JP3351016B2 - 低摩擦セラミックス,それから成る摺動部品及び耐摩耗部品,並びにそれらの製造方法 - Google Patents

低摩擦セラミックス,それから成る摺動部品及び耐摩耗部品,並びにそれらの製造方法

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JP3351016B2 JP09504893A JP9504893A JP3351016B2 JP 3351016 B2 JP3351016 B2 JP 3351016B2 JP 09504893 A JP09504893 A JP 09504893A JP 9504893 A JP9504893 A JP 9504893A JP 3351016 B2 JP3351016 B2 JP 3351016B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,低摩擦セラミッ
クス,それから成る摺動部品及び耐摩耗部品,並びにそ
れらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,炭化ケイ素SiC,窒化硼素BN
を窒化ケイ素Si3 4 中に分散させて摩擦係数を低減
するものは,例えば,特開昭59−30769号公報に
開示されている。また,焼結助剤として,Fe3 4
の鉄Feの酸化物を添加した窒化ケイ素Si3 4 は,
例えば,特開昭58−64268号公報,特開昭59−
88374号公報,特開昭61−72685号公報等に
開示されている。
【0003】また,エンジン部品のうち,シリンダライ
ナ,ピストンリング等の摺動部品には,従来から鉄系金
属材料が用いられてきた。また,これらの摺動部品の耐
摩耗性を向上させるため,窒化ケイ素Si3 4 を用い
て作製したものもある。
【0004】また,エンジン部品のうち,ロッカアーム
式動弁機構に使用されているロッカアーム,ロッカアー
ムシート,タッペト,カム,プッシュロッドカム等の耐
摩耗性部品として,金属に比較して耐摩耗性に優れた材
料として,部分安定化ジルコニア,Al2 3 ,Y2
3 等の金属酸化物を焼結助剤として添加したSi3 4
等のセラミックス材料を使用することが開発されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで,窒化ケイ素
のセラミックスについては,低い摩擦係数を持つものが
望まれている。一般に,Si3 4 中に,炭化ケイ素,
窒化ホウ素或いは酸化物の粒子を分散させた場合には,
結合界面での反応性に乏しく,材料自体の強度が低下す
る。また,窒化ホウ素を複合した材料では高温中その部
分が酸化され結晶構造が変化し,摩擦係数が上昇するこ
とがある。上記公報に開示されているように,焼結助剤
として,Fe3 4 等の金属酸化物を添加したもので
は,該添加量が少なく,また低摩擦の特性を得ることが
できない。
【0006】更に,セラミックスについて,境界潤滑域
では,必ずしも低摩擦特性とはならず,また,窒化ホウ
素を複合した材料では,600℃以上で酸化ホウ素とな
り,結晶構造が変化するため,特に摩擦係数が上昇して
しまうという問題がある。
【0007】また,Si3 4 と鉄Feの酸化物との複
合では,焼成時に還元反応が起こり,FeO,Fe2
3 ,Fe3 4 の形で混合段階で添加しても,焼成後に
は,Fe−Si系の化合物に変化する。このような化合
物も潤滑油との吸着性に優れるが,更に一層吸着性を高
め,低摩擦化するためには,酸化物の状態で残すことが
望ましいものである。
【0008】ところで,鉄系金属材料は,セラミックス
に比較して摩耗が多く耐久性の面で劣るものである。ま
た,摺動部品として,高温且つ潤滑油粘度が低い潤滑状
況下において,金属材料では凝着,焼付き等の現象が起
きている。そこで,摺動部品を作製するにあたって,金
属材料に換えてSi3 4 等のセラミックスを使用する
ことが試みられているが,Si3 4 等のセラミックス
は耐摩耗性に優れているが,より低摩擦を有する材料が
望まれている。
【0009】また,部分安定化ジルコニアで耐摩耗部品
を作製した場合に,該耐摩耗部品自体の摩耗量は少なく
なるが,該耐摩耗部品と組み合わせた相手側の金属材料
で作製した部品の摩耗が大きくなるという現象が発生す
る。また,Al2 3 ,Y23 等の金属酸化物を焼結
助剤として添加したSi3 4 等のセラミックス材料で
作製した耐摩耗部品を,高温域で使用した場合に,該耐
摩耗部品の摩擦係数と摩耗量とが大きくなり,耐摩耗部
品としての特性が著しく低下する。
【0010】そこで,この発明の目的は,上記の課題を
解決することであり,Si3 4 又はSiCのSiを主
成分とする母相中にFeO,Fe2 3 ,Fe3 4
のFeの酸化物を分散させ,大気中において表面からや
や内部にかけて酸化させ,化合物として存在していたF
e−Si系の化合物をオイルとの吸着性に優れたFe−
O系の酸化物に変化させ,Fe−Oから成る化合物が該
母相の少なくとも表面に分散することによって低摩擦化
する低摩擦セラミックス及びその製造方法を提供するこ
とである。
【0011】この発明の別の目的は,Siを主成分とす
るセラミックスを母相として,その中にFeの化合物が
分散し且つ気孔中に固体潤滑剤が充填されており,基体
自身がオイルとの吸着性に優れ,また,境界潤滑域では
固体潤滑剤の働きにより低摩擦化する低摩擦セラミック
ス及びその製造方法を提供することである。
【0012】この発明の更に別の目的は,ZrO2 又は
Al2 3 の酸化物セラミックスを母相として,その中
に,Fe−Oから成る化合物が該母相の少なくとも表面
に分散していることによって低摩擦化する低摩擦セラミ
ックス及びその製造方法を提供することである。
【0013】この発明の他の目的は,FeO,Fe2
3 ,Fe3 4 等のFeの酸化物をSi3 4 の母相中
に所定量添加して分散させるものであり,焼結条件,添
加酸化物の粒径等の適正化を行うことによって,Si3
4 結晶粒が微細で均一となるため,摺動時に相手剤と
の噛み合いが少なく,低摩擦化して高強度にする低摩擦
セラミックス及びその製造方法を提供することである。
【0014】この発明の更に他の目的は,従来のSi3
4 セラミックスに比較して,摩擦係数が低く,耐摩耗
性に優れる低摩擦セラミックスを提供し,該低摩擦セラ
ミックスによって厳しい摺動条件下でも使用されるシリ
ンダライナ,ピストンリング等の摺動部品を作製し,エ
ンジン性能を向上させる低摩擦セラミックスから成る摺
動部品及びその製造方法を提供することである。
【0015】この発明の別の目的は,従来のSi3 4
セラミックスに比較して,摩擦係数が低く,耐摩耗性に
優れる低摩擦セラミックスを提供し,該低摩擦セラミッ
クスによってロッカアーム,ロッカアームシート,タペ
ット,カム等のエンジン用動弁系部品を作製し,遮熱エ
ンジンのような潤滑油が高温になる場合,或いはフリク
ションを低減するために潤滑油の粘度を低くした場合
に,耐久性を向上させて好ましい性能を発揮できる低摩
擦セラミックスから成る耐摩耗部品及びその製造方法を
提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】この発明は,Fe−Oか
ら成る化合物が,該化合物とは異なるセラミックスを母
相として,該母相の少なくとも表面に分散しており,前
記セラミックスの母相がSiを主成分とするセラミック
スであることを特徴とする低摩擦セラミックスに関す
る。
【0017】前記Siを主成分とする前記セラミックス
は,Si3 4 ,SiC及びその複合物のうちいずれか
である。また,前記Feの化合物のサイズは,10μm
以下である。また,前記Feの化合物がFeO,Fe2
3 ,Fe3 4 に換算して,5wt%以上含まれてい
るものである。また,前記Siを主成分とする前記セラ
