉄心の中央部分の縦部材と横部材との間の2つの境界線の交点を、鉄心の外周よりも外側に位置させたりしなくても、変圧器の鉄損を低減することができる。よって、縦部材及び横部材を組み合わせて構成された鉄心の鉄損を低減でき、縦部材及び横部材の形状に対する制約を従来よりも小さくすることができる。
尚、本実施形態では、軸比αが0であり、且つ傾角incが0[°]である交番磁界が生じたときの、縦部材111a〜111c及び横部材112a〜112dを構成する方向性電磁鋼板の鉄損が、コーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損よりも小さくなるようにコーナ部材113a、113bに使用する方向性電磁鋼板を選択する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにしてコーナ部材に使用する材料を選択する必要はない。例えば、第1の実施形態と同様に、軸比αが0であり、且つ傾角incが0[°]である交番磁界が生じたときの、縦部材111a〜111c、横部材112a〜112d、及びコーナ部材113a、113bを構成する方向性電磁鋼板の鉄損がそれぞれ同じであってもよい。
また、本実施形態においても、第1の実施形態で説明したように、回転磁界または交番磁界の種類(傾角incと軸比αとの組み合わせ)、種々の鉄心の構成、方向性電磁鋼板の製造方法、磁性材料の種類等の種々の条件を採用することができる。ただし、電力機器用鉄心にT字状の接続部を形成するコーナ部が形成される必要がある。なお、このコーナ部に使用するコーナ部材及びT字状を構成する縦部材には、種々の形状を使用することができる。例えば、第一の実施形態と同様に、T字状を構成する縦部材が先細り形状の突出部を有してもよく、コーナ部材がこの突出部とはめ合うことができる形状を有してもよい。また、例えば、コーナ部材の第二の辺の長さが、縦部材の短辺の長さよりも長くてもよい。
本実施形態のコイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心は、図6A〜6C、図7、図8または図9A〜9C、図10を用いて説明した方法によって製造することができる。この方法では、回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材と複数のコーナ部材とに使用する磁性体(方向性電磁鋼板)を選定している。すなわち、各コーナ部材を構成する方向性電磁鋼板の回転磁界に対する鉄損が、各縦部材及び各横部材を構成する方向性電磁鋼板の回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、各縦部材と各横部材と各コーナ部材とを構成する方向性電磁鋼板をそれぞれ選定する。構成された各縦部材をコイルの軸方向に延在するように配置し、縦部材と磁気的に結合されるように、且つコイルの軸方向と異なる方向に延在するように各横部材を配置し、縦部材及び横部材と磁気的に結合されるように、各コーナ部材を各横部材の延在方向、且つ電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部に配置する。
上記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれることが好ましい。また、傾角incと軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が方向性電磁鋼板中に生じたときの各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、コーナ部材を構成する方向性電磁鋼板の磁束密度に対する平均鉄損が、縦部材及び横部材を構成する方向性電磁鋼板の磁束密度に対する平均鉄損よりも小さくなるように、複数の方向性電磁鋼板から、各縦部材と各横部材と各コーナ部材とを構成する方向性電磁鋼板を選定することが好ましい。さらに、軸比αが0であり、且つ傾角incが0[°]である交番磁界によって方向性電磁鋼板中に生じる鉄損を測定し、縦部材及び横部材を構成する方向性電磁鋼板の交番磁界に対する鉄損が、コーナ部材を構成する方向性電磁鋼板の交番磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、複数の方向性電磁鋼板から、各縦部材と各横部材とを構成する方向性電磁鋼板を選定してもよい。加えて、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有する縦部材を構成する方向性電磁鋼板及び横部材を構成する方向性電磁鋼板について、縦部材を構成する方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向が、縦部材の延在方向と一致し、横部材を構成する方向性電磁鋼板の磁化容易軸の方向が、横部材の延在方向と一致し、縦部材を構成する方向性電磁鋼板の第二の磁化困難軸の方向が、横部材を構成する方向性電磁鋼板の第二の磁化困難軸の方向と一致するように各縦部材と各横部材とを配置してもよい。
尚、前述した各実施形態において、例えば電力機器用鉄心10、110の縦部材11、111に対してコイルを巻き回して使用される電力機器であれば、どのような電力機器にも電力機器用鉄心10、110を適用することができる。例えば、電力機器用鉄心10、110は、変圧器、リアクタ、モータ等の電力機器に対して使用することができる。また、本実施形態では、三脚の変圧器を想定した鉄心について説明したが、五脚の変圧器に対しても例えば縦部材を増やすことにより三脚の変圧器と同様に鉄損の少ない鉄心を構成できる。また、前述した各実施形態では、電磁鋼板を磁性体として積層した場合について述べた。しかしながら、鉄粉(磁性粉)を焼結して製造した磁性焼結体や、バルク鉄のような板材以外の磁性材料に対しても上記各実施形態と同様の構成を採用することができる。つまり、回転磁界に対して磁性体(磁性材料)の磁気特性が変化する場合には、本発明の技術思想を適用することができる。このように、磁性体(材料)が、例えば方向性電磁鋼板やバルク鉄のような強磁性体であれば、本発明の技術思想を適用することができる。
また、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。すなわち、その技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で本発明を実施することができる。
縦部材及び横部材を組み合わせて構成された鉄心の鉄損を低減でき、縦部材及び横部材の形状に対する制約を従来よりも小さくすることができる電力機器用鉄心を提供することができる。
10、110 電力機器用鉄心
11、111 縦部材
15、115 第一の磁性体(方向性電磁鋼板)
12、112 横部材
16、116 第二の磁性体(方向性電磁鋼板)
113 コーナ部材
117 第三の磁性体(方向性電磁鋼板)
(1)本発明の一態様に係るコイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心は、前記コイルの軸方向に延在する、第一の磁性体からなる複数の縦部材と;前記コイルの軸方向と異なる方向に延在し、前記各縦部材と磁気的に結合されるように配置される、第二の磁性体からなる複数の横部材と;を備え、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界が前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体中に生じたときの、前記第二の磁性体の鉄損が、前記第一の磁性体の鉄損よりも小さく、前記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれる
