JPH07145436A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JPH07145436A
JPH07145436A JP14872794A JP14872794A JPH07145436A JP H07145436 A JPH07145436 A JP H07145436A JP 14872794 A JP14872794 A JP 14872794A JP 14872794 A JP14872794 A JP 14872794A JP H07145436 A JPH07145436 A JP H07145436A
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JP
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sliding
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Application number
JP14872794A
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English (en)
Inventor
Yasuaki Unno
泰明 海野
Hidenori Kita
英紀 北
Hideo Kawamura
英男 河村
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Isuzu Motors Ltd
Original Assignee
Isuzu Motors Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、低摩擦係数を有するAl合金等の
金属複合材から成る摺動部材を提供することである。 【構成】 この摺動部材は、Al合金等の金属1の母相
中に4a族、5a族、6a族、7a族、8族、1b族の
元素の酸化物、炭化物、窒化物、珪化物の粒子3を分散
させ、低摩擦係数にして耐摩耗性を向上させる。また、
金属1の表面2にAl2 3 等の酸化物層を形成する
と、摩擦係数を更に低減できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、金属の母相中に化合
物粒子あるいはウィスカーを分散させた摺動部材に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、エンジン用摺動部材として鉄系材
料が用いられている。また、Al等の合金中にセラミッ
クスの粒子、繊維、ウィスカー或いは炭素繊維、ウィス
カーを分散させて複合化したものが知られている。鉄系
材料は、厳しい摺動条件下において、凝着、移着を起こ
し、摩耗が進行する。また、従来のセラミックスを分散
させた金属基複合材は、耐摩耗材料として用いられてお
り、低い摩擦係数は期待できない。
【0003】また、窒化ケイ素Si3 4 中に窒化硼素
BN等の固体潤滑材を分散させて摩擦係数を低減するも
のは、例えば、特開昭59−30769号公報に開示さ
れている。或いは、焼結助剤として、Fe3 4 等の鉄
Feの酸化物を添加した窒化ケイ素Si3 4 は、例え
ば、特開昭58−64268号公報、特開昭59−88
374号公報、特開昭61−72685号公報等に開示
されている。その他、SiにAl2 3 ,Y2 3 等の
酸化物を添加して、主として、高強度化を図る反応焼結
する方法は、例えば、特開昭59−152271号公
報、特開昭59−207875号公報、特開昭59−2
07876号公報に開示されている。
【0004】また、複合摺動部材として、Al等の合金
にセラミックスを種々の方法で複合化し、例えば、セラ
ミックプリフォームを作製した後、含浸等により金属と
セラミックスを複合化させたものが知られている。そし
て、金属基体にセラミックスを被覆する場合に、溶射等
が一般的に実用化されている。また、Al合金等の金属
を母相として、主にその耐摩耗性を向上させるために、
SiC,Al2 3 ,AlN,Si3 4 等のセラミッ
クス粒子、ウィスカーあるいは長繊維を強化層として含
有させた材料は、一部実用化されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記複
合摺動部材は、セラミックスを主に耐摩耗性材料として
機能させており、摩擦係数μの低下を意図するものでは
なく、あるいは摩擦係数μを大幅に低下させることを意
図したものではない。また、上記のように、Al合金等