ミックスはSiを含む非酸化物セラミックスを含み,前
記非酸化物セラミックスの母相中にFeの化合物が分散
し且つ気孔中に固体潤滑剤が充填されている。特に,前
記固体潤滑剤がグラファイト又はそれをベースとする複
合物である。
【0018】また,この発明は,Si3 4 セラミック
スを母相とし,その中にFe−Si化合物が分散してお
り,前記母相の表面にFe−Oから成る化合物が分散し
ていることを特徴とする低摩擦セラミックスに関する。
また,前記Si3 4 の最大結晶粒子は20μm以下で
ある。更に,前記Fe−Si化合物のサイズは10μm
以下である。
【0019】また,この発明は,Siを含む非酸化物セ
ラミックス中にFeの酸化物を加えて蒸留水及びバイン
ダと共に混合し,その混合物を造粒処理を行なった原料
を成形して成形体を作製し,前記成形体を窒素雰囲気中
で焼成して焼成体を作り,次いで,前記焼成体を大気中
で加熱することによってFeの化合物の部分を酸化させ
ることを特徴とする低摩擦セラミックスの製造方法に関
する。また,この低摩擦セラミックスの製造方法におい
て,前記大気中での前記焼成体の加熱温度が800℃以
上で行なわれるものである。
【0020】また,この発明は,Si3 4 セラミック
ス中にFeの酸化物を加えてメタノール及びバインダと
共に混合し,その混合物を造粒処理を行なった原料を成
形して成形体を作製し,前記成形体を脱脂後に窒素雰囲
気中で1段保持温度,次いで最高保持温度の焼成条件で
焼成してSi3 4 焼成体を作り,表面にFe−Oから
成る化合物が分散していることを特徴とする低摩擦セラ
ミックスの製造方法に関する。また,この低摩擦セラミ
ックスの製造方法において,前記Feの酸化物の粒径は
10μm以下である。更に,前記焼成温度は1400℃
〜2100℃である。特に,前記焼成温度の前記1段保
持温度は1450℃〜1750℃であり,また,前記最
高保持温度は1750℃〜2000℃である。
【0021】また,この発明は,窒化ケイ素セラミック
スを母相として,Fe−Si化合物が分散しており,前
記母相の表面にFe−Oから成る化合物が分散している
ことを特徴とする低摩擦セラミックスから成る摺動部品
に関する。また,この摺動部品は,シリンダライナであ
る。特に,この摺動部品が前記シリンダライナの場合に
は,前記Fe−Si化合物がFeO,Fe2 3 ,Fe
3 4 に換算して,5〜40wt%含まれているもので
ある。又は,この摺動部品は,ピストンリングである。
更に,この摺動部品が,特に,前記ピストンリングの場
合には,前記Fe−Si化合物がFeO,Fe2 3
Fe3 4 に換算して,5〜20wt%含まれているも
のである。
【0022】また,この発明は,窒化ケイ素セラミック
スを主成分とする原料粉末にFeの酸化物を加えてメタ
ノール及びバインダと共に混合し,その混合物を造粒処
理を行なった原料を成形して成形体を作製し,前記成形
体を脱脂後に窒素ガス雰囲気中で最高1850℃まで加
熱焼成して緻密な焼結体を作り,表面にFe−Oから成
る化合物が分散していることを特徴とする低摩擦セラミ
ックスから成る摺動部品の製造方法に関する。
【0023】また,この発明は,Siを含む非酸化物セ
ラミックスを母相として,その中に,Fe,或いはその
酸化物又は珪化物の化合物のうち少なくとも1種以上が
分散しており,前記母相の表面にFe−Oから成る化合
物が分散していることを特徴とする低摩擦セラミックス
から成る耐摩耗部品に関する。また,上記Siを含む前
記非酸化物セラミックスがSi3 4 ,SiCのいずれ
かである。また,この耐摩耗部品において,上記非酸化
物セラミックスに含まれるFe又はその化合物のサイズ
が10μm以下である。また,この耐摩耗部品におい
て,上記非酸化物セラミックスに含まれるFe又はその
化合物が,酸化物に換算して5〜25wt%含まれてい
るものである。更に,この耐摩耗部品において,上記セ
ラミックスの4点曲げ強度が750MPa以上である。
また,この耐摩耗部品は,ロッカーアームシート,カ
ム,タペット等のエンジン動弁系部品である。
【0024】また,この発明は,窒化ケイ素セラミック
スを主成分とする原料粉末にFeの酸化物を加えてメタ
ノール及びバインダと共に混合し,その混合物を造粒処
理を行なった原料を予備成形して中間成形体を作製し,
前記中間成形体をCIPにより成形して成形体を作製
し,前記成形体を脱脂後に窒素ガス雰囲気中で2000
℃まで加熱焼成して緻密な焼結体を作り,表面にFe−
Oから成る化合物が分散していることを特徴とする低摩
擦セラミックスから成る耐摩耗部品の製造方法に関す
る。
【0025】この低摩擦セラミックス及びその製造方法
は,上記のように構成されているので,Fe−Oから成
る化合物及びこれと母相との界面は活性点となり,オイ
ルとの吸着性に優れるため,その複合セラミックスが低
摩擦化となり,また,粒成長が抑制される結果,高い強
度を有するようになる。また,上記セラミックスの母相
がZrO2 等の酸化物セラミックスで構成した場合に
は,通常の大気中での焼成を可能にするが,セラミック
スの母相がSi3 4 ,SiC等の非酸化物セラミック
スである場合には,窒素N2 雰囲気における焼成時に,
還元反応が起こるため,Fe−Siの化合物に変化す
る。そこで,この発明では,焼成後に酸素を含む雰囲気
中即ち大気中での加熱処理によって,少なくとも表面近
傍のFe−Siの化合物をオイルとの吸着性の良いFe
−O酸化物に転化させ,それによって低摩擦で且つ高い
強度を有する組織にするものである。
【0026】また,この低摩擦セラミックスは,Fe
O,Fe2 3 ,Fe3 4 等のFeの酸化物を添加原
料としてセラミックスの母相中に所定量,即ち,5wt
%〜40wt%分散させることによって,オイルとの吸
着性を良好にして低い摩擦係数で且つ高い強度を維持し
たセラミックスと鉄の化合物との複合セラミックス材を
得ることができる。
【0027】更に,この低摩擦セラミックスから成る摺
動部品は,窒化ケイ素セラミックスを母相として,Fe
−Si化合物が分散しているので,潤滑油粘度が低い状
態においても低摩擦係数を示し,且つ耐摩耗性に優れて
いる。特に,鉄の酸化物を5〜40wt%添加したSi
3 4 摺動部品は上記特性が優れている。従って,シリ
ンダライナ,ピストンリング等のエンジンの摺動部品を
作製した場合に,エンジン性能を向上させることができ
る。
【0028】また,この低摩擦セラミックスから成る耐
摩耗部品は,Siを含む非酸化物セラミックスを母相と
して,その中に,Fe,或いはその酸化物又は珪化物の
化合物のうち少なくとも1種以上が分散しているので,
従来のSi3 4 セラミックスに比較して,150℃以
上の高温域においても摩擦特性及び摩耗特性を向上させ
ることができ,しかも,従来のSi3 4 セラミックス
と同等の機械的特性を有するものである。
【0029】
〔実施例1〕
この低摩擦セラミックスの製造方法において,まず,S
3 4 ,Al2 3及びY2 3 を次の比率で配合す
る。Si3 4 :Al2 3 :Y2 3 =90:5:5
の比率で配合する。この総量に対して3種類のFeの酸
化物即ちFeO,Fe2 3 ,Fe3 4 を10wt%
加え,蒸留水,バインダと共に,ボールミルにて約24
時間混合して混合物を作った後,該混合物をスプレード
ライヤによって造粒処理を行なって粒状物を作った。
【0030】次いで,造粒処理したこれらの粒状物を,
25×20×100mmの内寸とした金型内で予備成形
した後,予備成形体をCIPによって約2000kgf
/cm2 の圧力によって直方体の種々の成形体を得た。
これらの成形体を脱脂した後に,これらの脱脂成形体を
9.3MPaのN2 雰囲気中で,最高温度1850℃ま
で加熱焼成して緻密な焼結体を多数得た。この状態の焼
結体を比較試験片に使用する。