)上記(1)に記載の電力機器用鉄心では、前記傾角incと前記軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの前記各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、前記第二の磁性体の平均鉄損が、前記第一の磁性体の平均鉄損よりも小さい。
)上記(1)に記載の電力機器用鉄心では、前記軸比αが0であり、且つ前記傾角incが0°である交番磁界が前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体中に生じたときの、前記第一の磁性体の鉄損が、前記第二の磁性体の鉄損よりも小さい
)上記(1)に記載の電力機器用鉄心では、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体は、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有し、前記第一の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記縦部材の延在方向と一致し、前記第二の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記横部材の延在方向と一致し、前記第一の磁性体の第二の磁化困難軸の方向は、前記第二の磁性体の第二の磁化困難軸の方向と一致する。
)本発明の一態様に係るコイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心は、前記コイルの軸方向に延在し、第一の磁性体からなる複数の縦部材と;前記コイルの軸方向と異なる方向に延在し、第二の磁性体からなる複数の横部材と; 前記横部材の延在方向、且つ前記電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部に配置され、第三の磁性体からなる複数のコーナ部材と;を備え、前記各縦部材と、前記各横部材と、前記各コーナ部材とは、それぞれ、磁気的に結合され、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界が前記第一の磁性体、前記第二の磁性体、及び第三の磁性体中に生じたときの、前記第三の磁性体の鉄損が、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体の鉄損よりも小さく、前記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれる
)上記(5)に記載の電力機器用鉄心では、前記傾角incと前記軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの前記条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、前記第三の磁性体の平均鉄損が、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体の平均鉄損よりも小さい。
)上記(5)に記載の電力機器用鉄心では、前記軸比αが0であり、且つ前記傾角incが0°である交番磁界が前記第一の磁性体、前記第二の磁性体、及び前記第三の磁性体中に生じたときの、前記第一の磁性体及び第二の磁性体の鉄損が、前記第三の磁性体の鉄損よりも小さい。
)上記(5)に記載の電力機器用鉄心では、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体は、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有し、前記第一の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記縦部材の延在方向と一致し、前記第二の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記横部材の延在方向と一致し、前記第一の磁性体の第二の磁化困難軸の方向は、前記第二の磁性体の第二の磁化困難軸の方向と一致する。
)本発明の一態様に係る電力機器用鉄心の製造方法は、複数の磁性体を準備し、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材とに使用する磁性体を選定する、コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心の製造方法であって、前記各横部材を構成する第二の磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材を構成する第一の磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記複数の磁性体から、前記第一の磁性体と前記第二の磁性体とを選定し;前記各縦部材を前記コイルの軸方向に延在するように配置し、前記各横部材を前記コイルの軸方向と異なる方向に延在するように、且つ前記各縦部材と磁気的に結合されるように配置し;前記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれる
10)本発明の一態様に係る電力機器用鉄心の製造方法は、複数の磁性体を準備し、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材と複数のコーナ部材とに使用する磁性体を選定する、コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心の製造方法であって、前記各コーナ部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材及び前記各横部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記各縦部材と前記各横部材と前記コーナ部材と構成する前記磁性体をそれぞれ選定し;前記各コーナ部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材及び前記各横部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記各縦部材と前記各横部材と前記コーナ部材とを作製し;前記コイルの軸方向に延在するように前記各縦部材を配置し、前記縦部材と磁気的に結合されるように、且つ前記コイルの軸方向と異なる方向に延在するように前記各横部材を配置し、前記縦部材及び前記横部材と磁気的に結合されるように、前記各横部材の延在方向、且つ前記電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部に前記各コーナ部材を配置し;前記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれる

Claims (12)

  1. コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心であって、
    前記コイルの軸方向に延在する、第一の磁性体からなる複数の縦部材と;
    前記コイルの軸方向と異なる方向に延在し、前記各縦部材と磁気的に結合されるように配置される、第二の磁性体からなる複数の横部材と;
    を備え、
    磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界が前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体中に生じたときの、前記第二の磁性体の鉄損が、前記第一の磁性体の鉄損よりも小さい
    ことを特徴とする電力機器用鉄心。
  2. 前記回転磁界の内、各磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれることを特徴とする請求項1に記載の電力機器用鉄心。
  3. 前記傾角incと前記軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの前記各条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、前記第二の磁性体の平均鉄損が、前記第一の磁性体の平均鉄損よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力機器用鉄心。
  4. 前記軸比αが0であり、且つ前記傾角incが0°である交番磁界が前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体中に生じたときの、前記第一の磁性体の鉄損が、前記第二の磁性体の鉄損よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力機器用鉄心。
  5. 前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体は、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有し、
    前記第一の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記縦部材の延在方向と一致し、
    前記第二の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記横部材の延在方向と一致し、
    前記第一の磁性体の第二の磁化困難軸の方向は、前記第二の磁性体の第二の磁化困難軸の方向と一致する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力機器用鉄心。
  6. コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心であって、
    前記コイルの軸方向に延在し、第一の磁性体からなる複数の縦部材と;
    前記コイルの軸方向と異なる方向に延在し、第二の磁性体からなる複数の横部材と;
    前記横部材の延在方向、且つ前記電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部に配置され、第三の磁性体からなる複数のコーナ部材と;
    を備え、
    前記各縦部材と、前記各横部材と、前記各コーナ部材とは、それぞれ、磁気的に結合され、
    磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界が前記第一の磁性体、前記第二の磁性体、及び第三の磁性体中に生じたときの、前記第三の磁性体の鉄損が、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体の鉄損よりも小さい
    ことを特徴とする電力機器用鉄心。
  7. 前記回転磁界の内、磁性体の鉄損を比較する回転磁界の条件について、前記傾角incが0[°]以上4[°]以下の範囲に含まれ、前記軸比αが0超0.2以下の範囲に含まれることを特徴とする請求項6に記載の電力機器用鉄心。
  8. 前記傾角incと前記軸比αとの組み合わせにより決定される複数の条件の磁束密度が磁性体中に生じたときの前記条件の磁束密度に対応する複数の鉄損の平均値を平均鉄損と定義した場合に、前記第三の磁性体の平均鉄損が、前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体の平均鉄損よりも小さいことを特徴とする請求項6又は7に記載の電力機器用鉄心。
  9. 前記軸比αが0であり、且つ前記傾角incが0°である交番磁界が前記第一の磁性体、前記第二の磁性体、及び前記第三の磁性体中に生じたときの、前記第一の磁性体及び第二の磁性体の鉄損が、前記第三の磁性体の鉄損よりも小さいことを特徴とする請求項6又は7に記載の電力機器用鉄心。
  10. 前記第一の磁性体及び前記第二の磁性体は、それぞれ、互いに直交する磁化容易軸と第一の磁化困難軸と前記第一の磁化困難軸よりも磁化困難な第二の磁化困難軸とを有し、
    前記第一の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記縦部材の延在方向と一致し、
    前記第二の磁性体の磁化容易軸の方向は、前記横部材の延在方向と一致し、
    前記第一の磁性体の第二の磁化困難軸の方向は、前記第二の磁性体の第二の磁化困難軸の方向と一致する
    ことを特徴とする請求項6又は7に記載の電力機器用鉄心。
  11. 複数の磁性体を準備し、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材とに使用する磁性体を選定する、コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心の製造方法であって、
    前記各横部材を構成する第二の磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材を構成する第一の磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記複数の磁性体から、前記第一の磁性体と前記第二の磁性体とを選定し;
    前記各縦部材を前記コイルの軸方向に延在するように配置し、前記各横部材を前記コイルの軸方向と異なる方向に延在するように、且つ前記各縦部材と磁気的に結合されるように配置する;
    ことを特徴とする電力機器用鉄心の製造方法。
  12. 複数の磁性体を準備し、磁束密度変化の1周期において最大の大きさを有する磁束密度ベクトルが磁性体の磁化容易軸となす角度である傾角incと、前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルに垂直な2つの磁束密度ベクトルの大きさの平均値を前記最大の大きさを有する磁束密度ベクトルの大きさで除した値である軸比αとにより定義され、かつ前記軸比αが0超である回転磁界によって磁性体中に生じる鉄損を測定して、複数の縦部材と複数の横部材と複数のコーナ部材とに使用する磁性体を選定する、コイルが巻き回されて使用される電力機器用鉄心の製造方法であって、
    前記各コーナ部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損が、前記各縦部材及び前記各横部材を構成する磁性体の前記回転磁界に対する鉄損よりも小さくなるように、前記各縦部材と前記各横部材と前記コーナ部材とを構成する前記磁性体をそれぞれ選定し;
    前記コイルの軸方向に延在するように前記各縦部材を配置し、前記縦部材と磁気的に結合されるように、且つ前記コイルの軸方向と異なる方向に延在するように前記各横部材を配置し、前記縦部材及び前記横部材と磁気的に結合されるように、前記各コーナ部材を前記各横部材の延在方向、且つ前記電力機器用鉄心のT字状の接続部を形成するコーナ部に配置する;
    ことを特徴とする電力機器用鉄心の製造方法。
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