の金属にセラミックス粒子、ウィスカーを配した摺動部
材では、摺動部材自体の耐摩耗性は金属基体に比較して
向上しているものの、オイル吸着性が優れているという
ものではなく、一概に摩擦係数μは低いというものでは
ない。更に、摺動条件の厳しい場所では、摺動部材の表
面の油膜が切れ、スティック等のトラブルが生じること
になる。
【0006】そこで、本出願人は、上記の課題を解決す
るため、低摩擦セラミックスを開発して先に出願した
(特願平5−95048号)。該低摩擦セラミックス
は、Si3 4 又はSiCのSiを主成分とする母相中
にFeO,Fe2 3 ,Fe3 4 等のFeの酸化物を
分散させ、大気中において表面からやや内部にかけて酸
化させ、化合物として存在していたFe−Si系の化合
物をオイルとの吸着性に優れたFe−O系の酸化物に変
化させることによって低摩擦化したものである。
【0007】この発明の目的は、上記の課題を解決する
ことであり、金属を母相とし、該母相中にFe−O等の
4a族、5a族、6a族、7a族、8族、1b族の元素
の酸化物、炭化物、窒化物、珪化物の粒子あるいはウィ
スカーを分散させることによって、オイル吸着性に優れ
た表面から油膜が途切れ難く、低摩擦係数を有する金属
基摺動部材即ち摺動部材を提供することである。
【0008】この発明の別の目的は、金属を母相とし、
該母相中にヤング率が200GPa以上のセラミックス
が分散し、少なくとも表面にFeの化合物が存在するこ
とによって、引っ張り強度をアップし、低摩擦係数とな
り、摩耗を低減できる摺動部材を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、次のように構成されている。即ち、
この発明は、金属を母相とし、該母相中に4a族、5a
族、6a族、7a族、8族、1b族の元素の酸化物、炭
化物、窒化物、珪化物の粒子あるいはウィスカーが分散
していることを特徴とする摺動部材に関する。
【0010】この摺動部材では、前記金属がAl合金で
構成されている。また、前記4a族、5a族、6a族、
7a族、8族、1b族の元素の酸化物は、FeO,Fe
2 3 ,Fe3 4 及びそれらの組み合わせのいずれか
である。更に、前記4a族、5a族、6a族、7a族、
8族、1b族の元素の珪化物は、Fe−Siである。ま
た、前記金属の表面層が酸化物層で覆われているもので
ある。
【0011】或いは、この発明は、金属を母相とし、該
母相中にヤング率が200GPa以上の前記母相より高
いヤング率を有するセラミックスの粒子、繊維、ウィス
カーのうち少なくとも1種以上が分散され、少なくとも
表面にFeの酸化物、珪化物、硫化物のうち少なくとも
1種以上が存在していることを特徴とする摺動部材に関
する。
【0012】また、この摺動部材において、前記金属が
Al又はAl合金であるか、又は前記金属がFe又はF
e合金である。
【0013】また、この摺動部材において、前記セラミ
ックスがAl2 3 、SiC、WC、Si3 4 、Zr
2 のうち少なくとも1種以上である。更に、前記セラ
ミックスの分散量が20〜90vol%であり、前記F
eの酸化物、珪化物、硫化物の分散量が5〜75vol
%である。
【0014】また、この摺動部材において、前記表面に
SiO2 が存在している。或いは、前記表面に固体潤滑
剤が存在しているものであり、例えば、前記固体潤滑剤
がグラファイトC、BN、MoS2 のうち少なくとも1
種以上である。
【0015】また、この摺動部材において、前記Feの
珪化物がFeSi、FeSi2 、Fe3 Si2 のうち少
なくとも1種以上である。また、前記Feの硫化物がF
eSである。また、前記Feの酸化物がFe3 4 であ
る。
【0016】また、この摺動部材は、摺動面を有するピ
ストン、シリンダライナ、ピストンリング、ピストンス
カート等のエンジン部品の摺動部に適用して好ましいも
のである。
【0017】
【作用】この発明による摺動部材は、上記のように構成
されており、次のように作用する。即ち、この摺動部材
は、金属を母相とし、該母相中に4a族〜1b族の酸化
物、炭化物、窒化物、珪化物の粒子あるいはウィスカー
が分散しているので、オイルの吸着性に優れた分散相が
存在し、極めて低い摩擦係数を有する特性となる。即
ち、4a族、5a族、6a族、7a族、8族、1b族の
元素の酸化物、炭化物、窒化物、珪化物の化合物は、吸
着性に優れているので、該化合物をAl合金等の金属に
分散させると、表面の油膜が切れ難くなり、その結果、
優れた耐摩耗性を発揮し、低い摩擦係数を示すことにな