【0031】次いで,これらの焼結体を大気中で,40
0℃,800℃,1000℃,1200℃の各温度でそ
れぞれ6時間保持することによって酸化させた。上記の
工程を経て作製したこれらの焼結体を,摺動試験を行な
うため,研削し,研磨して16×10×70mmの摺動
試験用テストピースとして種々の直方体摺動試験片を作
製した。これらの焼結体の摺動試験をするための相手側
の部材即ち相手側摺動試験片として,相対密度99%以
上の窒化ケイ素Si3 4 焼結体を作製し,この相手側
摺動試験片の端面を曲率半径45mmの球面としたピン
を作製した。
【0032】そこで,直方体摺動試験片の1つの面に,
相手側摺動試験片のピンをほぼ垂直となるようにセット
し,荷重3.0kgf,温度150℃,摺動速度1.0
m/sの摺動試験条件で,それらの摩擦係数を測定し
た。この摺動試験の時に,潤滑油として,耐熱性に優れ
る合成オイルを使用した。上記のように,大気中におけ
る酸化温度を変えた時の摩擦係数の変化を図1に示す。
図1はこの低摩擦セラミックスの製造工程での大気中で
の処理温度に対する摩擦係数の関係を示すグラフであ
る。図1から分かるように,大気中における酸化温度
が,800℃付近から摩擦係数の低下する傾向が確認さ
れた。
【0033】更に,大気中における酸化温度が1000
℃の直方体摺動試験片について,その中に存在する相の
同定をX線マイクロ分析法によって行ったところ,元の
Fe−SiがFe−Oから成る化合物に変化しているこ
とが分かった。また,この直方体摺動試験片,及び酸化
前の上記比較試験片について,150℃に加熱した後,
潤滑油をそれらの表面に1滴垂らし,その広がり即ち接
触角を観察したところ,酸化後の試料は元の材料に比較
して,潤滑油の広がりが大きく即ち接触角が小さく,こ
れは酸化物が元の化合物に比較して潤滑油との吸着性に
優れることに起因するものである。
【0034】また,上記の製造方法で作製した大気中に
おける酸化温度が1000℃の直方体摺動試験片を切削
して4点曲げ強度試験片を多数作製し,JIS規格に準
じた強度測定を行ったところ,平均4点曲げ強度896
MPa,ワイブル係数18.3(試験片の本数は30本
である)と充分な強度を有していることが分かった。更
に,摺動試験片の荷重,速度,潤滑油の粘度をまとめた
パラメータを横軸にとり,各条件における摩擦係数を測
定した結果を,図2に示す。図2はこの低摩擦セラミッ
クスの鉄酸化物の添加量についての荷重,速度及び潤滑
油粘度のパラメータに対する摩擦係数の関係を示すグラ
フである。図2において,荷重をF,速度をV及び潤滑
油の粘度をηとすると,上記パラメータPは次のとおり
である。P=log(η×V/F)である。Pの単位は
次のとおりである。Pの単位は〔×10-6・(m2
S)・(m/S)/kgf〕である。図2から分かるよ
うに,酸化処理した直方体摺動試験片は,窒化したまま
の試験片に比較して,混合〜境界潤滑域での低摩擦化に
有効であることが分かる。
【0035】この発明による低摩擦セラミックス及びそ
の製造方法の別の実施例を実施例2として説明する。 〔実施例2〕 この低摩擦セラミックスの製造方法において,炭化ケイ
素粉末,焼結助剤としてホウ素,及びFe3 4 を10
wt%配合する。それに2倍の蒸留水を加えて,実施例
1と同様に,混合して混合物を作った後,該混合物をス
プレードライヤによって造粒処理を行なって粒状物を作
った。次いで,実施例1と同様の条件によって焼結体を
作製して試験片を作製した。この製造工程での条件は,
荷重は3.0kgfであり,酸化条件は大気中で100
0℃で6時間であった。それらの試験片の摺動特性,強
度を測定したところ,次のような結果を得た。即ち,酸
化処理した焼結体の試験片は,摩擦係数が0.016で
あり,4点曲げ強度は482MPaであった。これに対
して,酸化処理しなかった焼結体の試験片は,摩擦係数
が0.021であり,4点曲げ強度は478MPaであ
った。炭化ケイ素系の焼結体は,窒化ケイ素系の焼結体
に比較して,強度に関してやや劣るが,炭化ケイ素をマ
トリックス即ち母相とした場合にも,焼結体を酸化する
ことの効果が確認された。
【0036】次に,この発明による低摩擦セラミックス
の別の実施例を実施例3として説明する。 〔実施例3〕 この低摩擦セラミックスの製造方法において,Si3
4 ,Al2 3 及びY2 3 を次の比率で配合する。S
3 4 :Al2 3 :Y2 3 =90:5:5の比率
で配合する。この総量に対して3種類のFeの酸化物即
ちFeO,Fe2 3 ,Fe3 4 を25wt%加え,
蒸留水,バインダと共に,ボールミルにて約24時間混
合して混合物を作った後,該混合物をスプレードライヤ
によって造粒処理を行なって粒状物を作った。
【0037】次いで,造粒処理したこれらの粒状物を,
まず,25×20×100mmの内寸とした金型内で予
備成形した後,予備成形体をCIPによって約1000
kgf/cm2 の圧力によって直方体の種々の成形体を
得た。これらの成形体を脱脂した後に,これらの脱脂成
形体を9.3MPaのN2 雰囲気中で,最高温度180
0℃まで加熱焼成して多数の焼結体を得た。この状態で
の焼結体は,数10ミクロンのサイズの気孔がその表面
に点在している。
【0038】上記の工程を経て作製したこれらの焼結体
を,研削し,研磨して16×10×70mmの摺動試験
用テストピースとして直方体摺動試験片を作製した後,
リン酸カルシウムで表面をコーティングしたグラファイ
ト粉末即ち固体潤滑剤を上面に置いた。次いで,上記グ
ラファイト粉末を焼結体の気孔中に擦り込むために,焼
結体のプレートと同じ幅で曲率半径10mmのエッジ状
としたプレートをほぼ垂直になるようにセットし,50
0℃まで加熱した後,0.5m/sの速度で往復動させ
た。この処理によって焼結体の気孔中に上記グラファイ
トを擦り込むことができた。また,ここで用いた上記グ
ラファイトの固体潤滑剤は,500℃でも安定している
ことを確認した。
【0039】上記工程で作製した試験片及び相手材とし
て,相対密度99%以上のSi3 4 焼結体を,その端
面を曲率半径45mmの球面としたピンを作製した。そ
のピンを用いて摺動試験を行なった結果を図3に示す。
図3はこの低摩擦セラミックスの鉄酸化物の添加量につ
いての荷重,速度及び潤滑油粘度のパラメータに対する
摩擦係数の関係を示すグラフである。図3では,荷重,
速度,潤滑油の粘度をまとめたパラメータを横軸にと
り,縦軸に各条件における摩擦係数の測定値をとってい
る。図3は図2と同様のグラフである。図3から分かる
ように,この発明による鉄酸化物を添加したSi3 4
の焼結体は,鉄酸化物を加えていない無添加のSi3
4 に比較すると,混合〜境界潤滑域での低摩擦化に有効
であり,また,固体潤滑剤を含まない材料に比べると,
境界潤滑域での低摩擦化に有利であることが確認でき
た。
【0040】更に,上記実施例3で使用した試験片から
切り出して4点曲げ強度試験片を作製した。その4点曲
げ強度試験片の強度を測定したところ,483MPaで
あった。
【0041】次に,この発明による低摩擦セラミックス
の他の実施例を実施例4として説明する。 〔実施例4〕 この低摩擦セラミックスの製造方法において,炭化ケイ
素粉末,焼結助剤としてホウ素,及びFe3 4 を25
wt%配合する。それに2倍の蒸留水を加えて,実施例
3と同様に,混合して混合物を作った後,該混合物をス
プレードライヤによって造粒処理を行なって粒状物を作
った。次いで,実施例3と同様の条件によって焼結体を
作製して試験片を作製した。それらの試験片の摺動特
性,強度を測定したところ,次のような結果を得た。即
ち,固体潤滑剤を擦り込んだ焼結体の試験片は,境界潤
滑域摩擦係数が0.18であり,4点曲げ強度は362
MPaであった。これに対して,固体潤滑剤を擦り込ん
でいない焼結体の試験片は,境界潤滑域摩擦係数が0.