る。
【0018】更に、この摺動部材では、Al合金等の金
属の表面層をAl2 3 等の酸化物層で覆うことによっ
て、摺動部材の表面を安定にすると共に、摩擦係数を同
等に維持できるか、或いは一層低減することができる。
【0019】或いは、この摺動部材は、金属を母相と
し、該母相中にヤング率が200GPa以上のセラミッ
クスの粒子、繊維、ウィスカーのうち少なくとも1種以
上が分散相として存在し、少なくとも表面にFeの酸化
物、珪化物、硫化物のうち少なくとも1種以上が存在す
ることによって、片状黒鉛鋳鉄、SiCウィスカー強化
アルミニウムとほぼ同等の引っ張り強度を有し、オイル
吸着性に優れた表面から油膜が途切れ難く、低摩擦係数
を有し、摩耗を低減できるものである。
【0020】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明による摺動
部材の実施例を説明する。この摺動部材は金属基摺動部
材であり、図1に示すように、金属を母相1とし、該母
相1中に周期律表の4a族、5a族、6a族、7a族、
8族、1b族(以下、4a族〜1b族と表す)の元素の
うち少なくとも1種以上の酸化物、炭化物、窒化物、珪
化物の粒子3が分散しているものである。ここで、金属
は、Al合金である。また、4a族〜1b族の元素の酸
化物は、FeO,Fe2 3 ,Fe3 4 及びそれらの
組み合わせのいずれかである。あるいは、4a族〜1b
族の元素の珪化物は、Fe−Siである。そして、金属
1の表面層2が酸化物層で覆われているものである。こ
の金属基摺動部材は、ピストンスカートとして適用して
好ましいものである。あるいは、この金属基摺動部材
は、図2に示すように、金属を母相1とし、該母相1中
に4a族〜1b族の元素の酸化物、炭化物、窒化物、珪
化物のウィスカー4が分散しているものである。
【0021】ここで、4a族の元素はTi,Zr,Hf
であり、5a族の元素はV,Nb,Taであり、6a族
の元素はCr,Mo,Wであり、7a族の元素はMn,
Tc,Reであり、8族の元素はFe,Co,Ni,R
u,Rh,Pd,Os,Ir,Ptである。また、1b
族の元素はCu,Ag,Auである。
【0022】この金属基摺動部材の一実施例を実施例1
として説明する。 〔実施例1〕この金属基摺動部材の作製において、ま
ず、平均粒径5μmのFe3 4 の粒子を10wt%を
Al−Si合金中に分散させた材料を鋳造により作製し
た。この金属基摺動部材より15×10×80mmのプ
レートを切り出した。往復動試験機では、合成オイルを
潤滑油として使用した。また、摺動試験の相手材として
はSi3 4 材で作製されているφ8×20mm(SR
18)のピンを使用した。この金属基摺動部材につい
て、大気中で150℃の下で、往復動試験機を用いてそ
の摺動特性を評価した。その結果を、図3のグラフに示
す。摺動試験では、荷重を種々に変化させて試験を行っ
た。図3では、縦軸に摩擦係数μをとり、横軸にP=l
og(η×V/F)をとった。パラメータPについて、
Fは荷重、Vは速度及びηと潤滑油の粘度を示してお
り、Pの単位は〔×10- 6 ・(m2 /s)・(m/
s)/kgf〕である。更に、実施例1の金属基摺動部
材について、2時間の摺動試験の後、摩擦面の摩耗量を
測定した。
【0023】この発明による金属基摺動部材の別の実施
例を実施例2として説明する。 〔実施例2〕この実施例2における金属基摺動部材を作
製には、Fe3 4 の粒子の代わりにウィスカーを使用
した。即ち、Fe3 4 のウィスカーを10wt%をA
l−Si合金中に分散させた材料を鋳造により作製し
た。実施例1と同様の往復動試験機を用いて、同様の試
験条件によって実施例2の金属基摺動部材の摺動試験を
行った。その結果を、図3のグラフに示す。更に、実施
例2の金属基摺動部材について、2時間の摺動試験の
後、摩擦面の摩耗量を測定した。
【0024】また、上記実施例1及び2の金属基摺動部
材の摺動特性を知るため、比較例1として、Al合金中
にSiCを分散させた金属基摺動部材を作製した。比較
例1の金属基摺動部材の摺動試験を上記実施例1及び2
と同様に行った。その結果を、図3のグラフに示す。更
に、実施例2の金属基摺動部材について、2時間の摺動
試験の後、摩擦面の摩耗量を測定した。
【0025】図3から分かるように、実施例1の金属基
摺動部材は摩擦係数μが極めて低いことが分かった。ま
た、実施例2の金属基摺動部材は、実施例1のものより
若干摩擦係数μは高いが、極めて低いことが分かった。
これに対して、比較例1の金属基摺動部材は、実施例1