28であり,4点曲げ強度は345MPaであった。炭
化ケイ素系の焼結体は,窒化ケイ素系の焼結体に比較し
て強度がやや劣るが,鉄酸化物の含有と固体潤滑剤の擦
り込みの複合効果があることが確認された。
【0042】更に,この発明による低摩擦セラミックス
及びそお製造方法の更に他の実施例を実施例5として説
明する。 〔実施例5〕 この低摩擦セラミックスの製造方法において,実施例3
における製造工程において,上記の脱脂成形体の焼結後
に1000℃で大気中で酸化した焼結体試験片につい
て,実施例3と同様に固体潤滑剤を,焼結体の気孔中に
擦り込んで摺動試験片を作製した。その摺動試験片の摺
動試験を行なったところ,混合潤滑域での摩擦係数の低
減が認められた。
【0043】次に,この発明による低摩擦セラミックス
及びその製造方法の別の実施例を実施例6として説明す
る。 〔実施例6〕 この低摩擦セラミックスの製造方法において,酸化物セ
ラミックスとして,Y2 3 及び部分安定化ジルコニア
ZrO2 の粉末に対して3種類の鉄酸化物,即ち,Fe
O,Fe2 3 ,Fe3 4 を所定量加え,蒸留水,バ
インダと共に,ボールミルにて約24時間混合して混合
物を作った後,該混合物をスプレードライヤによって造
粒処理を行なって粒状物を作った。この時,Feの酸化
物の添加量を種々に変更して種々の粒状物を作った。
【0044】次いで,造粒処理したこれらの粒状物を,
25×20×100mmの内寸とした金型内で予備成形
した後,予備成形体をCIPによって約2000kgf
/cm2 の圧力によって直方体の種々の成形体を得た。
これらの成形体を大気雰囲気中で,最高温度1650℃
まで加熱焼成して緻密な種々の焼結体を得た。次いで,
これらの焼結体を,摺動試験を行なうため,研削し,研
磨して16×10×70mmの摺動試験用テストピース
として種々の直方体摺動試験片を作製した。これらの焼
結体の摺動試験をするための相手側の部材即ち相手側摺
動試験片として,チル鋳鉄によって相手側摺動試験片を
作製し,該相手側摺動試験片の端面を曲率半径45mm
の球面としたピンを作製した。
【0045】そこで,直方体摺動試験片の1つの面に,
相手側摺動試験片のピンをほぼ垂直となるようにセット
し,荷重1.0kgf,温度150℃,摺動速度1.0
m/sの摺動試験条件で,それらの摩擦係数を測定し
た。この摺動試験の時に,潤滑油として,耐熱性に優れ
る合成オイルを使用した。各種の鉄酸化物(Fem n
即ちFeO,Fe2 3 ,Fe3 4 )の添加量を変え
た酸化物セラミックスの大気中における酸化温度を変え
た時の摩擦係数の変化の測定結果を図4に示す。図4は
この低摩擦セラミックスにおけるFem n の添加量に
対する摩擦係数の測定結果を示すグラフである。図4か
ら分かるように,ZrO2 への鉄酸化物を複合した材料
については,鉄酸化物の添加によって摩擦係数が低下す
ることが確認できる。鉄酸化物の添加量が10wt%〜
30wt%の範囲内では,摩擦係数μは約0.02〜
0.01と低くなり,それ以上の鉄酸化物の添加量で
は,摩擦係数μはやや上昇する傾向であることが認めら
れた。鉄酸化物の添加量を多く(30wt%以上)した
複合材では,組織観察によると,添加物相の凝集が起こ
り,それに伴って気孔が残存するようになり,それらの
気孔が摺動時に相手材との噛み合いによって摩擦抵抗が
大きくなったものと推察される。また,図4で鉄酸化物
Fem n の添加量が0の点は従来のZrO2 を示す比
較例となる。
【0046】次に,上記のZrO2 の摺動試験片につい
て,その中に存在する相の同定をX線マイクロ分析法に
よって行なったところ,Fe−Oから成る化合物が存在
することが分かった。この化合物が潤滑油との吸着性に
優れると推察される。
【0047】更に,上記のZrO2 の摺動試験片につい
て,150℃に加熱した後に,潤滑油をその摺動試験片
の表面に1滴垂らして,その広がり即ち接触角を観察し
たところ,鉄酸化物を複合したZrO2 の摺動試験片は
無添加のZrO2 材料に比較して,潤滑油の広がりが大
きく即ち接触角が小さく,これは鉄酸化物の添加によっ
て潤滑油との吸着性が向上したものと考えられる。従っ
て,この実施例6によって得たZrO2 セラミックスに
対する鉄酸化物の複合によって摩擦係数の低下は,潤滑
油との吸着性の向上に起因するものと推察される。
【0048】次に,上記のZrO2 の摺動試験片を切削
して4点曲げ用試験片を作製し,JIS規格に準じて強
度を測定したところ,図5に示すような結果を得た。図
5はこの低摩擦セラミックスの鉄酸化物の添加量に対す
る4点曲げ強度の平均を示すグラフである。図5から分
かるように,Fem n の添加量を増加させるに従っ
て,強度が低下する。そして,Fem n の添加量が3
0wt%までは,4点曲げ強度は十分な強度を有し,無
添加のZrO2 に比較して,強度は同等か,或いはそれ
以上の強度を有することが分かった。また,図5でFe
m n の添加量が0の点は従来のZrO2 を示す比較例
となる。
【0049】次に,この発明による低摩擦セラミックス
及びその製造方法の更に別の実施例を実施例7として説
明する。 〔実施例7〕 この低摩擦セラミックスの製造方法において,酸化物セ
ラミックスとして,酸化アルミニウムAl2 3 を母相
とし,その中に鉄酸化物,即ち,FeO,Fe2 3
Fe3 4 を所定量加え,実施例6と同様な製造工程に
よって複合セラミックスを作製し,その複合セラミック
スの摺動特性と4点曲げ強度とを測定したところ,次の
結果を得た。即ち,Al2 3 に鉄酸化物が無添加のも
のは,摩擦係数が0.06であり,4点曲げ強度は42
0MPaであった。これに対して,Al2 3 に鉄酸化
物を添加した複合セラミックスについては,鉄酸化物が
10wt%では摩擦係数が0.035であり,4点曲げ
強度は396MPaであり,鉄酸化物が20wt%では
摩擦係数が0.022であり,4点曲げ強度は401M
Paであり,鉄酸化物が30wt%では摩擦係数が0.