及び実施例2のものに比較して高い摩擦係数μを示して
おり、しかも比較例1の金属基摺動部材の摩擦面の摩耗
量は、実施例1及び実施例2の摩耗量の約2倍であっ
た。
【0026】この発明による金属基摺動部材の更に別の
各種の実施例を、まとめて実施例3として説明する。 〔実施例3〕この金属基摺動部材では、実施例1におけ
るFe3 4 の粒子に代えてW2 3 ,TiO2 ,Mo
2 3 ,Cr2 3 をAl合金に分散させた各種の金属
基摺動部材を作製した。これらの金属基摺動部材につい
て、実施例1と同様に摺動試験を行ったところ、低い摩
擦係数μを示すことが分かった。
【0027】更に、Feを含め、4a族〜1b族の元素
の炭化物、窒化物、珪化物の粒子あるいはウィスカーを
金属の母相中に分散させた各種の金属基摺動部材を作製
した。これらの金属基摺動部材について、実施例1と同
様に摺動試験を行ったところ、低い摩擦係数μを示すこ
とが分かった。
【0028】この発明による金属基摺動部材の他の実施
例を実施例4として説明する。 〔実施例4〕実施例4における金属基摺動部材は、ま
ず、実施例1で作製したプレートを大気中で400℃で
約5時間にわたって加熱した。該プレートの表面の金属
基体の部分はAl2 3 の酸化物に変化し、Al合金の
表面層がAl2 3 の酸化物層で覆われている金属基摺
動部材が作製された。この金属基摺動部材を実施例1と
同様の摺動試験を行ったところ、実施例1の金属基摺動
部材と同等又はそれ以下の摩擦係数μであることが分か
った。
【0029】次に、この発明による別の実施例である摺
動部材について説明する。この摺動部材は、金属を母相
とし、該母相中にヤング率が200GPa以上の前記母
相より高いヤング率を有するセラミックスの粒子、繊
維、ウィスカーのうち少なくとも1種以上が分散され、
少なくとも表面にFeの酸化物、珪化物、硫化物のうち
少なくとも1種以上が存在しているものである。
【0030】この摺動部材の製造方法の一実施例につい
て、実施例5として説明する。 〔実施例5〕この摺動部材の製造方法において、Al2
3 粉末、Fe3 4 粉末を体積比4:1にて混合した
混合粉末を加圧成形し、これを大気中で1300℃にて
熱処理することにより、気孔率50%、平均気孔径30
μmの多孔体を作製した。一方、Fe3 4 とSiO2
を体積比9:1で混合した混合粉末にエタノールを加
え、スラリーを作製した。上記多孔体に上記スラリーを
流し込み、これをAr中で1300℃にて熱処理するこ
とによりスラリー成分であるFe3 4 、SiO2 を多
孔体成分である鉄の酸化物、Al2 3 と反応させ、気
孔率1%以下のAl2 3 とFe3 4 とSiO2 の複
合酸化物層を形成した。次に、この複合酸化物層下部の
多孔部を強化するために、アルミニウム合金を高圧鋳造
法にて鋳込んだ。上記のようにして作製した摺動部材を
本発明品Aとする。
【0031】本発明品Aは、Al合金を母相とし、その
中にAl2 3 及びFe3 4 が分散しており、表面に
はFe3 4 :55vol%、Al2 3 :40vol
%、SiO2 :5vol%がそれぞれ存在する複合酸化
物層が形成されたものであった。次に、本発明品Aをサ
イズ65×15×10mmで、摺動面の表面粗さRz
0.4μm以下に加工し、摺動試験用プレートを作製し
た。また、比較材として、片状黒鉛鋳鉄とSiCウィス
カーを15vol%分散させたSiCウィスカー強化ア
ルミニウムとを選び、これらを同様に加工し、2種の摺
動試験用プレートとした。一方、相手材として、球状黒
鉛鋳鉄を選び、これをφ8×23mm(端面SR18加
工)に加工し、摺動試験用ピンとした。
【0032】本発明品Aの上記摺動試験用プレート、比
較材の上記各摺動試験用プレート及び上記摺動試験用ピ
ンを用いて往復動型摺動試験機によって摩擦係数及び比
摩耗量(×10- 7 mm3 /N・m)を測定した。この
ときの摺動条件は、平均速度0.2m/s、荷重1kg
f、温度150℃とし、また、潤滑油として鉱油系潤滑
油を用いた。その結果を表1に示す。表1から分かるよ
うに、本発明品Aは、2種の比較材に比較して摩擦係数
及び比摩耗量について優れていることが分かった。
【表1】
【0033】また、本発明品Aの上記摺動試験用プレー
ト、比較材の上記各摺動試験用プレートについて、引張
強度(MPa)とビッカース硬度を測定した。その結果
を表2に示す。表2から分かるように、本発明品Aは、
2種の比較材に比較して引張強度及びビッカース硬度に
ついて優れていることが分かった。
【表2】