029であり,4点曲げ強度は356MPaであり,更
に,鉄酸化物が40wt%では摩擦係数が0.021で
あり,4点曲げ強度は322MPaであった。即ち,A
2 3 に鉄酸化物を添加することによって,高い強度
を確保でき,しかも,低い摩擦係数を得ることができ
た。
【0050】次に,この発明による低摩擦セラミックス
及びその製造方法の他の実施例を実施例8として説明す
る。 〔実施例8〕 この低摩擦セラミックスにおいて,Siを含む非酸化物
セラミックスとしては,Si3 4 であり,この低摩擦
セラミックスは,次のようにして作製することができ
る。この低摩擦セラミックスの製造方法において,Si
3 4 ,Al2 3 及びY2 3 を次の比率で配合す
る。Si3 4 :Al2 3 :Y2 3 =90:5:5
の比率で配合する。この総量に対して粒径3μm以下の
3種類のFeの酸化物即ちFeO,Fe2 3 ,Fe3
4 を所定量加え,メタノール,バインダと共に,ボー
ルミルにて約24時間混合して混合物を作った後,該混
合物をスプレードライヤによって造粒処理を行なって粒
状物を作った。この時,鉄酸化物の種類を変えて3種の
粒状物を作った。
【0051】次いで,造粒処理したこれらの粒状物を,
まず,25×20×100mmの内寸とした金型内で予
備成形した後,予備成形体をCIPによって約2000
kgf/cm2 の圧力によって直方体の種々の成形体を
得た。これらの成形体を脱脂した後に,これらの脱脂成
形体を9.3MPaのN2 雰囲気中で,1段保持温度,
最高保持温度等の焼成条件を変えたSi3 4 の焼結体
を焼成した。これらの焼成体の組織観察を行なった結
果,焼成温度を変えることによってSi3 4 の結晶粒
のサイズが異なることが分かった。
【0052】上記の工程を経て作製したこれらのSi3
4 焼結体を,摺動試験を行なうため,研削し,研磨し
て16×10×70mmの摺動試験用テストピースとし
て種々の直方体摺動試験片を作製した。そこで,Si3
4 の結晶組織内の最大結晶粒径と摩擦係数の関係を調
べるため,相手側の部材即ち相手側摺動試験片として,
相対密度99%以上のSi3 4 焼結体を作製し,この
相手側摺動試験片の端面を曲率半径45mmの球面とし
たφ8×23mmのピンを作製した。
【0053】そこで,直方体摺動試験片の1つの面に,
相手側摺動試験片のピンをほぼ垂直となるようにセット
し,荷重1.0kgf,温度150℃,摺動速度1.0
m/sの摺動試験条件で,それらの摩擦係数を測定し
た。この摺動試験の時に,潤滑油として,耐熱性に優れ
る合成オイルを使用した。Si3 4 の試験結果を図6
に示す。図6はこの低摩擦セラミックスの最大結晶粒径
に対する摩擦係数の関係を示すグラフである。図6から
分かるように,最大結晶粒径が20μmを超えると,摩
擦係数が増加することが分かった。Si3 4 の摩擦形
態は,結晶粒の脱落によりことから判断して,結晶粒径
が大きいSi3 4 の場合,結晶粒の脱落が起こった部
分が大きな穴となり,これらの穴が相手材との噛み合い
を起こすため,摩擦係数を増加させると推測できた。ま
た,これらのSi3 4 と鉄酸化物との複合セラミック
スの組織観察の結果,最大結晶粒径を20μm以下とす
る焼成条件は,第1保持温度が1500℃〜1750℃
であり,また,最高保持温度が1750℃〜2000℃
であることが分かった。更に,Si3 4 の焼成温度を
1400℃以下又は2100℃以上とした場合には,緻
密な焼結体を得ることができなかった。
【0054】また,上記実施例8の製造方法で作製した
直方体摺動試験片を切削して3×4×40の4点曲げ強
度試験片を作製し,その強度を測定したところ,図7に
示すような結果を得た。図7はこの低摩擦セラミックス
についてFem n の添加量に対する4点曲げ強度の関
係を示すグラフである。図7から分かるように,Fem
n の添加量を増加させるに従って,強度が低下する。
そして,Fem n の添加量が10wt%〜20wt%
の4点曲げ強度試験片では,Fem n を添加しないS
3 4 に比較して,強度は同等か,或いはそれ以上の
強度を有することが分かった。また,図7でFem n
の添加量が0の点は従来のSi3 4 を示す比較例とな
る。
【0055】また,Fem n の添加量が10wt%の
摺動試験片の組織を,SEM(Scanning Electron Micr
oscopy)で観察したところ,Fem n の添加量が10
wt%の摺動試験片では,鉄を含んだ部分はその大きさ
が10μm以下で固溶せず,Si3 4 結晶粒界中に均
一に鉄が分散した状態で存在していることが確認でき
た。また,この相についてX線マイクロ分析法を用いて
分析した結果を図8に示す。図8から分かるように,上
記の相はFe−Si化合物であることが分かった。Si
3 4 と鉄酸化物との複合セラミックスの組織内には気
孔はほぼ認められず,Si3 4 結晶粒子の成長が鉄の
酸化物の存在により抑制され,微細で且つ均一な結晶粒
子となったと推測された。このような組織は,グリフィ
スの関係式から考えて高強度化に有利と思われる。
【0056】また,Fem n の添加量を更に増加させ
た摺動試験片については,図7に示すように,強度が低
下するが,これらを上記と同様に組織観察したところ,
Fem n の凝集が認められ,その凝集したところに気
孔が存在していた。即ち,摺動試験片に気孔が残存する
結果,それらの気孔が破壊の起点となるため,摺動試験
片の強度が低下したものと考えられる。
【0057】次に,実施例8と同様の製造方法によっ
て,粒径3μm以下のFe3 4 の代わりに,粒径5,
7,10,15及び20μmのFe3 4 を10wt%
をSi3 4 に添加して焼成し,Si3 4 と鉄酸化物
との複合セラミックスの焼結体試験片を作製した。これ
らの焼結体試験片を実施例8と同様の方法で摩擦係数と
4点曲げ強度を測定したところ,次の結果を得た。即
ち,Fe3 4 の粒径5μmの焼結体の摩擦係数は0.
0080であり,4点曲げ強度は990MPaであっ
た。Fe3 4 の粒径7μmの焼結体の摩擦係数は0.
0085であり,4点曲げ強度は977MPaであっ
た。Fe3 4 の粒径10μmの焼結体の摩擦係数は
0.0092であり,4点曲げ強度は921MPaであ
った。Fe3 4 の粒径15μmの焼結体の摩擦係数は
0.016であり,4点曲げ強度は657MPaであっ
た。Fe3 4 の粒径20μmの焼結体の摩擦係数は
0.027であり,4点曲げ強度は421MPaであっ
た。このことから,Fe3 4 の粒径が10μmを超え
る鉄酸化物を添加したSi3 4 は,摩擦係数が大きく
なり,強度が低下することが分かった。粒径が10μm
を超える鉄酸化物を添加した焼結体の組織を観察する
と,これらには酸化物の凝集が観られ,そこには気孔が
残存するため,相手材との噛み合いが生じることによる
摩擦係数の増加があり,それらの気孔が破壊の起点とな
り,強度の低下の原因になったと推測される。
【0058】次に,この発明による低摩擦セラミックス
から成る摺動部品及びその製造方法の実施例を実施例9
として説明する。 〔実施例9〕 Si3 4 ,Al2 3 ,Y2 3 を90:5:5の配
合比で混合し,該総重量に対して,粒径3μm以下の鉄
の酸化物FeO,Fe2 3 ,Fe3 4 を所定量加
え,メタノール,バインダーと共に,ボールミルにて約
24時間混合して混合物を作った後,該混合物をスプレ
ードライヤにより造粒処理を行って粒状物を作製した。
該粒状物を原料として,25×20×100mmを内寸
とした金型内で予備成形して予備成形体を作製した後,
該予備成形体をCIPにより約2000kgf/cm2
のプレス圧で直方体の成形体を得た。成形体を脱脂した
後,9.3MPaの窒素ガスN2 雰囲気中で,最高18
50℃まで加熱焼成して緻密な焼結体とした。この焼結
体を加工し,16×10×65mmの摺動試験プレート
とした。
【0059】一方,摺動試験プレートの摺動試験の相手
材として,相対密度99%以上のSi3 4 焼結体を作
製した。相手材のSi3 4 焼結体の先端面を曲率半径
9mmの球面としたφ8×23mmのピンを用いた。直
方体形状のテストピースの1つの面にピンをほぼ垂直と
なるようにセットし,荷重1kgf,温度150℃及び
摺動速度0.1m/sという摺動試験条件で試験を行
い,摺動試験プレートの摩擦係数μを測定した。この
時,潤滑油として,各種潤滑油添加剤を加えた耐熱性に
優れる合成オイルを使用した。鉄酸化物の添加量を加え
たSi3 4 の摺動試験結果を図9に示す。比較例は鉄
酸化物の添加量が零の点である。図9から分かるよう
に,Si3 4 への鉄酸化物の添加量が10〜20wt
%の時に,摩擦係数μが最も低くなり,それ以上ではや
や上昇するが,添加量全域で添加の効果,即ち,摩擦係
数μの低減の効果が確認できた。
【0060】〔実施例10〕 実施例9と同様の焼結体の作製方法にて,Fe3 4
20wt%添加して焼成した窒化ケイ素Si3 4 につ
いて,実施例9と同寸法のプレート及びピンを作製し
た。また,酸化鉄を添加していない窒化ケイ素Si3
4 ,鉄系金属材料についても同様に,プレート及びピン
を作製した。上記3種の材料を種々組み合わせて摺動試
験を行った。その時,荷重10kgf,摺動速度0.1
m/s,温度200℃及び摺動時間2時間とし,潤滑油
には実施例9と同様のものと,それより粘度が低いもの
を用いた。表1に結果を示す。なお,表中,Fe3 4
を20wt%添加して焼成した窒化ケイ素を本発明品,
酸化鉄を添加していない窒化ケイ素を従来品,鉄系金属
材料を鉄,実施例9と同粘度の潤滑油を高,より低い粘
度の潤滑油を低と示した。
【表1】
【0061】表1の摺動試験状態は,固体同士の接触が
頻繁に起こる境界潤滑といわれる状態である。表1か
ら,鉄の酸化物を添加した窒化ケイ素は,境界潤滑状態
において,鉄系金属材料及び従来の窒化ケイ素材料と比
較して,摩擦係数μが低く,また耐摩耗性に優れている
といえる。また,本発明品は,オイル粘度が低いため,
鉄系金属材料が焼付きを起こすような状態においても焼
付きを起こさず,また,従来品の窒化ケイ素に比べ低摩
擦係数で且つ低摩耗を示した。従って,従来品では潤滑
状態が厳しくなるため,低粘度オイルを使用できなかっ
た部位に本発明品を用いることにより,低粘度オイルの
使用が可能であることが確認できた。
【0062】〔実施例11〕 実施例9と同様にして,Fe3 4 を10wt%添加し
た窒化ケイ素(以下,開発品即ち本発明品という)につ
いてエンジン部品であるシリンダライナとピストンリン
グを作製した。また,鉄の酸化物を添加しない窒化ケイ
素(以下,従来品という)についても同様のものを作製
した。これらの部品をエンジン内に組み込み,ピストン
リングとシリンダライナ間の摩擦力を知るため,モータ
によりエンジンを回転させた時のモータ駆動力を測定し
た。その結果,本発明品の組み合わせでは,従来品の組
み合わせと比較して約25%の駆動力が低下した。ま
た,従来品のピストンリングと本発明品のシリンダライ
ナの組み合わせ,及び本発明品のピストンリングと従来
品のシリンダライナとの組み合わせにおいても共に約1
5%駆動力が低下した。また,本発明品の組み合わせの
エンジンに低粘度のオイルを用いてモータ駆動力を測定
したところ,約40%低下した。
【0063】エンジン内のピストンリングとシリンダラ
イナ間の潤滑状態は,上死点と下死点は境界潤滑であ
り,その他の領域では固定接触がなく,摩擦力が潤滑油
粘度に支配される流体潤滑状態である。従って,本発明
品を用いたことにより,上死点と下死点との摩擦力が低
減し,また,低粘度オイルを用いたことにより,その他
の部分の摩擦力が低減したため,性能向上が現れたのだ
と思われる。
【0064】〔実施例12〕 実施例9で使用したテスピースから3×4×40の4点
曲げ強度試験用テストピースを切り出し,強度測定を行
った。4点曲げ平均強度の結果を図10に示す。図10
から分かるように,鉄酸化物を10〜20wt%添加し
た本発明品は,添加していない通常のSi3 4 に比べ
ても強度は同等か,それ以上の強度を有することが確認
された。鉄酸化物10wt%を添加した本発明品につい
て組織をSEMで観察した。これより,鉄を含んだ部分
はその大きさが10μm以下で固溶せず,窒化ケイ素結
晶粒界中に均一に分散した状態で存在していることが分
かる。この相について,X線マイクル分析法を用いて分
析した結果を図11に示すが,この分析から,この相は
Fe−Si化合物であることが分かった。組織内に気孔
はほぼ認められず,窒化ケイ素結晶粒子の成長が鉄の酸
化物の存在により抑制され,微細で且つ均一な結晶粒子
となったと推測された。こうした組織はグリフィスの関
係強度が低下するが,組織観察したところ,鉄酸化物の
凝集がみられ,そこに気孔が残存する結果,これが破壊
の起点となったためと推測された。
【0065】エンジンを構成するシリンダライナは,5
00MPa以上の強度が要求されるため,図9及び図1
0より鉄の酸化物の添加量は,摩擦係数μの低減効果の
現れる5wt%から強度500MPa以上であり,特
に,40wt%以下が好ましいと考えられる。また,ピ
ストンのリング溝に装着されるピストンリングは,80
0MPa以上の強度が要求されるため,図9及び図10
より鉄の酸化物の添加量は,摩擦係数μの低減効果の現
れる5wt%から強度800MPa以上であり,特に,
20wt%以下が好ましいと考えられる。
【0066】次に,この発明による低摩擦セラミックス
から成る耐摩耗部品及びその製造方法の実施例を実施例
13として説明する。 〔実施例13〕 Si3 4 ,Al2 3 ,Y2 3 を90:5:5の配
合比で配合し,この総重量に対して,粒径1μm以下の
鉄の酸化物を所定量加え,メタノール,バインダと共
に,ボールミルにて約24時間混合して混合物を作った
後,該混合物をスプレードライヤーにより造粒処理を行
って粒状物を作製した。該粒状物を原料として,25×
20×100mmを内寸とした金型内で予備成形して予
備成形体を作製した後,該予備成形体をCIPにより約
2000kgf/cm2 のプレス圧で直方体の成形体を
得た。成形体を脱脂した後,9.3MPaのN2 雰囲気
中で,最高2000℃まで加熱焼成して緻密な焼結体を
作製した。この焼結体を加工し,16×10×70mm
の摺動試験片とした。
【0067】一方,摺動試験片の摺動試験の相手材とし
て,相対密度99%以上のSi3 4 焼結体を作製し
た。相手材の先端面を曲率半径9mmの球面とし,相手
材としてφ8×23mmのピンを用いた。直方体形状の
試験片の1つの面にピンをほぼ垂直となるようにセット
し,荷重1kgf,温度150℃及び摺動速度1m/s
の摺動条件で,摺動試験片の摩擦係数μを測定した。こ
の時,潤滑油として,各種潤滑油添加剤を加えた耐熱性
に優れる合成オイルを使用した。鉄酸化物の添加量を加
えたSi3 4 の摺動試験結果を図12に示す。図12
から分かるように,鉄酸化物の添加量が10〜20wt
%の時に摩擦係数μが最も低くなり,それ以上ではやや
上昇するが,鉄酸化物を添加した全域で添加の効果がみ
られる。この時,鉄酸化物の添加量が零の点が従来品で
あり比較例である。鉄酸化物の添加量を多くしたテスト
ピースの組織を観察すると,気孔が残っており,摺動時
には,相手材との噛み合いによって摩擦抵抗が大きくな
ったと推察される。
【0068】〔実施例14〕 次に,実施例13と同様の摺動試験を潤滑油の温度を変
えて行った。その結果,を表2に示す。これより,測定
した25℃〜200℃において鉄酸化物を10wt%添
加したSi3 4 (本発明品)は,添加しないSi3
4 (従来品)に比べて摩擦係数μは低い値となった。ま
た,この時,両者の摩耗量を測定した結果,表3に示す
ように各温度域において鉄酸化物を10wt%添加した
Si3 4 は,添加しないSi3 4 に比較して,プレ
ート及びピンの摩耗量は小さい値であった。
【表2】
【表3】
【0069】〔実施例15〕 次に,実施例13と同様の摺動試験を潤滑油の粘度を変
えて行った。その結果,表4に示すように,潤滑油の粘
度に関係なく,鉄酸化物の添加量を10wt%のSi3
4 は,鉄酸化物を添加しないSi3 4 に比較して摩
擦係数μは低い値となった。また,潤滑油の粘度が下が
るに従って,両者の摩擦係数μの差は大きくなる傾向を
示した。ここでは,潤滑油粘度は10cst(センチス
トークス)と4cst(センチストークス)の場合で試
験した。
【表4】
【0070】〔実施例16〕 実施例13で使用したテストピースから3×4×40の
4点曲げ強度試験用テストピースを切り出し,それらの
強度測定を行った。4点曲げ平均強度MPaの結果を図
13に示す。Si3 4 へのFe酸化物の添加量が増え
るに従い,4点曲げ平均強度は低くなる傾向にある。し
かし,Fe酸化物の添加量10wt%までは,0wt%
添加のSi3 4 (従来品)に比べても強度は同等か或