【0034】また、上記3種類の試料、即ち、本発明品
Aの上記摺動試験用プレート、比較材の上記各摺動試験
用プレートについて、潤滑油の濡れ性を測定したとこ
ろ、本発明品Aは、片状黒鉛鋳鉄及びSiCウィスカー
強化アルミニウムに比較して濡れ性に優れていることが
分かった。この理由として、本発明品Aの潤滑油に対す
る親和性が高いことを示しているものと考えられる。
【0035】以上の結果から考察して、本発明品Aは、
片状黒鉛鋳鉄及びSiCウィスカー強化アルミニウムと
同等の引張強度を有し、片状黒鉛鋳鉄及びSiCウィス
カー強化アルミニウムに比較して低摩擦係数であり、摩
耗を低減できる優れた摺動部材を提供できることが分か
った。本発明品Aの摩擦摩耗特性が優れている要因とし
て、まず、ヤング率の高いAl2 3 が母相に分散して
いることが考えられる。本発明品Aは、母相にAl2
3 が分散しているため、硬度が高くなり、また表面に凹
凸ができ難くなり、従って、表面が常に平滑に保たれて
いるため、摩擦係数が低くなり、且つ耐摩耗性に優れて
いるものであると推察される。また、本発明品Aの摩擦
摩耗特性が優れている別の要因として、表面にFe3
4 が存在しているためと考えられる。即ち、Fe3 4
はオイル吸着性に優れる物質であるので、Fe3 4
表面に存在することによって、潤滑油皮膜を保持し易く
なり、従って、摺動部材間での固体接触の機会が減少
し、摩擦係数を低くし、耐摩耗性に優れている特性を有
するものと考えられる。
【0036】次に、この摺動部材の製造方法の別の実施
例について、実施例6として説明する。 〔実施例6〕この摺動部材の製造方法において、Al2
3 粉末、Fe粉末を混合した混合粉末を加圧成形し、
これをAr中で1300℃にて熱処理することにより、
気孔率1%以下の焼結体を作製した。この焼結体の表面
を酸素の拡散処理を行うことにより、表面のFe成分を
Fe3 4 に酸化させた。このようにして作製した複合
材は、Feを母相とし、その母相中にAl2 3 が均一
に分散しており、表面には、Al2 3 とFe3 4
存在しているものであった。この複合材を用いて実施例
5と同様にして摩擦係数及び比摩耗量(×10- 7 mm
3 /N・m)を測定した。その結果は、複合材の摩擦係
数は0.017であり、また、比摩耗量は0.85×1
- 7 mm3 /N・mであった。即ち、この複合材は、
実施例5と同様に、摩擦係数が低く、耐摩耗性に優れて
いる特性を有するものである。
【0037】次に、この摺動部材の製造方法の更に別の
実施例について、実施例7として説明する。 〔実施例7〕この摺動部材の製造方法において、実施例
5とほぼ同様にして、Al2 3 粉末の代わりに分散相
としてヤング率の異なる7種のセラミックスをそれぞれ
用いて、複合材を作製し、それらの摩擦係数及び比摩耗
量を測定した。7種のセラミックスは、WC粒子、Si
Cウィスカー、Al2 3 繊維、Si3 4 粒子、Zr
2 粒子、ムライト(Al6 Si2 1 3 )粒子及びS
iO2 繊維である。それらの結果を表3に示す。
【表3】
【0038】表3から分かるように、母相中にヤング率
が200GPa以上のセラミックスを分散させたもの
は、同等の摩擦係数及び比摩耗量(×10- 7 mm3
N・m)を示し、上記2種の比較品、即ち、片状黒鉛鋳
鉄及びSiCウィスカー強化アルミニウムに比較して、
摩擦係数が1/5以下であり、比摩耗量が1/3以下で
あった。また、分散相のセラミックスのヤング率が20
0GPa以下となると、摩擦係数及び比摩耗量は共に増
加する傾向が見られた。分散相のセラミックスのヤング
率が200GPa以下のものでは、摺動試験時に、表面
が変形し、凹凸が発生するために、摩擦摩耗特性が悪化
するものであると考えられる。従って、分散相のセラミ
ックスのヤング率が、200GPa以上であることが好
ましいと考えられる。
【0039】次に、この摺動部材の製造方法の他の実施
例について、実施例8として説明する。 〔実施例8〕この摺動部材の製造方法において、実施例
5とほぼ同様にして、スラリー成分としたFe3 4
代わりにFeの珪化物、硫化物をそれぞれ用いて、表面
にそれらのFe化合物が存在する複合材を作製し、それ
らの摩擦係数及び比摩耗量(×10- 7 mm3 /N・
m)を測定した。Feの珪化物はFeSi、FeS
2、Fe3 Si2 であり、Feの硫化物はFeSであ
る。それらの結果を表4に示す。
【表4】
【0040】表4から分かるように、表面にFe化合物
相を形成したものは、摩擦係数及び比摩耗量(×10
- 7 mm3 /N・m)は共に優れていることが分かっ