いはそれ以上であることが確認された。Si3 4 への
Fe酸化物の添加量が10wt%の本発明品について組
織を観察すると,Feを含んだ部分は固溶せず,分散し
た状態で存在していることが分かる。本発明品の組織中
には気孔はほぼ認められず,結晶粒子の成長がFeの酸
化物によって抑制され,微細で且つ均一となっているこ
とが分かった。こうした組織は,グリフィスの関係式か
ら考えて高強度に有利と思われる。一方,Si3 4
のFe酸化物の添加量を更に増やしていくと,強度が低
下するが,それらの組織をSEM(Scanning Electron
Microscopy)観察したところ,酸化物の凝集がみられ,
そこに気孔が残存しており,それが破壊の起点となって
強度が低下したものと考えられる。
【0071】〔実施例17〕 実施例13と同様の製造方法によって,鉄酸化物を10
wt%添加したSi34 (本発明品)と,比較材とし
て鉄酸化物を添加していないSi3 4 (従来品)を用
いて,ロッカーアームシート及びタペットを作製した。
これらの部品をシリンダヘッド部を改良したリグ試験装
置,及びディーゼルエンジンにそれぞれ組み込み,摩耗
量の比較を行った。
【0072】まず,リグ装置に組み込み油温80℃,1
500rpmの回転数で100時間の摩耗試験を行った
ロッカーアームシート及びカムの摩耗量を表5に示す。
ロッカーアームシート及びカムとも本発明品は従来品に
比べ摩耗量が40%少なくなった。また,オイルの温度
を150℃まで上昇させ,同様の試験を行った結果,摩
耗量は本発明品に比べ従来品は約3.5倍となった。
【表5】
【0073】次に,ディーゼルエンジンにタペットを組
み込み,3000rpmの回転数で500時間耐久試験
を行い,その時の摩耗量を測定した。その結果は,表6
に示す通りであり,本発明品は従来品に比べ,タペット
の摩耗量は40%低下した。また,プッシュロッドカム
の摩耗は測定限界以下であった。
【表6】 更に,ロッカーアームシート及びタペットの材質とし
て,鉄酸化物の添加量を5〜40wt%の間で検討した
結果,鉄酸化物の添加量が25wt%を超えた場合に,
各部品の摩擦係数μ及び摩耗量が増加する傾向がみられ
た。また,鉄酸化物の添加量が30wt%を超えると,
各部品に割れ,クラックの発生が顕著になり,破損に至
る部品もあった。これは,鉄酸化物の添加量が増えるに
従い硬度,及び強度が低下するためと考える。従って,
ロッカーアームシートは,面圧が高い条件(50kgf
/cm2 以上)で使用する場合に,鉄酸化物の添加量は
25wt%以下(4点曲げ強度:750MPa以上)で
あると,4点曲げ強度:750MPa以上となり,望ま
しいことが分かった。
【0074】
【発明の効果】この発明による低摩擦セラミックス及び
その製造方法は,上記のように構成されているので,母
相の表面に存在するFe−Oから成る化合物はオイルと
の吸着性にすぐれるため,その複合セラミックスが低摩
擦化となり,高い強度を有するようになる。また,セラ
ミックスの母相がSi3 4 ,SiC等の非酸化物セラ
ミックスである場合には,窒素N2 雰囲気における焼成
時に,還元反応が起こるため,Fe−Siの化合物に変
化するので,焼成後に酸素を含む雰囲気中での加熱によ
って,Fe−Siの化合物を少なくとも表面近傍をFe
−Oに転化させ,上記の低摩擦で且つ高い強度を有する
組織にする。従って,この低摩擦セラミックスは,従来
のセラミックスに比較して低い摩擦係数を示し,しかも
低い摩擦係数にありながら強度は無添加のものと同等で
あるか,或いはそれ以上の強度を有する。即ち,この低
摩擦セラミックスは,Siを含む非酸化物セラミックス
を母相として,その中に,Fe−Oから成る化合物が分
散しているので,潤滑油との吸着性に優れるために低摩
擦でありながら,高強度を有している。
【0075】また,この低摩擦セラミックスは,Siを
含む非酸化物セラミックスの母相中にFeの化合物が分
散し且つ気孔中に固体潤滑剤が充填されているので,特
に,境界潤滑域において低摩擦であり,しかも高強度を
有している。また,この低摩擦セラミックスは,酸化物
セラミックスを母相として,その中に,Fe−Oから成
る化合物が分散しているので,潤滑油との吸着性に優れ
るために低摩擦になり,しかも高強度を有している。
【0076】また,Si3 4 セラミックスを母相とし
て,その中に,Fe−Si化合物が分散しているので,
Si3 4 結晶粒子が微細で且つ均一となっているた
め,摺動時に相手材との噛み合いが少なく低摩擦を示
し,且つ高強度を示す。
【0077】従って,この発明は,従来の窒化ケイ素等
のセラミックスに比較して低い摩擦係数を示し,しかも
気孔がほとんどなく,低い摩擦係数にありながら強度は
無添加のものと同等であるか,或いはそれ以上の強度を
有するセラミックスの複合材となり,エンジン部品等に
使用できる十分な強度を確保できる。また,この低摩擦
セラミックスは,FeO,Fe2 3 ,Fe3 4 等の
Feの酸化物を母相中に所定量,即ち,5wt%〜40
wt%添加させて分散させることによって,オイルとの
吸着性を良好にして低い摩擦係数で且つ高い強度を維持
したセラミックスと鉄酸化物との複合材を得ることがで
きる。
【0078】更に,この摺動部品は,窒化ケイ素セラミ
ックスを母相としてFe−Si化合物が分散しているの
で,潤滑油粘度が低い状態でも低摩擦係数を示し且つ耐
摩耗性に優れている。従って,エンジン部品としてシリ
ンダライナ又はピストンリングを作製するのに適してお
り,特に,鉄の酸化物を5〜40wt%添加したSi3
4 摺動部品は,上記特性が優れている上に,シリンダ
ライナ又はピストンリングに必要な強度も確保できるの
で,遮熱エンジンのような厳しい摺動条件下において
も,十分に使用可能であり,エンジン性能を向上させる
ことができる。
【0079】また,この耐摩耗部品は,Siを含む非酸
化物セラミックスを母相として,その中に,Fe,或い
はその酸化物又は珪化物の化合物のうち少なくとも1種
以上が分散しているので,従来のSi3 4セラミック
スに比較して,150℃以上の高温域においても摩擦特
性及び摩耗特性を向上させることができ,しかも,従来
のSi3 4 セラミックスと同等の機械的特性即ち強度
を有するものである。従って,この耐摩耗部品は,エン
ジン用動弁系部品として,ロッカーアームシート,カ
ム,タペット,プッシュロッドカム等に適用して好まし
いものであり,特に,使用条件が厳しい遮熱エンジンの
動弁系部品に使用して好ましいものであり,潤滑油が高
温になる場合,或いはフリクションを低減させるために
潤滑油の粘度を低くした場合に,本耐摩耗部品は好まし
い特性を示し,エンジン性能を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この低摩擦セラミックスの製造工程での大気中
での処理温度に対する摩擦係数の関係を示すグラフであ
る。
【図2】この低摩擦セラミックスの鉄酸化物の添加量に
ついての荷重,速度及び潤滑油粘度のパラメータに対す
る摩擦係数の関係を示すグラフである。
【図3】この低摩擦セラミックスの鉄酸化物の添加量に
ついての荷重,速度及び潤滑油粘度のパラメータに対す
る摩擦係数の関係を示すグラフである。
【図4】この低摩擦セラミックスにおけるFem n
添加量に対する摩擦係数の測定結果を示すグラフであ
る。
【図5】この低摩擦セラミックスの鉄酸化物の添加量に
対する4点曲げ強度の平均を示すグラフである。
【図6】この低摩擦セラミックスの最大結晶粒径に対す
る摩擦係数の関係を示すグラフである。
【図7】この低摩擦セラミックスについてFem n
添加量に対する4点曲げ強度の関係を示すグラフであ
る。
【図8】この低摩擦セラミックスのX線マイクロ分析法
を用いて分析した結果を示すグラフである。
【図9】この摺動部品を作製する低摩擦セラミックスに
おけるFem n の添加量に対する摩擦係数の測定結果
を示すグラフである。
【図10】この摺動部品を作製する低摩擦セラミックス
における鉄酸化物の添加量に対する4点曲げ平均強度を
示すグラフである。
【図11】この摺動部品を作製する低摩擦セラミックス
のX線マイクロ分析法を用いて分析した結果を示すグラ
フである。
【図12】この耐摩耗部品を作製する低摩擦セラミック
スにおけるFem n の添加量に対する摩擦係数の測定
結果を示すグラフである。
【図13】この耐摩耗部品を作製する低摩擦セラミック
スにおける鉄酸化物の添加量に対する4点曲げ平均強度
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂口 敏章 神奈川県藤沢市土棚8番地 株式会社い すゞセラミックス研究所内 (56)参考文献 特開 平4−325456(JP,A) 特開 平2−269436(JP,A) 特開 昭60−145962(JP,A) 特開 昭63−30366(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/00 - 35/84

Claims (28)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe−Oから成る化合物が,該化合物と
    は異なるセラミックスを母相として,該母相の少なくと
    も表面に分散しており,前記セラミックスの前記母相が
    Siを主成分とするセラミックスであることを特徴とす
    る低摩擦セラミックス。
  2. 【請求項2】 前記Siを主成分とする前記セラミック
    スは,Si3 4 ,SiC及びその複合物のうちいずれ
    かであることを特徴とする請求項に記載の低摩擦セラ
    ミックス。
  3. 【請求項3】 前記Feの化合物のサイズは,10μm
    以下であることを特徴とする請求項に記載の低摩擦セ
    ラミックス。
  4. 【請求項4】 前記Feの化合物がFeO,Fe
    2 3 ,Fe3 4 に換算して,5wt%以上含まれて
    いることを特徴とする請求項に記載の低摩擦セラミッ
    クス。
  5. 【請求項5】 前記Siを主成分とする前記セラミック
    スはSiを含む非酸化物セラミックスを含み,前記非酸
    化物セラミックスの母相中にFeの化合物が分散し且つ
    気孔中に固体潤滑剤が充填されていることを特徴とする
    請求項に記載の低摩擦セラミックス。
  6. 【請求項6】 前記固体潤滑剤がグラファイト或いはそ
    れをベースとする複合物であることを特徴とする請求項
    に記載の低摩擦セラミックス。
  7. 【請求項7】 Si3 4 セラミックスを母相とし,そ
    の中にFe−Si化合物が分散しており,前記母相の表
    面にFe−Oから成る化合物が分散していることを特徴
    とする低摩擦セラミックス。
  8. 【請求項8】 前記Si3 4 の最大結晶粒子が20μ
    m以下であることを特徴とする請求項に記載の低摩擦
    セラミックス。
  9. 【請求項9】 前記Fe−Si化合物のサイズが10μ
    m以下であることを特徴とする請求項に記載の低摩擦
    セラミックス。
  10. 【請求項10】 Siを含む非酸化物セラミックス中に
    Feの酸化物を加えて蒸留水及びバインダと共に混合
    し,その混合物を造粒処理を行なった原料を成形して成
    形体を作製し,前記成形体を窒素雰囲気中で焼成して焼
    成体を作り,次いで,前記焼成体を大気中で加熱するこ
    とによってFeの化合物の部分を酸化させることを特徴
    とする低摩擦セラミックスの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記大気中での前記焼成体の加熱温度
    が800℃以上で行なわれることを特徴とする請求項
    に記載の低摩擦セラミックスの製造方法。
  12. 【請求項12】 Si3 4 セラミックス中にFeの酸
    化物を加えてメタノール及びバインダと共に混合し,そ
    の混合物を造粒処理を行なった原料を成形して成形体を
    作製し,前記成形体を脱脂後に窒素雰囲気中で1段保持
    温度,次いで最高保持温度の焼成条件で焼成してSi3
    4 焼成体を作り,表面にFe−Oから成る化合物が分
    散していることを特徴とする低摩擦セラミックスの製造
    方法。
  13. 【請求項13】 前記Feの酸化物の粒径が10μm以
    下であることを特徴とする請求項1に記載の低摩擦セ
    ラミックスの製造方法。
  14. 【請求項14】 前記焼成温度は1400℃〜2100
    ℃であることを特徴とする請求項1に記載の低摩擦セ
    ラミックスの製造方法。
  15. 【請求項15】 前記焼成温度の前記1段保持温度は1
    450℃〜1750℃であり,前記最高保持温度は17
    50℃〜2000℃であることを特徴とする請求項1
    に記載の低摩擦セラミックスの製造方法。
  16. 【請求項16】 窒化ケイ素セラミックスを母相とし
    て,Fe−Si化合物が分散しており,前記母相の表面
    にFe−Oから成る化合物が分散していることを特徴と
    する低摩擦セラミックスから成る摺動部品。
  17. 【請求項17】 シリンダライナであることを特徴とす
    る請求項16に記載の低摩擦セラミックスから成る摺動
    部品。
  18. 【請求項18】 前記Fe−Si化合物がFeO,Fe
    2 3 ,Fe3 4に換算して,5〜40wt%含まれ
    ていることを特徴とする請求項16又は17に記載の低
    摩擦セラミックスから成る摺動部品。
  19. 【請求項19】 ピストンリングであることを特徴とす
    る請求項16に記載の低摩擦セラミックスから成る摺動
    部品。
  20. 【請求項20】 前記Fe−Si化合物がFeO,Fe
    2 3 ,Fe3 4に換算して,5〜20wt%含まれ
    ていることを特徴とする請求項16又は19に記載の低
    摩擦セラミックスから成る摺動部品。
  21. 【請求項21】 窒化ケイ素セラミックスを主成分とす
    る原料粉末にFeの酸化物を加えてメタノール及びバイ
    ンダと共に混合し,その混合物を造粒処理を行なった原
    料を成形して成形体を作製し,前記成形体を脱脂後に窒
    素ガス雰囲気中で最高1850℃まで加熱焼成して緻密
    な焼結体を作り,表面にFe−Oから成る化合物が分散
    していることを特徴とする低摩擦セラミックスから成る
    摺動部品の製造方法。
  22. 【請求項22】 Siを含む非酸化物セラミックスを母
    相として,その中に,Fe又はその酸化物又は珪化物の
    化合物のうち少なくとも1種以上が分散しており,前記
    母相の表面にFe−Oから成る化合物が分散している
    とを特徴とする低摩擦セラミックスから成る耐摩耗部
    品。
  23. 【請求項23】 記Siを含む前記非酸化物セラミッ
    クスがSi3 4 ,SiCのいずれかであることを特徴
    とする請求項22に記載の低摩擦セラミックスから成る
    耐摩耗部品。
  24. 【請求項24】 前記非酸化物セラミックスに含まれる
    前記Fe又は前記その酸化物又は珪化物の化合物のサイ
    ズが10μm以下であることを特徴とする請求項22
    記載の低摩擦セラミックスから成る耐摩耗部品。
  25. 【請求項25】 前記非酸化物セラミックスに含まれる
    前記Fe又は前記その酸化物又は珪化物の化合物が,酸
    化物に換算して5〜25wt%含まれていることを特徴
    とする請求項22に記載の低摩擦セラミックスから成る
    耐摩耗部品。
  26. 【請求項26】 前記非酸化物セラミックスの4点曲げ
    強度が750MPa以上であることを特徴とする請求項
    22に記載の低摩擦セラミックスから成る耐摩耗部品。
  27. 【請求項27】 ロッカーアームシート,カム,タペッ
    ト等のエンジン動弁系部品であることを特徴とする請求
    22,23,24,25及び26のいずれか項に記
    載の低摩擦セラミックスから成る耐摩耗部品。
  28. 【請求項28】 窒化ケイ素セラミックスを主成分とす
    る原料粉末にFeの酸化物を加えてメタノール及びバイ
    ンダと共に混合し,その混合物を造粒処理を行なった原
    料を予備成形して中間成形体を作製し,前記中間成形体
    をCIPにより成形して成形体を作製し,前記成形体を
    脱脂後に窒素ガス雰囲気中で2000℃まで加熱焼成し
    て緻密な焼結体を作り,表面にFe−Oから成る化合物
    が分散していることを特徴とする低摩擦セラミックスか
    ら成る耐摩耗部品の製造方法。
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