た。即ち、これらの物質が表面に存在するために、表面
に潤滑油皮膜が形成され易く、摺動部材間での固体接触
の機会が減り、上記のような結果を得ることができたも
のと考えられる。
【0041】次に、この摺動部材の製造方法の更に他の
実施例について、実施例9として説明する。 〔実施例9〕この摺動部材の製造方法については、実施
例5とほぼ同様な製造方法であり、多孔体原料の比率及
びスラリー原料の比率を変えることにより、表面に存在
するAl2 3 及びFe3 4 の比率を変えた複合材を
作製し、実施例5と同様にして摩擦係数及び比摩耗量
(×10- 7 mm3 /N・m)を測定した。その結果、
Al2 3 が20〜90vol%、Fe3 4 が5〜7
5vol%とした時に得られた複合材は、上記2種の比
較品、即ち、片状黒鉛鋳鉄及びSiCウィスカー強化ア
ルミニウムに比較して、摩擦係数が1/5以下になり、
比摩耗量が1/3以下の結果を得た。Al2 3 が20
vol%以下で且つFe3 4 が75vol%以上の複
合材では、比摩耗量が大きく成る結果を得た。また、A
2 3 が90vol%以上で且つFe3 4 が5vo
l%以下の複合材では摩擦係数が大きくなった。
【0042】次に、この摺動部材の製造方法の別の実施
例について、実施例10として説明する。 〔実施例10〕この摺動部材の製造方法については、実
施例5とほぼ同様な製造方法であり、スラリー中にグラ
ファイト即ちC、BN、MoS2 の固体潤滑材を混合
し、複合材を作製した。これらの複合材を用いて、摩擦
係数及び比摩耗量(×10- 7 mm3 /N・m)を測定
した。その時の摺動条件は、平均速度0.2m/s、荷
重30kgf、温度200℃とし、また、潤滑油として
鉱油系潤滑油を用いた。その結果を表5に示す。
【表5】
【0043】表5から分かるように、本発明品の上記
C、BN、MoS2 の固体潤滑材を混合した複合材は、
過酷な摺動条件の下でも、上記の2種の比較品、即ち、
片状黒鉛鋳鉄及びSiCウィスカー強化アルミニウムに
比較して、摩擦係数及び比摩耗量(×10- 7 mm3
N・m)についての特性が優れていることが分かった。
これは、表面のAl2 3 、Fe3 4 の作用の他に、
固体潤滑材の機能が加わったため、摩擦摩耗特性が改善
されたと考えられる。
【0044】この発明による摺動部材は、上記のように
して作製できるものであり、低摩擦係数μでありなが
ら、強度も十分に有し、摩耗が少ないという摺動特性を
有しているので、各種のエンジン部品、ピストン、ピス
トンリング、ピストンスカート、シリンダライナ等に適
用すると好ましいものである。
【0045】
【発明の効果】この発明による摺動部材は、上記のよう
に構成されており、次のような効果を有する。即ち、こ
の発明は、Al合金等の金属を母相とし、該母相中に4
a族、5a族、6a族、7a族、8族、1b族の元素の
酸化物、炭化物、窒化物、珪化物の粒子あるいはウィス
カーが分散しているので、低摩擦化を達成することがで
き、摺動部材として適用して極めて好ましいものであ
る。しかも、4a族、5a族、6a族、7a族、8族、
1b族の元素の酸化物、炭化物、窒化物、珪化物は吸着
性に優れた分散剤として機能し、油膜の途切れ難い低摩
擦化を確保でき、耐摩耗性に富んだ安定したものとな
り、摺動部に使用してもスティック等のトラブルが発生
することがない。
【0046】また、この摺動部材は、その表面を大気中
で加熱して金属基体の部分をAl23 等の酸化物に変
化させると、摩擦係数μは更に低減させることができ、
しかも安定した摺動面を提供することができる。
【0047】また、この発明による摺動部材は、金属を
母相とし、該母相中にヤング率が200GPa以上のセ
ラミックスの粒子、繊維、ウィスカーのうち少なくとも
1種以上が分散相として存在し、少なくとも表面にFe
の酸化物、珪化物、硫化物のうち少なくとも1種以上が
存在しているので、片状黒鉛鋳鉄、SiCウィスカー強
化アルミニウムとほぼ同等の引張強度を有していなが
ら、摩擦係数が低く、比摩耗量が小さく、摩擦摩耗特性
を大幅に改善できる。従って、この発明による摺動部材
は、ピストン、シリンダライナ等のエンジン部品等の摺
動部に適用して極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による摺動部材の一実施例を示す構造
図である。
【図2】この発明による摺動部材の別の実施例を示す構
造図である。
【図3】この発明による摺動部材のパラメータPに対す
る摩擦係数を示すグラフである。
【符号の説明】
1 母相 2 表面 3 4a族〜1b族の元素の化合物の粒子 4 4a族〜1b族の元素の化合物のウィスカー
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16J 9/26 B

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属を母相とし、該母相中に4a族、5
    a族、6a族、7a族、8族、1b族の元素の酸化物、
    炭化物、窒化物、珪化物の粒子あるいはウィスカーが分
    散していることを特徴とする摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記金属がAl合金であることを特徴と
    する請求項1に記載の摺動部材。
  3. 【請求項3】 前記4a族、5a族、6a族、7a族、
    8族、1b族の元素の酸化物がFeO,Fe2 3 ,F
    3 4 及びそれらの組み合わせのいずれかであること
    を特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記4a族、5a族、6a族、7a族、
    8族、1b族の元素の珪化物がFe−Siであることを
    特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
  5. 【請求項5】 前記金属の表面層が酸化物層で覆われて
    いることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
  6. 【請求項6】 金属を母相とし、該母相中にヤング率が
    200GPa以上の前記母相より高いヤング率を有する
    セラミックスの粒子、繊維、ウィスカーのうち少なくと
    も1種以上が分散され、少なくとも表面にFeの酸化
    物、珪化物、硫化物のうち少なくとも1種以上が存在し
    ていることを特徴とする摺動部材。
  7. 【請求項7】 前記金属がAl又はAl合金であること
    を特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  8. 【請求項8】 前記金属がFe又はFe合金であること
    を特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  9. 【請求項9】 前記セラミックスがAl2 3 、Si
    C、WC、Si3 4、ZrO2 のうち少なくとも1種
    以上であることを特徴とする請求項6に記載の摺動部
    材。
  10. 【請求項10】 前記セラミックスの分散量が20〜9
    0vol%であり、前記Feの酸化物、珪化物、硫化物
    の分散量が5〜75vol%であることを特徴とする請
    求項6に記載の摺動部材。
  11. 【請求項11】 前記表面にSiO2 が存在しているこ
    とを特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  12. 【請求項12】 前記表面に固体潤滑剤が存在している
    ことを特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  13. 【請求項13】 前記固体潤滑剤がグラファイト、B
    N、MoS2 のうち少なくとも1種以上であることを特
    徴とする請求項12に記載の摺動部材。
  14. 【請求項14】 前記Feの珪化物がFeSi、FeS
    2 、Fe3 Si2のうち少なくとも1種以上であるこ
    とを特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  15. 【請求項15】 前記Feの硫化物がFeSであること
    を特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  16. 【請求項16】 前記Feの酸化物がFe3 4 である
    ことを特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  17. 【請求項17】 ピストン、シリンダライナ、ピストン
    リング、ピストンスカートの摺動部を有するエンジン部
    品に適用できることを特徴とする請求項1〜16のいず
    れかの項に記載の摺動部材。
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